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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040948
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】流路切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/056 20060101AFI20240318BHJP
   F16K 11/07 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F16K11/056 Z
F16K11/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145623
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大介
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA12
3H067AA33
3H067BB02
3H067BB12
3H067CC32
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD45
3H067EA02
3H067EA06
3H067FF11
(57)【要約】
【課題】様々な仕様の流路切換弁を容易に実現できるようにする。
【解決手段】流路切換弁10は、弁室12に第一入出口31及び第二入出口32が形成され、弁室12の底面に第三入出口33が形成された弁本体14と、弁室12内に回転自在に配置され、かつ流路36が形成された第一弁体16と、第一入出口31と連通する第一流路21と、弁本体14を挟んで第一流路21に並設され第二入出口32と連通する第二流路22と、第三入出口33と連通し少なくとも二方向に分岐する分岐部27と、分岐部27にそれぞれ接続された第三流路23及び第四流路24と、分岐部27内に配置され第一弁体16と連動して回転する第二弁体17と、を備えた弁ユニット20を有し、第一入出口31、第二入出口32及び第三入出口33の連通状態が第一弁体16を通じて選択的に切り換わり、第三入出口33、第三流路23及び第四流路24の連通状態が第二弁体によって切り換わる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弁室が形成されると共に、前記弁室を形成する壁面にそれぞれ流体が出入りする第一入出口及び第二入出口が形成され、前記弁室の底面に第三入出口が形成された弁本体と、前記弁室内に回転自在に配置され、かつ流路が形成された第一弁体と、前記第一入出口と連通する第一流路と、前記弁本体を挟んで前記第一流路に並設され、前記第二入出口と連通する第二流路と、前記第三入出口と連通し少なくとも二方向に分岐する分岐部と、前記分岐部にそれぞれ接続された第三流路及び第四流路と、前記分岐部内に配置され前記第一弁体と連動して回転する第二弁体と、を備えた弁ユニットを有し、
前記第一入出口、前記第二入出口及び前記第三入出口の連通状態が前記第一弁体の前記流路を通じて選択的に切り換わると共に、
前記第三入出口、前記第三流路及び前記第四流路の連通状態が前記第二弁体によって切り換わる、流路切換弁。
【請求項2】
前記第一弁体は、球面を有するボール弁体であり、前記第一入出口と前記第三入出口とが連通する状態と、第二入出口と前記第三入出口とが連通する状態とを切り換えることができ、
前記第二弁体は、円筒面を有する円筒弁体であり、前記第三入出口と前記第三流路とが連通する状態と、前記第三入出口と前記第四流路とが連通する状態とを切り換えることができる、請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項3】
前記弁ユニットに連結され、前記第一弁体及び前記第二弁体を回転させる回転駆動部を有する、請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項4】
前記第一弁体と前記第二弁体は、前記回転駆動部の駆動力を伝達するための連結軸で連結されている、請求項3に記載の流路切換弁。
【請求項5】
一の前記弁ユニットに他の前記弁ユニットが重ねて連結され、
2つの前記弁ユニットにおける2つの前記第一弁体及び2つの前記第二弁体を1つの前記回転駆動部により回転させる、請求項3に記載の流路切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ本体内に回転する第一弁体を有し、5以上のポート(管継手)を有する制御弁(流路切換弁)が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第111828682号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来例では、仕様に応じて接続ポートの数や流路の組合せが固定されているため自由度がなく、仕様が変われば設計からやり直す必要が生じると考えられる。
【0005】
本発明は、様々な仕様の流路切換弁を容易に実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る流路切換弁は、内部に弁室が形成されると共に、前記弁室を形成する壁面にそれぞれ流体が出入りする第一入出口及び第二入出口が形成され、前記弁室の底面に第三入出口が形成された弁本体と、前記弁室内に回転自在に配置され、かつ流路が形成された第一弁体と、前記第一入出口と連通する第一流路と、前記弁本体を挟んで前記第一流路に並設され、前記第二入出口と連通する第二流路と、前記第三入出口と連通し少なくとも二方向に分岐する分岐部と、前記分岐部にそれぞれ接続された第三流路及び第四流路と、前記分岐部内に配置され前記第一弁体と連動して回転する第二弁体と、を備えた弁ユニットを有し、前記第一入出口、前記第二入出口及び前記第三入出口の連通状態が前記第一弁体の前記流路を通じて選択的に切り換わると共に、前記第三入出口、前記第三流路及び前記第四流路の連通状態が前記第二弁体によって切り換わる。
【0007】
この流路切換弁では、第二弁体が第一弁体に連動して回転するようになっており、第一弁体を回転させることで第二弁体も回転させることができる。これにより、様々な仕様の流路切換弁を容易に実現できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る流路切換弁において、前記第一弁体が、球面を有するボール弁体であり、前記第一入出口と前記第三入出口とが連通する状態と、第二入出口と前記第三入出口とが連通する状態とを切り換えることができ、前記第二弁体は、円筒面を有する円筒弁体であり、前記第三入出口と前記第三流路とが連通する状態と、前記第三入出口と前記第四流路とが連通する状態とを切り換えることができる。
【0009】
この流路切換弁では、ボール弁体である第一弁体により、第一入出口と第三入出口とが連通する状態と、第二入出口と第三入出口とが連通する状態とを切り換えることができる。また、円筒弁である第二弁体により、第三入出口と第三流路とが連通する状態と、第三入出口と第四流路とが連通する状態とを切り換えることができる。これにより、仕様に応じて、第一流路又は第二流路からの流れを、第三流路又は第四流路へ流すことができる。
【0010】
第3の態様は、第1の態様に係る流路切換弁において、前記弁ユニットに連結され、前記第一弁体及び前記第二弁体を回転させる回転駆動部を有する。
【0011】
この流路切換弁では、第二弁体が第一弁体に連動して回転するようになっているため、回転駆動部により第一弁体を回転させることで第二弁体も回転させることができる。これにより、様々な仕様の流路切換弁を容易に実現できる。
【0012】
第4の態様は、第3の態様に係る流路切換弁において、前記第一弁体と前記第二弁体は、前記回転駆動部の駆動力を伝達するための連結軸で連結されている。
【0013】
この流路切換弁では、第一弁体と第二弁体とが連結軸で連結されているので、回転駆動部の駆動力が第一弁体から第二弁体に伝達される。これにより、第一弁体と第二弁体を連動させることができる。
【0014】
第5の態様は、第3の態様に係る流路切換弁において、一の前記弁ユニットに他の前記弁ユニットが重ねて連結され、2つの前記弁ユニットにおける2つの前記第一弁体及び2つの前記第二弁体を1つの前記回転駆動部により回転させる。
【0015】
この流路切換弁では、一の弁ユニットに他の弁ユニットが重ねて連結されている。そして、2つの弁ユニットにおける2つの第一弁体及び2つの第二弁体を、1つの回転駆動部により回転させる。したがって、2つの弁ユニットにそれぞれ回転駆動部を設ける場合と比較して、部品点数の削減とコストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、様々な仕様の流路切換弁を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る流路切換弁の全体構成を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る流路切換弁を示す断面図である。
図3】第一弁体及び第二弁体が第一の角度位置にある状態を示す斜視断面図である。
図4図3の状態における第一弁体及び第二弁体を示す拡大斜視図である。
図5】第一弁体及び第二弁体が第二の角度位置にある状態を示す斜視断面図である。
図6図5における第一弁体及び第二弁体を示す拡大斜視図である。
図7】第一弁体及び第二弁体が第三の角度位置にある状態を示す斜視断面図である。
図8図7における第一弁体及び第二弁体を示す拡大斜視図である。
図9】第一弁体及び第二弁体が第四の角度位置にある状態を示す斜視断面図である。
図10図9における第一弁体及び第二弁体を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0019】
また、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、図1の方向矢印表示を基準としており、実際の使用状態での位置、方向を指すものではない。図1において、「U」は上方向(上側)、「D」は下方向(下側)、「LH」は左方向(左側)、「RH」は右方向(右側)、「F」は前方向(前側)、「R」は後方向(後側)を示している。「上下方向」とは、矢印U方向及び矢印D方向を意味する。「左右方向」とは、矢印LH方向及び矢印RH方向を意味する。そして、「前後方向」とは、矢印F方向及び矢印R方向を意味する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る流路切換弁10の全体構成を示す斜視図であり、斜め後方からの視点で描かれている。この流路切換弁10では、上下方向に2つの弁ユニット20が重ねられて連結されている。図2は、流路切換弁10の断面図である。図3は、流路切換弁10の斜視断面図である。図4は、図3から第一弁体及び第二弁体の部分を抜き出した拡大斜視図である。
【0021】
流路切換弁10は、例えば自動車のエンジンルーム内等を流れる流体の流路を切り換えるロータリー形の三方弁として使用されるものである。図1から図3に示されるように、流路切換弁10は、弁ユニット20を有している。流路切換弁10は、更に回転駆動部18を有していてもよい。
【0022】
[弁ユニット]
弁ユニット20は、弁本体14と、第一弁体16と、第一流路21と、第二流路22と、分岐部27と、第三流路23と、第四流路24と、第二弁体17とを備えている。後述するように、弁ユニット20は、例えば、第一流路21と第三流路23が連通する状態と、第二流路22と第三流路23が連通する状態とを切り換えることができる。また、弁ユニット20は、第三入出口33と第三流路23とが連通する状態と、第三入出口33と第四流路24とが連通する状態とを切り換えることができる。
【0023】
(弁本体)
図6において、弁本体14は、例えば合成樹脂製とされ、内部に弁室12が形成されている。弁室12の上方向は開口しており、上方向から後述する第一弁体16及び封止部38が挿入されている。弁室12を形成する壁面には、例えば互いに対向しそれぞれ流体が出入りする第一入出口31及び第二入出口32が形成されている。一例として、第一入出口31は弁室12の後方向の壁面に形成され、第二入出口32は弁室12の前方向の壁面に形成されている。つまり、第一入出口31と第二入出口32は、弁室12の前後方向に対向している。また、弁室12の底面には、第三入出口33が形成されている。
【0024】
(第一弁体)
第一弁体16は、例えば合成樹脂から作製されたボール弁体であり、弁室12内に回転自在に配置されている。第一弁体16の上部には、回転駆動部18における弁軸28が差し込まれる差込み穴16Aが形成されている。弁軸28と差込み穴16Aとは、弁軸28の軸方向回りに互いに係合しており、弁軸28の回転が第一弁体16に伝達されるようになっている。差込み穴16Aは、例えば第一弁体16の流路36まで貫通している。
【0025】
弁本体14の第一入出口31、第二入出口32及び第三入出口33を選択的に連通させるべく、言い換えれば、第一入出口31、第二入出口32及び第三入出口33の連通状態を選択的に切り換えるべく、第一弁体16の内部には流路(内部流路)36が設けられている。
【0026】
詳細には、第一弁体16には、その外周(側部)から流路36に通じる横穴36Aが形成されている。また、第一弁体16には、その外周(下部)から流路36に通じる下穴36Cが形成されている。更に、第一弁体16には、その外周(側部)から横穴36Aの中央に合流する横穴36Bが、例えば第一弁体16の回転軸線O1(図2)に直交し、かつ横穴36Aと直交する方向に形成されている。第一弁体16を90°回転させることで、第一入出口31と第三入出口33が連通する状態と、第二入出口32と第三入出口33が連通する状態とを切り換えることができる。つまり、流路36は、横穴36A,36Bと下穴36Cとを有し、これらが互いに連通して構成されている。
【0027】
第一弁体16の状態に応じて、横穴36A,36Bは、第一入出口31又は第二入出口32と対向可能となっている。何れの入出口も、横穴36A,36Bが対向していない状態では、第一弁体16が後述するシート部材40に密着して閉じられた状態となる。
【0028】
図示は省略するが、第一弁体16の流路36には、第三入出口33に向かう方向(上下方向)に延びるリブが形成されている。このリブは、例えば薄板状の突起であり、例えば第一弁体16の流路36における横穴36Aの奥側の内壁に形成されている。
【0029】
図4図5において、第一弁体16と第一入出口31,第二入出口32との間には、各々の間を封止する封止部38がそれぞれ設けられている。封止部38は、例えばシート部材40とOリング42とを有している。シート部材40は、例えば合成樹脂から作製され、第一入出口31、第二入出口32に対応する開口を持つ円環状に形成されている。このシート部材40は、弁本体14の内壁面(弁室12の前後の壁面)における第一入出口31,第二入出口32周りにそれぞれ配置されている。第一弁体16は、2つのシート部材40に挟まれており、各々のシート部材40に接触しながら回転摺動自在に配置されている。
【0030】
シート部材40と弁本体14との間は、それぞれOリング42により例えば気密的、水密的にシールされている。Oリング42は、例えばシート部材40に形成されたOリング溝(図示せず)に取り付けられている。
【0031】
一例として、弁本体14、及び第一弁体16にPPS(ポリフェニレンサルファイド)を使用し、シート部材40にPTFE(フッ素樹脂)を使用し、Oリング42に合成ゴムを使用することができる。
【0032】
(回転駆動部)
図4において、回転駆動部18は、弁ユニット20に連結され、第一入出口31、第二入出口32及び第三入出口33の連通状態が第一弁体16の流路を通じて選択的に切り換わるように第一弁体16を回転させると共に、第三入出口33、第三流路23及び第四流路24の連通状態が切り換わるように第二弁体17を回転させる装置である。回転駆動部18は、上側の弁ユニット20における弁本体14の上方に配置されている。
【0033】
具体的には、上側の弁本体14の上には、例えばブラケット25が固定され、該ブラケット25の上に回転駆動部18が例えばねじ26を用いて固定されている。上側の弁本体14の弁室12における上方向の開口は、例えばブラケット25により閉塞されている。換言すれば、ブラケット25が、弁室12の開口を塞ぐ形状を有している。ブラケット25は、弁室12の開口の内側にインロー嵌合した状態で溶着される。
【0034】
回転駆動部18は、例えばギヤードモータである。この回転駆動部18には、例えば制御部との通信及び電力供給のための配線が接続されるコネクタ50が設けられている。回転駆動部18には、出力軸としての弁軸28が結合されている。弁軸28は、ブラケット25に形成された貫通孔25Aに挿通されている。弁軸28には、Oリング29が取り付けられている。このOリング29により、弁軸28と貫通孔25Aとの間の水密性が確保されている。また、弁軸28の下端は、第一弁体16の差込み穴16A(図5)に差し込まれている。
【0035】
(第一流路、第二流路、第三流路、第四流路、分岐部) 第一流路21、第二流路22、第三流路23、第四流路24及び分岐部27は、例えば弁本体14と一体的に構成された管部である。第一流路21を第一ポート、第二流路22を第二ポート、第三流路23を第三ポート、第四流路24を第四ポートと言い換えることもできる。
【0036】
第一流路21は、例えば両端が開口し、弁室12の第一入出口31と連通している。この第一流路21は、例えば左右方向に直線的に延びている。第一入出口31は、第一流路21の途中に接続されている。これにより、第一流路21と第一入出口31は、平面視で略T字形に形成されている。
【0037】
第二流路22は、弁本体14を挟んで第一流路21に並設され、例えば両端が開口し、第二入出口32と連通している。第二流路22は、例えば左右方向に直線的に延びている。第二入出口32は、第二流路22の途中に接続されている。これにより、第二流路22と第二入出口32は、平面視で略T字形に形成されている。
【0038】
第一流路21の一端には、雌継手51が設けられている。第二流路22の一端にも雌継手51と同様の雌継手(図示せず)が設けられている。第一流路21及び第二流路22の他端には、雄継手61,62がそれぞれ設けられている。雄継手61,62は、雌継手51と接続可能な構造とされている。雄継手61,62の外周には、環状の溝61A,62Aが形成されている。また、雌継手51には、例えば一対の弧状のスリット51Aが形成されている。雄継手61,62は、雌継手51に嵌入され、クリップ(図示せず)をスリット51Aを通じて溝61A,62Aに嵌めることで、抜け止めがなされる構造となっている。各継手の接続部分の止水は、例えばOリング(図示せず)により行われる。このような継手構造を有することにより、一の弁ユニット20の第一流路21及び第二流路22に、別の弁ユニット20の第一流路21及び第二流路22をそれぞれ接続して連結可能とされている。なお、この継手構造は一例であり、他の任意の継手構造を用いることが可能である。
【0039】
図2において、第一流路21における第一入出口31との接続部には、第一入出口31側から第一流路21の内部に向かって突出する第一突起部71が設けられている。この第一突起部71は、例えば第一流路21に対する第一入出口31の開口に沿って形成された弧状の突条である。第一突起部71の範囲は、例えば第一流路21の内周面における第一入出口31側の半周未満とされている。左右方向における第一突起部71の片面は、第一流路21の内壁の一部を延長した凹面とされている。図示の例では、第一突起部71は第一入出口31の左側に設けられている。なお、第一突起部71が第一入出口31の右側に設けられていてもよく、第一突起部71の左右両側に設けられていてもよい。
【0040】
また、第二流路22における第二入出口32との接続部には、第二入出口32側から第二流路22の内部に向かって突出する第二突起部72が設けられている。この第二突起部72は、例えば第二流路22に対する第二入出口32の開口に沿って形成された弧状の突条である。第二突起部72の範囲は、例えば第二流路22の内周面における第二入出口32側の半周未満とされている。左右方向における第二突起部72の片面は、第二流路22の内壁の一部を延長した凹面とされている。図示の例では、第二突起部72は第二入出口32の左側に設けられている。なお、第二突起部72が第二入出口32の右側に設けられていてもよく、第二突起部72の左右両側に設けられていてもよい。
【0041】
図1図3に示されるように、第一流路21における例えば第一入出口31と対向する位置には、蓋体44で閉塞された副流路46が設けられていてもよい。蓋体44と副流路46の端部との間は、溶着により封止され、またはOリング等のシール部材により止水されている。蓋体44を取り外すことで、副流路46を利用することも可能である。副流路46には、例えば貯留タンク(図示せず)を接続することが可能である。弁ユニット20を上下に重ねた場合には、副流路46が上下に2つ存在する。この2つの副流路46を、2つの接続口が設けられた貯留タンクに接続することも可能である。この場合、貯留タンクは、各々の接続口に対応し、互いに仕切られた2つの貯留室を有していてもよい。これにより、同じ流体でも温度の異なる流体を別々に貯留できる。
【0042】
また、流路切換弁10における末端の第一流路21の雌継手51又は雄継手61と、末端の第二流路22の雌継手又は雌継手62には、それぞれポンプ(図示せず)を取り付けることができる。ポンプは、上側の弁ユニット20における第一流路21の雌継手51に取り付けられていてもよい。また、ポンプは、上側の弁ユニット20における第二流路22の雌継手に取り付けられていてもよい。ポンプは、他の機器からの流体を第一流路21に供給したり、第一流路21の流体を他の機器に供給したりすることができる。また、ポンプは、他の機器からの流体を第二流路22に供給したり、第二流路22の流体を他の機器に供給したりすることができる。
【0043】
図2において、分岐部27は、第三入出口33と連通し、少なくとも二方向に分岐する部位である。第三流路23及び第四流路24は、分岐部27にそれぞれ接続された流路である。例えば、第三流路23は、分岐部27から前方に延び、分岐部27と反対側が開口している。また、第四流路24は、分岐部27から後方に延び、分岐部27と反対側が開口している。つまり、第三流路23と第四流路24とは、例えば互いに反対方向に直線的に延びている。第三流路23の開口側の末端は、例えば第二流路22より前方に突出している。また、第四流路24の開口側の末端は、例えば第一流路21より後方に突出している。第三流路23及び第四流路24の開口側の末端には、他の機器への配管に接続可能な例えば雄継手64がそれぞれ設けられている。
【0044】
弁本体14における第三入出口33の下方の底部には、例えば貫通孔23Dが形成されている。貫通孔23Dには弁軸58を通すことが可能となっている。弁軸58と貫通孔23Dとの間は、Oリング60により止水されている。下方に他の弁ユニットが重ねられない場合、貫通孔23Dのない構造とされてもよい。なお、貫通孔23Dが設けられていても、これを別部材(例えば閉塞部とする)で閉塞する構成であってもよい。例えば、閉塞部は、温度センサを備えていてもよい(図示せず)。温度センサは、例えば閉塞部に支持されており、先端が分岐部27(第二弁体17)内に位置するように配置される。温度センサを用いることにより、分岐部27(第二弁体17)内、つまり第三流路23又は第四流路24内の温度を正確に測定できる。
【0045】
(第二弁体)
第二弁体17は、分岐部27内に配置され、第一弁体16と連動して回転する、例えば円筒面を有する円筒弁体である。具体的には、第二弁体17には、横穴17A,17Bと、上穴17Cが形成されている。横穴17Bは、例えば第二弁体17の回転軸線O1(図2)に直交し、かつ横穴17Aと直交する方向に形成されている。第二弁体17を回転させることで、第三入出口33と第三流路23とが連通する状態と、第三入出口33と第四流路24とが連通する状態とを切り換えることができるようになっている。
【0046】
分岐部27と第二弁体17の間には、筒状の封止部78が設けられている。封止部78には、第三流路23と第四流路24にそれぞれ通じる貫通穴がそれぞれ形成されている。この貫通穴は、通水抵抗の増加を抑制するため、横穴17A,17Bよりも大径に形成されている。
【0047】
上穴17Cは、弁室12の第三入出口33と連通している。第二弁体17の下方は、例えば弁軸58の支持部分、具体的にはOリング60により封止されている。この弁軸58は、第二弁体17と周方向に係合しており、弁軸58の回転に伴い第二弁体17も回転するようになっている。
【0048】
[弁ユニットの重ね合せ]
本実施形態では、一の弁ユニット20の回転駆動部18と反対側に、他の弁ユニット20を重ねて連結可能とされている。上側の弁ユニット20のうち下側の弁ユニット20と重ねられる部位は、下側の弁ユニット20の弁室12を閉塞する蓋とされている。この閉塞構造は、ブラケット25による弁室12の閉塞構造と概ね同様であり、上側の弁本体14の底部が、下側の弁本体14における弁室12の開口の内側にインロー嵌合した状態で溶着される。
【0049】
また、一の弁ユニット20に他の弁ユニット20を重ねて連結し、2つの弁ユニット20における2つの第一弁体16を1つの回転駆動部18により回転させる構造であってもよい。この例では、上側の弁ユニット20の弁軸28と、下側の弁ユニット20の弁軸58とが、連結軸56により連結されている。連結軸56は、上側の第一弁体16の内部と第二弁体17の内部を通って、上下の弁軸28,58を連結している。回転駆動部18で上側の弁軸28を回転駆動すると、その回転が連結軸56を介して下側の弁軸58に伝達され、上下の第一弁体16及び第二弁体17が同期して回転するようになっている。また、下側の弁ユニット20における上下の弁軸58も、別の連結軸56により連結されている。つまり、2本の連結軸56が回転軸線O1上に配置され、弁軸28と、2本の弁軸58を直列に連結している。本実施形態では、一例として、上下の弁ユニット20において、第一弁体16の横穴16A,16Bの角度位置が一致し、第二弁体17の横穴17A,17Bが一致している。
【0050】
なお、上下の弁ユニット20に回転駆動部18をそれぞれ設け、第一弁体16及び第二弁体17の回転制御を別々に行うようにしてもよい。
【0051】
図1において、一の弁ユニット20における第一流路21の端部と第二流路22の端部の中心間距離Wが、一の弁ユニット20に他の弁ユニット20を重ねて連結した状態における重なり方向での第一流路21の端部同士の中心間距離Hと等しくてもよい。つまり、W=Hであってもよい。
【0052】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。本実施形態に係る流路切換弁10では、回転駆動部18により第一弁体16を回転させることで、弁室12の第一入出口31、第二入出口32及び第三入出口33の連通状態を、第一弁体16の流路36を通じて選択的に切り換えることができる。第一入出口31と第二入出口32が弁室12を挟んで対向し、ボール弁体である第一弁体16には、互いに直交する方向に横穴36A,36Bが形成されている。したがって、第一弁体16を90°ずつ回転させることで、第一入出口31と第三入出口33が連通する状態と、第二入出口32と第三入出口33が連通する状態とを切り換えることができる。
【0053】
第一弁体16と円筒弁体である第二弁体17とは、連結軸56及び弁軸58を介して連結されているので、回転駆動部18の駆動力が第一弁体16から第二弁体17に伝達される。これにより、第一弁体16と第二弁体17を連動させることができる。第二弁体17にも、互いに直交する方向に横穴17A,17Bが形成されている。第二弁体17の上穴17Cは、第三入出口33に連通している。これにより、第二弁体17を90°ずつ回転させることで、第三入出口33と第三流路23とが連通する状態と、第三入出口33と第四流路24とが連通する状態とを切り換えることができる。これにより、仕様に応じて、第一流路21又は第二流路22からの流れを、第三流路23又は第四流路24へ流すことができる。
【0054】
ここで、図示の仕様の場合における流路の切換例について説明する。第一弁体16及び第二弁体17が図3図4に示される角度位置にあるとき、第一弁体16の横穴36Aが第一入出口31と連通し、第二弁体17の横穴17Bが第三流路23と連通している。第一弁体16の横穴36Bと第二弁体17の横穴17Aは塞がれている。したがって、この状態では、各々の弁ユニット20において、第一流路21と第三流路23とが連通している。
【0055】
第一弁体16及び第二弁体17が図5図6に示される角度位置にあるとき、第一弁体16の横穴36Bが第一入出口31と連通し、第二弁体17の横穴17Aが第四流路24と連通している。第一弁体16の横穴36Aと第二弁体17の横穴17Bは塞がれている。したがって、この状態では、各々の弁ユニット20において、第一流路21と第四流路24とが連通している。
【0056】
第一弁体16及び第二弁体17が図7図8に示される角度位置にあるとき、第一弁体16の横穴36Aが第二入出口32と連通し、第二弁体17の横穴17Bが第四流路24と連通している。第一弁体16の横穴36Bと第二弁体17の横穴17Aは塞がれている。したがって、この状態では、各々の弁ユニット20において、第二流路22と第四流路24とが連通している。
【0057】
そして、第一弁体16及び第二弁体17が図9図10に示される角度位置にあるとき、第一弁体16の横穴36Bが第二流路22と連通し、第二弁体17の横穴17Aが第三流路23と連通している。第一弁体16の横穴36Aと第二弁体17の横穴17Bは塞がれている。したがって、この状態では、各々の弁ユニット20において、第二流路22と第三流路23とが連通している。
【0058】
図示は省略するが、一の弁ユニット20の第一流路21及び第二流路22には、他の弁ユニット20の第一流路21及び第二流路22をそれぞれ接続して連結可能とされているので、弁ユニット20の組合せにより様々な仕様の流路切換弁を容易に実現できる。具体的には、第一流路21及び第二流路22の一端に雌継手51が設けられ、第一流路21及び第二流路22の他端に雄継手61,62がそれぞれ設けられている。雄継手61,62は、雌継手51とそれぞれ接続可能である。したがって、例えば一の弁ユニット20と他の弁ユニット20の第一流路21同士、第二流路22同士を容易に接続することができる。
【0059】
図1において、例えばW=Hであると、重ねられた2つの弁ユニット20の第一流路21及び第二流路22の方向に、他の重ねられた2つの弁ユニット20を接続して連結する場合に、第一流路21同士、第二流路22同士を接続するだけでなく、第一流路21と第二流路22を接続することも可能となる。つまり、2つの弁ユニット20を互いに90°回転させて接続することができる。このため、弁ユニット20の組合せの自由度を更に高めることができる。
【0060】
更に、第一弁体16の流路36に、第三入出口33に向かう方向に延びるリブ(図示せず)が形成されている場合、第一弁体16内を流れる流体を整流することができる。弁室12内への第一弁体16の組付け時には、リブに力を作用させることで、第一弁体16の向きを容易に調整することができる。
【0061】
また、第一流路21における弁室12の第一入出口31との接続部に第一突起部71が設けられている場合、第一突起部71で第一流路21での流体の流れが乱される。これにより、第一流路21を流れる流体を第一入出口31へ導くことができる。また、第二流路22における弁室12の第二入出口32との接続部に第二突起部72が設けられている場合、第二突起部72で第二流路22での流体の流れを乱すことで、第二流路22を流れる流体を第二入出口32へ導くことができる。このようにして、第一流路21及び第二流路22から弁室12への流体の流入を促進できる。
【0062】
更に、一の弁ユニット20の回転駆動部18と反対側に、他の弁ユニット20を重ねて連結可能とすることで、弁ユニット20の組合せの自由度を高めることができる。
【0063】
一の弁ユニット20のうち別の弁ユニット20と重ねられる部位が、他の弁ユニット20の弁室12を閉塞する蓋68とされている場合、一の弁ユニット20と別の弁ユニット20を重ねる際に、他の弁ユニット20の弁室12を閉塞するための別部品が不要となる。このため、部品点数の増加を抑制すると共に、弁ユニット20を重ねて連結する際の作業性を高めることができる。
【0064】
重ねられた2つの弁ユニット20における2つの第一弁体16及び第二弁体17を1つの回転駆動部18により回転させる場合、2つの弁ユニット20にそれぞれ回転駆動部18を設ける場合と比較して、部品点数の削減とコストの低減を図ることができる。
【0065】
このように、本実施形態によれば、様々な仕様の流路切換弁を容易に実現できる。
【0066】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0067】
第一流路21及び第二流路22の一端に雌継手51がそれぞれ設けられ、第一流路21及び第二流路22の他端に、雌継手51と接続可能な構造の雄継手61,62がそれぞれ設けられるものとしたが、このような継手構造を有しない構成であってもよい。
【0068】
第三流路23の屈曲部23Aに凹部23Bが設けられるものとしたが、このような凹部23Bを設けない構成であってもよい。第一弁体16の流路36にリブが形成されるものとしたが、このようなリブのない構成であってもよい。
【0069】
第一流路21における第一入出口31との接続部に第一突起部71が設けられ、第二流路22における第二入出口32との接続部に第二突起部72が設けられるものとしたが、第一突起部71又は第二突起部72の何れかが設けられていてもよく、第一突起部71及び第二突起部72が設けられていなくてもよい。
【0070】
一の弁ユニット20の回転駆動部18と反対側に、他の弁ユニット20を重ねて連結可能であるものとしたが、2つの弁ユニット20の間に他の部材が介在していてもよい。また、このような連結が可能でなくてもよい。
【0071】
一の弁ユニット20における第一流路21の端部と第二流路22の端部の中心間距離Wが、一の弁ユニット20に他の弁ユニット20を重ねて連結した状態における重なり方向での第一流路21の端部同士の中心間距離Hと等しいものとした(W=H)が、中心間距離Wが中心間距離Hと異なっていてもよい。また、上記の流路切換弁では弁ユニット20を2段に重ねた構成としたが、3段以上重ねてもよい。
【0072】
分岐部27が、第三入出口33と連通し、少なくとも二方向に分岐するものとしたが、例えば三方向や四方向に分岐してもよい。
【0073】
上下の弁ユニット20において、第一弁体16の横穴16A,16Bの角度位置が一致し、第二弁体17の横穴17A,17Bが一致しているものとしたが、仕様によっては横穴の位置が一致していなくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 流路切換弁
12 弁室
14 弁本体
16 第一弁体
17 第二弁体
18 回転駆動部
20 弁ユニット
21 第一流路
22 第二流路
23 第三流路
24 第四流路
27 分岐部
31 第一入出口
32 第二入出口
33 第三入出口
36 流路
56 連結軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10