(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004097
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】揚重装置
(51)【国際特許分類】
B66B 9/02 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
B66B9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103572
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 忍
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】古口 光
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 豊
【テーマコード(参考)】
3F301
【Fターム(参考)】
3F301AA13
3F301BA08
3F301CA04
3F301DD02
(57)【要約】
【課題】稼働時の騒音を低減することができる揚重装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一つのレール用フレームに沿って昇降する駆動フレームと、前記駆動フレームに吊り下げられ、或いは載置されると共に前記レール用フレームに沿って前記駆動フレームと連動して昇降する従動フレームと、前記駆動フレームと前記従動フレームとの間に設けられ、前記駆動フレームと前記従動フレームとの間に相対的に生じる振動や力を低減する緩衝装置と、を備えることを特徴とする揚重装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのレール用フレームに沿って昇降する駆動フレームと、
前記駆動フレームに吊り下げられ、或いは載置されると共に、前記レール用フレームに沿って前記駆動フレームと連動して昇降する従動フレームと、
前記駆動フレームと前記従動フレームとの間に設けられ、前記駆動フレームと前記従動フレームとの間に相対的に生じる振動や力を低減する緩衝装置と、を備えることを特徴とする、
揚重装置。
【請求項2】
前記レール用フレームは、平行に配置された一対の第1ガイドレール及び第2ガイドレールが設けられ、
前記第1ガイドレール或いは前記第2ガイドレールを走行する複数のローラを備えるローラ装置が設けられ、
前記駆動フレームは、前記第1ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個の前記ローラ装置と、前記第2ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個の前記ローラ装置と、を介して前記レール用フレームに支持され、
前記従動フレームは、前記第1ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個の前記ローラ装置と、前記第2ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個の前記ローラ装置と、を介して前記レール用フレームに支持されている、
請求項1に記載の揚重装置。
【請求項3】
前記緩衝装置は、
弾性材料により形成された弾性部材と、
前記従動フレームと前記駆動フレームとを前記弾性部材を介して連結する連結部材と、を備える、
請求項1または2に記載の揚重装置。
【請求項4】
前記従動フレームに支持され、搬送対象物を搬送する搬送ケージを備える、
請求項1または2に記載の揚重装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、建設現場で使用される工事用エレベータ(以下揚重装置ともいう)は、ラックレールに沿ってピニオンギアで駆動して昇降するラックピニオン駆動方式を採用しているものが多い。工事用エレベータは、例えば、レール用フレームを昇降する昇降フレームと、昇降フレームを駆動する駆動部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。駆動部は、レール用フレームに設けられたラックレールに噛合するピニオンギアと、ピニオンギアを回転駆動するモータ装置とを備えている。工事用エレベータは、駆動部のモータ装置を駆動することにより、ピニオンギアを回転させることで昇降フレームに設けられた搬送対象物を収容するケージを昇降させることが可能となる。
【0003】
工事用エレベータは、工事進捗に合わせて鉛直方向にレール用フレームを継ぎ足すことで、昇降範囲を伸延することが可能となる。また、工事用エレベータは、レール用フレームを継ぎ足す際に、駆動装置の制動装置を作動させることで任意の位置にケージを停止させておくことが可能となる。工事用エレベータのラックピニオン駆動方式は、単純な構造により構成されており、信頼性が高く、且つ安価に製作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工事用エレベータは、ピニオンギアと噛合するラックレールの位置関係について高い精度が求められるため、組立後において細かな調整作業が必要となる。特にピニオンギアと篏合するラックレールの位置関係は高い精度が求められる。そのため、ラックレールを介したピニオンギアの反対側にはアジャストローラが配置され、一定のバックラッシュとなるよう調整されている。また工事用エレベータは、複数の駆動装置のピニオンギアがラックレールと適正な形で正対するように調整することも必要である。この調整は、昇降装置の上下に設けたガイドローラアッセンブリの芯調整により昇降フレームの姿勢に基づいて行われている。
【0006】
しかしながら、工事用エレベータには、工事進捗に合わせて積み上げられるラックレールに建方誤差や、製品の製作誤差が存在しており、ガイドレールの継ぎ目にはmmオーダーの微細な段差が生じる。工事用エレベータには、この段差等を乗り越えるために、ガイドローラとパイプ支柱間には多少のクリアランスが必要となる。その結果、工事用エレベータにおいては、本来ピニオンギアとラックレールとの間に求められるような数百ミクロン単位の精度での調整が困難となるという課題がある。
【0007】
工事用エレベータにおいては、このピニオンギアとラックレールとの接触状況の不良が通常以上の大きさの転動音を発生させるとともに、加振源となり、駆動軸を介して構成部材を振動させ、騒音を発生させている。この現象は、レール用フレームが1本設けられた1本構エレベータにおいて生じるだけでなく、レール用フレームが2本設けられた2本構エレベータにおいても生じる。2本構エレベータでは、更に左右一対のレール用フレームに設けられたガイドレールの建方誤差が加わると共に、エレベータの構造体にはねじり力も加わる。2本構エレベータでは、左右の連結フレームを介して昇降フレームにねじり力が伝達され、昇降フレームに直結された駆動用のピニオンギアを介してラックレールをこじる力が発生する。
【0008】
この結果、2本構エレベータでは、ピニオンギアとラックレールには片当たりが発生し、ピニオンギアとラックレールの接触音に更に摩擦音が加わり、うなりとなって大きな騒音を発生させている。そのため、工事用エレベータが用いられる現場では早朝、夜間のエレベータの不稼働時間帯を増加させる等の稼働制限が行われる場合があり、生産性が大幅に低減する虞がある。また、このような現場においては、稼働時間帯であっても騒音はなるべく低減されることが望ましい。更に、ピニオンギアとラックレールの噛み合わせ不良により発生する振動は、エレベータの搭乗者の乗り心地も劣化させる虞があり、改善されることが望ましい。特に2本構エレベータは、工事建屋の外部に設置されることが多いことから騒音はなるべく低減されることが望ましい。
【0009】
工事用エレベータの騒音を低減するために、レール用フレームの建方精度を向上させる方法も考えられるが、現場での組立は短時間施工が求められること等を考慮すると現実的ではない。また、他の騒音対策として極圧グリースなどをピニオンギアとラックレールとの間に塗布して潤滑による一時的な静音化効果も得られるが、効果の継続性、油脂の飛散などの課題もあり、恒久的な対策とは言い難い。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、フレームに発生する振動による騒音を低減することができる揚重装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達するために、本発明は、少なくとも一つのレール用フレームに沿って昇降する駆動フレームと、前記駆動フレームに吊り下げられ、或いは載置されると共に、前記レール用フレームに沿って前記駆動フレームと連動して昇降する従動フレームと、前記駆動フレームと前記従動フレームとの間に設けられ、前記駆動フレームと前記従動フレームとの間に相対的に生じる振動や力を低減する緩衝装置と、を備えることを特徴とする、揚重装置である。
【0012】
本発明によれば、駆動フレームと従動フレームとの間に緩衝装置が設けられていることにより、従動フレームに生じる振動や変位の影響が駆動フレームに伝達され難くなり、騒音の発生を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の前記レール用フレームは、平行に配置された一対の第1ガイドレール及び第2ガイドレールが設けられ、前記第1ガイドレール或いは前記第2ガイドレールを走行する複数のローラを備えるローラ装置が設けられ、前記駆動フレームは、前記第1ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個の前記ローラ装置と、前記第2ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個の前記ローラ装置と、を介して前記レール用フレームに支持され、前記従動フレームは、前記第1ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個の前記ローラ装置と、前記第2ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個の前記ローラ装置と、を介して前記レール用フレームに支持されているように構成されていてもよい。
【0014】
本発明によれば、複数のローラ装置により駆動フレーム及び従動フレームが支持されていることにより、駆動フレーム及び従動フレームの水平方向の動きが拘束され、騒音源となる振動の発生を低減することができる。
【0015】
また、本発明の前記緩衝装置は、弾性材料により形成された弾性部材と、前記従動フレームと前記駆動フレームとを前記弾性部材を介して連結する連結部材と、を備えていてもよい。
【0016】
本発明によれば、駆動フレームと従動フレームとを連結する連結部材が弾性部材を介して接続されていることにより、従動フレームに生じた振動や変位が駆動フレームに伝達され難くなり、騒音の発生を低減することができる。
【0017】
本発明は、前記従動フレームに支持され、搬送対象物を搬送する搬送ケージを備えていてもよい。
【0018】
本発明によれば、従動フレームに搬送ケージが設けられていることにより、駆動フレームにおいて発生した振動や変位が従動フレームに伝達され難くなり、駆動フレームに搬送ケージが一体となっている構造に比して乗り心地が改善される。また、本発明によれば、ラックレールとピニオンギアとの噛合効率が改善することで、高速での移動が可能となると共に、さらに大容量の搬送対象物を搬送することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フレームに発生する振動による騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る1本構の揚重装置の構成を示す側面図である。
【
図3】レール用フレームの構成を示す斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係る2本構の揚重装置の構成を示す正面図である。
【
図8】第3実施形態に係る緩衝装置の構成を示す正面図である。
【
図9】第3実施形態に係る緩衝装置の構成を示す側面図である。
【
図10】第4実施形態に係る緩衝装置の構成を示す正面図である。
【
図11】第4実施形態に係る緩衝装置の構成を示す側面図である。
【
図12】第5実施形態に係る緩衝装置の構成を示す正面図である。
【
図13】第5実施形態に係る緩衝装置の構成を示す側面図である。
【
図14】第6実施形態に係る揚重装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る揚重装置の実施形態について説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1から
図3に示されるように、揚重装置1は、鉛直方向に沿って設けられたレール用フレームBに沿って昇降するエレベータ装置である。揚重装置1は、1本のレール用フレームBを備える1本構のエレベータ装置に構成されている。揚重装置1は、例えば、高層建築物の建設現場において用いられる。レール用フレームBは、例えば、建設現場において組立可能に構成されている。
【0023】
レール用フレームBは、鉛直方向に所定距離の範囲においてモジュールB1化して構成されており、モジュールB1を上部に継ぎ足すことで上方に延長することができる。モジュールB1は、予め組み立てられており、現場においてはモジュールB1を搬入し継ぎ足す作業をすればよい。レール用フレームBは、構造物の壁面W等に固定される。レール用フレームBは、例えば、鉛直方向(Z方向)に延在するトラス構造を有する枠体に形成されている。レール用フレームBは、鋼材Kを組み合わせて形成されている。
【0024】
以下、便宜上、壁面Wを正対する方向(図の-Y方向)から見た面を正面と呼ぶ。ラックレールRは、構造物の壁面W等に固定されたレール用フレームBに固定されている。レール用フレームBの背面側は、壁面Wに固定部材(不図示)を介して固定されている。レール用フレームBの正面側には、ラックレールRが固定されている。レール用フレームBの両側面には、鉛直方向に沿って延在する一対のガイドレールGが固定されている。一対のガイドレールGは、例えば、対向して平行に配置された第1ガイドレールG1と、第2ガイドレールG2とを備えている。
【0025】
以下、第1ガイドレールG1と、第2ガイドレールG2とを特に区別しない場合、総称して一対のガイドレールGと呼ぶ。一対のガイドレールGは、例えば、円形断面の鋼管により形成されている。一対のガイドレールGは、鋼材Kにより互いに連結されている。ラックレールR及び一対のガイドレールGは、モジュールB1と同じ長さの単位に分割されている。ラックレールR及び一対のガイドレールGは、モジュールB1に固定され、モジュールB1の増設と共に増設され、上方に延長される。
【0026】
ラックレールRは、一側面側に平歯のラックギアR1が形成されている。ラックギアR1には、後述のようにピニオンギアが噛合する。ラックレールRの他側面側は、平坦に形成されている。ラックレールRの他側面側には、後述のようにアジャストローラが走行する。ピニオンギアとアジャストローラは、揚重装置1を支持すると共に、ラックレールRを挟持しながら上下方向に走行する。レール用フレームBには、揚重装置1が昇降可能に設置されている。
【0027】
揚重装置1は、例えば、レール用フレームBを昇降する駆動フレーム2と、駆動フレーム2に吊り下げられた従動フレーム5とを備えている。駆動フレーム2は、例えば、鋼材により矩形の枠状に形成されている。駆動フレーム2の四隅は、4個のローラ装置Qを介してレール用フレームBに支持されている。駆動フレーム2は、第1ガイドレールG1において上下方向に配置された2個のローラ装置Qにより支持されている。
【0028】
駆動フレーム2は、第2ガイドレールにおいて上下方向に配置された2個のローラ装置Qにより支持されている。ローラ装置Qの構成については後述する。駆動フレーム2は、ラックレールRを利用して駆動する駆動部20を備える。駆動フレーム2の内側には、少なくとも1つの駆動部20が固定されている。駆動部20は、駆動フレーム2に設けられた第1板状部20Bに固定されている。第1板状部20Bは、駆動フレーム2に正対する面に平行に取り付けられている。第1板状部20Bには、鉛直方向に沿って2個の円形の穴(不図示)が形成されている。駆動部20は、穴から後述の減速機22が突出するように第1板状部20Bに固定されている。
【0029】
第1板状部20Bには、例えば、2個の駆動部20が鉛直方向に沿って配置されている。駆動部20は、2個以上であってもよいし、1個でもよい。駆動部20は、例えば、駆動源のモータ21を備える。モータ21の出力軸(不図示)には、回転数を低減すると共に、トルクを増大させて出力する減速機22が接続されている。モータ21のトルクが十分であれば減速機22は無くてもよい。減速機22の出力軸23には、ラックレールRのラックギアR1に噛合するピニオンギアPが接続されている。
【0030】
減速機22の出力軸23とピニオンギアPとの間は、弾性部材により形成された継手部30により連結されている。ピニオンギアPは、ラックレールRの一側面側のラックギアR1に噛合している。ラックレールRにおいて、ラックギアR1と反対側の他側面側には、ピニオンギアPに隣接してアジャストローラJが設けられている。
【0031】
アジャストローラJは、ピニオンギアPとラックギアR1との噛合におけるバックラッシュを確保するために設けられている。アジャストローラJは、従動フレーム5の正面側に設けられた第2板状部20Cに回転可能に設けられている。アジャストローラJとピニオンギアPとによりラックレールRを挟持する。ピニオンギアPが駆動部20により回転駆動され、ラックレールRのラックギアR1と噛合してラックレールRに沿って走行する際に、アジャストローラJは、ピニオンギアPとの間隔を保持してピニオンギアPがラックギアR1から逸脱することを防止する。
【0032】
上記構成により、駆動部20は、ピニオンギアPを回転駆動することでラックレールRに沿って駆動フレーム2を昇降させることができる。駆動フレーム2の下方には、従動フレーム5が緩衝装置10を介して吊り下げられている。緩衝装置10については後述する。
【0033】
従動フレーム5は、レール用フレームBに沿って駆動フレーム2に連動して昇降する。従動フレーム5は、例えば、鋼材により矩形の枠状に形成されている。従動フレーム5の四隅は、4個のローラ装置Qを介してレール用フレームBに支持されている。従動フレーム5は、第1ガイドレールG1において上下方向に配置された2個のローラ装置を介してレール用フレームBに支持されている。 従動フレーム5は、第2ガイドレールG2において上下方向に配置された2個のローラ装置を介してレール用フレームBに支持されている。
【0034】
従動フレーム5の下方には、正面方向に突出する支持枠6が設けられている。支持枠6は、鋼材を組み合わせてトラス構造を有する枠体に形成されている。支持枠6の下方には、ラックレールRと噛合する落下防止装置8が設けられている。落下防止装置8は、万が一に従動フレーム5が落下した際に従動フレーム5の下降を停止する。落下防止装置8は、例えば、ラックギアR1に噛合する制動ピニオン(不図示)と、制動ピニオンにより駆動される電磁ディスクブレーキを備えている。従動フレーム5が落下した際に、制動ピニオンが回転すると電磁ディスクブレーキに渦電流が生じ、電磁ディスクブレーキ内部の電気抵抗により従動フレーム5の運動エネルギーは熱エネルギーに変換され、従動フレーム5の落下が制動される。落下防止装置8は、機械的な構成によりラックレールRに対する下降を停止するものであってもよい。
【0035】
支持枠6の上部には、搬送対象物を搬送する搬送ケージ7が設けられている。上記構成により、従動フレーム5は、支持枠6を介して搬送ケージ7を支持している。搬送ケージ7は、鋼材やクレーチングを組み合わせて箱体に形成されている。
【0036】
搬送ケージ7は、正面側に開閉自在な扉(不図示)が設けられている。搬送ケージ7は、例えば、資材や作業者を搬送可能に形成されている。搬送ケージ7と支持枠6との間には、例えば、防振ゴム等の弾性体により形成された弾性部材9が設けられている。弾性部材9は、防振ゴムの他にバネ等の弾性体により形成されていてもよい。弾性部材9は、振動を吸収可能な一般的なダンパー装置に置き換えられてもよい。
【0037】
弾性部材9は、支持枠6と搬送ケージ7との間に生じる振動を低減する。弾性部材9は、従動フレーム5の正面側と搬送ケージ7の背面側との間にも設けられている。弾性部材9は、従動フレーム5と搬送ケージ7との間に生じる振動を低減する。
【0038】
図6に示されるように、ローラ装置Qは、第1ガイドレールG1或いは第2ガイドレールG2を走行する装置である。ローラ装置Qは、ガイドレールGを挟持して駆動フレーム2及び従動フレーム5を昇降方向に案内して走行させる複数のガイドローラDを備える。図示されたローラ装置Qは、第2ガイドレールG2の上側に配置されたものが代表して例示されている第2ガイドレールG2の下側に配置されたローラ装置Qは、例えば、上側のローラ装置Qと前後方向(Y軸方向)に対称に配置されている。正面視して第1ガイドレールG1に配置された上下のローラ装置Qは、第2ガイドレールG2の上下のローラ装置Qと左右方向(X軸方向)に対称に構成されている。
【0039】
ローラ装置Qは、複数のガイドローラDと、複数のガイドローラDを支持する支持板Q1とを備える。支持板Q1は、駆動フレーム2及び従動フレーム5に固定されている。支持板Q1において、ガイドレールGの正面側を走行する1個のガイドローラD1が回転自在に支持されている。支持板Q1において、ガイドレールGの背面側を走行する2個のガイドローラD2,D3が回転自在に支持されている。正面視して2個のガイドローラD2,D3の間にガイドローラD1が回転自在に支持されている。
【0040】
ガイドローラD1と2個のガイドローラD2,D3によりガイドレールGを挟持している。ガイドローラD1と2個のガイドローラD2,D3により、ローラ装置Qは、前後方向(Y軸方向)の動きが規制される。ガイドローラD1と2個のガイドローラD2,D3とは、ガイドレールGとの間のクリアランスを調整可能に支持板Q1に設けられている。ガイドローラDにおいて、ガイドレールGに接触するトレッド面Uは、ガイドレールGの断面形状に合致するように軸線方向に径が小さくなる湾曲したU形の溝状に形成されている。トレッド面Uにより、ローラ装置Qは、左右方向(X軸方向)への動きが規制される。
【0041】
トレッド面Uは、例えば、ウレタン、ナイロン等の弾性部材により形成されている。これにより、複数のガイドローラDは、ガイドレールGとの間に発生する接触音、接触振動や、ガイドレールGの継ぎ目を走行する際の衝撃が駆動フレーム2及び従動フレーム5に伝搬することが低減される。トレッド面Uが湾曲して形成されていることで、昇降マストとの接触面積を増やし、接触応力を分散させることができる。ガイドローラDによれば、金属製のガイドレールに比して走行時のノイズや振動を大幅に低減することができる。
【0042】
図5及び
図6に示されるように、緩衝装置10は、駆動フレーム2と従動フレーム5との間に設けられている。緩衝装置10は、例えば、駆動フレーム2と従動フレーム5とを連結する4個の連結装置11により形成されている。連結装置11は、例えば、防振ゴム等の弾性材料により形成された弾性部材12,15と、棒状に形成された連結部材13とを備えている。弾性部材12は、例えば、円筒形に形成されている。弾性部材12の中央部には、上下方向に沿って円形断面の貫通孔12Hが形成されている。弾性部材15は、例えば、駆動フレーム2と従動フレーム5との間に配置されている。
【0043】
連結部材13は、例えば、従動フレーム5の上面5Jから上方に突出して設けられている。連結部材13の下端部は、従動フレーム5の上面5Jに固定されている。連結部材13は、例えば、円形断面の鋼棒により形成されている。連結部材13は、駆動フレーム2の底面2Tに設けられた貫通孔2Hを貫通して上方に突出している。連結部材13の突出部分には、弾性部材12が挿入されている。弾性部材12の上面側には、円板状に形成されたワッシャZが配置されている。
【0044】
連結部材13の上端部には、円板状に形成された固定部材14が固定されている。固定部材14は、ロックナットやピンにより形成されていてもよい。固定部材14は、連結部材13の抜け止めとして機能している。固定部材14は、ワッシャZを介して弾性部材12を下方に圧縮している。弾性部材12は、固定部材14から伝達される従動フレーム5の振動を吸収する。弾性部材15は、駆動フレーム2が従動フレーム5に対して下降した際に駆動フレーム2と従動フレーム5との接触時の衝撃を緩和する。
【0045】
固定部材14と駆動フレーム2の底面2Tとは、ワッシャZと弾性部材12とを挟持している。上記構成により、連結部材13は、従動フレーム5と駆動フレーム2とを弾性部材12を介して連結している。従動フレーム5は、緩衝装置10を介して駆動フレーム2から吊り下げられ、駆動フレーム2の昇降に連動して運搬対象物を昇降させることができる。緩衝装置10は、駆動フレーム2と従動フレーム5との間に相対的に生じる振動や力を低減するように構成されている。
【0046】
上述したように揚重装置1によれば、駆動フレーム2と従動フレーム5との間に緩衝装置10が設けられていることにより、駆動部20のピニオンギアPに作用する水平力を低減することができる。揚重装置1によれば、緩衝装置10が設けられていることにより、ガイドレールGの建方精度不足(鉛直度・目違い)によってピニオンギアPに作用する水平力を低減することができる。揚重装置1によれば、従動フレームに搬送ケージ7が設けられていることにより、駆動フレーム2において発生した振動や変位が従動フレーム5に伝達され難くなり、駆動フレーム2に搬送ケージ7が一体となっている構造に比して乗り心地が改善される。
【0047】
揚重装置1によれば、緩衝装置10が設けられていることにより、搬送ケージ7が受ける風荷重によって生じる水平力を低減することができる。揚重装置1によれば、ピニオンギアPに作用する水平力を低減することにより、ピニオンギアPの片当たり等を防止でき、ピニオンギアPとラックレールRとの接触及び転動に伴う騒音や振動を最小限に抑えることができる。揚重装置1によれば、駆動フレーム2単体でピニオンギアPとラックレールRとの噛み合い調整が可能となる。揚重装置1によれば、ピニオンギアPとラックレールRとの最終の噛み合い調整と、ガイドローラDの調整作業とを工場等において低所で安全に行うことができる。また、本発明によれば、ラックレールとピニオンギアとの噛合効率が改善することで、高速での移動が可能となると共に、さらに大容量の搬送対象物を搬送することができる。
【0048】
揚重装置1によれば、取付け調整の完了した駆動フレーム2とガイドレールGを一体化したユニットを現場に搬入し、組み立てることで、駆動部20の仮支えやガイドローラDの調整作業を行うか必要が無く、工数を削減すると共に、作業時間を短縮することができる。揚重装置1によれば、駆動フレーム2により構成される駆動ユニットと従動フレーム5により構成される従動ユニットとが分離して構成されているため、故障時に機器を容易に交換することができる。揚重装置1によれば、駆動フレーム2に連結される従動フレーム5、搬送ケージ7、緩衝装置10等を変更すれば仕様の異なるエレベータの駆動機構として転用できる。
【0049】
[第2実施形態]
上述した揚重装置1は、1本のレール用フレームBにより構成されているだけでなく2本のレール用フレームBにより構成される。以下の説明において、上記実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。
【0050】
図7に示されるように、揚重装置1Aは、2本のレール用フレームBを備えた2本構エレベータに構成されている。揚重装置1Aは、一対の駆動フレーム2と、一対の従動フレーム5とを備えている。2本のレール用フレームBには、それぞれ駆動フレーム2及び従動フレーム5が昇降自在に設けられている。一対の駆動フレーム2は、対向して配置されている。一対の従動フレーム5は、対向して配置されている。一対の従動フレーム5の下部は、トラス構造に形成された連結フレーム6Aにより連結されている。連結フレーム6Aにより、一対の従動フレーム5の水平度が保持される。
【0051】
一対の従動フレーム5には、それぞれ落下防止装置8が設けられている。一対の落下防止装置8の間には、制動ピニオン(不図示)同士を連結する連結シャフト8Sが設けられている。連結シャフト8Sにより、一対の落下防止装置8の動作が同調される。
【0052】
揚重装置1Aによれば、左右のレール用フレームBの建方誤差で生じる“こじり力”は一対の従動フレーム5に設けられた複数のローラ装置Qに伝達される。このとき、一対の駆動フレーム2は、一対の緩衝装置10を介して一対の従動フレーム5連結されているため、一対の駆動フレーム2には一対の従動フレーム5において生じた「こじり力」が伝達されず、ピニオンギアPとラックレールRとの噛み合いに影響を与えることはない。
【0053】
揚重装置1Aによれば、万が一に、一対の駆動フレーム2と一対の従動フレーム5との連結が破断した場合、一対の落下防止装置8が連動して動作することにより、一対の従動フレーム5の落下が防止される。揚重装置1Aによれば、一対の駆動フレーム2の昇降速度に差が生じても、一対の緩衝装置10が変形することにより、ピニオンギアPとラックレールRとの噛み合いへの影響を低減することができる。
【0054】
[第3実施形態]
図8及び
図9には、第3実施形態に係る緩衝装置10Aが示されている。緩衝装置10Aは、例えば、駆動フレーム2と従動フレーム5との間の追従性を向上させるユニバーサルジョイントに形成されている。緩衝装置10Aは、例えば、従動フレーム5を振り子運動可能に回転させる第1回転構造10A1と、第2回転構造10A2とを備えている。第1回転構造10A1は、駆動フレーム2の下部に配置されている。第1回転構造10A1は、Y軸方向に沿った第1回転軸10P1を中心に回転する第1回転部材10P2と、第1回転部材10P2を支持する第1支持部材10P3とを備えている。
【0055】
第1回転軸10P1は、Y軸方向に沿って配置されている。第1支持部材10P3は、駆動フレーム2の底面2Tに固定されている。第1支持部材10P3は、第1回転軸10P1を介して第1回転部材10P2を回転可能に吊り下げている。第1支持部材10P3と駆動フレーム2の底面2Tとの間には、一対の弾性部材12が設けられている。一対の弾性部材12は、第1回転部材10P2の両端部に配置されている。一対の弾性部材12により、従動フレーム5の振動が駆動フレーム2に伝達するのが低減される。第1回転部材10P2の下部は、第2回転軸10P5を介して第2回転構造10A2を回転可能に吊り下げている。
【0056】
第2回転構造10A2は、従動フレーム5の上部に配置されている。第2回転構造10A2は、従動フレーム5の上面5Jに固定されている。第2回転構造10A2は、第1回転構造10A1に対して第2回転軸10P5を回転中心として回転自在に支持されている。第2回転軸10P5は、第1回転軸10P1に対して直交方向のX軸方向に沿って配置されている。第2回転構造10A2は、第2回転軸10P5に回転自在に支持された第2回転部材10P6を備えている。第2回転部材10P6は、従動フレーム5の上面5Jに固定されている。
【0057】
第2回転部材10P6は、第2回転軸10P5を介して第2支持部材10P7に回転可能に支持されている。第2支持部材10P7は、第1回転部材10P2の下部に固定されている。上記構成により、緩衝装置10Aは、ガイドレールGの昇降方向(Z軸方向)に対して湾曲がある区間を揚重装置1が走行する場合に、駆動フレーム2と従動フレーム5との間の角度調整を自動的に行い、ローラ装置QとガイドレールGとの間の接触抵抗を低減し、騒音を低減することができる。また、緩衝装置10Aは、従動フレーム5に生じる振動を弾性部材12が吸収することにより、フレームに発生する振動による騒音を低減することができる。
【0058】
[第4実施形態]
図10及び
図11には、第4実施形態に係る緩衝装置10Bが示されている。緩衝装置10Bは、例えば、駆動フレーム2と従動フレーム5との間の追従性を向上させるように球面滑り軸受10Kが設けられている。緩衝装置10Bは、駆動フレーム2側に固定された支持部材10B1と、支持部材10B1に連結された球面滑り軸受10Kとを備えている。支持部材10B1は、振り子運動可能に回転させる球面滑り軸受10Kを介して従動フレーム5と連結されている。
【0059】
支持部材10B1は、駆動フレーム2の底面2Tに固定されている。支持部材10B1は、球面滑り軸受10Kを介して駆動フレーム2を回転可能に吊り下げている。支持部材10B1と駆動フレーム2の底面2Tとの間には、一対の弾性部材12が設けられている。一対の弾性部材12は、第1回転部材10P2の両端部に配置されている。一対の弾性部材12により、従動フレーム5の振動が駆動フレーム2に伝達するのが低減される。
【0060】
球面滑り軸受10Kは、例えば、球面に形成された球面部10K1と、球面部10K1を保持するように形成された球面保持部10K2とを備えている。球面部10K1は、上下方向に沿って貫通孔10KHが形成されている。貫通孔10KHには、シャフト10BSが挿入されている。シャフト10BSの上端は、支持部材10B1の下端に連結されている。シャフト10BSの下端は、球面部10K1の下端を保持する拡径部10BTが形成されている。
【0061】
球面部10K1の外周面は、球面保持部10K2の内周面に保持されている。球面保持部10K2の内周面は、球面部10K1の外周面の形状に合致するように窪んだ曲面に形成されている。球面保持部10K2の上面は、抑え板10B3により支持されている。抑え板10B3と、従動フレーム5の上面5Jとは、ハウジング10B4により連結されている。ハウジング10B4の内部には、球面保持部10K2が収容される収容空間10B5が形成されている。
【0062】
上記構成により、緩衝装置10Bは、ガイドレールGの昇降方向(Z軸方向)に対して湾曲がある区間を揚重装置1が走行する場合に、駆動フレーム2と従動フレーム5との間の角度調整を球面滑り軸受10Kにより自動的に行い、ローラ装置QとガイドレールGとの間の接触抵抗を低減し、騒音を低減することができる。また、緩衝装置10Bは、従動フレーム5に生じる振動を弾性部材12が吸収することにより、フレームに発生する振動による騒音を低減することができる。
【0063】
[第5実施形態]
図12及び
図13には、第5実施形態に係る緩衝装置10Aが示されている。第5実施形態に係る緩衝装置10Aは、第3実施形態に係る緩衝装置10Aにおける第1支持部材10P3と駆動フレーム2との間の支持構造が変更されている。第1支持部材10P3は、第1ガイドレールG1側において弾性部材12を介して駆動フレーム2の横桁2Yに支持されている。横桁2Yの上面側は、駆動フレーム2の底面2Tである。横桁2Yの下面側には、更に弾性部材12が設けられている。横桁2Yの上面側に配置された弾性部材12と横桁2Yの下面側に配置された弾性部材12とは、横桁2Yを貫通するボルト及びナットにより連結されている。
【0064】
即ち、第1ガイドレールG1側において横桁2Yの上面側及び下面側は、一対の弾性部材12により挟持されている。緩衝装置10Aは、第2ガイドレールG2側においても同様の構成を備え、第1支持部材10P3は、弾性部材12を介して駆動フレーム2の横桁2Yに支持されている。横桁2Yの上面側及び下面側は、一対の弾性部材12により挟持されている。
【0065】
上記構成により、緩衝装置10Aは、従動フレーム5に生じる振動を弾性部材12が吸収することにより、フレームに発生する振動による騒音を低減することができる。緩衝装置10Aにおいて、第1支持部材10P3の両端部が横桁2Yの上面側及び下面側を挟持する一対の弾性部材12により支持されているため、従動フレーム5の振動が駆動フレーム2に伝達するのが更に低減される。
【0066】
[第6実施形態]
図14には、第6実施形態に係る揚重装置1Bが示されている。揚重装置1Bは、駆動フレーム2の上方に従動フレーム5が載置されている。駆動フレーム2と従動フレーム5との間には、例えば、緩衝装置10が設けられている。従動フレーム5の上方には落下防止装置8が設けられている。従動フレーム5は、上昇時に駆動フレーム2によって下方から押し上げられる。従動フレーム5は、下降時に駆動フレーム2によって下方に支持される。
【0067】
揚重装置1Bによれば、従動フレーム5が駆動フレーム2に載置されていることにより、従動フレーム5の落下が防止される。揚重装置1Bによれば、駆動フレーム2において発生した振動や変位が従動フレーム5に伝達され難くすることができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態においては、工事用の揚重装置を例示したがこれに限らず、工事用以外の揚重装置に適用してもよい。また、上述した構成は、水平方向、斜め方向に移動するラックピニオンを利用した移動体に適用してもよい。また、上記実施形態に示した構成は、相互に置き換えられてもよく、組み合わされて構成されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1、1A 揚重装置
揚重装置
2 駆動フレーム
5 従動フレーム
7 搬送ケージ
9 弾性部材
10、10A、10B 緩衝装置
12 弾性部材
13 連結部材
15 弾性部材
B レール用フレーム
G ガイドレール
G1 第1ガイドレール
G2 第2ガイドレール
Q ローラ装置