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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040943
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】水性組成物および印刷物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240318BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20240318BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20240318BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20240318BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/5313
C09D4/00
C09D11/101
C09D5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145615
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】川上 剛史
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4J002BB021
4J002BB111
4J002BC021
4J002BF021
4J002BG011
4J002CF001
4J002CG001
4J002CK021
4J002EP026
4J002EP036
4J002EW137
4J002FD098
4J002FD146
4J002FD157
4J002GH00
4J002HA07
4J038FA091
4J038KA08
4J038MA10
4J038NA10
4J038NA27
4J038PA17
4J038PC08
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE27
4J039CA06
4J039EA05
4J039FA02
(57)【要約】
【課題】基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい水性組成物および印刷物を提供する。
【解決手段】水性組成物は、少なくとも光重合開始剤と、重合性化合物と、樹脂成分と、水と、を含む。上記光重合開始剤は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、350nm以上400nm以下の範囲内に吸収波長ピークを有している。上記重合性化合物は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、重合反応性官能基を複数有している。上記樹脂成分が上記水に分散したエマルジョンの状態である水性組成物。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光重合開始剤と、重合性化合物と、樹脂成分と、水と、を含む水性組成物であって、
上記光重合開始剤は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、350nm以上400nm以下の範囲内に吸収波長ピークを有しており、
上記重合性化合物は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、重合反応性官能基を複数有しており、
上記樹脂成分が上記水に分散したエマルジョンの状態である水性組成物。
【請求項2】
上記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
非浸透性基材、並びに、塗膜層及び/又は印刷層をこの順に有する積層体から、塗膜層及び/又は印刷層を剥離させて、非浸透性基材をリサイクルするための塗膜層又は印刷層を非浸透性基材に形成することに用いられる水性組成物であって、
少なくとも光重合開始剤と、重合性化合物と、樹脂成分と、水と、を含み、
上記光重合開始剤は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、
上記重合性化合物は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、重合反応性官能基を複数有しており、
上記樹脂成分が上記水に分散したエマルジョンの状態である水性組成物。
【請求項4】
上記重合性化合物は、水性組成物に1.0wt%以上40wt%以下の範囲内で含まれている請求項1から3のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項5】
上記重合性化合物は、水性組成物に2.5wt%以上40wt%以下の範囲内で含まれている請求項1から3のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項6】
上記光重合開始剤及び上記重合性化合物は、乾燥によって基材に定着した上記樹脂成分を紫外線の照射によって剥離可能にするためのものである請求項1から3のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項7】
上記基材は、非浸透性基材である請求項6に記載の水性組成物。
【請求項8】
色材を含む請求項1から3のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項9】
非浸透性基材と、
請求項1から3のいずれかに記載の水性組成物の樹脂成分が上記非浸透性基材に定着した塗膜層と、上記塗膜層の上記非浸透性基材とは反対側の表面に形成されており、印刷画像を形成する印刷層と、を有する印刷物。
【請求項10】
非浸透性基材と、
印刷画像を形成しており、請求項1から3のいずれかに記載の水性組成物の樹脂成分が上記非浸透性基材に定着した印刷層と、を有する印刷物。
【請求項11】
請求項1から3のいずれかに記載の水性組成物による剥離可能な層を基材に形成する層形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材から塗膜層が剥離可能な水性組成物および印刷物、並びに水性組成物の層を基材に形成する層形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりによりリサイクルが注目されている。印刷分野ではパッケージ等に印刷が施された商品の使用後に、パッケージ等からインクを取り除き、パッケージ等を構成する基材をリサイクルする必要性が叫ばれている。一例として、プラスチックを使用したパッケージ又はプラスチックボトル等のプラスチック製品は海洋における環境汚染問題となっている。例えば、プラスチックは自然界で分解しにくいことから、一部は分別・回収されており、リサイクルされている。しかしながら、印刷等が施されたプラスチック製品がリサイクル過程において混入すると、リサイクル品が着色されることから、再利用できないケースが存在する。このような印刷等が施されたプラスチック製品は、再利用されず廃棄されることがある。廃棄されたプラスチック製品が最終的に海洋に行き着いた場合、プラスチック製品は海水中で分解されてマイクロプラスチックとなる。魚類などの海洋生物がマイクロプラスチックを摂取すれば、海洋生物の体内中で濃縮される。このとき、人間がこのような海洋生物を食料として摂取すると、人間の健康にも影響することが懸念される。このような問題はプラスチックに限らず、印刷が施される他の素材の基材に対しても言える問題と考えられる。
【0003】
印刷等が施された基材をリサイクルする観点から、基材から印刷物を除去する方法が従来から検討されている。例えば、特許文献1の記録媒体形成方法は、透明な記録媒体の表面に、紫外線硬化型の成分を含有する粘着剤層と基材層とからなる除去可能な膜を形成する工程と、除去可能な膜の基材層の表面上に画像を形成する工程と、を備える。上記記録媒体形成方法では、作業者は、透明な記録媒体を再利用する際に、除去可能な膜に紫外線を照射して除去可能な膜を硬化させることにより、除去可能な膜の透明な記録媒体への密着力を低下させて、除去可能な膜を透明な記録媒体から除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-98648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記記録媒体形成方法では、除去可能な粘着剤層を利用し、基材を介して印刷層を透明な記録媒体へ定着させている。しかし、除去可能な粘着剤層を構成する組成物は、油系成分で構成されており、粘着剤層形成時に油系成分が揮発することによって、油系成分が作業者に暴露するリスクや環境に悪影響を及ぼすリスクがある。一方で、上記記録媒体形成方法は、油系成分以外の組成物を用いた基材への定着とリサイクル時の膜除去とを両立させるものではない。そのため、基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクを抑制することができなかった。
【0006】
本発明の目的は、基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい水性組成物および印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る水性組成物は、少なくとも光重合開始剤と、重合性化合物と、樹脂成分と、水と、を含む水性組成物である。上記光重合開始剤は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、350nm以上400nm以下の範囲内に吸収波長ピークを有している。上記重合性化合物は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、重合反応性官能基を複数有している。上記樹脂成分が上記水に分散したエマルジョンの状態である。
【0008】
本発明によれば、水性組成物の樹脂成分が基材に定着することによって光重合開始剤及び重合性化合物が含まれる膜が基材に形成される。水性組成物は、樹脂成分が水に分散したエマルジョンの状態であるので、樹脂成分が基材に均一に定着しやすい。水性組成物は、光重合開始剤及び重合性化合物が1wt%以上水に溶解した状態であるので、人や環境へのリスクが小さい。また、光重合開始剤は、350nm以上400nm以下の範囲に吸収波長ピークを有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線が照射されることにより、重合性化合物を重合反応させることができる。重合性化合物は、重合反応性官能基を複数有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線であっても、重合反応を容易に起こすことができる。その結果、膜が硬化して膜の基材への密着力が低下するので、膜が基材から剥離可能になる。このため、作業者は、基材から膜を剥離させて基材を再利用することができる。以上から、基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい水性組成物を提供することができる。
【0009】
(2)上記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系であってもよい。
【0010】
光重合開始剤は、重合性化合物をより確実に重合反応させることができる。
【0011】
(3)本発明に係る水性組成物は、非浸透性基材、並びに、塗膜層及び/又は印刷層をこの順に有する積層体から、塗膜層及び/又は印刷層を剥離させて、非浸透性基材をリサイクルするための塗膜層又は印刷層を非浸透性基材に形成することに用いられる。上記水性組成物は、少なくとも光重合開始剤と、重合性化合物と、樹脂成分と、水と、を含む。上記光重合開始剤は、上記水への溶解度が1wt%以上のものである。上記重合性化合物は、上記水への溶解度が1wt%以上のものであって、重合反応性官能基を複数有している。上記水性組成物は、上記樹脂成分が上記水に分散したエマルジョンの状態である。
【0012】
本発明によれば、水性組成物の樹脂成分が非浸透性基材に定着することによって光重合開始剤及び重合性化合物が含まれる塗膜層又は印刷層が非浸透性基材に形成される。水性組成物は、樹脂成分が水に分散したエマルジョンの状態であるので、樹脂成分が非浸透性基材に均一に定着しやすい。水性組成物は、光重合開始剤及び重合性化合物が1wt%以上水に溶解した状態であるので、人や環境へのリスクが小さい。水性組成物は、非浸透性基材をリサイクルするための塗膜層又は印刷層を非浸透性基材に形成することに用いられる。重合性化合物は、重合反応性官能基を複数有するので、重合反応を容易に起こすことができる。その結果、塗膜層又は印刷層が硬化して塗膜層又は印刷層の非浸透性基材への密着力が低下するので、塗膜層又は印刷層が非浸透性基材から剥離可能になる。このため、作業者は、非浸透性基材から塗膜層又は印刷層を剥離させて非浸透性基材を再利用することができる。以上から、非浸透性基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい水性組成物を提供することができる。
【0013】
(4)上記重合性化合物は、水性組成物に1wt%以上40wt%以下の範囲内で含まれていてもよい。
【0014】
重合反応性官能基を複数有する重合性化合物が水性組成物に1wt%以上含まれているので、重合性化合物の重合反応が促進される。このため、基材からの膜除去性が向上する。重合性化合物が水性組成物に40wt%以下含まれているので、水性組成物中での重合性化合物の安定性が高くなり、重合性化合物の溶解性を維持することができる。
【0015】
(5)上記重合性化合物は、水性組成物に2.5wt%以上40wt%以下の範囲内で含まれていてもよい。
【0016】
重合性化合物が水性組成物中に2.5wt%以上含まれているので、重合性化合物の重合反応がより促進される。このため、基材からの膜除去性が向上する。重合性化合物が水性組成物に40wt%以下含まれているので、水性組成物中での重合性化合物の安定性が高くなり、重合性化合物の溶解性を維持することができる。
【0017】
(6)上記光重合開始剤及び上記重合性化合物は、乾燥によって基材に定着した樹脂成分を紫外線の照射によって剥離可能にするためのものであってもよい。
【0018】
作業者は、乾燥によって樹脂成分の基材への密着力を向上させることができる一方、紫外線の照射によって樹脂成分を基材から剥離させて基材を再利用することができる。
【0019】
(7)上記基材は、非浸透性基材であってもよい。
【0020】
基材に定着された水性組成物の基材への浸透を抑制できるので、その後のリサイクル過程において、水性組成物の基材への定着によって形成された印刷物に紫外線を照射することで容易に水性組成物を除去することができる。
【0021】
(8)上記水性組成物は、色材を含んでもよい。
【0022】
基材に色を付加することができる。
【0023】
(9)本発明に係る印刷物は、非浸透性基材と、上記水性組成物の樹脂成分が上記非浸透性基材に定着した塗膜層と、上記塗膜層の上記非浸透性基材とは反対側の表面に形成されており、印刷画像を形成する印刷層と、を有する。
【0024】
本発明によれば、水性組成物の樹脂成分が基材に定着することによって光重合開始剤及び重合性化合物が含まれる塗膜層が非浸透性基材に形成される。上記印刷物は、樹脂成分が水に分散したエマルジョンの状態の水性組成物によって形成されるので、樹脂成分が非浸透性基材に均一に定着しやすい。上記印刷物は、光重合開始剤及び重合性化合物が1wt%以上水に溶解した状態の水性組成物によって形成されるので、人や環境へのリスクが小さい。また、塗膜層中に含まれる光重合開始剤は、350nm以上400nm以下の範囲に吸収波長ピークを有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線が照射されることにより、重合性化合物を重合反応させることができる。重合性化合物は、重合反応性官能基を複数有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線であっても、重合反応を容易に起こすことができる。その結果、塗膜層が硬化して塗膜層の基材への密着力が低下するので、塗膜層が非浸透性基材から剥離可能になる。このため、作業者は、非浸透性基材から塗膜層を剥離させることによって印刷層を非浸透性基材から除去することができるので、非浸透性基材を再利用することができる。以上から、非浸透性基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい印刷物を提供することができる。
【0025】
(10)本発明に係る印刷物は、非浸透性基材と、印刷画像を形成しており、上記水性組成物の樹脂成分が上記非浸透性基材に定着した印刷層と、を有する。
【0026】
本発明によれば、水性組成物の樹脂成分が基材に定着することによって光重合開始剤及び重合性化合物が含まれる印刷層が基材に形成される。上記印刷物は、光重合開始剤及び重合性化合物が1wt%以上水に溶解した状態の水性組成物によって形成されるので、人や環境へのリスクが小さい。上記印刷物は、樹脂成分が水に分散したエマルジョンの状態の水性組成物によって形成されるので、樹脂成分が非浸透性基材に均一に定着しやすい。また、光重合開始剤は、350nm以上400nm以下の範囲に吸収波長ピークを有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線が照射されることにより、重合性化合物を重合反応させることができる。重合性化合物は、重合反応性官能基を複数有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線であっても、重合反応を容易に起こすことができる。その結果、印刷層が硬化して印刷層の非浸透性基材への密着力が低下するので、印刷層が非浸透性基材から剥離可能になる。このため、作業者は、非浸透性基材から印刷層を剥離させることによって印刷層を非浸透性基材から除去することができるので、非浸透性基材を再利用することができる。以上から、非浸透性基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい印刷物を提供することができる。
【0027】
(11)本発明に係る層形成方法は、上記水性組成物による剥離可能な層を基材に形成する。
【0028】
本発明によれば、水性組成物の樹脂成分が基材に定着することによって光重合開始剤及び重合性化合物が含まれる層が基材に形成される。水性組成物は、樹脂成分が水に分散したエマルジョンの状態であるので、樹脂成分が基材に均一に定着しやすい。水性組成物は、光重合開始剤及び重合性化合物が1wt%以上水に溶解した状態であるので、人や環境へのリスクが小さい。重合性化合物は、重合反応性官能基を複数有するので、重合反応を容易に起こすことができる。光重合開始剤に紫外線が照射されると、水性組成物による層が硬化して層の基材への密着力が低下するので、層が基材から剥離可能になる。このため、作業者は、基材から層を剥離させて基材を再利用することができる。以上から、基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい水性組成物の層を基材に形成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、基材への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい水性組成物および印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る水性組成物が使用される画像記録装置10の簡略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る水性組成物によって形成された塗膜層7の模式図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る基材再生方法により紫外線が印刷物9に照射されることで塗膜層7とシート6との間の密着性が低下した状態になることを説明する図である。
図4図4は、本発明の変形例に係る印刷方法によって形成された塗膜層7及び色材層11の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0032】
[画像記録装置10の内部構成]
図1に示されるように、本発明に係る印刷方法及び印刷物製造方法に使用される画像記録装置10は、供給ロール23、複数の搬送軸26、ウェブクリーナ27、テンションコントロール28、記録ユニット29、ヒータ35、テンションコントロール36、及びリワインダ24を筐体(図示省略)内に備える。画像記録装置10は、シート6に画像を記録する。
【0033】
シート6は基材の一例である。シート6は、所定の寸法にカットされたシートである。シート6は、透明な非浸透性基材である。非浸透性基材は、水透過性が低い表面を有する基材である。具体的には、非浸透性基材は、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。また、「非浸透性又は低浸透性」とは、ASTM D570に準拠して測定された24時間での吸水率が0.5%未満であることを指してもよい。より詳細には、「非浸透性」とは、上記吸水率が0.2%未満であることを指し、「低浸透性」とは、上記吸水率が0.2%以上0.5%未満であることを指してもよい。なお、吸水率の単位である「%」は、質量基準である。透明な非浸透性基材としては、例えば、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等)などを挙げることができる。透明な非浸透性基材の形状は、フィルム状又は板状が好適である。なお、非浸透性基材は透明でなくてもよい。
【0034】
シート6は、浸透性基材であってもよい。この場合、シート6は、シートが円筒形状に巻かれたロールから引き出されるものであってもよいし、ファンフォールドタイプのものであってもよい。浸透性基材としては、例えば、普通紙やコート紙が挙げられる。「コート紙」とは、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙等のパルプを構成要素とした普通紙に、平滑性、白色度、光沢度等の向上を目的として、コート剤を塗布したものをいい、具体的には、上質コート紙、中質コート紙等が挙げられる。
【0035】
供給ロール23は筐体の下部に位置する。供給ロール23にはシート6が巻回されている。供給ロール23に載置されたシート6に当接可能に給送ローラ25が配置されている。供給ロール23は、不図示のモータによって回転される。供給ロール23は、シート6を複数の搬送軸26に送り出す。
【0036】
複数の搬送軸26は、不図示のモータによって回転される。回転する複数の搬送軸26は、供給ロール23から送り出されたシート6を搬送する。
【0037】
ウェブクリーナ27は、シート6の搬送向きにおける、記録ユニット29の上流に位置している。ウェブクリーナ27は、ゴムローラ27A及び粘着ローラ27Bを備える。ウェブクリーナ27は、ゴムローラ27Aでシート6に付着したゴミを捕捉し、粘着ローラ27Bに転写することで、シート6を清掃する。
【0038】
テンションコントロール28は、シート6の搬送向きにおける、記録ユニット29の上流に位置している。テンションコントロール28は、シート6に付与するテンションを調整する。
【0039】
記録ユニット29は、印刷ヘッド34及び印刷ヘッド33を有する。印刷ヘッド34は、シート6の搬送向きにおけるテンションコントロール28の下流に位置している。印刷ヘッド34は、いわゆるシリアルヘッドであってもよいし、いわゆるラインヘッドであってもよい。印刷ヘッド34は、後述の水性組成物が流通する流路を内部に有する。当該流路は、チューブによって、タンクと連通されている。すなわち、チューブを通じて、タンクが貯留する水性組成物が印刷ヘッド34に供給される。印刷ヘッド33は、シート6の搬送向きにおける印刷ヘッド34の下流に位置している。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッドを備える。
【0040】
ヒータ35は、シート6の搬送向きにおける印刷ヘッド33の下流に位置する。ヒータ35は、所謂ハロゲンヒータである。ヒータ35は、赤外線を放射する発熱体であるハロゲンランプ、反射板、及び筐体を有する。筐体42の開口を通じて、ハロゲンランプや反射板からの熱が外部へ放射されたり、遮断されたりする。
【0041】
ヒータ35は、ヒータ35近傍を通過するシート6、またはシート6に付着した水性組成物の少なくとも一方を加熱する。本実施形態では、ヒータ35は、シート6及び水性組成物の双方を加熱する。水性組成物が加熱されることによって、水性組成物の後述の樹脂成分が軟化し、シート6上に膜を形成する。そして、ヒータ35近傍を通過したシート6及び樹脂成分が冷えることによって、樹脂成分が固化する。これにより、シート6に樹脂成分が定着される。なお、ヒータ35は、シート6又は水性組成物を加熱可能なものであれば、ハロゲンヒータに限らない。例えば、ヒータ35は、カーボンヒータ、ドライヤー、オーブン、ベルトコンベアオーブン等であってもよい。
【0042】
テンションコントロール36は、シート6の搬送向きにおける、ヒータ35の下流に位置している。テンションコントロール36は、シート6に付与するテンションを調整する。
【0043】
リワインダ24は、搬送路の最下流に位置する。リワインダ24は、複数の搬送軸26によって搬送されたシート6を巻き取る。
【0044】
[水性組成物の組成]
以下、水性組成物の詳細が説明される。水性組成物は、紫外線硬化剤、樹脂成分、色材、有機溶剤、界面活性剤及び水を含む。水性組成物は、紫外線硬化剤、樹脂成分、色材、及び有機溶剤が水に溶けた水性インクである。紫外線硬化剤は、光重合開始剤と重合性化合物とを含む。
【0045】
光重合開始剤は、紫外線の照射によって重合性化合物を重合反応させる水溶性の化合物である。光重合開始剤は、水への溶解度が1wt%以上のものである。溶解度は、25℃の水100gに光重合開始剤が溶解したグラム数から求められる。光重合開始剤は、350nm以上400nm以下の範囲内に吸収波長ピークを有する。吸収波長ピークは、例えば、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計UV3600を用いて測定することができる。吸収波長ピークの測定は、例えば、セル長10mmの測定セルを用いることができる。
【0046】
光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系のものが用いられる。アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤としては、例えば、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(吸収波長ピーク:380nm)が挙げられる。その他の光重合開始剤の例としては、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、アミノアルキルフェノン系開始剤、キサントン系開始剤、オキシム系開始剤等が挙げられる。例えば、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤の例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。アセトフェノン系開始剤の例としては、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン等が挙げられる。ベンゾフェノン系開始剤の例としては、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ジクロロベンゾフェン、p,p’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン等が挙げられる。ベンゾイン系開始剤及びベンゾインエーテル系開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等が挙げられる。インク全量における光重合開始剤の固形分含有量は、例えば、0.1wt%以上10.0wt%以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは0.5wt%以上5.0wt%以下の範囲内であり、特に好ましくは0.8wt%以上2.5wt%以下の範囲内である。
【0047】
重合性化合物は、紫外線が照射された光重合開始剤によって重合反応する水溶性の化合物である。重合性化合物は、水への溶解度が1wt%以上のものである。重合性化合物は、重合反応性官能基を複数有する。重合反応性官能基とは、重合可能な官能基をいう。重合反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基を挙げることができる。重合性化合物としては、例えば、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}、N,N’-(((2-アクリルアミド-2((3-(ブタ-1,3-ジエン-2-イラミノ)プロポキシ-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン-3,1-ジイル))ジアクリルアミド、N,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド、N,N’-{オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ-3,1-プロパンジイル)}ビスアクリルアミドが挙げられる。インク全量における重合性化合物の固形分含有量は、例えば、1.0wt%以上40.0wt%以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは2.5wt%以上40.0wt%以下の範囲内であり、特に好ましくは5.0wt%以上40wt%以下の範囲内である。重合性化合物が水性組成物に40wt%以下含まれていることにより、水性組成物中での重合性化合物の安定性が高くなり、重合性化合物の溶解性を維持することができる。
【0048】
樹脂成分としては、例えば、市販品を用いることができる。樹脂成分は、例えば、モノマーとして、スチレン、塩化ビニル等を含んでもよい。樹脂成分は、水性組成物中で溶解した状態であっても、樹脂粒子として分散したエマルジョンの状態であってもよい。また、これらの樹脂成分は1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂成分としては、例えば、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系エステル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、カーボネート型樹脂、ポリカーボネート型樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体樹脂等が挙げられる。
【0049】
樹脂成分としては、例えば、-30℃以上200℃以下の範囲内においてガラス転移温度(Tg)を有する樹脂が用いられる。より好ましくは、ガラス転移温度(Tg)は、-30℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは、-30℃以上150℃以下である。
【0050】
エマルジョンとしては、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)870」(Tg:71℃)、「スーパーフレックス(登録商標)150」(Tg:40℃)、ジャパンコーティングレジン(株)製の「モビニール(登録商標)6760」(Tg:0℃)、「モビニール(登録商標)6960」(Tg:-28℃)、「モビニール(登録商標)6901」(Tg:-16℃)、「モビニール(登録商標)6800」(Tg:80℃)、「モビニール(登録商標)DM774」(Tg:33℃)、第1工業製薬(株)製の「スーパーフレックス460」(Tg:-21℃)、昭和電工(株)製の「ポリゾール(登録商標)AP-3270N」(Tg:27℃)、星光PMC(株)製の「ハイロース-X(登録商標)KE-1062」(Tg:112℃)、「ハイロース-X(登録商標)QE-1042」(Tg:69℃)等が挙げられる。
【0051】
樹脂成分の平均粒子径は、例えば、30nm以上200nm以下の範囲内である。平均粒子径は、例えば、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB-550」を用いて、算術平均径として測定可能である。
【0052】
インク全量における樹脂成分の含有量(R)は、例えば、0.1wt%以上30wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは0.5wt%以上20wt%以下の範囲内であり、特に好ましくは1.0wt%以上15.0wt%以下の範囲内である。樹脂成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
色材は、例えば、顔料分散用樹脂(樹脂分散剤)によって、水に分散可能な顔料である。色材としては、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等が挙げられる。なお、色材は、省略されてもよい。
【0054】
インク全量における色材の固形分含有量は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度又は彩度等により、適宜決定できる。色材の固形分含有量は、例えば、0.1wt%以上20.0wt%以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは1.0wt%以上15.0wt%以下の範囲内である。色材の固形分含有量は、顔料のみの重量であり、樹脂成分の重量は含まない。色材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
有機溶剤は、溶剤と水とを1:1で混合した際に、均一に混ざり合う溶剤である。有機溶剤としては、特に限定はなく、任意のものが使用できる。有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,2-ブタンジオール、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、プロピレングリコール又は1,2-ブタンジオールが好ましい。その他の有機溶剤の例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1~4のアルキルアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2~6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテルなどのアルキレングリコール類の低級アルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0056】
インク全量における有機溶剤の含有量は、例えば、1wt%以上70wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは3wt%以上50wt%以下の範囲内である。
【0057】
水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。インク全量における水の含有量は、例えば、15wt%以上95wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは25wt%以上85wt%以下の範囲内である。水の含有量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0058】
水性組成物は、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防腐剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、ノズル乾燥防止剤、エマルジョンなどのポリマー成分、染料等が挙げらえる。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤を含んでもよい。ノニオン性界面活性剤は、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1010」、「オルフィン(登録商標)E1006」及び「オルフィン(登録商標)E1004」等があげられる。水性インク全量におけるノニオン性界面活性剤の配合量は、例えば、5重量%以下、3重量%以下、0.1重量%~2重量%である。粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
【0059】
水性組成物は、例えば、紫外線硬化剤と、樹脂成分と、色材と、有機溶剤と、水と、必要に応じて他の添加剤とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
【0060】
次に、画像記録装置10及び上記水性組成物を使用して印刷物9(図3参照)を製造する層形成方法について説明する。層形成方法では、塗布工程と乾燥工程とが順に行われる。以下では、図1図2が参照される。
【0061】
塗布工程では、水性組成物がシート6に吐出される。具体的には、塗布工程では、テンションコントロール28によってテンションが調整されたシート6の上面6aに向けて印刷ヘッド34から水性組成物が液滴として吐出される印刷工程が実行される。これにより、シート6の上面6aに水性組成物の層が形成される。なお、塗布工程では、水性組成物がシート6に塗布されてもよい。また、塗布工程の後に、水性組成物の層上に印刷インクが吐出される印刷工程がさらに実行されてもよい。この場合、印刷インクは、印刷ヘッド33から水性組成物の層上に吐出され、水性インクが印刷インクによる印刷の下地となる。印刷インクは、水性組成物の層上に画像を形成できれば、特に限定されない。
【0062】
塗布工程の後、乾燥工程が実行される。乾燥工程では、シート6に吐出された水性組成物が乾燥される。具体的には、乾燥工程では、ヒータ35の開口43の下方を通過するシート6及び水性組成物の双方がヒータ35の放射熱によって乾燥される。乾燥温度は、40℃から230℃の範囲である。より好ましくは、乾燥温度は、50℃から220℃の範囲である。特に好ましくは、乾燥温度は、50℃から150℃の範囲である。乾燥工程が実行されると、水性組成物の樹脂成分が軟化し、その後、シート6及び樹脂成分が冷えることによって、樹脂成分が固化する。その結果、図2に示されるように、樹脂成分からなる透明なクリア層と色材によって画像を形成する色材層とからなる塗膜層7(塗膜層、層および印刷層の一例)がシート6の上面6aに定着する。塗膜層7中には、紫外線硬化剤が含まれている。なお、乾燥工程は省略されてもよい。また、図2では、図示簡略化のためシート6を省略している。
【0063】
なお、塗布工程の後にさらに印刷工程が実行される場合、乾燥工程は、印刷工程後に実行されてもよく、塗布工程と印刷工程との間に実行されてもよく、塗布工程と印刷工程との間、および、印刷工程後の両方において実行されてもよい。例えば、印刷インクが乾燥工程を要しないものである場合、水性組成物の塗布または吐出後に乾燥工程を実行し、その後に印刷工程を実行するだけでもよい。一方、印刷インクが乾燥工程を要するものである場合、水性組成物の塗布または吐出後、印刷工程の実行後に乾燥工程を実行してもよいし、水性組成物の塗布または吐出後に乾燥工程を実行し、その後印刷工程を実行して、再度乾燥工程を実行してもよい。
【0064】
次に、製造された印刷物9(図3参照)から塗膜層7を剥離する基材再生方法について説明する。基材再生方法は、上記方法によって印刷物9が製造された後、シート6をリサイクルするときに行われる。基材再生方法では、照射工程が行われる。
【0065】
照射工程では、シート6の塗膜層7が形成された上面6aに紫外線が照射される。なお、シート6の上面6aとは反対の下面6bに紫外線が照射されてもよい。このようにすると、シート6の塗膜層7が形成される上面6aの劣化を抑制しつつ、塗膜層7中に存在する紫外線硬化剤によって塗膜層7を硬化させることができる。
【0066】
シート6の上面6aに照射される紫外線は、ピーク波長は、350nmから400nmの範囲のものである。図3に示されるように、紫外線照射装置の光源115から紫外線が塗膜層7に照射されると、塗膜層7に含まれる紫外線硬化剤の光重合開始剤によって重合性化合物が重合反応する。その結果、塗膜層7が硬化することによって塗膜層7とシート6との間の密着力が低下し、塗膜層7がシート6から容易に剥離する。
【0067】
紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ディープ紫外線ランプ、紫外線レーザ、キセノンランプ、UV-LED(紫外線発光ダイオード)等の光源を有するものが挙げられる。紫外線照射装置としては、消費電力の観点からUV-LEDの光源を有するものが好ましい。
【0068】
[実施形態の作用効果]
上記水性組成物では、樹脂成分からなる透明なクリア層と色材とからなる塗膜層7がシート6の上面6aに定着することによって形成される。塗膜層7中には、紫外線硬化剤(光重合開始剤及び重合性化合物)が含まれる。上記水性組成物は、樹脂成分が水に分散したエマルジョンの状態であるので、樹脂成分がシート6に均一に定着しやすい。上記水性組成物は、光重合開始剤及び重合性化合物が1wt%以上水に溶解した状態であるので、人や環境へのリスクが小さい。また、光重合開始剤は、350nm以上400nm以下の範囲に吸収波長ピークを有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線が照射されることにより、重合性化合物を重合反応させることができる。重合性化合物は、重合反応性官能基を複数有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線であっても、重合反応を容易に起こすことができる。その結果、塗膜層7が硬化して塗膜層7のシート6への密着力が低下するので、塗膜層7がシート6から剥離可能になる。このため、作業者は、シート6から塗膜層7を剥離させてシート6を再利用することができる。以上から、シート6への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい水性組成物を提供することができる。
【0069】
上記水性組成物では、光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系であるので、重合性化合物をより確実に重合反応させることができる。
【0070】
上記水性組成物では、重合反応性官能基を複数有する重合性化合物が水性組成物に1wt%以上含まれているので、重合性化合物の重合反応が促進される。このため、シート6からの塗膜層7の剥離性が向上する。重合性化合物が水性組成物に40wt%以下含まれているので、水性組成物中での重合性化合物の安定性が高くなり、重合性化合物の溶解性を維持することができる。
【0071】
上記水性組成物では、重合反応性官能基を複数有する重合性化合物が水性組成物に1wt%以上含まれているので、重合性化合物の重合反応が促進される。このため、シート6からの塗膜層7の剥離性が向上する。重合性化合物が水性組成物に40wt%以下含まれているので、水性組成物中での重合性化合物の安定性が高く、重合性化合物の溶解性が維持される。
【0072】
上記水性組成物では、光重合開始剤及び重合性化合物は、乾燥によってシート6に定着した樹脂成分を紫外線の照射によって剥離可能にするためのものである。このため、作業者は、乾燥によって樹脂成分のシート6への密着力を向上させることができる一方、紫外線の照射によって樹脂成分をシート6から剥離させてシート6を再利用することができる。
【0073】
上記水性組成物では、シート6は非浸透性基材であるので、シート6に定着される樹脂成分のシート6への浸透が抑制される。このため、シート6に樹脂成分が定着した塗膜層7を有する印刷物9のリサイクル過程において、当該印刷物9に紫外線を照射することで容易に塗膜層7をシート6から除去することができる。
【0074】
上記水性組成物は、色材を含むので、シート6に色を付加することができる。
【0075】
印刷物9では、樹脂成分からなる透明なクリア層と色材によって画像を形成する色材層とからなる塗膜層7がシート6の上面6aに定着することによって形成される。塗膜層7中には、紫外線硬化剤(光重合開始剤及び重合性化合物)が含まれる。印刷物9は、樹脂成分が水に分散したエマルジョンの状態の水性組成物から形成されているので、樹脂成分がシート6に均一に定着している。印刷物9は、光重合開始剤及び重合性化合物が1wt%以上水に溶解した状態の水性組成物によって形成されているので、人や環境へのリスクが小さい。塗膜層7中に含まれる光重合開始剤は、350nm以上400nm以下の範囲に吸収波長ピークを有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線が照射されることにより、重合性化合物を重合反応させることができる。重合性化合物は、重合反応性官能基を複数有するので、可視光に可及的に近い波長の紫外線であっても、重合反応を容易に起こすことができる。その結果、塗膜層7が硬化して塗膜層7のシート6への密着力が低下するので、塗膜層7がシート6から剥離可能になる。このため、作業者は、シート6から塗膜層7を剥離させることによって塗膜層7をシート6から除去することができるので、シート6を再利用することができる。以上から、シート6への定着性とリサイクル時の膜除去性とを両立しつつ、人や環境へのリスクが小さい印刷物9を提供することができる。
【0076】
[変形例]
上記水性組成物では、光重合開始剤としては、アシルフォスフィンオキサイド系のものが用いられたが、重合性化合物を重合反応させることができるものであれば、アシルフォスフィンオキサイド系のものに限定されない。例えば、光重合開始剤としては、イルガキュア2959(東京化成工業社製 吸収波長ピーク:274nm、330nm)が用いられてもよい。この場合、シート6の上面6aに照射される紫外線は、ピーク波長が、250nmから350nmの範囲のものが好ましい。
【0077】
上記水性組成物は、色材を含んだが、色材を省略してもよい。この場合、塗布工程によって色材を含まない透明なクリア層13(層および塗膜層の一例)がシート6の上面6aに形成される。そして、塗布工程の後に、クリア層13上に印刷インクが吐出される印刷工程が実行される。水性組成物は、印刷インクによる印刷の下地となる役割を果たす。印刷工程が実行されると、図4に示されるように、印刷インクに含まれる色材によって印刷画像を形成する色材層11(層および印刷層の一例)がクリア層13の上面13aに形成される。これにより、シート6、クリア層13および色材層11がこの順で積層された印刷物12(積層体の一例)が形成される。なお、図4では、図示簡略化のため、シート6を省略している。
【実施例0078】
以下、本発明の実施例が示される。
【0079】
(実施例1)
水性組成物としては、光重合開始剤として1.0wt%のフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(吸収波長ピーク:380nm)、重合性化合物として5.0wt%のN,N’1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}、樹脂成分として5.0wt%のモビニール6760、有機溶剤として10.0wt%のプロピレングリコール、及び溶媒であるイオン交換水を残部として含むものが用いられた。乾燥工程における乾燥温度は90℃とした。シート(基材)として、PETフィルムを用いた。
【0080】
(実施例2)
樹脂成分として、モビニール6760に代えて、5.0wt%のモビニール6960が含まれる点で実施例1と相違している。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0081】
(実施例3)
樹脂成分として、モビニール6760に代えて、5.0wt%のモビニール6901が含まれる点で実施例1と相違している。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0082】
(実施例4)
樹脂成分として、モビニール6760に代えて、5.0wt%のスーパーフレックス460が含まれる点で実施例1と相違している。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0083】
(実施例5)
樹脂成分として、モビニール6760に代えて、5.0wt%のモビニール6800が含まれる点で実施例1と相違している。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0084】
(実施例6)
ブラックインク(ブラザー工業社製 LC3139)が用いられる点で実施例1と相違している。実施例6では、水性組成物をシートに塗布する塗布工程の後、水性組成物の層上に印刷インクとしてブラックインクを塗布する印刷工程を実行した。なお、水性組成物としては、実施例1と同一のものが用いられた。
【0085】
(実施例7)
樹脂成分として、モビニール6760に代えて、5.0wt%のモビニール6960が含まれる点で実施例6と相違している。その他の条件は、実施例6と同一である。
【0086】
(実施例8)
重合性化合物として、N,N’1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}に代えて、5.0wt%のN,N’-(((2-アクリルアミド-2((3-(ブタ-1,3-ジエン-2-イラミノ)プロポキシ-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン-3,1-ジイル))ジアクリルアミドが含まれる点で実施例1と相違している。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0087】
(実施例9)
重合性化合物として、N,N’1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}に代えて、5.0wt%のN,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミドが含まれる点で実施例1と相違している。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0088】
(実施例10)
重合性化合物として、N,N’1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}に代えて、5.0wt%のN,N’-(((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(プロパン-3,1-ジイル))ジアクリルアミドが含まれる点で実施例1と相違している。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0089】
(実施例11)
重合性化合物として、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}が1.0wt%含まれる点、溶媒であるイオン交換水を残部として含む点で実施例1と相違している。その他の条件は、実施例1と同一である
【0090】
(実施例12)
重合性化合物として、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}が2.5wt%含まれる点、溶媒であるイオン交換水を残部として含む点で実施例11と相違している。その他の条件は、実施例11と同一である。
【0091】
(実施例13)
重合性化合物として、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}が10.0wt%含まれる点、溶媒であるイオン交換水を残部として含む点で実施例11と相違している。その他の条件は、実施例11と同一である。
(実施例14)
重合性化合物として、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}が40.0wt%含まれる点、溶媒であるイオン交換水を残部として含む点で実施例11と相違している。その他の条件は、実施例11と同一である。
【0092】
(実施例15)
色材として5.0wt%のカーボンブラック顔料分散液が水性組成物に更に含まれる点、及び界面活性剤として0.5wt%のオルフィンE1010が水性組成物に更に含まれる点で実施例11と相違している。イオン交換水は残部である。その他の条件は、実施例11と同一である。
【0093】
(実施例16)
重合性化合物として、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}が5.0wt%含まれる点、および界面活性剤が含まれない点で実施例15と相違している。イオン交換水は残部である。その他の条件は、実施例15と同一である。
【0094】
(実施例17)
重合性化合物として、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}が5.0wt%含まれる点で実施例15と相違している。イオン交換水は残部である。その他の条件は、実施例15と同一である。
【0095】
(比較例1)
樹脂成分が含まれていない点、及び有機溶剤としてプロピレングリコールが5.0wt%含む点で実施例1と相違している。イオン交換水は残部である。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0096】
(比較例2)
光重合開始剤および重合性化合物が含まれていない点で実施例1と相違している。イオン交換水は残部である。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0097】
(比較例3)
シートとして、印刷用普通紙(Askulマルチペーパースーパーホワイト+)を用いた点で実施例17と相違している。その他の条件は、実施例17と同一である。
【0098】
[印刷方法]
以下では、水性組成物を用いてシート6に形成した塗膜層7の定着性および剥離性を試験した。
【0099】
[定着性試験]
塗布工程においてシートの上面6aに50mg/cm2となるように水性組成物をスポイトで滴下し、乾燥工程においてシートの上面の水性組成物を90℃で3時間乾燥することにより、シートの上面に水性組成物による塗膜層7を形成した。シートの塗膜層7の表面に粘着テープを貼り付けて、粘着テープを塗膜層7から引き剥がす定着性試験を行った。シートとして、実施例1~17及び比較例1及び2では、PETフィルムを用いた。シートとして、比較例3では、印刷用普通紙(Askulマルチペーパースーパーホワイト+)を用いた。粘着テープとしては、セロハンテープ[セロテープ(登録商標)CT-12(ニチバン)]を用いた。塗膜層のシートに対する定着性は、以下の評価基準で評価された。
A:剥離しなかった
B:剥離した
【0100】
[剥離性試験]
照射工程において紫外線照射装置にてシートから100mm離して10秒間紫外線を照射した。紫外線照射装置としては、UV-LEDライト[印刷用UV-LEDシリーズ E075Z HC(ウシオ電機製)、395nm]を用いた。その後、下記の2条件にて剥離試験を行った。
条件1: 紫外線照射後のシートと塗膜層の表面に粘着テープを付着させ、粘着テープを塗膜層から剥離させた。
条件2: 紫外線照射後のシートおよび塗膜層を二つ折りにして元に戻した後、シートと塗膜層の表面に粘着テープを付着させ、粘着テープを塗膜層から剥離させた。
なお、条件2にて二つ折りにすることで塗膜層にクラックが入るため、剥離性を高めることができる。粘着テープとしては、セロハンテープ[セロテープ(登録商標)CT-12(ニチバン)]を用いた。塗膜層のシートに対する剥離性を、以下の評価基準で評価した。
A :条件1及び条件2のいずれでも剥離した
B :条件1では剥離せず、条件2で剥離した
C :条件1及び条件2のいずれでも剥離しなかった
【0101】
【表1】
【0102】
[定着性試験評価]
表1に示されるように、実施例1から実施例17、比較例2、及び比較例3では、いずれも、塗膜層がシートの上面から剥離しなかったので、Aの評価であった。これは、塗布工程においてシートに滴下された水性組成物が乾燥工程において90℃で乾燥された結果、水性組成物の樹脂成分の造膜がより進行しシートの上面と塗膜層との密着性が高まったためであると考えられる。なお、比較例1では、剥離したため、Bの評価であった。これは、樹脂成分が含まれておらず、シートの上面に塗膜層が形成されなかったためであると考えられる。
【0103】
[剥離性試験評価]
表1に示されるように、実施例1から実施例10、実施例12から実施例14、実施例16、および実施例17では、いずれも、条件1および条件2のいずれでも剥離したので、Aの評価であった。これは、光重合開始剤の吸収波長ピークが380nmであったので、光重合開始剤が十分に活性化でき、重合性化合物の重合反応が促進されたためであると考えられる。さらに、重合性化合物が2.5wt%以上あったので、重合性化合物の重合反応によって膜が十分に硬化し、塗膜層とシートとの間の密着性が十分に低下したためであると考えられる。
【0104】
実施例11及び実施例15では、いずれも、条件1では剥離せず、条件2で剥離したので、Bの評価であった。これは、重合性化合物が1wt%と少なかったため、重合性化合物の重合反応によって膜が十分に硬化せず、塗膜層とシートとの間の密着性が十分に低下しなかったためであると考えられる。
【0105】
比較例1では、樹脂成分が含まれておらず、シートの上面に塗膜層が形成されないので、剥離性の評価をNGとした。
【0106】
比較例2では、条件1および条件2のいずれでも剥離しなかったので、Cの評価であった。これは、紫外線硬化剤の光重合開始剤および重合性化合物が水性組成物に含まれていなかったので、膜が全く硬化せず、塗膜層とシートとの間の密着性が全く低下しなかったためと考えられる。
【0107】
比較例3では、条件1及び条件2のいずれでも剥離しなかったので、Cの評価であった。これは、シートが浸透性基材である印刷用普通紙であったので、水性組成物がシートへ浸透したためであると考えられる。
【0108】
以上より、水性組成物に樹脂成分が含まれていれば、定着性においてA以上の評価が得られることが分かる。一方、光重合開始剤の吸収波長ピークが380nm付近にあり、かつ、重合性化合物が1wt%以上ある場合、剥離性においてB以上の評価が得られることが分かる。さらに、重合性化合物が2.5wt%以上ある場合、剥離性においてA以上の評価が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0109】
6・・・シート(非浸透性基材の一例)
7・・・塗膜層(塗膜層、層および印刷層の一例)
9・・・印刷物(積層体の一例)
11・・・色材層(層および印刷層の一例)
12・・・印刷物(積層体の一例)
13・・・クリア層(塗膜層および層の一例)
13a・・・上面(表面の一例)
図1
図2
図3
図4