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特開2024-40965ロボットハンドの指先構造、ロボットハンドの指先部品及びロボットハンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040965
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ロボットハンドの指先構造、ロボットハンドの指先部品及びロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145641
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 春樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707CU02
3C707CY37
3C707DS01
3C707ES04
3C707EV12
3C707EV14
(57)【要約】
【課題】指先部を構成する弾性体の脱落を抑制し、かつ、指本体に対して弾性体を簡単に交換可能にする。
【解決手段】ロボットハンドの指先構造は、ロボットハンドの指先部を構成し、指の腹側に空洞部を有する弾性体と、前記弾性体の前記空洞部と反対側の部分に埋め込まれた埋込部材と、前記ロボットハンドの指本体に取り付けられると共に前記埋込部材に取り外し可能に取り付けられて、前記弾性体を前記指本体に固定する固定部材と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットハンドの指先部を構成し、指の腹側に空洞部を有する弾性体と、
前記弾性体の前記空洞部と反対側の部分に埋め込まれた埋込部材と、
前記ロボットハンドの指本体に取り付けられると共に前記埋込部材に取り外し可能に取り付けられて、前記弾性体を前記指本体に固定する固定部材と、
を備えるロボットハンドの指先構造。
【請求項2】
前記弾性体の空洞部は、少なくとも前記弾性体における指の幅方向中央部に配置されている、請求項1に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記埋込部材に締結部材によって締結されている、請求項1又は請求項2に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項4】
前記固定部材は、板部を備えており、
前記弾性体における前記埋込部材よりも前記空洞部と反対側の部分には、前記埋込部材に隣接して前記板部が挿入される隙間が設けられており、
前記板部が前記隙間に挿入された状態で前記埋込部材と前記板部とが前記締結部材によって締結されている、請求項3に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項5】
前記弾性体の外周部には、前記隙間に挿入された前記板部と前記埋込部材を締結する前記締結部材としてのねじ部材が通過する貫通孔が形成されている、請求項4に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項6】
前記弾性体の前記空洞部には、前記弾性体よりも低弾性の低弾性部材が挿入されている、請求項1又は請求項2に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項7】
前記指本体における前記固定部材との取付面には、被係合部が設けられており、
前記固定部材における前記指本体との取付面には、前記被係合部と係合して前記弾性体の向きを決める係合部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項8】
ロボットハンドの指先部を構成し、指の腹側に空洞部を有する弾性体と、
前記弾性体の前記空洞部と反対側の部分に埋め込まれた埋込部材と、
前記ロボットハンドの指本体に取り付け可能で且つ前記埋込部材に取り付け及び取り外し可能であって、前記指本体及び前記埋込部材に取り付けられることにより、前記弾性体を前記指本体に固定する固定部材と、
を備えるロボットハンドの指先部品。
【請求項9】
ロボットハンドの指本体と、
前記ロボットハンドの指先部を構成し、指の腹側に空洞部を有する弾性体と、
前記弾性体の前記空洞部と反対側の部分に埋め込まれた埋込部材と、
前記指本体に取り付けられると共に前記埋込部材に取り外し可能に取り付けられて、前記弾性体を前記指本体に固定する固定部材と、
を備えるロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットハンドの指先構造、ロボットハンドの指先部品及びロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークを挟圧するための複数の爪部と、複数の爪部のワークと当接する部位に付設される複数の当接部と、を有するロボットハンドが開示されている。この把持装置の当接部は、弾性を有する素材からなる袋状部材と、該袋状部材に充填される粒状物とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5846057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロボットハンドでは、指先に弾性体を被せることがある。この弾性体は、指先で把持した把持対象物の荷重によって指先から脱落せず、かつ、簡単に交換できることが望まれている。特許文献1に開示の技術では、重量のあるワークを持ち上げるため、爪部に袋状部材が強固に付設されていると推量される。そのため、爪部に対して袋状部材のみを交換することは難しく、爪部と共に袋状部材が交換される。
【0005】
本開示は、指先部を構成する弾性体の脱落を抑制し、かつ、指本体に対して弾性体を簡単に交換可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様のロボットハンドの指先構造は、ロボットハンドの指先部を構成し、指の腹側に空洞部を有する弾性体と、前記弾性体の前記空洞部と反対側の部分に埋め込まれた埋込部材と、前記ロボットハンドの指本体に取り付けられると共に前記埋込部材に取り外し可能に取り付けられて、前記弾性体を前記指本体に固定する固定部材と、を備える。
【0007】
第1態様のロボットハンドの指先構造では、指先部を構成する弾性体の指の腹側(以下、適宜「腹側」と省略して記載する。)に空洞部があるため、指先部(弾性体)で把持対象物を把持する際に、弾性体の指の腹面(以下、適宜「腹面」と省略して記載する。)が空洞部側に弾性変形しやすい。このため、指先部から把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。したがって、上記指先構造によれば、弾性体の腹側に空洞部がないものと比べて、指先部から把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。
なお、弾性体の指の腹側は、弾性体の把持対象物と接触する側と言い換えてもよい。
【0008】
また、第1態様のロボットハンドの指先構造では、弾性体に埋め込まれた埋込部材が固定部材を介して指本体に取り付けられている。このため、上記指先構造では、例えば、指先に弾性体を被せるだけの構成と比べて、把持対象物を把持する際の弾性体の脱落を抑制することができる。また、上記指先構造では、固定部材から埋込部材を取り外すことにより、弾性体を指本体から外すことができる。このように上記指先構造では、埋込部材を取り外した固定部材に別の弾性体の埋込部材を取り付ける簡単な作業で、指本体に対して指先部を構成する弾性体を交換することができる。
【0009】
以上のように、第1態様のロボットハンドの指先構造によれば、指先部を構成する弾性体の脱落を抑制し、かつ、指本体に対して弾性体を簡単に交換することができる。
【0010】
本開示の第2態様のロボットハンドの指先構造は、第1態様のロボットハンドの指先構造において、前記弾性体の空洞部は、少なくとも前記弾性体における指の幅方向中央部に配置されている。
【0011】
第2態様のロボットハンドの指先構造では、弾性体の空洞部が少なくとも弾性体における指の幅方向中央部(以下、適宜「幅方向中央部」と省略して記載する。)に配置されている。指先部で把持対象物を把持する場合、指先部の腹面における幅方向中央部が把持対象物に主に接する。このため、弾性体の腹側の幅方向中央部に空洞部を配置することによって、例えば、弾性体の腹側の幅方向両端部にのみ空洞部を配置する構成と比べて、把持対象物に作用する把持力を効果的に軽減することができる。
【0012】
本開示の第3態様のロボットハンドの指先構造は、第1態様又は第2態様のロボットハンドの指先構造において、前記固定部材は、前記埋込部材に締結部材によって締結されている。
【0013】
第3態様のロボットハンドの指先構造では、締結部材によって埋込部材に固定部材を締結することから、締結工具を用いて固定部材と埋込部材の取り外し作業を簡単に行うことができる。
【0014】
本開示の第4態様のロボットハンドの指先構造は、第3態様のロボットハンドの指先構造において、前記固定部材は、板部を備えており、前記弾性体における前記埋込部材よりも前記空洞部と反対側の部分には、前記埋込部材に隣接して前記板部が挿入される隙間が設けられており、前記板部が前記隙間に挿入された状態で前記埋込部材と前記板部とが前記締結部材によって締結されている。
【0015】
第4態様のロボットハンドの指先構造では、固定部材の板部が弾性体の隙間に挿入された状態で、埋込部材と板部とが締結部材によって締結されている。つまり、固定部材の板部及び埋込部材と固定部材の締結部分が弾性体の内側に位置するため、これらの部位が把持対象物に接するのを抑制することができる。
【0016】
本開示の第5態様のロボットハンドの指先構造は、第4態様のロボットハンドの指先構造において、前記弾性体の外周部には、前記隙間に挿入された前記板部と前記埋込部材を締結する前記締結部材としてのねじ部材が通過する貫通孔が形成されている。
【0017】
第5態様のロボットハンドの指先構造では、弾性体の外周部に形成された貫通孔を通してねじ部材を回すことで、固定部材の板部と埋込部材とを締結(取り付け)及び締結解除(取り外し)することができる。このように弾性体の外周部に貫通孔を形成することで、弾性体の外周から固定部材と埋込部材の締結及び締結解除作業をしやすくなる。
【0018】
本開示の第6態様のロボットハンドの指先構造は、第1態様~第5態様のいずれか一態様のロボットハンドの指先構造において、前記弾性体の前記空洞部には、前記弾性体よりも低弾性の低弾性部材が挿入されている。
【0019】
第6態様のロボットハンドの指先構造では、弾性体の空洞部に低弾性部材を挿入することで、把持対象物を把持する際に把持対象物に作用する把持力を調節することができる。
【0020】
本開示の第7態様のロボットハンドの指先構造は、第1態様~第6態様のいずれか一態様のロボットハンドの指先構造において、前記指本体における前記固定部材との取付面には、被係合部が設けられており、前記固定部材における前記指本体との取付面には、前記被係合部と係合して前記弾性体の向きを決める係合部が設けられている。
【0021】
第7態様のロボットハンドの指先構造では、指本体に弾性体を取り付ける際に、指本体の被係合部に固定部材の係合部を係合させることで、指本体に対する弾性体の位置(向き含む)を決められる。これにより、指本体に弾性体を取り付ける際の位置決め作業が容易になる。
【0022】
本開示の第8態様のロボットハンドの指先部品は、ロボットハンドの指先部を構成し、指の腹側に空洞部を有する弾性体と、前記弾性体の前記空洞部と反対側の部分に埋め込まれた埋込部材と、前記ロボットハンドの指本体に取り付け可能で且つ前記埋込部材に取り付け及び取り外し可能であって、前記指本体及び前記埋込部材に取り付けられることにより、前記弾性体を前記指本体に固定する固定部材と、を備える。
【0023】
第8態様のロボットハンドの指先部品では、指先部を構成する弾性体の指の腹側に空洞部があるため、指先部(弾性体)で把持対象物を把持する際に、弾性体の指の腹面が空洞部側に弾性変形しやすい。このため、指先部から把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。したがって、上記指先部品によれば、弾性体の腹側に空洞部がないものと比べて、指先部から把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。
【0024】
また、第8態様のロボットハンドの指先部品では、弾性体に埋め込まれた埋込部材が固定部材を介して指本体に取り付けられる。このため、上記指先部品では、例えば、指先に弾性体を被せるだけの構成と比べて、把持対象物を把持する際の弾性体の脱落を抑制することができる。また、上記指先部品では、固定部材から埋込部材を取り外すことにより、弾性体を指本体から外すことができる。このように上記指先部品では、埋込部材を取り外した固定部材に別の弾性体の埋込部材を取り付ける簡単な作業で、指本体に対して弾性体を交換することができる。
【0025】
以上のように、第8態様のロボットハンドの指先部品によれば、指先部を構成する弾性体の脱落を抑制し、かつ、指本体に対して弾性体を簡単に交換することができる。
【0026】
本開示の第9態様のロボットハンドは、ロボットハンドの指本体と、前記ロボットハンドの指先部を構成し、指の腹側に空洞部を有する弾性体と、前記弾性体の前記空洞部と反対側の部分に埋め込まれた埋込部材と、前記指本体に取り付けられると共に前記埋込部材に取り外し可能に取り付けられて、前記弾性体を前記指本体に固定する固定部材と、を備える。
【0027】
第9態様のロボットハンドでは、指先部を構成する弾性体の指の腹側に空洞部があるため、指先部(弾性体)で把持対象物を把持する際に、弾性体の指の腹面が空洞部側に弾性変形しやすい。このため、指先部から把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。したがって、上記ロボットハンドによれば、指先部を構成する弾性体の腹側に空洞部がないものと比べて、指先部から把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。
【0028】
また、第9態様のロボットハンドでは、弾性体に埋め込まれた埋込部材が固定部材を介して指本体に取り付けられている。このため、上記ロボットハンドでは、例えば、指先に弾性体を被せるだけの構成と比べて、把持対象物を把持する際の弾性体の脱落を抑制することができる。また、上記ロボットハンドでは、固定部材から埋込部材を取り外すことにより、弾性体を指本体から外すことができる。このように上記ロボットハンドでは、埋込部材を取り外した固定部材に別の弾性体の埋込部材を取り付ける簡単な作業で、指本体に対して弾性体を交換することができる。
【0029】
以上のように、第9態様のロボットハンドによれば、指先部を構成する弾性体の脱落を抑制し、かつ、指本体に対して弾性体を簡単に交換することができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、指先部を構成する弾性体の脱落を抑制し、かつ、指本体に対して弾性体を簡単に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の一実施形態に係るロボットハンドの指を示す斜視図である。
図2図1に示す指の縦断面図である。
図3図2に示す指の指先部の拡大縦断面図である。
図4図3に示す指先部の4X-4X線断面図である。
図5図3に示す指先部を矢印5X方向から見た正面図である。
図6図2に示す指先部の分解斜視図である。
図7図6に示す指先部の7X-7X線断面図である。
図8】本開示の他の実施形態に係るロボットハンドの指先部の拡大縦断面図(図3に対応する拡大縦断面図)である。
図9図8に示す指先部の9X-9X線断面図である。
図10】本開示の他の実施形態に係るロボットハンドの指先部の拡大縦断面図(図3に対応する拡大縦断面図)である。
図11】本開示の一実施形態に係るロボットハンドを用いた搬送ロボットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0033】
本開示の一実施形態のロボットハンドの指先構造は、ロボットハンド20(図11参照)が有する複数の指22の指先の構造である。図11には、本実施形態のロボットハンド20を用いた搬送ロボット16の一例が示されている。
【0034】
搬送ロボット16は、図11に示されるように、回転可能な台座部17と、支柱部18と、伸縮可能なアーム部19と、ハンド部(把持部ともいう)としてのロボットハンド20と、を備える。この搬送ロボット16では、アーム部19が伸縮することでロボットハンド20が把持対象物に接近したり離れたりする。アーム部19が伸びてロボットハンド20の複数の指22で把持対象物を把持し、その状態でアーム部19を縮ませることで把持対象物が持ち上げられる。その後、台座部17を回転させて、別の場所に把持対象物を降ろす。このように搬送ロボット16を用いることで把持対象物を搬送することが可能になる。
【0035】
図1及び図2に示されるように、指22は、指本体30と、指先部50と、を備えている。
【0036】
指本体30は、指22を構成する部分のうち駆動力が付与されることで湾曲する部分である。具体的には、指本体30は、駆動力の付与により湾曲して指先部50を把持対象物に近づけ、そして接触させる部分である。本実施系形態では、一例として、指本体30を流体の圧力によって湾曲する流体圧アクチュエータで構成している。なお、ここでいう流体には、気体、液体が含まれる。
【0037】
指本体30は、図2に示されるように、アクチュエータ部32と、封止機構34と、封止機構36と、を備えている。
【0038】
アクチュエータ部32は、筒状であり、両端部が封止機構34及び封止機構36によって封止されている。また、アクチュエータ部32の内部には、流体が供給されるようになっている。アクチュエータ部32の内部に流体が供給されると、アクチュエータ部32が湾曲する。
【0039】
アクチュエータ部32は、図2及び図3に示されるように、チューブ38と、スリーブ40と、拘束部材42と、を備えている。
【0040】
チューブ38は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ38は、流体による収縮及び膨張を繰り返すため、ゴムなどの弾性材料によって構成される。
【0041】
スリーブ40は、円筒状であり、チューブ38の外周面を覆う。このスリーブ40は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ40は、配向されたコードがこのような菱形の形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ38の収縮及び膨張を制限しつつ追従する。スリーブ40を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。なお、本開示はこの構成に限定されない。例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維のコードを用いてもよい。
【0042】
拘束部材42は、チューブ38とスリーブ40との間に設けられている。拘束部材42は、アクチュエータ部32の軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向に直交する方向(アクチュエータ部32の径方向)に変形可能な部材である。この拘束部材42は、チューブ38の一端から他端まで延びている。なお、本実施形態では、拘束部材42の一例として、板バネを用いている。
【0043】
封止機構34は、図2に示されるように、封止部材34A及びかしめ部材34Bを備える。封止部材34Aは、チューブ38の一端部(図2では右側の端部)を封止する。また、かしめ部材34Bは、チューブ38及びスリーブ40を封止部材34Aと共にかしめる。封止部材34Aには、チューブ38内に流体を供給するための供給路34Cが設けられている。供給路34Cには、アクチュエータ部32に駆動力を付与する駆動圧力源、具体的には、気体や液体のコンプレッサから延びる配管が接続される。
【0044】
封止機構36は、図2及び図3に示されるように、封止部材36A及びかしめ部材36Bを備える。封止部材36Aは、チューブ38の他端部(図2では左側の端部)を封止する。また、かしめ部材36Bは、チューブ38及びスリーブ40を封止部材36Aと共にかしめる。封止部材36Aには、後述する固定部材70を取り付けるための取付孔36Cが設けられている。
【0045】
指先部50は、指22の先端部分であり、把持対象物に接する部分である。この指先部50は、弾性体52と、埋込部材60と、固定部材70と、を備えている。
【0046】
弾性体52は、図3及び図4に示されるように、指の腹側に空洞部54を有している。なお、ここでいう指22の腹側とは、指22の内側を指している。指の内側は図3及び図4において、矢印INで示す側である。この空洞部54は、弾性体52における指本体30側(言い換えると、弾性体52の先端と反対側)の面に開口している。また、弾性体52の空洞部54は、少なくとも弾性体52における指22の幅方向中央部に配置されている。なお、指22の幅方向は図4において、矢印Wで示す方向である。本実施形態の弾性体52の空洞部54は、図4に示されるように、指22の幅方向中央部から両端部にわたって形成されている。さらに、弾性体52の空洞部54は、図3に示されるように、弾性体52の開口側から先端に向けて延びている。なお、本実施形態では、弾性体52の先端形状が半球状とされているが、本開示はこの構成に限定されない。把持対象物を把持する条件(把持対象物の形状や把持力等)に応じて最適な先端形状を用いることが好ましい。
【0047】
また、弾性体52には、空洞部54と反対側(指22の背側)に埋込部材60が埋め込まれており、この埋込部材60に隣接して隙間56が形成されている。この隙間56には、後述する固定部材70の板部72が挿入されている。
【0048】
弾性体52は、把持対象物に接する部分であるため、低弾性な材料で形成されることが好ましい。例えば、弾性体52をシリコンゴムで形成してもよい。弾性体52をシリコンゴムで形成する場合、弾性体52を天然ゴムで形成する場合と比べて、弾性体52の形状を把持に適した形状に近づけられる。
【0049】
また、弾性体52の内側外周面、すなわち、指先部50の腹面50Aに滑り止め部を設けてもよい。滑り止め部を設けることで、指22で把持した把持対象物の脱落を抑制することができる。なお、滑り止め部は、腹面50Aに設けた溝や凹凸等でもよい。また、弾性体52において、滑り止め部のみ他の部分と性質の異なる(例えば、摩擦力の高い)弾性材料で形成してもよい。なお、本実施形態では、弾性体52の内側外周面に、滑り止め部として、弾性体52の周方向に延びる溝58を指22の長手方向に間隔をあけて複数形成している(図3及び図5参照)。なお、指22の長手方向(指22の延在方向ともいう)は指本体30のアクチュエータ部32の軸方向と同じ方向である。したがって、指22の長手方向を図中矢印AD方向で示す。また、図面における符号CLは指本体30及び指先部50を含めた指22の中心線を示している。
【0050】
また、弾性体52の外側外周面、すなわち、指先部50の背面50B側に貫通孔59が形成されている(図3及び図4参照)。この貫通孔59は、隙間56に挿入された板部72と埋込部材60を締結する締結部材としてのねじ部材80が通過するための孔である。本実施形態では、貫通孔59の孔径がねじ部材80のねじ頭80Aの外径よりも大径とされている。
【0051】
埋込部材60は、図4に示されるように、弾性体52の空洞部54と反対側の部分に埋め込まれている。具体的には、埋込部材60は弾性体52に埋め込まれることで弾性体52に固定されている。なお、埋込部材60は、弾性体52の成形時(例えば、インサート成形時)に埋め込まれると共に固定(固着)されてもよいし、成形後の弾性体52に埋め込むと共に接着剤等で固定されてもよい。
【0052】
埋込部材60は、図3及び図4に示されるように、板状に形成されており、弾性体52の開口側から先端に向けて延びている。埋込部材60は、弾性体52よりも高弾性材料によって構成されている。本実施形態では、一例として埋込部材60を金属材料で形成している。この埋込部材60には、固定部材70を締結固定するためのねじ部材80がねじ込まれるねじ孔62(図6及び図7参照)が設けられている。
【0053】
図3及び図6に示されるように、埋込部材60には、固定部材70が取り外し可能に取り付けられている。この固定部材70は、指本体30の封止部材36Aに取り付けられている。具体的には、固定部材70は、L字状に折り曲げられた板材であり、板材の一方側が埋込部材60にねじ部材80を用いて締結固定される板部72とされ、板材の他方側が指本体30の封止部材36Aにねじ部材82を用いて締結固定される板部74とされている。固定部材70の板部72は、弾性体52の隙間56に挿入可能とされている。板部72を隙間56に挿入した状態では、図3に示されるように、埋込部材60に板部72が隣接する。この状態で埋込部材60と板部72がねじ部材80によって締結固定される。
【0054】
固定部材70は、弾性体52よりも高弾性材料によって構成されている。本実施形態では、一例として固定部材70を金属材料で形成している。この固定部材70の板部72には、埋込部材60に締結固定するためのねじ部材80のねじ部80Bが通過する通過孔72A(図6参照)が設けられている。一方、固定部材70の板部74には、封止部材36Aに締結固定するためのねじ部材82のねじ部82Bが通過する通過孔74A(図6参照)が設けられている。なお、符号82Aはねじ部材82のねじ頭を指す。
【0055】
なお、本実施形態では、図6に示されるように、ねじ部材80及びねじ部材82として皿ねじを用いているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、なべねじやボルトを用いてもよい。
【0056】
また、指本体30の固定部材70との取付面36Dには、図3及び図6に示されるように、被係合部としての凹部37が設けられ、固定部材70における指本体30との取付面74Bには、凹部37と係合(嵌合)して弾性体52の向きを決める係合部としての凸部75が設けられてもよい。具体的には、封止部材36Aの取付孔36Cが設けられた側の面である取付面36Dに凹部37が設けられている。一方、板部74の外面(板部72と反対側の面)である取付面74Bに凸部75が設けられている。凸部75を凹部37に嵌合させることで、指本体30に対して弾性体52の位置(向き)が決まる。
【0057】
なお、本実施形態の指先部品100は、弾性体52と、埋込部材60と、固定部材70とを備える。すなわち、指先部品100は、指先部50を構成する弾性体52と埋込部材60に固定部材70を取り付けた部品である。指本体30に対して弾性体52を交換する場合、交換部品である指先部品100は、上記のように弾性体52の埋込部材60に固定部材70を取り付けた状態又は弾性体52及び埋込部材60と、固定部材70とを同じ入れ物に入れた状態で出荷される。
【0058】
(作用)
次に本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のロボットハンド20の指先構造では、指先部50を構成する弾性体52の腹側に空洞部54があるため、指先部50(弾性体52)で把持対象物を把持する際に、弾性体52の腹面50Aが空洞部54側に弾性変形しやすい。このため、指先部50から把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。したがって、本実施形態では、弾性体52の腹側に空洞部54がないものと比べて、指先部50から把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。なお、弾性体52の腹側は、弾性体52の把持対象物と接触する側と言い換えてもよい。
【0059】
また、本実施形態の指先構造では、弾性体52に埋め込まれた埋込部材60が固定部材70を介して指本体30に取り付けられている。このため、本実施形態では、例えば、指先に弾性体を被せるだけの構成と比べて、把持対象物を把持する際の弾性体52の脱落を抑制することができる。また、本実施形態では、固定部材70から埋込部材60を取り外すことにより、指先部50を構成する弾性体52を指本体30から外すことができる。このように本実施形態では、埋込部材60を取り外した固定部材70に別の弾性体52の埋込部材60を取り付ける簡単な作業で、指本体30に対して弾性体52を交換することができる。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、指先部50を構成する弾性体52の脱落を抑制し、かつ、指本体30に対して弾性体52を簡単に交換することができる。
【0061】
本実施形態の指先構造では、弾性体52の空洞部54が少なくとも弾性体52における指の幅方向中央部に配置されている。指先部50で把持対象物を把持する場合、指先部50の腹面50Aにおける幅方向中央部が把持対象物に主に接する。このため、弾性体52における指の幅方向中央部に空洞部54を配置することによって、例えば、弾性体52における指の幅方向両端部にのみ空洞部を配置する構成と比べて、把持対象物に作用する把持力を効果的に軽減することができる。特に本実施形態では、空洞部54を指先部50の腹面50Aにおける幅方向中央部から両端部にわたって設けていることから、指先部50の腹面50Aのどの部分で把持対象物を把持しても把持対象物に作用する把持力を軽減することができる。
【0062】
本実施形態の指先構造では、ねじ部材80によって埋込部材60に固定部材70を締結することから、締結工具を用いて固定部材70と埋込部材60の取り外し作業を簡単に行うことができる。
【0063】
本実施形態の指先構造では、固定部材70の板部72が弾性体52の隙間56に挿入された状態で、埋込部材60と板部72とがねじ部材80によって締結されている。つまり、固定部材70の板部72及び埋込部材60と固定部材70の締結部分が弾性体52の内側に位置するため、これらの部位が把持対象物に接するのを抑制することができる。
【0064】
本実施形態の指先構造では、弾性体52の外周部に形成された貫通孔59を通してねじ部材80を回すことで、固定部材70の板部72と埋込部材60とを締結(取り付け)及び締結解除(取り外し)することができる。このように弾性体52の外周部に貫通孔59を形成することで、弾性体52の外周から固定部材70と埋込部材60の締結及び締結解除作業をしやすくなる。
【0065】
本実施形態の指先構造では、指本体30に指先部50を取り付ける際に、指本体30の凹部37に固定部材70の凸部75を係合(嵌合)させることで、指本体30に対する指先部50の位置(向き含む)を決められる。これにより、指本体30に指先部50を取り付ける際の位置決め作業が容易になる。
【0066】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態の一例について説明したが、本開示の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。例えば、図8及び図9に示される指先部90のように弾性体52の空洞部54に、弾性体52よりも低弾性の低弾性部材92が挿入されていてもよい。この低弾性部材92としては、例えば、ウレタン等のクッション材を用いることが好ましい。このように弾性体52の空洞部54に低弾性部材92を挿入した指先構造では、空洞部54の弾性率によって、把持対象物を把持する際に把持対象物に作用する把持力を調節することができる。なお、低弾性部材92は、空洞部54に対して抜き差し可能であってもよい。このような構成の場合、弾性率の異なる低弾性部材92を複数準備し、把持条件に応じて最適な低弾性部材92を空洞部54に挿入することで、把持対象物に作用する把持力を最適化することが可能になる。なお、図8における符号102は、弾性体52、埋込部材60、固定部材70及び低弾性部材92を備える指先部品を指す。
【0067】
前述の実施形態では、埋込部材60と固定部材70の取り付けにねじ部材80を用いているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、図10に示される指先部94のように、固定部材97の板部98に設けられた爪部99が埋込部材96の凹部96Aに引っ掛かる構成としてもよい。なお、図10における符号104は、弾性体95、埋込部材96及び固定部材97を備える指先部品を指す。
【0068】
前述の実施形態では、弾性体52の腹側に一つの空洞部54を設けているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、弾性体52の腹側に複数の空洞部を設ける構成でもよい。
【0069】
前述の実施形態では、固定部材70に係合部として凸部75を設け、封止部材36Aに被係合部として凹部37を設けているが、本開示はこの構成に限定されない。指本体30に対する弾性体52の位置(向き)決めができればよく、例えば、固定部材70に凹部を設け、封止部材36Aに凸部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0070】
20・・・ロボットハンド、22・・・指、30・・・指本体、36D・・・取付面、37・・・凹部(被係合部の一例)、50・・・指先部、50A・・・腹面、52・・・弾性体、54・・・空洞部、56・・・隙間、59・・・貫通孔、60・・・埋込部材、70・・・固定部材、72・・・板部、72A・・・通過孔、74B・・・取付面、75・・・凸部(係合部の一例)、80・・・ねじ部材(締結部材の一例)、90・・・指先部、92・・・低弾性部材、94・・・指先部、95・・・弾性体、96・・・埋込部材、97・・・固定部材、98・・・板部、100・・・指先部品、102・・・指先部品、104・・・指先部品、W・・・指の幅方向。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11