(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041002
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】印刷用紙用台紙、用紙パックおよび台紙製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/00 20060101AFI20240318BHJP
B42F 5/06 20060101ALI20240318BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20240318BHJP
B65D 83/08 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B65D85/00 D
B42F5/06 B
B65D77/00 C
B65D83/08 G
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145691
(22)【出願日】2022-09-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】393010318
【氏名又は名称】エレコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦上 朋子
(72)【発明者】
【氏名】児野 健亮
【テーマコード(参考)】
3E014
3E067
3E068
【Fターム(参考)】
3E014MC07
3E067AA12
3E067AB75
3E067AC03
3E067AC14
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067EA04
3E067EB17
3E067EE22
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD10
3E068AA40
3E068AB03
3E068AB07
3E068AC07
3E068BB12
3E068CC20
3E068CC22
3E068CE02
3E068CE03
3E068DD04
3E068DE20
3E068EE32
(57)【要約】
【課題】印刷用紙が複数枚封入された包装袋の中から、1枚または小数枚数の印刷用紙を取り出すことができる、印刷用紙用台紙および台紙製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の印刷用塗工紙20とともに梱包される台紙10であって、印刷用塗工紙20を挟持可能な挟持部15を備え、挟持部15は、台紙10の長辺Lの1/4の位置よりも外側に設けられた舌形状の切込み16により形成されたものである。切込み16の両端部は、台紙10の短辺Sと平行に設けられてもよい。挟持部15は、台紙10の長辺L方向の大きさmが台紙の0.03倍以上0.2倍以下であり、台紙10の短辺S方向の大きさnが台紙10の0.2倍以上0.5倍以下であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷用紙とともに梱包される台紙であって、
前記印刷用紙を挟持可能な挟持部を備え、
前記挟持部は、前記台紙の長辺Lの1/4の位置よりも外側に設けられた舌形状の切込みにより形成された、印刷用紙用台紙。
【請求項2】
前記印刷用紙は、少なくとも一方の表面に印刷用塗工層が積層された印刷用塗工紙である、請求項1に記載の印刷用紙用台紙。
【請求項3】
前記切込みの両端部は、前記台紙の短辺Sと平行に設けられる、請求項1に記載の印刷用紙用台紙。
【請求項4】
前記挟持部は、前記台紙の長辺L方向の大きさmが前記台紙の0.03倍以上0.2倍以下であり、前記台紙の短辺S方向の大きさnが前記台紙の0.2倍以上0.5倍以下である、請求項1に記載の印刷用紙用台紙。
【請求項5】
前記挟持部は、前記台紙の短辺S方向の大きさnが前記台紙の長辺L方向の大きさmの2倍以上6倍以下であり、
前記挟持部の舌形状は、2以上の変曲点を有する曲線で構成される、請求項1に記載の印刷用紙用台紙。
【請求項6】
前記挟持部は、前記台紙の両短辺Sにそれぞれ設けられる、請求項1に記載の印刷用紙用台紙。
【請求項7】
前記挟持部は、前記台紙の長辺Lの1/50の位置よりも内側に設けられる、請求項1に記載の印刷用紙用台紙。
【請求項8】
前記台紙の厚みは、0.2mm以上1.0mm以下である、請求項1に記載の印刷用紙用台紙。
【請求項9】
請求項1に記載の印刷用紙用台紙と複数の前記印刷用紙とが梱包された、用紙パック。
【請求項10】
前記印刷用紙は、一方の表面に印刷用塗工層が積層された写真印刷用の用紙であり、
前記印刷用紙用台紙は、前記印刷用紙の前記印刷用塗工層と反対側に配置される、請求項9に記載の用紙パック。
【請求項11】
請求項1に記載の印刷用紙用台紙の製造方法であって、
基紙から複数の前記台紙を打ち抜くとともに前記台紙に前記挟持部を形成する、打抜工程を含む、台紙製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙とともに同梱される印刷用紙用台紙および台紙製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙の包装体から印刷用紙を取り出す方法として、以下のものが提案されている。
例えば、特許文献1(特開2017-186060号公報)には、複数枚が重なった紙やポリ袋などの薄いシートを、一枚だけ取り出すために用いられる用具が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の用具は、摩擦体がベース上に接合されている用具を、重なったシート上に置くものであり、摩擦体の下部に該当するベースには開口部があり、摩擦体を指で押し下げると、摩擦体は開口部から下方へ突き出て、用具下の一枚目のシートと接触するものである。指をシートの取り出し方向へ動かすと、指と連動して摩擦体と一枚目とが移動し、重なったシートの端面から、一枚目の先端だけが突き出た状態になるので、指先で容易につまむことができ、取り出すことができるものである。
【0004】
特許文献2(特開平10-119475号公報)には、ひきだしや書類ケースなどに積み重ねて収納された書類を取り出しやすくする、書類ケースの書類取り出し具が提案されている。
【0005】
特許文献2に記載の書類ケースの書類取り出し具は、シートの一方の一端を折りまげ、垂直に立てたつまみ部を設け、つまみ部の表面に滑り止めを設け、シートの他方の裏面に粘着テープを設けるものである。
【0006】
特許文献3(実用新案登録第3134352号公報)には、インクジェット記録用紙包装体からインクジェット記録用紙を取り出すに際し、包袋の開口部を封じるフラップの粘着材が用紙に接触して該用紙の特殊コーティングに損傷を与えず、包袋内の容部に対する該用紙の収容及び取出を行うことができるインクジェット記録用紙包装体が提案されている。
【0007】
特許文献3に記載のインクジェット記録用紙包装体は、包袋の開口部に、粘着材を付設したフラップにより開口部を封じる第1閉塞部を備え、第1閉塞部に平行に且つ第1閉塞部よりも包袋の容部側に位置して、合成樹脂製の凸部及び凹部により形成したファスナーからなる第2閉塞部を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-186060号公報
【特許文献2】特開平10-119475号公報
【特許文献3】実用新案登録第3134352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、印刷用紙は、10枚~数百枚程度の印刷用紙が封筒状に加工された樹脂フィルムまたは紙の中に包装されて、流通または販売されている。
近年印刷用紙の改良が進み、市販のインクジェットプリンタ等を用いて、写真用、DM用、冊子用、チラシ用、ラベル用など様々な用途に応じた印刷物が作成できるよう専用の用紙が開発されている。そして、これらの印刷用紙の多くは印刷用塗工紙が採用されており、基紙の少なくとも一方の表面に印刷用塗工層が形成されて、用途に応じたグロス性またはマット性など独特の質感が付与されるとともに、インクまたはトナーの定着性が高い印刷用塗工層が形成されている。
しかしながら、印刷用紙に印刷をするにあたり、印刷用塗工紙が複数枚封入された包装袋の中から、印刷用塗工紙を1枚または小数枚数のみ取り出すのは容易ではない。印刷用塗工紙の塗工面は接着性があるため紙の取出しが難しく、特に、印刷用塗工面に指が触れないようにして紙を取り出すのは困難であった。
【0010】
特許文献1の用具は、複数枚が重なった用紙の一番上の一枚だけを取り出すものであるが、用紙の束を包装袋から一度出す必要があり、また、専用の用具を使用する必要があるため、実用的ではないという問題がある。また、用紙を上から押さえて取り出す構造であるため、印刷用塗工層に損傷を与える可能性がある。さらに、一枚目の先端が突き出た状態にすることができても、結局用紙を指でつまむ必要があるため、印刷塗工面に指が触れてしまうという問題がある。
【0011】
また、特許文献2の書類取出し具は、裏面に粘着テープを用いて書類ケース等に貼り付けるものであるため、樹脂フィルムまたは紙などの封筒状の包装に用いることができないという問題がある。また、書類を取り出しやすくしたとしても、結局用紙を指でつまむ必要があるため、印刷塗工面に指が触れてしまうという問題がある。
【0012】
また、特許文献3のインクジェット記録用紙包装体は、束体が厚紙の台紙で囲繞して包袋内に封入することが記載されているが、その束体の用紙全てを印刷機に入れる場合はともかく、束体の中から1枚のみを取り出して印刷機にセットする場合には、結局用紙を指でつまむ必要があるため、印刷塗工面に指が触れてしまうという問題がある。
【0013】
しかしながら、印刷用紙が複数枚封入された包装袋の中から、1枚または小数枚数の印刷用紙を取り出すにあたり、印刷用塗工層が形成された面を指で触ると、手の水分および油分が印刷面に移り、これにより印字不良を起こすという問題が生じる。
また、印刷用塗工層はトナーまたはインクの受容性が高い材料が使用されるため、印刷面に一度指が触れると、印字不良の解消は困難になるという問題がある。また、一度指が触れた印刷用塗工層は、インクの受容性が落ちるため、印刷機の内部汚れの原因となり、印刷機の不良の原因となるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、印刷用紙が複数枚封入された包装袋の中から、1枚または小数枚数の印刷用紙を取り出すことができる、印刷用紙用台紙および台紙製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、印刷用塗工面に触れることなく印刷用紙を取り出すことができる、印刷用紙用台紙および台紙製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、印刷用塗工面に触れることなく印刷用紙を印刷機にセットすことができる、印刷用紙用台紙および台紙製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)
一局面に従う印刷用紙用台紙は、複数の印刷用紙とともに梱包される台紙であって、印刷用紙を挟持可能な挟持部を備え、挟持部は、台紙の長辺Lの1/4の位置よりも外側に設けられた舌形状の切込みにより形成されたものである。
【0016】
これにより、利用者は、舌形状の切込みからなる挟持部を指で押し込むことにより、印刷用紙が複数枚封入された包装袋の中から、印刷に必要な小数枚数の印刷用紙を、印刷用塗工層に指を触れることなく取り出すことができる。
すなわち、10枚~数百枚程度の印刷用紙と本発明の印刷用紙用台紙とが同封された用紙パックの包装体から、利用者は台紙を挟持部が見える程度に抜き出して、挟持部を台紙の裏側(印刷用紙の裏面側)から指で押し込みつつ舌形状を印刷用紙に差し込んで、台紙に隣接した印刷用紙の1枚または数枚を挟持部で挟むことができる。
【0017】
これにより、舌形状の挟持部を介して印刷用紙を指でつまむことができるので、印刷用塗工層に指を触れることがなく包装袋から印刷用紙を台紙とともに取り出すことができる。さらに、台紙の挟持部を介して摘まんだ印刷用紙は、印刷機の用紙トレイにそのままセットすることも可能であり、包装袋内の取り出しから印刷機へのセットまで一連の作業において、印刷用塗工層に指を触れることなく作業を行うことができる。
【0018】
また、挟持部は、既存の台紙に切込みを形成することのみで構成されるので、台紙の他に別の構成部材または部品を必要としないので、環境保護の点でも優れている。
【0019】
(2)
第2の発明に係る印刷用紙用台紙は、一局面の発明に係る印刷用紙用台紙であって、印刷用紙は、少なくとも一方の表面に印刷用塗工層が積層された印刷用塗工紙であってもよい。
【0020】
これにより、インクの受容性が高い材料で構成される印刷面に、指が触れることがないため、印字不良の問題を解消することができる。また、指が触れた印刷用塗工層の上に印字をすることで発生する印刷機の内部汚れの問題も、解消することができる。
【0021】
(3)
第3の発明に係る印刷用紙用台紙は、一局面または第2の発明に係る印刷用紙用台紙であって、切込みの両端部は、台紙の短辺Sと平行に設けられてもよい。
【0022】
これにより、挟持部は印刷用紙用台紙の短辺側に設けられ、かつ、挟持部の舌形状は印刷用紙用台紙の短辺側から内側に向くように形成される。よって、利用者は、印刷用紙用台紙の短辺側を内側(印刷用紙の側)に捩じることにより、台紙の短辺側が軸となり折り曲げられて、舌形状の先端部を印刷用紙側に突き出させることができる。
したがって、利用者は、舌形状の先端部を自身の爪のように扱うことができるので、多数の印刷用紙が梱包された用紙パックの包装体の中から、印刷に必要な印刷用紙を容易に取り出すことができる。
【0023】
(4)
第4の発明に係る印刷用紙用台紙は、一局面から第3の発明のいずれかに係る印刷用紙用台紙であって、挟持部は、台紙の長辺L方向の大きさmが台紙の0.03倍以上0.2倍以下であり、台紙の短辺S方向の大きさnが台紙の0.2倍以上0.5倍以下であってもよい。
【0024】
これにより、舌形状の大きさが台紙に添えられる印刷用紙の大きさの所定範囲であるので、利用者は、舌形状の先端部を自身の爪のように扱うことができる。また、挟持した印刷用紙を確実に摘まんで用紙パックの包装体から取り出すことができるとともに、印刷用紙を空中で保持しつつ印刷機等に投入することが容易となる。
【0025】
(5)
第5の発明に係る印刷用紙用台紙は、一局面から第4の発明のいずれかに係る印刷用紙用台紙であって、挟持部は、台紙の短辺S方向の大きさnが台紙の長辺L方向の大きさmの2倍以上6倍以下であり、挟持部の舌形状は、2以上の変曲点を有する曲線で構成されてもよい。
【0026】
これにより、舌形状の大きさおよび形状が所定の範囲であるので、利用者は、舌形状の先端部を自身の爪のように扱うことができる。したがって、必要な印刷用紙をより確実に摘まんで用紙パックの包装体から取り出すことができるとともに、印刷用紙を空中で保持しつつ印刷機等に投入することがより容易となる。また、台紙を用いて繰り返し挟持したとしても、挟持部の機能を維持することができる。
【0027】
(6)
第6の発明に係る印刷用紙用台紙は、一局面から第5の発明のいずれかに係る印刷用紙用台紙であって、挟持部は、台紙の両短辺Sにそれぞれ設けられてもよい。
【0028】
これにより、用紙パックの包装体から印刷用紙を両方向で取り出すことができる。また、用紙パックを製造する工程において、印刷用紙用台紙の配置方向がいずれの方向としても不具合が生じない。
【0029】
(7)
第7の発明に係る印刷用紙用台紙は、一局面から第6の発明のいずれかに係る印刷用紙用台紙であって、挟持部は、台紙の長辺Lの1/50の位置よりも内側に設けられてもよい。
【0030】
これにより、挟持部は台紙の短辺側から所定距離Oだけ内側の位置に設けられるので、挟持された印刷用紙は、印刷用紙用台紙から所定距離Oはみ出して保持される。よって、印刷機の給紙トレイへのセットが容易となる。
【0031】
(8)
第8の発明に係る印刷用紙用台紙は、一局面から第7の発明のいずれかに係る印刷用紙用台紙であって、台紙の厚みは、0.2mm以上1.0mm以下であってもよい。
【0032】
これにより、印刷用紙用台紙は適度な弾力性を有するので、舌形状の挟持部が扱いやすくなるとともに、適度な剛性によって印刷用紙を支えて保持することができる。また、適度な剛性によって、印刷機の給紙トレイへのセットが容易となる。
【0033】
(9)
他の局面に従う用紙パックは、一局面の印刷用紙用台紙と複数の印刷用紙とが梱包された用紙パックである。
【0034】
これにより、複数枚封入された印刷用紙の用紙パックの中から、1枚または小数枚数の印刷用紙を取り出すことができる。
【0035】
(10)
第10の発明に係る用紙パックは、第9の発明に係る用紙パックであって、印刷用紙は、一方の表面に印刷用塗工層が積層された写真印刷用の用紙であり、印刷用紙用台紙は、印刷用紙の印刷用塗工層と反対側に配置されてもよい。
【0036】
これにより、複数枚封入された写真印刷用用紙の用紙パックの中から、1枚または小数枚数の写真印刷用用紙を取り出すことができる。また、印刷用塗工面に触れることなく写真印刷用用紙を取り出すことができ、さらに、印刷機の給紙トレイに確実にセットすことができる。
【0037】
(11)
他の局面に従う台紙製造方法は、一局面から第8の発明のいずれかに係る印刷用紙用台紙の製造方法であって、基紙から複数の台紙を打ち抜くとともに台紙に挟持部を形成する、打抜工程を含んでもよい。
【0038】
これにより、基紙から台紙を打ち抜くと同時に挟持部が形成されるので、1回の打ち抜き加工において、台紙の打ち抜き加工と挟持部の切込み加工とを同時にすることができる。
また、挟持部は台紙内に切込みを形成することのみで構成され、台紙の他に別の構成部材等を必要としない。したがって、基紙から台紙を打ち抜くにあたって、切り捨てられる廃棄部分および無駄が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施形態1の用紙パックの一例を説明するための、模式的説明図である。
【
図2】実施形態1の印刷用紙用台紙の一例を示した模式的説明図である。
【
図3】様々なサイズの印刷用紙用台紙の例を示した模式的平面図である。
【
図4】舌形状の切込み線の他の実施形態を例示する模式的平面図である。
【
図5】実施形態1の印刷用紙用台紙を製造する工程の一例を示した模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本実施形態の印刷用紙用台紙10は、複数の印刷用紙とともに梱包される台紙であって、印刷用紙を挟持可能な挟持部15を備え、挟持部15は、舌形状の切込み線16を有するものである。この印刷用紙用台紙10と複数の印刷用紙とは、用紙パック1として梱包され、流通または保管されている。
図1は、用紙パック1の一例を示した模式的説明図であり、実施形態1の印刷用紙用台紙10を用いて1枚の印刷用塗工紙20を取り出す操作の一例を示す図である。
図1に例示するように、本実施形態の印刷用紙用台紙10には、挟持部15が備えられ、挟持部15の舌形状の切込み線16を指で摘まむことにより、必要な印刷用塗工紙20を舌形状で挟んで用紙パック1から取り出すことができる。
用紙パック1に梱包される印刷用紙としては、インクジェットプリンタおよびレーザプリンタ等で多く用いられるマルチプリント紙、印刷用塗工層が塗工されてマット質の表面処理がされたスーパーファイン紙、印刷用塗工層が塗工されて光沢性の表面処理がされた光沢紙、さらに、色紙、和紙、透明な紙等の特殊用紙などが一般に存在する。これらの印刷用紙には、その目的に応じた印刷面が片面または両面に形成されている。
本実施形態の印刷用塗工紙20は、片側の表面のみに印刷用塗工層が積層されているため、印刷用塗工層の側に挟持部15の舌形状が位置すればよい。これにより、利用者は、印刷用紙用台紙10の舌形状部分と、印刷用塗工紙20の裏面とを2本の指(通常は親指と人差し指)で直接摘まむことで、印刷用塗工紙20を挟持することができるので、利用者の指が印刷用塗工層に直接触れることはない。
【0041】
印刷用塗工紙20の印刷用塗工層は、トナーまたはインクの受容性が高い材料が使用されるため、印刷面に一度指が触れると、印字不良の解消は困難になる。特に、写真印刷用用紙など、インクジェット印刷機用のカラー印刷用紙は、顔料が添加された水性インクの受容性が高くなるよう設計されており、そのような印刷用塗工層に指が触れると、指の油分および水分が印刷用塗工層に移り、インク等の受容性が落ちることになる。これにより、印字不良および、印刷機の内部汚れの原因となるため、従来は、利用者が手袋をはめるなどの対策がされていた。
また、L判写真サイズまたは葉書サイズの印刷用塗工紙20の場合、用紙の両端部を指で持つ場合もあり得るが、その場合は印刷用塗工紙20がカールして給紙不良を起こす問題が発生し、また、フチなし印刷を行った場合は指で持った部分は印字不良を起こすという問題が発生し、根本的な問題解決とはなっていなかった。さらに、印刷用塗工紙20のサイズが大きい場合は、用紙の両端部を指で挟んで持つことができないので、根本的な問題解決が望まれていた。
本実施形態の印刷用紙用台紙10によれば、利用者の指が印刷用塗工層に直接触れることがなく、用紙パック1から印刷用塗工紙20を取り出すことができ、さらに取り出した印刷用塗工紙20を印刷機の給紙トレイ等にセットすることができるので、印刷不良を防止し、印刷機の故障を防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態の印刷用塗工紙20は、写真印刷用の用紙を用いる場合について記載するが、本発明の印刷用塗工紙20はこれに限られず、DM用、冊子用、チラシ用、ラベル用、名刺印刷用、シール印刷用、アイロン転写用など様々な用途に応じた印刷用塗工紙20を用いることができる。
写真印刷用の用紙を用いる場合、厚みは例えば0.10mm以上0.50mm以下とすることができ、層構成の例としては、印刷用塗工層/ポリエチレン層/基紙層/ポリエチレン層、などを採用することができる。なお、写真印刷用の用紙は、様々なサイズが利用されており、
図3等で説明するサイズはその一例である。
このような印刷用塗工紙20の表面には、印刷用塗工層が形成されており、アルミナ・シリカなど毛細管吸収に優れた多孔性微粒子が積層されたもの、またはポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂が積層されたものなどを採用することができる。印刷用塗工層が形成されることで、インクジェットプリンタ等のインク受容性を高め、光沢性に優れ、画像保存性に優れた印刷用紙とすることができる。
【0043】
(印刷用紙用台紙10)
図2は、実施形態1の印刷用紙用台紙10の一例を示した模式的説明図である。
図2に示すように、本実施形態の印刷用紙用台紙10には、対向する2つの短辺S側にそれぞれ挟持部15が設けられており、挟持部15には舌形状の切込み線16が形成されている。
挟持部15は、印刷用紙用台紙10に設けられた長方形状の領域であり、舌形状の切込み線16が収まるように構成された領域である(
図2の点線で囲まれた領域)。
なお、
図2~4の例示では、印刷用紙用台紙10の短辺S側に挟持部15を2つ設けた例を示したが、挟持部15は印刷用紙用台紙10の一方の短辺Sに1つのみ設けられていてもよいし、用紙パック1の取り出し方向によっては、印刷用紙用台紙10の長辺L側に1つまたは2つ設けられていてもよいし、さらに、印刷用紙用台紙10に3つまたは4つ設けられていてもよい。
【0044】
印刷用紙用台紙10の素材は、樹脂製または紙製とすることができる。合成樹脂としてはシート加工が容易な、PPシートまたはPETシート等を使用することができる。また、紙製の場合、チップボール、クラフトボール、コートボール、ノーコートボール、コートアイボリー、段ボール、高級板紙、特殊板紙、非木材紙、間伐材紙等を使用することができる。また、紙の上に樹脂が積層されるなど複合材料の印刷用紙用台紙10とすることもできる。プラスチック使用量削減の観点からは、紙製の印刷用紙用台紙10とすることが好ましい。また、紙製のうち、強度および弾性に優れ価格手にも優位という観点からは、コートボール紙を用いることが好ましい。
なお、本実施形態では、コートボール紙を用いた単層の印刷用紙用台紙10を用いたが、必要に応じて表面に耐水・耐油・耐熱・抗菌・印刷等の機能を付与した複合シートを用いてもよい。また、印刷用塗工紙20との摩擦力を適宜調節するための表面処理または凹凸形成処理を施した印刷用紙用台紙10を用いてもよい。
【0045】
印刷用紙用台紙10の厚みは、印刷用塗工紙20より厚くすることが好ましい。また、本実施形態の印刷用紙用台紙10の厚みは、0.2mm以上1.0mm以下とすることが好ましく、0.3mm以上0.8mm以下とすることがより好ましく、0.3mm以上0.5mmとすることがさらに好ましい。これにより、適度な弾力性を有するので、舌形状の挟持部15が扱いやすくなるとともに、印刷用塗工紙20を支えて保持することができる。
本実施形態の印刷用紙用台紙10の大きさは、印刷用塗工紙20と同じ大きさ、または、各辺が1mm以上5mm以内の範囲で大きいサイズとすることが好ましい。具体的には、一般的に規格化された用紙サイズである、A3サイズ(297×420mm)、A4サイズ(210×297mm)、B5サイズ(182×257mm)、2Lサイズ(127×178mm)、L判サイズ(89×127mm)、KGサイズ(102×152mm)、官製はがきサイズ(100×148mm)など、および、これらの規格サイズの各辺が2mm程度大きなサイズを適宜採用することができる。
また、本実施形態の印刷用紙用台紙10の他の例としては、DVDおよびCDなどのメディアに貼り付け可能なメディアラベル用紙の台紙とすることができる。メディアラベル用紙の台紙の例としては、148mm×148mmのサイズまたは、これらの不定形サイズから各辺が2mm程度大きなサイズを適宜採用することができる。これにより、貼り付けるメディア(直径116mmの円)より広い範囲で印刷ができるので、フチがなく印刷されて美観性に優れたメディアにすることができる。
【0046】
(挟持部15)
挟持部15は、印刷用紙用台紙10内に設けられ、印刷用塗工紙20を挟持して、用紙パック1から取り出すことができ、かつ、印刷用塗工紙20を保持することができるよう構成されている。本実施形態の挟持部15は、
図2の点線で示すように、内部に舌形状の切込み線16が形成されている。この切込み線16によって、印刷用塗工紙20を挟持して保持することができる。
挟持部15は、印刷用紙用台紙10の長辺Lにおいて、1/4の位置(4/16の位置)よりも外側に設けられることが好ましく、3/16の位置よりも外側に設けられることがより好ましい。そして、用紙のサイズがA4サイズ以上の場合は、1/8の位置(2/16の位置)よりも外側に設けられることがさらに好ましい。これにより、印刷用塗工紙20を確実に挟持しつつ保持することができる。なお、
図2の例においては、印刷用紙用台紙10は297×420mm(A3)のサイズであり、挟持部15の内側の点線の位置(舌形状の切込み線16の頂点の位置)が、印刷用紙用台紙10の長辺Lの1/8の位置に設けられている。
【0047】
挟持部15は、長方形または正方形の矩形状であり、長辺nと短辺mとからなる長方形であることが好ましく、長辺nは印刷用紙用台紙10の短辺Sと平行に設けられることが好ましい。また、挟持部15は、短辺Sの中央に設けられることが好ましい。これにより、利用者は、印刷用紙用台紙10の短辺側を印刷用塗工紙20の側に捩じることにより、挟持部15折り曲げられて、印刷用塗工紙20を容易に挟持することができる。
この場合、挟持部15の長辺nは、短辺mの2倍以上6倍以下とすることが好ましく、3倍以上5倍以下とすることがより好ましく、3.5倍以上4.5倍以下とすることがさらに好ましい。これにより、挟持部15の寸法比率が好ましくなり、印刷用塗工紙20を挟持しかつ保持しやすくなる。
また、挟持部15は、印刷用紙用台紙10の長辺Lにおいて、1/50の位置よりも内側に設けられることが好ましく、1/25の位置(2/50の位置)よりも内側に設けられることがより好ましい。これにより、挟持された印刷用塗工紙20は、印刷用紙用台紙10から所定の距離だけはみ出して保持されるので、印刷機の給紙トレイへのセットが容易となる。
【0048】
図3は、様々な印刷用塗工紙20のサイズに対応した印刷用紙用台紙10と、その場合の挟持部15の最適なサイズを例示したものである。
図3の(a)はA3サイズ、(b)はA4サイズ、(c)は2L判サイズ、(d)はL判サイズ、(e)は官製はがきサイズの一例である。
印刷用紙用台紙10がA3サイズの場合、挟持部15の長辺nは74.25mm以上148.5mm以下とすることが好ましく、短辺Sは15mm以上50mm以下とすることが好ましく、印刷用紙用台紙10の短辺Sからの距離Oは10mm以上50mm以下とすることが好ましい。
また、印刷用紙用台紙10がA4サイズの場合、挟持部15の長辺nは52.5mm以上105mm以下とすることが好ましく、短辺Sは10mm以上50mm以下とすることが好ましく、印刷用紙用台紙10の短辺Sからの距離Oは10mm以上50mm以下とすることが好ましい。
また、印刷用紙用台紙10が2L判サイズの場合、挟持部15の長辺nは31.75mm以上63.5mm以下とすることが好ましく、短辺Sは7mm以上50mm以下とすることが好ましく、印刷用紙用台紙10の短辺Sからの距離Oは8mm以上50mm以下とすることが好ましい。
また、印刷用紙用台紙10がL判サイズの場合、挟持部15の長辺nは22.25mm以上44.5mm以下とすることが好ましく、短辺Sは7mm以上50mm以下とすることが好ましく、印刷用紙用台紙10の短辺Sからの距離Oは8mm以上50mm以下とすることが好ましい。
また、印刷用紙用台紙10が官製はがきサイズの場合、挟持部15の長辺nは37mm以上74mm以下とすることが好ましく、短辺Sは7mm以上50mm以下とすることが好ましく、印刷用紙用台紙10の短辺Sからの距離Oは8mm以上50mm以下とすることが好ましい。
印刷用紙用台紙10のサイズが大きい場合は、印刷用塗工紙20を保持しやすくなるよう、利用者は複数の指を用いて挟持部15を操作することが好ましい。また、印刷用紙用台紙10のサイズが小さい場合も、利用者が挟持部15を操作できるよう所定範囲のサイズを確保することが好ましい。
なお、
図3では本実施形態の舌形状の切込み線16を用いた場合について例示したが、
図4等に例示するように、様々な実施形態の切込み線16に適用することができる。
【0049】
(舌形状の切込み線16)
挟持部15は、舌形状の切込み線16により形成されたものである。そして、本実施形態の舌形状の切込み線16は、
図2および
図3に示すように、2つの変曲点P1,P2を有する曲線で構成され、3つの曲率円r1,r2,r3が曲線に対して交互に配置されるものである。
この場合、曲率円r1の曲率半径はr2,r3の曲率半径よりも大きいことが好ましく、曲率円r2とr3とは同じ曲率半径であることが好ましい。そして、曲率円r1の曲率半径は、曲率円r2,r3の曲率半径の2倍以上5倍以下が好ましく、3倍以上4倍以下がより好ましい。
これにより、利用者は、舌形状の先端部を自身の爪のように扱うことができる。
【0050】
(他の実施形態)
図4は、舌形状の切込み線16の他の実施形態を例示する模式的平面図である。
図4(a)の切込み線16は、実施形態2の切込み線16であり、円弧からなる切込み線16が形成されている。
図4(b)の切込み線16は、実施形態3の切込み線16であり、所定の曲率半径の曲線と2本の直線とからなる切込み線16が形成されている。
図4(c)の切込み線16は、実施形態4の切込み線16であり、山形状の矩形と2本の直線とからなる切込み線16が形成されている。
図4(d)の切込み線16は、実施形態5の切込み線16であり、コ字状の矩形からなる切込み線16が形成されている。
各実施形態の印刷用紙用台紙10を作成して、用紙パック1から印刷用塗工紙20を1枚または2枚取り出す操作を繰り返し行い、台紙の耐久性、操作容易性、用紙選択容易性を評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
評価の結果、実施形態1の印刷用紙用台紙10(
図1~3)は、挟持動作を繰り返し行った場合も劣化したり傷んだりすることがなく、挟持するための動作もスムーズで最小限とすることができ、また、複数の印刷用塗工紙20の中から必要な印刷用塗工紙20を引っ掛けるようにして選択することができる点で、特に優れていた。
実施形態2の印刷用紙用台紙10(
図4の(a))は、切込み線16の形状が単純であるため加工が容易である。一方で、挟持の動作を繰り返すと切込み線16の端部が痛む場合があった。
実施形態3の印刷用紙用台紙10(
図4の(b))は、2本の直線があることにより、印刷用塗工紙20を十分に保持することができる。一方で、挟持するための動作が大きくなり、また、印刷用塗工紙20のサイズが大きいと、差し込み動作の際に印刷用塗工紙20が曲がる場合がある。
実施形態4の印刷用紙用台紙10(
図4の(c))は、先端が尖っているため印刷用塗工紙20を1枚選択することが容易となる。一方で、舌形状の先端が鋭利に尖りすぎると、挟持の作業を繰り返すと先端部分が痛む場合がある。
実施形態5の印刷用紙用台紙10(
図4の(d))は、印刷用塗工紙20を広い面積で挟持して確実に保持することができる。一方で、先端が直線であるため、印刷用塗工紙20を引っ掛けるようにして数枚を選択することが困難な場合がある。
【0053】
図5は、実施形態1の印刷用紙用台紙10を製造する工程の一例を示した模式的説明図である。印刷用紙用台紙10は、大判の基紙を打抜加工装置100で打ち抜くことにより、印刷用紙用台紙10を一度に複数枚作成することができる。
この場合、基紙から複数の印刷用紙用台紙10を打ち抜くと同時に、各印刷用紙用台紙10に舌形状の切込み線16を有する挟持部15を形成することができる。
これにより、1回の打ち抜き加工において、印刷用紙用台紙10の打ち抜き加工と挟持部15の切込み加工とを同時にすることができる。
また、挟持部15は台紙内に切込みを形成することのみで構成されるので、印刷用紙用台紙10は連続的に排出されて、切り捨てられる廃棄部分等の無駄が生じない。
【0054】
図5では、実施形態1の印刷用紙用台紙10を製造する方法の一例を示したが、印刷用紙用台紙10を製造する方法は、この方法に限られない。
例えば、基紙に対して挟持部15を打ち抜き加工で複数形成し(第1の打抜加工)、挟持部15が形成された基紙を複数枚重ねて打ち抜き加工をすることにより(第2の打抜加工)、大量の印刷用紙用台紙10を纏めて製造することもできる。
【0055】
本発明においては、用紙パック1が「用紙パック」に相当し、印刷用紙用台紙10および台紙10が「印刷用紙用台紙」に相当し、印刷用塗工紙20が「印刷用紙」に相当し、挟持部15が「挟持部」に相当し、切込み線16が「切込み」に相当する。
【0056】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 用紙パック
10 印刷用紙用台紙
15 挟持部
16 切込み線
20 印刷用塗工紙
100 打抜加工装置