(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004099
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】有機EL表示素子用封止剤
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20240109BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240109BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
C09K3/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103574
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇希
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田村 友樹
【テーマコード(参考)】
3K107
4H017
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107EE49
3K107FF03
3K107FF05
4H017AA04
4H017AB01
4H017AB08
4H017AC03
4H017AC08
4H017AD06
4H017AE05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接着性及び透湿防止性に優れる有機EL表示素子用封止剤。
【解決手段】硬化性樹脂とラジカル重合開始剤と熱硬化剤とを含有し、前記硬化性樹脂は、下記式(1)で表される化合物とエポキシ化合物とを含む有機EL表示素子用封止剤。
式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、R
2は、特定の連結基を表し、R
3は、置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物由来の構造を表し、Xは、環状ラクトンの開環構造を表し、nは、0以上5以下であり、Epは、2官能以上のエポキシ化合物由来の構造を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂とラジカル重合開始剤と熱硬化剤とを含有し、
前記硬化性樹脂は、下記式(1)で表される化合物とエポキシ化合物とを含むことを特徴とする有機EL表示素子用封止剤。
【化1】
式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、R
2は、下記式(2-1)、(2-2)、又は、(2-3)で表される基を表し、R
3は、置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物由来の構造を表し、Xは、環状ラクトンの開環構造を表し、nは、0以上5以下であり、Epは、2官能以上のエポキシ化合物由来の構造を表す。
【化2】
式(2-1)~(2-3)中、*は、結合位置を表し、式(2-2)中、aは、1以上8以下の整数であり、式(2-3)中、bは、1以上8以下の整数であり、cは、1以上3以下の整数であり、dは、1以上8以下の整数である。
【請求項2】
前記硬化性樹脂は、前記式(1)中のnが0である化合物を含む請求項1記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項3】
前記硬化性樹脂は、前記式(1)中のnが1以上5以下である化合物を含む請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項4】
前記硬化性樹脂は、前記式(1)中のnが0である化合物と、前記式(1)中のnが1以上5以下である化合物とを含む請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項5】
前記硬化性樹脂は、更に、前記式(1)で表される化合物以外のその他の(メタ)アクリル化合物を含む請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項6】
前記ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤を含む請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項7】
前記ラジカル重合開始剤は、熱ラジカル重合開始剤を含む請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項8】
前記熱硬化剤は、融点が120℃以下である請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項9】
更に、充填剤を含有する請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項10】
E型粘度計を用いて、25℃、1.0rpmの条件で測定される粘度が50Pa・s以上1000Pa・s以下である請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示素子用封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」ともいう)表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL表示素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。
【0003】
このような有機EL表示素子は、有機発光材料層や電極が外気に曝されるとその発光特性が急激に劣化し寿命が短くなるという問題がある。従って、有機EL表示素子の安定性及び耐久性を高めることを目的として、有機発光材料層や電極を大気中の水分や酸素から遮断する封止技術が不可欠となっている。
【0004】
特許文献1には、有機発光材料層を有する積層体を被覆して封止する有機充填層と、該有機充填層の側面を覆う吸湿シール層(封止壁)とを有する構成により、有機EL表示素子を封止する方法が開示されている。通常、有機EL表示素子用封止剤として、上記有機充填層には面内封止剤が用いられ、上記封止壁には面内封止剤とは構成成分の異なる周辺封止剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
面内封止剤と周辺封止剤とを用いて有機EL表示素子を封止した場合、周辺封止剤として硬化物の透湿防止性に優れるものを用いても、その性能が充分に発揮されずに水分が浸入し、有機EL表示素子に表示不良が生じることがある。また、近年、周辺封止剤としては接着力に優れるものが求められている。
【0007】
本発明は、接着性及び透湿防止性に優れる有機EL表示素子用封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示1は、硬化性樹脂とラジカル重合開始剤と熱硬化剤とを含有し、上記硬化性樹脂は、下記式(1)で表される化合物とエポキシ化合物とを含むことを特徴とする有機EL表示素子用封止剤である。
本開示2は、上記硬化性樹脂は、上記式(1)中のnが0である化合物を含む本開示1の有機EL表示素子用封止剤である。
本開示3は、上記硬化性樹脂は、上記式(1)中のnが1以上5以下である化合物を含む本開示1又は2の有機EL表示素子用封止剤である。
本開示4は、上記硬化性樹脂は、上記式(1)中のnが0である化合物と、上記式(1)中のnが1以上5以下である化合物とを含む本開示1、2又は3の有機EL表示素子用封止剤である。
本開示5は、上記硬化性樹脂は、更に、上記式(1)で表される化合物以外のその他の(メタ)アクリル化合物を含む本開示1、2、3又は4の有機EL表示素子用封止剤である。
本開示6は、上記ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤を含む本開示1、2、3、4又は5の有機EL表示素子用封止剤である。
本開示7は、上記ラジカル重合開始剤は、熱ラジカル重合開始剤を含む本開示1、2、3、4、5又は6の有機EL表示素子用封止剤である。
本開示8は、上記熱硬化剤は、融点が120℃以下である本開示1、2、3、4、5、6又は7の有機EL表示素子用封止剤である。
本開示9は、更に、充填剤を含有する本開示1、2、3、4、5、6、7又は8の有機EL表示素子用封止剤である。
本開示10は、E型粘度計を用いて、25℃、1.0rpmの条件で測定される粘度が50Pa・s以上1000Pa・s以下である本開示1、2、3、4、5、6、7、8又は9の有機EL表示素子用封止剤である。
【0009】
【0010】
式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は、下記式(2-1)、(2-2)、又は、(2-3)で表される基を表し、R3は、置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物由来の構造を表し、Xは、環状ラクトンの開環構造を表し、nは、0以上5以下であり、Epは、2官能以上のエポキシ化合物由来の構造を表す。
【0011】
【0012】
式(2-1)~(2-3)中、*は、結合位置を表し、式(2-2)中、aは、1以上8以下の整数であり、式(2-3)中、bは、1以上8以下の整数であり、cは、1以上3以下の整数であり、dは、1以上8以下の整数である。
【0013】
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、有機EL表示素子用封止剤を硬化性樹脂とラジカル重合開始剤と熱硬化剤とを含有するものとし、該硬化性樹脂として特定の構造を有する化合物とエポキシ化合物とを組み合わせて用いることを検討した。その結果、接着性及び透湿防止性に優れる有機EL表示素子用封止剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、上記式(1)で表される化合物を含む。上記式(1)で表される化合物を含有することにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、接着性に優れるものとなる。
【0015】
上記式(1)中、R2は、上記式(2-1)、(2-2)、又は、(2-3)で表される基を表す。なかでも、得られる有機EL表示素子用封止剤の接着性や硬化物の柔軟性の観点から、上記R2は、上記式(2-2)で表される基であることが好ましく、上記式(2-2)におけるaが2である基(エチレン基)であることがより好ましい。
なお、上記式(2-1)及び式(2-3)において、*で示した結合位置のうち、メチレン基側の結合位置が上記式(1)における(メタ)アクリロイルオキシ基との結合位置となる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0016】
上記式(1)中、R3は、置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物由来の構造を表す。上記R3が、置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物由来の構造であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が接着性及び透湿防止性に優れるものとなる。
【0017】
上記置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物が置換されている場合の置換基としては、例えば、芳香環を含む不飽和結合や分岐構造を有していてもよい炭素数1~60の炭素鎖、環状構造を含む炭化水素骨格等が挙げられる。
【0018】
上記置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物としては、具体的には例えば、無水フタル酸、3-メチルフタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、4-tert-ブチルフタル酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、フェニルコハク酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、テトラデシルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデシルコハク酸無水物、アリルコハク酸無水物、イソオクタデセニルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、4-ヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、2-ドデセン-1-イルコハク酸無水物、2,2-ジメチルコハク酸無水物、2-ヘキセン-1-イルコハク酸無水物、4-メチル-4-ペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、4,9-デカジエン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-(2-カルボキシエチル)-3-メチルマレイン酸無水物、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、及び、これらの無水物化前のジカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
上記式(1)中、Xは、環状ラクトンの開環構造を表す。
上記環状ラクトンとしては、例えば、γ-ウンデカラクトン、ε-カプロラクトン、γ-デカラクトン、σ-ドデカラクトン、γ-ノナノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-バレロラクトン、σ-バレロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、σ-ヘキサノラクトン、7-ブチル-2-オキセパノン等が挙げられる。なかでも、開環したときに主骨格の直鎖部分の炭素数が5以上7以下となるものが好ましい。
【0020】
上記式(1)中、nが0である場合、即ち、Xで表される環状ラクトンの開環構造がない場合は、得られる有機EL表示素子用封止剤が透湿防止性により優れるものとなる。また、上記式(1)中、nが1以上5以下である場合は、得られる有機EL表示素子用封止剤が接着性により優れるものとなる。そのため、上記硬化性樹脂は、上記式(1)中のnが0である化合物を含んでもよいし、上記式(1)中のnが1以上5以下である化合物を含んでもよいし、上記式(1)中のnが0である化合物と、上記式(1)中のnが1以上5以下である化合物とを含んでもよい。
【0021】
上記式(1)中、Epは2官能以上のエポキシ化合物由来の構造を表す。
上記Epの由来となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物、水添ビスフェノールE型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
なかでも、上記Epは、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、又は、ビスフェノールE型エポキシ化合物由来の構造であることが好ましい。
【0022】
上記Epの由来となるエポキシ化合物の分子量の好ましい上限は1000である。上記エポキシ化合物の分子量が1000以下であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤がハンドリング性により優れるものとなる。上記Epの由来となるエポキシ化合物の分子量のより好ましい上限は500である。
【0023】
上記式(1)で表される化合物を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
即ち、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、上記置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物とを、重合禁止剤の存在下で加熱撹拌することにより反応させる工程と、得られた反応物に上記2官能以上のエポキシ化合物を加えて加熱撹拌することにより全部のエポキシ基を反応させる工程とを有する方法等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、上記置換されていてもよいジカルボン酸又はその無水物と反応させる前に上記環状ラクトンと反応させていてもよい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0024】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール等が挙げられる。
【0026】
上記硬化性樹脂100質量部中における式(1)で表される化合物の含有量の好ましい下限は10質量部、好ましい上限は85質量部である。上記式(1)で表される化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が接着性及び透湿防止性により優れるものとなる。上記式(1)で表される化合物の含有量のより好ましい下限は15質量部、より好ましい上限は80質量部である。
【0027】
上記硬化性樹脂は、エポキシ化合物を含む。上記エポキシ化合物を含有することにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が硬化性及び接着性に優れるものとなる。
【0028】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0029】
上記ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON EXA-850CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールE型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、エポミックR710(三井化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、RE-810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX-4000H(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP4032、EPICLON EXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱ケミカル社製)、EPICLON 430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ZX-1542(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON 726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX-611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC-1312、YSLV-80XY、YSLV-90CR(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱ケミカル社製)、EXA-7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0030】
また、上記硬化性樹脂は、上記エポキシ化合物として部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を含有してもよい。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂とは、例えば、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味する。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0031】
上記硬化性樹脂は、塗布性等の観点から、更に、上記式(1)で表される化合物以外のその他の(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましい。
上記その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の観点から、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0036】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、上記硬化性樹脂に含まれるものとして上述したエポキシ化合物と同様のものを用いることができる。
【0037】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、EBECRYL3700(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0038】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0039】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
また、上記イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0041】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0042】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN-330、アートレジンSH-500B、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-9000H等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6HA、U-6LPA、U-10H、U-15HA、U-108、U-108A、U-122A、U-122P、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4000、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AH-600、AI-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T等が挙げられる。
【0043】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、ラジカル重合開始剤を含有する。
上記ラジカル重合開始剤は、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤を含んでもよいし、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤を含んでもよい。なかでも、上記熱ラジカル重合開始剤を含有することにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が遮光部硬化性に優れるものとなる。
【0044】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾインエーテル化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-((4-メチルフェニル)メチル)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0045】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)が好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0046】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、硬化性樹脂と容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0047】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物として市販されているものとしては、例えば、V-65、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0048】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0049】
上記ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.01質量部、好ましい上限が10質量部である。上記ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が保存安定性や硬化性により優れるものとなる。上記ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0050】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、熱硬化剤を含有する。
上記熱硬化剤は、融点が120℃以下であることが好ましい。上記熱硬化剤の融点が120℃以下であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が低温での硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の融点のより好ましい上限は100℃である。
【0051】
上記熱硬化剤としては、アミンアダクト化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
上記アミンアダクト化合物は、エポキシ化合物に由来する構造とアミン化合物に由来する構造とを有する。
【0052】
上記アミンアダクト化合物の由来となるエポキシ化合物としては、上記硬化性樹脂に含まれるものとして上述したエポキシ化合物と同様のものを用いることができる。なかでも、ビスフェノールA型エポキシ化合物が好ましい。
【0053】
上記アミンアダクト化合物の由来となるアミン化合物としては、例えば、脂肪族第1級モノアミン、脂環式第1級モノアミン、芳香族第1級モノアミン、アルキレンジアミン、1位の窒素原子が置換されたイミダゾリル基を有する第1級ジアミン、ポリアルキルポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン等が挙げられる。
上記脂肪族第1級モノアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
上記脂環式第1級モノアミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
上記芳香族第1級モノアミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン等が挙げられる。
上記アルキレンジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン等が挙げられる。
上記1位の窒素原子が置換されたイミダゾリル基を有する第1級ジアミンとしては、例えば、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリアルキルポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
上記脂環式ポリアミンとしては、例えば、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
上記芳香族ポリアミンとしては、例えば、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
なかでも、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0054】
上記アミンアダクト化合物としては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【0055】
【0056】
式(3)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、mは、1以上10以下の整数である。
【0057】
上記式(3)中のR4は、いずれもメチル基であることが好ましい。
【0058】
上記イミダゾール化合物は、保存安定性の観点から、炭素数10以上のアルキル鎖を有することが好ましく、炭素数10以上12以下のアルキル鎖を有することがより好ましい。
【0059】
上記アミンアダクト化合物及び上記イミダゾール化合物以外の上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。
【0060】
上記熱硬化剤の含有量は、硬化性樹脂全体100質量部に対して、好ましい下限が0.3質量部、好ましい上限が10質量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が優れた塗布性や保存安定性を維持したまま、硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は0.5質量部、より好ましい上限は8質量部である。
【0061】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の更なる向上、線膨張率の改善、硬化物の透湿防止性の更なる向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0062】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
なかでも、接着性を向上させる効果により優れることから、シリカが好ましい。
【0063】
本発明の有機EL表示素子用封止剤100質量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は3質量部、好ましい上限は40質量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等の悪化を抑制しつつ、接着性の向上等の効果をより発揮することができる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は35質量部である。
【0064】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、接着性を更に向上させることを目的として、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主に有機EL表示素子用封止剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0065】
本発明の有機EL表示素子用封止剤100質量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1質量部、好ましい上限は10質量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、ブリードアウトを抑制しつつ、接着性を向上させる効果をより発揮することができる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0066】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、更に、必要に応じて、硬化遅延剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0067】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、ラジカル重合開始剤と、熱硬化剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0068】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、E型粘度計を用いて、25℃、1.0rpmの条件で測定される粘度の好ましい下限が50Pa・s、好ましい上限は1000Pa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が塗布性に優れるものとなる。上記粘度のより好ましい下限は100Pa・s、より好ましい上限は800Pa・sである。
また、上記E型粘度計としては、例えば、VISCOMETER TV-22(東機産業社製)等が挙げられ、CP1型のコーンプレートを用いることができる。
【0069】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、有機発光材料層を有する積層体の周囲に封止壁を形成するための有機EL表示素子用周辺封止剤として好適に用いられる。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、接着性及び透湿防止性に優れる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0072】
(硬化性樹脂Aの作製)
反応フラスコに、2-ヒドロキシエチルアクリレート232質量部と、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物336質量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1質量部とを加え、マントルヒーターを用いて90℃で5時間撹拌した。次いで、得られた反応物にビスフェノールAジグリシジルエーテル340質量部を加え、更にトリフェニルフォスフィンを0.5質量部加え、110℃で5時間撹拌することにより、硬化性樹脂Aを得た。
1H-NMR及び13C-NMRにより、硬化性樹脂Aは、上記式(1)における、R1が水素原子、R2がエチレン基、R3が4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物由来の構造、nが0、EpがビスフェノールAジグリシジルエーテル由来の構造である化合物であることを確認した。
【0073】
(硬化性樹脂Bの作製)
反応フラスコに、2-ヒドロキシエチルアクリレート232質量部と、ε-カプロラクトン456質量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1質量部とを加え、マントルヒーターを用いて90℃で5時間撹拌した。その後、無水フタル酸296質量部を加えて更に5時間撹拌した。次いで、得られた反応物にビスフェノールAジグリシジルエーテル340質量部を加え、更にトリフェニルフォスフィンを0.5質量部加え、110℃で5時間撹拌することにより、硬化性樹脂Bを得た。
1H-NMR及び13C-NMRにより、硬化性樹脂Bは、上記式(1)における、R1が水素原子、R2がエチレン基、R3が無水フタル酸由来の構造、Xがε-カプロラクトンの開環構造、nが2、EpがビスフェノールAジグリシジルエーテル由来の構造である化合物であることを確認した。
【0074】
(実施例1~7、比較例1)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌装置にて撹拌した後、セラミック3本ロールにて均一に混合して実施例1~7、比較例1の有機EL表示素子用封止剤を得た。遊星式撹拌装置としては、あわとり練太郎AR-250(シンキー社製)を用いた。
【0075】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0076】
(粘度)
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について、E型粘度計を用いて、25℃、1.0rpmの条件で粘度を測定した。
上記E型粘度計としては、VISCOMETER TV-22(東機産業社製)を用い、CP1型のコーンプレートを用いた。
【0077】
(接着性)
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤100重量部に対して、シリカスペーサー1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させた。シリカスペーサーとしては、SI-H055(積水化学工業社製)を用いた。次いで、シリカスペーサーを分散させた有機EL表示素子用封止剤をガラス基板上に微小滴下した。有機EL表示素子用封止剤を滴下したガラス基板に、有機EL表示素子用封止剤を介して別のガラス基板を十字状に貼り合わせた。その後、UV-LED照射装置にて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射した後、100℃で60分間加熱した接着試験片と、UV-LED照射装置にて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射した後、110℃で60分間加熱した接着試験片とを用意した。作製した接着試験片における基板の端部を半径5mmの金属円柱を使って5mm/minの速度で押し込んだときに、パネル剥がれが起こる際の強度を測定した。得られた測定値(kgf)をシール直径(cm)で除した値が、3.0kgf/cm以上であった場合を「◎◎」、2.7kgf/cm以上3.0kgf/cm未満であった場合を「◎」、2.5kgf/cm以上2.7kgf/cm未満であった場合を「○」、2.0kgf/cm以上2.5kgf/cm未満であった場合を「△」、2.0kgf/cm未満であった場合を「×」としてガラス基板に対する接着性を評価した。
【0078】
(透湿防止性)
実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤を、平滑な離型フィルム上にコーターを用いて厚さ200μm以上300μm以下となるように塗布した。次いで、UV-LED照射装置にて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射した後、100℃で60分加熱することによって透湿度測定用フィルムを得た。JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じた方法で透湿度試験用カップを作製し、得られた透湿度測定用フィルムを取り付け、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿オーブンに投入して透湿度を測定した。得られた透湿度の値が、60g/m2・24hr未満であった場合を「○」、60g/m2・24hr以上70g/m2・24hr未満であった場合を「△」、70g/m2・24hr以上であった場合を「×」として透湿防止性を評価した。
【0079】
(遮光部硬化性)
まず、厚さ0.7mmのコーニングガラスの片面の半分をクロム蒸着した基板Aと、片面の全体をクロム蒸着した基板Bとを準備した。次に、実施例及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤100質量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1質量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させた。次いで、該スペーサー粒子を分散させた封止剤を基板Aの中央部(クロム蒸着部と非蒸着部との境界)に塗布し、基板Bを貼り合わせてから封止剤を充分に押し潰し、基板A側からUV-LED照射装置にて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射した。
その後、カッターを用いて基板A及びBを剥がし、紫外線直接照射部の際から50μm離れた点(クロム蒸着により遮光されていた部分)上の封止剤について顕微IR法によってスペクトルを測定し、封止剤中の(メタ)アクリロイル基の転化率を以下の方法により求めた。即ち、815~800cm-1のピーク面積を(メタ)アクリロイル基のピーク面積とし、845~820cm-1のピーク面積をリファレンスピーク面積として、下記式により(メタ)アクリロイル基の転化率を算出した。(メタ)アクリロイル基の転化率が90%以上であった場合を「○」、85%以上90%未満であった場合を「△」、85%未満であった場合を「×」として遮光部硬化性を評価した。
(メタ)アクリロイル基の転化率=(1-(紫外線照射後の(メタ)アクリロイル基のピーク面積/紫外線照射後のリファレンスピーク面積)/(紫外線照射前の(メタ)アクリロイル基のピーク面積/紫外線照射前のリファレンスピーク面積))×100
【0080】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、接着性及び透湿防止性に優れる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。