(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040940
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】テープ貼付装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20240318BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145610
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熱田 直行
(72)【発明者】
【氏名】喜多 由起
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ08
4F205AR02
4F205AR07
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HF23
4F205HK22
4F205HM13
4F205HT13
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】パラレルリンク機構の動作範囲を広くとることができるテープ貼付装置を提供する。
【解決手段】被貼付面2aにテープ1を押し付けて被貼付面2aとでテープ1を挟持する押圧部30と、押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させるパラレルリンク機構50と、を有する貼付ヘッド20を備えるテープ貼付装置10であり、パラレルリンク機構50は、所定の間隔で並列に設けられた複数のリンク部51を有し、それぞれのリンク部51が伸縮することによって押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を変化させ、複数のリンク部51に接続される機器、および配線は、複数のリンク部51によって形成される領域である内部領域Rの外側に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付面にテープを押し付けて前記被貼付面とで前記テープを挟持する押圧部と、
前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させるパラレルリンク機構と、
を有する貼付ヘッドを備えるテープ貼付装置であり、
前記パラレルリンク機構は、所定の間隔で並列に設けられた複数のリンク部を有し、それぞれの当該リンク部が伸縮することによって前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を変化させ、
前記複数のリンク部に接続される機器、および配線は、前記複数のリンク部によって形成される領域である内部領域の外側に設けられることを特徴とする、テープ貼付装置。
【請求項2】
前記複数のリンク部に接続される機器には、前記リンク部の伸縮度を確認するエンコーダが含まれることを特徴とする、請求項1に記載のテープ貼付装置。
【請求項3】
前記押圧部に向かってテープを搬送するテープ搬送部をさらに備え、前記テープ搬送部においてテープの搬送のために前記テープ搬送部に接続される機器および配線も、前記内部領域の外側に設けられることを特徴とする、請求項1に記載のテープ貼付装置。
【請求項4】
前記押圧部に向かってテープを搬送するテープ搬送部をさらに備え、前記パラレルリンク機構を形成する複数の前記リンク部のうち比較的前記テープ搬送部の近くに位置する前記リンク部では、前記リンク部に接続される機器、および配線は、前記リンク部おいて前記テープ搬送部から前記パラレルリンク機構を正面視した際の側方かつテープ搬送部から離れている側に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のテープ貼付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテープ貼付装置、及びテープ貼付方法に関し、より詳細には、テープを被貼付面に貼り付けることにより、繊維強化プラスチック(FRP)成形品などを製造する際に用いられるテープ貼付装置、及びテープ貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
予め樹脂が含浸された炭素繊維等の繊維束をテープ状に成形したもの(プリプレグテープ、UDテープなどとも呼ぶ)を被貼付面に貼付けてゆくことで、所望の形状をした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)成形品を製造する方法が知られている。
【0003】
これらの製法は、ATL(Auto Tape Layup)、ATW(Auto Tape Welding)、AFP(Auto Fiber Placement)など種々の称呼があるが、これらは厳密に区別されているものでない。本明細書に於いては、テープを押圧しながら被貼付面に貼付けていく製法を総称してATLと呼び、その装置(テープ貼付装置)をATL装置と呼ぶこととする。
【0004】
特許文献1には、ATL法を実施する施工法が開示されている。この施工法では、繊維強化プラスチックシートの片面もしくは両面に感圧接着剤層を設けて、コンクリート構造物の柱や梁、車体、船舶、航空機などであるワークの補修部や補強部に、その感圧接着剤層を用いて繊維強化プラスチックシートを貼り付けた後、常温硬化、加熱硬化、光硬化などの硬化方法により繊維強化プラスチックシートを硬化せしめて強化複合材料構造体を得ている。
【0005】
一方、前記ワークは、設計上の形状、寸法に対して誤差を有していることが多い。このように誤差を有するワークに対応して上記繊維強化プラスチックのようなテープを自動で貼り付けるATL装置として、本出願人らは下記の特許文献2に開示されたATL装置を提案した。特許文献2に記載のATL装置は、ATLヘッドが、押圧部と、パラレルリンク機構とを備えた構成となっている。
【0006】
特許文献2に記載のATL装置によれば、前記パラレルリンク機構の動作制御により、ワークの被貼付面にテープを押し付ける前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させることが可能となり、前記ワークが幾らかの形状誤差を有している場合であっても、前記被貼付面に対する前記押圧部の押圧状態を一定に保つことが可能となり、前記テープの貼付性能を高めることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-47809号公報
【特許文献2】特開2020-147035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献2のようにパラレルリンク機構を備えたATL装置においてテープを貼り付けるにあたり、場合によってはパラレルリンク機構の動作による押圧部の押圧姿勢の調節範囲が狭くなるおそれがあった。以下、具体的に説明する。
図5に示すように、ATL装置110のATLヘッド120は、テープ1をワーク2の被貼付面2aへ押し付ける押圧部130、押圧部130の押圧姿勢を調節するパラレルリンク機構150、パラレルリンク機構150に取り付けられて押圧部130を保持するエンド部140、および押圧部130へテープ1を搬送するフィーダー170を有し、さらに、エンド部140に対するフィーダー170の角度を調節することにより押圧部130へのテープ1の進入角度を調節するための回動動作部190がエンド部140に取り付けられている。パラレルリンク機構150は、直動シリンダ154を有する複数のリンク部151がエンド部140とベース部160との間に並列に設けられることにより構成されており、
図5にハッチングで示すこれらリンク部151によって囲まれる領域を内部領域Rと呼ぶとする。
【0009】
ここで、ベース部160に対するエンド部140のθx方向の傾きおよびエンド部140に対するフィーダー170のθx方向の傾き次第では、
図6(a)に示すようにフィーダー170(ここではフィーダー170を構成するリール173)が内部領域R内に入り込む場合がある。このとき、仮に
図6(b)に示すように内部領域Rの内側に各リンク部151の動作に供する機器(エンコーダ155、リニアガイド156など)、配線、配管などが設けられていた場合には、
図6(b)のようにエンド部140がθy方向にも傾いたときにリール173がそれら機器などに干渉する可能性がある。そのため、ATL装置110内で機器の干渉を避けるべく、特にθy方向のパラレルリンク機構150の動作範囲を制限するよう制御する必要が生じるという問題があった。
【0010】
本願発明は、上記問題点を鑑み、パラレルリンク機構の動作範囲を広くとることができるテープ貼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明のテープ貼付装置は、被貼付面にテープを押し付けて前記被貼付面とで前記テープを挟持する押圧部と、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させるパラレルリンク機構と、を有する貼付ヘッドを備えるテープ貼付装置であり、前記パラレルリンク機構は、所定の間隔で並列に設けられた複数のリンク部を有し、それぞれの当該リンク部が伸縮することによって前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を変化させ、前記複数のリンク部に接続される機器、および配線は、前記複数のリンク部によって形成される領域である内部領域の外側に設けられることを特徴としている。
【0012】
本発明のテープ貼付装置では、パラレルリンク機構が動作した際に複数のリンク部の動作に供する機器、および配線が貼付ヘッドを構成する機器と干渉することを回避することができるため、パラレルリンク機構の動作範囲を広くとることができる。
【0013】
また、前記複数のリンク部に接続される機器には、前記リンク部の伸縮度を確認するエンコーダが含まれていても良い。
【0014】
また、前記押圧部に向かってテープを搬送するテープ搬送部をさらに備え、前記テープ搬送部においてテープの搬送のために前記テープ搬送部に接続される機器および配線も、前記内部領域の外側に設けられていても良い。
【0015】
こうすることにより、パラレルリンク機構の動作によって貼付ヘッド内で干渉が生じることを抑えることができる。
【0016】
また、前記押圧部に向かってテープを搬送するテープ搬送部をさらに備え、前記パラレルリンク機構を形成する複数の前記リンク部のうち比較的前記テープ搬送部の近くに位置する前記リンク部では、前記リンク部に接続される機器、および配線は、前記リンク部おいて前記テープ搬送部から前記パラレルリンク機構を正面視した際の側方かつテープ搬送部から離れている側に設けられていると良い。
【0017】
こうすることにより、パラレルリンク機構の動作によってパラレルリンク機構とテープ搬送部との相対位置が変化した場合であってもリンク部に接続される機器等とテープ搬送部との干渉が生じることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のテープ貼付装置により、パラレルリンク機構の動作範囲を広くとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態におけるテープ貼付装置を説明する図である。
【
図2】
図1に示す実施形態のテープ貼付装置においてテープの押圧姿勢を変化させた状態を説明する図である。
【
図3】
図1に示す実施形態のテープ貼付装置においてテープの押圧姿勢およびテープの進入角度を変化させた状態を説明する図である。
【
図4】本発明の他の実施形態におけるテープ貼付装置を説明する図である。
【
図6】従来のテープ貼付装置において生じうる問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態におけるテープ貼付装置について、
図1を参照して説明する。
図1(a)は正面図であり、
図1(b)は右側面図である。
【0021】
ATL装置10は、本発明に係るテープ貼付装置の一例であり、ATLヘッド20は、貼付ヘッドの一例である。なお、以下の説明では、テープ1の貼付方向をY軸方向、これと水平面で直交する方向をX軸方向、X軸及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明する。
【0022】
ATL装置10は、ワーク2の被貼付面2a上にテープ1を所定の貼付方向(Y軸方向)に貼り付けることにより、テープ1で補強された成型品を製造するための装置であり、ATLヘッド20、フィーダー70、および回動動作部90を含んで構成されている。
【0023】
テープ1は、例えば、繊維束の少なくとも一部に予め樹脂を含浸させてテープ状にしたものであり、熱可塑性の樹脂が含浸されたもの(UDテープとも呼ばれる)や、熱硬化性の樹脂が含浸されたもの(プリプレグテープとも呼ばれる)などが適用され得る。テープ1は、炭素繊維を含むものでもよいし、樹脂テープに多数の短い繊維が混ぜ込まれたものでもよい。テープ1は、ワーク2の材質などに応じて、その種類が適宜選択され得る。また、テープ1は、複数のテープが並列に配置された形態のものであってもよい。
【0024】
ワーク2は、例えば、3次元形状を有する成型品であり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂製の成型品であってもよいし、金属製の成型品などであってもよい。
【0025】
ATLヘッド20は、ハンドリングロボット80に取り付けられており、このハンドリングロボット80によってATLヘッド20全体をワーク2に離接させる。ハンドリングロボット80は、少なくとも1軸方向に対象物を移動させる汎用産業用ロボット、例えば、ガントリ構造体(直交座標形機構ともいう)で構成してもよいし、多関節ロボット(シリアル多関節機構ともいう)で構成してもよい。ハンドリングロボット80は、ATLヘッド20を少なくともXYZ軸方向に並進運動可能な機構(3自由度)を備えているものが好ましい。ハンドリングロボット80の動作制御は、ロボット制御部80aにより実行される。
【0026】
ATLヘッド20は、押圧部30と、エンド部40と、パラレルリンク機構50と、ベース部60とを含んで構成されている。
【0027】
押圧部30は、後述のフィーダー70によって搬送されたテープ1をワーク2の被貼付面2aとの間に挟持、押圧しつつテープ1を被貼付面2aに貼り付けるものである。
【0028】
エンド部40は、押圧部30を保持するとともにパラレルリンク機構50に取り付けられる平板であり、エンド部40のパラレルリンク機構50が取り付けられる面とは反対側の面に押圧部30が取り付けられている。また、エンド部40のパラレルリンク機構50が取り付けられる面には、後述の回動動作部90が配設されている。
【0029】
パラレルリンク機構50は、エンド部40を変位させ、押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aに倣うように動作するものである。
【0030】
ベース部60は、パラレルリンク機構50のエンド部40側とは反対側を保持するものであり、ベース部60にハンドリングロボット80が取り付けられている。
【0031】
押圧部30は、テープ1を押圧するローラ31を有し、さらにローラ31を回転軸31a周りに回転可能に支持するローラ支持部32を備えている。ローラ支持部32は、ローラ31の長手(回転軸31a)方向両側に配設されている。
【0032】
ローラ31は、テープ1の特性、又はワーク2の材質などに応じて、樹脂製ローラ、弾性ローラ、又は金属性ローラなどで構成され得る。ローラ31のサイズ(直径、幅)は、使用するテープ1の種類やサイズ、ワーク2の種類や形状に応じて適宜選択され得る。なお、別の構成例では、ローラ31に代えて、押圧シュー等の押圧部材が用いられてもよい。
【0033】
パラレルリンク機構50は、所定の間隔をもってベース部60とエンド部40との間に並列に設けられる複数のリンク部51を備えている。これらリンク部51が各々伸縮することにより、ベース部60に対するエンド部40の位置が変化する。これにより、エンド部40に保持された押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢が変化する。
【0034】
これら各リンク部51は、両端に自在継手52、53と、これら自在継手52、53の間に設けられるアクチュエータとしてのエアシリンダ54とを含んで構成されている。リンク部51の本数は特に限定されない。例えば、リンク部51は4本で構成されてもよいし、3本~6本で構成されてもよい。
【0035】
エアシリンダ54は、例えば、シリンダ部54aと、シリンダ部54a内の圧力に応じて進退するロッド部54bと、シリンダ部54a内の圧力を検出する圧力センサ54cと、ロッド部54bの変位を検出するエンコーダ55とを備えている。また、シリンダ部54aおよびロッド部54bは、ロッド部54bが軸方向に回転することが無いように(直動動作のみが行われるように)するためにリニアガイド56により支持されている。エンコーダ55はこのリニアガイド56の先端部56aとエンコーダ55との距離を測定することにより、ロッド部54bの変位を検出する。すなわち、リンク部51の伸縮度を確認する。
【0036】
ここで、本説明では
図1(a)、(b)にハッチングで示す上記複数のリンク部51によって形成される(囲まれる)上下逆向きの四角錐台状の領域のことを内部領域Rと呼ぶ。そして、本発明では各リンク部51の動作に供するためにリンク部51に接続される機器である上記エンコーダ55、リニアガイド56、配管57、および図示しない配線は、
図1(a)、(b)に示すように内部領域Rの外側に設けられている。また、各リンク部51から延びる配管57、配線は、内部領域Rを通らないように図示しないケーブルダクトにまとめられた上でハンドリングロボット80の方へ引き回され、下記のサーボバルブ54eやATLヘッド制御部54gへ接続される。
【0037】
エアシリンダ54のシリンダ部54aは、圧力センサ54cを介して配管57によってサーボバルブ54eに接続されている。サーボバルブ54eは、シリンダ部54a内への空気の流入量や排気量を調整し、シリンダ部54aの両室の差圧を制御する。サーボバルブ54eは、コンプレッサなどの圧縮した空気を出力する空気圧供給部54fに接続されている。圧力センサ54cで検出された圧力信号と、エンコーダ55で検出された変位信号とは、それぞれATLヘッド制御部54gに出力される。
【0038】
ATLヘッド制御部54gには、ワーク2の被貼付面2aの3次元座標データの他、これら3次元座標データ、圧力信号、変位信号などに基づいてATLヘッド20各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。ATLヘッド制御部54gは、汎用のコンピューター装置で構成されてもよい。また、ATLヘッド制御部54gとロボット制御部80aとが1つの制御部で構成されてもよい。
【0039】
パラレルリンク機構50は、複数のリンク部51の各々の長さをエアシリンダ54でそれぞれ制御することにより、エンド部40の位置(並進)及び/又は姿勢(回転)を変化させて、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させる機能を備えている。
【0040】
なお、パラレルリンク機構50には、エンド部40を変位させることにより、ローラ31を少なくともロール(θy)方向、及びピッチ(θx)方向に回動可能な自由度を有するものを採用することが好ましい。また、パラレルリンク機構50の自由度は、ハンドリングロボット80の動作機能(自由度)を考慮して設定してもよい。また、ハンドリングロボット80の動作機能に関わらずに、パラレルリンク機構50が、6自由度機構、すなわち、6方向(並進3方向、回転3方向)に運動させる機構を備えてもよい。
【0041】
ATLヘッド制御部54gは、各エアシリンダ54の圧力センサ54cやエンコーダ55から取り込んだ検出信号を用いて、各エアシリンダ54のサーボバルブ54eの動作(加圧動作又は減圧動作)を制御する。そして、ATLヘッド制御部54gは、サーボバルブ54eの動作制御により、各エアシリンダ54のシリンダ部54a内の圧力及び/又はロッド部54bの変位を制御して、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が被貼付面2aの形状に倣うようにエンド部40の変位を制御する処理を実行する。
【0042】
ATLヘッド制御部54gは、エンド部40の変位制御において、望ましいコンプライアンス特性を得る観点からインピーダンス制御を行うように構成されていることが好ましい。前記インピーダンス制御では、エンド部40に慣性、粘性、剛性からなる機械的インピーダンスを仮想的に実現させるようアクチュエータ推力が制御される。例えば、前記インピーダンス制御では、目標インピーダンスである慣性、粘性、剛性のパラメータが設定される。そして、エンド部40の位置及び姿勢の目標値に対するエンド部40の変位を計測し、エンド部40の変位とエンド部40が外部へ与える力との関係が所定の関係(インピーダンス制御則)を満たすようにパラレルリンク機構50の動作を制御する。
【0043】
また、ATLヘッド制御部54gは、エンド部40の変位を制御する際に、目標とするエンド部40の位置及び姿勢を実現するための各エアシリンダ54のロッド部54bの長さ(変位)を計算する。そして、これら計算値が各エアシリンダ54のロッド部54bの長さの目標値として記憶される。ATLヘッド制御部54gは、これら記憶された目標値と、貼付動作時における各エアシリンダ54のエンコーダ55の出力値とを比較して、目標値になるようにフィードバック制御が行ってもよい。なお、前記目標値には、ワーク2の形状誤差が加味された、各エアシリンダ54のロッド部54bの長さが設定されてもよい。また、目標とするエンド部40の位置及び姿勢は、ワーク2の3次元座標データに基づく動作軌跡に対し、直交する方向(法線方向)からローラ31で被貼付面2aを押圧するためのエンド部40の位置及び姿勢である。
【0044】
フィーダー70は、本説明ではテープ搬送部とも呼び、たとえば、1組の搬送ローラ対71を有し、この搬送ローラ対71がテープ1を挟持した状態において図示しないモータの動力により搬送ローラ対71が回転駆動することにより、テープ1を搬送する。
【0045】
また、本実施形態ではフィーダー70はリール73を有しており、テープ1はリール73の内部に巻き回されて保管されている。そして搬送ローラ対71が動作することにより、テープ1はリール73から巻き出されながら押圧部30に向かって搬送される。
【0046】
フィーダー70は、ブラケット72に固定されている。そしてブラケット72は、押圧ローラ31の回転中心とブラケット72の回動中心とが一致するように配設されている。ブラケット72は、押圧ローラ31の回転軸31aに回動可能に取り付けられてもよいし、ローラ支持部32に回動可能に取り付けられてもよい。このようにブラケット72が回動可能に取り付けられており、ブラケット72がピッチ(θx)方向に回動動作することによって押圧部30へのテープ1の進入角度が変化する。これにより、被貼付面2aが傾斜を有する場合であっても被貼付面2aに対してテープ1を一定の角度で搬送するように調節することができる。
【0047】
また、ブラケット72には、回動動作部90と連結するための回動継手93bが設けられている。
【0048】
回動動作部90は、エンド部40上にベース部60に向けて立設されるエアシリンダ91と、エアシリンダ91により上下方向に直動される直動部材92と、直動部材92とブラケット72との間に、両端が回動継手93a、93bを介して回動可能に取り付けられるリンクアーム94とを備えている。回動動作部90は、エアシリンダ91による直動部材92の直線動作がリンクアーム94を介してブラケット72のピッチ(θx)方向の回動動作に変換されるように構成されている。なお、この回動動作部90は
図1(a)に示すように内部領域R内に設けられている。また、この回動動作部90はフィーダー70全体を回動させるものであり、本説明ではテープ1を搬送するためにフィーダー70に接続されている機器とは考えない。
【0049】
エアシリンダ91は、空気が供給されるシリンダ部と、シリンダ部内の圧力に応じて進退するロッド部と、シリンダ部内の圧力を検出する圧力センサと、ロッド部の変位を検出する変位センサとを備えている。エアシリンダ91は、エンド部40の中央部付近から、テープ1が送り込まれてくる側とは反対側の斜め上方に向けて配設されている。
【0050】
エアシリンダ91におけるシリンダ部は、圧力センサを介して図示しないサーボバルブに接続されている。サーボバルブは、シリンダ部内への空気の流入量や排気量を調整し、シリンダ部の両室の差圧を制御する。サーボバルブは、コンプレッサなどの圧縮した空気を出力する空気圧供給部に接続されている。
【0051】
エアシリンダ91における変位センサは、ロッド部の変位量を測定できるものであればよく、例えば、磁気式又は光学式のリニアエンコーダでもよいし、ポテンショメーターなどでもよい。圧力センサで検出された圧力信号と変位センサで検出された変位信号は、それぞれATLヘッド制御部54gに出力される。
【0052】
このようにエンド部40に設けられた回動動作部90がフィーダー70を吊持してフィーダー70の角度を調節する形態であることによって、前述の通り被貼付面2aに対してテープ1を一定の角度で搬送するように調節することができるとともに、フィーダー70が横方向に張り出した状態であってもATLヘッド20の重量の偏りが軽減され、ATLヘッド20全体の重量バランスの向上を図ることができる。このようにATLヘッド20の重量バランスが向上されることにより、パラレルリンク機構50により押圧部30を被貼付面2aの形状に倣うように動作させる制御の応答性を高めることができ、被貼付面2aに対するテープ1の貼付性能をさらに高めることができる。
【0053】
次に、
図1に示す実施形態のテープ貼付装置においてテープの押圧姿勢を変化させた状態を
図2に示す。
【0054】
ATL装置10では、上記の通りパラレルリンク機構50によってエンド部40を変位させ、押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aに倣うように動作させる。具体的には、被貼付面2aの傾きに応じて(本実施形態では
図2に示すように被貼付面2aとエンド部40が平行となるように)パラレルリンク機構50がエンド部40の傾きを調節し、押圧部30の特定の位置がテープ1もしくは被貼付面2aと当接するようにすることで、正確な押圧姿勢で押圧部30にテープ1を押圧させる。
【0055】
なお、この特定の位置とは、本実施形態では押圧部30のローラ31におけるエンド部40からもっとも遠い位置であり、本説明ではその位置をTool-Center-Point(TCP)と呼ぶ。このTCPにおいてローラ31がテープ1もしくは被貼付面2aと当接する状態において、パラレルリンク機構50がエンド部40をエンド部40の厚さ方向(
図1(a)におけるZ軸方向)に変位させるように動作することにより、ローラ31はテープ1もしくは被貼付面2aを法線方向に押圧する。なお、
図2はピッチ(θx)方向にエンド部40が傾いた例である。
【0056】
なお、このようにエンド部40の傾きが調節されて押圧部30の押圧姿勢が変化することにより、パラレルリンク機構50とフィーダー70の相対位置も変化する。
【0057】
図3は、
図2のようにATLヘッド20において押圧姿勢が変化し、さらに回動動作部90の動作によりフィーダー70が回動してテープ1の進入角度も変化した状態を示す図であり、
図3(a)は正面図、
図3(b)は右側面図である。
【0058】
図3(a)に示すようにエンド部40がピッチ(θx)方向において反時計回りに回動し、さらにフィーダー70もピッチ(θx)方向において反時計回りに回動した場合、パラレルリンク機構50とフィーダー70とが接近してフィーダー70の一部(リール73)が2つのリンク部51の間に入り込む状態となりうる。この場合に
図3(b)に示すようにエンド部40がロール(θy)方向に回動すれば、リール73が一方のリンク部51に接近する。
【0059】
ここで、本発明では前述の通り各リンク部51の動作に供する機器であるエンコーダ55、リニアガイド56、配管57、および図示しない配線は、内部領域Rの外側に設けられている。そのため、エンド部40がロール(θy)方向に回動するのにともなってリール73がリンク部51に接近する際に、上記機器とリール73とが干渉することが回避される。そのため、エンド部40のロール(θy)方向の回動範囲を比較的広く設定することができる。また、エンド部40のロール(θy)方向の回動範囲が各リンク部51と干渉しない程度に設定されていれば、フィーダー70の一部が2つのリンク部51の間に入り込んでもATLヘッド20において干渉が生じることを防ぐことができるため、エンド部40のピッチ(θx)方向の回動範囲も比較的広く設定することができる。
【0060】
ここで、この場合、特に
図3(a)に示す右側のリンク部51や
図3(b)に示す2つのリンク部51のように、パラレルリンク機構50を形成する複数のリンク部51のうち比較的フィーダー70の近くに位置するリンク部51、すなわちエンド部40や回動動作部90の動作次第でフィーダー70が近接しうるリンク部51に関しては、
図3(b)に示すように各リンク部51に接続される機器等は、リンク部51においてフィーダー70からパラレルリンク機構50を正面視した際の側方(X軸方向)かつフィーダー70から離れている側、すなわち外向きになるよう設けられていることが好ましい。たとえ内部領域Rの外側であっても仮に内向きもしくはフィーダー70と対向する方向に機器等が接続されている場合、内部領域Rの外側の領域においてフィーダー70と機器等とが干渉する可能性がある。これに対し、本実施形態の通り外向きになるようリンク部51に接続されていることにより、パラレルリンク機構50や回動動作部90の動作によってパラレルリンク機構50とフィーダー70との相対位置が変化した場合であってもリンク部51に接続される機器等とフィーダー70との干渉が生じることを防ぐことができる。
【0061】
また、本実施形態において、図中の配線74が示すように、たとえば搬送ローラ対71を回転させるモータの配線などテープ搬送部(フィーダー70)におけるテープ1の搬送に供する機器および配線も、内部領域Rの外側に設けられることが好ましい。このとき、ケーブルダクトなどが用いられても良い。これにより、パラレルリンク機構50が動作することによってテープ1の搬送に供する機器および配線と各リンク部51およびその動作に供する機器等とで干渉が生じることも防ぐことができる。
【0062】
次に、本発明の他の実施形態におけるテープ貼付装置を
図4にて説明する。
【0063】
本実施形態ではテープ1はあらかじめ所定の長さに裁断された短冊状の形状を有し、搬送ローラ対71によってそのテープ1を保持しながら押圧部30に向けてテープ1を搬送する。本実施形態では、先の実施形態と異なりリール73を有していない。そのため、先の実施形態と比較してフィーダー70が2つのリンク部51の間に入り込む可能性が低くなっており、ATLヘッド20において干渉が生じることがさらに抑えられる。
【0064】
また、本実施形態においても、テープ搬送部(フィーダー70)におけるテープ1の搬送に供する機器および配線も内部領域Rの外側に設けられることが好ましい。
【0065】
以上のテープ貼付装置により、パラレルリンク機構の動作範囲を広くとることが可能である。
【0066】
ここで、本発明のテープ貼付装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、押圧部に搬送される前にテープのタック性を向上させるためのヒータ部がATLヘッドに設けられていても良い。
【0067】
また、内部領域R内には可能な限り機器、配線が設けられないことが好ましく、たとえば上記ヒータ部の動作に供する配線など、リンク部51以外の動作に供する機器、配線も内部領域Rの外側に設けられていることが好ましい。
【0068】
また、以上の説明では、パラレルリンク機構50は複数のエアシリンダ54により構成されているが、エアシリンダに限らず、たとえば油圧シリンダなどエア以外の流体を用いたシリンダであっても良く、また、電動シリンダであっても良い。
【0069】
また、以上の説明では回動動作部90がフィーダー70を吊持しているが、回動動作部90が設けられていない形態であっても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 テープ
2 ワーク
2a 被貼付面
10 ATL装置
20 ATLヘッド
30 押圧部
31 ローラ
31a 回転軸
32 ローラ支持部
40 エンド部
50 パラレルリンク機構
51 リンク部
52 自在継手
53 自在継手
54 エアシリンダ
54a シリンダ部
54b ロッド部
54c 圧力センサ
54e サーボバルブ
54f 空気圧供給部
54g ATLヘッド制御部
55 エンコーダ
56 リニアガイド
56a 先端部
57 配管
60 ベース部
70 フィーダー
71 搬送ローラ対
72 ブラケット
73 リール
74 配線
80 ハンドリングロボット
90 回動動作部
91 エアシリンダ
92 直動部材
93a 回動継手
93b 回動継手
94 リンクアーム
110 ATL装置
120 ATLヘッド
130 押圧部
140 エンド部
150 パラレルリンク機構
151 リンク部
154 直動シリンダ
155 エンコーダ
156 リニアガイド
160 ベース部
170 フィーダー
173 リール
190 回動動作部
R 内部領域