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特開2024-40968試料分析方法、キャピラリ電気泳動用溶液、及び試料分析用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040968
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】試料分析方法、キャピラリ電気泳動用溶液、及び試料分析用キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20240318BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G01N27/447 301B
G01N27/447 301C
G01N27/447 315K
G01N33/72 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145645
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 直嗣
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045DA51
2G045FA13
2G045FB05
(57)【要約】
【課題】Hbを分離することができる、試料分析方法、アルカリ性溶液、及び試料分析用キットの提供。
【解決手段】アルカリ性溶液中において、キャピラリ電気泳動により試料中のヘモグロビンを分離する分離工程を含み、且つ上記アルカリ性溶液が、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有する、試料分析方法等。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性溶液中において、キャピラリ電気泳動により試料中のヘモグロビンを分離する分離工程を含み、且つ
前記アルカリ性溶液が、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有する、試料分析方法。
【請求項2】
前記カチオン性ポリマーが、式(1)で表される構造及び式(2)で表される構造を有する、請求項1に記載の試料分析方法。
【化1】

(式(1)中、
及びRは、それぞれ独立して、置換基を有する炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有しない炭素数1~10のアルキル基を表し、
Xは、2価の連結基を表し、
式(2)中、
Yは、2価の連結基を表す。)
【請求項3】
式(1)中のX及び式(2)中のYが、それぞれ独立して、置換基を有する炭素数1~10のアルキレン基又は置換基を有しない炭素数1~10のアルキレン基を表す、請求項2に記載の試料分析方法。
【請求項4】
式(1)中のX及び式(2)中のYが、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を有する炭素数1~6のアルキレン基を表す、請求項2に記載の試料分析方法。
【請求項5】
前記カチオン性ポリマーが、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物である、請求項1又は請求項2に記載の試料分析方法。
【請求項6】
前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量が、100,000~500,000である、請求項1又は請求項2に記載の試料分析方法。
【請求項7】
前記アルカリ性溶液のpHが、7.5~12.0である、請求項1又は請求項2に記載の試料分析方法。
【請求項8】
前記分離工程において、ヘモグロビンA2及びヘモグロビンEを分離する、請求項1又は請求項2に記載の試料分析方法。
【請求項9】
前記分離工程において、ヘモグロビンA及びヘモグロビンGを分離する、請求項1又は請求項2に記載の試料分析方法。
【請求項10】
第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有し、且つキャピラリ電気泳動によるヘモグロビンの分離に用いられる、キャピラリ電気泳動用溶液。
【請求項11】
請求項10に記載のキャピラリ電気泳動用溶液を含む容器と、
試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を有し、前記試料保持槽と前記泳動液保持槽とが前記キャピラリ流路により連通する電気泳動チップと、
を含む、試料分析用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料分析方法、キャピラリ電気泳動用溶液、及び試料分析用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査の現場においてヘモグロビン(以下、「Hb」とも記す。)の分析が日常的に行われている。分析対象となるHb種は検査の目的に応じて異なる。糖尿病の診断や病状把握のための分析対象としてはHbA1cが良く知られている。異常Hb症の診断のための分析対象としては、HbS(鎌状赤血球Hb)、HbC、HbD及びHbEなどに代表される変異Hbが使用されている。また、βサラセミアの診断のための分析対象としては、HbA2及びHbF(胎児Hb)が広く用いられている。
【0003】
Hbの分析は、イオン交換クロマトグラフィー法等の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、キャピラリ電気泳動(CE)法などにより行われる。
特許文献1には、自由溶液キャピラリ電気泳動法(キャピラリゾーン電気泳動、CZE)による、Hbの分析方法が記載されている。特許文献2には、ボロネート化合物の共存下でキャピラリ電気泳動を行う、Hbの分析方法が記載されている。特許文献3には、擬似固定相としてアニオン性ポリマーを含有する溶液を用いた、陽イオン交換動電クロマトグラフィーによる、Hbの分析方法が記載されている。
また、特許文献4には、試料の分析方法であって、キャピラリ電気泳動により前記試料中のヘモグロビンを分離することを含み、前記ヘモグロビンの分離を、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液中で行うことを含む、試料分析方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-145537号公報
【特許文献2】特表2012-531609号公報
【特許文献3】特開2009-109230号公報
【特許文献4】特許第6052927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今般、本発明者は、一部のHbは構造が似ているため、従来のキャピラリ電気泳動によるHbの分析方法では、分離の精度が十分ではなく、改善の余地があることを見出した。
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、Hbを分離することができる、試料分析方法、キャピラリ電気泳動用溶液、及び試料分析用キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態に係る試料分析方法は、アルカリ性溶液中において、キャピラリ電気泳動により試料中のヘモグロビンを分離する分離工程を含み、且つ上記アルカリ性溶液が、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、Hbを分離することができる、試料分析方法、キャピラリ電気泳動用溶液、及び試料分析用キットを提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、キャピラリ電気泳動チップの一実施形態を示す上面図である。図1Bは、図1Aに示す電気泳動チップの断面図である。
図2図2は、実施例1の試料分析方法において得られたエレクトロフェログラムを示す。
図3図3は、比較例1の試料分析方法において得られたエレクトロフェログラムを示す。
図4図4は、実施例2の試料分析方法において得られたエレクトロフェログラムを示す。
図5図5は、実施例3の試料分析方法において得られたエレクトロフェログラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数
種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0012】
[試料分析方法]
本開示の実施形態に係る試料分析方法(以下、「特定試料分析方法」とも記す。)は、アルカリ性溶液中において、キャピラリ電気泳動により試料中のヘモグロビンを分離する分離工程を含み、且つアルカリ性溶液(以下、「特定アルカリ性溶液」とも記す。)が、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有する。
【0013】
特定試料分析方法によれば、Hbを分離することができる。上記効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推測される。HbA2及びHbE等は構造が似ているHbの分離を、特定試料分析方法は、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有するアルカリ性溶液中において行う。
HbA2及びHbEの等電点は中性付近であることから、アルカリ性溶液中ではHbA2及びHbEはマイナスにチャージする。マイナスにチャージしたHbA2及びHbEは、試料導入側に負電極を接触させて電圧を印加することにより正電極側へ移動する。
一方、カチオン性ポリマーは第4級アンモニウム塩基を有しており、第2級アミノ基によりHbA2及びHbEに結合した状態で、正電極側から負電極側へ移動する。
アルカリ溶液中ではHbA2及びHbEのマイナスチャージの程度に差が存在する。チャージの差により、HbA2及びHbEの電気泳動速度に違いが生じ、HbA2及びHbE等の構造が似ているHbが優れた精度で分離すると推測される。
更に、特定試料分析方法において使用されるカチオン性ポリマーは、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有しており、これにより、HbA2及びHbE等の構造が似ているHbへの結合の容易性に差が生じる。これにより、分離の精度が向上すると推測される。
また、本開示の一実施形態による試料分析方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法と比べ、小型の装置による分析が可能である。
【0014】
また、従来のキャピラリ電気泳動によるHbの分析方法では、HbA及びHbGの分離精度も十分ではなかった。
上記した理由と同様の理由から、特定試料分析方法によれば、従来の分析方法では分離の精度が十分ではなかったHbA及びHbGの分離も可能である。
また、上記した理由と同様の理由から、HbA2、HbA及びHbSの分離も可能である。
【0015】
<分離工程>
特定試料分析方法は、アルカリ性溶液中において、キャピラリ電気泳動により試料中のHbを分離する分離工程を含む。
【0016】
分離工程においては、HbA2及びHbEが分離されることが好ましい。
また、分離工程において、HbA及びHbGが分離されることが好ましい。
また、分離工程において、HbA2、HbA及びHbSが分離されることが好ましい。
なお、分離工程において、上記以外にも、HbF、HbC及びHbDからなる群より選択される1つ以上が分離されることが好ましい。
【0017】
アルカリ性溶液中におけるキャピラリ電気泳動による試料中のHbの分離は、アルカリ性溶液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入し、試料の導入後、キャピラリ流路の全体又は一部に電圧を印加することにより行うことができる。上記電圧の印加により、試料中のHbを電気泳動させることができ、分離することができる。
キャピラリ流路への電圧の印加は、キャピラリ流路の試料導入側に負電極を接触させ、アルカリ性溶液供給側に正電極を接触させることにより行うことができる。
【0018】
キャピラリ流路の断面形状は、特に限定されるものではなく、円形状であってもよく、矩形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
矩形状の場合、キャピラリ流路の流路高さ及び流路幅は、それぞれ、1~1000μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、25μm~100μmであることが更に好ましい。円形状の場合、キャピラリ流路の内径は、10μm以上又は25μm以上が好ましく、100μm以下又は75μm以下が好ましい。
キャピラリ流路の流路長は、10mm~150mmであることが好ましく、20mm~60mmであることがより好ましい。
【0019】
キャピラリ流路の材質としては、ガラス、溶融シリカ、プラスチック等が挙げられる。プラスチックとしては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0020】
分離工程においては、上記したキャピラリ流路がマイクロチップ化されたキャピラリ電気泳動チップを使用してもよい。
キャピラリ電気泳動チップは、試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を有することができ、試料保持槽と泳動液保持槽とはキャピラリ流路により連通する。
キャピラリ電気泳動チップのサイズは、特に限定されるものではなく、適宜調整することが好ましい。キャピラリ電気泳動チップのサイズは、例えば、長さ10mm~200mm、幅1mm~60mm、厚み0.3mm~5mmとすることができる。
【0021】
試料保持槽及び泳動液保持槽の容積は、キャピラリ流路の内径及び長さに応じて適宜決定されるが、それぞれ、1mm~1000mmであることが好ましく、5mm~100mmであることがより好ましい。
試料保持槽に充填する試料の量は、特に限定されるものではなく、1μL~30μLとすることができる。
泳動液保持槽に充填するアルカリ性溶液の量は、特に限定されるものではなく、1μL~30μLとすることができる。
【0022】
キャピラリ流路の両端に印加する電圧は、500V~10000Vであることが好ましく、500V~5000Vであることがより好ましい。
【0023】
キャピラリ流路内において、負電極側から正電極側に向かう液流を生じさせてもよい。液流としては、電気浸透流等が挙げられる。
【0024】
キャピラリ流路は、その内壁がカチオン性物質又はアニオン性物質で被覆されていることが好ましい。
カチオン性物質によりキャピラリ流路の内壁を被覆することによって、キャピラリ流路の内壁をプラスに帯電させることができる。その結果、キャピラリ流路内に負電極側から正電極側に向かう電気浸透流を容易に生じさせることができる。
アニオン性物質によりキャピラリ流路の内壁を被覆した場合、キャピラリ流路の内壁はマイナスに帯電するが、アルカリ性溶液に含有されるカチオン性ポリマーがマイナスに帯電したキャピラリ流路の内壁に結合する。これにより、キャピラリ流路の内壁はプラスに帯電され、上記と同様にキャピラリ流路内に負電極側から正電極側に向かう電気浸透流を容易に生じさせることができる。
【0025】
カチオン性物質は、特に限定されるものではなく、カチオン性官能基を有するシランカップリング剤等を使用することができる。分離精度を向上する観点から、カチオン性物質は、第4級アンモニウム塩基を有するポリマーであることが好ましい。
【0026】
アニオン性物質は、特に限定されるものではなく、アニオン性基を有する多糖類、アニオン性官能基を有するシランカップリング剤等を使用することができる。
アニオン性基を有する多糖類としては、硫酸化多糖類、カルボン酸化多糖類、スルホン酸化多糖類、リン酸化多糖類等が挙げられる。
硫酸化多糖類としては、コンドロイチン硫酸、へパリン、へパラン、フコイダン、これらの塩等が挙げられる。カルボン酸化多糖類としては、アルギン酸、ヒアルロン酸、これらの塩等が挙げられる。
【0027】
図1A及び図1Bに、キャピラリ電気泳動チップの一実施形態を示す。図1Aは、キャピラリ電気泳動チップの一実施形態を示す上面図であり、図1Bは、図1Aに示す電気泳動チップの断面図である。
図1A及びBに示すキャピラリ電気泳動チップは、キャピラリ流路10、試料保持槽11及び泳動液保持槽12を備え、試料保持槽11及び泳動液保持槽12は、キャピラリ流路10により連通している。キャピラリ流路10には検出部13が形成されている。
試料保持槽11及び泳動液保持槽12は、キャピラリ流路10の両端に電圧を印加するための電極をそれぞれ備えていてもよい(図示せず)。具体的には、試料保持槽11(試料導入側)が負電極を備え、泳動液保持槽12(アルカリ性溶液供給側)が正電極を備えることができる。
【0028】
検出部13の位置、すなわち、分離に要する長さ(試料保持槽11から検出部13までの距離、図1Aにおけるx)は、キャピラリ流路10の長さ等により適宜決定できる。キャピラリ流路10の長さ(図1Aにおけるx+y)が10mm~150mmである場合、試料保持槽11から検出部13までの距離(x)は、5mm~140mmであることが好ましく、10mm~100mmであることがより好ましく、15mm~50mmであることが更に好ましい。
【0029】
-特定アルカリ性溶液-
本開示において、「アルカリ性」とは、pH7.0以上であることを意味する。特定アルカリ性溶液のpHは、HbA2及びHbEの等電点よりも高いことが好ましく、7.5~12.0であることが好ましく、8.5~11.0であることがより好ましく、9.5~10.5であることが更に好ましい。
なお、本開示において、アルカリ性溶液のpHは、25℃におけるアルカリ性溶液のpHであり、電極を浸漬してから30分経過後にpHメータを用いて測定する。pHメータとしては、堀場製作所社製のF-72又はこれと同程度の装置を使用することができる。
【0030】
特定アルカリ性溶液は、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマー(以下、「特定カチオン性ポリマー」とも記す。)を含有する。
本開示において、「カチオン性ポリマー」とは、カチオン性基を有するポリマーを意味する。
本開示において、「カチオン性基」とは、カチオン基及びイオン化されてカチオン基となる基を包含する。
第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基はカチオン性基に該当する。
【0031】
特定カチオン性ポリマーは、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基以外のカチオン性基(以下、「その他のカチオン性基」とも記す。)を有していてもよい。
その他のカチオン性基としては、第1級アミノ基、第3級アミノ基、イミノ基等が挙げられる。
【0032】
特定カチオン性ポリマーにおいて、第2級アミノ基、第4級アンモニウム塩基及びその他のカチオン性基の総質量に対する、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基の含有率は、分離精度を向上する観点から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることがより更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0033】
分離精度を向上する観点から、特定カチオン性ポリマーは、式(1)で表される構造及び式(2)で表される構造を有することが好ましい。なお、式(1)中の窒素原子(N)は、第4級アンモニウム塩基を構成し、式(2)中の窒素原子(N)は、第2級アミノ基を構成する。
【化2】
【0034】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有する炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有しない炭素数1~10のアルキル基を表し、Xは、2価の連結基を表し、式(2)中、Yは、2価の連結基を表す。
【0035】
分離精度を向上する観点から、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有しない炭素数1~6のアルキル基を表すことが好ましく、置換基を有する炭素数1~3のアルキル基又は置換基を有しない炭素数1~3のアルキル基を表すことがより好ましく、置換基を有しない炭素数1~3のアルキル基を表すことが更に好ましく、メチル基又はエチル基を表すことが特に好ましく、メチル基を表すことが最も好ましい。
置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホ基等が挙げられる。
【0036】
分離精度を向上する観点から、X及びYは、それぞれ独立して、置換基を有する炭素数1~10のアルキレン基又は置換基を有しない炭素数1~10のアルキレン基を表すことが好ましく、置換基を有する炭素数1~6のアルキレン基又は置換基を有しない炭素数1~6のアルキレン基を表すことがより好ましく、置換基を有する炭素数1~6のアルキレン基を表すことが更に好ましく、置換基を有する炭素数3~6のアルキレン基を表すことが特に好ましく、置換基を有する炭素数3のアルキレン基を表すことが最も好ましい。
置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホ基等が挙げられ、分離精度を向上する観点から、ヒドロキシ基が好ましい。
よって、分離精度を向上する観点から、X及びYは、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を有する炭素数1~6のアルキレン基を表すことが好ましく、ヒドロキシ基を有する炭素数3~6のアルキレン基を表すことがより好ましく、ヒドロキシ基を有する炭素数3のアルキレン基を表すことが更に好ましく、2-ヒドロキシプロピレン基を表すことが特に好ましい。
【0037】
式(1)で表される構造及び式(2)で表される構造を有する特定カチオン性ポリマーとしては、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物(CAS No.52722-38-0)等が挙げられ、分離精度を向上する観点から、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物が好ましい。
ジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物は、下記式(3)で表すことができる。
【0038】
【化3】
【0039】
式(3)中、m及びnは、それぞれ独立して、1~1,000の整数である。
【0040】
分離精度を向上する観点から、特定カチオン性ポリマーの重量平均分子量は、10,000~700,000であることが好ましく、100,000~600,000であることがより好ましく、200,000~500,000であることが更に好ましい。
本開示において、カチオン性ポリマーの重量平均分子量はカタログ値を参照する。重量平均分子量のカタログ値がない場合、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量とする。
【0041】
分離精度を向上する観点から、特定アルカリ性溶液の総質量に対する特定カチオン性ポリマーの含有率は、0.1質量%~5.0質量%であることが好ましく、0.7質量%~3.0質量%であることがより好ましく、1.0質量%~2.0質量%であることが更に好ましい。
【0042】
特定カチオン性ポリマーは、従来公知の方法により合成したものを使用してもよく、市販されるものを使用してもよい。
特定カチオン性ポリマーの市販品としては、センカ製のユニセンスKHE 1000L等が挙げられる。
特定カチオン性ポリマーの合成方法としては、ジメチルアミン、アンモニア、及びエピクロロヒドリンを混合して重縮合させる方法等が挙げられる。
【0043】
特定アルカリ性溶液は、特定カチオン性ポリマー以外のカチオン性ポリマー(以下、「その他のカチオン性ポリマー」とも記す。)を含有してもよい。その他のカチオン性ポリマーとしては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリジアリルアミン、ポリメチルジアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリクオタニウム、ジメチルアミン-エピクロロヒドリン重縮合物等が挙げられる。本開示において「ポリクオタニウム」とは、第4級アンモニウム基を有するモノマーに由来する構成単位を含むカチオン性ポリマーを指す。ポリクオタニウムとしては、ポリクオタニウム-6(poly(diallyldimethylammonium chloride)、ポリクオタニウム-7(copolymer of acrylamide and diallyldimethylammonium chloride)、ポリクオタニウム-4(Diallyldimethylammonium chloride-hydroxyethyl cellulose copolymer)、ポリクオタニウム-22(copolymer of acrylic acid and diallyldimethylammonium chloride)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリクオタニウム-2(poly[bis(2-chloroethyl)ether-alt-1,3-bis[3-(dimethylamino)propyl]urea])などが挙げられる。
【0044】
分離精度を向上する観点から、特定アルカリ性溶液の総質量に対するその他のカチオン性ポリマーの含有率は、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0045】
特定アルカリ性溶液は、水を含有してもよい。水としては、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。
特定アルカリ性溶液の総質量に対する水の含有率は、特に限定されるものではなく、10質量%~99.9質量%とすることができる。
【0046】
特定アルカリ性溶液は、非界面活性剤型の両イオン性物質、pH緩衝物質、微生物の繁殖等を抑制するための保存剤などの添加剤を含有してもよい。保存剤としては、例えば、アジ化ナトリウム、エチルパラベン、プロクリン等が挙げられる。
【0047】
-試料-
試料はHbを含有し、HbA2及びHbEを含有することが好ましい。試料の総質量に対するHbの含有量は、特に限定されるものではなく、0.001質量%~100質量%とすることができる。また、試料がHbA2及びHbEを含有する場合、試料の総質量に対するHbA2及びHbEの含有量は、特に限定されるものではなく、それぞれ、0.0001質量%~100質量%とすることができる。また、試料がHbA及びHbGを含有する場合、試料の総質量に対するHbA2、HbA及びHbGの含有量は、特に限定されるものではなく、それぞれ、0.0001質量%~100質量%とすることができる。また、試料がHbA2、HbA及びHbSを含有する場合、試料の総質量に対するHbA2、HbA及びHbSの含有量は、特に限定されるものではなく、それぞれ、0.0001質量%~100質量%とすることができる。
試料の形態は特に限定されるものではなく、試料原料を調製したものであってもよく、試料原料そのものであってもよい。
試料原料としては、Hbを含む原料、生体試料等が挙げられる。
生体試料としては、血液、赤血球成分等を含む血液由来物等が挙げられる。
血液は、生体から採取された血液が挙げられ、ヒト以外の哺乳類の血液、ヒトの血液等が挙げられる。
赤血球成分を含む血液由来物としては、血液から分離又は調製されたものであり、且つ赤血球成分を含むものが挙げられる。例えば、血漿が除かれた血球画分、血球濃縮物、血液又は血球の凍結乾燥物、全血を溶血処理した溶血試料、遠心分離血液、自然沈降血液、洗浄血球等が挙げられる。
【0048】
分離精度を向上する観点から、試料は、カチオン性ポリマーを含有するアルカリ性溶液を含有することが好ましい。
上記アルカリ性溶液を含有する試料は、上記アルカリ性溶液を用いて試料原料を希釈することにより得ることができる。希釈率は、質量基準で、1.2倍~100倍であることが好ましく、2倍~60倍であることがより好ましく、3倍~50倍であることが更に好ましい。希釈に使用する材料は特に限定されるものではなく、pH調整剤(例えば、塩酸等)、界面活性剤(例えば、エマルゲンLS-110(花王製)等)、防腐剤(例えば、アジ化ナトリウム等)、イオン強度調整剤(例えば、塩化ナトリウム等)、屈折率調整剤(例えば、スクロース等の糖類)などが挙げられる。
なお、カチオン性ポリマーは、特定カチオン性ポリマーであってもよく、特定カチオン性ポリマーでなくてもよい。特定カチオン性ポリマーでないカチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミンが挙げられる。
また、上記アルカリ性溶液は、キャピラリ流路に充填される特定アルカリ性溶液と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
<検出工程>
特定試料分析方法は、分離工程において分離されたHbを検出する検出工程を含むことができる。
Hbの検出は、光学的手法により検出することにより行うことができる。光学的手法による検出としては、例えば、吸光度の測定が挙げられる。
より具体的には、分離されたHbに対し波長415~420nmの光を照射し、縦軸を吸光度、横軸を時間とする吸光度スペクトルを得ることにより、Hbを検出することができる。
Hbの分離にキャピラリ電気泳動チップを使用する場合、波長415~420nmの光は、検出部に照射することが好ましい。
吸光度スペクトルは、アークレイ社製のザラボ001又はこれと同程度の装置を使用することにより得ることができる。
【0050】
上記した吸光度スペクトルの波形を時間について微分することにより得られるエレクトロフェログラム(微分波形)を用いてHbの検出を行ってもよい。
上記検出は、特開2019-78599号公報に記載の方法により行う。
具体的には、以下の手順に従い行う。
1)電気浸透流(EOF、electro-osmotic flow)シグナルを特定する。
2)EOFシグナルを起点として、最初に検出される面積比率(当該ピーク面積/総ピーク面積)が1%以上の大きさのピークをHbA2ピークとする。
3)EOFシグナルと、HbA2ピークとを基準に、時間を正規化する。例えば、EOFシグナルは0秒、HbA2ピークは1秒とする。
4)予め定めた「正規化時間とHb分画との関係性」に照らし合わせ、他のHb分画を特定する。
【0051】
図1A及び図1Bを参照し、特定試料分析方法の一実施形態を説明する。なお、特定試料分析方法は以下に説明するものに限定されない。
【0052】
まず、キャピラリ電気泳動チップの泳動液保持槽12に、特定カチオン性ポリマーを含有する特定アルカリ性溶液を泳動液として充填し、毛細管現象により特定アルカリ性溶液をキャピラリ流路10に充填する。
【0053】
次いで、特定アルカリ性溶液が充填されたキャピラリ電気泳動チップの試料保持槽11に試料を添加する。
【0054】
試料保持槽11に添加する試料は、試料原料である全血を上記アルカリ性溶液により希釈することにより調製できる。
【0055】
試料保持槽11に負電極、泳動液保持槽12に正電極を接触させ(図示せず。)、キャピラリ流路10の両端、すなわち、試料保持槽11及び泳動液保持槽12との間に電圧を印加する。これにより、試料保持槽11からキャピラリ流路10に試料が導入され、Hbを含む試料が試料保持槽11から泳動液保持槽12に向かって移動するとともに、Hbの分離が行われる。
【0056】
そして、検出部13において、波長415nm~420nmの光を照射し、吸光度測定装置により、吸光度を測定することにより、Hbの検出を行う。
【0057】
本開示の試料分析方法は、異常Hb症、β-サラセミアの予防、診断及び治療等の用途に利用することができる。
【0058】
[キャピラリ電気泳動用溶液]
本開示の実施形態に係るキャピラリ電気泳動用溶液は、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有し、且つキャピラリ電気泳動によるHbの分離に用いられる。
本開示の実施形態に係るキャピラリ電気泳動用溶液は、HbA2及びHbEの分離に使用することができる。また、本開示の実施形態に係るキャピラリ電気泳動用溶液は、HbA及びHbGの分離に使用することができる。また、本開示の実施形態に係るキャピラリ電気泳動用溶液は、HbA2、HbA及びHbSの分離に使用することができる。
キャピラリ電気泳動用溶液の好ましい態様については、特定試料分析方法において使用する特定アルカリ性溶液と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0059】
[試料分析用キット]
本開示の実施形態に係る試料分析用キットは、上記したキャピラリ電気泳動用溶液を含む容器と、試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を有し、試料保持槽と泳動液保持槽とがキャピラリ流路により連通する電気泳動チップと、を含む。
キャピラリ電気泳動用溶液及び電気泳動チップの好ましい態様については、特定試料分析方法において使用する特定アルカリ性溶液及び電気泳動チップと同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0060】
キャピラリ電気泳動用溶液を含む容器の材質としては、ガラス、溶融シリカ、プラスチック等が挙げられる。プラスチックについては、上記したため、ここでは記載を省略する。
【0061】
本開示は、以下の実施形態に関しうる。
<1> アルカリ性溶液中において、キャピラリ電気泳動により試料中のヘモグロビンを分離する分離工程を含み、且つ
上記アルカリ性溶液が、第2級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有する、試料分析方法。
<2> 上記カチオン性ポリマーが、式(1)で表される構造及び式(2)で表される構造を有する、上記<1>に記載の試料分析方法。
【0062】
【化4】
【0063】
(式(1)中、
及びRは、それぞれ独立して、置換基を有する炭素数1~10のアルキル基又は置換基を有しない炭素数1~10のアルキル基を表し、
Xは、2価の連結基を表し、
式(2)中、
Yは、2価の連結基を表す。)
<3> 式(1)中のX及び式(2)中のYが、それぞれ独立して、置換基を有する炭素数1~10のアルキレン基又は置換基を有しない炭素数1~10のアルキレン基である、上記<2>に記載の試料分析方法。
<4> 式(1)中のX及び式(2)中のYが、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を有する炭素数1~6のアルキレン基である、上記<2>又は<3>に記載の試料分析方法。
<5> 上記カチオン性ポリマーが、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物である、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の試料分析方法。
<6> 上記カチオン性ポリマーの重量平均分子量が、100,000~500,000である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の試料分析方法。
<7> 上記アルカリ性溶液のpHが、7.5~12.0である、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の試料分析方法。
s記載のキャピラリ電気泳動用溶液を含む容器と、
試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を有し、上記試料保持槽と上記泳動液保持槽とが上記キャピラリ流路により連通する電気泳動チップと、
を含む、試料分析用キット。
【実施例0064】
以下に実施例について説明するが、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0065】
<分離デバイスと測定機器>
分離デバイスとしては、図1に示す構造のキャピラリ流路10を有する樹脂製のチップ(流路幅40μm、流路高さ40μm、流路長:30mm、試料保持槽11から検出部13までの距離(x)20mm)を用いた。試料保持槽11及び泳動液保持槽12の容量は10μLとした。キャピラリ流路の内壁は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドで被覆した。
測定装置は、自社製の電気泳動装置を用いた。
【0066】
<<実施例1>>
下記の各物質を混合して、pHが9.8となるまで、水酸化ナトリウム及び水を加え、特定アルカリ性溶液(キャピラリ電気泳動用溶液)1を調製した。
(特定アルカリ性溶液1の組成)
・ジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物(特定カチオン性ポリマー、センカ製、ユニセンスKHE 1000L、重量平均分子量100,000~500,000) 1.5質量%
・アジ化ナトリウム 0.02質量%
【0067】
HbA2、HbE、HbA及び抗凝固剤(エチレンジアミン四酢酸)を含むヒト全血を、下記組成のアルカリ性溶液(pH8.8)により希釈する(希釈率41倍(質量基準))ことにより試料Aを得た。なお、塩酸及び水は、溶液のpHが8.8となるまで加えた。
(アルカリ性溶液の組成)
・ポリエチレンイミン(Wako製、重量平均分子量70,000) 1質量%
・エマルゲンLS-110(花王製) 0.4質量%
・アジ化ナトリウム 0.02質量%
・スクロース 7.87質量%
・塩化ナトリウム 0.26質量%
・塩酸
・水
【0068】
泳動液保持槽12に特定アルカリ性溶液1を9μL添加し、毛細管現象によりキャピラリ流路10内に特定アルカリ性溶液1を充填した。
【0069】
試料保持槽11に試料Aを9μL添加した。
次いで、試料保持槽11に負電極、泳動液保持槽12に正電極を接触させ、75μAの定電流制御にて電圧を印加して電気泳動を開始した。
【0070】
電気泳動が行われている間、検出部13に415~420nmの光を照射し、その吸光度を測定し、吸光度スペクトルを得た。吸光度スペクトルの波形を時間について微分することによりエレクトロフェログラムを得た。なお、電気泳動は60秒間行った。得られたエレクトロフェログラムを図2に示す。
なお、光の照射、吸光度の測定及びエレクトロフェログラムの取得には、アークレイ社製のザラボ001を使用した。
【0071】
図2に示すエレクトロフェログラムから明らかなように、特定カチオン性ポリマーを含有する特定アルカリ性溶液を使用する実施例1の試料分析方法によれば、HbA2及びHbEを優れた精度で分離できた。
【0072】
<<比較例1>>
下記の各物質を添加して、pHが9.8となるまで、ヒドロキシプロパンスルホン酸及び水を加え、アルカリ性溶液aを調製した。
(アルカリ性溶液aの組成)
・ポリアリルアミン(第1級アミノ基を有するポリマー、ニットーボーメディカル製、重量平均分子量15万) 0.7質量%
・アジ化ナトリウム 0.02質量%
・塩化ナトリウム 0.09質量%
・エマルゲンLS-110(花王製) 0.1質量%
【0073】
HbA2、HbE、HbA及び抗凝固剤(エチレンジアミン四酢酸)を含むヒト全血を、下記組成のアルカリ性溶液(pH9.0)により希釈する(希釈率41倍(質量基準))ことにより試料Bを得た。なお、ヒドロキシプロパンスルホン酸及び水は、溶液のpHが9.0となるまで加えた。
(アルカリ性溶液の組成)
・ポリエチレンイミン(Wako製、重量平均分子量70,000) 1質量%
・エマルゲンLS-110(花王製) 0.4質量%
・アジ化ナトリウム 0.02質量%
・塩化ナトリウム 0.06質量%
・1-(3-スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩(富士フイルム和光純薬製、NDSB-201) 5.0質量%
・ヒドロキシプロパンスルホン酸
・水
【0074】
特定アルカリ性溶液1をアルカリ性溶液aに、試料Aを試料Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、電気泳動及びエレクトロフェログラムの取得を行った。得られたエレクトロフェログラムを図3に示す。
【0075】
図3に示すエレクトロフェログラムから明らかなように、特定カチオン性ポリマーを含有する特定アルカリ性溶液を使用していない比較例1でもHbA2及びHbEの分離は可能であったが、実施例1の試料分析方法の方がより優れた精度で分離できることが明らかになった。
【0076】
<<実施例2>>
試料Aを、下記のようにして調製した試料Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、電気泳動及びエレクトロフェログラムの取得を行った。得られたエレクトロフェログラムを図4に示す。
HbA2、HbA及びHbS及び抗凝固剤(エチレンジアミン四酢酸)を含むヒト全血を、実施例1使用したアルカリ性溶液(pH8.8)により希釈する(希釈率41倍(質量基準))ことにより試料Bを得た。
【0077】
図4に示すエレクトロフェログラムから明らかなように、特定カチオン性ポリマーを含有する特定アルカリ性溶液を使用する実施例2の試料分析方法によれば、HbA2、HbA及びHbSを優れた精度で分離できた。
【0078】
<<実施例3>>
試料Aを、下記のようにして調製した試料Dに変更した以外は、実施例1と同様にして、電気泳動及びエレクトロフェログラムの取得を行った。得られたエレクトロフェログラムを図5に示す。
HbA2、HbA及びHbG及び抗凝固剤(エチレンジアミン四酢酸)を含むヒト全血を、実施例1使用したアルカリ性溶液(pH8.8)により希釈する(希釈率41倍(質量基準))ことにより試料Dを得た。
【0079】
図5に示すエレクトロフェログラムから明らかなように、特定カチオン性ポリマーを含有する特定アルカリ性溶液を使用する実施例3の試料分析方法によれば、HbA2、HbA及びHbGを優れた精度で分離できた。
図1
図2
図3
図4
図5