(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040997
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】テールクリアランス及びセグメントリングの真円度を計測するための計測装置並びに計測方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
E21D9/06 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145686
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 侑也
(72)【発明者】
【氏名】庄村 典生
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英史
(72)【発明者】
【氏名】藤永 諭
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054GA02
2D054GA04
2D054GA25
2D054GA62
2D054GA65
2D054GA82
2D054GA84
2D054GA96
(57)【要約】
【課題】単一の計測装置を用いて、少ない測定回数でテールクリアランス及び真円度を計測できるようにする。
【解決手段】計測装置24は、周方向に互いに異なる位置に配置された複数の走査装置28と、演算装置29とを備える。各走査装置28は、スキンプレート8の内側に組み立てられた最前列のセグメントリング16の前端面26よりも前方且つセグメントリング16の内面21よりも径方向内側に配置され、少なくともセグメントリング16の前端面及びスキンプレート8の内面21を走査する。演算装置29は、複数の走査装置によって走査された点群データを取得し、取得した点群データに基づいて、テールクリアランス及び真円度を演算する。計測装置は、1回の測定を以て、これらを計測することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドマシンのスキンプレートの内面とセグメントリングの外面との距離であるテールクリアランス及び前記セグメントリングの真円度を計測するための計測装置であって、
前記スキンプレートの内側に組み立てられた最前列の前記セグメントリングの前端面よりも前方且つ前記セグメントリングの内面よりも径方向内側に、周方向に互いに異なる位置に配置され、少なくとも前記セグメントリングの前記前端面及び前記スキンプレートの内面を走査する複数の走査装置と、
複数の前記走査装置によって走査された点群データを取得し、取得した前記点群データに基づいて、前記テールクリアランス及び前記真円度を演算する演算装置と、を備える、計測装置。
【請求項2】
複数の前記走査装置は、前記スキンプレートの前端に一体に設けられたリングガーダに取り付けられている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
複数の前記走査装置は、少なくとも前記リングガーダの上、下、右及び左に配置された4つの前記走査装置を含む、請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記演算装置は、
複数の前記走査装置のそれぞれについて、前記セグメントリングの前記前端面上の前記セグメントリングの内面に最も近い座標をセグメント内面エッジ座標として演算し、
複数の前記走査装置の前記セグメント内面エッジ座標に基づいて前記真円度を演算する、請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項5】
前記演算装置は、複数の前記走査装置のそれぞれについて、
前記セグメントリングの前記前端面上の前記セグメントリングの外面に最も近い座標をセグメント外面エッジ座標として演算し、
前記セグメントリングの前記前端面の前記点群データの内、所定のセグメント前端面計測エリア内のデータを用いて直線フィッティングを行い、セグメント前端面線分を演算し、
前記スキンプレートの内面の前記点群データの内、所定のスキンプレート計測エリア内のデータを用いて直線フィッティングを行い、スキンプレート内面線分を演算し、
前記セグメント前端面線分の延長線と前記スキンプレート内面線分とが交差する座標を交点座標として演算し、
前記セグメント外面エッジ座標及び前記交点座標に基づいて前記テールクリアランスを演算する、請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記演算装置は、複数の前記セグメント内面エッジ座標から前記セグメントリングの鉛直方向の実内径及び水平方向の実内径を演算し、両実内径と前記セグメントリングの設計内径とに基づいて、前記真円度を演算する、請求項4に記載の計測装置。
【請求項7】
前記演算装置は、前記セグメント外面エッジ座標と前記交点座標との距離を前記テールクリアランスとして演算する、請求項5に記載の計測装置。
【請求項8】
複数の前記走査装置のそれぞれは、前記シールドマシンの掘進中において、少なくとも前記セグメントリングの前記前端面及び前記スキンプレートの内面を走査し、
前記演算装置は、前記シールドマシンの掘進距離に基づいて、移動する前記セグメントリングを追従するように少なくとも前記セグメント前端面計測エリア及び、前記スキンプレート計測エリアを移動させ、前記セグメント内面エッジ座標、前記セグメント外面エッジ座標及び前記交点座標を演算する請求項5に記載の計測装置。
【請求項9】
前記セグメントリングを構成するセグメントは平板形セグメントであり、
複数の前記走査装置は、前記セグメントリングの内面を走査し、
前記演算装置は、前記走査装置によって走査された前記セグメントリングの内面の前記点群データの内、所定のセグメント内面計測エリア内のデータを用いて直線フィッティングを行い、セグメント内面線分を演算し、前記セグメント内面線分の延長線と前記セグメント前端面線分の延長線との交点を前記セグメント内面エッジ座標として演算し、前記セグメント前端面線分の延長線上にあって、前記セグメント内面エッジ座標から径方向外側に前記セグメントの厚さだけ移動した座標を前記セグメント外面エッジ座標として演算する請求項5に記載の計測装置。
【請求項10】
前記セグメントリングを構成するセグメントは箱形セグメントであり、
前記演算装置は、前記走査装置によって走査された前記セグメントリングの前記前端面の前記点群データの内、前記セグメントリングの最も内側の座標を前記セグメント内面エッジ座標として抽出し、前記セグメントリングの前記前端面の前記点群データの内、前記セグメントリングの最も外側の座標を前記セグメント外面エッジ座標として抽出する、請求項5に記載の計測装置。
【請求項11】
シールドマシンのスキンプレートの内面とセグメントリングの外面との距離であるテールクリアランス及び前記セグメントリングの真円度を計測するための計測方法であって、
前記スキンプレートの内側に組み立てられた最前列の前記セグメントリングの前端面よりも前方且つ前記セグメントリングの内面よりも径方向内側の、周方向に互いに異なる複数の位置から、少なくとも前記セグメントリングの前記前端面及び前記スキンプレートの内面を走査するステップと、
周方向の各位置について、走査された点群データを取得し、取得した前記点群データに基づいて、前記テールクリアランス及び前記真円度を演算するステップと、を含む、計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドマシンのスキンプレートの内面とセグメントリングの外面との離間距離であるテールクリアランス及び前記セグメントリングの真円度を計測するための計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法では、シールドマシンによって掘進しながら、シールドマシンのスキンプレートの内側に複数のセグメントをリング状に並べてセグメントリングを組み立てる。シールドマシンのスキンプレートとセグメントリング外面との隙間はテールクリアランスと呼ばれる。テールクリアランスが所定範囲内に保たれない場合、スキンプレートの接触によるセグメント破損の虞がある。また、組み立てたセグメントリングの真円度が低下すると、互いに隣接するセグメント間に生じる過大な荷重によってセグメントの一部が損傷する虞がある。
【0003】
特許文献1には、単一の計測装置を用いてテールクリアランスの測定及び真円度グラフの作成を行う方法が開示されている。この計測装置は、周方向に配置された複数の光学系の距離センサと、距離センサの計測データを用いて真円度グラフを作成し且つテールクリアランスを算出する制御装置とを有している。複数の距離センサのそれぞれは、シールドマシンのテール部の内方に位置する足場に配置され、シールドマシンの機軸の垂直方向外側にレーザを照射する。制御装置は、セグメントリングの組立前に、シールドマシンの機軸からスキンプレートの内面までの距離を演算し、記録する。また制御装置は、セグメントリングの組立後に、シールドマシンの機軸からセグメントリングの内面までの距離を演算し、記録する。制御装置は、両距離の差からセグメントリングの厚さを減ずることによって、テールクリアランスを演算する。また、計測装置は、同一セグメントリングにおいて、複数の演算されたシールドマシンの機軸からセグメントリングの内面までの距離に基づいて、セグメントリングの真円度グラフを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、テールクリアランスの測定及び真円度グラフの作成を行うために、計測装置がセグメントリングの組立前及び組立後に2回測定を行う必要がある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、単一の計測装置を用いて、少ない測定回数でテールクリアランス及び真円度を計測できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、シールドマシン(1)のスキンプレート(8)の内面(21)とセグメントリング(16)の外面(22)との距離であるテールクリアランス(23)及び前記セグメントリングの真円度(α)を計測するための計測装置(24)であって、前記スキンプレートの内側に組み立てられた最前列の前記セグメントリングの前端面(26)よりも前方且つ前記セグメントリングの内面(21)よりも径方向内側に、周方向に互いに異なる位置に配置され、少なくとも前記セグメントリングの前記前端面及び前記スキンプレートの内面(21)を走査する(ST1、ST11)複数の走査装置(28)と、複数の前記走査装置によって走査された点群データを取得し(ST2、ST12)、取得した前記点群データに基づいて、前記テールクリアランス及び前記真円度を演算する(ST7、ST9、ST18、ST20)演算装置(29)と、を備える。
【0008】
この態様によれば、走査装置は、一連の走査を以て少なくともセグメントリングの前端面及びスキンプレートの内面の点群データを取得することができる。すなわち計測装置は、1回の測定を以て、テールクリアランス及び真円度を計測することができる。
【0009】
上記の態様において、複数の前記走査装置は、前記スキンプレートの前端に一体に設けられたリングガーダ(11)に取り付けられているとよい。
【0010】
この態様によれば、走査装置のスキンプレートに対する位置や角度が変化しないため、テールクリアランス及び真円度を正確に計測することができる。
【0011】
上記の態様において、複数の前記走査装置は、少なくとも前記リングガーダの上、下、右及び左に配置された4つの前記走査装置を含むとよい。
【0012】
この態様によれば、演算装置は、セグメントリングの上下方向の実内径と、セグメントリングの左右方向の実内径とを演算することができる。演算装置は、これらの実内径とセグメントリングの設計内径との差から真円度を演算することができる。
【0013】
上記の態様において、前記演算装置は、複数の前記走査装置のそれぞれについて、前記セグメントリングの前記前端面上の前記セグメントリングの内面(25)に最も近い座標をセグメント内面エッジ座標(47)として演算し(ST6、ST15)、複数の前記走査装置の前記セグメント内面エッジ座標に基づいて前記真円度を演算するとよい。
【0014】
この態様によれば、セグメント内面エッジ座標は、セグメントリングの前端面上の座標として演算されるため、複数の走査装置の点群データから演算された複数のセグメント内面エッジ座標を用いて真円度を演算することができる。
【0015】
上記の態様において、前記演算装置は、複数の前記走査装置のそれぞれについて、前記セグメントリングの前記前端面上の前記セグメントリングの外面(22)に最も近い座標をセグメント外面エッジ座標(48)として演算し(ST6、ST15)、前記セグメントリングの前記前端面の前記点群データの内、所定のセグメント前端面計測エリア(40)内のデータを用いて直線フィッティングを行い、セグメント前端面線分(45)を演算し(ST5、ST16)、前記スキンプレートの内面の前記点群データの内、所定のスキンプレート計測エリア(41)内のデータを用いて直線フィッティングを行い、スキンプレート内面線分(46)を演算し(ST5、ST16)、前記セグメント前端面線分の延長線と前記スキンプレート内面線分とが交差する座標を交点座標(49)として演算し(ST6、ST17)、前記セグメント外面エッジ座標及び前記交点座標に基づいて前記テールクリアランスを演算するとよい。
【0016】
この態様によれば、セグメント内面エッジ座標及びセグメント外面エッジ座標は、セグメントリングの前端面上の座標として演算されるため、複数の走査装置の点群データから演算された複数のセグメント外面エッジ座標及び複数の交点座標を用いてテールクリアランスを演算することができる。また、点群データの内、セグメント前端面計測エリア及びスキンプレート計測エリア内のデータを用いてセグメント前端面線分及びスキンプレート内面線分を演算することによって、交点座標を精度よく演算することができる。
【0017】
上記の態様において、前記演算装置は、複数の前記セグメント内面エッジ座標から前記セグメントリングの鉛直方向の実内径(Dv)及び水平方向の実内径(Dh)を演算し(ST8)、両実内径と前記セグメントリングの設計内径(D)とに基づいて、前記真円度を演算する(ST8、ST9、ST19、ST20)とよい。
【0018】
この態様によれば、演算装置は、2つの実内径を用いることによってセグメントリングの真円度を精度よく演算することができる。
【0019】
上記の態様において、前記演算装置は、前記セグメント外面エッジ座標と前記交点座標との距離を前記テールクリアランスとして演算する(ST7、ST18)とよい。
【0020】
この態様によれば、セグメント外面エッジ座標と交点座標とを結ぶ直線は、シールドマシンの掘進方向が最前列のセグメントリングの中心軸から傾いた場合でも、セグメントリングの径方向と重なる。これによって演算装置は、シールドマシンの掘進方向とセグメントリングの中心軸との位置関係に依らず、テールクリアランスを演算することができる。
【0021】
上記の態様において、複数の前記走査装置のそれぞれは、前記シールドマシンの掘進中において、少なくとも前記セグメントリングの前記前端面及び前記スキンプレートの内面を走査し、前記演算装置は、前記シールドマシンの掘進距離(Ld)に基づいて、移動する前記セグメントリングを追従するように少なくとも前記セグメント前端面計測エリア及び、前記スキンプレート計測エリアを移動させ(ST4)、前記セグメント内面エッジ座標、前記セグメント外面エッジ座標及び前記交点座標を演算する(ST6)とよい。
【0022】
この態様によれば、演算装置は、シールドマシンの掘進中においてもテールクリアランス及び真円度を演算することができる。
【0023】
上記の態様において、前記セグメントリングを構成するセグメント(19)は平板形セグメントであり、複数の前記走査装置は、前記セグメントリングの内面を走査し、前記演算装置は、前記走査装置によって走査された前記セグメントリングの内面の前記点群データの内、所定のセグメント内面計測エリア(39)内のデータを用いて直線フィッティングを行い、セグメント内面線分(44)を演算し(ST5)、前記セグメント内面線分の延長線と前記セグメント前端面線分の延長線との交点を前記セグメント内面エッジ座標として演算し(ST6)、前記セグメント前端面線分の延長線上にあって、前記セグメント内面エッジ座標から径方向外側に前記セグメントの厚さ(T)だけ移動した座標を前記セグメント外面エッジ座標として演算する(ST6)とよい。
【0024】
平板形セグメントの前端面は、例えばコーキング溝やシール溝、外縁の面取りなどを有する。また、平板形セグメントの内面は、例えばコーキング溝やボルトボックスを有する。この態様によれば、演算装置は、セグメント内面計測エリア内のデータを用いてセグメント内面線分及びその延長線を演算することによって、セグメント前端面線分からセグメント内面エッジ座標を演算することが困難な場合であっても、セグメントリングの内面上にあるべきセグメント内面エッジ座標を精度よく演算することができる。また、セグメント前端面線分からセグメント外面エッジ座標を演算することが困難な場合であっても、セグメント内面エッジ座標及びセグメントの厚さを用いることによって、セグメントリングの外面上にあるべきセグメント外面エッジ座標を精度よく演算することができる。
【0025】
上記の態様において、前記セグメントリングを構成するセグメント(50)は箱形セグメントであり、前記演算装置は、前記走査装置によって走査された前記セグメントリングの前記前端面の前記点群データの内、前記セグメントリングの最も内側の座標を前記セグメント内面エッジ座標として抽出し(ST15)、前記セグメントリングの前記前端面の前記点群データの内、前記セグメントリングの最も外側の座標を前記セグメント外面エッジ座標として抽出する(ST15)とよい。
【0026】
箱形セグメントの内面の大部分は開口となっている。この態様によれば、演算装置は、走査装置がセグメントリングの内面を走査しなくとも、セグメントリングの前端面を示す座標の中からセグメント内面エッジ座標及びセグメント外面エッジ座標を演算することができる。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明は、シールドマシン(1)のスキンプレート(8)の内面(21)とセグメントリング(16)の外面(22)との距離であるテールクリアランス(23)及び前記セグメントリングの真円度(α)を計測するための計測方法であって、前記スキンプレートの内側に組み立てられた最前列の前記セグメントリングの前端面(26)よりも前方且つ前記セグメントリングの内面(21)よりも径方向内側の、周方向に互いに異なる複数の位置から、少なくとも前記セグメントリングの前記前端面及び前記スキンプレートの内面(21)を走査するステップ(ST1、ST11)と、周方向の各位置について、走査された点群データを取得し(ST2、ST12)、取得した前記点群データに基づいて、前記テールクリアランス及び前記真円度を演算するステップ(ST7、ST9、ST18、ST20)と、を含む。
【0028】
この態様によれば、一連の走査を以て少なくともセグメントリングの前端面及びスキンプレートの内面の点群データを取得することができる。これによって、1回の測定を以て、テールクリアランス及び真円度を計測することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、単一の計測装置を用いて、少ない測定回数でテールクリアランス及び真円度を計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係るシールドマシンの側断面図
【
図2】第1実施形態に係るシールドマシンを後方から見た図
【
図5】第1実施形態に係るテールクリアランス及び真円度の計測方法を示すフローチャート
【
図8】第2実施形態に係るテールクリアランス及び真円度の計測方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明に係るテールクリアランス23及び真円度αを計測する計測装置24のいくつかの実施形態について説明する。
【0032】
≪第1実施形態≫
まず、
図1~
図4を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、トンネル施工工事に用いられるシールドマシン1の側断面図である。以下、トンネル掘進方向を前方として前後左右を規定する。シールドマシン1は、前端にバルクヘッドを備えた略円筒形のシールド本体部2を備えている。シールド本体部2の前端には、地山を掘削するための掘削部4が設けられている。掘削部4は、シールド本体部2に回転可能に支持された回転カッター5と、回転カッター5を回転駆動するカッター駆動部6とを有する。バルクヘッドの下部には、掘削部4によって掘削された土砂を排出するための排土装置7が取り付けられている。本体部の後端には、本体部と別体に形成された円筒形のスキンプレート8が中折れ機構9を介して連結されている。中折れ機構9は、シールド本体部2とスキンプレート8とを、それらの軸線の角度を変更可能に連結するジョイント10と、シールド本体部2とスキンプレート8との連結角度を変更するための中折れジャッキ(図示せず)とを有している。
【0033】
スキンプレート8の前端には補強のためのリングガーダ11が一体に設けられている。リングガーダ11は、スキンプレート8の前端部の内面21に結合したリング板状のリングガーダ本体部12と、リングガーダ本体部12の後方に配置された複数の板状のリブ13とを有する。リングガーダ本体部12は、スキンプレート8の軸線に直交する向きに延在している。複数のリブ13は、スキンプレート8の周方向に略等間隔に配置されている。複数のリブ13のそれぞれは、スキンプレート8の径方向に延在するように配置され、リングガーダ本体部12の後側の面とスキンプレート8の内面21とに接合されている。
【0034】
リングガーダ11には、シールドマシン1を推進させるための複数のシールドジャッキ14が設けられている。複数のシールドジャッキ14はリングガーダ11に沿って周方向に略等間隔に配置される。複数のシールドジャッキ14のそれぞれは、ロッド15を後方に伸長させるべく、スキンプレート8の軸線と平行に且つリングガーダ本体部12を貫通するように配置され、リングガーダ本体部12に支持されている。リングガーダ11の内側にはセグメントリング16を構築するためのエレクタ17が支持されている。エレクタ17は、セグメントリング16を組み立てるために、ロッド15によって押し出されたセグメントリング16とシールドジャッキ14のシリンダ18との間の空間に、複数のセグメント19を順次周方向に配置する。
【0035】
図1に切羽の掘削中において、複数のシールドジャッキ14のそれぞれは、ロッド15の端部に設けられたスプレッダー20を最前列のセグメントリング16に押し当てた状態で、ロッド15を後方へ伸長させる。これにより、シールドマシン1はセグメントリング16から反力をとって前進する。
【0036】
シールドマシン1が1リング分掘進した後、シールドジャッキ14は収縮され、セグメント19は、エレクタ17によって既設の最前列のセグメントリング16の前方に新たな最前列のセグメントリング16が構築される。
【0037】
また、シールドマシン1には、スキンプレート8の内面21とセグメントリング16の外面22との離間距離であるテールクリアランス23及びセグメントリング16の真円度αを計測するための計測装置24が設けられている。
【0038】
図2に示すように、本実施形態では、14本のシールドジャッキ14が設けられている。リングガーダ11のリブ13は、互いに隣接するシールドジャッキ14の間に設けられている。シールドジャッキ14の本数及びリングガーダ11のリブ13の枚数は、適宜増減してもよい。
【0039】
計測装置24は、少なくともセグメントリング16の前端面26及びスキンプレート8の内面21を走査する複数の走査装置28と、走査装置28から取得した点群データに基づいて、テールクリアランス23及び真円度αを演算する演算装置29とを有する。本実施形態では、4つの走査装置28が配置され、各走査装置28は、スキンプレート8の軸線を通る面に沿って電磁波を照射し、反射する電磁波に基づいて、電磁波を照射した面上に存在する物体を検知する。本実施形態では、走査装置28として二次元レーザスキャナが用いられる。走査装置28が指向性に優れたレーザを用いることにより、走査面上に存在する物体の位置が正確に検知される。
【0040】
本実施形態では、各走査装置28はリングガーダ11のリブ13の径方向内側の内縁の後端に取り付けられている。4つの走査装置28は、リングガーダ11の上部、下部、左部及び右部に配置されている。具体的には、スキンプレート8の軸線の真上に配置されたリブ13A、スキンプレート8の軸線の真下に配置されたリブ13Bに2つの走査装置28(28A、28B)が180度間隔をもって配置されている。一方、スキンプレート8の軸線を通る水平面上にはリブ13は配置されていない。そこで、リングガーダ11の左部においては、当該水平面の上側近傍に配置されたリブ13Cに左側の走査装置28Cが配置され、リングガーダ11の右部においては、当該水平面の下側近傍に配置されたリブ13Dに右側の走査装置28Dが配置されている。左右の走査装置28(28C、28D)は180度間隔とされている。したがって、上下に配置された走査装置28(28A、28B)を結ぶ線分及び左右に配置された走査装置28(28C、28D)を結ぶ線分は、リングガーダ本体部12の中心を通る。これによって、セグメントリング16の上側、下側、右側及び左側を走査することができる。
【0041】
図3に示すように、各走査装置28は、スキンプレート8の内側に組み立てられた最前列のセグメントリング16の前端面26よりも前方且つセグメントリング16の内面25よりも径方向内側に配置されている。各走査装置28は、レーザを発射するレーザ発光部と、レーザが計測対象にて反射して戻ってくる反射レーザを受光するレーザ反射光受光部とを備える。また各走査装置28は、レーザ反射光受光部が受光したレーザ光を信号として処理し、計測対象の位置を示す複数の位置データからなる点群データに変換する信号処理部と、点群データを演算装置29に出力する出力部とを有する。走査装置28から出力される点群データは走査装置28の位置及び向きを基準とする二次元座標として表すことができる。同一平面上に走査面を有するように配置された複数の走査装置28の点群データは、走査装置28の相対的な位置及び向きを関連付けることで、同一座標上のデータとして扱うことができる。座標は、例えば、セグメントリング16の軸方向に平行な軸及びセグメントリング16の径方向に平行な軸からなる直交二次元座標として扱われる。
【0042】
演算装置29は、CPU、GPU、ROM、RAM、システムバス及びハードウェアインタフェース等を有するマイクロコンピュータであって、走査装置28によって出力された点群データに基づいて、テールクリアランス23及び真円度αを計測する。また演算装置29には、点群データ、テールクリアランス23及び真円度αの計測結果を表示させるモニタ等の表示装置や、キーボード等の入力装置が接続される。演算装置29、表示装置及び入力装置は、シールドマシン1又はトンネルの内部に配置されてもよく、外部に配置されてもよい。また入力装置は、演算装置29に対する後述する設定を行う際に接続されていればよく、シールドマシン1の掘進作業中に接続されている必要はない。
【0043】
本実施形態では、セグメントリング16を構成するセグメント19は平板形セグメントである。平板形セグメントの前端面26は、例えばコーキング溝やシール溝、外縁の面取りなどを有する。また、平板形セグメントの内面25には、例えばコーキング溝やボルトボックスが設けられている。走査装置28によって走査される断面には、
図3に示すようにボルトボックスが設けられていない。
【0044】
次に、
図2から
図5を用いて、最前列のセグメントリング16に関するテールクリアランス23及び真円度αを計測する方法について説明する。
【0045】
まず、作業者が演算装置29に設定するパラメータについて説明する。作業者は
図2に示すように配置された4つの走査装置28のそれぞれの相対座標平面を設定する。基点は、上下に配置された走査装置28を結ぶ線分及び左右に配置された走査装置28を結ぶ線分の交点を用いてもよい。この場合、リングガーダ11の軸線上に基点が設定される。
【0046】
図3に示すように、作業者はさらに、セグメント内面計測エリア39と、セグメント前端面計測エリア40と、スキンプレート計測エリア41とを演算装置29に設定する。セグメント内面計測エリア39は、セグメントリング16の内面25を定義するために設定される領域である。セグメント前端面計測エリア40は、セグメントリング16の前端面26を定義するために設定される領域である。スキンプレート計測エリア41は、スキンプレート8の内面21を定義するために設定される領域である。
【0047】
セグメント内面計測エリア39は、最前列のセグメントリング16の実内面を含み且つ最前列のセグメントリング16の実前端面の上部近傍から後方に延在するように設定される。セグメント内面計測エリア39は、セグメントリング16の実内面に設けられたコーキング溝やボルトボックスなどの凹みを回避して設定される。セグメント内面計測エリア39は、セグメントリング16の実内面の前後両端部を含まなくてもよい。
【0048】
セグメント前端面計測エリア40は、セグメントリング16の実前端面を含み且つセグメントリング16の径方向に延在するように設定される。セグメント前端面計測エリア40は、セグメントリング16の実前端面に設けられたコーキング溝やシール溝、外縁の面取りなどの凹みを回避して設定される。セグメント前端面計測エリア40は、セグメントリング16の実前端面の上下両端部を含まなくてもよい。
【0049】
スキンプレート計測エリア41は、スキンプレート8の実内面を含み且つ最前列のセグメントリング16の実前端面の下部近傍から前方に延在するように設定される。スキンプレート計測エリア41は、本実施形態では、最前列のセグメントリング16の実前端面よりも前方に設定されている。
【0050】
図4に示すように、作業者は、走査装置28と最前列のセグメントリング16との距離Lを演算するための距離算出エリア42を設定するとよい。距離算出エリア42は、掘進前の最前列のセグメントリング16の実前端面を含み且つこのセグメントリング16の実前端面からセグメントリング16の軸方向後方に延びるように設定されるとよい。距離算出エリア42の幅(セグメントリング16の径方向に平行な幅)は、セグメント前端面計測エリア40の幅(セグメントリング16の径方向に平行な幅)よりも広く設定されるとよい。距離算出エリア42の長さ(セグメントリング16の軸方向に平行な長さ)は、最前列のセグメントリング16の幅よりも長く設定されるとよい。
【0051】
或いは、距離算出エリア42は、掘進前の最前列のセグメントリング16の実前端面を含み且つより短い長さを有するように設定されてもよい。この場合、距離算出エリア42は、後述するシールドジャッキ14のストロークに応じて後方へ移動するように設定される。
【0052】
作業者は、走査装置28の相対座標に加えて、セグメント19の厚さT(
図3)と、セグメントリング16の設計内径D(
図6)とを演算装置29に設定する。また作業者は、セグメントリング16の幅(軸方向長さ)を設定するとよい。
【0053】
次に計測装置24が行う処理について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
図3及び
図5に示すように、走査装置28は、少なくとも最前列のセグメントリング16の前端面26及びスキンプレート8の内面21を走査する(ST1)。具体的には、走査装置28は、レーザをセグメントリング16の軸方向後方且つセグメントリング16の径方向外方に照射する。走査装置28がレーザを照射する角度範囲は、少なくとも、最前列のセグメントリング16の内面25及び前端面並びにスキンプレート8の内面21が含まれるように設定される。これにより、これらの面が走査される。また、走査装置28は、
図4に併せて示すようにシールドマシン1の掘進中においても、少なくとも最前列のセグメントリング16の前端面26及びスキンプレート8の内面21を走査する。走査によって得られた信号は、走査装置28の信号処理部によって点群データに変換される。点群データは、走査装置28の出力部によって演算装置29に出力される。演算装置29は走査装置28から出力された点群データを取得する(ST2)。演算装置29は、走査装置28から取得した点群データを、走査装置28の相対座標を加味した点群データに変換する。
【0054】
演算装置29は、走査装置28からセグメントリング16の前端面26までの距離L(セグメントリング16の軸方向に平行な長さ)を演算する。具体的には、演算装置29は、走査装置28によって得られた点群データの内、距離算出エリア42内に含まれる点群データをセグメントリング16の前端面26として扱う。演算装置29は、走査装置28の相対座標と距離算出エリア42内に含まれる点群データの各座標とを結ぶ線分の長さ及び、各線分と走査装置28の相対座標を通過するセグメントリング16の軸線に平行な線分との角度を演算する。次に演算装置29は、得られた各線分の長さの平均を平均長さHaとして演算し、各角度の平均を平均角度θaとして演算する。演算装置29は、この平均角度θaの余弦と平均長さHaとを用いて、走査装置28からセグメントリング16の前端面26までの距離Lを演算する。シールドジャッキ14の伸長前の距離Lは規定距離Lsとして扱われる。演算装置29は、シールドマシン1の掘進中においても距離Lを演算する。
【0055】
演算装置29は、シールドマシン1の掘進距離Ldに基づいて、移動するセグメントリング16を追従するように計測エリア(39、40、41)を移動させる。
図4に示すように、まず、シールドマシン1の掘進距離Ldは、走査装置28からセグメントリング16の前端面26までの距離Lと規定距離Lsとの差によって演算される(ST3)。
【0056】
シールドマシン1の掘進距離Ldとして、走査装置28に隣接している2つのシールドジャッキ14の実ストロークが用いられてもよい。この場合でも、作業者は距離算出エリア42を設定するとよい。演算装置29は、シールドジャッキ14の伸長前に設定された走査装置28からセグメントリング16の前端面26までの規定距離Lsを基準とし、これに実ストロークの伸び量を加算して距離Lを演算し、距離Lに応じて計測エリア(39、40、41)を移動させることができる。
【0057】
演算装置29は、得られたシールドマシン1の掘進距離Ldに応じて計測エリア(39、40、41)を移動させる(ST4)。具体的には、演算装置29は、セグメント内面計測エリア39、セグメント前端面計測エリア40及び、スキンプレート計測エリア41をセグメントリング16の軸線に平行な軸方向後方にシールドマシン1の掘進距離Ld分だけ移動させる。
【0058】
演算装置29は、所定の各計測エリア内の各データを用いて直線フィッティングを行い、線分を演算する(ST5)。本実施形態では、直線フィッティングは最小二乗法によって行われている。具体的には、
図3に示すように、演算装置29は、走査装置28によって得られた点群データの内、セグメント内面計測エリア39内に含まれる点群データに対して直線フィッティングを行う。これによって得られた線分は、セグメント内面線分44とされる。セグメント内面線分44は、セグメントリング16の軸に略平行な線分である。セグメント内面線分44は、セグメントリング16の実内面に設けられたコーキング溝やボルトボックスなどの凹みを回避して設定されたセグメント内面計測エリア39から演算される。これによってセグメント内面線分44は、セグメントリング16の実内面に近似している。セグメント内面線分44は延長され、平滑な疑似セグメントリング内面として扱われる。
【0059】
また演算装置29は、走査装置28によって得られた点群データの内、セグメント前端面計測エリア40内に含まれる点群データに対して直線フィッティングを行う。これによって得られた線分は、セグメント前端面線分45とされる。セグメント前端面線分45は、セグメントリング16の軸に略垂直な線分である。セグメント前端面線分45は、セグメントリング16の実前端面に設けられたコーキング溝やシール溝、外縁の面取りなどの凹みを回避して設定されたセグメント前端面計測エリア40から演算される。これによってセグメント前端面線分45は、セグメントリング16の実前端面に近似している。セグメント前端面線分45は延長され、平滑な疑似セグメントリング前端面として扱われる。
【0060】
さらに演算装置29は、走査装置28によって得られた点群データの内、スキンプレート計測エリア41内に含まれる点群データに対して直線フィッティングを行う。これによって得られた線分は、スキンプレート内面線分46とされる。スキンプレート内面線分46は、セグメントリング16の軸に略平行な線分であって、スキンプレート8の実内面に近似している。
【0061】
演算装置29は、各線分(44、45、46)を用いて、セグメント内面エッジ座標47、セグメント外面エッジ座標48及び交点座標49を演算する(ST6)。具体的には、演算装置29は、セグメント内面線分44の延長線とセグメント前端面線分45の延長線との交点をセグメント内面エッジ座標47として演算する。また演算装置29は、セグメント前端面線分45の延長線上にあって、セグメント内面エッジ座標47から径方向外側にセグメント19の厚さTだけ移動した座標をセグメント外面エッジ座標48として演算する。さらに演算装置29は、セグメント前端面線分45の延長線とスキンプレート内面線分46との交点を交点座標49として演算する。4つの走査装置28のそれぞれについて、以上の演算処理により、対応するセグメント内面エッジ座標47、セグメント外面エッジ座標48及び交点座標49が演算される。
【0062】
演算装置29は、各走査装置28によって得られたセグメント外面エッジ座標48及び交点座標49に基づいてテールクリアランス23を演算する(ST7)。具体的には、
図3に示すように、演算装置29は、交点座標49と対応するセグメント外面エッジ座標48との座標間距離を演算し、その値をテールクリアランス23とする。
【0063】
図6に示すように、演算装置29は、走査装置28のそれぞれから演算した4つのセグメント内面エッジ座標47(47A、47B、47C、47D)に基づいてセグメントリング16の実内径Dv、Dhを演算する(ST8)。演算装置29は、上下に配置された2つのセグメント内面エッジ座標47(47A、47B)を結ぶ線分の長さ及び左右に配置された2つのセグメント内面エッジ座標47(47C、47D)を結ぶ線分の長さを演算する。上下に配置された2つのセグメント内面エッジ座標47(47A、47B)を結ぶ線分の長さは、セグメントリング16の鉛直方向の実内径Dvに相当する。また左右に配置された2つのセグメント内面エッジ座標47(47C、47D)を結ぶ線分の長さは、セグメントリング16の水平方向の実内径Dhに相当する。
【0064】
演算装置29は、セグメントリング16の鉛直方向の実内径Dv及び水平方向の実内径Dh、並びに、予め設定されたセグメントリング16の設計内径Dを用いて、以下の式(1)に基づいてセグメントリング16の真円度αを演算する(ST9)。
【数1】
【0065】
計測されたテールクリアランス23及び真円度αは、モニタ等の表示装置によって表示される。テールクリアランス23の演算及び真円度αの演算は、テールクリアランス23から先に行われる。
【0066】
図3及び
図4に示すように、走査装置28は、最前列のセグメントリング16の内面25及び前端面26並びにスキンプレート8の内面21を走査することができる。この一連の走査によって、少なくともセグメントリング16の前端面26及びスキンプレート8の内面21の点群データを取得することができる。すなわち計測装置24は、1回の測定を以て、テールクリアランス23及び真円度αを計測することができる。
【0067】
走査装置28はリングガーダ11に取り付けられているため、走査装置28のスキンプレート8に対する位置や角度は変化しない。したがって、計測装置24は、テールクリアランス23及び真円度αを正確に計測することができる。例えば、シールド本体部2に固定された排土装置7に走査装置28が取り付けられた場合、曲線区間の掘進中にはシールド本体部2の向きとセグメントリング16の向きに差が生じる。そのため、走査装置28の位置及び向きを基準とする二次元座標とセグメントリング16の径方向との関係が崩れる(角度差が生じる)。よって、テールクリアランス23及び真円度αの正確な計測ができない。これに対し、本実施形態では走査装置28の位置及び向きを基準とする二次元座標とセグメントリング16の径方向との関係が一定に保たれるため、テールクリアランス23及び真円度αの正確な計測が可能である。
【0068】
また
図2に示すように、4つの走査装置28がリングガーダ11の上、下、右及び左に配置されることにより、演算装置29はセグメントリング16の上下方向の実内径Dvと左右方向の実内径Dhとを演算することができる。よって演算装置29は、これらの実内径Dv、Dhとセグメントリング16の設計内径Dとの差から真円度αを演算することができる。
【0069】
具体的には、
図3に示すように、セグメント内面エッジ座標47は、セグメント前端面線分45の延長線上に配置される。
図6に示すように、リングガーダ11の上部、下部、左部及び右部に配置された4つの走査装置28(28A~28D)から演算された4つのセグメント内面エッジ座標47(47A~47D)は、セグメントリング16の前端面26を含む座標平面上に位置する。したがって計測装置24は、4つのセグメント内面エッジ座標47(47A~47D)を用いて真円度αを計測することができる。
【0070】
上下2つの走査装置28(28A、28B)は、180度間隔をもって配置されている。また、左右2つの走査装置28(28C、28D)は、180度間隔をもって配置されている。さらに、上下2つの走査装置28(28A、28B)を結ぶ線分及び左右2つの走査装置28(28C、28D)を結ぶ線分は、リングガーダ本体部12の中心を通る。
図6に示すように、上下に位置する2つのセグメント内面エッジ座標47(47A、47B)を結ぶ線分及び、左右に位置する2つのセグメント内面エッジ座標47(47C、47D)を結ぶ線分は、セグメントリング16の中心を通る。上下に位置する2つのセグメント内面エッジ座標47(47A、47B)を結ぶ線分の長さは、上下方向(鉛直方向)のセグメントリング16の実内径Dvとして扱われる。また、左右に位置する2つのセグメント内面エッジ座標47(47C、47D)を結ぶ線分の長さは、左右方向(水平方向)のセグメントリング16の実内径Dhとして扱われる。計測装置24は、セグメントリング16のこれら両実内径Dv、Dhを用いることによって、セグメントリング16の真円度αを精度よく計測することができる。
【0071】
図3に示すように、直線フィッティングによって演算されたスキンプレート内面線分46は、スキンプレート8の実内面に精度よく近似している。これによって、交点座標49は、スキンプレート8の実内面に精度よく近似される。また、交点座標49とセグメント外面エッジ座標48とを結ぶ線分、すなわちセグメント前端面線分45は、スキンプレート内面線分46と略直交する。したがって、交点座標49とセグメント外面エッジ座標48との座標間距離を演算することによって、テールクリアランス23が計測される。
【0072】
セグメント内面線分44を延長した線分は、平滑な疑似セグメントリング内面として扱われる。また、セグメント前端面線分45を延長した線分は、平滑な疑似セグメントリング前端面として扱われる。これによって演算装置29は、セグメント前端面線分45からセグメント内面エッジ座標47を演算することが困難な場合であっても、セグメントリング16の内面上にあるべきセグメント内面エッジ座標47を精度よく演算することができる。また、セグメント前端面線分45からセグメント外面エッジ座標48を演算することが困難な場合であっても、セグメント内面エッジ座標47及びセグメント19の厚さTを用いることによって、セグメント外面エッジ座標48を精度よく演算することができる。
【0073】
図4に示すように、演算装置29は、シールドマシン1の掘進距離Ldに基づいて、移動するセグメントリング16を追従するように計測エリア(39、40、41)を移動する。これによって、シールドマシン1の掘進中、すなわち前後方向の移動においても、演算装置29は計測エリア(39、40、41)内の点群データを演算して、セグメント内面エッジ座標47、セグメント外面エッジ座標48及び交点座標49を演算できる。
【0074】
シールドマシン1の掘進方向の変化、すなわち上下方向又は左右方向の移動によって、シールドマシン1の掘進方向とセグメントリング16の中心軸との位置関係が変化する。これによって、走査装置28とセグメントリング16との位置関係も変化する。演算装置29は、走査装置28から出力された点群データを、走査装置28の相対座標を加味した点群データに変換する。そのため、演算装置29は走査装置28とセグメントリング16との位置関係に依らず、セグメント内面エッジ座標47、セグメント外面エッジ座標48及び交点座標49を演算できる。
【0075】
図5に示されるテールクリアランス23及び真円度αの計測方法によれば、一連の走査を以て少なくともセグメントリング16の前端面26及びスキンプレート8の内面21の点群データを取得することができる(ST1、ST2)。これによって、1回の測定を以て、テールクリアランス23及び真円度αを計測することができる。
【0076】
≪第2実施形態≫
次に、
図7及び
図8を参照して本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同一又は同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0077】
図7に示すように第2実施形態では、セグメントリング16を構成するセグメント50は箱形セグメントである。箱形セグメントの内面25の大部分は開口となっている。したがって、演算装置29は、セグメント内面線分44を演算することなくテールクリアランス23及び真円度αを演算する。
【0078】
まず、作業者が演算装置29に入力するパラメータについて説明する。作業者は、第1実施形態で設定した計測エリア(39、40、41)及び距離算出エリア42に加えて、セグメント内面エッジ計測エリア51及びセグメント外面エッジ計測エリア52を設定する。セグメント内面エッジ計測エリア51は、セグメント内面エッジ座標47を抽出するために設定される領域である。セグメント外面エッジ計測エリア52は、セグメント外面エッジ座標48を抽出するために設定される領域である。なお作業者は、セグメントリング16の内面25を定義するためのセグメント内面計測エリア39を設定しなくてもよい。
【0079】
セグメント内面エッジ計測エリア51は、セグメントリング16の実前端面の内縁及びセグメント前端面計測エリア40の内側部分を含むように設定されるとよい。
【0080】
セグメント外面エッジ計測エリア52は、セグメントリング16の実前端面の外縁及びセグメント前端面計測エリア40の外側部分を含むように設定されるとよい。
【0081】
次に計測装置24が行う処理について、
図8のフローチャートを参照して説明する。ステップST11~ステップST14の処理は、第1実施形態のステップST1~ステップST4の処理と同様であるため、説明を省略する。
図7及び
図8に示すように、演算装置29は、セグメントリング16の前端面26上のセグメントリング16の内面25に最も近い座標をセグメント内面エッジ座標47として演算する(ST15)。具体的には、演算装置29はセグメント内面エッジ計測エリア51内に含まれる点群データの内、セグメントリング16の最も内側の点の座標をセグメント内面エッジ座標47として抽出している。これによって、セグメント内面エッジ座標47は、セグメントリング16の実内面に精度よく近似される。
【0082】
演算装置29は、セグメントリング16の前端面26上のセグメントリング16の外面22に最も近い座標をセグメント外面エッジ座標48として演算する(ST15)。具体的には、演算装置29はセグメント外面エッジ計測エリア52内に含まれる点群データの内、セグメントリング16の最も外側の点の座標をセグメント外面エッジ座標48として抽出している。これによって、セグメント外面エッジ座標48は、セグメントリング16の実外面に精度よく近似される。
【0083】
演算装置29は、所定の各計測エリア内の各データを用いて直線フィッティングを行い、線分を演算する(ST16)。具体的には、
図7に示すように、演算装置29は、走査装置28によって得られた点群データの内、セグメント前端面計測エリア40内に含まれる点群データに対して直線フィッティングを行い、セグメント前端面線分45を演算する。また演算装置29は、走査装置28によって得られた点群データの内、スキンプレート計測エリア41内に含まれる点群データに対して直線フィッティングを行い、スキンプレート内面線分46を演算する。
【0084】
演算装置29は、各線分(45、46)を用いて、交点座標49を演算する(ST17)。以上のように抽出又は演算された、セグメント内面エッジ座標47、セグメント外面エッジ座標48及び、交点座標49を用いて、計測装置24は、テールクリアランス23及び真円度αを計測する(ST18~ST20)。ステップST18~ステップST20の処理は、第1実施形態のステップST7~ステップST9の処理と同様である。
【0085】
このようにセグメント50が箱形セグメントである場合、走査装置28がセグメントリング16の内面25を走査しなくとも、演算装置29はセグメントリング16の最も内側の点の座標を抽出することでセグメント内面エッジ座標47を演算できる(ST15)。また演算装置29は、セグメントリング16の最も外側の点の座標を抽出することでセグメント外面エッジ座標48を演算できる(ST15)。
【0086】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、シールドマシン1は、泥土圧式のシールド掘進機であってもよく、泥水式のシールド掘進機であってもよい。また、上記実施形態では、4つの走査装置28がリングガーダ11の上下左右に設けられているが、走査装置28の数及び配置はこれに限定されない。さらに、真円度αの算出方法は、上記式(1)に限定されるものではない。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材、或いは計測手順等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。また、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 :シールドマシン
8 :スキンプレート
11 :リングガーダ
16 :セグメントリング
19 :セグメント(平板形セグメント)
21 :スキンプレートの内面
22 :セグメントリングの外面
23 :テールクリアランス
24 :計測装置
25 :セグメントリングの内面
26 :セグメントリングの前端面
28 :走査装置
29 :演算装置
39 :セグメント内面計測エリア
40 :セグメント前端面計測エリア
41 :スキンプレート計測エリア
44 :セグメント内面線分
45 :セグメント前端面線分
46 :スキンプレート内面線分
47 :セグメント内面エッジ座標
48 :セグメント外面エッジ座標
49 :交点座標
50 :セグメント(箱形セグメント)
α :真円度
D :セグメントリングの設計内径
Dh :セグメントリングの水平方向の実内径
Dv :セグメントリングの鉛直方向の実内径
Ld :掘進距離
T :セグメントの厚さ