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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004098
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 29/02 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
D05B29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103573
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CE01
3B150CE24
3B150CE27
3B150EA01
3B150EA09
3B150EA13
(57)【要約】
【課題】従来よりも簡単な構成で、押え足が被縫製物に加える押圧力を変更できるミシンを提供すること。
【解決手段】ミシンは、ミシンモータ、針棒、針板、送り歯、送り機構、押え棒8、押えバネ81、調整バネ84、押え棒抱き82、及び調整機構68を備える。調整機構68は、調整部65及び規制部67を有する。調整部65は、上下方向に移動可能に支持され、押えバネ81の下端及び調整バネ84の上端を規定する。規制部67は、調整部65と当接した場合に調整部65の移動範囲を制限する。調整機構68は、送り歯の上端が針板の上端よりも上方にある第一所定時、調整部65は規制部67と離隔し、押えバネ81の付勢力を押え棒8の下端部に装着される押え足5に伝達し、送り歯の上端が針板の上端よりも下方にある第二所定時、調整部65は規制部67と当接し、押えバネ81の付勢力を押え足5に伝達しない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンモータと、
下端に縫針を装着可能であり、前記ミシンモータの駆動に応じて上下方向に移動する針棒と、
前記縫針を挿通する針穴が形成された針板と、
前記針板に形成された開口部から出没し、前記針板に載置した被縫製物を送る送り歯と、
前記ミシンモータの駆動に応じて前記送り歯を駆動する送り機構と、
前記送り歯の駆動に同期して、前記上下方向に移動する押え棒と、
前記押え棒を下方に付勢する押えバネと、
前記押えバネよりも付勢力が小さい調整バネと、
前記押え棒に固定され、前記調整バネの下端位置を規定する押え棒抱きと、
前記上下方向に移動可能に支持され、前記押えバネの下端及び前記調整バネの上端を規定する調整部と、前記調整部と当接した場合に前記調整部の移動範囲を制限する規制部とを有する調整機構であって、
前記送り歯の上端が前記針板の上端よりも上方にある第一所定時、前記調整部は前記規制部と離隔し、前記押えバネの付勢力を前記押え棒の下端部に装着される押え足に伝達し、
前記送り歯の前記上端が前記針板の前記上端よりも前記下方にある第二所定時、前記調整部は前記規制部と当接し、前記押えバネの前記付勢力を前記押え足に伝達しない
前記調整機構と
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記調整機構は、前記押え棒と平行に延びる軸状であり、前記調整部を前記上下方向に移動可能に支持する支持部を更に備え、
前記規制部は、前記支持部の下端部に固定され、
前記調整部は、前記支持部を挿通する第一挿通部と、前記押え棒を挿通する第二挿通部とが形成された板状であることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記調整部は、
前記第一挿通部が形成され、前記規制部と当接することで前記支持部が前記調整部の前記移動範囲の下端を規定する第一壁部と、
前記第一壁部よりも前記下方に設けられ、前記第二挿通部が形成された第二壁部と、
前記第一壁部と、前記第二壁部とを前記上下方向に連結する第三壁部と
を有するクランク形状を有することを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記調整部は、前記第三壁部と連結し、前記押え棒と平行に延びる第四壁部を更に有することを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記押え棒抱きは、前記調整バネの下端部を収容する、前記下方に第一長さ凹む収容部を有し、
前記上下方向において、前記調整バネが最も収縮した状態の第二長さは、前記第一長さ以下であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のミシン。
【請求項6】
前記規制部の前記上下方向の位置を変更可能な変更部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項7】
前記調整機構は、前記押え棒と平行に延びる軸状であり、前記調整部を前記上下方向に移動可能に支持する支持部を更に備え、
前記支持部は、上端部に当接部を備え、
前記変更部材は、前記当接部と当接する被当接部であって、前記当接部と当接する当接位置を変更することにより、前記規制部の前記上下方向の位置を変更する前記被当接部を有することを特徴とする請求項6に記載のミシン。
【請求項8】
前記調整部は、
前記押えバネの下端及び前記調整バネの前記上端を規定する当接部と、
前記当接部の前記下方への移動を規制し、前記当接部とともに前記上下方向に移動可能な連結部と、
を有し、
前記調整機構は、前記連結部を上方に付勢する付勢部材を更に備え、
前記規制部は、前記連結部と接離可能に設けられ、前記連結部と当接することで、前記連結部の前記上下方向の移動を規制するレバーであることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンの押え装置は、連結部材、移動部材、及び弾性部材を備える(例えば、特許文献1参照)。連結部材は、ミシン主軸に連結され、揺動する。移動部材は、連結部材の揺動に伴い上下方向に移動する。弾性部材は、移動部材と押え棒との間に配置され、移動部材の移動により押え棒に付与する弾性力を変化させる。押え装置は、送り歯が針板より下面に位置する時よりも、送り歯が針板より上昇している時に、弾性部材の付勢力が大きくなるように、移動部材を移動させることで、ミシン主軸に連動して、押え棒の下端に設けた押え足に加える付勢力を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-187288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のミシンの押え装置では、押え足が被縫製物に加える押圧力を変更するための構成が複雑である。
【0005】
本発明の目的は、従来よりも簡単な構成で、押え足が被縫製物に加える押圧力を変更できるミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るミシンは、ミシンモータと、下端に縫針を装着可能であり、前記ミシンモータの駆動に応じて上下方向に移動する針棒と、前記縫針を挿通する針穴が形成された針板と、前記針板に形成された開口部から出没し、前記針板に載置した被縫製物を送る送り歯と、前記ミシンモータの駆動に応じて前記送り歯を駆動する送り機構と、前記送り歯の駆動に同期して、前記上下方向に移動する押え棒と、前記押え棒を下方に付勢する押えバネと、前記押えバネよりも付勢力が小さい調整バネと、前記押え棒に固定され、前記調整バネの下端位置を規定する押え棒抱きと、前記上下方向に移動可能に支持され、前記押えバネの下端及び前記調整バネの上端を規定する調整部と、前記調整部と当接した場合に前記調整部の移動範囲を制限する規制部とを有する調整機構であって、前記送り歯の上端が前記針板の上端よりも上方にある第一所定時、前記調整部は前記規制部と離隔し、前記押えバネの付勢力を前記押え棒の下端部に装着される押え足に伝達し、前記送り歯の前記上端が前記針板の前記上端よりも前記下方にある第二所定時、前記調整部は前記規制部と当接し、前記押えバネの前記付勢力を前記押え足に伝達しない前記調整機構とを備える。本態様のミシンの調整機構は、送り歯の上下方向の位置に応じて、押えバネの付勢力を押え足に伝達するか否かを切り替えることができる。ミシンの調整機構は、従来よりも簡単な構成で、押え足が被縫製物に加える押圧力を変更することに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ミシン1の斜視図である。
図2】調整部65の第一壁部61と規制部67とが上下方向に当接した状態F1における押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の斜視図と、調整部65の第一壁部61と規制部67とが上下方向に離隔した状態F2における押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の斜視図である。
図3】状態F1における押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の右側面図と、状態F2における押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の右側面図である。
図4】状態F1における押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の背面図と、状態F2における押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の背面図である。
図5】状態F1における押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の斜視図と、状態F2における押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の斜視図である。
図6】押え棒8、押え棒抱き82、規制部67が基準位置に配置された調整機構68、及び変更部材70の正面図である。
図7】押え棒8、押え棒抱き82、規制部67を基準位置から4mm上昇した位置に移動させた調整機構68、及び変更部材70の正面図である。
図8】レバー90の凸部93が押え棒抱き82と当接した状態の押え棒8、押え棒抱き82、調整機構68、及び変更部材70の正面図である。
図9】ミシンモータ2の回転角度に応じた、針棒31の上下方向の位置と、送り歯19の上下方向の位置と、押え棒抱き82の上下方向の位置と、押え足5が被縫製物に加える押圧力と、規制部67と調整部65の第一壁部61との上下方向の間隔との説明図である。
図10】変形例の調整機構200、押え棒8、及び押え足5の斜視図である。
図11】規制部122と、連結部151とが離隔し、ロック解除された状態の、変形例の調整機構200、押え棒8、及び押え足5の断面図である。
図12】規制部122が、連結部151と当接し、ロックされた状態の、変形例の調整機構200、押え棒8、及び押え足5の断面図である。
図13】変形例の調整機構200、押え棒8、及び押え足5の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1及び図2を参照して、ミシン1の物理的構成を説明する。本実施形態のミシン1は、ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する間の所定のタイミングで押え足5に加わる押圧力を機械的に変更することで曲線縫いを容易にする機能を備えたミシンである。ミシン1は、押え足5に加わる押圧力を曲線縫いに適した押圧力と通常縫いに適した押圧力とに容易に切り替え可能な構成を備えている。図1の上下方向、右下方、左上方、左下方、右上方が、各々、押え装置9が装着されたミシン1の上下方向、右方、左方、前方、及び後方である。ベッド部11及びアーム部13の長手方向がミシン1の左右方向である。脚柱部12が配置されている側が右側である。脚柱部12の伸長方向がミシン1の上下方向である。
【0009】
図1に示すように、ミシン1は、ベッド部11、脚柱部12、アーム部13、及び頭部14を備える。ベッド部11は、左右方向に延びるミシン1の土台部であり上面に針板3を備える。ベッド部11は針板3の下方に、釜機構20、送り歯19、送り機構23、及び送り歯ドロップ機構24を備える。釜機構20は、下軸21及び水平釜22を備える。水平釜22は、下軸21の回動に応じて回動し、針板3の下方において上糸(図示略)を下糸(図示略)に絡ませる。針板3は水平に延びる板状であり、後述の縫針35を挿通する針穴25と、前後方向に延びる開口部26とが形成される。
【0010】
送り歯19は、針板3に形成された開口部26から出没し、針板3に載置した被縫製物(図示略)を送る。送り機構23は、後述のミシンモータ2の駆動に応じて、送り歯19を駆動することで被縫製物を後方又は前方に搬送する。送り歯ドロップ機構24は、ミシンモータ2の駆動とは独立して、送り歯19のみを針板3の下方に移動させるよう構成されている。ユーザはタッチスクリーン16を操作して、送り歯ドロップ機構24により送り歯19を所定位置に移動する指示を入力し、ミシン1は指示に基づき送り歯ドロップ機構24の動力を制御して送り歯ドロップ機構24により、ミシンモータ2の駆動とは独立して、送り歯19の位置を変更できる。送り歯ドロップ機構24は、ミシン1の後部に設けられたレバーが操作された場合に、ミシンモータ2の駆動とは独立して、送り歯19の位置を変更してもよい。脚柱部12は、ベッド部11の右端部から上方へ立設される。脚柱部12の上部内部には、ミシンモータ2が設けられる。脚柱部12の前面には、LCD15が設けられる。LCD15の前面にはタッチスクリーン16が設けられる。脚柱部12の右面には、プーリ28が設けられる。
【0011】
アーム部13は、ベッド部11に対向して脚柱部12の上端から左方へ延びる。頭部14は、アーム部13の左先端部に連結する部位である。頭部14には、針棒31、針棒機構30、押え棒8、調整機構68、及び変更部材70等が設けられる。針棒31の下端には、針抱き36が固定されている。針抱き36は、縫針35を取り外し可能に固定する。針棒31は、針抱き36を介して、下端に縫針35を装着可能である。針棒機構30は、ミシンモータ2、主軸27、リンク機構33、及び針棒抱き32を備える。主軸27は、ミシンモータ2の駆動に応じて回転し、ミシンモータ2の動力を、リンク機構33及び針棒抱き32を介して針棒31に伝達する。針棒抱き32は、針棒31に固定される。針棒機構30は、ミシンモータ2の駆動に応じて針棒31を上下方向に移動する。主軸27は、ユーザによりプーリ28が回動された場合にも回動する。
【0012】
押え棒8は、針棒31の後方において上下方向に延び、ミシンモータ2、より詳細には送り歯19の駆動に同期して、上下方向に移動する。図2に示すように、押え棒8には、押えバネ81、押え棒抱き82、及びレバー90が設けられる。押えバネ81は、押え棒8を下方に付勢する。押えバネ81は、押え棒8に外挿されたコイルバネである。押え棒抱き82は、押え棒8に固定され、押えバネ81の下端と接触して押えバネ81の下端位置を規定する。図3に示すように、押え棒抱き82は、調整バネ84の下端部を収容する、第一長さL1だけ下方に凹む収容部85を有する。調整バネ84は、押えバネ81よりも付勢力が小さい。本例の調整バネ84は、コイルバネである。調整バネ84は、押え棒8に挿通された状態で収容部85に収容される。上下方向において、調整バネ84の下端は、収容部85の底面によって規定される。調整バネ84の上端は、押え棒抱き82の上方に配置された、後述の調整部65によって規定される。
【0013】
レバー90は、押え棒8の上下方向の位置を手動で切り替える。レバー90は、軸部91、凸部92、93、及び操作部94を備える。軸部91は、頭部14の内部に設けられる。凸部92、93は、軸部91の近傍において、軸部91から離れる側に突出した部分である。操作部94は、軸部91から最も離れた部位である。ユーザは、操作部94を指等の操作体で操作することで、レバー90を、軸部91を中心に正面視時計回り又は反時計回りに回動し、押え棒8を上昇位置と、下降位置とに切り替えることができる。図2から図7は、操作部94が軸部91に対し下方に配置され、押え棒8が下降位置にある状態を示す。図2の状態から操作部94が正面視反時計回りに回動され、軸部91に対し操作部94が右上方に配置された場合、レバー90の凸部93は押え棒抱き82の下面83に当接して、押え棒8を上昇位置に移動させる。図8は、操作部94が軸部91に対し右上方に配置され、押え棒8が上昇位置にある状態を示す。ユーザは、押え棒8を上昇位置に配置した状態で、被縫製物を配置する作業、又は回収する作業を行う。
【0014】
図3に示すように、押え棒8の下端部には左右方向に貫通する孔86が形成される。押え装置9は、孔86に挿通されたネジ41により押え棒8の下端部に取り外し可能に装着される。押え装置9は、押え足5を左右方向に延びる軸53周りに揺動可能に支持する。押え足5は、平面視前後方向に長い矩形板状である。押え足5の前端部と後端部とは各々上方に湾曲している。押え足5の前部には、切欠き部59が形成される。押え足5を支持する押え装置9が押え棒8の下端に装着され、ミシン1が駆動された場合、切欠き部59の後端部には、縫針35が挿通される。押え棒8が下降位置にある場合、押え足5は針板3に載置された被縫製物と接触し、被縫製物を下方に押圧する。本例のミシン1は、変更部材70を操作することで、ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する間に、押え足5に伝達される押圧力を変更するか否かを切り替えることができる。
【0015】
図2に示すように、調整機構68は、調整部65、規制部67、及び支持部66を備える。調整部65は、上下方向に移動可能に支持され、押えバネ81の下端及び調整バネ84の上端を規定する。調整部65は、例えば、金属製の板を折り曲げて形成される。調整部65は、支持部66を挿通する第一挿通部42と、押え棒8を挿通する第二挿通部43とが形成された板状である。調整部65は、第一壁部61、第二壁部62、第三壁部63、及び第四壁部64を備える。第一壁部61は、押え棒8の左方において水平に延びる板状である。第一挿通部42は、第一壁部61に形成される。第一挿通部42は、第一壁部61を上下方向に貫通する、平面視円状の孔である。第一壁部61は、規制部67と当接することで調整部65の移動範囲の下端を規定する。第二壁部62は、第一壁部61よりも下方に設けられ、第一壁部61の右方において、水平に延びる板状である。第二挿通部43は、第二壁部62に形成される。第二挿通部43は、第二壁部62を上下方向に貫通する、平面視円状の孔であり、押え棒8を挿通する。第三壁部63は、第一壁部61と、第二壁部62とを上下方向に連結する。第三壁部63は、押え棒8の左方において上下方向に延びる板状であり、第一壁部61の右端部と、第二壁部62とを連結する。調整部65の第一壁部61、第二壁部62、及び第三壁部63は、正面視Z字状の、クランク形状を有する。
【0016】
第四壁部64は、第三壁部63と連結し、押え棒8と平行に延びる。第四壁部64は、第三壁部63の後端部から右方に延びる。左右方向において、第四壁部64の左端部は押え棒8よりも左方に位置し、第四壁部64の右端部は押え棒8よりも右方に位置する。図2及び図4に示すように、第四壁部64は後方に突出する上下一対のピン78を有する。第四壁部64の後方には第四壁部64と平行に延びる板状部100が設けられる。板状部100の上下方向、及び左右方向の延設範囲は、第四壁部64の上下方向、及び左右方向の延設範囲よりも大きい。板状部100には、上下方向に延び、前後方向に貫通するスリット状のスリット101、102が形成される。スリット101は、押え棒8の後方に形成される。一対のピン78は、板状部100のスリット101に挿通される。スリット101は、調整部65の上下方向の移動を案内する。スリット102は、支持部66の後方、且つスリット101よりも上方に形成される。板状部100は、更に上下方向に貫通する孔(図示略)が形成された挿通部103、104を備える。挿通部103、104は各々、板状部100を前方に折り曲げて形成された部位であり、孔に支持部66を挿通する。板状部100の左上部には、規制部材75がネジ77により固定されている。規制部材75は、左右方向に延びる板バネである。規制部材75の右端部は前方に突出する凸部76を備える。凸部76は、板バネを平面視V字状に折り曲げた部分である。
【0017】
図2に示すように、規制部67は、調整部65と当接した場合に調整部65の移動範囲を制限する。規制部67は、支持部66の下端部に固定された直方体状である。規制部67は、調整部65の第一壁部61の下方に配置され、第一壁部61の下面と接離可能に当接することで、調整部65の移動範囲を制限する。
【0018】
支持部66は、押え棒8の左方において、押え棒8と平行に延びる軸状であり、調整部65を上下方向に移動可能に支持する。支持部66は、第一壁部61の第一挿通部42に挿通される。支持部66は、シャフト69、49を備える。シャフト69は、支持部66の上端部に設けられた、支持部66に垂直に延びる棒状である(図5参照)。シャフト69は、支持部66から左方に延びる。シャフト49は、シャフト69の下方に設けられた、支持部66に垂直に延びる棒状である。シャフト49は、支持部66から後方に延び、スリット102に挿通される。スリット102は、支持部66の上下方向の移動を案内し、支持部66が上下方向に延びる軸周りに回転するのを規制する。
【0019】
変更部材70は、規制部67の上下方向の位置を変更可能である。規制部67の移動範囲の下端は、規制部67の下方において支持部66を挿通する挿通部104により規定される。変更部材70は、円盤部71、円筒部72、カム当接部73、及び蓋部74(図6参照)を備える。円盤部71は、支持部66に外挿された平面視円盤状の部位である。円盤部71は、円筒部72の下端部に連結し、円筒部72とともに回転できる。円盤部71は、外周部分に複数の凹部79を備える。円盤部71の複数の凹部79のうちの1つは、変更部材70の後方に設けられた規制部材75の凸部76と係脱可能に噛み合う。規制部材75は、円盤部71の回転運動を規制し、任意の位置で変更部材70を固定する。円筒部72は、平面視筒状であり、支持部66を挿通する。円筒部72には、シャフト69が配置される。変更部材70は、平面視支持部66を中心として回動可能なダイヤルとして機能する。
【0020】
図5に示すように、カム当接部73は、円筒部72の内周に沿って、支持部66を中心とするらせん状に傾斜して延設された端面カムのカム面である。カム当接部73は、支持部66のシャフト69と当接する。蓋部74は、円筒部72を上側から覆う。蓋部74は、円筒部72と係脱可能に係合し、円筒部72とともに回転できる。ユーザは規制部67の上下方向の位置を変更する場合、ミシン1のカバー17の外部に露出した変更部材70の蓋部74を操作する。ユーザは、ミシン1のカバー17を取り外し、円盤部71を操作してもよい。ユーザは、変更部材70を回転操作することで、カム当接部73のうちの、シャフト69と当接する部分を変更でき、シャフト69の上下方向の位置を変更する。支持部66のシャフト49がスリット102に挿通されているので、支持部66は、変更部材70の回転に応じて回転しない。シャフト69は、シャフト69が当接するカム当接部73の部分の上下方向の位置に応じて、上下方向に移動する。ユーザが変更部材70を回転操作することに応じて、支持部66は、スリット102に案内されながら、上下方向に移動する。このように、カム当接部73は、シャフト69と当接する当接位置を変更することにより、支持部66の下端部に固定された規制部67の上下方向の位置を変更する。
【0021】
押え棒抱き82と、レバー90とが上下方向に離隔している条件で、押え棒抱き82及び押え棒8の上下方向の位置は、送り歯19の上下方向の位置に応じて変更される。押え装置9は、変更部材70を操作することで、規制部67の上下方向の位置を、ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する間に、調整部65の第一壁部61が規制部67に当接する位置に調整する。ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する間に、調整部65の第一壁部61が規制部67に当接し、調整部65がそれ以上下方に移動できなくなると、調整部65の第二壁部62と、押え棒抱き82とが上下方向に離隔し、押え棒82には押えバネ81の付勢力が伝達されなくなる。押え棒抱き82には、調整バネ84の付勢力が伝達される。
【0022】
図2から図7を参照して、押え棒8を下降位置に配置した条件で、規制部67の上下方向の位置を変更した場合について説明する。図2から図5に示す状態F1、及び図6に示すように、押え足5に加わる押圧力を通常縫いに適した押圧力にする場合、ユーザは、送り歯19の上端が、針板3の上方に位置し、針板3と押え足5との間に被縫製物を配置していない条件で、規制部67を基準位置に配置する(第一条件)。第一条件では、押え棒抱き82は、レバー90の上下方向に離隔し、且つ、調整部65の第二壁部62と当接する。第一条件では、調整バネ84が上下方向に最も収縮した状態であり、調整バネ84の上下方向の第二長さL2は、調整バネ84の下端部を収容する収容部85の上下方向の第一長さL1以下である。第一条件において、針板3と、押え足5との間に、被縫製物を配置して縫製を行う場合、ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する間、押え足5に常に押えバネ81からの付勢力が伝達される。
【0023】
図2から図5に示す状態F2、及び図7に示すように、押え足5に加わる押圧力を曲線縫いに適した押圧力にする場合、ユーザは、図2から図5に示す状態F1及び図6の第一条件から、変更部材70を操作することで、規制部67を基準位置よりも被縫製物の厚みに応じた量(例えば、4mm)上昇させる(第二条件)。第二条件では、押え棒抱き82は、レバー90の上下方向に離隔し、且つ、調整部65の第二壁部62とも上下方向に離隔する。第二条件において、針板3と、押え足5との間に、厚さ4mmの被縫製物を配置して縫製を行う場合、ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する間のうち、規制部67と調整部65の第一壁部61とが上下方向に離隔している期間は、押え足5に押えバネ81からの付勢力が伝達される。一方、規制部67と調整部65の第一壁部61とが上下方向に当接している期間は、押え足5に押えバネ81からの付勢力が伝達されず、押え足5には調整バネ84の付勢力が伝達される。ユーザは、被縫製物の厚みに応じて変更部材70を操作し、規制部67の上下方向の位置を調整することで、ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する間の、被縫製物に加える押圧力を変更できる。
【0024】
図8を参照して、押え棒8を上昇位置に配置した場合について説明する。図8に示すように、図6の第一条件から、レバー90を操作して、レバー90の凸部93を押え棒抱き82と当接された場合(第三条件)、押え棒抱き82及び押え棒8は、凸部93により上方に押し上げられ、押え足5は針板3から上下方向に離隔する。この状態で、ユーザは、針板3と押え足5との間に被縫製物を配置する作業を行い、押え棒8の下端に押え装置9を装着する又は取り外す作業を行う。
【0025】
図9を参照して、ミシンモータ2の回転角度に応じた、針棒31の上下方向の位置と、送り歯19の上下方向の位置と、押え棒抱き82の上下方向の位置と、押え足5が被縫製物に加える押圧力と、規制部67と調整部65の第一壁部61との上下方向の間隔との関係を説明する。本実施形態のミシン1は、ミシンモータ2が一回転することで、ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する。図9の「押え足押圧力」では、送り歯19の上下方向の移動に伴う調整バネ84の変位量による微小な変化量及び押えバネ81の変位量による微小な変化量は無視している。図9では、期間P1において押え足5に加えられる押圧力を100として、期間P2において押え足5に加えられる押圧力を表している。期間P1は、調整部65の第一壁部61と規制部67とが上下方向に離隔している期間である。期間P2は、調整部65の第一壁部61と規制部67とが上下方向に当接している期間である。期間P2において押え足5に加えられる押圧力は、期間P1において押え足5に加えられる押圧力に比べ小さい。期間P2では、押え棒抱き82は、調整バネ84の付勢力により調整部65の第二壁部62に対して下方に押え足5が被縫製物に当接する位置迄下降する。これにより、第二壁部62と押え棒抱き82が上下方向に離隔する。期間P1では、押え足5が送り歯19により持ち上げられ、押え棒8が上方に押される。これにより、押え棒抱き82が調整バネ84の付勢力に抗して上方に移動し、第二壁部62と上下方向に当接する。調整部65は、上方には移動できるので、押え棒抱き82は第二壁部62を有する調整部65とともに上方に移動する。
【0026】
つまり、本実施形態の調整機構68は、送り歯19の上端が針板3の上端よりも上方にある第一所定時、調整部65は規制部67と離隔し、押えバネ81の付勢力を押え棒8の下端部に装着される押え足5に伝達する。第一所定時は、送り歯19の上端が針板3の上、且つ、調整部65と押え棒抱き82が当接している時である。第一所定時では、縫針35は被縫製物の上方に位置する。つまり、ミシン1は、送り歯19により被縫製物を搬送方向に搬送している期間は、押えバネ81の押圧力を押え足5に加える。これによりミシン1は、押え足5と送り歯19とにより被縫製物を上下方向に強固に挟んだ状態で、被縫製物を安定して搬送方向に搬送できる。
【0027】
一方、調整機構68は、送り歯19の上端が針板3の上端よりも下方にある第二所定時、調整部65は規制部67と当接し、押えバネ81の付勢力を押え足5に伝達しない。第二所定時は、送り歯19の上端が針板3の上端よりも下方、且つ、調整部65と規制部67とが当接し、調整部65と押え棒抱き82が上下方向に離隔しているときである。第二所定時は、縫針35が被縫製物に刺さっている期間を含む。これにより、ミシン1は、被縫製物が送り歯19により搬送されている時は、従来と同様に被縫製物に押えバネ81の押圧力を押え足5に伝達しつつ、縫針35が被縫製物に刺さっている期間P2の押え足5に加わる力を従来のミシンよりも小さくできる。故にミシン1は、従来のミシンよりも、針板3に対する縫製中の被縫製物の向きを変更しやすくでき、曲線部分を縫製しやすい。
【0028】
図10から図13を参照して変形例のミシン1の支持板部110、押え棒抱き182、レバー97、及び調整機構200を説明する。図10から図13において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付与している。図10から図13に示すように、支持板部110は、押え棒8の後方において、押え棒8と平行且つ左右方向に延びる板状である。支持板部110には、押え棒8の後方となる部分に、上下方向に延びるスリット111、112が形成される。スリット112は、スリット111の右方に形成される。支持板部110は、更に上下方向に貫通する孔115が形成された支持部113、上下方向に貫通する孔116が形成された支持部114を備える。支持部113、114は各々、支持板部110を前方に折り曲げて形成された部位であり、孔115、116には押え棒8が挿通される。押え棒抱き182は、押え棒8に固定され、調整バネ84の下端位置を規定する。押え棒抱き182は、後方に延びる当接部183を有する。当接部183はスリット112に挿通される。押え棒抱き182は、調整バネ84の下端部を収容する、下方に凹む収容部185を有する。レバー97は、押え棒8の上下方向の位置を手動で切り替える。レバー97は、上記実施形態のレバー90と同様の軸部91、凸部92、93、及び操作部96を備える。軸部91は押え棒8の後方において左右方向に延びる。操作部96は、軸部91から最も離れた部位である。ユーザがレバー97を、軸部91を中心に右側面視時計回りに回転し、凸部92、93の何れかと、当接部183とを当接させた場合、押え棒8は図10に示す下降位置から上昇した図示しない上昇位置に上昇する。
【0029】
調整機構200は、調整部160、規制部122、付勢部材150、及び調整バネ84を備える。調整部160は、当接部168及び連結部151を備える。当接部168は、押えバネ81の下端及び調整バネ84の上端を規定する。当接部168は、上下方向に貫通する挿通部169が形成された筒状であり、挿通部169に押え棒8を挿通する。当接部168は押え棒8に沿って、押え棒8に対し移動できる。挿通部169の下端部側の径は、挿通部169の上端部側の径よりも大きく、挿通部169の下端側の部分には、押え棒8に外挿された調整バネ84の上端部が収納される。当接部168は後下部から後方に延びる突出部184を備える。突出部184は、スリット111に挿通される。
【0030】
連結部151は、当接部168の突出部184の下方への移動を規制し、当接部168とともに上下方向に移動可能である。連結部151は、押え棒8の後方において押え棒8と平行に延びる板状である。連結部151は、上下方向に延びるスリット153が形成されている。突出部184は、スリット153に挿通され、下方への移動が規制される。付勢部材150は、連結部151を上方に付勢する。付勢部材150は、コイルバネであり、一端部が連結部151の上端部に固定され、他端部が支持板部110の左上部に固定される。付勢部材150は、支持板部110の左上部から右斜め下側に延びる。規制部122は、連結部151と接離可能に設けられ、連結部151と当接することで、連結部151の上下方向の移動を規制するレバーである。規制部122は、支持板部110の後方に設けられた背面視U字状の支持部123により、左右方向に延びる回転軸121を中心に回転可能に支持される。規制部122の外周面は、回転軸121からの距離が一定ではないカム面である。規制部122の姿勢に応じて、規制部122と連結部151とが当接するか、離隔するかが切り替わる。
【0031】
図11に示すように、規制部122が回転軸121に対して後下方に延び、規制部122と、連結部151とが互いに離隔する場合、連結部151は、当接部168とともに上下方向に移動可能である。これにより、調整部160は、押え棒抱き182と上下方向に当接して、押え棒8とともに上下方向に移動できる。調整部160は、押えバネ81の付勢力を押え棒抱き182に伝達するので、ミシン1の針棒31が上下方向に一往復する間、押え足5に常に押えバネ81からの付勢力が伝達される。規制部122により連結部151の上下方向の移動が規制されていないロック解除状態では、送り歯19の上下方向の位置によらず、押えバネ81の付勢力が押え足5に伝達され、上記実施形態の第一所定時と同様の作用を奏する。
【0032】
一方、図12に示すように、規制部122が回転軸121に対して後上方に延び、規制部122と、連結部151とが互いに接触する場合、連結部151は規制部122により前方に押されてロックされる。より詳細には、連結部151は規制部122によりゴム板152に押し当てられ、連結部151はゴム板152との摩擦により動きが規制される。特に、連結部151が下方向へ移動する場合には、規制部122が左側面視時計回りに回動し、連結部151が規制部122により更にゴム板152に押し当てられるため、連結部151の下方向の移動は規制部122により規制される。連結部151の上方向の移動は、規制部122が左側面視反時計回りに回動し、規制部122による連結部151の前方への押圧力を緩和する方向であるので、連結部151が下方向の移動する場合ほど規制されない。連結部151の下方の移動が規制されることで、当接部168も下方向の移動が規制される。これにより、調整部160と、押え棒抱き182とが上下方向に離隔している期間は、調整部160は、押えバネ81の付勢力を押え棒抱き182に伝達せず、押え足5には調整バネ84の付勢力が伝達される。調整部160と、押え棒抱き182とが上下方向に当接している期間は、調整部160は、上下方向に移動できないので、送り歯19が上方に押す力分、押え足5は下方に押圧される。つまり変形例のミシン1では、図12に示すように、規制部122により連結部151の上下方向の移動が規制されたロック状態では、上記実施形態、送り歯19の上下方向の位置によらず、押えバネ81の付勢力は押え足5には伝達されず、調整バネ84のみ押え足5に伝達され、上記実施形態の第二所定時と同様の作用を奏する。
【0033】
上記実施形態及び変形例において、ミシン1、ミシンモータ2、針板3、押え足5、押え棒8、押え装置9、送り歯19、送り機構23、針棒31、縫針35、押えバネ81、押え棒抱き82、調整バネ84、及び収容部85は各々、本発明のミシン、ミシンモータ、針板、押え足、押え棒、押え装置、送り歯、送り機構、針棒、縫針、押えバネ、押え棒抱き、調整バネ、及び収容部の一例である。第一壁部61、第二壁部62、第三壁部63、第四壁部64、支持部66、シャフト69、カム当接部73、変更部材70、付勢部材150、連結部151、及び当接部168は各々、本発明の第一壁部、第二壁部、第三壁部、第四壁部、支持部、当接部、被当接部、変更部材、付勢部材、連結部、及び当接部の一例である。規制部67、122は、本発明の規制部の一例である。調整部65、160は、本発明の調整部の一例である。調整機構68、200は、本発明の調整機構である。
【0034】
上記実施形態のミシン1は、ミシンモータ2、針棒31、針板3、送り歯19、送り機構23、押え棒8、押えバネ81、調整バネ84、押え棒抱き82、及び調整機構68を備える。針棒31は、下端に縫針35を装着可能であり、ミシンモータ2の駆動に応じて上下方向に移動する。針板3は、縫針35を挿通する針穴25が形成される。送り歯19は、針板3に形成された開口部26から出没し、針板3に載置した被縫製物を送る。送り機構23は、ミシンモータ2の駆動に応じて送り歯19を駆動する。押え棒8は、送り歯19の駆動に同期して、上下方向に移動する。押えバネ81は、押え棒8を下方に付勢する。調整バネ84は、押えバネ81よりも付勢力が小さい。押え棒抱き82は、押え棒8に固定され、調整バネ84の下端位置を規定する。調整機構68は、調整部65及び規制部67を有する。調整部65は、上下方向に移動可能に支持され、押えバネ81の下端及び調整バネ84の上端を規定する。規制部67は、調整部65と当接した場合に調整部65の移動範囲を制限する。調整機構68は、送り歯19の上端が針板3の上端よりも上方にある第一所定時、調整部65は規制部67と離隔し、押えバネ81の付勢力を押え棒8の下端部に装着される押え足5に伝達する。調整機構68は、送り歯19の上端が針板3の上端よりも下方にある第二所定時、調整部65は規制部67と当接し、押えバネ81の付勢力を押え足5に伝達しない。ミシン1の調整機構68は、送り歯19の上下方向の位置に応じて、押えバネ81の付勢力を押え足5に伝達するか否かを切り替えることができる。ミシン1の調整機構68は、従来よりも簡単な構成で、押え足5が被縫製物に加える押圧力を変更することに貢献する。
【0035】
調整機構68は、押え棒8と平行に延びる軸状であり、調整部65を上下方向に移動可能に支持する支持部66を備える。規制部67は、支持部66の下端部に固定される。調整部65は、支持部66を挿通する第一挿通部42と、押え棒8を挿通する第二挿通部43とが形成された板状である。ミシン1は、調整機構68の構成を比較的簡単にできる。
【0036】
調整部65は、第一壁部61、第二壁部62、及び第三壁部63を有するクランク形状を有する。第一壁部61は、第一挿通部42が形成され、規制部67と当接することで支持部66が調整部65の移動範囲の下端を規定する。第二壁部62は、第一壁部61よりも下方に設けられ、第二挿通部43が形成される。第三壁部63は、第一壁部61と、第二壁部62とを上下方向に連結する。ミシン1の調整部65は、第二壁部62が第一壁部61よりも下方に設けられているので、支持部66の上下方向の長さを比較的短くすることに貢献する。
【0037】
調整部65は、第三壁部63と連結し、押え棒8と平行に延びる第四壁部64を有する。ミシン1の調整部65の第四壁部64は、調整部65が上下方向に移動する際に、押え棒8を中心に回動することを抑制することに貢献する。
【0038】
図3に示すように、押え棒抱き82は、調整バネ84の下端部を収容する、下方に第一長さL1凹む収容部85を有する。上下方向において、調整バネ84が最も収縮した状態の第二長さL2は、第一長さL1以下である。ミシン1では、送り歯19の上端が針板3の上端よりも上方に移動することに応じて押え棒抱き82が上昇し、調整バネ84が圧縮された場合、押え棒抱き82の上端は、調整部65の下端と当接する。この状態で調整部65は押え棒抱き82とともに上方に移動する。ミシン1の押え棒抱き82は、収容部85を備えない場合に比べ、調整バネ84をコンパクトに収容し、調整部65を安定して上昇させることに貢献する。
【0039】
ミシン1は、規制部67の上下方向の位置を変更可能な変更部材70を備える。ミシン1の変更部材70は、被縫製物の厚みに応じて規制部67の上下方向の位置を変更することで、厚みの異なる被縫製物の各々について、送り歯19の上下方向の位置に応じて、押えバネ81の付勢力を押え足5に伝達するか否かを切り替えることを可能にする。変更部材70は、支持部66の上端部に配置されるので、ユーザは変更部材70を操作しやすい。
【0040】
支持部66は、上端部にシャフト69を備える。変更部材70は、シャフト69と当接するカム当接部73を有する。カム当接部73は、シャフト69と当接する当接位置を変更することにより、規制部67の上下方向の位置を変更する。ミシン1の変更部材70は、比較的簡単な構成により、規制部67の上下方向の位置を変更できる。
【0041】
変形例の調整部160は、押えバネ81の下端及び調整バネ84の上端を規定する当接部168と、当接部168とともに上下方向に移動可能であり、当接部168の下方への移動を規制する連結部151とを有する。調整機構200は、連結部151を上方に付勢する付勢部材150を備える。規制部122は、連結部151と接離可能に設けられ、連結部151と当接することで、連結部151の上下方向の移動を規制するレバーである。ミシン1の規制部67及び調整部65は、調整部65の上下方向の移動を規制するか否かを切り替えるための構成を簡単にすることに貢献する。
【0042】
本発明のミシンは、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。
【0043】
ミシン1及び押え装置9の構成は適宜変更してよい。ミシン1は、工業用ミシンであってもよい。ミシン1による被縫製物の搬送方向は適宜変更されてよい。
【0044】
押えバネ81、調整バネ84、及び付勢部材150の種類、配置等は適宜変更されてよい。押えバネ81と、調整バネ84とは各々、押え棒8に外挿されなくてもよい。調整機構68、200の構成は適宜変更されてよい。調整バネ84の下端部は、収容部85に収容されなくてもよい。調整バネ84が最も収縮した状態の上下方向の第二長さL2は、第一長さL1よりも大きくてもよい。規制部67は、上下方向の位置が変更不能でもよい。この場合、調整機構68は支持部66を省略してもよいし、ミシン1は変更部材70を備えなくてもよい。
【0045】
変更部材70の構成は適宜変更されてよい。変更部材70は支持部66に固定された当接部を案内するカム面を備えてもよいし、支持部66にカム面及びカム溝等からなる当接部が形成され、変更部材70は支持部66の当接部に当接するカムを被当接部として備えてもよい。変更部材70は、当接部及び被当接部以外の構成であってもよく、例えば、変更部材70は、ピニオンと、支持部66に固定され、ピニオンと係合するラックとにより構成されてもよい。変更部材70は、ダイヤル状の他、レバー等でもよい。変更部材70の回転を規制する規制部材75の構成は、変更部材70の構成に応じて適宜変更されてよい。押え棒8に対する変更部材70の配置は適宜変更されてよい。変更部材70は、ユーザが操作しやすい場所、且つ、縫製作業の妨げにならない位置に設けられることが好ましい。ミシン1は、被縫製物の厚みを検出するセンサと、モータの動力で変更部材70を所定量回転する駆動機構とを備え、ミシン1は、センサの検出値に応じて、変更部材70を自動で回転してもよい。このようにすればミシン1は、ユーザが変更部材70を操作する手間を省くことに貢献する。
【0046】
調整部65の形状は適宜変更されてよく、平板状、直方体状、球状等、クランク形状でなくてもよい。調整部65は、第一壁部61から第四壁部64の少なくとも何れかの形状を変更してもよいし、第一壁部61から第四壁部64の少なくとも何れかを適宜省略してもよい。規制部67の上下方向の位置を変更する構成は適宜変更されてよい。押え棒抱き82は収容部85を備えなくてもよいし、第二長さL2は第一長さL1より大きくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:ミシン、2:ミシンモータ、3:針板、5:押え足、8:押え棒、19:送り歯、23:送り機構、35:縫針、42:第一挿通部、43:第二挿通部、61:第一壁部、62:第二壁部、63:第三壁部、64:第四壁部、65、160:調整部、66:支持部、67、122:規制部、68、200:調整機構、69:シャフト、70:変更部材、73:カム当接部、81:押えバネ、84:調整バネ、85:収容部、150:付勢部材、151:連結部、168:当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13