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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040956
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】バランサ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/26 20060101AFI20240318BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F16F15/26 L
F16C17/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145631
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】于 騰
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】平野 崇
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011JA02
3J011KA03
3J011MA03
3J011PA03
(57)【要約】
【課題】バランサ装置に生じるフリクションを効率的に低減する。
【解決手段】第1ハウジング8は、駆動シャフト第3軸部1gと駆動側バランサシャフト1の回転軸方向に対向する位置に設けられた半円弧状の第1スラスト受け面14を有する。第1スラスト受け面14は、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向に凹んだ第1凹部16を有する。第1凹部16は、第1スラスト受け面14の始端部14aにおいて径方向内側に設けられる。第1凹部16は、周方向において始端部14aに開口するとともに、径方向内側に開口する。第1凹部16は、周方向において始端部14aから終端部14b側に向けて深さが浅くなっている。さらに、第1凹部16は、径方向において第1凹部16の第1円弧部16bから径方向外側に向けて深さが浅くなっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受部を有するハウジングと、
前記軸受部に回転可能に支持され、内燃機関から回転力が伝達されるバランサシャフトと、
前記バランサシャフトの一部が該バランサシャフトの回転軸方向から当接可能な円弧状のスラスト受け面と、
前記円弧状のスラスト受け面において前記バランサシャフトの回転方向の逆側の端部を始端部としたときに、前記円弧状のスラスト受け面の前記始端部に前記回転軸方向に凹むように設けられた凹部であって、周方向において前記始端部に開口し、径方向内側若しくは径方向外側に開口し、前記周方向の前記始端部から前記終端部側に向けて深さが浅くなっており、前記径方向において前記凹部の開口に対して反対側に向けて深さが浅くなっている、前記凹部と、
を有することを特徴とするバランサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバランサ装置において、
前記凹部は、周方向の前記始端部から前記終端部に向けて径方向の幅が狭くなっていることを特徴とするバランサ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のバランサ装置において、
前記凹部は、周方向の幅が径方向の幅よりも広いことを特徴とするバランサ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のバランサ装置において、
前記凹部は、前記スラスト受け面に繋がる第1傾斜面と、該第1傾斜面に繋がり、前記凹部の底部側に延びる第2傾斜面と、を有し、
前記第1傾斜面の前記スラスト受け面に対する角度が、前記第2傾斜面の前記スラスト受け面に対する角度よりも小さいことを特徴とするバランサ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のバランサ装置において、
前記第1傾斜面は円弧状の断面を有することを特徴とするバランサ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のバランサ装置において、
前記凹部は、径方向の内側に開口し、径方向の内側から外側に向けて深さが浅くなっていることを特徴とするバランサ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のバランサ装置において、
前記凹部は、径方向の外側に開口し、径方向の外側から内側に向けて深さが浅くなっていることを特徴とするバランサ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のバランサ装置において、
前記ハウジングは、前記内燃機関に取り付けられる第1ハウジングと、該第1ハウジングに固定された第2ハウジングと、を有し、
前記軸受部は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとに跨って設けられ、
前記スラスト受け面は、前記第1ハウジングに設けられていることを特徴とするバランサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バランサ装置として、例えば以下の特許文献1に記載されたバランサ装置が知られている。
【0003】
特許文献1のバランサ装置では、バランサシャフトに設けられたギアの一部がバランサシャフトの回転軸方向から当接可能な円弧状のスラスト受け面を有している。そして、この円弧状のスラスト受け面においてバランサシャフトの回転方向の端部を終端部とし、バランサシャフトの回転方向の逆側の端部を始端部としたときに、始端部に、オイルを溜める凹部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-76412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のバランサ装置では、オイルが凹部に溜まるが、溜まったオイルをスラスト受け面に迅速に供給することについては何ら配慮されていない。このため、バランサ装置のフリクション、特に、ギアの軸方向端面とスラスト受け面との間のフリクションを効率的に低減することができない虞があった。
【0006】
本発明は、従来の実情に鑑みて案出されたもので、フリクションを効率的に低減することが可能なバランサ装置を提供することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
バランサ装置が、その一態様として、円弧状のスラスト受け面においてバランサシャフトの回転方向の逆側の端部を始端部としたときに、円弧状のスラスト受け面の始端部に回転軸方向に凹むように設けられた凹部を有し、この凹部は、周方向において始端部に開口し、径方向内側若しくは径方向外側に開口し、周方向の始端部から終端部側に向けて深さが浅くなっており、径方向において凹部の開口に対して反対側に向けて深さが浅くなっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バランサ装置に生じるフリクションを効率的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態のバランサ装置の斜視図である。
図2】第2ハウジング側から見たときの第1ハウジング等を示す平面図である。
図3】第1の実施形態のバランサ装置の上面図である。
図4図3の線A-Aに沿って切断した第1の実施形態のバランサ装置の断面図である。
図5】駆動シャフト第3軸部側から見たときの第1の実施形態のバランサ装置の概略的な側面図である。
図6図5の線B-Bに沿って切断したバランサ装置の断面図である。
図7図5の線C-Cに沿って切断したバランサ装置の断面図である。
図8】駆動シャフト第3軸部側から見たときの第2の実施形態のバランサ装置の概略的な側面図である。
図9図8の線D-Dに沿って切断したバランサ装置の断面図である。
図10図8の線E-Eに沿って切断したバランサ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のバランサ装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態のバランサ装置の斜視図である。図2は、第2ハウジング9側から見たときの第1ハウジング8等を示す平面図である。なお、図2では、第1、第2、第3および第4ベアリング11,13,19,20の断面を示すハッチングを省略してある。 図3は、第1の実施形態のバランサ装置の上面図である。図4は、図3の線A-Aに沿って切断した第1の実施形態のバランサ装置の断面図である。
バランサ装置は、図示せぬ内燃機関、例えば直列4気筒のレシプロエンジンの二次振動を抑制するものである。バランサ装置は、駆動側バランサシャフト1、従動側バランサシャフト2、第1ギア3、第2ギア4、従動ギア5、第1バランサウエイト6、第2バランサウエイト7、第1ハウジング8および第2ハウジング9を備えている。駆動側バランサシャフト1には、第1ギア3、従動ギア5および第1バランサウエイト6が設けられている。一方、従動側バランサシャフト2には、第2ギア4および第2バランサウエイト7が設けられている。そして、第1ギア3と第2ギア4とを噛み合わせた状態のバランサシャフト1,2は、ハウジングを構成する半割状の第1、第2ハウジング8,9内に収容されるとともに、第1、第2ハウジング8,9によって回転可能に支持される。第2ハウジング9は、複数の固定部材、例えばボルト10(図1には、3つのボルト10が示されている)によって第1ハウジング8に取付固定される。
駆動側バランサシャフト1は、図示せぬクランクシャフトからの回転力が伝達されることにより駆動されるシャフトである。駆動側バランサシャフト1は、該駆動側バランサシャフト1の回転軸方向がクランクシャフトの回転軸線の方向、つまり内燃機関の前後方向と一致するように配置されている。ここで、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向と直交する方向を「径方向」と定義し、さらに、回転軸周りの方向を「周方向」と定義する。さらに、駆動側バランサシャフト1の一対の回転軸方向端部のうち第1ギア3が固定されている側を「一端1a」と定義し、一方、第1ギア3が固定されていない側を「他端1b」と定義する。図2に示すように、駆動側バランサシャフト1は、一端1a側から順に、第1ギア固定部1c、従動ギア固定部1d、駆動シャフト第1軸部1e、第1バランサウエイト6、駆動シャフト第2軸部1fおよび駆動シャフト第3軸部1gを有している。
図4に示すように、第1ギア固定部1cは、一端1a側に位置しており、円柱状に形成されている。第1ギア固定部1cの外周部には、第1ギア3が固定されている。
図4に示すように、従動ギア固定部1dは、第1ギア固定部1cの回転軸方向他端部と一体に設けられており、円柱状に形成されている。従動ギア固定部1dの外周部には、クランクシャフトより伝達される回転力によって回転する従動ギア5が固定されている。
図2および図4に示すように、駆動シャフト第1軸部1eは、従動ギア固定部1dの回転軸方向他端部と一体に設けられており、円柱状に形成されている。駆動シャフト第1軸部1eは、第1ハウジング8に設けられた駆動シャフト用第1軸受部8aの内側と、第2ハウジング9に設けられた駆動シャフト用第3軸受部9aの内側とに位置する第1ベアリング11を介して回転可能に支持される。
図4に示すように、第1バランサウエイト6は、駆動シャフト第1軸部1eの回転軸方向他端部と一体に設けられており、駆動側バランサシャフト1の回転軸線O1を中心として径方向に偏位した状態で拡径する半円柱状に形成されている。第1バランサウエイト6は、第1、第2ハウジング8,9の間に形成される空間であるウエイト収容空間12内に収容される。
図2および図4に示すように、駆動シャフト第2軸部1fは、第1バランサウエイト6の回転軸方向他端部と一体に設けられており、円柱状に形成されている。駆動シャフト第2軸部1fは、第1ハウジング8に設けられた駆動シャフト用第2軸受部8bの内側と、第2ハウジング9に設けられた駆動シャフト用第4軸受部9bの内側とに位置する第2ベアリング13を介して回転可能に支持される。
図2および図4に示すように、駆動シャフト第3軸部1gは、駆動シャフト第2軸部1fの回転軸方向他端部と一体に設けられており、駆動シャフト第2軸部1fよりも大径の円柱状に形成されている。駆動シャフト第3軸部1gのうち駆動シャフト第2軸部1fと隣接した第1回転軸方向端面1hが、第1ハウジング8の外側に位置する円弧状の端面である第1スラスト受け面14と当接する。図1および図4に示すように、駆動シャフト第3軸部1gの外側に露出した回転軸方向端面である第2回転軸方向端面1iには、駆動シャフト第3軸部1gの外周面寄りの位置に、バランサ装置の組立時に用いられる図示せぬ治具が挿入される第1凹溝部15が設けられている。
図2に示すように、第1スラスト受け面14には、後述の第2オイル溝26から駆動シャフト第2軸部1fの内面と第2ベアリング13の外周面との間の隙間を介してオイルを溜めることが可能な第1凹部16が形成されている。第1凹部16は、図2のように第1ハウジング8の合わせ面と直交する方向に見たときに、駆動シャフト第2軸部1fに対して径方向外側に位置している。第1凹部16は、第1スラスト受け面14から駆動側バランサシャフト1の回転軸方向に凹むように設けられている。第1スラスト受け面14および第1凹部16については、後に詳細に説明される。
第1ギア3は、駆動側のヘリカルギアであり、従動側のヘリカルギアである第2ギア4と噛み合う。第1ギア3の歯数は、第2ギア4の歯数と同じである。第1ギア3は、第1、第2ハウジング8,9の間に形成されるギア収容空間17内に収容される。第1ギア3は、クランクシャフトからの回転力が従動ギア5に伝達されたときに、従動ギア5と同じ回転方向、つまり図1に示す回転方向R1に回転する。そして、この第1ギア3が回転方向R1に回転するときに、第2ギア4は、第1ギア3の回転方向R1とは反対の回転方向R2に回転する。また、第1ギア3の歯および第2ギア4の歯が駆動側バランサシャフト1や従動側バランサシャフト2の回転軸方向に対して傾斜した状態で互いに噛み合っているので、クランクシャフトからの回転力が従動ギア、第1ギア3および第2ギア4を介して伝達されるときに、バランサシャフト1,2の回転軸方向に沿ったスラスト力が生じるようになっている。このスラスト力は、駆動側バランサシャフト1については他端1b側から一端1a側へ向かって作用し、同様に、従動側バランサシャフト2については他端2b側から一端2a側へ向かって作用する。
従動ギア5は、第1ギア3および第2ギア4の外径よりも大きな外径を有するヘリカルギアである。従動ギア5は、第1、第2ギア3,4と共にギア収容空間17内に収容される。また、従動ギア5はギア収容空間17内に収容された状態では、図1に示すように、従動ギア5において周方向に連続する一定数の歯が、第1ハウジング8に開口形成された長方形の開口部18から第1ハウジング8の外側に突出するようになっている。開口部18から突出した上記一定数の歯は、図示せぬクランクシャフトに設けられた図示せぬ駆動ギアと噛み合い、駆動ギアおよび従動ギア5を介してクランクシャフトからの回転力が駆動側バランサシャフト1に伝達されるようになっている。上記駆動ギアの歯数は、従動ギア5の歯数の2倍となっている。
従動側バランサシャフト2は、第1、第2ギア3,4を介して伝達される駆動側バランサシャフト1からの回転力により回転するシャフトである。従動側バランサシャフト2は、駆動側バランサシャフト1と平行となるように設けられている。従って、従動側バランサシャフト2の回転軸方向は、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向と同じである。図2に示すように、従動側バランサシャフト2は、一端2a側から順に、図示省略の第2ギア固定部、連結軸部2c、従動シャフト第1軸部2d、第2バランサウエイト7、従動シャフト第2軸部2eおよび従動シャフト第3軸部2fを有している。なお、図2に示すように、従動側バランサシャフト2の一端2aは、駆動側バランサシャフト1の一端1aと径方向にオーバーラップする位置にあり、一方、従動側バランサシャフト2の他端2bは、駆動側バランサシャフト1の他端1bと径方向にオーバーラップする位置にある。
第2ギア固定部は、一端2a側に位置しており、円柱状に形成されている。第2ギア固定部の外周部には、第1ギア3と噛み合う第2ギア4が固定されている。
連結軸部2cは、第2ギア固定部の回転軸方向他端部と一体に設けられており、円柱状をなしている。連結軸部2cは、第2ギア固定部と従動シャフト第1軸部2dとを連結する。
従動シャフト第1軸部2dは、第1ハウジング8に設けられた従動シャフト用第1軸受部8cの内側と、第2ハウジング9に設けられた対応する軸受部の内側とに位置する第3ベアリング19を介して回転可能に支持される。
図2に示すように、第2バランサウエイト7は、従動シャフト第1軸部2dの回転軸方向他端部と一体に設けられており、従動側バランサシャフト2の回転軸線を中心として径方向に偏位した状態で拡径する半円柱状に形成されている。第2バランサウエイト7は、第1、第2ハウジング8,9の間に形成されるウエイト収容空間12内に第1バランサウエイト6と共に収容される。
図2に示すように、従動シャフト第2軸部2eは、第2バランサウエイト7の回転軸方向他端部と一体に設けられており、円柱状に形成されている。従動シャフト第2軸部2eは、第1ハウジング8に設けられた従動シャフト用第2軸受部8dの内側と、第2ハウジング9に設けられた対応する軸受部の内側とに位置する第4ベアリング20を介して回転可能に支持される。
図2に示すように、従動シャフト第3軸部2fは、従動シャフト第2軸部2eの回転軸方向他端部と一体に設けられており、従動シャフト第2軸部2eよりも大径の円柱状に形成されている。従動シャフト第3軸部2fのうち従動シャフト第2軸部2eと隣接した第3回転軸方向端面2gが、第1ハウジング8の外側に位置する円弧状の端面である第2スラスト受け面21と当接する。図1に示すように、従動シャフト第3軸部2fの外側に露出した回転軸方向端面である第4回転軸方向端面2hには、従動シャフト第2軸部2eの外周面寄りの位置に、バランサ装置の組立時に用いられる図示せぬ治具が挿入される第2凹溝部22が設けられている。
第2スラスト受け面21には、後述の第4オイル溝28から従動シャフト第2軸部2eの内面と第4ベアリング20の外周面との間の隙間を介してオイルを溜めることが可能な第2凹部23(図5参照)が形成されている。第2凹部23は、第1凹部16と同様の形状を有している。
第2ギア4は、第1ギア3と同様の形状を有する従動側のヘリカルギアであり、第1ギア3と噛み合う。第2ギア4は、第1、第2ハウジング8,9の間に形成されるギア収容空間17内に、第1ギア3および従動ギア5と共に収容される。
第1ハウジング8は、金属材料、例えばアルミニウムによるダイカストによって半割状に形成されており、同じく半割状に形成された第2ハウジング9と共に、バランサシャフト1,2等を収容するハウジングを構成する。第1ハウジング8は、アッパ側、つまり図示せぬ内燃機関側に配置され、第1ハウジング8の四隅には、図1に示すように、図示せぬシリンダブロックの下面に取付固定される4つの脚部8eが、シリンダブロック側に延びるように形成されている。第1ハウジング8は、平面矩形状をなしており、第2ハウジング9との合わせ箇所の外周部に、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向に沿って延びる一対の横梁デッキ部8f,8fと、該横梁デッキ部8f,8fの一端同士並びに他端同士を結合する一対の縦梁デッキ部8g,8gとを有している。これら横梁デッキ部8f,8fおよび縦梁デッキ部8g,8gによって半割状の第1ハウジング8の概ね長方形に連続した開口端面は、第2ハウジング9との合わせ面を形成する。また、各縦梁デッキ部8gには、第1ハウジング8に第2ハウジング9を取付固定する際に用いられるボルト10がねじ込まれる3つの締結孔24が等間隔に設けられている。
さらに、第1ハウジング8は、駆動シャフト用第1軸受部8a、駆動シャフト用第2軸受部8b、従動シャフト用第1軸受部8cおよび従動シャフト用第2軸受部8dを有している。
駆動シャフト用第1軸受部8aは、第1ベアリング11を介して駆動側バランサシャフト1を軸受けする軸受部である。図2および図4に示すように、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向において駆動シャフト用第1軸受部8aの内面の中央位置には、図示せぬオイルパンから供給されるオイルが流れる第1オイル溝25が形成されている。この第1オイル溝25は、周方向に沿って連続する半円弧状の溝として形成されている。
駆動シャフト用第2軸受部8bは、第2ベアリング13を介して駆動側バランサシャフト1を軸受けする軸受部である。図2および図4に示すように、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向において駆動シャフト用第2軸受部8bの内面の中央位置には、図示せぬオイルパンから供給されるオイルが流れる第2オイル溝26が形成されている。この第2オイル溝26は、周方向に沿って連続する半円弧状の溝として形成されている。
従動シャフト用第1軸受部8cは、第3ベアリング19を介して従動側バランサシャフト2を軸受けする軸受部である。図2に示すように、従動側バランサシャフト2の回転軸方向において従動シャフト用第1軸受部8cの内面の中央位置には、図示せぬオイルパンから供給されるオイルが流れる第3オイル溝27が形成されている。この第3オイル溝27は、周方向に沿って連続する半円弧状の溝として形成されている。
従動シャフト用第2軸受部8dは、第4ベアリング20を介して従動側バランサシャフト2を軸受けする軸受部である。図2に示すように、従動側バランサシャフト2の回転軸方向において従動シャフト用第2軸受部8dの内面の中央位置には、図示せぬオイルパンから供給されるオイルが流れる第4オイル溝28が形成されている。この第4オイル溝28は、周方向に沿って連続する半円弧状の溝として形成されている。
第2ハウジング9は、金属材料、例えばアルミニウムによるダイカストによって半割状に形成されたロア側のハウジングである。第2ハウジング9は、駆動シャフト用第3軸受部9a、駆動シャフト用第4軸受部9b、図示せぬ従動シャフト用第3軸受部および図示せぬ従動シャフト用第4軸受部を有している。
駆動シャフト用第3軸受部9aは、駆動シャフト用第1軸受部8aと協働して円環状の軸受部を構成し、第1ベアリング11を介して駆動側バランサシャフト1を軸受けする。図4に示すように、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向において駆動シャフト用第3軸受部9aの内面の中央位置には、図示せぬオイルパンから供給されるオイルが流れる第5オイル溝29が形成されている。この第5オイル溝29は、周方向に沿って連続する半円弧状の溝として形成されており、第1オイル溝25と組み合わされることで円環状の通路を形成する。
駆動シャフト用第4軸受部9bは、駆動シャフト用第2軸受部8bと協働して円環状の軸受部を構成し、第2ベアリング13を介して駆動側バランサシャフト1を軸受けする。図4に示すように、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向において駆動シャフト用第4軸受部9bの内面の中央位置には、図示せぬオイルパンから供給されるオイルが流れる第6オイル溝30が形成されている。この第6オイル溝30は、周方向に沿って連続する半円弧状の溝として形成されており、第2オイル溝26と組み合わされることで円環状の通路を形成する。
従動シャフト用第3軸受部は、従動シャフト用第1軸受部8cと協働して円環状の軸受部を構成し、第3ベアリング19を介して従動側バランサシャフト2を軸受けする。従動側バランサシャフト2の回転軸方向において従動シャフト用第3軸受部の内面の中央位置には、図示せぬオイルパンから供給されるオイルが流れる図示せぬ第7オイル溝が形成されている。第7オイル溝は、周方向に沿って連続する半円弧状の溝として形成されており、第3オイル溝27と組み合わされることで円環状の通路を形成する。
従動シャフト用第4軸受部は、従動シャフト用第2軸受部8dと協働して円環状の軸受部を構成し、第4ベアリング20を介して従動側バランサシャフト2を軸受けする。従動側バランサシャフト2の回転軸方向において従動シャフト用第4軸受部の内面の中央位置には、図示せぬオイルパンから供給されるオイルが流れる図示せぬ第8オイル溝が形成されている。第8オイル溝は、周方向に沿って連続する半円弧状の溝として形成されており、第4オイル溝28と組み合わされることで円環状の通路を形成する。
図5は、駆動シャフト第3軸部1g側から見たときの第1の実施形態のバランサ装置の概略的な側面図である。なお、図5では、第1凹部16および第2凹部23の形状を分かり易くするため、駆動シャフト第3軸部1gおよび従動シャフト第3軸部2fの外形は二点鎖線で示されている。また、図5の線B-Bは直線で示されているが、実際には周方向の断面を示す線である。図6は、図5の線B-Bに沿って切断したバランサ装置の断面図である。なお、図6の部分的な拡大図では、第1凹部16の特徴を説明するために、第1凹部16の形状を誇張して示してある。図7は、図5の線C-Cに沿って切断したバランサ装置の断面図である。
図5に示すように、第1ハウジング8の外側面のうち駆動シャフト第3軸部1gの径方向外側に突出した部分(駆動シャフト第2軸部1fの外周よりも径方向外側の部分)と駆動側バランサシャフト1の回転軸方向にオーバーラップする部分は、半円弧状に連続した第1スラスト受け面14となっている。同様に、第1ハウジング8の外側面のうち従動シャフト第3軸部2fの径方向外側に突出した部分(従動シャフト第2軸部2eの外周よりも径方向外側の部分)と従動側バランサシャフト2の回転軸方向にオーバーラップする部分は、半円弧状に連続した第2スラスト受け面21となっている。第1スラスト受け面14と第2スラスト受け面21とは同様の形状を有しており、また、第1凹部16と第2凹部23とは、互いに平行に延びるバランサシャフト1,2の双方と直交する方向(図5の左右方向)において対称の関係にあるから、以下、代表して第1スラスト受け面14および第1凹部16について説明する。
図5に示すように、半円弧状の第1スラスト受け面14において駆動側バランサシャフト1の回転方向R1の端部を「終端部14b」と定義し、駆動側バランサシャフト1の回転方向R1の逆側の端部を「始端部14a」と定義する。第1凹部16は、円弧状の第1スラスト受け面14の始端部14aに、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向に凹むように設けられている。第1凹部16は、図5に示すように駆動側バランサシャフト1の回転軸方向から見たときに、第1直線部16aと、第1スラスト受け面14の内周に沿った第1円弧部16bと、該第1円弧部16bと異なる曲率を有した第2円弧部16cとによって囲まれた概ね三角形状をなしている。このため、図5に示すように、第1凹部16は、周方向において始端部14aに開口するとともに、径方向内側に開口している。即ち、第1凹部16は、始端部14a上にある第1直線部16aに開口するとともに、第1スラスト受け面14の内周上にある第1円弧部16bに開口している。第1凹部16は、周方向の始端部14aから終端部14bに向けて径方向の幅Waが徐々に狭くなっている。また、第1凹部16は、周方向の幅Wbが径方向の幅Waよりも広くなるように形成されている。
また、図6に示す断面で見たときに、第1スラスト受け面14は駆動シャフト第3軸部1gと概ね平行となっており、第1凹部16は、周方向において始端部14aから終端部14b側に向けて深さが浅くなっている。より詳細には、第1凹部16は、第1スラスト受け面14に繋がる第1傾斜面16dと、該第1傾斜面16dに繋がり、第1凹部16の底部側に延びる第2傾斜面16eとを有しており、第1傾斜面16dおよび第2傾斜面16eを介して深さが浅くなっている。第1傾斜面16dは、図6に示す断面で見たときに駆動シャフト第3軸部1g側に凸となるように湾曲した円弧状の面となっており、一方、第2傾斜面16eは平坦な面となっている。なお、第1傾斜面16dを円弧状の面として形成するのではなく、平坦な面として形成するようにしても良い。第1傾斜面16dの第1スラスト受け面14に対する角度αは、第2傾斜面16eの第1スラスト受け面14に対する角度βよりも小さくなっている。より具体的には、第1傾斜面16dの接線Lと第1スラスト受け面14の平行線M1とによって形成される角度のうち劣角となる角度αは、第2傾斜面16eと第1スラスト受け面14の別の平行線M2とによって形成される角度のうち劣角となる角度βよりも小さくなっている。このように構成された第1凹部16は、周方向において始端部14aから終端部14b側に向けて深さが浅くなっていることで、第1凹部16の体積も、周方向において始端部14aから終端部14b側に向けて減少している。このため、駆動側バランサシャフト1が回転方向R1に回転すると、 第1直線部16a側から第1凹部16に流入したオイルの圧力が第1凹部16の体積の減少に伴って増加し、これにより、オイルが、所謂くさび効果により、図5に矢印F1で示すように第1凹部16において終端部14b側へ移動して、第1スラスト受け面14に供給される。換言すれば、オイルが、所謂くさび効果により、第1凹部16において第2傾斜面16bおよび第1傾斜面16dに沿って矢印F1の方向(図6の右側から左側へ向かう方向)に移動して、第1スラスト受け面14に供給される。
また、図7に示すように、第1凹部16は、径方向において第1凹部16の開口31(第1円弧部16bに相当する)に対して反対側に向けて、つまり、開口31から径方向外側(図7の左側から右側に向かう方向)に向けて深さが浅くなっている。より詳細には、第1凹部16は、第1ハウジング8側に凸となる第1円弧状面16fに沿って径方向外側へと深さが緩やかに浅くなっている。このように構成された第1凹部16において、第1円弧部16b側から第1凹部16に流入したオイルは、駆動側バランサシャフト1の回転方向R1への回転により生じる遠心力により径方向外側(図5の破線の矢印F2の方向)へ押し出されることで、第1スラスト受け面14に供給される。換言すれば、オイルは、遠心力により、開口31から第1円弧状面16fに沿って第1スラスト受け面14へと流れる。
かかるバランサ装置では、内燃機関が始動されてクランクシャフトが回転すると、従動ギア5および第1ギア3を介して駆動側バランサシャフト1がクランクシャフトの2倍の回転速度で回転方向R1へ回転する。これに伴い、従動側バランサシャフト2は、第1、第2ギア3,4の噛み合い伝達を経て駆動側バランサシャフト1とは反対の回転方向R2へ駆動側バランサシャフト1と同じ回転速度で回転する。これにより、第1バランサウエイト6および第2バランサウエイト7も反対方向へ回転しながら駆動側バランサシャフト1および従動側バランサシャフト2自体の左右の遠心力を相殺し、上下方向にのみ起振力を発生させる。このようにバランサシャフト1,2の回転に伴い、第1、第2バランサウエイト6,7が回転して起振力を内燃機関に伝達することにより、内燃機関の二次振動が抑制される。
[第1の実施形態の効果]
上術のように、第1の実施形態では、第1凹部16は、周方向において始端部14aに開口するとともに、径方向内側に、即ち径方向において第1スラスト受け面14の内周に開口している。さらに、第1凹部16は、周方向において始端部14aから終端部14b側に向けて深さが浅くなっているとともに、径方向において第1凹部16の開口31に対して反対側に向けて、つまり、開口31から径方向外側に向けて深さが浅くなっている。
【0012】
このため、回転方向R1への駆動側バランサシャフト1の回転時に、第1直線部16a側から第1凹部16に流入したオイルの圧力が第1凹部16の体積の減少に伴って増加し、これにより、オイルが、所謂くさび効果により、第1凹部16の奥側(回転方向R1に沿った奥側)に流入していき、第1スラスト受け面14へ引き込み易くなる。従って、特に、第1凹部16の先細りした部分よりも周方向奥側にある第1スラスト受け面14の部位が、オイルにより潤滑される。さらに、回転方向R1への駆動側バランサシャフト1の回転時に、第1円弧部16b側から第1凹部16に流入したオイルが、駆動側バランサシャフト1の遠心力に伴って、徐々に浅くなる第1凹部16を通して径方向外側へ押し出されて、第1スラスト受け面14へ供給される。従って、第1凹部16よりも径方向外側にある第1スラスト受け面14の部位が、オイルにより潤滑される。このように、くさび効果を利用した周方向におけるオイルの引き込みや、遠心力を利用した径方向におけるオイルの押し出しによって第1スラスト受け面14にオイルを迅速に供給することにより、バランサ装置に生じるフリクション、つまり、第1スラスト受け面14と駆動シャフト用第3軸受部9aの第1回転軸方向端面1hとの間のフリクションを低減することができる。
【0013】
また、第1の実施形態では、第1凹部16は、周方向の始端部14aから終端部14bに向けて径方向の幅Waが徐々に狭くなっている。
【0014】
このため、第1凹部16のオイルの圧力が周方向に進むにつれて連続的に変化するので、周方向の幅Wbが一様に形成されている場合と比べて、第1スラスト受け面14にオイルを容易に供給することができる。
【0015】
さらに、第1の実施形態では、第1凹部16は、周方向の幅Wbが径方向の幅Waよりも広くなるように形成されている。
【0016】
このため、第1スラスト受け面14の面積、特に径方向に沿った面積を確保しつつ、オイルによる第1スラスト受け面14の潤滑を向上させることができる。
【0017】
また、第1の実施形態では、第1凹部16は、第1スラスト受け面14に繋がる第1傾斜面16dと、該第1傾斜面16dに繋がり、第1凹部16の底部側に延びる第2傾斜面16eとを有している。そして、第1傾斜面16dの第1スラスト受け面14に対する角度αは、第2傾斜面16eの第1スラスト受け面14に対する角度βよりも小さくなっている。
【0018】
このため、角度が大きい第2傾斜面16eに面した部分により第1凹部16の深さ(深さ方向の容積)が確保され、一方、角度が小さい第1傾斜面16dによりオイルの流路が緩やかになる。従って、第1凹部16の容積を広く確保しながら、回転方向R1へ沿った第1凹部16の容積の急激な変化を避けて、第1スラスト受け面14にオイルを容易に供給することができる。
【0019】
さらに、第1の実施形態では、第1傾斜面16dは、断面が円弧状になっている。即ち、第1傾斜面16dは、図6に示す断面で見たときに駆動シャフト第3軸部1g側に凸となるように湾曲した円弧状の面となっている。
【0020】
仮に第1傾斜面16dが平坦な面として形成されている場合には、第1スラスト受け面14と第1傾斜面16dとによってエッジが構成され、オイルがエッジを通過するときにオイルの圧力が急激に変化することになってしまう。
【0021】
しかし、本実施形態のように第1傾斜面16dを円弧状に形成することにより、オイルの圧力の上記の急激な変化を伴うことなく、円弧状の第1傾斜面16dに沿って第1スラスト受け面14にオイルを円滑に供給することができる。
【0022】
また、第1の実施形態では、ハウジングは、内燃機関のシリンダブロックに取り付けられる第1ハウジング8と、該第1ハウジング8に取付固定された第2ハウジング9と、から構成されている。そして、第1スラスト受け面14は、第1ハウジング8に設けられている。
【0023】
このように内燃機関側(アッパ側)に第1スラスト受け面14を設けると、第1凹部16も内燃機関側に位置し、結果として、鉛直方向下側から上側に向けて重力に逆らってオイルを供給することになるが、このような場合でも、上述したくさび効果によって第1凹部16を通してオイルを第1スラスト受け面14に供給することができる。
【0024】
また、アッパ側に第1スラスト受け面14を設けることにより、内燃機関のシリンダブロックを基準として第1スラスト受け面14の位置が規定されるので、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向における第1スラスト受け面14の位置精度が向上する。逆に言えば、仮にロア側に位置する第2ハウジング9に第1スラスト受け面14を設けると、第1ハウジング8と第2ハウジング9との取付時の誤差が付加されることになるので、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向における第1スラスト受け面14の位置精度が低下してしまう。
[第2の実施形態]
図8は、駆動シャフト第3軸部1g側から見たときの第2の実施形態のバランサ装置の概略的な側面図である。なお、図8では、第1凹部16および第2凹部23の形状を分かり易くするため、駆動シャフト第3軸部1gおよび従動シャフト第3軸部2fの外形は二点鎖線で示されている。また、図8では、線D-Dは直線で示されているが、実際には周方向の断面を示す線である。図9は、図8の線D-Dに沿って切断したバランサ装置の断面図である。なお、図9の部分的な拡大図では、第3凹部32の特徴を説明するために、第3凹部32の形状を誇張して示してある。図10は、図8の線E-Eに沿って切断したバランサ装置の断面図である。
【0025】
第2の実施形態では、第1スラスト受け面14および第2スラスト受け面21は、径方向内側ではなく、径方向外側に開口した第3凹部32および第4凹部33をそれぞれ有している。第1スラスト受け面14と第2スラスト受け面21とは同様の形状を有しており、また、第3凹部32と第4凹部33とは、バランサシャフト1,2の双方と直交する方向(図8の左右方向)において対称の関係にあるから、以下、代表して第1スラスト受け面14および第3凹部32について説明する。
【0026】
第3凹部32は、円弧状の第1スラスト受け面14の始端部14aに、駆動側バランサシャフト1の回転軸方向に凹むように設けられている。第3凹部32は、図8に示すように駆動側バランサシャフト1の回転軸方向から見たときに、第2直線部32aと、第1スラスト受け面14の外周に沿った第3円弧部32bと、該第3円弧部32bとは逆側に凸となるように、つまり径方向内側に凸となるように湾曲した第4円弧部32cとによって囲まれた概ね三角形状をなしている。このため、図8に示すように、第3凹部32は、周方向において始端部14aに開口するとともに、径方向外側に開口している。即ち、第3凹部32は、始端部14a上にある第2直線部32aに開口するとともに、第1スラスト受け面14の外周上にある第3円弧部32bに開口している。第3凹部32は、周方向の始端部14aから終端部14bに向けて径方向の幅Wcが徐々に狭くなっている。ここで、互いに反対側に凸となるように円弧を形成する第3円弧部32bおよび第4円弧部32cを第3凹部32が有しているため、第3凹部32の幅Wcの狭くなる度合は、互いに同じ方向に凸となるように円弧を形成する第1円弧部16bおよび第2円弧部16cを有する第1の実施形態の第1凹部16の幅Waと比べて緩やかに変化する。また、第3凹部32は、周方向の幅Wdが径方向の幅Wcよりも広くなるように形成されている。
【0027】
また、図9に示すように、第3凹部32は、第1の実施形態の第1凹部16と同様の傾斜面を構成する第1傾斜面16dおよび第2傾斜面16eを有している。従って、駆動側バランサシャフト1が回転方向R1に回転すると、第3凹部32に流入したオイルの圧力が第3凹部32の体積の減少に伴って増加し、これにより、オイルが、所謂くさび効果により、第3凹部32において第2傾斜面16eおよび第1傾斜面16dに沿って矢印F3の方向(図9の左側から右側へ向かう方向)に移動して、第1スラスト受け面14に供給される。
【0028】
また、図10に示すように、第3凹部32は、該第3凹部32の開口34から反対に向けて、つまり、径方向において第3凹部32の開口34から径方向内側(図10の右側から左側に向かう方向)に向けて深さが浅くなっている。より詳細には、第3凹部32は、第1ハウジング8側に凸となる第2円弧状面32dに沿って径方向内側へと深さが緩やかに浅くなっている。
このように構成された第3凹部32には、オイルが、第6オイル溝30(図4参照)から駆動シャフト用第4軸受部9bの内面と第2ベアリング13の外周面との間の隙間を通って、図8に破線の矢印F4で示すように、駆動シャフト第3軸部1gの背面と第1ハウジング8の外側面との間の間隙を通って流入する。
[第2の実施形態の効果]
上記のように第2の実施形態では、第3凹部32は、径方向の外側に開口し、径方向の外側から内側に向けて深さが浅くなっている。
【0029】
一般に、例えば外部入力等の要因により、駆動側バランサシャフト1が径方向に撓んだときには、偏位した第1バランサウエイト6の影響により、駆動シャフト第3軸部1gの第1回転軸方向端面1hが第1スラスト受け面14の外周寄りの部位に強く当接することになる。
【0030】
従って、本実施形態のように径方向の外側に開口した第3凹部32を設けることにより、第1スラスト受け面14の上記の強く当接する部位にオイルを迅速に供給し、バランサ装置に生じるフリクション、つまり、第1スラスト受け面14と駆動シャフト用第3軸受部9aの第1回転軸方向端面1hとの間のフリクションを低減することができる。
【0031】
なお、上記各実施形態では、バランサシャフト1,2の一部がスラスト受け面14,21に当接する例について開示したが、バランサシャフト1,2に設けられた第1、第2ギア3,4がスラスト受け面に当接するバランサ装置にも本発明を適用することができる。この場合には、第1、第2ギア3,4の歯の向きが図2に示す例とは逆向きに傾斜しており、スラスト力は、一端1a,2a側から他端1b,2b側へ向けてバランサシャフト1,2に作用する。
【符号の説明】
【0032】
1・・・駆動側バランサシャフト、2・・・従動側バランサシャフト、6・・・第1バランサウエイト、7・・・第2バランサウエイト、8・・・第1ハウジング、9・・・第2ハウジング、R1・・・回転方向、14・・・第1スラスト受け面、14a・・・始端部、14b・・・終端部、16・・・第1凹部、16d・・・第1傾斜面、16e・・・第2傾斜面、21・・・第2スラスト受け面、23・・・第2凹部、26・・・第2オイル溝、α・・・角度、β・・・角度、32・・・第3凹部、33・・・第4凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10