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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041004
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】音発生装置および音発生方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 5/00 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
B60Q5/00 650D
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 660Z
B60Q5/00 650A
B60Q5/00 650B
B60Q5/00 650C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145696
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】堀部 剛治
(57)【要約】
【課題】優先度の高い保護対象物に、効果的に警報を発することが可能な音発生装置および音発生方法を提供する。
【解決手段】1つまたは複数のスピーカ(10)と、車両(50)の周囲の保護対象物を検知するLiDAR(53)と、を備え、保護対象物の位置または方向に応じて、1つまたは複数のスピーカ(10)を切り替えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のスピーカと、
移動体の周囲の保護対象物を検知する対象物検知部と、を備え、
前記保護対象物の位置または方向に応じて、前記1つまたは複数のスピーカを切り替えることを特徴とする音発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音発生装置であって、
前記対象物検知部の検知結果に基づいて保護対象物を特定する保護対象物特定部と、
前記保護対象物に対する警報音発生の要否を判定する警報判定部と、
警報音発生が要の場合、前記1つまたは複数のスピーカに対応させて前記移動体の周囲に設定された1つまたは複数の検知領域と、前記保護対象物との位置関係に基づいて、警報音を発生させる1つまたは複数の前記スピーカを制御する制御部と、をさらに備えることを特徴とする音発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の音発生装置であって、
前記1つまたは複数のスピーカの各々は、前記移動体に配置された1つまたは複数の移動体用灯具の各々の内部に配置されたことを特徴とする音発生装置。
【請求項4】
請求項2に記載の音発生装置であって、
前記制御部は、警報音を発生させる前記スピーカが1個の場合、当該スピーカから予め定められた音圧の警報音を発生させ、警報音を発生させる前記スピーカが複数の場合、当該複数のスピーカの各々から発生させる音圧の合成値が前記予め定められた音圧となるように制御することを特徴とする音発生装置。
【請求項5】
請求項2に記載の音発生装置であって、
前記対象物検知部は前記移動体の周囲に検知光を出射し、
前記保護対象特定部は、前記保護対象物表面における前記検知光の複数の反射点データに基づいて前記保護対象物を特定することを特徴とする音発生装置。
【請求項6】
請求項5に記載の音発生装置であって、
前記対象物検知部は、前記移動体の周囲の走査ごとに1フレームの前記反射点データを取得し、
前記警報判定部は、前後の前記フレームを比較して前記保護対象物と前記移動体との相対的な進行方向を特定し、前記保護対象物と前記移動体とが相対的に接近している場合に警報音発生が要と判定することを特徴とする音発生装置。
【請求項7】
請求項2に記載の音発生装置であって、
前記対象物検知部は前記保護対象物までの距離を計測し、
前記制御部は、警報音発生が要の場合、前記距離に応じて前記警報音の大きさおよび周波数の少なくとも一方を調整して前記警報音を発生させる1つまたは複数の前記スピーカを制御することを特徴とする音発生装置。
【請求項8】
移動体の周囲の保護対象物を検知する対象物検知工程と、
前記保護対象物の位置または方向に応じて、1つまたは複数のスピーカを切り替えるスピーカ切り替え工程と、を有することを特徴とする音発生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音発生装置および音発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両から外部に向けて警報を発する音発生装置が注目されている。この背景のひとつとして、昨今の電動モータのみを動力源とし、このモータにより電気走行する電気自動車(EV車)の開発が進められていることが挙げられる。電気自動車はほぼ無音で走行するため周囲の注意を引きにくい。そのため、車両から注意を喚起する警報音を故意に発生させる目的で、音発生装置が用いられる場合がある。
【0003】
音発生装置の従来技術の一例として例えば、車両周辺の人へ車両の車速情報および距離情報を知らせることを目的として、警報音を発するとき、該警報音の音量を一定としつつ、車速が高いほど高周波数とする技術が知られている。また車両の運転状態を音によって歩行者や運転者に知らせることを目的とし、車両が走行可能状態であるときにスピーカを駆動させ、運転状態が変化したときに変化量に応じて音量、あるいは音質を変化させる技術も知られている。
【0004】
一方、特許文献1には、車両上に設置されるグローブ体に回転灯とスピーカを内蔵した車載警告灯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-267511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術に係る音発生装置では、警報を発する優先度の高い車両周辺の人等(以下、「保護対象物」という)を直接検知しているわけではないので、保護対象物に向けて直接警報を発することができず、危険の伝達という点で改善の余地があった。また、保護対象物の中には、例えば車両から遠ざかる方向に移動している等必ずしも警報を伝達する優先度が高くない保護対象物もある。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、優先度の高い保護対象物に、効果的に警報を発することが可能な音発生装置および音発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の音発生装置は、1つまたは複数のスピーカと、移動体の周囲の保護対象物を検知する対象物検知部と、を備え、前記保護対象物の位置または方向に応じて、前記1つまたは複数のスピーカを切り替えることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の音発生装置では、1つまたは複数のスピーカと、移動体の周囲の保護対象物を検知する対象物検知部と、を備え、保護対象物の位置または方向に応じて、1つまたは複数のスピーカを切り替える。このことにより、保護対象物の位置または方向を特定して、警報を発することができる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記対象物検知部の検知結果に基づいて保護対象物を特定する保護対象物特定部と、前記保護対象物に対する警報音発生の要否を判定する警報判定部と、警報音発生が要の場合、前記1つまたは複数のスピーカに対応させて前記移動体の周囲に設定された1つまたは複数の検知領域と、前記保護対象物との位置関係に基づいて、警報音を発生させる1つまたは複数の前記スピーカを制御する制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記1つまたは複数のスピーカの各々は、前記移動体に配置された1つまたは複数の移動体用灯具の各々の内部に配置されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記制御部は、警報音を発生させる前記スピーカが1個の場合、当該スピーカから予め定められた音圧の警報音を発生させ、警報音を発生させる前記スピーカが複数の場合、当該複数のスピーカの各々から発生させる音圧の合成値が前記予め定められた音圧となるように制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記対象物検知部は前記移動体の周囲に検知光を出射し、前記保護対象特定部は、前記保護対象物表面における前記検知光の複数の反射点データに基づいて前記保護対象物を特定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記対象物検知部は、前記移動体の周囲の走査ごとに1フレームの前記反射点データを取得し、前記警報判定部は、前後の前記フレームを比較して前記保護対象物と前記移動体との相対的な進行方向を特定し、前記保護対象物と前記移動体とが相対的に接近している場合に警報音発生が要と判定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記対象物検知部は前記保護対象物までの距離を計測し、前記制御部は、警報音発生が要の場合、前記距離に応じて前記警報音の大きさおよび周波数の少なくとも一方を調整して前記警報音を発生させる1つまたは複数の前記スピーカを制御することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の音発生方法は、移動体の周囲の保護対象物を検知する対象物検知工程と、前記保護対象物の位置または方向に応じて、1つまたは複数のスピーカを切り替えるスピーカ切り替え工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、優先度の高い保護対象物に、効果的に警報を発することが可能な音発生装置および音発生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る音発生装置の配置の一例を示す上面図である。
図2】第1実施形態に係る音発生装置の、(a)は検知領域を示す上面図、(b)は検知領域と、使用するスピーカとの関係を規定するスピーカ割当の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る音発生装置の、スピーカからの警報音の発生態様の一例を示す上面図である。
図4】実施形態に係る音発生装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る音発生装置における、(a)は点群のグルーピングについて説明する概念図、(b)は点群による人の判別について説明する概念図である。
図6】(a)から(c)は実施形態に係るLiDARの走査において、人と車両が相対的に近づいている場合の、人の点群の移動を示す模式図、(d)は(a)から(c)を合成した模式図である。
図7】実施形態に係る音発生装置が実行する音発生処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る音発生装置の、(a)は検知領域を示す上面図、(b)は検知領域と使用するスピーカとの関係を規定するスピーカ割当の一例を示す図である。
図9】第3実施形態に係る音発生装置の、(a)は検知領域を示す上面図、(b)は検知領域と使用するスピーカとの関係を規定するスピーカ割当の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。以下の実施形態では、本実施形態に係る音発生装置を、車両等の移動体に搭載する形態を例示して説明する。また当該音発生装置のスピーカを、車両のヘッドランプおよびリアランプの内部に配置する形態を例示して説明する。しかしながら、これに限らず、例えばフロントランプの内部のみに配置する形態としてもよい。さらに、スピーカを車両用灯具とは無関係に、独立して配置する形態としてよい。
【0020】
以下の実施形態では、本実施形態に係る音発生装置を電気自動車に搭載する形態を例示して説明するが、これに限らず、エンジン車両やハイブリッド車両等に搭載する形態としてもよい。また、以下の実施形態では、音発生装置の警報音を保護対象物としての人に向けて発する形態を例示して説明するが、この場合の保護対象物には自転車に乗った人、あるいはキックボードを操作する人等を含む。なお、内部にスピーカを配置した車両用灯具は、SGL(Sound Generation Lamp)と称される場合がある。
【0021】
(第1実施形態)
図1から図7を参照して、本実施形態に係る音発生装置について説明する。図1は本実施形態に係る音発生装置1の一部であるスピーカ10FL、10FR、10RL、10RR、および対象物検知部としてのLiDAR(Light Detection And Ranging)53の車両50における配置の一例を示している。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る音発生装置1のスピーカ10FL、10FR、10RL、および10RRは、各々左方のフロントランプ51Lの内部、右方のフロントランプ51Rの内部、左方のリアランプ52Lの内部、および右方のリアランプ52Rの内部に配置されている。ここで、スピーカ10FL、10FR、10RL、および10RRを総称する場合は「スピーカ10」、フロントランプ51L、51Rを総称する場合は「フロントランプ51」、リアランプ52L、52Rを総称する場合は「リアランプ52」という。本実施形態に係るスピーカ10は、警報を伝達する優先度の高い保護対象物に向けて効果的に警報音を発生する観点から、所定の指向性を持ったスピーカがより好ましい。
【0023】
LiDAR53は、レーザ光を対象物に照射し、照射したレーザ光が対象物で反射して返ってくるまでの時間を計測し、対象物までの距離や方向を測定する測距装置である。図1に示すように、音発生装置1に係るLiDAR53は、一例として車両50の天井に配置されている。しかしながら、LiDAR53の配置位置は天井に限らず、走査範囲等を考慮して適切な位置に配置してよい。ここで、本実施形態では測距装置としてLiDAR53を用いる形態を例示して説明するがこれに限らず、カメラ、超音波センサ、ミリ波レーダ等を用いてもよい。
【0024】
図2を参照して、本実施形態に係る音発生装置1において設定する検知領域について説明する。本実施形態では、車両50の周囲に、保護対象物を検知する複数の検知領域を設定し、当該検知領域ごとに使用するスピーカ10を決定する。図2(a)は、この複数の検知領域A1からA8を示している。すなわち本実施形態では、LiDAR53を中心として略等角に8つの検知領域に区分し、各々の検知領域に使用するスピーカ10を割り当てる。ここで、図2(a)に示す検知領域A1からA8の設定方法は一例であって、スピーカ10とLiDAR53との位置関係、スピーカ10間の距離、スピーカ10の指向性等を勘案して自由に設定してよい。検知領域A1からA8は、データとして後述の記憶部26等の記憶部に記憶されている。また、検知領域のデータは、車種ごとに設定して、記憶部26等の記憶部に記憶させておいてもよい。
【0025】
図2(b)は、上記スピーカの割当の一例を示している。すなわち、検知領域A1において保護対象物が検知された場合は2個のスピーカ10FL、10FRを使用し(割当パターン1)、検知領域A2において保護対象物が検知された場合は1個のスピーカ10FRを使用し(割当パターン2)、検知領域A3において保護対象物が検知された場合は2個のスピーカ10FR、10RRを使用し(割当パターン3)、検知領域A4において保護対象物が検知された場合は1個のスピーカ10RRを使用し(割当パターン4)、検知領域A5において保護対象物が検知された場合は2個のスピーカ10RL、10RRを使用し(割当パターン5)、検知領域A6において保護対象物が検知された場合は1個のスピーカ10RLを使用し(割当パターン6)、検知領域A7において保護対象物が検知された場合は2個のスピーカ10FL、10RLを使用し(割当パターン7)、検知領域A8において保護対象物が検知された場合は1個のスピーカ10FLを使用する(割当パターン8)。
【0026】
図3は、割当パターン1による警報音の発生を模式的に示している。すなわち、図3に示す例では、検知領域A1において保護対象物としての人70が検知されたので、スピーカ10FLから警報音SFLを発し、スピーカ10FRから警報音SFRを発する。警報音の態様は、可聴音である限り特に限定されない。本実施形態に係る警報音は、車両50が近づいていることを人等の保護対象物に報知するものであるから、保護対象物に対してある程度危険を感じさせるものの、過度に恐怖を与えることは好ましくない。一例として、柔らかく加工した疑似エンジン音等を用いることができる。なお、本実施形態では、保護対象物の検知、警報音の発生に関して条件を設定しているが、当該条件の詳細に関しては後述する。
【0027】
ここで、スピーカ10から発する警報音の音圧について説明する。本実施形態に係る音発生装置1では、保護対象物に対して効果的に警報音を発するために、LiDAR53によって測距された保護対象物までの距離、方位に応じて、スピーカ10の音圧を設定する。ここで本実施形態では、前方を北とした場合の方角の各々を「方位」という。スピーカ10が1個の場合は、保護対象物までの距離に応じて予め定められた音圧に設定する。スピーカ10を2個使用する場合は、当該2個のスピーカの合成音の音圧が、スピーカ1個の場合の音圧と等しくなるように各スピーカ10の音圧を設定する。当該2個の音圧の配分は1:1に限らず、保護対象物の方位等に応じて適切に設定する。
【0028】
図4を参照して、音発生装置1の構成の一例について説明する。図4に示すように、音発生装置1は、制御部20、LiDAR53、およびスピーカ10FL、10FR、10RL、10RRを備えている。LiDAR53、およびスピーカ10の各々は、制御部20に接続されている。制御部20は、データ取得部21、データ処理部22、保護対象物特定部23、警報判定部24、制御信号生成部25、および記憶部26を含む。
【0029】
制御部20は、データ取得部21、データ処理部22、保護対象物特定部23、警報判定部24、制御信号生成部25、記憶部26,LiDAR53、およびスピーカ10を制御する制御部である。制御部20は、例えば図示しないCPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータである。
【0030】
データ取得部21は、LiDAR53によるレーザ光(以下、「検知光」という場合がある)走査の結果、車両50周囲の対象物表面から反射した反射光のデータを点群データとして取得する。すなわち本実施形態に係る「点群データ」とは、LiDAR53からの検知光によって形成された、対象物における反射点の集合をいう。また、データ取得部21は、LiDAR53から、対象物までの距離、対象物の方位を示すデータを取得する。データ処理部22は、データ取得部21から点群データを受け取り、所定の規則でグルーピングして、点群データを対象物ごとに分離する。保護対象物特定部23は、データ処理部22において分離された対象物ごとの点群データを受け取り、対象物の中から保護対象物を特定する。警報判定部24は、保護対象物特定部23から保護対象物のデータを受け取り、当該保護対象物が警報を発する優先度が高いか判定する。以下では、警報音を発する優先度の高い保護対象物を「要警報保護対象物」という場合がある。制御信号生成部25は、警報判定部24から要警報保護対象物の判定結果を受け取り、使用するスピーカ10の設定信号、発する警報音の種類、大きさ、周波数等の制御信号を生成する。記憶部26は、上記の検知領域A1~A8のデータ、警報音の音源等に関するデータ等を記憶する記憶手段であり、例えばROM、HDD等が用いられる。なお、本実施形態において、データ取得部21、データ処理部22、保護対象物特定部23、警報判定部24、および制御信号生成部25の各々はソフトウエアによって実現されているが、これに限らず、少なくとも一部についてASIC等のハードウエアによって実現してもよい。
【0031】
図5および図6を参照して、データ処理部22、保護対象物特定部23、および警報判定部24における処理について、より詳細に説明する。図5(a)は、本実施形態に係る点群のグルーピングについて説明する概念図、図5(b)は点群による人の判別について説明する概念図である。
【0032】
図5(a)は、車両50の周囲に存在する人70、電柱71、壁72に対して、どのように点群が形成されるかを概念的に示している。LiDAR53からは、レーザによる検知光が、周回して車両の周囲に照射されている。LiDAR53は、対象物表面に照射され、反射した検知光を受信することにより、当該対象物までの距離、対象物の方位等を計測する。本実施形態では、LiDAR53による1周の走査を「フレーム」という。すなわち、LiDAR53による走査は、フレームごとに更新される。
【0033】
図5(a)においては、人70に、周回する検知光の一部である検知光束L1が照射されることにより、人70の表面における点群PG1が形成される。同様に、検知光束L2により電柱71に対して点群PG2が、検知光束L3により壁72に対して点群PG3が形成される。データ処理部22は、この点群データを受け取り、点群全体の形状、大きさ、点と点との距離等から、同一の対象物に属すると思われる点群を区分けしてグルーピングを実行する。
【0034】
保護対象物特定部23は、点群の形状的な特徴から、保護対象物を特定する。図5(b)を参照して、保護対象物が人の場合の保護対象物の特定について説明する。図5(b)は、図5(a)に図示する人70の点群PG1を抜き出して示したものである。図5(b)には、点群PG1の幅W、奥行D(以下、「特徴量」という場合がある)を併せて示している。本実施形態では、人70で想定される特徴量を、予め記憶部26等の記憶手段に記憶させておく。幅W、奥行Dの具体的な数値は、例えばWが50cmから100cm程度、Dが30cmから60cm程度である。保護対象物特定部23は、特徴量が予め登録された範囲内である場合に、点群PG1が人70の点群であると判定する。保護対象物特定部23は以上のようにして保護対象物を特定する。特徴量は幅W、奥行Dに限らず検知光の照射態様等を勘案して適切に定めてよく、例えば幅Wだけであってもよい。保護対象物が、自転車に乗った人、キックボードを操作する人等複数ある場合は、保護対象物ごとに特徴量を規定し、記憶部26等に記憶させておく。
【0035】
次に図6を参照して、警報判定部24の動作について説明する。図6(a)から(c)は、人70(保護対象物)と特定された点群PG1の、連続する3フレームにおける移動状態を示している。つまり、図6(a)でやや遠方に存在した点群PG1―1が、図6(b)に示すPG1-2、図6(c)に示すPG1-3と徐々に車両50に近づいてくる様子を示している。ここで、保護対象物と車両50との接近については、保護対象物が車両50に近づいてくる場合のみならず、保護対象物が静止または車両から離間する方向に移動し(以下、「静止等」)、車両50が保護対象物に近づく場合も含まれる。
【0036】
図6(d)は、図6(a)から(c)を合成した図である。警報判定部24は、例えばまず点群PG1―1の距離、および方位を算出しておき、方向D1で示す点群PG1-1から点群PG1-2への移動から人70の移動方向、移動距離を算出する。警報判定部24は最低2フレームの走査データを用いて人70の移動方向を算出するが、これに限らず、何フレームの走査データを用いてもよい。例えば、さらに方向D2で示す点群PG1-2から点群PG1-3への移動も踏まえて人70の移動方向、移動距離を算出してもよい。警報判定部24は、この保護対象物の相対的な移動方向を、警報音発生の要否判定の一条件として用いる。すなわち、例えば保護対象物が相対的に車両50に近づいている場合に、警報音発生要と判定する。また、警報判定部24は、移動距離を加味した対象物までの距離データを警報音発生の要否判定の一条件として用いる場合もある。警報音発生要と判定する距離の条件は、予め記憶部26等の記憶手段に記憶させておいてもよい。
【0037】
さらに警報判定部24は、点群PG1-1から点群PG1-2への移動時間、移動距離、あるいは点群PG1-2から点群PG1-3への移動時間、移動距離から、人70の移動速度を算出することもできる。この人(保護対象物)の移動速度を、保護対象物特定部23における保護対象物特定の一条件として用いてもよい。すなわち、記憶部26に予め想定される保護対象物の移動速度を記憶させておき、記憶されている移動速度と点群の移動速度とを対比することにより、対象物が保護対象物であるか否か判定するようにしてもよい。この場合も保護対象物(人、自転車に乗った人、キックボードを操作する人等)ごとに、移動速度を記憶させておいてもよい。
【0038】
図7を参照して、本実施形態に係る音発生装置1が実行する音発生処理について説明する。図7は、本音発生処理を記述する音発生プログラムの処理の流れを示すフローチャートである、本音発生プログラムは、一例として図示しないROM等の記憶手段に記憶されており、CPUによって読み出され、RAM等に展開されて実行される。
【0039】
以下の説明では、音発生装置1に対して、すでに本音発生プログラムの実行開始の指示がなされているとする。実行開始の指示は、例えば制御部20が車両50のエンジンの始動を受信したタイミングとすることができる。また、制御部20のデータ取得部21はLiDAR53からの点群データを連続的、または間欠的に取得している。
【0040】
図7を参照して、ステップS10で、制御部20は点群データを取得するようにデータ取得部21を制御する。
【0041】
ステップS11で、制御部20は、点群データをグルーピングするようにデータ処理部22を制御する。
【0042】
ステップS12で、制御部20は、保護対象物を特定するように保護対象物特定部23を制御する。制御部20は、保護対象物特定の結果に基づき、保護対象物があるか否か判定する。当該判定が肯定判定となった場合はステップS13に移行する。一方否定判定となった場合は、ステップS10に戻り、点群データの取得を継続する。
【0043】
ステップS13で、制御部20は、保護対象物が相対的に接近中か判定するように警報判定部24を制御する。当該判定が肯定判定となった場合はステップS14に移行する。一方否定判定となった場合は、ステップS10に戻り、点群データの取得を継続する。上述したように、この場合の接近には、保護対象物が車両50に近づいてくる場合に加え、保護対象物が静止等し車両50が近づく場合も含む。
【0044】
ステップ14で、制御部20は、保護対象物までの距離データに基づき、保護対象物までの距離が、警報音発生が必要な距離であるか判定するように警報判定部24を制御する。当該判定が肯定判定となった場合はステップS15に移行する。一方否定判定となった場合は、ステップS10に戻り、点群データの取得を継続する。本ステップの肯定判定において、ステップS13で特定された保護対象物が要警報保護対象物であると判定される。なお、本実施形態では、保護対象物が接近中であるか否か、および対象物までの距離のデータを用いて、警報音発生の要否を判定しているが、いずれか一方、例えば保護対象物が接近中であるか否かだけで警報音発生の要否を判定してもよい。さらに、保護対象物の位置または方向によって、警報音発生の要否を判定してもよい。
【0045】
ステップS15で、制御部20は、記憶部26から検知領域(A1からA8)のデータを読み出し、当該検知領域と、車両50の周囲における要警報保護対象物の位置または方位とを対比して、要警報保護対象物が検知された検知領域を決定する。要警報保護対象物の位置は、例えばLiDAR53から取得した保護対象物までの距離、保護対象物の方位によって算出する。
【0046】
ステップS16で、制御部20は、ステップS15で決定した検知領域に基づいて、使用するスピーカ10を決定する。この際制御部20は、図2(b)に示すスピーカ割当を参照して決定する。
【0047】
ステップS17で、制御部20は、警報音を設定するように制御信号生成部25を制御する。設定の内容は、警報音の種類、大きさ、周波数等である。警報音の種類は、上述の疑似エンジン音等予め何種類か記憶部26等の記憶手段に記憶させておき、その場の状況に応じて選択してもよい。警報音の大きさ、周波数は、例えば保護対象物までの距離に応じて調整してもよい。例えば、車両50から保護対象物までの距離が遠いほど、警報音を大きくする。また、音波の伝達特性等を考慮して、車両50から保護対象物までの距離が遠いほど警報音の周波数を低くする等が考えられる。
【0048】
ステップS18で、制御部20は、警報音を発生するように、ステップS16で決定されたスピーカ10を制御する。
【0049】
ステップS19で、終了指示があったか判定する。当該判定が肯定判定の場合は本音発生プログラムを終了し、否定判定の場合は、ステップS10に戻り、点群データの取得を継続する。本音発生プログラム終了の指示の判定は、例えば、運転者によって車両50のエンジンが停止されたことを示す情報を、制御部20が受け取ったタイミングとしてもよい。
【0050】
ここで、保護対象物と車両50の相対的な位置関係は、時々刻々変化するのが通常である。例えば、保護対象物が、検知領域(A1~A8)を 跨いで 移動する場合 、保護対象物が進行方向を変える場合、車両50が進行方向を変える場合等の場合は、車両から見た保護対象物までの距離、保護対象物の方位が時々刻々変化し、その変化に対応して、検知領域が変わる場合もある。この場合であっても、本音発生処理では、警報音を発生する前の段階、あるいは警報音を発生してから終了指示があるまでの間は常にステップS10に戻ってループ処理しているので、検知領域を追随させて更新することができる。また、いったん要警報保護対象物となっても、例えば車両50からの距離が遠くなって要警報保護対象物の条件を満たさなくなった場合は、追随させて要警報音保護対象物の判定を解除することができる。
【0051】
以上詳述したように、本実施形態に係る音発生装置および音発生方法によれば、優先度の高い保護対象物に、効果的に警報を発することが可能な音発生装置および音発生方法を提供することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、スピーカ10を車両用灯具(フロントランプ、リアランプ)の内部に配置する形態を例示して説明したが、これに限らず、スピーカ10の一部、または全部を単独で車体に配置する形態としてもよい。また、本実施形態では、4個のスピーカ10を車両50に配置する形態を例示して説明したが、これに限らず、必要な任意の個数のスピーカ10を配置した形態としてもよいし、あるいは1個のスピーカ10を用いる形態としてもよい。
【0053】
(第2実施形態)
図8を参照して、本実施形態に係る音発生装置および音発生方法について説明する。本実施形態は、上記実施形態において、車体に配置するスピーカ10の個数を変えた形態である。従って、音発生装置の構成、音発生処理については、上記実施形態の図4から図7と同様なので、図示を省略する。
【0054】
図8(a)に示すように、本実施形態に係る音発生装置では2個のスピーカ10が用いられている。すなわち、フロントランプ51Lの内部に配置されたスピーカ10FL、およびフロントランプ51Rの内部に配置されたスピーカ10FRの2個である。本実施形態では、スピーカ10の個数に応じて適切に検知領域を設定するが、図8(a)には、本実施形態に係る検知領域の一例を併せて示している。すなわち、本実施形態に係る車両50Aでは、検知領域A9、A10、およびA11の3つの検知領域を設定している。検知領域A9、A10、およびA11は、各々上記実施形態に係る検知領域A1、A2、およびA8と略等しい領域としている。しかしながら、検知領域の設定はこれに限らず、LiDAR53の走査態様、スピーカ10間の距離、スピーカ10の指向性等を勘案して、適切に設定してよい。
【0055】
図8(b)は、本実施形態に係るスピーカ割当の一例を示している。図8(b)に示すように、本実施形態では、検知領域A9においては2個のスピーカ10FL、10FRを使用し、検知領域A10においては1個のスピーカ10FRを使用し、検知領域A11においては1個のスピーカ10FLを使用する。しかしながら、これに限らず、使用するスピーカ10は、スピーカ10間の距離、スピーカ10の指向性等を勘案して、適切に割り当ててよい。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る音発生装置および音発生方法によっても、優先度の高い保護対象物に、効果的に警報を発することが可能な音発生装置および音発生方法を提供することができる。さらに、本実施形態では警報音の発生を車両50の前方に特化することにより、音発生装置をより簡略化することができる。
【0057】
(第3実施形態)
図9を参照して、本実施形態に係る音発生装置および音発生方法について説明する。本実施形態は、上記第1実施形態において、車体に配置するスピーカ10の個数を変えた形態である。従って、音発生装置の構成、音発生処理については、上記第1実施形態の図4から図7と同様なので、図示を省略する。
【0058】
図9(a)に示すように、本実施形態に係る音発生装置では3個のスピーカ10が用いられている。すなわち、フロントランプ51Lの内部に配置されたスピーカ10FL、フロントランプ51Rの内部に配置されたスピーカ10FR、および車両50の後部に独立して配置されたスピーカ10Rの3個である。本実施形態では、スピーカ10の個数に応じて適切に検知領域を設定するが、図9(a)には、本実施形態に係る検知領域の一例を併せて示している。すなわち、本実施形態に係る車両50Bでは、検知領域A12、A13、A14、およびA15の4つの検知領域を設定している。検知領域A12、A13、A14、およびA15は、各々上記第1実施形態に係る検知領域A1、A2、A5、およびA8と略等しい領域としている。しかしながら、検知領域の設定はこれに限らず、LiDAR53の走査態様、スピーカ10間の距離、スピーカ10の指向性等を勘案して、適切に設定してよい。
【0059】
図9(b)は、本実施形態に係るスピーカ割当の一例を示している。図9(b)に示すように、本実施形態では、検知領域A12においては2個のスピーカ10FL、10FRを使用し、検知領域A13においては1個のスピーカ10FRを使用し、検知領域A14においては1個のスピーカ10Rを使用し、検知領域A15においては1個のスピーカ10FLを使用する。しかしながら、これに限らず、使用するスピーカ10は、スピーカ10間の距離、スピーカ10の指向性等を勘案して、適切に割り当ててよい。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る音発生装置および音発生方法によっても、優先度の高い保護対象物に、効果的に警報を発することが可能な音発生装置および音発生方法を提供することができる。さらに、本実施形態では車両50の後方にも警報音の発生を可能とするとともに、音発生装置をより簡略化することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…音発生装置
10、10FL、10FR、10RL、10RR…スピーカ
20…制御部
21…データ取得部
22…データ処理部
23…保護対象物特定部
24…警報判定部
25…制御信号生成部
26…記憶部
50、50A、50B…車両
51、51L、51R…フロントランプ
52、52L、52R…リアランプ
53…LiDAR
70…人
71…電柱
72…壁
D1、D2…方向
L1、L2、L3…検知光束
PG1、PG1-1、PG1-2、PG1-3、PG2、PG3…点群
SFL、SFR…警報音
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9