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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040978
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】検査システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20240318BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G01N21/84 B
G01N21/892 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145656
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】腰原 敬弘
(72)【発明者】
【氏名】剱持 光俊
(72)【発明者】
【氏名】柄本 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】徳元 勇太
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩二
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB02
2G051AC15
2G051AC19
2G051BC00
2G051CA04
2G051CB01
(57)【要約】
【課題】研磨作業の質を保ちつつ遠隔操作で研磨作業を実行できる検査システム及び検査方法を提供する。
【解決手段】検査システム1は、作業者による操作を受け付ける操作部12と、少なくとも3軸方向の移動自由度を有し、検査対象物7を研磨する研磨部材4を搭載した第1多軸ロボット20Aと、研磨後の検査対象物7の情報を取得する情報取得装置2と、操作部12に対して作業者が入力した動きに応じて第1多軸ロボット20Aを動かすとともに第1多軸ロボット20Aが受ける反力を操作部12へフィードバックする制御装置30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者による操作を受け付ける操作部と、
少なくとも3軸方向の移動自由度を有し、検査対象物を研磨する研磨部材を搭載した第1多軸ロボットと、
研磨後の前記検査対象物の情報を取得する情報取得装置と、
前記操作部に対して前記作業者が入力した動きに応じて前記第1多軸ロボットを動かすとともに、前記第1多軸ロボットが受ける反力を前記操作部へフィードバックする制御装置と、
を備える検査システム。
【請求項2】
前記第1多軸ロボットは、前記研磨部材より先に、又は前記研磨部材とともに前記検査対象物に当接するように構成される接触部材を更に搭載する、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記接触部材は、前記検査対象物に当接する部分に、前記検査対象物の表面形状に倣った形状のあて具を有する、請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記あて具は、前記検査対象物の表面に当接する際に、前記研磨部材の研磨面が前記検査対象物の表面又は表面の接線に対して平行になるように構成されている、請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記情報取得装置によって前記検査対象物の情報を取得する際に前記検査対象物に光を照射する光源を更に備え、
前記情報取得装置と前記光源は相対的な位置又は角度を調整可能に構成されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記情報取得装置は、少なくとも3軸方向の移動自由度を有する第2多軸ロボットに搭載され、
前記光源は、少なくとも3軸方向の移動自由度を有する第3多軸ロボットに搭載され、
前記第1多軸ロボット、前記第2多軸ロボット、又は、前記第3多軸ロボットの少なくとも2つが1つの前記操作部で操作可能に構成されている、請求項5に記載の検査システム。
【請求項7】
前記第1多軸ロボットは、前記研磨部材、前記情報取得装置、及び前記光源の少なくとも2つを着脱可能に構成されている取付部を備える、請求項5に記載の検査システム。
【請求項8】
操作部を操作することによって第1多軸ロボットを遠隔操作し、前記第1多軸ロボットに搭載された研磨部材を検査対象物に当接させる工程と、
前記研磨部材が受ける反力に基づいて前記操作部を操作することで前記研磨部材を遠隔操作し、前記研磨部材によって前記検査対象物を研磨する工程と、
情報取得装置によって研磨後の前記検査対象物の情報を取得する工程と、
を含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システム及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薄鋼板の製造プロセスにおいて、製造ライン内に設置されているロールに付着した異物、あるいはその異物がロールに噛み混んだことによってロール自体に生じた凹凸が鋼板に転写されて生じた欠陥が発生する場合がある。このような、圧延ロールの状態変化に起因するような欠陥は、例えば、凸および凹ローキ、ダルはげ、ノッチ、押しキズ、スリキズと呼ばれる点状の欠陥、線状マークと呼ばれる製品の長手方向に続く欠陥、及び、チャタマークと呼ばれる幅方向に長い欠陥等を含む。これらは、ロール性欠陥とも称される。これらのロール性欠陥は、一般的に極めて微小な凹凸であるため、光学的には差が小さく、そのままの状態で観察しても発見することができず、製造ラインでの発見は困難である。ところが、塗装され、表面粗さが塗料に埋められ表面が滑らかになると明瞭に見えるようになり、外観上大きな問題となる。しかもロール性起因のため周期性を持ってコイル全長にわたって分布する上に、一旦発生するとロールを交換したりプロセスを改善したりするまで連続的に発生するため、このような欠陥を出荷前に発見することは品質管理上重要な問題である。
【0003】
このような微小凹凸表面欠陥を見つけるために、製鉄プロセスの各検査ラインにおいては、操業中に鋼板の走行を一度停止し、検査員が砥石がけによって研磨を行った後に目視検査をしている。砥石がけによって研磨を行うと、凹部に比べて凸部がより砥石に当たり反射率が高くなるので、凹凸部の差が明確になり目視で確認可能となる。このような検査は砥石がけ検査とも称される。
【0004】
しかしながら、砥石がけ検査において、検査ラインを停止して検査員が鋼板に接触して行う検査のため、鋼板のエッジで手足を切創する、突然動き出す鋼板に巻き込まれるなどのリスクがある。つまり、砥石がけ検査は、いわゆる3K作業であるため自動化が望まれている。
【0005】
このような砥石掛け検査のリスク低減のため例えば特許文献1に記載の発明がなされている。この技術は、鋼板の砥石掛け工程と検査工程の双方を自動で行うことができる点に特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-155716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述した特許文献1に記載の技術において、ロボットのアームを予め入力した砥石軌跡プログラムに従って動かしながら砥石を鋼板表面に押し付けることによって砥石掛け作業が行われる。このため、熟練した作業者が行っているような、鋼板のうねりに合わせた微妙な力加減を再現することが難しい。したがって、欠陥の検出性能が人の手による砥石掛け検査と比較すると落ちるという課題があった。
【0008】
本開示は、上記事実に鑑み、研磨作業の質を保つことで欠陥の検出性能を高めることができる検査システム及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態に係る検査システムは、
作業者による操作を受け付ける操作部と、
少なくとも3軸方向の移動自由度を有し、検査対象物を研磨する研磨部材を搭載した第1多軸ロボットと、
研磨後の前記検査対象物の情報を取得する情報取得装置と、
前記操作部に対して前記作業者が入力した動きに応じて前記第1多軸ロボットを動かすとともに、前記第1多軸ロボットが受ける反力を前記操作部へフィードバックする制御装置と、
を備える。
【0010】
本開示の一実施形態に係る検査方法は、
操作部を操作することによって第1多軸ロボットを遠隔操作し、前記第1多軸ロボットに搭載された研磨部材を検査対象物に当接させる工程と、
前記研磨部材が受ける反力に基づいて前記操作部を操作することで前記研磨部材を遠隔操作し、前記研磨部材によって前記検査対象物を研磨する工程と、
情報取得装置によって研磨後の前記検査対象物の情報を取得する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る検査システム及び検査方法によれば、研磨作業の質を保つことで欠陥の検出性能が高められ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る検査システムの構成例を示す図である。
図2A】凹状欠陥を有する研磨前の検査対象物の一例を示す断面図である。
図2B図2Aの検査対象物の研磨後の断面図である。
図3A】凸状欠陥を有する研磨前の検査対象物の一例を示す断面図である。
図3B図3Aの検査対象物の研磨後の断面図である。
図4】スレーブ操作装置の回転軸を説明する図である。
図5図1のスレーブ操作装置において研磨部材とあて具との位置を入れ替えた構成例を示す図である。
図6】本開示に係る検査方法の手順例を示すフローチャートである。
図7】操作装置と多軸ロボットとの複数の組み合わせを備える検査システムの構成例を示す図である。
図8】研磨部材及びあて具が取付部によって多軸ロボットに取り付けられている構成例を示す図である。
図9】取付部に情報取得装置及び光源が取り付けられている構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、検査対象物に対する研磨作業を実行する研磨部材及び研磨後の検査対象物の情報を取得する情報取得装置を備える検査システム、及び、検査方法に関する。研磨作業の一例として、検査対象物としての鋼板に研磨部材の一例である砥石を掛ける砥石掛け検査の装置及び方法が説明される。研磨作業は、検査対象物に接触する作業、検査対象物との間に摩擦を生じさせる作業、又は、検査対象物の表面処理作業を含んでよい。
【0014】
本開示に係る検査システムで用いられる多軸ロボットは、いわゆるバイラテラル制御によるマスタスレーブシステムとして構成されるとする。多軸ロボットは、マスタ操作装置の操作部に入力された操作の動きに応じて、マスタ操作装置から離れて位置するスレーブ操作装置の動作を制御するように構成されることによって遠隔操作を実現する。
【0015】
以下、本開示に係る検査システム及び検査方法の実施形態が図面に基づいて説明される。各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置又は方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
(実施形態)
<システム全体構成>
図1に示されるように、検査システム1は、マスタ操作装置10と、スレーブ操作装置20と、制御装置30とを備える。マスタ操作装置10は、操作部12を備える。スレーブ操作装置20は、第1多軸ロボット20Aと、第2多軸ロボット20Bと、第3多軸ロボット20Cとを備える。スレーブ操作装置20に含まれる多軸ロボットの数は、3台に限られず、1台又は2台であってもよいし4台以上であってもよい。
【0017】
本実施形態において、第1多軸ロボット20A、第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20Cが検査対象物7である鋼板の搬送方向に沿って配置されているとする。検査対象物7である鋼板は、張力がかけられて中空に浮いた状態で搬送されている。なお、本実施形態において、検査対象物7である鋼板に張力がかかって中空に浮いている状態での検査が説明される。張力をかけずに検査対象物7である鋼板が床に接している状態でも検査システム1は検査対象物7を検査可能である。
【0018】
本実施形態において、検査対象物7として鋼板に対する研磨作業及び検査作業が実施される例が説明される。検査対象物7として鋼板に限られず鋼管等の他の種々の材料に対して研磨作業及び検査作業が実施されてもよい。
【0019】
スレーブ操作装置20は、第1多軸ロボット20Aに搭載されている研磨部材4及びあて具5を備える。あて具5は、ダンパー6を介して第1多軸ロボット20Aに取り付けられているとする。第1多軸ロボット20Aは、スレーブアームとして構成される。研磨部材4は、検査対象物7を研磨する。あて具5は、研磨部材4で検査対象物7を研磨する際に、研磨部材4に当接するように構成される。あて具5は、検査対象物7の表面形状に倣った形状を有してよい。ダンパー6は、あて具5が検査対象物7に当接するときに作用する力を緩和するように構成される。
【0020】
本実施形態において、ダンパー6は、棒状のロッド又はプローブとして構成されている。あて具5が検査対象物7である鋼板に接触しやすいように、ダンパー6の先端に湾曲形状又は平面形状を有するあて具5が取り付けられている。ダンパー6又はあて具5は、検査対象物7である鋼板への接触用として、研磨部材4より先に、又は、研磨部材4と同時に、検査対象物7である鋼板に当接する寸法又は形状を有してよい。あて具5を介して研磨部材4を検査対象物7である鋼板の表面に平行になるように当接させることによって、検査対象物7である鋼板の表面に対して一定の力で砥石掛けを行うことができるようになっている。
【0021】
研磨部材4によって砥石掛けする際に、人手作業と同様に製造ライン(検査対象物7である鋼板の搬送)を一旦停止して砥石掛けしてもよいが、第1多軸ロボット20Aによって砥石掛けを行うことによって、人が接触するリスクを回避できるため、検査対象物7である鋼板を搬送したまま砥石掛けすることが可能である。これにより、生産効率を落とすことなく砥石掛けすることが可能になる。第1多軸ロボット20Aによる具体的な砥石掛け方法は後述される。砥石掛けされた検査対象物7である鋼板は、図1中の矢印の方向に進む。検査対象物7の研磨された部分が第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20Cの位置まで進む。
【0022】
スレーブ操作装置20は、第2多軸ロボット20Bに搭載されている情報取得装置2を備える。スレーブ操作装置20は、第3多軸ロボット20Cに搭載されている光源3を備える。第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20Cは、スレーブアームとして構成される。光源3は、検査対象物7の研磨後の表面に光を照射する。情報取得装置2は、検査対象物7の研磨後の表面を撮影するカメラとして構成されてよい。情報取得装置2は、検査対象物7の研磨後の表面からの反射光の強度を検出する受光素子として構成されてよい。光源3及び情報取得装置2は、検査対象物7の研磨後に検査対象物7が進んできた先で研磨後の検査対象物7の情報を取得するように配置されてよい。光源3及び情報取得装置2は、検査対象物7を研磨する位置で研磨後の検査対象物7の情報を取得するように配置されてよい。
【0023】
光源3から照射された光は、研磨後の検査対象物7である鋼板の表面で反射され、その反射光を情報取得装置2で検出する。図2Aに示されるように、研磨前の検査対象物7の表面に凹状の欠陥が存在する場合、欠陥の存在にかかわらず、表面粗さが全体的に大きいことによって、入射光51が検査対象物7の表面で散乱する。その結果、反射光52は、拡散反射の成分を多く含む。
【0024】
研磨後の、凹状の欠陥を有する検査対象物7は、図2Bに示されるように、凹状の欠陥以外の部分において平坦になる。したがって、凹状の欠陥以外の部分において入射光51が正反射する。その結果、凹状の欠陥以外の部分における反射光52は、正反射の成分を多く含む。一方で、凹状の欠陥が存在する部分において、検査対象物7の表面粗さは大きいままである。したがって、凹状の欠陥が存在する部分において入射光51が散乱する。その結果、反射光52は、拡散反射の成分を多く含む。
【0025】
情報取得装置2は、反射光52を検出する。反射光52に含まれる正反射の成分が多いほど、情報取得装置2が検出する反射光52の強度が高くなり得る。情報取得装置2がカメラとして構成される場合、反射光52に含まれる正反射の成分が多いほど、検査対象物7を写した画像が明るくなる。情報取得装置2が受光素子として構成される場合、反射光52に含まれる正反射の成分が多いほど、検査対象物7からの反射光52を検出した強度が高くなる。したがって、図2Bの研磨後の検査対象物7における凹状の欠陥は、画像に暗く写った場所、又は、反射光52の強度が低い場所として検出され得る。
【0026】
図3Aに示されるように、研磨前の検査対象物7の表面に凸状の欠陥が存在する場合、欠陥の存在にかかわらず、表面粗さが全体的に大きいことによって、入射光51が検査対象物7の表面で散乱する。その結果、反射光52は、拡散反射の成分を多く含む。研磨後の、凸状の欠陥を有する検査対象物7は、図3Bに示されるように、凸状の欠陥の部分において平坦になる。したがって、凸状の欠陥の部分において入射光51が正反射する。その結果、凸状の欠陥の部分における反射光52は、正反射の成分を多く含む。一方で、凸状の欠陥以外の部分において、検査対象物7の表面粗さは大きいままである。したがって、凸状の欠陥以外の部分において入射光51が散乱する。その結果、反射光52は、拡散反射の成分を多く含む。そうすると、図3Bの研磨後の検査対象物7における凸状の欠陥は、画像に明るく写った場所、又は、反射光52の強度が高い場所として検出され得る。
【0027】
第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20Cを動かすことによって、光源3と情報取得装置2との位置関係が任意に変更され得る。光源3と情報取得装置2との位置関係が変更されることによって、検査対象物7である鋼板の成分、温度条件又は厚さなどの条件によって、光源3と情報取得装置2との相対的な位置又は角度が調整され得る。つまり、光源3と情報取得装置2とは、相対的な位置又は角度を調整可能に構成されてよい。光源3と情報取得装置2とは、情報取得装置2が正反射を受光するように配置されてもよいし、情報取得装置2が拡散反射を受光するように配置されてもよい。情報取得装置2及び光源3は、位置の調整が可能であれば、必ずしも多軸ロボットに搭載されていなくてもよい。
【0028】
情報取得装置2によって取得された、検査対象物7の画像又は反射光52の検出結果等を含む情報は、例えば離れた場所に設置されている表示装置に表示されてよい。作業者は、表示装置に表示された検査対象物7の情報を確認することによって、検査対象物7である鋼板の表面の欠陥を検出できる。
【0029】
検査システム1は、情報処理装置を備えてもよい。情報処理装置は、情報取得装置2で取得した画像又は反射光52の検出結果等の情報を解析し、検査対象物7の表面において他の部位と異なると判定した部位を欠陥として検知するように構成されてもよい。情報処理装置は、欠陥を検知した場合に、欠陥を検知したことを作業者に報知するように構成されてもよい。
【0030】
以下、マスタ操作装置10及びスレーブ操作装置20の構成例及び動作例が説明される。
【0031】
制御装置30は、マスタ操作装置10及びスレーブ操作装置20(第1多軸ロボット20A、第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20C)と通信可能に接続される。制御装置30と、マスタ操作装置10又はスレーブ操作装置20(第1多軸ロボット20A、第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20C)とは、無線で通信可能に接続されてもよい。制御装置30は、操作部12に入力された操作に応じて第1多軸ロボット20A、第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20Cの動作を制御するとともに、第1多軸ロボット20A、第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20Cが受ける反力を操作部12にフィードバックする。
【0032】
制御装置30は、検査システム1の各部を制御及び管理できるように、例えばCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の少なくとも1つのプロセッサを含んで構成されてよい。制御装置30は、1つのプロセッサで構成されてよいし、複数のプロセッサで構成されてよい。制御装置30を構成するプロセッサは、後述する記憶部に格納されたプログラムを読み込んで実行することによって、検査システム1の各構成部を制御及び管理してよい。
【0033】
制御装置30は、記憶部を備えてよい。記憶部は、各種の情報又はデータ等を格納する。記憶部は、例えば制御装置30において実行されるプログラム、又は、制御装置30において実行される処理で用いられるデータ若しくは処理の結果等を格納してよい。また、記憶部は、制御装置30のワークメモリとして機能してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等を含んで構成されてよいがこれに限定されない。例えば、記憶部は、制御装置30として用いられるプロセッサの内部メモリとして構成されてもよいし、制御装置30からアクセス可能なハードディスクドライブ(HDD)として構成されてもよい。記憶部は、非一時的な読み取り可能媒体として構成されてもよい。記憶部は、制御装置30と一体に構成されてもよいし、制御装置30と別体として構成されてもよい。
【0034】
制御装置30は、通信部を備えてよい。通信部は、有線又は無線によって検査システム1のマスタ操作装置10又はスレーブ操作装置20等の各構成部と通信するための通信インタフェースを含んで構成されてよい。通信インタフェースは、ネットワークを介して他の装置と通信可能に構成されてよい。通信部は、検査システム1の各構成部との間でデータを入出力する入出力ポートを含んで構成されてよい。通信部は、検査システム1の各構成部との間で必要なデータ及び信号を送受信する。通信部は、有線通信規格に基づいて通信してよいし、無線通信規格に基づいて通信してもよい。例えば無線通信規格は3G、4G又は5G等のセルラーフォンの通信規格を含んでよい。また、例えば無線通信規格は、IEEE802.11及びBluetooth(登録商標)等を含んでよい。通信部は、これらの通信規格の1つ又は複数をサポートしてよい。通信部は、これらの例に限られず、種々の規格に基づいて他の装置と通信したりデータを入出力したりしてよい。
【0035】
スレーブ操作装置20の第1多軸ロボット20A、第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20Cは、一例として図4に示されるように、6つの軸(回転軸)を備え、6軸方向に自由度を有する垂直多関節型のアームロボットであるとする。回転軸は、多軸ロボットの先端から順番に、T軸、B軸、R軸、U軸、L軸及びS軸と称されるとする。多軸ロボットは、少なくとも3軸方向の移動自由度を有するように構成されてよい。多軸ロボットは、マスタ操作装置10によって遠隔操作されるように構成される装置である限り、アームに限られず、種々の構造又は形状を有する装置に置き換えられてよい。
【0036】
マスタ操作装置10の操作部12は、作業者による操作入力を受け付ける。操作部12は、一例として、多軸ロボットと同じ垂直多関節型のアームロボットであるとする。マスタ操作装置10の操作部12とスレーブ操作装置20の多軸ロボットとが同一又は類似の態様で構成されることで、検査システム1としてのマスタスレーブ制御システムが容易に制御され得る。マスタ操作装置10とスレーブ操作装置20とは、必ずしも相似形で構成されなくてもよいし、同じ自由度で構成されなくてもよい。操作部12は、操作軸として構成されてもよいし、ジョグシャトルのような回転型コントローラとして構成されてもよい。操作部12は、これらの例に限られず種々の態様で構成されてよい。
【0037】
制御装置30は、マスタ操作装置10を制御するとともに、スレーブ操作装置20の多軸ロボットの各部の位置又は角度と、多軸ロボットの各部に作用する反力とをマスタ操作装置10へフィードバックする。具体的に、制御装置30は、多軸ロボットのアームの角度から軌道計算される多軸ロボットの先端の位置及び姿勢と、多軸ロボットの各部に作用する反力とを、バイラテラル制御で双方向に伝達可能に構成される。多軸ロボットのアームが多関節ロボットとして構成される場合、制御装置30は、多軸ロボットの各関節に設けられた駆動モータのトルクを、反力としてマスタ操作装置10に伝達するように構成されてよい。
【0038】
制御装置30は、スレーブ操作装置20の第1多軸ロボット20A、第2多軸ロボット20B及び第3多軸ロボット20Cのそれぞれを制御できるように構成される。制御装置30は、マスタ操作装置10の操作部12による操作対象とする多軸ロボットを切り替えるスイッチを備えてよい。制御装置30は、操作対象を切り替えるスイッチのようなハードウェアを備える構成に限られず、操作対象をソフトウェアの動作として切り替えるように構成されてもよい。1台のマスタ操作装置10によって複数のスレーブ操作装置20を操作可能に構成されることによって、設備が簡易化され得る。その結果、占有面積及びコストの削減が実現され得る。
【0039】
<研磨作業>
研磨作業において、検査対象物7は研磨部材4によって研磨される。多軸ロボットに、検査対象物7としての鋼板の表面に砥石掛けをするための研磨部材4としての砥石が取り付けられている。図1に例示される構成において、研磨部材4は、多軸ロボットの先端のT軸(図4参照)で回転する部分に取り付けられている。制御装置30は、研磨部材4が取り付けられている第1多軸ロボット20Aを操作部12による操作対象とするように切り替えてよい。
【0040】
多軸ロボットに、反力を伝える接触部材としてダンパー6が取り付けられている。ダンパー6は、緩衝機能を備える。図1に例示される構成において、ダンパー6は、T軸(図4参照)とB軸(図4参照)との間から突出する第1ロッドと、第1ロッドの先端から第1ロッドに交差する方向に延びる第2ロッドとを含んで構成されている。なお、ダンパー6の形状はロッド等に限られず、研磨部材4より先に、又は研磨部材4とともに検査対象物7に接近して当接するような寸法及び形状で構成されてよい。
【0041】
ダンパー6の先端(第2ロッドの先端)に、あて具5が取り付けられている。接触部材は、ダンパー6又はあて具5を含むともいえる。あて具5は、検査対象物7に接触しやすいように、検査対象物7である鋼板の表面に倣った形状の当接面を有している。あて具5の形状は、検査対象物7である鋼板が平板である場合には平らなブロック部材であってよいし、検査対象物7である鋼板が湾曲している場合には湾曲したカバー部材であってよい。あて具5は、研磨部材4と並んで配置されている。あて具5の位置は、検査対象物7である鋼板の表面に当接する際に、研磨部材4の研磨面(砥石の砥石面)が検査対象物7である鋼板の表面(又は表面の接線)に対して平行となり、かつ、適切な力で押し付けられる(所定の反力が作用する)状態で、研磨部材4が検査対象物7である鋼板に当接(接触)するように調整されている。
【0042】
検査対象物7である鋼板の砥石掛け検査(研磨作業)を行う場合、作業者は、まず、マスタ操作装置10の操作部12を操作して多軸ロボットを検査対象物7である鋼板に接近させる。作業者は、次に、操作部12を操作して研磨部材4を検査対象物7である鋼板の表面に当接(接触)させる。
【0043】
ここで、研磨部材4を検査対象物7である鋼板に当接させる際に、作業者は、多軸ロボットにダンパー6を介して取り付けられているあて具5を研磨部材4より先に、又は研磨部材4とともに検査対象物7である鋼板に当接させる。このとき、検査対象物7である鋼板から多軸ロボットに対して研磨部材4及びあて具5を介して反力が作用する。作業者は、検査対象物7である鋼板から作用する反力を操作部12で検知しながら操作することによって、ダンパー6が多軸ロボットを支持するように操作できる。そして、作業者は、検査対象物7である鋼板に対してダンパー6で多軸ロボットを支持したまま、検査対象物7である鋼板の表面上にある目標の作業対象箇所に対して、多軸ロボットの先端に取り付けられている研磨部材4を検査対象物7である鋼板に当接(接触)させる位置及び向きを調整する。
【0044】
ダンパー6は、多軸ロボットの先端側から1番目の軸(T軸)の自由度を持つ箇所より多軸ロボットの付け根側に設けられている。このようにすることで、検査対象物7である鋼板にあて具5を当接させた後、あて具5を動かさずに、研磨部材4のみがT軸の回転によって検査対象物7である鋼板の表面と平行な方向に自由に向きを変えることができる。
【0045】
その後、作業者は、研磨部材4が検査対象物7である鋼板から受ける反力(多軸ロボットの反力)に基づいてマスタ操作装置10の操作部12を操作することによって、研磨部材4によって検査対象物7である鋼板の表面を研磨(砥石掛け)する。検査対象物7である鋼板の表面上を大きく研磨(砥石掛け)する際には、多軸ロボットの各軸の動作を利用してあて具5が検査対象物7である鋼板と接触したままの状態で研磨部材4とあて具5とを一体として検査対象物7である鋼板に対して鋼板の表面に沿う方向に動かすことによって、研磨(砥石掛け)が実行される。
【0046】
以上のように、作業者が検査対象物7である鋼板から研磨部材4が受ける反力に基づいてマスタ操作装置10の操作部12を操作することによって、作業者が遠隔からでも反力を感じながら研磨部材4の当たり具合を調整しながら研磨作業(砥石掛け検査)を実行できる。また、あて具5を検査対象物7である鋼板に当接させることによって、検査対象物7である鋼板に対して研磨部材4を回転させたり移動させたりするときに、研磨部材4を検査対象物7に押し付ける力が安定しやすくなる。研磨作業の質は、研磨部材4を検査対象物7に押し付ける力によって制御され得る。研磨部材4を検査対象物7に押し付ける力が安定することによって、研磨作業の質が向上し得る。このため、熟練した作業者が行っているような、検査対象物7(鋼板)のうねりに合わせた微妙な力加減を再現することができる。
【0047】
検査システム1は、図5に示されるように、ダンパー6及びあて具5の位置がB軸(図4参照)よりも付け根の近くになる(B軸とR軸との間に取り付けられている)ように構成されてもよい。すなわち、ダンパー6は、あて具5を検査対象物7である鋼板に当接(接触)させた状態で、研磨部材4が少なくともT軸及びB軸の2軸で駆動される位置に(2軸で移動可能となるように)取り付けられている。
【0048】
作業者は、あて具5を検査対象物7である鋼板に接触させて固定し、多軸ロボットの先端側から2番目のB軸で研磨部材4を検査対象物7である鋼板の表面に接触させる。作業者は、多軸ロボットの先端側から1番目のT軸で研磨部材4のみを検査対象物7である鋼板の表面と平行な方向に自由に向きを変えることができる。このため、作業者は、あて具5の接触後にあて具5を動かさずに研磨部材4の検査対象物7への当たり方を微調整でき、かつ、研磨部材4の位置を自由に動かすことができる。なお、図5において、あて具5は、B軸よりも付け根側に取り付けられているが、R軸よりも付け根側、すなわち、あて具5を検査対象物7である鋼板に当接させた状態で、研磨部材4が3軸以上で駆動される位置に取り付けられてもよい。
【0049】
また、図5に例示される構成において、ダンパー6又はあて具5が検査対象物7である鋼板から受ける反力は、ダンパー6よりも付け根側に位置する軸(R軸又はU軸等)で検知される。また、研磨部材4が検査対象物7である鋼板から受ける反力は、ダンパー6よりも先端側に位置するT軸又はB軸で検知される。すなわち、研磨部材4が受ける反力とダンパー6又はあて具5が受ける反力とが区別して検知され得る。反力が区別して検知されることによって、作業者は、反力に基づいて研磨部材4の検査対象物7である鋼板への当たり具合を微調整することができ、精度よく研磨作業(砥石掛け検査)を実行できる。
【0050】
研磨作業用の多軸ロボットは、上述してきた構成例に限られず、他の種々の構成を含んでよい。例えば、研磨部材4として砥石に限られず研磨布紙等が用いられてよい。
【0051】
また、多軸ロボットは、必ずしも接触部材、すなわちダンパー6又はあて具5を備えなくてもよい。多軸ロボットがダンパー6又はあて具5を備えない場合、作業者は、検査対象物7である鋼板の表面に研磨部材4を直接当接させ、研磨部材4が受ける反力に基づいてマスタ操作装置10の操作部12を操作することで、検査対象物7である鋼板に対する研磨部材4の当たり方を調整できる。
【0052】
<検査作業>
検査作業において、検査対象物7の画像又は検査対象物7からの反射光52の検出結果等の情報が取得される。制御装置30は、情報取得装置2が取り付けられている第2多軸ロボット20Bを操作部12による操作対象とするように切り替えてよい。また、制御装置30は、光源3が取り付けられている第3多軸ロボット20Cを操作部12による操作対象とするように切り替えてよい。
【0053】
まず、制御装置30は、研磨後の検査対象物7に対して光源3の位置を調整するために、光源3が取り付けられている第3多軸ロボット20Cを操作部12による操作対象とするように切り替える。作業者は、操作部12を操作することによって第3多軸ロボット20Cを動かして光源3の位置を調整する。
【0054】
次に、制御装置30は、研磨後の検査対象物7に対して情報取得装置2の位置を調整するために、情報取得装置2が取り付けられている第2多軸ロボット20Bを操作部12による操作対象とするように切り替える。作業者は、操作部12を操作することによって第2多軸ロボット20Bを動かして情報取得装置2の位置を調整する。
【0055】
情報取得装置2は、検査対象物7から取得した情報をリアルタイムに出力してよい。情報取得装置2は、検査対象物7の画像をリアルタイムに表示装置に出力し、検査対象物7の画像を作業者に視認させてよい。作業者は、検査対象物7の画像を見ながら、情報取得装置2の位置を調整してよい。このようにすることで、作業者は、いろいろな角度から検査対象物7の表面を観察できる。作業者は、検査対象物7の画像を見ながら、光源3の位置を調整してもよい。
【0056】
情報取得装置2は、検査対象物7からの反射光の検出結果をリアルタイムに表示装置に出力し、検査対象物7からの反射光の強度に関する情報を作業者に通知してよい。作業者は、反射光の強度を確認しながら、情報取得装置2又は光源3の位置を調整してよい。このようにすることで、作業者は、検査対象物7の一部だけ周囲に比べて反射光の強度が異なる部分を探して欠陥の存在を検査できる。
【0057】
<フローチャート>
検査システム1は、図6に例示されるフローチャートの手順を含む検査方法を実行してもよい。検査方法は、検査システム1の制御装置30等に含まれるプロセッサに実行させる検査プログラムとして実現されてもよい。検査プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0058】
検査システム1の制御装置30は、第1多軸ロボット20Aに取り付けられている研磨部材4を検査対象物7に接触させる(ステップS1)。具体的に、制御装置30は、マスタ操作装置10の操作部12に入力された操作内容を取得し、操作部12の動きに応じて研磨部材4が検査対象物7に接触するように第1多軸ロボット20Aを動かす。
【0059】
制御装置30は、研磨部材4の接触圧力を制御する(ステップS2)。具体的に、作業者が操作部12にフィードバックされる反力を感知して操作部12を操作する。制御装置30は、この作業者による操作部12の動きに応じて研磨部材4の接触圧力を制御する。
【0060】
制御装置30は、研磨部材4を駆動する(ステップS3)。具体的に、制御装置30は、作業者による操作部12の動きに応じて研磨部材4が取り付けられた部分を駆動する。制御装置30は、作業者がT軸を回転させる指示を入力した場合に、T軸を回転させて研磨部材4を回転させてもよい。
【0061】
制御装置30は、研磨が完了したか判定する(ステップS4)。具体的に、制御装置30は、作業者からの入力によって研磨が完了したか判定してよい。制御装置30は、研磨が完了していない場合(ステップS4:NO)、ステップS2の接触圧力の制御の手順に戻って研磨作業を継続する。
【0062】
制御装置30は、研磨が完了した場合(ステップS4:YES)、研磨部材4を検査対象物7から離す(ステップS5)。具体的に、制御装置30は、マスタ操作装置10の操作部12に入力された操作内容を取得し、操作部12の動きに応じて研磨部材4が検査対象物7から離れるように第1多軸ロボット20Aを動かす。
【0063】
制御装置30は、第2多軸ロボット20Bに取り付けられている情報取得装置2を検査対象物7に近づける(ステップS6)。具体的に、制御装置30は、マスタ操作装置10の操作部12に入力された操作内容を取得し、操作部12の動きに応じて情報取得装置2が検査対象物7に近づくように第2多軸ロボット20Bを動かす。制御装置30は、第3多軸ロボット20Cに取り付けられている光源3を検査対象物7に近づけてもよい。
【0064】
制御装置30は、検査対象物7に対する情報取得装置2の位置を調整する(ステップS7)。具体的に、制御装置30は、マスタ操作装置10の操作部12に入力された操作内容を取得し、操作部12の動きに応じて検査対象物7に対する情報取得装置2の位置を調整するように第2多軸ロボット20Bを動かす。制御装置30は、第3多軸ロボット20Cに取り付けられている光源3の位置を調整してもよい。
【0065】
検査システム1の情報取得装置2は、検査対象物7の情報を取得する(ステップS8)。情報取得装置2は、検査対象物7の画像を撮像してもよいし検査対象物7からの反射光を検出してもよい。情報取得装置2は、検査対象物7の情報を、作業者が視認できるように表示装置に出力してもよいし、情報を解析して欠陥を検知するように情報処理装置に出力してもよい。検査システム1は、ステップS8の手順の実行後、図6のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0066】
以上述べてきたように、本開示に係る検査システム1及び検査方法によれば、スレーブ操作装置20の多軸ロボットの先端に取り付けられている研磨部材4をマスタ操作装置10によって操作することによって遠隔で検査対象物7である鋼板が研磨される。また、スレーブ操作装置20の多軸ロボットの先端に取り付けられている情報取得装置2及び光源3をマスタ操作装置10によって操作することによって遠隔で検査対象物7が検査され得る。このようにすることで、検査対象物7である鋼板等の生産ラインを止めることなく検査が実行され得る。その結果、検査が生産効率に及ぼす影響が低減され得る。また、研磨後の検査対象物7を遠隔のままで検査できることによって、検査のための研磨作業の質が保たれ得る。その結果、欠陥の検出性能が高められ得る。
【0067】
また、本開示に係る検査システム1及び検査方法によれば、検査対象物7を研磨する際に、研磨部材4が受ける反力がマスタ操作装置10にフィードバックされる。このようにすることで、作業者は、検査対象物7に接近することなく遠隔からでも反力を感じながら研磨部材4の検査対象物7である鋼板への当たり具合を調整でき、あたかも直接研磨するように研磨作業を実行できる。また、多軸ロボットにダンパー6又はあて具5を取り付けることによって、作業者が研磨部材4を安定して検査対象物7の表面に平行に当てることが容易になる。その結果、研磨作業の効率及び安定性が向上する。
【0068】
(他の実施形態)
以下、他の実施形態が説明される。
【0069】
<多軸ロボットとマスタ操作装置10との対応関係>
上述してきた実施形態において、検査システム1は、1台のマスタ操作装置10及び制御装置30によって、3台の多軸ロボットを1台ずつ切り替えて操作するように構成される。他の実施形態において、検査システム1は、1台の多軸ロボットを操作するために1台のマスタ操作装置10及び制御装置30を備えてよい。検査システム1は、3台の多軸ロボットを操作するために3台のマスタ操作装置10及び制御装置30を備えてよい。このようにすることで、操作対象とする多軸ロボットへの接続の切り替えが不要になる。その結果、複数の多軸ロボットが個別に操作され得る。また、操作が簡易化され得る。
【0070】
研磨部材4を用いた研磨作業と情報取得装置2を用いた検査作業とは同時に実行されなくてもよい。したがって、検査システム1は、図7に例示されるように、第1多軸ロボット20A及び第2多軸ロボット20Bを操作するための共通のマスタ操作装置10A及び制御装置30Aを備えてよい。一方で、情報取得装置2と光源3とを独立に操作することが要求され得る。したがって、検査システム1は、第3多軸ロボット20Cを操作するためのマスタ操作装置10C及び制御装置30Cを別個に備えてよい。また、検査システム1は、第1多軸ロボット20A及び第3多軸ロボット20Cを操作するための共通のマスタ操作装置10及び制御装置30を備えてよい。一方で、検査システム1は、第2多軸ロボット20Bを操作するためのマスタ操作装置10及び制御装置30を別個に備えてよい。つまり、検査システム1は、研磨作業で用いる第1多軸ロボット20Aと、検査作業で用いる第2多軸ロボット20B又は第3多軸ロボット20Cの一方とを切り替えて操作するための共通のマスタ操作装置10及び制御装置30を備えてよい。言い換えれば、第1多軸ロボット20A、第2多軸ロボット20B、又は、第3多軸ロボット20Cの少なくとも2つが1つのマスタ操作装置10の操作部12で操作可能に構成されてよい。このようにすることで、設備の簡易化と作業効率向上とが実現され得る。
【0071】
情報取得装置2が取り付けられた多軸ロボット、又は、光源3が取り付けられた多軸ロボットの少なくとも一方は、マスタ操作装置10によって操作されず、他の操作手段で操作されるように構成されてもよい。情報取得装置2又は光源3の少なくとも一方は、多軸ロボットを含むスレーブ操作装置20以外の位置調整手段に取り付けられてもよい。情報取得装置2又は光源3の少なくとも一方は、多軸ロボットに取り付けられずに検査対象物7に対して固定されていてもよい。
【0072】
<取付部8による交換>
図8に示されるように、研磨部材4及びあて具5は、取付部8に装着されてよい。多軸ロボットは、取付部8を着脱可能に構成されてよい。多軸ロボットは、研磨部材4及びあて具5が装着された取付部8を装着することによって、研磨部材4及びあて具5が装着されるように構成されてよい。つまり、研磨部材4及びあて具5は、取付部8を介して多軸ロボットに装着されてよい。
【0073】
図9に示されるように、情報取得装置2及び光源3が取付部8に装着されてよい。多軸ロボットは、研磨作業を実行する場合に研磨部材4及びあて具5が装着された取付部8を装着し、検査作業を実行する場合に情報取得装置2及び光源3が装着された取付部8を装着してよい。つまり、多軸ロボットは、取付部8を交換することによって、研磨作業に用いられる仕様、又は、検査作業に用いられる仕様の一方に変更可能に構成されてよい。多軸ロボットは、マスタ操作装置10からの操作によって取付部8を変更可能に構成されてよい。言い換えれば、取付部8は、研磨部材4、情報取得装置2、又は、光源3の少なくとも2つを着脱可能に構成されてよい。多軸ロボットは、研磨部材4、情報取得装置2、又は、光源3の少なくとも2つを装着した取付部8を着脱可能に構成されてよい。このようにすることで、検査対象物7である鋼板等の生産ラインを止めることなく多軸ロボットの仕様が変更され得る。その結果、検査が生産効率に及ぼす影響が低減され得る。また、多軸ロボットが研磨作業用の仕様又は検査作業用の仕様の一方に変更可能に構成されることによって、設備が簡易化され得る。
【0074】
情報取得装置2及び光源3は、情報取得装置2と光源3との位置関係が検査作業に適した状態になるように取付部8に取り付けられてよい。情報取得装置2及び光源3は、例えば、情報取得装置2の角度と光源3の角度とが検査対象物7の表面に対して正反射の角度になるように取付部8に取り付けられてよい。このようにすることで、情報取得装置2と光源3との位置関係の調整が不要になる。その結果、検査作業が簡便に実行され得る。
【0075】
<操作時の確認>
検査システム1は、検査システム1の少なくとも一部を同時に写すように構成されるカメラを備えてよい。カメラは、俯瞰カメラとして構成されてよい。カメラは、検査システム1の全体を同時に写すように構成されてもよい。カメラは、少なくとも研磨作業に用いる多軸ロボットと検査作業に用いる多軸ロボットとを同時に写すように構成されてもよい。カメラは、研磨作業に用いる多軸ロボット又は検査作業に用いる多軸ロボットの少なくとも一方の全体を同時に写すように構成されてもよい。カメラは、複数の多軸ロボットが互いに衝突する可能性がある範囲を写すように構成されてもよい。
【0076】
カメラは、検査システム1の少なくとも一部を写した画像を表示装置に出力してよい。作業者は、表示装置に表示される検査システム1の画像を確認しながら、マスタ操作装置10によって多軸ロボットを操作してよい。このようにすることで、多軸ロボットが安全に操作され得る。
【0077】
検査システム1において、作業者がマスタ操作装置10を操作しながら多軸ロボットを目視できるように、マスタ操作装置10とスレーブ操作装置20とが配置されてよい。例えば、マスタ操作装置10とスレーブ操作装置20とが別の部屋に設置されている場合であっても、作業者がマスタ操作装置10の部屋からスレーブ操作装置20を観察できるように、部屋の間に窓が設置されてよい。また、マスタ操作装置10とスレーブ操作装置20とが同じ部屋の中の互いに衝突しない位置に離れて設置されてもよい。
【0078】
<情報取得装置2及び光源3の構成例>
情報取得装置2は、カメラとして構成されてよい。光源3は、情報取得装置2としてのカメラが検査対象物7を撮影するために適した照明光を検査対象物7に対して照射するように構成されてよい。光源3は、LED(Light Emitting Diode)、ハロゲンランプ、蛍光灯又は白熱電球等の種々の発光デバイスを含んで構成されてよい。なお、検査対象物7の周囲がカメラによって検査対象物7を撮影できる程度に十分明るい場合、光源3によって照明光が照射されなくてもよい。したがって、検査システム1は必ずしも光源3を備えている必要はない。
【0079】
情報取得装置2及び光源3は、レーザセンサとして構成されてよい。この場合、光源3は、レーザの照射側として機能する。光源3は、LD(Laser Diode)等のレーザ照射デバイスを含んで構成されてよい。情報取得装置2は、レーザの受光側として機能する。情報取得装置2は、PD(Photo Diode)等の受光デバイスを含んで構成されてよい。
【0080】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0081】
1 検査システム(2:情報取得装置、3:光源、4:研磨部材、5:あて具、6:ダンパー、7:検査対象物、8:取付部)
10(10A、10C) マスタ操作装置(12:操作部)
20(20A、20B、20C) スレーブ操作装置
30(30A、30C) 制御装置
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9