(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040944
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】引受支援システム、引受支援方法、引受支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/08 20120101AFI20240318BHJP
【FI】
G06Q40/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145617
(22)【出願日】2022-09-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】516067520
【氏名又は名称】上田 真
(71)【出願人】
【識別番号】522364527
【氏名又は名称】伊藤 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100224719
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 隆治
(72)【発明者】
【氏名】上田 真
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB61
(57)【要約】
【課題】
保険申込時に含まれる誤記や虚偽の値を精度よくチェックしたうえで、保険引受の可否判断を支援する技術を提供することができる。
【解決手段】
保険申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、保険申請者により入力される第2健診データと、を取得する取得部と、前記第1健診データと前記第2健診データの項目が不一致であることを含む異常値を検出する検出部と、前記異常値が検出された項目を再取得し、申請データを生成する申請データ生成部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保険申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、前記保険申請者により入力される第2健診データと、を取得する取得部と、
前記第1健診データと前記第2健診データの項目が不一致であることを含む異常値を検出する検出部と、
前記異常値が検出された項目を再取得し、申請データを生成する申請データ生成部と、を備える、引受支援システム。
【請求項2】
前記申請データ生成部は、前記異常値が検出された項目に関して前記保険申請者により再入力された第2健診データに基づき前記申請データを生成する、請求項1に記載の引受支援システム。
【請求項3】
前記保険申請者の顔画像を登録する登録受付部を備え、
前記申請データ生成部は、撮像された前記保険申請者の顔画像を認証することで、前記第1健診データまたは前記第2健診データに基づく前記申請データを生成する、請求項1に記載の引受支援システム。
【請求項4】
健診データの項目別に正常値または異常値の範囲を設定した検出設定情報を受け付ける設定受付部を備え、
前記検出部は、前記検出設定情報に基づいて前記第1健診データおよび前記第2健診データの少なくとも一方の項目の異常値を検出する、請求項1に記載の引受支援システム。
【請求項5】
前記設定受付部は、健診データの複数の項目の値の組合せについて、異常値を設定した検出設定情報を更に受け付ける、請求項4に記載の引受支援システム。
【請求項6】
前記設定受付部は、利用者の過去の健診データと現在の健診データの間における時系列変化に相関関係を有する項目に関する異常値を設定した検出設定情報を更に受け付ける、請求項5に記載の引受支援システム。
【請求項7】
前記保険申請者の臨床データおよび健診データを入力データとし、査定結果を出力データとして機械学習された判定モデルに対して、前記申請データおよび臨床データを入力し、査定結果を出力する査定部を備える、請求項1に記載の引受支援システム。
【請求項8】
保険申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、前記保険申請者により入力される第2健診データを取得するステップと、
前記第1健診データと前記第2健診データの項目が不一致であることを含む異常値を検出するステップと、
前記異常値が検出された項目を再取得し、申請データを生成するステップと、をコンピュータが実行する引受支援方法。
【請求項9】
保険申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、前記保険申請者により入力される第2健診データを取得する取得部と、
前記第1健診データと前記第2健診データの項目が不一致であることを含む異常値を検出する検出部と、
前記異常値が検出された項目を再取得し、申請データを生成する申請データ生成部と、としてコンピュータを機能させる引受支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引受支援システム、引受支援方法および、引受支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保険契約時の引受査定業務において、保険業者は、被保険者の年齢、職業、更には健康状態をチェックして保険引受が可能であるか否か、また、適切な保険額はどの程度であるかを判断する必要があった。特に、健康状態のチェックでは、被保険者の健康診断書のデータ化やデータ真正性の確認、それらデータに基づく保険査定などの業務にコストを要することが課題であった。
【0003】
非特許文献1では、上述した課題に鑑みて、ハンディスキャナとイメージ伝送技術を活用し、健康診断書のデータ変換および入力を非定型OCR(Optical Character Recognition)技術により自動化すること、被保険者の疾病等に関する告知方式の改善と、当該告知方式により取り込んだ告知の内容と査定ルールデータベースを照合することで引受可否および契約条件を自動引受査定エンジンが判定すること、を開示している。
【0004】
また、特許文献1では、団体信用生命保険の申込手続をスムースに行うことのできるシステムであって、申込内容受付手段46は、申込者または受付者の申込内容を記録し、申込情報送信手段42は、申込内容および添付書類画像を、サーバ装置2に送信し、受付確認者端末装置6は、サーバ装置2にアクセスして、申込情報について不備があるか確認し、受付確認結果をサーバ装置2に送信し、サーバ装置2の受付確認結果受付手段26は、受付確認結果を受信し、記録部34に記録し、一時的アクセス設定手段28は、受付確認結果が「不備」であった場合、申込者が記録部34の申込情報に一時的にアクセス可能となるように、一時的アクセスキーを設定し、是正通知送信手段30は、申込者に対し、当該一時的アクセスキーを伴って、是正通知を送信し、申込者は是正一時的アクセスキーによって記録部34の申込情報にアクセスし、是正情報を送信する技術を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】伊藤 隆郎、川西 あゆみ、デジタルプラクティス Vol.10 No.3 “生命保険における引受査定業務の自動化・スピードアップ”
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1は、健康診断書のOCR技術により自動的にデータ化することができたものの、健康診断書のOCR技術によるデータ化は、健康診断書のフォーマットが多様であることやOCR精度の観点から誤った数値として検出される点に課題があった。
【0008】
特許文献1は、申込情報についての不備を確認する業務が自動化されていない点に改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、保険申込時に含まれる誤記や虚偽の値を、自動査定業務またはその前段階において精度よくチェックすることで業務効率を改善でき、保険引受の可否判断を支援する技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したような課題を解決するために、本発明は、前記保険申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、保険申請者により入力される第2健診データと、を取得する取得部と、前記第1健診データと前記第2健診データの項目が不一致であることを含む異常値を検出する検出部と、前記異常値が検出された項目を再取得し、申請データを生成する申請データ生成部と、を備える。
【0011】
また、本発明は、前記保険申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、保険申請者により入力される第2健診データを取得するステップと、前記第1健診データと前記第2健診データの項目が不一致であることを含む異常値を検出するステップと、前記異常値が検出された項目を再取得し、申請データを生成するステップと、をコンピュータが実行する。
【0012】
また、本発明は、前記保険申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、保険申請者により入力される第2健診データを取得する取得部と、前記第1健診データと前記第2健診データの項目が不一致であることを含む異常値を検出する検出部と、前記異常値が検出された項目を再取得し、申請データを生成する申請データ生成部と、としてコンピュータを機能させる。
【0013】
このような構成とすることで、2つの健診データの項目が一致しない箇所について、正しい値に修正された申請データを生成することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記申請データ生成部は、前記異常値が検出された項目に関して前記保険申請者により再入力された第2健診データに基づき前記申請データを生成する。
このような構成とすることで、健診画像データに基づき生成される第1健診データの項目に不備がある場合であっても、当該項目について正しい値に修正された申請データを生成することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記保険申請者の顔画像を登録する登録受付部を備え、前記申請データ生成部は、撮像された前記保険申請者の顔画像を認証することで、前記第1健診データまたは前記第2健診データに基づく前記申請データを生成する。
このような構成とすることで、保険申請者が別人に成りすまして保険申請することを防止できる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、健診データの項目別に正常値または異常値の範囲を設定した検出設定情報を受け付ける設定受付部を備え、前記検出部は、前記検出設定情報に基づいて前記第1健診データおよび前記第2健診データの少なくとも一方の項目の異常値を検出する。
本発明の好ましい形態では、前記設定受付部は、健診データの複数の項目の値の組合せについて、異常値を設定した検出設定情報を更に受け付ける。
前記設定受付部は、利用者の過去の健診データと現在の健診データに含まれる時系列変化に相関関係を有する項目に関する異常値を設定した検出設定情報を更に受け付ける。
このような構成とすることで、健診データに含まれる値の異常値を検出することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記保険申請者の臨床データおよび健診データを入力データとし、保険査定結果を出力データとして機械学習された判定モデルに対して、前記申請データおよび臨床データを入力し、保険査定結果を出力する査定部を備える。
このような構成とすることで、健診データに加えて臨床データを加味することで、保険査定業務を好適に自動化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保険申込時に含まれる誤記や虚偽の値を精度よくチェックしたうえで、保険引受の可否判断を支援する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態にかかる引受支援システムのシステム構成図を示す。
【
図2】本実施形態にかかる各装置のハードウェア構成図を示す。
【
図3】本実施形態にかかる引受処理のフローチャートを示す。
【
図4】本実施形態にかかる入力画面の画面表示例を示す。
【
図5】本実施形態にかかる検出処理のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明の引受支援システムについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0021】
本実施形態では引受支援システムの構成、動作等について説明するが、同様の構成の方法、装置、コンピュータのプログラムおよび当該プログラムを格納したプログラム記録媒体なども、同様の作用効果を奏することができる。以下で説明する本実施形態にかかる一連の処理は、コンピュータで実行可能なプログラムとして提供され、CD-ROMやフレキシブルディスクなどの非一過性コンピュータ可読記録媒体、更には通信回線を経て提供可能である。
【0022】
引受支援システムの各機能構成部と、引受支援方法の各ステップと、は同様の作用効果を実現する。引受支援システムを構成するコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置および記憶装置を有する。当該コンピュータは、記憶装置に格納される引受支援プログラムを、演算装置により実行することで、当該コンピュータを引受支援装置として機能させることができる。
【0023】
本明細書では、生命保険や健康保険、医療保険などの保険に関する引受業務を支援する引受支援システムの実施例を説明するが、引受対象は、例えば、ローン契約、カード契約など健康情報に基づき査定判断がなされるものであれば、特に保険に限定されるものではない。また、その他の引受業務の対象として、免許証等の更新業務、健康診断結果を必要とする入出国時業務、企業等における健康診断結果の真贋確認業務などが含まれてもよい。
【0024】
図1は、引受支援システム1のブロック図を示す。引受支援システム1は、引受支援装置2と、利用者端末3と、医療機関システム4と、保険業者により操作される業者端末5と、データベースとしての記憶部DBと、を備え、これら構成部は、通信ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。利用者端末3は、保険申請を行う被保険者により操作される端末装置であって、複数存在してもよい。また、記憶部DBは、引受支援装置2とデータ通信可能に構成されていればよく、引受支援装置2の内部に搭載される態様であってもよい。
【0025】
引受支援装置2は、機能構成要素として、異常値検出の基準や判定モデルを含む各種情報の設定入力を受け付ける設定受付部21と、利用者情報の登録を受け付ける登録受付部22と、健診データを取得する取得部23と、健診データに含まれる異常値を検出する検出部24と、健診データに基づき保険に関する申請データを生成する申請データ生成部25と、申請データに基づき保険に関する査定処理を実行する査定部26と、を備える。引受支援装置2の一部の機能構成は、利用者端末3に搭載される構成であってもよく、引受支援装置2および利用者端末3の全体で上述した各種機能構成が実現されればよい。
【0026】
医療機関システム4は、病院などの医療機関に設置される。医療機関システム4は、保険申請者を含む利用者の健康診断を実施し、健診データを利用者の識別子に対応付けて医療機関データベースに格納している。また、医療機関システム4は、利用者の医療機関への既往歴、現病歴などを含む臨床データを利用者の識別子に対応付けて医療機関データベースに格納している。医療機関システム4は、引受支援装置2より利用者の各種データに関する要求に応じて、要求されたデータを提供する。
【0027】
図2(a)は、引受支援装置2のハードウェア構成図を示す。引受支援装置2は、CPUなどによる制御部201と、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの補助記憶装置による記憶部202と、通信ネットワークNWとの通信制御を行うための通信部203などとを備える。引受支援装置2の記憶部202は、OS(Operating System
)と、OSと協働して各種機能構成要素を実現する引受支援プログラムと、を格納し、制御部201は、当該引受支援プログラムを実行することで各種機能構成を実現することができる。本実施形態において、引受支援装置2は、サーバ装置として構成される。なお、サーバ装置は、クラウド型、オンプレミス型などの態様を適宜採用できる。
【0028】
図2(b)は、利用者端末3のハードウェア構成図を示す。利用者端末3は、CPUなどによる制御部301と、主記憶装置や補助記憶装置などによる記憶部302と、通信部303と、タッチパネル、マウス、キーボードなどによる入力部304と、ディスプレイなどによる表示部305と、カメラなどによる撮像部306と、を備える。なお、業者端末5も同様のハードウェア構成を備えるものとする。
【0029】
本実施形態において、引受支援システム1の検出部24は、保険申請する利用者の操作する利用者端末3を介して送信される健診データの項目について、異常値を検出する。健診データは、利用者が受診した健康診断の健康診断票を撮像した健診画像データに基づき生成される第1健診データと、利用者が当該健康診断票を参照し、入力画面を介して入力する第2健診データと、を含む。以下の説明において、2つの健診データを区別しない場合、単に健診データと記載する。
【0030】
検出部24は、設定受付部21により設定される検出設定情報に基づき健診データの項目の異常値を検出する。検出設定情報は、検出の基準となる異常値または正常値の範囲に関する設定や、健診データを入力し異常値の検出結果を出力する検出モデルを含む。また、異常値とは、利用者の健康診断票を撮像した健診画像データに基づいて取得される第1健診データの項目と、利用者端末3を介して入力される第2健診データの項目が一致しない値や、それぞれの健診データの項目間の相関から不備と判断される外れ値などを含む。
【0031】
設定受付部21は、健診データの項目別の異常値と、項目間の組合せの異常値と、項目の時系列変化による相関の異常値と、を検出するための検出設定情報を受け付け、記憶部DBに格納する。検出設定情報は、例えば、保険業者により操作される業者端末5や、医療機関システム4を介して入力される。
【0032】
設定受付部21は、健診データの項目別の正常値または異常値の範囲に関する検出設定情報を受け付ける。例えば、BMIは、下限値:5、上限値:100の正常値の範囲を設定され、検出部24は、健診データの項目において、正常値から外れた値を異常値として検出する。正常値または異常値の範囲は、上述したものに限定されず、項目別に適宜設定可能に構成されている。
【0033】
設定受付部21は、健診データの複数の項目の組合せについて、異常値と判定される組合せを検出設定情報として受け付ける。項目の組合せは、例えば、性別、年齢などの利用者の属性と、1つ以上の健診データの項目が含まれる。異常値と判定される組合せの例(組合せA~C)を以下に示す。
組合せA:男性、50歳、BMI:30、腹囲:60cm
組合せB:男性、60歳、BMI:35、収縮期血圧:80
組合せC:女性、25歳、ヘモグロビン:15.0、血清鉄:10
【0034】
組合せAは、BMIの値が肥満傾向を示すのに対して、腹囲の値が男性の標準以下であることから不備の可能性があると判定される。組合せBは、BMIの値が肥満傾向を示すのに対して、収縮期血圧の値が低血圧を示すことから不備の可能性があると判定される。組合せCは、ヘモグロビンの値が女性の基準値を示すのに対して、血清鉄の値が貧血の傾向を示すことから不備の可能性があると判定される。これらの組合せは一例であり、検査項目間に相関が認められる値の外れ値が適宜設定可能に構成されている。
【0035】
異常値と判定される組合せの検出設定情報は、機械学習された検出モデルであってもよい。検出モデルは、健診データの複数の項目を入力とし、当該項目の組合せが正常値または異常値であるかを出力とするデータセットを用いて機械学習される。機械学習により生成された検出モデルは、健診データの複数の項目の入力を受け付け、それらの組合せが正常値であるか異常値であるかを出力することができる。
【0036】
設定受付部21は、利用者の過去の健診データと現在の健診データの間における時系列変化による項目の異常値を設定した検出設定情報を受け付ける。本実施形態では、健診データの2つ以上の項目に対して、正の相関または負の相関の何れかが設定される。検出部24は、同一の利用者の以前の健診データと現在の健診データの第1の項目の変化に対して、正または負の相関を設定された第2の項目の変化を検出する。検出部24は、第2の項目の変化が設定された相関に反する場合、第1の項目および/または第2の項目が異常値であることを検出する。例えば、BMIと腹囲は、正の相関として設定される。以前の健診データがBMI:25、腹囲:85cmであり、現在の健診データがBMI:30、腹囲:75cmである場合、BMIの増加に対して腹囲が減少し、正の相関に反するため、BMIおよび/または腹囲の値が異常値であると検出される。なお、設定された相関に反する場合の許容値が更に設定されてもよい。
【0037】
時系列変化による異常値の検出設定情報は、機械学習された検出モデルとして記憶部DBに格納されてもよい。検出モデルは、以前の健診データの各項目と、現在の健診データの各項目を入力とし、それら項目の時系列変化が正常値または異常値であるかを出力とするデータセットを用いて機械学習される。機械学習により生成された判定モデルは、以前および現在の健診データの入力を受け付け、それらの項目の時系列変化が正常値であるか異常値であるかを出力することができる。
【0038】
設定受付部21は、利用者の健診データと臨床データを入力とし、査定結果を出力する判定モデルの設定を受け付け、記憶部DBに格納する。本実施形態において、判定モデルは、機械学習により生成されたモデルである。なお、機械学習処理は、引受支援システム1の外部の装置で実行され、設定受付部21は、学習された判定モデルを受け付ける構成であってよい。
【0039】
臨床データは、既往歴、現病歴、薬処方歴、治療歴、合併症の有無、などを含む。臨床データは、医療機関システム4より取得される告知書に基づき生成されるデータであってもよい。査定結果は、引受の可否、引受可能な金額、提案する保険商品などを含む。
【0040】
判定モデルの機械学習に用いるデータセットは、例えば、健診データに含まれる高血圧の傾向を示す血圧の値と、臨床データに含まれる降圧剤の薬処方歴と、その他の既往歴や合併症なしと、を入力データとし、引受の条件を緩和する傾向の査定結果(例えば、引受可)を出力データとする。このデータセット例では、利用者の健診データから高血圧であると判断されるものの、臨床データから処方薬により血圧が正常にコントロールされ、他の疾患の既往歴や合併症もないことから、高血圧の重症化リスクが低いと判断され、引受可能と査定する傾向を機械学習させることができる。すなわち、判定モデルは、健診データと臨床データの組合せと、その組合せによる査定医の査定結果の判断の傾向を機械学習されたモデルとなる。
【0041】
図3は、引受支援装置2における処理に関するフローチャートを示す。
図3は、保険業者が保険引受に必要な各種情報の入力を利用者に案内し、利用者が利用者端末3を介して各種情報の入力する際の処理フローの例を示す。
【0042】
ステップS11において、登録受付部22は、利用者端末3を介して利用者の利用者名、性別、年齢、住所、勤務先、年収など保険引受に必要な項目の入力を受け付け、基本情報として記憶部DBに格納する。基本情報は、利用者に一意な利用者IDを付与される。利用者IDは、医療機関システム4で管理される当該利用者の患者番号やIDと対応付けされる。本実施形態において、基本情報は、業者端末5を介して入力されてもよい。
【0043】
基本情報は、利用者の顔画像を含む。登録受付部22は、保険業者が利用者本人の顔画像であることを確認し、承認されることで登録される構成とすることが好ましい。なお、顔画像は、医療機関システム4を介して本人確認済の画像として取得されてもよい。
【0044】
ステップS12において、取得部23は、利用者の顔認証に成功した場合(S22でYES)、続く健診データの取得を許可する。顔認証は、健診データの入力に進む際に、利用者端末3の撮像部306により撮像された顔画像と、基本情報として登録された顔画像と、に基づき成否を判定される。取得部23は、顔認証に失敗した場合(S22でNO)、健診データの取得を許可せず、処理を完了する。なお、引受支援装置2は、通信ネットワークNWに接続された外部の顔認証サーバに顔画像を含む顔認証処理要求を送信し、その顔認証処理の結果を取得する構成であってもよい。
【0045】
ステップS13において、取得部23は、利用者端末3を介して健診画像データを取得する。
図4(a)は、利用者端末3における第1健診データ入力画面W1の画面表示例を示す。第1健診データ入力画面W1は、健診画像データ選択部W11と、送信ボタンW12と、を備える。健診画像データ選択部W11は、利用者端末3の記憶部302に格納される健康診断票を撮像した1つ以上の画像データの選択を受け付け、当該画像データをアップロードする。送信ボタンW12は、押下されることで、選択された健診画像データを引受支援装置2に送信する。
【0046】
ステップS14において、取得部23は、取得した健診画像データに含まれる各健診項目について光学文字認証処理し、第1健診データとして取得する。引受支援装置2は、光学文字認識処理に失敗した場合、利用者端末3に対して健診画像データを再度アップロードする要求を送信する。また、引受支援装置2は、第1健診データに必要項目が含まれない場合、利用者端末3に対して当該必要項目を含む健診画像データを再度アップロードする要求を送信する。必要項目は、健康診断を実施した医療機関名、担当医師名、総合判定および、保険業者が設定する検査項目を含む。また、必要項目は、健康診断受診者の指名を含み、基本情報の利用者名と照合されてもよい。
【0047】
ステップS15において、取得部23は、利用者端末3の第2健診データ入力画面W2を介して第2健診データを取得する。
図4(b)は、第2健診データ入力画面W2の画面表示例を示す。第2健診データ入力画面W2は、健診データ入力部W21と、送信ボタンW22と、を備える。健診データ入力部W21は、健診データの各必要項目についてテキストデータとして入力を受け付ける。このとき、利用者は、ステップS13において送信した健康診断票を参照しながら、各項目を入力する。送信ボタンW22は、押下されることで、入力された各項目の値を引受支援装置2に送信する。
【0048】
ステップS12~S15は、処理の順序は限定されない。ステップS12の顔認証は、後の申請データを処理するまでに実行されればよく、例えば、ステップS15において第2健診データの入力時に並行して実行されてもよい。引受支援装置2は、第1健診データおよび第2健診データを取得完了すると(ステップS16でYES)、続く検出処理を実行する。第1健診データと第2健診データの何れかが不足する場合、引受支援装置2は、利用者端末3に必要なデータを要求する表示を生成する。
【0049】
ステップS12における顔認証は、ステップS11~S15の利用者端末3を介した各種情報入力の際に、任意のタイミングで、または、ランダムなタイミングで複数回実行されてもよい。なお、顔認証は、少なくとも1回以上の顔の動作(瞬き、顔の傾け、表情変化など)に関する認証を含むことが好ましい。
【0050】
ステップS17において、検出部24は、第1健診データと第2健診データに含まれる異常値を検出する検出処理を実行する。検出処理の詳細は、後に
図5を参酌しながら詳述する。
【0051】
ステップS18において、申請データ生成部25は、第2健診データに基づいて、申請データを生成する。申請データ生成部25は、検出処理により異常値が検出された場合、異常値が検出された項目を再取得し、申請データを生成する。ここで、申請データ生成部25は、異常値が検出された項目に関して利用者端末3を介して再入力された第2健診データに基づき申請データを生成する。申請データは、第2健診データにおいて検出された異常値が修正され、査定処理で実際に用いられるデータを示す。
【0052】
ステップS19において、取得部23は、利用者IDに対応する利用者の臨床データを医療機関システム4より取得する。なお、臨床データが存在しない場合、ステップS19は省略されてもよい。
【0053】
ステップS20において、査定部26は、申請データおよび臨床データを、判定モデルに入力し、査定結果を出力する。査定結果は、業者端末5に通知される。
【0054】
査定結果は、保険引受の可否に関する結果を含む。また、査定結果は、引受可能な金額や引受可能な保険商品やプランの提案情報を含んでもよい。査定結果は、引受可否の度合いを示す数値またはレベルとして出力されてもよく、それら数値やレベルに応じた保険の提案を保険業者が提案する態様であってもよい。保険業者は、最終的な引受の可否を決定し、利用者端末3に対して通知し、処理を完了する。保険業者は、最終的な引受の可否を決定するうえで、外部の査定システムなど既存業務への引継ぎや申請データのダブルチェックなどを実施することができる。
【0055】
図5は、
図3のステップS17における検出処理の詳細なフローチャートを示す。本実施形態において、検出部24は、S21~S24の4ステップで健診データの異常値をそれぞれ検出する。検出部24は、異常値が検出された項目に異常値フラグを付与する。
【0056】
検出部24は、ステップS21において、第1健診データと第2健診データの項目について不一致となる項目を異常値として検出する。検出部24は、ステップS22において、項目別に設定された検出設定情報を参照し、第1健診データおよび第2健診データの少なくとも何れか一方の異常値を検出する。検出部24は、ステップS23において、項目間の組合せに関する異常値の検出設定情報を参照し、第1健診データおよび第2健診データの少なくとも何れか一方の異常値を検出する。検出部24は、ステップS24において、時系列変化に相関関係を有する健診データの項目間の異常値を判定するための検出設定情報を参照し、第1健診データおよび第2健診データの少なくとも何れか一方の異常値を検出する。
【0057】
検出部24は、S21~S24の少なくとも何れか1つのステップで異常値を検出した場合(ステップS25でYES)、ステップS26において、異常値として検出された項目について利用者端末3を介して再入力を受け付け、第2健診データを更新する。検出部24は、更新された第2健診データについて、S21~S24の4ステップにより検出処理を再度実行してもよい。
【0058】
検出処理により2回目以降に異常値が検出された場合、当該項目に異常値フラグを付与し、
図3のS18に進んでもよい。異常値フラグは、業者端末5に対して提示され、引受可否の判断に利用される。具体的には、引受支援装置2は、第1健診データの所定の項目のみに異常値フラグが付与される場合、第2健診データの項目が全て正常であっても、当該項目に関する確認を要請する通知を業者端末5に対して送信する。
【0059】
異常値が検出された場合に利用者端末3に対して再入力を要求する回数は、適宜設定可能である。本実施形態では、再入力の要求は1回であり、これにより誤記などによる不備は概ね解消することができる。
【0060】
以上に示したように、本発明によれば、保険申込時に含まれる誤記や虚偽の値を自動的に検出し、それらの値が修正された申請データを生成できる。これにより、引受査定における人的チェックの業務コストを削減するとともに、査定医による専門的な保険査定業務を支援することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 引受支援システム
2 引受支援装置
21 設定受付部
22 登録受付部
23 取得部
24 検出部
25 申請データ生成部
26 査定部
3 利用者端末
4 医療機関システム
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、前記申請者により入力される第2健診データとを取得する取得部と、
取得された前記第1健診データおよび前記第2健診データにおける項目が不一致であることを含む、前記第1健診データおよび前記第2健診データの少なくとも一方の異常値を検出する検出部と、
前記異常値が検出されないときは、取得済の前記第2健診データに基づいて申請データを生成し、前記異常値が検出されたときは、取得済の前記第1健診データに拘わりなく、前記異常値が検出された項目に関して前記申請者により再入力された再取得の第2健診データに基づいて修正した申請データを生成する申請データ生成部と、
を備える引受支援システム。
【請求項2】
前記申請者の顔画像を登録する登録受付部を更に備え、
前記取得部は、撮像された前記申請者の顔画像を認証することで、前記第1健診データおよび前記第2健診データを取得する、請求項1に記載の引受支援システム。
【請求項3】
健診データの項目別に正常値または異常値の範囲を設定した検出設定情報を受け付ける設定受付部を更に備え、
前記検出部は、前記検出設定情報に基づいて前記第1健診データおよび前記第2健診データの少なくとも一方の項目の異常値を検出する、請求項1に記載の引受支援システム。
【請求項4】
前記設定受付部は、健診データの複数の項目の値の組合せについて、異常値を設定した検出設定情報を更に受け付ける、請求項3に記載の引受支援システム。
【請求項5】
前記設定受付部は、前記申請者の過去の健診データと現在の健診データの間における時系列変化に相関関係を有する項目に関する異常値を設定した検出設定情報を更に受け付ける、請求項4に記載の引受支援システム。
【請求項6】
前記申請者の臨床データおよび健診データを入力データとし、査定結果を出力データとして機械学習された判定モデルに対して、前記申請データおよび臨床データを入力し、査定結果を出力する査定部を更に備える、請求項1に記載の引受支援システム。
【請求項7】
申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、前記申請者により入力される第2健診データとを取得するステップと、
取得された前記第1健診データおよび前記第2健診データにおける項目が不一致であることを含む、前記第1健診データおよび前記第2健診データの少なくとも一方の異常値を検出するステップと、
前記異常値が検出されないときは、取得済の前記第2健診データに基づいて申請データを生成し、前記異常値が検出されたときは、取得済の前記第1健診データに拘わりなく、前記異常値が検出された項目に関して前記申請者により再入力された再取得の第2健診データに基づいて修正した申請データを生成するステップと、
をコンピュータが実行する引受支援方法。
【請求項8】
申請者の健診画像データに基づき生成される第1健診データと、前記申請者により入力される第2健診データとを取得する取得部と、
取得された前記第1健診データおよび前記第2健診データにおける項目が不一致であることを含む、前記第1健診データおよび前記第2健診データの少なくとも一方の異常値を検出する検出部と、
前記異常値が検出されないときは、取得済の前記第2健診データに基づいて申請データを生成し、前記異常値が検出されたときは、取得済の前記第1健診データに拘わりなく、前記異常値が検出された項目に関して前記申請者により再入力された再取得の第2健診データに基づいて修正した申請データを生成する申請データ生成部と、
としてコンピュータを機能させる引受支援プログラム。