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特開2024-40966ロボットハンドの指先構造及びロボットハンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040966
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ロボットハンドの指先構造及びロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145642
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 春樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 勝也
(72)【発明者】
【氏名】戸▲崎▼ 博之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707CU02
3C707DS01
3C707ES04
3C707EV12
3C707EV14
(57)【要約】
【課題】指先部を構成する弾性体で把持対象物に接する構成において、把持対象物に対する把持性能を向上させる。
【解決手段】ロボットハンドの指先構造は、ロボットハンドの指先部を構成する弾性体と、前記弾性体内に挿入され、指の腹側において前記弾性体の内面との間に隙間が形成される取付部材と、前記ロボットハンドの指本体の先端部に設けられ、前記取付部材が取り外し可能に取り付けられる被取付部材と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットハンドの指先部を構成する弾性体と、
前記弾性体内に挿入され、指の腹側において前記弾性体の内面との間に隙間が形成される取付部材と、
前記ロボットハンドの指本体の先端部に設けられ、前記取付部材が取り外し可能に取り付けられる被取付部材と、
を備えるロボットハンドの指先構造。
【請求項2】
前記取付部材は、弾性変形可能な係止爪を有し、
前記被取付部材は、前記取付部材が取り付けられた状態で前記係止爪が引っ掛かる引掛り部を有する、請求項1に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項3】
前記係止爪は、指の幅方向に弾性変形する、請求項2に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項4】
前記被取付部材は、前記取付部材が挿入される筒部を有し、
前記引掛り部は、前記筒部の前記幅方向に互いに対向する位置に一対設けられ、
前記係止爪は、前記取付部材の前記幅方向に互いに対向する位置に一対設けられている、請求項3に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項5】
前記被取付部材は、前記指本体の先端部に締結部材によって固定されている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のロボットハンドの指先構造。
【請求項6】
ロボットハンドの指本体と、
前記ロボットハンドの指先部を構成する弾性体と、
前記弾性体内に挿入され、指の腹側において前記弾性体の内面との間に隙間が形成される取付部材と、
前記ロボットハンドの指本体の先端部に設けられ、前記取付部材が取り外し可能に取り付けられる被取付部材と、
を備えるロボットハンド。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットハンドの指先構造及びロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロボットハンドが開示されている。このロボットハンドでは、指を流体圧アクチュエータで構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-88999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロボットハンドでは、把持対象物の滑り止め用として指先に弾性体を被せることがある。しかしながら、指先が硬い材料で形成されている場合、弾性体を被せても、把持対象物との接触範囲に均等に把持力を作用させることが難しく、把持性能に改善の余地がある。
【0005】
本開示は、指先部を構成する弾性体で把持対象物に接する構成において、把持性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様のロボットハンドの指先構造は、ロボットハンドの指先部を構成する弾性体と、前記弾性体内に挿入され、指の腹側において前記弾性体の内面との間に隙間が形成される取付部材と、前記ロボットハンドの指本体の先端部に設けられ、前記取付部材が取り外し可能に取り付けられる被取付部材と、を備える。
【0007】
第1態様のロボットハンドの指先構造では、指先部を構成する弾性体の内面と取付部材との間に隙間が形成されているため、指先部(弾性体)で把持対象物を把持する際に、弾性体の指の腹面(以下、適宜「腹面」と省略して記載する。)が隙間の分だけ弾性変形する。このように弾性体の把持対象物に接する腹面が、把持対象物の形状に合わせて弾性変形することで、腹面と把持対象物との接触面積が広がり、腹面から把持対象物へ広い範囲で均等に把持力が作用する。これにより、上記指先構造では、例えば、腹側において弾性体の内面と取付部材とが常時接している構成と比べて、把持対象物を把持しやすくなる。すなわち、把持対象物に対する把持性能が向上する。なお、弾性体の指の腹側は、弾性体の把持対象物と接触する側と言い換えてもよい。
【0008】
また、第1態様のロボットハンドの指先構造では、弾性体内に挿入される取付部材が被取付部材に取り外し可能に取り付けられている。上記指先構造では、被取付部材から取付部材を取り外すことにより、弾性体を指本体から外すことができる。このように上記指先構造では、取付部材を取り外した被取付部材に別の弾性体の取付部材を取り付ける簡単な作業で、指本体に対して指先部を構成する弾性体を交換することができる。
【0009】
以上のように、第1態様のロボットハンドの指先構造によれば、指先部を構成する弾性体で把持対象物に接する構成において、把持対象物に対する把持性能を向上させることができる。
【0010】
本開示の第2態様のロボットハンドの指先構造は、第1態様のロボットハンドの指先構造において、前記取付部材は、弾性変形可能な係止爪を有し、前記被取付部材は、前記取付部材が取り付けられた状態で前記係止爪が引っ掛かる引掛り部を有する。
【0011】
第2態様のロボットハンドの指先構造では、取付部材の係止爪を被取付部材の引掛り部に引っ掛けることで取付部材を被取付部材に取り付けることができる。すなわち、上記指先構造では、簡単な作業で取付部材を被取付部材に取り付けることができる。
【0012】
本開示の第3態様のロボットハンドの指先構造は、第2態様のロボットハンドの指先構造において、前記係止爪は、指の幅方向に弾性変形する。
【0013】
第3態様のロボットハンドの指先構造では、係止爪を指の幅方向に弾性変形させることで、係止爪と引掛り部の引っ掛かりを解除することができる。ここで、係止爪が指の厚み方向、すなわち、指の腹面から背面への方向で弾性変形する場合、指先部で把持対象物を把持した際に係止爪が弾性変形して取付部材と共に弾性体が指本体から脱落する虞があるが、係止爪が弾性変形する方向を指の幅方向としているので、把持対象物を把持した際に弾性体が指本体から脱落するのを抑制することができる。
【0014】
本開示の第4態様のロボットハンドの指先構造は、第3態様のロボットハンドの指先構造において、前記被取付部材は、前記取付部材が挿入される筒部を有し、前記引掛り部は、前記筒部の前記幅方向に互いに対向する位置に一対設けられ、前記係止爪は、前記取付部材の前記幅方向に互いに対向する位置に一対設けられている。
【0015】
第4態様のロボットハンドの指先構造では、取付部材を筒部に挿入することで一対の引掛り部に一対の係止爪がそれぞれ引っ掛かる。ここで、一対の係止爪を一対の引掛り部に引っ掛けるため、取付部材が被取付部材に安定した姿勢で引っ掛かる。これにより、把持対象物を把持している最中に被取付部材から取付部材と共に弾性体が脱落するのを抑制することができる。
【0016】
本開示の第5態様のロボットハンドの指先構造は、第1態様~第4態様のロボットハンドの指先構造において、前記被取付部材は、前記指本体の先端部に締結部材によって固定されている。
【0017】
第5態様のロボットハンドの指先構造では、締結部材で指本体の先端部に被取付部材を取り付けていることから、指本体に被取付部材を取り付けやすい。
【0018】
本開示の第6態様のロボットハンドは、ロボットハンドの指本体と、前記ロボットハンドの指先部を構成する弾性体と、前記弾性体内に挿入され、指の腹側において前記弾性体の内面との間に隙間が形成される取付部材と、前記ロボットハンドの指本体の先端部に設けられ、前記取付部材が取り外し可能に取り付けられる被取付部材と、を備える。
【0019】
第6態様のロボットハンドでは、指先部を構成する弾性体の内面と取付部材との間に隙間が形成されているため、指先部(弾性体)で把持対象物を把持する際に、弾性体の指の腹面(以下、適宜「腹面」と省略して記載する。)が隙間の分だけ弾性変形する。このように弾性体の把持対象物に接する腹面が、把持対象物の形状に合わせて弾性変形することにより、腹面と把持対象物との接触面積が広がり、腹面から把持対象物へ広い範囲で均等に把持力が作用する。これにより、上記ロボットハンドでは、例えば、腹側において弾性体の内面と取付部材とが常時接している構成と比べて、把持対象物が把持しやすくなる。すなわち、把持対象物に対する把持性能が向上する。
【0020】
また、第6態様のロボットハンドでは、弾性体内に挿入される取付部材が被取付部材に取り外し可能に取り付けられている。上記ロボットハンドでは、被取付部材から取付部材を取り外すことにより、弾性体を指本体から外すことができる。このように上記ロボットハンドでは、取付部材を取り外した被取付部材に別の弾性体の取付部材を取り付ける簡単な作業で、指本体に対して指先部を構成する弾性体を交換することができる。
【0021】
以上のように、第6態様のロボットハンドによれば、指先部を構成する弾性体で把持対象物に接する構成において、把持対象物に対する把持性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、指先部を構成する弾性体で把持対象物に接する構成において、把持対象物に対する把持性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の一実施形態に係るロボットハンドの指を示す斜視図である。
図2図1に示す指の縦断面図である。
図3図2に示す指の指先部の拡大縦断面図である。
図4図3に示す指先部の4X-4X線断面図(横断面図)である。
図5図3に示す指先部を矢印5X方向から見た正面図である。
図6図2に示す指先部の分解斜視図である。
図7】本開示の一実施形態に係るロボットハンドを用いた搬送ロボットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0025】
本開示の一実施形態のロボットハンドの指先構造は、ロボットハンド20(図7参照)が有する複数の指22の指先の構造である。図7には、本実施形態のロボットハンド20を用いた搬送ロボット16の一例が示されている。
【0026】
搬送ロボット16は、図7に示されるように、回転可能な台座部17と、支柱部18と、伸縮可能なアーム部19と、ハンド部(把持部ともいう)としてのロボットハンド20と、を備える。この搬送ロボット16では、アーム部19が伸縮することでロボットハンド20が把持対象物に接近したり離れたりする。アーム部19が伸びてロボットハンド20の複数の指22で把持対象物を把持し、その状態でアーム部19を縮ませることで把持対象物が持ち上げられる。その後、台座部17を回転させて、別の場所に把持対象物を降ろす。このように搬送ロボット16を用いることで把持対象物を搬送することが可能になる。
【0027】
図1及び図2に示されるように、指22は、指本体30と、指先部50と、を備えている。
【0028】
指本体30は、指22を構成する部分のうち駆動力が付与されることで湾曲する部分である。具体的には、指本体30は、駆動力の付与により湾曲して指先部50を把持対象物に近づけ、そして接触させる部分である。本実施形態では、一例として、指本体30を流体の圧力によって湾曲する流体圧アクチュエータで構成している。なお、ここでいう流体には、気体、液体が含まれる。
【0029】
指本体30は、図2に示されるように、アクチュエータ部32と、封止機構34と、封止機構36と、を備えている。
【0030】
アクチュエータ部32は、筒状であり、両端部が封止機構34及び封止機構36によって封止されている。また、アクチュエータ部32の内部には、流体が供給されるようになっている。アクチュエータ部32の内部に流体が供給されると、アクチュエータ部32が湾曲する。
【0031】
アクチュエータ部32は、図2及び図3に示されるように、チューブ38と、スリーブ40と、拘束部材42と、を備えている。
【0032】
チューブ38は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ38は、流体による収縮及び膨張を繰り返すため、ゴム等の弾性材料によって構成される。
【0033】
スリーブ40は、円筒状であり、チューブ38の外周面を覆う。このスリーブ40は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ40は、配向されたコードがこのような菱形の形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ38の収縮及び膨張を制限しつつ追従する。スリーブ40を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。なお、本開示はこの構成に限定されない。例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)等の高強度繊維のコードを用いてもよい。
【0034】
拘束部材42は、チューブ38とスリーブ40との間に設けられている。拘束部材42は、アクチュエータ部32の軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向に直交する方向(アクチュエータ部32の径方向)に変形可能な部材である。この拘束部材42は、チューブ38の一端から他端まで延びている。なお、本実施形態では、拘束部材42の一例として、板バネを用いている。
【0035】
封止機構34は、図2に示されるように、封止部材34A及びかしめ部材34Bを備える。封止部材34Aは、チューブ38の一端部(図2では右側の端部)を封止する。また、かしめ部材34Bは、チューブ38及びスリーブ40を封止部材34Aと共にかしめる。封止部材34Aには、チューブ38内に流体を供給するための供給路34Cが設けられている。供給路34Cには、アクチュエータ部32に駆動力を付与する駆動圧力源、具体的には、気体や液体のコンプレッサから延びる配管が接続される。
【0036】
封止機構36は、図2及び図3に示されるように、封止部材36A及びかしめ部材36Bを備える。封止部材36Aは、チューブ38の他端部(図2では左側の端部)を封止する。また、かしめ部材36Bは、チューブ38及びスリーブ40を封止部材36Aと共にかしめる。封止部材36Aには、後述する被取付部材70を取り付けるための取付孔36Cが設けられている。
【0037】
指先部50は、指22の先端部分であり、把持対象物に接する部分である。この指先部50は、弾性体52と、取付部材60と、被取付部材70と、を備えている。
【0038】
なお、以下でいう指先部50の腹側(適宜「腹側」と省略して記載する。)とは、指22の腹側であり、指22の内側を指している。指22の内側は図3及び図5において、矢印INで示す側である。また、指先部50背側(適宜「背側」と省略して記載する。)とは、指22の背側であり、指22の外側を指している。指22の外側は図3及び図5において、矢印OUTで示す側である。なお、本実施形態の指22は、腹側に曲がる。
【0039】
また、指先部50の幅方向(適宜「幅方向」と省略して記載する。)とは、指22の幅方向であり、指22の厚み方向(内外方向)と直交する方向である。この指22の幅方向は図4及び図5において、矢印Wで示す方向である。
【0040】
弾性体52は、図3及び図4に示されるように、中空状に形成されている。言い換えると、弾性体52は、中空部54を有している。この中空部54は、弾性体52における指本体30側(言い換えると、弾性体52の先端と反対側)の面に開口している。また、弾性体52の中空部54は、図3に示されるように、弾性体52の開口側から先端に向けて延びている。弾性体52の内部、言い換えると中空部54には、取付部材60が挿入されている。なお、本実施形態では、弾性体52の先端形状が半球状とされているが、本開示はこの構成に限定されない。把持対象物を把持する条件(把持対象物の形状や把持力等)に応じて最適な先端形状を用いることが好ましい。
【0041】
弾性体52は、指先部50の外皮を構成し、把持対象物に接する部分であるため、低弾性な材料で形成されることが好ましい。例えば、弾性体52をシリコンゴムで形成してもよい。弾性体52をシリコンゴムで形成する場合、弾性体52を天然ゴムで形成する場合と比べて、弾性体52の形状を把持に適した形状に近づけられる。
【0042】
また、弾性体52の内側外周面、すなわち、指先部50の腹面50Aに滑り止め部を設けてもよい。滑り止め部を設けることで、指22で把持した把持対象物の脱落を抑制することができる。なお、滑り止め部は、腹面50Aに設けた溝や凹凸等でもよい。また、弾性体52において、滑り止め部のみ他の部分と性質の異なる(例えば、摩擦力の高い)弾性材料で形成してもよい。なお、本実施形態では、弾性体52の内側外周面に、滑り止め部として、弾性体52の周方向に延びる溝58を指22の長手方向に間隔をあけて複数形成している(図3及び図5参照)。ここでいう指22の長手方向(指22の延在方向ともいう)は、指本体30のアクチュエータ部32の軸方向と同じ方向である。指22の長手方向を図中矢印AD方向で示す。また、図面における符号CLは指本体30及び指先部50を含めた指22の中心線を示している。
【0043】
取付部材60は、図3及び図4に示されるように、弾性体52内に挿入されている。この取付部材60は、本体62と、係止爪64と、支持部66とを備えている。
【0044】
本体62は、取付部材60を弾性体52内に保持するための部分である。この本体62は、指先部50の先端側に位置する部分が半球状に形成されている。本体62は、弾性体52の中空部54における小径部54Aに圧入されることで弾性体52内に保持される。
【0045】
係止爪64は、取付部材60を被取付部材70に取り外し可能に取り付けるための部分である。この係止爪64は、弾性変形可能に構成されている。具体的には、係止爪64は、幅方向に弾性変形するように構成されている。この係止爪64は、本体62から指先部50の先端と反対側(指22の根元側)に向けて延びる弾性板64Aと、弾性板64Aに設けられ、後述する引掛り部76に引っ掛かる爪部64Bとを備えている。弾性板64Aは、幅方向が板厚方向であり、幅方向に弾性変形(撓み変形)する。また爪部64Bは、弾性板64Aの端部(自由端)に設けられ、幅方向に突出している。ここで係止爪64は、幅方向に互いに対向する位置に一対設けられている。そして、一対の係止爪64の各々の爪部64Bは、互いに逆方向(言い換えると幅方向の外側)を向いて突出している。
【0046】
支持部66は、被取付部材70に対して取付部材60を支持する部分である。この支持部66は、本体62から指先部50の先端と反対側に向けて延びる板状の部分であり、一対の係止爪64間に設けられている。この支持部66は、係止爪64が引掛り部76に引っ掛かった状態で被取付部材70の筒部72の端部に接することで被取付部材70に対して取付部材60を支持する。また、支持部66には筒部72の切欠部72Aに差し込まれる差込部66Aが形成されている。この差込部66Aは、係止爪64が引掛り部76に引っ掛かった状態で切欠部72Aに差し込まれ、被取付部材70に対する取付部材60の軸回りの回転を阻止する。
【0047】
また、取付部材60は、図3及び図4に示されるように、弾性体52内に保持された状態で、腹側において弾性体52の内面52A(中空部54を構成する面)との間に隙間61が形成されるように構成されている。具体的には、取付部材60を被取付部材70に取り付け、その状態で取付部材60を弾性体52内に挿入すると、小径部54Aに圧入された本体62よりも指22の根元側に位置する部分と、弾性体52の内面52Aとの間に隙間61が形成される。言い換えると、取付部材60において係止爪64及び支持部66が形成された部分よりも、中空部54において取付部材60の係止爪64及び支持部66が形成された部分に対応する部分54Bの径が大きいため、取付部材60と弾性体52の内面52Aとの間に隙間61が形成されている。
【0048】
被取付部材70は、指本体30の先端部に設けられ、取付部材60が取り外し可能に取り付けられる部材である。この被取付部材70は、有底筒状とされ、筒部72と、底部74と、引掛り部76と、を備えている。
【0049】
筒部72は、取付部材60の一対の係止爪64及び支持部66が挿入される部分であり、指本体30に対して取付部材60を支持する部分である。また、筒部72の端部には切欠部72Aが設けられている。この切欠部72Aは、指22の内側に設けられている。
【0050】
底部74は、封止部材36Aに被取付部材70を取り付けるための部分である。この底部74は、ねじ部材82を用いて封止部材36Aに締結固定されている。具体的には、底部74には、ねじ部材82のねじ部82Bが通過する通過孔74A(図6参照)が設けられており、通過孔74Aを通して取付孔36Cにねじ部82Bをねじ込むことで被取付部材70が指本体30に締結固定される。なお、図中の符号82Aは、ねじ部材82のねじ頭を指す。本実施形態では、図6に示されるように、ねじ部材82として皿ねじを用いているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、なべねじやボルトを用いてもよい。
【0051】
引掛り部76は、係止爪64の爪部64Bが引っ掛かる部分である。この引掛り部76は、筒部72に設けられている。具体的には、引掛り部76は筒部72に設けられた開口部である。なお、本開示の引掛り部としては、係止爪64が引っ掛かれば、段差部でも凹部でもよい。この引掛り部76は、筒部72の幅方向に互いに対向する位置に一対設けられている。ここで、引掛り部76には、図4に示されるように、係止爪64の爪部64Bが筒部72の内側から引っ掛かる。したがって、一対の係止爪64を各々の弾性板64Aが近づくように幅方向に弾性変形させることで各々の爪部64Bが各々の引掛り部76から外れる。この状態で取付部材60を被取付部材70から引き抜くことで、取付部材60が被取付部材70から取り外される。
【0052】
被取付部材70は、弾性体52よりも高弾性材料によって構成されている。本実施形態では、一例として被取付部材70を金属材料で形成している。
【0053】
また、封止部材36Aにおける被取付部材70との取付面36Dには、図3及び図6に示されるように、被係合部としての凹部37が設けられ、被取付部材70における封止部材36Aとの取付面74Bには、凹部37と係合(嵌合)して被取付部材70の向きを決める係合部としての凸部75が設けられてもよい。具体的には、封止部材36Aの取付孔36Cが設けられた側の面である取付面36Dに凹部37が設けられている。一方、底部74の外面(底面と反対側の面)である取付面74Bに凸部75が設けられている。凸部75を凹部37に嵌合させることで、指本体30に対して被取付部材70の位置(向き)が決まる。被取付部材70の位置が決まることで、被取付部材70に取り付けられる取付部材60の向きが決まる。
【0054】
(作用)
次に本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のロボットハンド20の指先構造では、指先部50を構成する弾性体52の内面52Aと取付部材60との間に隙間61が形成されているため、指先部50(弾性体52)で把持対象物を把持する際に、弾性体52の指の腹面50Aが隙間61の分だけ弾性変形する。このように弾性体52の把持対象物に接する腹面50Aが、把持対象物の形状に合わせて弾性変形することで、腹面50Aと把持対象物との接触面積が広がり、腹面50Aから把持対象物へ広い範囲で均等に把持力が作用する。これにより、上記指先構造では、例えば、腹側において弾性体52の内面52Aと取付部材60とが常時接している構成と比べて、把持対象物を把持しやすくなる。すなわち、把持対象物に対する把持性能が向上する。なお、弾性体52の腹側は、弾性体52の把持対象物と接触する側と言い換えてもよい。
【0055】
また、本実施形態の指先構造では、弾性体52内に挿入される取付部材60が被取付部材70に取り外し可能に取り付けられている。上記指先構造では、被取付部材70から取付部材60を取り外すことにより、弾性体52を指本体30から外すことができる。このように上記指先構造では、取付部材60を取り外した被取付部材70に別の弾性体52の取付部材60を取り付ける簡単な作業で、指本体30に対して指先部50を構成する弾性体52を交換することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態の指先構造によれば、指先部50を構成する弾性体52で把持対象物を把持する構成において、把持対象物に対する把持性能を向上させることができる。
【0057】
本実施形態の指先構造では、取付部材60の係止爪64を被取付部材70の引掛り部76に引っ掛けることで取付部材60を被取付部材70に取り付けることができる。すなわち、上記指先構造では、簡単な作業で取付部材60を被取付部材70に取り付けることができる。
【0058】
本実施形態の指先構造では、係止爪64を幅方向に弾性変形させることで、係止爪64と引掛り部76の引っ掛かりを解除することができる。ここで、係止爪64が指22の厚み方向、すなわち、腹面50Aから背面50Bへの方向で弾性変形する場合、指先部50で把持対象物を把持した際に係止爪64が弾性変形して取付部材60と共に弾性体52が指本体30から脱落する虞があるが、係止爪64が弾性変形する方向を指22の幅方向としているので、把持対象物を把持した際に弾性体52が指本体30から脱落するのを抑制することができる。
【0059】
本実施形態の指先構造では、取付部材60の一対の係止爪64を筒部72に挿入することで一対の引掛り部76に一対の係止爪64がそれぞれ引っ掛かる。ここで、一対の係止爪64を一対の引掛り部76に引っ掛けるため、取付部材60が被取付部材70に安定した姿勢で引っ掛かる。これにより、把持対象物を把持している最中に被取付部材70から取付部材60と共に弾性体52が脱落するのを抑制することができる。
【0060】
本実施形態の指先構造では、締結部材としてのねじ部材82で指本体30の先端部に被取付部材70を取り付けていることから、指本体30に被取付部材70を取り付けやすい。
【0061】
本実施形態の指先構造では、指本体30に被取付部材70を取り付ける際に、指本体30の凹部37に被取付部材70の凸部75を係合(嵌合)させることで、指本体30に対する被取付部材70の位置(向き含む)を決められる。これにより、指本体30に被取付部材70を取り付ける際の位置決め作業が容易になる。
【0062】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態の一例について説明したが、本開示の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。前述の実施形態では、弾性体52を取付部材60から取り外せる構成としているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、弾性体52の小径部54Aにおける内面と取付部材60の本体62とが固着されていてもよい。この場合には、取付部材60の被取付部材70への取り付け及び取り外しによって、弾性体52が指本体30に取り付け及び取り外しされる。
【0063】
前述の実施形態では、被取付部材70が指本体30に対して取り外し可能とされているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、被取付部材70が指本体30から取り外せない構成であってもよい。
【0064】
前述の実施形態では、被取付部材70に係合部として凸部75を設け、封止部材36Aに被係合部として凹部37を設けているが、本開示はこの構成に限定されない。指本体30に対する被取付部材70の位置(向き)決めができればよく、例えば、被取付部材70に凹部を設け、封止部材36Aに凸部を設ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
20・・・ロボットハンド、22・・・指、30・・・指本体、50・・・指先部、50A・・・腹面、52・・・弾性体、60・・・取付部材、61・・・隙間、64・・・係止爪、70・・・被取付部材、72・・・筒部、82・・・ねじ部材(締結部材の一例)、W・・・指の幅方向。
図1
図2
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図5
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図7