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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004100
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】褥瘡検出装置及び褥瘡検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/00 20060101AFI20240109BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01N22/00 S
G01N22/00 V
G01N22/00 W
A61B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103577
(22)【出願日】2022-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 開催日(公開日) 令和3年10月21日(台湾現地時間/日本時間) 集会名、開催場所 2021 International Symposium on Antennas and Propagation(ISAP) 台湾、台北(会期:令和3年10月19日~22日)(台湾現地時間/日本時間) インターネット会議システム(Zoom)によるオンライン開催 主催 National Taiwan University of Science and Technology、National Taiwan University <資 料> ISAP 2021 開催概要 <資 料> ISAP 2021 プログラム (2) 発行日 令和3年10月21日(台湾現地時間/日本時間) 刊行物 2021 International Symposium on Antennas and Propagation(ISAP) 研究発表論文 <資 料> ISAP 2021 研究発表論文
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 応明
(72)【発明者】
【氏名】浅野 佑介
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA04
4C117XB01
4C117XC02
4C117XC26
4C117XE03
4C117XE41
4C117XE57
(57)【要約】
【課題】褥瘡の有無の判別精度を向上できる褥瘡検出装置及び褥瘡検出方法を提供すること。
【解決手段】褥瘡検出装置は、生体へマイクロ波を送信し、送信したマイクロ波の反射波を受信するアンテナと、アンテナに給電する給電部と、アンテナが受信した反射波と健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分信号に基づいて、差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する演算部と、演算部によって取得された周波数成分と時間情報とに基づいて、周波数成分と時間との関係を導出する導出部と、導出部が導出した周波数成分と時間との関係に基づいて、褥瘡の有無を判定する判定部と、判定部による褥瘡の有無の判定結果を出力する出力部とを備え、アンテナは、生体と非接触に設置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体へマイクロ波を送信し、送信した前記マイクロ波の反射波を受信するアンテナと、
前記アンテナに給電する給電部と、
前記アンテナが受信した前記反射波と健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分信号に基づいて、前記差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する演算部と、
前記演算部によって取得された前記周波数成分と前記時間情報とに基づいて、前記周波数成分と時間との関係を導出する導出部と、
前記導出部が導出した前記周波数成分と前記時間との関係に基づいて、褥瘡の有無を判定する判定部と、
前記判定部による褥瘡の有無の判定結果を出力する出力部と
を備え、
前記アンテナは、前記生体と非接触に設置される、褥瘡検出装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記差分信号をフーリエ変換又はウェーブレット変換することによって、前記差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する、請求項1に記載の褥瘡検出装置。
【請求項3】
前記導出部は、前記差分信号をフーリエ変換又はウェーブレット変換した結果に基づいてスペクトログラム又はスカログラムを作成し、
前記判定部は、前記導出部が作成した前記スペクトログラム又は前記スカログラムに基づいて、褥瘡の有無を判定する、請求項2に記載の褥瘡検出装置。
【請求項4】
前記導出部が作成した前記スペクトログラム又は前記スカログラムから取得される信号強度の最大値と、信号強度の最大値と褥瘡のサイズとを関係づけた情報とに基づいて、褥瘡のサイズを導出するサイズ導出部
をさらに有する、請求項3に記載の褥瘡検出装置。
【請求項5】
前記導出部が作成した前記スペクトログラム又は前記スカログラムから使用周波数帯での時間分布を導出し、導出した使用周波数帯での前記時間分布と褥瘡の前記サイズとに基づいて所定の閾値への到達時間を取得し、取得した前記到達時間と、時間と褥瘡の体積とを関係づけた情報とに基づいて、褥瘡の体積を導出する体積導出部
をさらに有する、請求項4に記載の褥瘡検出装置。
【請求項6】
前記サイズ導出部は、導出した褥瘡の前記サイズを示す情報と、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との複数の組み合わせとに基づいて、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせを取得する、請求項4に記載の褥瘡検出装置。
請求項5に記載の褥瘡検出装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記サイズ導出部が取得した褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の前記組み合わせと、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との複数の組み合わせとに基づいて、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との一又は複数の組み合わせを取得し、取得した褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との一又は複数の前記組み合わせと、前記体積導出部が導出した褥瘡の前記体積とに基づいて、褥瘡のステージを導出する、請求項6に記載の褥瘡検出装置。
【請求項8】
アンテナに給電するステップと、
生体へマイクロ波を送信するステップと、
送信した前記マイクロ波の反射波を受信するステップと、
前記アンテナが受信した前記反射波と健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分信号に基づいて、前記差分信号から周波数成分と時間情報を取得するステップと、
前記取得するステップで取得した前記周波数成分と前記時間情報とに基づいて、前記周波数成分と時間との関係を導出するステップと、
前記導出するステップで導出した前記周波数成分と前記時間との関係に基づいて、褥瘡の有無を判定するステップと、
前記判定するステップによる褥瘡の有無の判定結果を出力するステップと
を有し、
前記アンテナは、前記生体と非接触に設置される、褥瘡検出装置が実行する褥瘡検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、褥瘡検出装置及び褥瘡検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
褥瘡とは,長時間皮膚に圧力がかかり、血流が低下することで生じる局所的な皮膚及び皮下組織の損傷である。米国褥瘡諮問委員会(NPUAP: National Pressure Ulcer Advisory Panel)、ヨーロッパ褥瘡諮問委員会(EPUAP: European Pressure Ulcer Advisory Panel)により、褥瘡はその損傷の深度によりステージIからステージIVの4つステージに分類されている。褥瘡は、早期に対処を行うことでその治療期間を短くすることが可能である。
【0003】
褥瘡を検出するシステムに関して、生体へマイクロ波を送信し、送信したマイクロ波の反射波を受信するアンテナと、アンテナに給電する給電部と、アンテナが受信した反射波に基づいて、褥瘡を検出する検出部と、検出部が検出した褥瘡の検出結果を出力する出力部とを備える褥瘡検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-029292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、褥瘡とアンテナとの間の距離が変化すると褥瘡の有無の判別が不安定となる。このため、実環境で使用しにくい。
【0006】
本発明は、前述した問題を解決すべくなされたもので、褥瘡の有無の判別精度を向上できる褥瘡検出装置及び褥瘡検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、生体へマイクロ波を送信し、送信した前記マイクロ波の反射波を受信するアンテナと、前記アンテナに給電する給電部と、前記アンテナが受信した前記反射波と健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分信号に基づいて、前記差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する演算部と、前記演算部によって取得された前記周波数成分と前記時間情報とに基づいて、前記周波数成分と時間との関係を導出する導出部と、前記導出部が導出した前記周波数成分と前記時間との関係に基づいて、褥瘡の有無を判定する判定部と、前記判定部による褥瘡の有無の判定結果を出力する出力部とを備え、前記アンテナは、前記生体と非接触に設置される、褥瘡検出装置である。
本発明の一実施形態は、前述の褥瘡検出装置において、前記演算部は、前記差分信号をフーリエ変換又はウェーブレット変換することによって、前記差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する。
本発明の一実施形態は、前述の褥瘡検出装置において、前記導出部は、前記差分信号をフーリエ変換又はウェーブレット変換した結果に基づいてスペクトログラム又はスカログラムを作成し、前記判定部は、前記導出部が作成した前記スペクトログラム又は前記スカログラムに基づいて、褥瘡の有無を判定する。
本発明の一実施形態は、前述の褥瘡検出装置において、前記導出部が作成した前記スペクトログラム又は前記スカログラムから取得される信号強度の最大値と、信号強度の最大値と褥瘡のサイズとを関係づけた情報とに基づいて、褥瘡のサイズを導出するサイズ導出部をさらに有する。
本発明の一実施形態は、前述の褥瘡検出装置において、前記導出部が作成した前記スペクトログラム又は前記スカログラムから使用周波数帯での時間分布を導出し、導出した使用周波数帯での前記時間分布と褥瘡の前記サイズとに基づいて所定の閾値への到達時間を取得し、取得した前記到達時間と、到達時間と褥瘡の体積とを関係づけた情報とに基づいて、褥瘡の体積を導出する体積導出部をさらに有する。
本発明の一実施形態は、前述の褥瘡検出装置において、前記サイズ導出部は、導出した褥瘡の前記サイズを示す情報と、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との複数の組み合わせとに基づいて、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせを取得する。
本発明の一実施形態は、前述の褥瘡検出装置において、前記出力部は、前記サイズ導出部が取得した褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の前記組み合わせと、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との複数の組み合わせとに基づいて、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との一又は複数の組み合わせを取得し、取得した褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との一又は複数の前記組み合わせと、前記体積導出部が導出した褥瘡の前記体積とに基づいて、褥瘡のステージを導出する。
【0008】
本発明の一実施形態は、アンテナに給電するステップと、生体へマイクロ波を送信するステップと、送信した前記マイクロ波の反射波を受信するステップと、前記アンテナが受信した前記反射波と健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分信号に基づいて、前記差分信号から周波数成分と時間情報とを取得するステップと、前記取得するステップで取得した前記周波数成分と前記時間情報とに基づいて、前記周波数成分と時間との関係を導出するステップと、前記導出するステップで導出した前記周波数成分と前記時間との関係に基づいて、褥瘡の有無を判定するステップと、前記判定するステップによる褥瘡の有無の判定結果を出力するステップとを有し、前記アンテナは、前記生体と非接触に設置される、褥瘡検出装置が実行する褥瘡検出方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、褥瘡の有無の判別精度を向上できる褥瘡検出装置及び褥瘡検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る褥瘡検出装置の一例を示す図である。
図2】実施形態の褥瘡検出装置の一例を示すブロック図である。
図3】反射波情報の一例を示す図である。
図4】生体組織の一例を示す図である。
図5】生体組織のモデル化の一例を示す図である。
図6】褥瘡のモデル化の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る褥瘡検出装置の処理の一例を示す図である。
図8】本実施形態に係る褥瘡検出装置の処理の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係る褥瘡検出装置処理の一例を示す図である。
図10】本実施形態に係る褥瘡検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図11】実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置の一例を示すブロック図である。
図12】実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置の処理を説明するための図である。
図13】実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置の処理を説明するための図である。
図14】実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置の処理を説明するための図である。
図15】実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態に係る褥瘡検出装置及び褥瘡検出方法を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0012】
(実施形態)
(褥瘡検出装置)
以下、本発明の実施形態に係る褥瘡検出装置を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る褥瘡検出装置100の一例を示す図である。
実施形態に係る褥瘡検出装置100は、患者PAなどの生体の部位に褥瘡が発生している場合に、その褥瘡を検出する。以下、生体の一例として、患者PAを適用した場合について説明を続ける。
【0013】
褥瘡検出装置100は、アンテナ102と、制御装置110とを備える。アンテナ102と制御装置110との間は、給電線104によって接続される。また、図1には、患者PAが、ベッド30に載置されたマットレス20上に、頭部を枕10に載せて、横たわっている様子が示されている。アンテナ102は、ベッド30と、そのベッド30の上に載置されているマットレス20との間に設置される。
【0014】
褥瘡検出装置100を使用して褥瘡を検出しようとする者(以下「ユーザー」ともいう)が、アンテナ102を、患者PAの褥瘡を検出する部位の下に設置し、制御装置110に対して、褥瘡を検出する操作を行う。この操作によって、制御装置110からアンテナ102へ、給電線104を経由して、高周波電力が供給される。図1には、仙骨部を、褥瘡を検出する部位の一例とした場合が示される。
アンテナ102は、制御装置110によって供給された高周波電力により、マイクロ波を送信する。アンテナ102から送信されたマイクロ波は、患者PAの褥瘡を検出する部位へ照射される。マイクロ波が、褥瘡を検出する部位へ照射され、照射されたマイクロ波が褥瘡で反射されることによって、反射波が生じる。その反射波は、アンテナ102により捕らえられることによって受信される。アンテナ102が反射波を捕らえることによって発生した高周波電力は、アンテナ102から制御装置110へ供給される。
【0015】
制御装置110は、アンテナ102によって供給された高周波電力と、健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分を求めることによって、差分信号を取得する。ここで、健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波は予め用意されている。制御装置110は、取得した差分信号を周波数成分と時間情報とに分解し、周波数成分と時間情報とを取得する。制御装置110は、取得した周波数成分と時間情報とに基づいて、周波数成分と時間との関係を導出する。制御装置110は、導出した周波数成分と時間との関係に基づいて、褥瘡の有無を判定する。制御装置110は、褥瘡の有無の判定結果を出力する。
以下、褥瘡検出装置100に含まれるアンテナ102と、制御装置110とについて順次説明する。
【0016】
図2は、実施形態の褥瘡検出装置100の一例を示すブロック図である。
アンテナ102について説明する。アンテナ102の一例は、パッチアンテナなどの平面アンテナである。アンテナ102の動作周波数は、1GHzから10GHz帯である。また、アンテナ102の動作周波数は、24GHz帯であってもよい。アンテナ102の一例は、誘電体基板107と、その誘電体基板107の両面に形成された放射素子106と、地導体板108とを構成要素とする。放射素子106と、地導体板108とは、誘電体基板107に形成する場合に、印刷することによって形成してもよいし、金属箔、導電性布を貼り付けることによって形成してもよい。
【0017】
放射素子106は、長さがLa、幅がWで両端が開放されたマイクロストリップ線路と同等の構造を有しており、Laが1/4波長の整数倍に一致する周波数で共振する。また、アンテナ102は、アンテナ102に給電する給電部109を有する。アンテナ102は、その放射素子106がマットレス20を挟んで、患者PAの褥瘡を検出する部位と対向するように設置される。アンテナ102は、制御装置110が高周波電力を出力した場合に、出力した高周波電力によって、マイクロ波を送信する。
【0018】
制御装置110について説明する。制御装置110は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。
制御装置110は、例えば、アンテナ処理部115と、記憶部120と、情報処理部130と、表示部140と、操作部160と、電源部170と、各構成要素を図2に示されているように電気的に接続するためのアドレスバスやデータバスなどのバスライン150とを備える。
【0019】
アンテナ処理部115は、給電モジュールと、ネットワークアナライザとを含んで実現される。アンテナ処理部115は、情報処理部130が出力した給電部109へ給電することを示す情報を取得する。アンテナ処理部115は、取得した給電部109へ給電することを示す情報に基づいて、電源部170を使用して、給電線104を介して、給電部109へ、高周波電力を供給する。アンテナ処理部115は、アンテナ102が出力した高周波電力を取得し、取得した高周波電力をデジタイズする。アンテナ処理部115は、高周波電力をデジタイズした結果を、情報処理部130へ出力する。
【0020】
記憶部120は、例えば、RAM、ROM、HDD、フラッシュメモリ、またはこれらのうち複数が組み合わされたハイブリッド型記憶装置などにより実現される。記憶部120の一部または全部は、制御装置110の一部として設けられる場合に代えて、NAS(Network Attached Storage)や外部のストレージサーバなど、制御装置110のプロセッサがネットワーク(図示なし)を介してアクセス可能な外部装置により実現されてもよい。記憶部120には、情報処理部130により実行されるプログラム121と、アプリ122とが記憶される。また、記憶部120には、反射波情報123が記憶される。
【0021】
プログラム121は、例えば、オペレーティングシステムであり、ユーザーやアプリケーションプログラムとハードウェアの中間に位置し、ユーザーやアプリケーションプログラムに対して標準的なインターフェースを提供すると同時に、ハードウェアなどの各リソースに対して効率的な管理を行う。アプリ122については、後述する。
【0022】
反射波情報123について説明する。
図3は、反射波情報の一例を示す図である。反射波情報123は、患者の識別情報毎に、褥瘡検出装置100で褥瘡を検出する処理を行った日時と、その日時に褥瘡を検出する部位に送信したマイクロ波の反射波とを関連付けたテーブル形式の情報である。
図3に示される例では、患者の識別情報「AAA001」について、日時「****年**月**日」と反射波「***」とが関連付けられ、日時「++++年++月++日」と反射波「+++」とが関連付けられ、日時「####年##月##日」と反射波「###」とが関連付けられている。
反射波情報123には、褥瘡が検出される前から、日時と反射波との関連付けが記憶されているのが好ましい。褥瘡が検出される前から、日時と反射波との関連付けが記憶されていることによって、健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波を用意できる。図2に戻り説明を続ける。
【0023】
操作部160は、入力デバイスを備え、ユーザーの操作を受け付ける。この入力デバイスには、キーボード等の文字情報を入力するデバイス、マウス、タッチパネル等のポインティングデバイス、釦、ダイヤル、ジョイスティック、タッチセンサ、タッチパッド等が含まれる。
表示部140は、CPUなどのプロセッサによって制御され、画像、GUI(Graphical User Interface)などを表示する。この一例では、操作部160は、タッチパネルである。
電源部170は、制御装置110の各部に、電源を供給する。
【0024】
情報処理部130は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部120に格納されたプログラム121と、アプリ122とを実行することにより実現されるソフトウェア機能部である。なお、情報処理部130の全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
情報処理部130は、例えば、受付部131と、処理部132と、演算部133と、導出部134と、判定部135と、出力部136として機能する。
【0025】
受付部131は、ユーザーが操作部160に対して、褥瘡を検出する操作を行うことによって、操作部160が出力する褥瘡を検出することを示す情報を受け付ける。受付部131は、受け付けた褥瘡を検出することを示す情報を、処理部132へ出力する。具体的には、ユーザーは、患者PAの識別情報を入力し、褥瘡を検出する操作を行う。この操作によって、操作部160から、受付部131へ、患者PAの識別情報を含む褥瘡を検出することを示す情報が出力される。
【0026】
処理部132は、受付部131が出力した褥瘡を検出することを示す情報を取得し、取得した褥瘡を検出することを示す情報に基づいて、アンテナ処理部115に、給電部109へ給電することを示す情報を出力する。処理部132は、褥瘡を検出することを示す情報から、患者PAの識別情報を取得し、取得した患者PAの識別情報を、演算部133へ出力する。
【0027】
演算部133は、処理部132が出力した患者PAの識別情報を取得する。演算部133は、記憶部120に記憶されている反射波情報123から、取得した患者PAの識別情報に関連付けられる反射波を示す情報を取得する。ここで、演算部133が取得する反射波を示す情報は、患者PAに褥瘡が検出される前のものである。換言すれば、健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波を示す情報である。演算部133は、アンテナ処理部115が出力した高周波電力をデジタイズした結果を取得する。
演算部133は、取得した高周波電力をデジタイズした結果と、反射波情報123から取得した患者PAの識別情報に関連付けられる反射波を示す情報とに基づいて、高周波電力をデジタイズした結果と患者PAの識別情報に関連付けられる反射波との差分信号を求める。演算部133は、高周波電力をデジタイズした結果と患者PAの識別情報に関連付けられる反射波との差分信号を求める際に、時間を合わせるようにしてもよい。演算部133は、求めた差分信号を時間周波数解析することによって周波数成分と時間情報とに分解し、周波数成分と時間情報とを取得する。
【0028】
例えば、演算部133は、求めた差分信号を(短時間)フーリエ変換やウェーブレット変換することによって、差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する。以下、差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する処理の一例として、差分信号をウェーブレット変換する場合について説明を続ける。差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する処理の一例として、差分信号を(短時間)フーリエ変換する場合についても同様である。
ウェーブレット変換は、基底関数としてウェーブレット関数を使用した周波数解析であり、ウェーブレット(波のかけら)を伸縮・フィッティングさせる。ウェーブレット変換を行うことによって、対象の周波数成分と時間情報とを同時に取得できる。
【0029】
導出部134は、演算部133から周波数成分と時間情報とを取得する。導出部134は、取得した周波数成分と時間情報とに基づいて、周波数成分と時間との関係を導出する。周波数成分と時間との関係の一例は、スペクトログラムやスカログラムである。
スペクトログラムは、周波数スペクトルを時間と周波数および強度の3次元で表したものである。スカログラムは、周波数成分の時間変化を示す画像である。以下、一例として、導出部134が、周波数成分と時間との関係として、スカログラムを作成する場合について説明を続ける。導出部134が、周波数成分と時間との関係として、スペクトログラムを作成した場合についても同様である。
【0030】
判定部135は、導出部134が作成したスカログラムを取得する。判定部135は、取得したスカログラムに基づいて、褥瘡の有無を判定する。具体的には、判定部135は、導出部134から取得したスカログラムから、信号強度の最大値(以下「ピーク値」ともいう)を求め、求めたピーク値に基づいて褥瘡の有無を判定する。例えば、判定部135は、ピーク値が信号強度の閾値(以下「強度閾値」という)以上である場合に褥瘡が有ると判定し、ピーク値が強度閾値未満である場合に褥瘡が無いと判定する。判定部135は、褥瘡の有無の判定結果を示す情報を出力部136へ出力する。
出力部136は、判定部135が出力した褥瘡の有無の判定結果を示す情報を取得し、取得した褥瘡の有無の判定結果を示す情報を処理することによって、表示部140に、褥瘡の有無の判定結果を表示する。
【0031】
ここで、褥瘡の有無の判定する処理について説明する。最初に、生体組織について説明する。
図4は、生体組織の一例を示す図である。図4には、生体組織の縦断面の画像と、その生体組織を構成する各層とを示す。図4において、上図は健康な生体組織の一例を示し、下図は褥瘡が発生している生体組織の一例を示す。
図4の上図を参照して説明する。正常な生体組織の縦断面の一例は、骨202と、骨202上に積層されている筋肉層204と、筋肉層204の上に積層されている脂肪層206と、脂肪層206の上に積層されている皮膚層208とを含む。図4の例によれば、骨202の厚さは17.5mmであり、筋肉層204の厚さは2.2mmであり、脂肪層206の厚さは4.4mmであり、皮膚層208の厚さは3.5mmである。
【0032】
図4の下図を参照して説明する。褥瘡が発生している生体組織の縦断面の一例は、骨202と、筋肉層204と、脂肪層206と、皮膚層208とに加え、脂肪層206と皮膚層208との間に、血液層210が形成されている。血液層210の幅と位置は、褥瘡の損傷の深度を示すステージによって変化する。ここで、ステージIは、皮膚表面には損傷が無い状態である。ステージIIは、真皮までに損傷がとどまる状態である。ステージIIIは、脂肪組織まで損傷が及んでいる状態である。ステージIVは、損傷が、骨、腱、筋肉の露出を伴っている状態である。
【0033】
次に、生体組織のモデル化について説明する。図4に示される生体組織の一例に基づいて、生体組織のモデル化を行った。生体組織のモデル化は、生体組織を構成する各層の厚みに基づいて行った。
図5は、生体組織のモデル化の一例を示す図である。図5において、左図は健康な生体組織のモデル化の一例を示し、右図は褥瘡が発生している生体組織のモデル化の一例を示す。また、図5において、皮膚層208をX軸とY軸とによって示し、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸とする。また、皮膚層208から骨202へ向かう方向をZ軸の正の方向とする。
【0034】
図5の左図を参照して、健康な生体組織のモデル化の一例を説明する。健康な生体組織モデルの一例は、骨202mと、骨202mのZ軸のマイナス方向に形成された筋肉層204mと、筋肉層204mのZ軸のマイナス方向に形成された脂肪層206mと、脂肪層206mのZ軸のマイナス方向に形成された皮膚層208mとを含む。ここで、骨202mの厚さを17.6mmとし、筋肉層204mの厚さを2.2mmとし、脂肪層206mの厚さを4.40mmとし、皮膚層208mの厚さを3.4mmとした。ここで、長さは、Z軸方向の長さである。
さらに、皮膚層208mのZ軸のマイナス側には、空気層220mが形成される。空気層220mの厚さを、30.0mmとした。空気層220mを挟んで、健康な生体組織モデルの皮膚層208mと対向する位置にアンテナ102が形成される。健康な生体組織モデルのXY平面の面積を、100mm×100mmとした。
【0035】
図5の右図を参照して、褥瘡が発生している生体組織のモデル化の一例を説明する。褥瘡が発生している生体組織モデルの一例は、骨202mと、骨202mのZ軸のマイナス方向に形成された筋肉層204mと、筋肉層204mのZ軸のマイナス方向に形成された脂肪層206mと、脂肪層206mのZ軸のマイナス方向に形成された皮膚層208mとに加え、筋肉層204mの一部分と脂肪層206mの一部分との間に形成された血液層210mを含む。血液層210mから、皮膚層208mまでのZ軸方向の部分は、皮膚層208mとは、性質が異なることが多いため、欠陥範囲212mとされる。ここで、骨202mの厚さを17.6mmとし、筋肉層204mの厚さを2.2mmとし、脂肪層206mの厚さを4.40mmとし、皮膚層208mの厚さを3.4mmとし、血液層210mの厚さを1.00mmとした。
さらに、皮膚層208mのZ軸のマイナス側には、空気層220mが形成される。空気層220mの厚さを、30.0mmとした。空気層220mを挟んで、褥瘡が発生している生体組織モデルの皮膚層208mの欠陥範囲212mと対向する位置にアンテナ102が形成される。褥瘡が発生している生体組織モデルのXY平面の面積を、100mm×100mmとした。血液層210mのXY平面の面積を、Lmm×Lmmとした。
【0036】
図6は、褥瘡のモデル化の一例を示す図である。図6は、欠損部の形状のモデル化の一例を示す。図6において、図5と同様の座標軸とする。
褥瘡モデルの一例は、血液層210mを含む。血液層210mのZ軸のマイナス方向は空気層220mである。血液層210mの厚さは1.0mmとし、血液層210mと空気層220mとを合わせた厚さはdmmとした。ここで、長さは、Z軸方向の長さである。血液層210mのXY平面の面積を、Lmm×Lmmとした。
dが2.6mmの場合はステージ2であり、dが3.4mmの場合はステージ2.5(ステージ2とステージ3の中間状態:皮膚層欠損)であり、dが5.8mmの場合はステージ3であり、dが7.8mmの場合はステージ3.5(ステージ3とステージ4の中間状態:脂肪層欠損)であり、dが8.8mmの場合はステージ4であり、dが10mmの場合はステージ4.5(ステージ4とステージ5の中間状態:筋肉層欠損)であるとした。Lは、20、25、30、35、40、45、50[mm]とした。
【0037】
健康な生体組織モデルと、褥瘡が発生している生体組織モデルとを用いて、アンテナ102からマイクロ波を生体組織へ照射した場合の反射波を求めるシミュレーションを行った。健康な生体組織モデルと、褥瘡が発生している生体組織モデルとにおいて、皮膚層208mのパラメータを、εr=32.94、σ=0.62S/mとし、脂肪層206mのパラメータを、εr=4.56、σ=0.62S/mとし、筋肉層204mのパラメータを、εr=42.08、σ=11.35S/mとし、骨202mのパラメータを、εr=7.96、σ=2.24S/mとし、血液層210mのパラメータを、εr=44.25、σ=13.95S/mとした。なお、εrは比誘電率であり、σは導電率である。マイクロ波の周波数は、10.5GHzとした。解析には、FIT法(Finite-Integration Technique method)を使用した。
【0038】
図7は、本実施形態に係る褥瘡検出装置100の処理の一例を示す図である。図7は、褥瘡検出装置100において、アンテナ処理部115が取得する反射波のシミュレーションの結果の一例を示す図である。入力波形はガウシアンパルスであり、参照データはCST:Port Signal o1,1である。
図7の左図は、褥瘡が発生している生体組織にマイクロ波が照射され、照射されたマイクロ波が褥瘡で反射されることによって生じる反射波の高周波電力の波形の一例である。図7の右図は、高周波電力をデジタイズした結果の一例である。図7において、横軸は時間[ns]で、縦軸は電圧(W^(1/2))である。
【0039】
図8は、本実施形態に係る褥瘡検出装置100の処理の一例を示す図である。図8は、褥瘡検出装置100において、演算部133が求める高周波電力をデジタイズした結果と健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分信号を示す図である。この差分信号が、褥瘡の波形を示す。つまり、差分信号の振幅が振幅閾値以上である場合には褥瘡が有ると判定してもよく、差分信号の振幅が振幅閾値未満である場合には褥瘡が無いと判定してもよい。
【0040】
図9は、本実施形態に係る褥瘡検出装置100の処理の一例を示す図である。図9において、左図は、演算部133が差分信号に対してウェーブレット変換を行うことによって取得される周波数成分と時間情報とに基づいて、導出部134が作成するスカログラムの一例である。図9の左図において、横軸はTime(時間)[ns]であり、縦軸はFrquency(周波数)[GHz]である。
図9において、右図は、導出部134から取得したスカログラムから、使用周波数帯での時間と信号強度との関係を抽出した結果の一例である。図9の右図において、横軸は時間[ns]であり、縦軸は信号強度である。判定部135は、スカログラムから(直接)ピーク値を求め、求めたピーク値に基づいて褥瘡の有無を判定する。
【0041】
(褥瘡検出装置の動作)
図10は、本実施形態に係る褥瘡検出装置100の動作の一例を示すフローチャートである。図10には、ベッド30に載置されたマットレス20上に、頭部を枕10に載せて、患者PAが横たわっており、患者PAの褥瘡を検出する部位の下で、且つベッド30とマットレス20との間に、ユーザーが、アンテナ102を設置した後の動作が示される。
【0042】
(ステップS1-1)
受付部131は、ユーザーが操作部160に対して、患者PAの識別情報を入力し、褥瘡を検出する操作を行うことによって、操作部160が出力する褥瘡を検出することを示す情報を受け付ける。受付部131は、受け付けた褥瘡を検出することを示す情報を、処理部132へ出力する。
処理部132は、受付部131が出力した褥瘡を検出することを示す情報を取得し、取得した褥瘡を検出することを示す情報に基づいて、アンテナ処理部115に、給電部109へ給電することを示す情報を出力する。また、処理部132は、褥瘡を検出することを示す情報から、患者PAの識別情報を取得し、取得した患者PAの識別情報を、演算部133へ出力する。
アンテナ処理部115は、情報処理部130が出力した給電部109へ給電することを示す情報を取得し、取得した給電部109へ給電することを示す情報に基づいて、アンテナ102へ高周波電力を出力する。アンテナ102は、制御装置110が高周波電力を出力した場合に、出力した高周波電力によって、マイクロ波を送信する。
【0043】
(ステップS2-1)
アンテナ102から送信されたマイクロ波は、患者PAの褥瘡を検出する部位へ照射される。マイクロ波が、褥瘡を検出する部位へ照射され、照射されたマイクロ波が褥瘡で反射されることによって、反射波が生じる。アンテナ102は、その反射波を捕らえ、捕らえた反射波によって、高周波電力を発生する。アンテナ102は、発生した高周波電力を、制御装置110へ出力する。
【0044】
(ステップS3-1)
演算部133は、処理部132が出力した患者PAの識別情報を取得する。演算部133は、記憶部120に記憶されている反射波情報123から、取得した患者PAの識別情報に関連付けられる反射波を示す情報を取得する。
アンテナ処理部115は、アンテナ102が出力した高周波電力をデジタイズする。アンテナ処理部115は、高周波電力をデジタイズした結果を、演算部133へ出力する。演算部133は、アンテナ処理部115が出力した高周波電力をデジタイズした結果を取得する。
演算部133は、取得した高周波電力をデジタイズした結果と、反射波情報123から取得した患者PAの識別情報に関連付けられる反射波を示す情報とに基づいて、高周波電力をデジタイズした結果と患者PAの識別情報に関連付けられる反射波との差分信号を求める。
【0045】
(ステップS4-1)
演算部133は、求めた差分信号をウェーブレット変換することによって、差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する。
(ステップS5-1)
導出部134は、演算部133が取得した周波数成分と時間情報とを取得する。導出部134は、取得した周波数成分と時間情報とに基づいて、スカログラムを導出する。
【0046】
(ステップS6-1)
判定部135は、導出部134が作成したスカログラムを取得する。判定部135は、取得したスカログラムからピーク値を抽出(取得)する。
(ステップS7-1)
判定部135は、抽出したピーク値に基づいて褥瘡の有無を判定する。
【0047】
(ステップS8-1)
判定部135は、褥瘡の有無の判定結果を示す情報を出力部136へ出力する。
出力部136は、判定部135が出力した褥瘡の有無の判定結果を示す情報を取得し、取得した褥瘡の有無の判定結果を示す情報を処理することによって、表示部140に、褥瘡の有無の判定結果を表示する。
【0048】
前述した実施形態では、アンテナ102と制御装置110とが、給電線104で接続されている場合について説明したが、この例に限られない。例えば、アンテナ102と制御装置110とが一体化されていてもよい。
前述した実施形態では、アンテナ102が放射するマイクロ波の周波数の一例として、10GHz帯である場合について説明したが、この例に限られない。例えば、10GHz帯に限らず、共振周波数周辺の周波数であってもよい。また、アンテナ処理部115は、高周波電力の周波数を切り替えることによって、アンテナ102が送信するマイクロ波の周波数を切り替えるようにしてもよい。
【0049】
前述した実施形態では、仙骨部を、褥瘡を検出する部位の一例とした場合について説明したが、この例に限られない。例えば、踵骨部、大転子部、腸骨部などの仙骨部以外の部位を、褥瘡を検出する部位としてもよい。
前述した実施形態において、アンテナ102を、導電性の繊維を含むパッチアンテナで構成してもよい。この場合、アンテナ102は、放射導体と、接地導体に導電性の布を使用したものであってもよい。導電性繊維は、銅被覆の表面にニッケル層を施したポリエステル繊維、アラミド繊維などを含む合成樹脂製布を使用してもよい。このように構成することによって、アンテナ102に柔軟性を持たせることができるため、アンテナ102を、設置しやすくできる。
前述した実施形態において、演算部133は、高周波電力をデジタイズした結果に基づいて近似曲線を作成してリサンプリングし、患者PAの識別情報に関連付けられる反射波に基づいて近似曲線を作成してサンプリングし、それらから差分信号を求めてもよい。
【0050】
本実施形態によれば、褥瘡検出装置100は、患者PAの褥瘡を検出する部位の下で、且つベッド30とマットレス20との間に設置されたアンテナ102から褥瘡を検出する部位へ、マイクロ波の送信を行う。褥瘡検出装置100は、送信したマイクロ波が褥瘡で反射することによって生じた反射波と健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分信号に基づいて、周波数成分と時間情報とを取得し、取得した周波数成分と時間情報とに基づいて、褥瘡の有無を判定する。
このように構成することによって、時間軸での反射波の信号強度を詳細に分析できるため、褥瘡とアンテナ102との間の距離が変化した場合でも、褥瘡の有無の判別ができる。このため、褥瘡の有無の判別精度を向上できるとともに、患者PAの寝心地を悪化させることなく、褥瘡の発生をモニタリングできる。
【0051】
マットレス20上に、横たわっている患者PAの褥瘡を検出する部位の下に、アンテナ102が設置されることによって、患者PAとアンテナ102とが直接触れることがないため、アンテナ102などのセンサが患者PAに触れることによる皮膚疾患、金属アレルギーへの懸念をなくすことができるため、看護者、介護者などのユーザーの負担を軽減できる。
また、非接触で、褥瘡を検出できるため、衛生的であり、患者PAの長時間のモニタリングが可能となる。マイクロ波を送信し、そのマイクロ波の反射波を利用するため、非侵襲で、褥瘡を検出できる。
【0052】
(実施形態の変形例1)
(褥瘡検出装置)
実施形態の変形例1の褥瘡検出装置100aは、図1を適用できる。褥瘡検出装置100aは、アンテナ102と、制御装置110aとを備える。アンテナ102と制御装置110aとの間は、給電線104によって接続される。褥瘡検出装置100aは、褥瘡検出装置100と、褥瘡の有無の判定に加えて、褥瘡のサイズと体積とを導出する点で異なる。
【0053】
ユーザーが、アンテナ102を、患者PAの褥瘡を検出する部位の下に設置し、制御装置110aに対して、褥瘡を検出する操作を行う。この操作によって、制御装置110aからアンテナ102へ、給電線104を経由して、高周波電力が供給される。
アンテナ102は、制御装置110aによって供給された高周波電力により、マイクロ波を送信する。アンテナ102から送信されたマイクロ波は、患者PAの褥瘡を検出する部位へ照射される。マイクロ波が、褥瘡を検出する部位へ照射され、照射されたマイクロ波が褥瘡で反射されることによって、反射波が生じ、その反射波は、アンテナ102により捕らえられる。アンテナ102が反射波を捕らえることによって発生した高周波電力は、アンテナ102から制御装置110aへ供給される。
制御装置110aは、アンテナ102によって供給された高周波電力に基づいて、褥瘡を検出する。制御装置110aは、高周波電力に基づいて、褥瘡のサイズと体積とを導出する。制御装置110aは、褥瘡の検出結果と、褥瘡を検出した場合には、褥瘡のサイズと褥瘡の体積とを示す情報を出力する。
以下、褥瘡検出装置100aに含まれるアンテナ102と、制御装置110aとのうち、実施形態と異なる制御装置110aについて説明する。
【0054】
図11は、実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置100aの一例を示すブロック図である。
(制御装置110a)
制御装置110aは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。
制御装置110aは、例えば、アンテナ処理部115と、記憶部120aと、情報処理部130aと、表示部140と、操作部160と、電源部170と、各構成要素を図11に示されているように電気的に接続するためのアドレスバスやデータバスなどのバスライン150とを備える。
記憶部120aには、情報処理部130aにより実行されるプログラム121と、アプリ122aとが記憶される。また、記憶部120aには、反射波情報123が記憶される。
【0055】
情報処理部130aは、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部120aに格納されたプログラム121と、アプリ122aとを実行することにより実現されるソフトウェア機能部である。なお、情報処理部130aの全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
情報処理部130aは、例えば、受付部131と、処理部132と、演算部133と、導出部134と、判定部135と、サイズ導出部137aと、体積導出部138aと、出力部136aとして機能する。
【0056】
サイズ導出部137aは、判定部135によって褥瘡が有ると判定された場合に、判定部135からピーク値を取得する。サイズ導出部137aは、取得したピーク値に基づいて、褥瘡のサイズを導出する。
図12は、実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置100aの処理を説明するための図である。図12において、横軸はMagnitude(信号強度)(ピーク値)であり、縦軸は褥瘡のサイズである。図12は、一例として、ステージ2について、Magnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとを関係づけた情報を示す。ここでは、褥瘡のサイズがXY平面上の一辺の長さLで表される場合について説明を続ける。
【0057】
図12によれば、ステージ2について、ピーク値と褥瘡のサイズとは比例することが分かる。このため、ステージを仮定することによって、ピーク値から褥瘡のサイズを導出できることが分かる。
図12には、一例として、ステージ2の場合について示したが、ステージ2以外の例えばステージ1、ステージ3、ステージ4の場合についても、ピーク値と褥瘡のサイズとは、傾きが異なる場合があるが比例する。一又は複数のステージの各々について、ピーク値と褥瘡のサイズとの関係が予め用意され、記憶部120aに記憶されている。
サイズ導出部137aは、一又は複数のステージの各々についてのMagnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとの関係から、ピーク値に対応する褥瘡のサイズを取得する。サイズ導出部137aは、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせを出力部136aに出力する。サイズ導出部137aは、褥瘡のサイズを示す情報を、体積導出部138aに出力する。
【0058】
図13は、実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置100aの処理を説明するための図である。図13は、Time(時間)とMagnitude(信号強度)とを関係づけた情報の一例を、複数の褥瘡のサイズについて示したものである。このTimeとMagnitudeとの関係は、導出部134が作成したスカログラムの使用周波数帯での時間分布である。
図13において、横軸はTime(時間)[ns]であり、縦軸はMagnitude(信号強度)である。図13は、一例として、4種類の褥瘡のサイズ(L=20、30、40、50[mm])の各々について示す。さらに、図13には、Magnitudeの閾値(以下「強度閾値」という)が破線で示されている。強度閾値の一例は、全てのデータがばらける値である。強度閾値は予め設定されている。ここでは、強度閾値の一例として、5×10^-3が設定されている場合について説明を続ける。
【0059】
図13において、(1)は褥瘡のサイズがL=50[mm]の場合に信号強度が閾値に到達するまでの時間を示し、(2)は褥瘡のサイズがL=40[mm]の場合に信号強度が閾値に到達するまでの時間を示し、(3)は褥瘡のサイズがL=30[mm]の場合に信号強度が閾値に到達するまでの時間を示し、(4)は褥瘡のサイズがL=20[mm]の場合に信号強度が閾値に到達するまでの時間を示す。
体積導出部138aは、導出部134が作成したスカログラムを取得し、取得したスカログラムから使用周波数帯での時間分布を導出する。体積導出部138aは、サイズ導出部137aが出力した褥瘡のサイズを示す情報を取得する。体積導出部138aは、導出した使用周波数帯での時間分布と取得した褥瘡のサイズを示す情報とに基づいて強度閾値への到達時間を示す情報を取得する。
【0060】
体積導出部138aは、取得した到達時間に基づいて、褥瘡の体積を導出する。
図14は、実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置100aの処理を説明するための図である。図14は、Time(時間)と褥瘡のVolume(体積)とを関係づけた情報の一例を示す。このTimeとVolumeとの関係は、予め用意されている。ここで、Timeの一例は、到達時間である。
図14において、横軸はTime[ns]であり、縦軸はVolume[mm^3]である。
体積導出部138aは、TimeとVolumeとの関係から、強度閾値への到達時間に対応する褥瘡の体積を求める。体積導出部138aは、褥瘡の体積を示す情報を出力部136aに出力する。
【0061】
出力部136aは、判定部135が出力した褥瘡の有無の判定結果を示す情報を取得する。さらに、出力部136aは、褥瘡の有無の判定結果が、褥瘡が有ることを示す場合に、サイズ導出部137aが出力したステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせを取得し、体積導出部138aが出力した褥瘡の体積を示す情報を取得する。
【0062】
出力部136aは、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせに基づいて、一又は複数のステージを特定する情報の各々について一又は複数の褥瘡のサイズと一又は複数の褥瘡のサイズの各々について褥瘡の体積とを関連付けた情報から、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせの各々に対応する褥瘡の体積を取得する。ここで、一又は複数のステージを特定する情報の各々について一又は複数の褥瘡のサイズと一又は複数の褥瘡のサイズの各々について褥瘡の体積とを関連付けた情報は予め用意され、記憶部120aに記憶されている。
【0063】
出力部136aは、取得した褥瘡の有無の判定結果を示す情報を処理することによって、表示部140に、褥瘡の有無の判定結果を表示する。さらに、出力部136aは、褥瘡の有無の判定結果が、褥瘡が有ることを示す場合に、
取得したステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせの各々に対応する褥瘡の体積のうち、体積導出部138aから取得した褥瘡の体積に近い値のものを取得する。出力部136aは、取得したものに対応するステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報とを取得する。出力部136aは、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報とを処理することによって、表示部140に、ステージと、褥瘡のサイズと、褥瘡の体積とを表示する。
【0064】
(褥瘡検出装置の動作)
図15は、実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置100aの動作の一例を示すフローチャートである。図15には、ベッド30に載置されたマットレス20上に、頭部を枕10に載せて、患者PAが横たわっており、患者PAの褥瘡を検出する部位の下で、且つベッド30とマットレス20との間に、ユーザーが、アンテナ102を設置した後の動作が示される。
ステップS1-2からステップS7-2は、図10を参照して説明したステップS1-1からステップS7-1を適用できる。
【0065】
(ステップS8-2)
判定部135は、褥瘡の判定結果が、褥瘡が有ることを示すか否かを判定する。
(ステップS9-2)
判定部135は、褥瘡の判定結果が、褥瘡が無いことを示す場合、褥瘡の判定結果を示す情報を出力部136aへ出力する。
出力部136aは、判定部135が出力した褥瘡の判定結果を示す情報を取得し、取得した褥瘡の判定結果を示す情報を処理することによって、表示部140に、褥瘡の有無の判定結果を表示する。
【0066】
(ステップS10-2)
サイズ導出部137aは、判定部135によって褥瘡が有ると判定された場合に、判定部135からピーク値を取得する。サイズ導出部137aは、取得したピーク値に基づいて、一又は複数のステージについてのMagnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとの関係の各々から、ピーク値に対応する褥瘡のサイズを取得する。
【0067】
(ステップS11-2)
体積導出部138aは、導出部134が作成したスカログラムを取得し、取得したスカログラムから使用周波数帯での時間分布を導出する。体積導出部138aは、サイズ導出部137aから褥瘡のサイズを示す情報を取得する。体積導出部138aは、導出した使用周波数帯での時間分布と取得した褥瘡のサイズを示す情報とに基づいて強度閾値への到達時間を取得する。体積導出部138aは、予め用意されているTimeとVolumeとの関係から、取得した到達時間に対応する褥瘡の体積を求める。
【0068】
(ステップS12-2)
サイズ導出部137aは、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との組み合わせを一又は複数出力部136aに出力する。体積導出部138aは、褥瘡の体積を示す情報を出力部136aに出力する。
出力部136aは、判定部135が出力した褥瘡の有無の判定結果を示す情報を取得する。出力部136aは、サイズ導出部137aが出力したステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせを取得し、体積導出部138aが出力した褥瘡の体積を示す情報を取得する。
出力部136aは、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせに基づいて、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズと褥瘡の体積とを関連付けた一又は複数の情報から、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせの各々に対応する褥瘡の体積を取得する。出力部136aは、取得したステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせの各々に対応する褥瘡の体積のうち、体積導出部138aから取得した褥瘡の体積に近い値のものを取得する。出力部136aは、取得したものに対応するステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報とを取得する。出力部136aは、ステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報とを処理することによって、表示部140に、ステージと、褥瘡のサイズと、褥瘡の体積とを表示する。
【0069】
(適用例)
実施形態の変形例に係る褥瘡検出装置100aの適用例について説明する。一例として、褥瘡が有ると判定された後の処理について説明する。
サイズ導出部137aは、判定部135によって褥瘡が有ると判定された場合に、判定部135からピーク値を取得する。例えば、サイズ導出部137aは、ピーク値として、0.0178を取得する。
【0070】
サイズ導出部137aは、取得したピーク値に基づいて、褥瘡のサイズを導出する。例えば、サイズ導出部137aは、ステージ2についてのMagnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとの関係(例えば図12)から、取得したピーク値0.0178に基づいて、褥瘡のサイズ39[mm]を取得する。
同様に、サイズ導出部137aは、ステージ2.5と仮定した場合には、ステージ2.5についてのMagnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとの関係から、取得したピーク値0.0178に基づいて、褥瘡のサイズ33[mm]を取得する。
【0071】
同様に、サイズ導出部137aは、ステージ3と仮定した場合には、ステージ3についてのMagnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとの関係から、取得したピーク値0.0178に基づいて、褥瘡のサイズ25[mm]を取得する。サイズ導出部137aは、ステージ3.5と仮定した場合には、ステージ3.5についてのMagnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとの関係から、取得したピーク値0.0178に基づいて、褥瘡のサイズ25[mm]を取得する。サイズ導出部137aは、ステージ4と仮定した場合には、ステージ4についてのMagnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとの関係から、取得したピーク値0.0178に基づいて、褥瘡のサイズ25[mm]を取得する。サイズ導出部137aは、ステージ4.5と仮定した場合には、ステージ4.5についてのMagnitude(ピーク値)と褥瘡のサイズとの関係から、取得したピーク値0.0178に基づいて、褥瘡のサイズ25[mm]を取得する。
サイズ導出部137aは、取得したステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせを出力部136aに出力する。
【0072】
出力部136aは、サイズ導出部137aが出力したステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせを取得する。
ステージを特定する情報と褥瘡のサイズと褥瘡の体積とが予め関連付けられている。例えば、(1)ステージ2と褥瘡のサイズ39[mm]と褥瘡の体積3955[mm^3]とが関係づけられ、(2)ステージ2.5と褥瘡のサイズ33[mm]と褥瘡の体積3703[mm^3]とが関係づけられ、(3)ステージ3と褥瘡のサイズ25[mm]と褥瘡の体積3625[mm^3]とが関係づけられている。例えば、(4)ステージ3.5と褥瘡のサイズ25[mm]と褥瘡の体積4875[mm^3]とが関係づけられ、(5)ステージ4と褥瘡のサイズ25[mm]と褥瘡の体積5500[mm^3]とが関係づけられ、(6)ステージ4.5と褥瘡のサイズ25[mm]と褥瘡の体積6250[mm^3]とが関係づけられている。
出力部136aは、(1)から(6)に示される褥瘡を候補とする。
【0073】
体積導出部138aは、導出部134が作成したスカログラムを取得し、取得したスカログラムから使用周波数帯での時間分布(例えば図13)を導出する。体積導出部138aは、サイズ導出部137aから褥瘡のサイズを示す情報を取得する。体積導出部138aは、導出した使用周波数帯での時間分布と取得した褥瘡のサイズを示す情報とに基づいて強度閾値への到達時間を取得する。体積導出部138aは、TimeとVolumeとの関係(例えば図14)から、取得した到達時間に基づいて、褥瘡の体積を導出する。
例えば、体積導出部138aは、強度閾値への到達時間として、1.713[ns]を取得する。体積導出部138aは、取得した到達時間に基づいて、褥瘡の体積を導出する。例えば、体積導出部138aは、TimeとVolumeとの関係から、取得した到達時間1.713[ns]に基づいて、褥瘡の体積4048[mm^3]を取得する。体積導出部138aは、取得した褥瘡の体積を示す情報を出力部136aに出力する。
【0074】
出力部136aは、体積導出部138aが出力した褥瘡の体積を示す情報を取得する。出力部136aは、取得した褥瘡の体積4048[mm^3]に基づいて、(1)から(6)に示される褥瘡の候補の体積から、褥瘡の体積4048[mm^3]に最も近い候補を選択する。
この例では、体積導出部138aは、褥瘡の体積3955[mm^3]が褥瘡の体積4048[mm^3]に最も近いため、ステージ2と褥瘡のサイズ39[mm]を選択する。体積導出部138aは、選択したものを推定結果とする。出力部136aは、選択したステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報とを処理することによって、表示部140に、ステージと、褥瘡のサイズと、褥瘡の体積とを表示する。
実際には、褥瘡の深さは3.0[mm](ステージ2から2.5)で、褥瘡のサイズは35mmであった。推定結果との違いがあるが、この程度の違いは、褥瘡の評価には支障のない誤差である。その結果、褥瘡検出装置100aは、褥瘡の推定に使用できることが分かる。
【0075】
前述した実施形態の変形例では、褥瘡検出装置100aが、褥瘡のステージと褥瘡のサイズと褥瘡の体積とを出力する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、褥瘡検出装置100aが、褥瘡のステージと褥瘡のサイズと褥瘡の体積との少なくとも一つを出力するようにしてもよい。
前述した実施形態に変形例において、褥瘡検出装置100aは、褥瘡のサイズと褥瘡の体積とに基づいて、褥瘡の深さを導出する深さ導出部を有するようにしてもよい。出力部136aは、深さ導出部が導出した褥瘡の深さを示す情報を出力するようにしてもよい。
【0076】
実施形態の変形例によれば、褥瘡検出装置100aは、スカログラムから信号強度の最大値を取得し、取得した信号強度の最大値に基づいて、褥瘡のサイズを導出できる。
このように構成することによって、時間軸での信号強度を詳細に分析できるため、褥瘡とアンテナ102との間の距離が変化した場合でも、褥瘡のサイズを導出できる。このため、褥瘡のサイズの導出精度を向上できるとともに患者PAの寝心地を悪化させることなく、褥瘡のサイズをモニタリングできる。
【0077】
褥瘡検出装置100aは、スカログラムから使用周波数帯での時間分布を導出し、導出した使用周波数帯での時間分布と褥瘡のサイズとに基づいて所定の閾値への到達時間を取得し、取得した到達時間に基づいて、褥瘡の体積を導出する。
このように構成することによって、時間軸での信号強度を詳細に分析できるため、褥瘡とアンテナ102との間の距離が変化した場合でも、褥瘡の体積を導出できる。このため、褥瘡の体積の導出精度を向上できるとともに患者PAの寝心地を悪化させることなく、褥瘡の体積をモニタリングできる。
【0078】
褥瘡検出装置100aは、スカログラムから信号強度の最大値を取得し、取得した信号強度の最大値に基づいて、褥瘡のステージと褥瘡のサイズとの一又は複数の候補に絞ることができる。この時点で、想定されるステージ数だけ候補がある。褥瘡検出装置100aは、ステージと褥瘡のサイズとの一又は複数の組み合わせに基づいて、ステージと褥瘡のサイズと褥瘡の体積とを関連付けた一又は複数の情報から、ステージと褥瘡のサイズとの一又は複数の組み合わせの各々に対応する褥瘡の体積を取得する。
褥瘡検出装置100aは、スカログラムから使用周波数帯での時間分布を導出し、導出した使用周波数帯での時間分布と褥瘡のサイズとに基づいて所定の閾値への到達時間を取得し、取得した到達時間に基づいて、褥瘡の体積を導出する。
褥瘡検出装置100aは、取得したステージと褥瘡のサイズとの一又は複数の組み合わせの各々に対応する褥瘡の体積のうち、導出した褥瘡の体積に近い値のものを取得し、取得したものに対応するステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報とを取得できる。このため、褥瘡の体積の導出結果に基づいて、先の候補から、一意にステージが特定できる。
【0079】
<構成例>
一構成例として、生体へマイクロ波を送信し、送信したマイクロ波の反射波を受信するアンテナ(実施形態では、アンテナ102)と、アンテナに給電する給電部(実施形態では、給電部109)と、アンテナが受信した反射波と健康な生体へマイクロ波を送信した場合に得られる反射波との差分信号に基づいて、差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する演算部と、演算部によって取得された周波数成分と時間情報とに基づいて、周波数成分と時間との関係を導出する導出部と、導出部が導出した周波数成分と時間との関係に基づいて、褥瘡の有無を判定する判定部と、判定部による褥瘡の有無の判定結果を出力する出力部とを備え、アンテナは、生体と非接触に設置される、褥瘡検出装置である。
一構成例として、演算部は、差分信号をフーリエ変換又はウェーブレット変換することによって、差分信号から周波数成分と時間情報とを取得する。
一構成例として、導出部は、差分信号をフーリエ変換又はウェーブレット変換した結果に基づいてスペクトログラム又はスカログラムを作成し、判定部は、導出部が作成したスペクトログラム又はスカログラムに基づいて、褥瘡の有無を判定する。
一構成例として、導出部が作成したスペクトログラム又はスカログラムから取得される信号強度の最大値と信号強度の最大値と褥瘡のサイズとを関係づけた情報とに基づいて、褥瘡のサイズを導出するサイズ導出部をさらに有する。
一構成例として、導出部が作成したスペクトログラム又はスカログラムから使用周波数帯での時間分布を導出し、導出した使用周波数帯での前記時間分布と褥瘡の前記サイズとに基づいて所定の閾値への到達時間を取得し、取得した到達時間と、到達時間と褥瘡の体積とを関係づけた情報とに基づいて、褥瘡の体積を導出する体積導出部をさらに有する。
一構成例として、前記サイズ導出部は、導出した褥瘡の前記サイズを示す情報と、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との複数の組み合わせとに基づいて、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の組み合わせを取得する。
一構成例として、前記出力部は、前記サイズ導出部が導出した前記褥瘡のサイズ前記サイズ導出部が取得した褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報との一又は複数の前記組み合わせと、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との複数の組み合わせとに基づいて、褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との一又は複数の組み合わせを取得し、取得した褥瘡のステージを特定する情報と褥瘡のサイズを示す情報と褥瘡の体積を示す情報との一又は複数の前記組み合わせと、前記体積導出部が導出した褥瘡の前記体積とに基づいて、褥瘡のステージを導出する。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合わせを行うことができる。これら実施形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
なお、前述の制御装置110、制御装置110aは内部にコンピュータを有している。そして、前述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…枕、 20…マットレス、 30…ベッド、 100、100a…褥瘡検出装置、 102…アンテナ、 104…給電線、 106…放射素子、 107…誘電体基板、 108…地導体板、 109…給電部、 110、110a…制御装置、 115…アンテナ処理部、 120、120a…記憶部、 121…プログラム、 122、122a…アプリ、 123…反射波情報、 130、130a…情報処理部、 131…受付部、 132…処理部、 133…演算部、 134…導出部、 135…判定部、 136、136a…出力部、 137a…サイズ導出部、 138a…体積導出部、 140…表示部、 150…バスライン、 160…操作部、 170…電源部、 202、202m…骨、 204、204m…筋肉層、 206、206m…脂肪層、 208、208m…皮膚層、 210、210m…血液層、 212m…欠陥範囲、 220m…空気層
図1
図2
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図10
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