(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041007
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】アスファルト合材の敷き均し方法及びアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/48 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
E01C19/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145699
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】522257757
【氏名又は名称】松永 匡史
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(72)【発明者】
【氏名】松永 匡史
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AB01
2D052AD15
2D052BD03
2D052BD12
2D052CA01
(57)【要約】
【課題】舗装路盤が良好でない場合であっても、舗装路の平坦性を損なうことのないアスファルト合材の敷き均し方法及びアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置を提供する。
【解決手段】高さ視認装置がスクリードに固定されたアスファルトフィニッシャを用いたアスファルト合材の敷き均し方法であって、高さ視認装置は、スクリードの前方に配置され下端が高さ視認部をなす弛み可能な弛み部と、弛み部を上下方向へ移動させる移動機構と、を有し、スクリードの上下位置をアスファルト合材の敷き均し厚さが所定の基準敷き均し厚さとなる位置とした状態で、高さ視認部の舗装路盤からの高さを所定の基準視認高さに設定し、高さ視認部の舗装路盤からの高さの変化と舗装路盤の状態とに基づいてスクリードを上下動させつつアスファルト合材を舗装路盤上に敷き均すようにした。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装路盤上のアスファルト合材の敷き均し厚さの目安を作業者に視認させるための高さ視認装置がスクリードに固定されたアスファルトフィニッシャを用いたアスファルト合材の敷き均し方法であって、
前記高さ視認装置は、
前記スクリードの前方に配置され、自重により下方へ延び、下端が前記高さの目安を示す高さ視認部をなす弛み可能な弛み部と、
前記弛み部を上下方向へ移動させる移動機構と、を有し、
前記スクリードの上下位置を前記アスファルト合材の前記敷き均し厚さが所定の基準敷き均し厚さとなる位置とした状態で、前記移動機構を利用して前記高さ視認部の前記舗装路盤からの高さを所定の基準視認高さに設定する高さ設定工程と、
前記高さ視認部の前記舗装路盤からの高さの変化と前記舗装路盤の状態とに基づいて前記スクリードを上下動させつつ、前記アスファルト合材を前記舗装路盤上に敷き均す敷き均し工程と、を含むアスファルト合材の敷き均し方法。
【請求項2】
前記敷き均し工程における前記アスファルト合材の敷き均し厚さの変化に基づいて、前記移動機構を利用して前記高さ視認部の前記基準視認高さを修正する高さ修正工程を含む請求項1に記載のアスファルト合材の敷き均し方法。
【請求項3】
請求項1に記載のアスファルト合材の敷き均し方法に用いられるアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置であって、
前記スクリードに固定される固定部と、
前記固定部に設けられた前記移動機構と、
前記移動機構の前端側に配置された前記弛み部と、
前記移動機構の後端側に配置され、前記弛み部の上下方向の移動操作を行う操作部と、を備えたアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト合材の敷き均し方法及びアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後部にアスファルト合材を敷き均すスクリードを備えたアスファルトフィニッシャにおいて、舗装路盤までの距離を個々に測定する一対の高さ及び傾斜センサを前後方向に間隔をおいて設け、各高さ及び傾斜センサの測定結果に基づいてスクリードによるアスファルト合材の舗装厚を演算するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のアスファルトフィニッシャでは、スクリードに舗装路盤の横に配設された基準線に沿って移動する案内センサを上下自在に設け、演算装置によって算出された舗装厚が所定値から外れた場合に、案内センサをスクリードに対して上または下に動かし、舗装厚が基準範囲に収まるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のアスファルトフィニッシャのように、センサで検知された舗装路盤の高さに基づいてスクリードを自動的に制御すると、舗装路盤に凹凸、うねり等がある場合に、これらに追従してアスファルト合材を敷き均してしまい、舗装路の平坦性が損なわれるという問題点がある。また、アスファルトフィニッシャのタイヤがマンホール等のような局所的な凸部に乗り上げた場合には、センサで正確な舗装路盤の高さを検知することはできない。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、舗装路盤が良好でない場合であっても、舗装路の平坦性を損なうことのないアスファルト合材の敷き均し方法及びアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、
舗装路盤上のアスファルト合材の敷き均し厚さの目安を作業者に視認させるための高さ視認装置がスクリードに固定されたアスファルトフィニッシャを用いたアスファルト合材の敷き均し方法であって、
前記高さ視認装置は、
前記スクリードの前方に配置され、自重により下方へ延び、下端が前記高さの目安を示す高さ視認部をなす弛み可能な弛み部と、
前記弛み部を上下方向へ移動させる移動機構と、を有し、
前記スクリードの上下位置を前記アスファルト合材の前記敷き均し厚さが所定の基準敷き均し厚さとなる位置とした状態で、前記移動機構を利用して前記高さ視認部の前記舗装路盤からの高さを所定の基準視認高さに設定する高さ設定工程と、
前記高さ視認部の前記舗装路盤からの高さの変化と前記舗装路盤の状態とに基づいて前記スクリードを上下動させつつ、前記アスファルト合材を前記舗装路盤上に敷き均す敷き均し工程と、を含むアスファルト合材の敷き均し方法が提供される。
【0007】
上記アスファルト合材の敷き均し方法において、前記敷き均し工程における前記アスファルト合材の敷き均し厚さの変化に基づいて、前記移動機構を利用して前記高さ視認部の前記基準視認高さを修正する高さ修正工程を含むことが好ましい。
【0008】
また、本発明では、
上記アスファルト合材の敷き均し方法に用いられるアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置であって、
前記スクリードに固定される固定部と、
前記固定部に設けられた前記移動機構と、
前記移動機構の前端側に配置された前記弛み部と、
前記移動機構の後端側に配置され、前記弛み部の上下方向の移動操作を行う操作部と、を備えたアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、舗装路盤が良好でない場合であっても、舗装路の平坦性が損なわれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を示すアスファルトフィニッシャの側面説明図である。
【
図2】アスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の側面図である。
【
図3】アスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の平面図である。
【
図4】アスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の底面図である。
【
図5】水平フレームを伸長させ上下フレームを上方へ移動させた状態を示すアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の側面図である。
【
図6】水平フレームを折り畳み位置へ移動させた状態を示すアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の側面図である。
【
図7】アスファルト合材の敷き均し方法を示すフローチャートである。
【
図8】変形例を示すアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から
図7は本発明の一実施形態を示すものであり、
図1はアスファルトフィニッシャの側面説明図、
図2はアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の側面図、
図3はアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の平面図、
図4はアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の底面図、
図5は水平フレームを伸長させ上下フレームを上方へ移動させた状態を示すアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の側面図、
図6は水平フレームを折り畳み位置へ移動させた状態を示すアスファルトフィニッシャ用高さ視認装置の側面図、
図7はアスファルト合材の敷き均し方法を示すフローチャートである。
【0012】
図1に示すように、アスファルトフィニッシャ100は、車両前側のホッパ110に投入されたアスファルト合材200を、図示しないコンベアにより後方へ送出し、スクリュースプレッダ120で左右方向(幅方向)に敷き広げた後、スクリード130により舗装路盤300上に所定の厚さで敷き均す。アスファルトフィニッシャ用高さ視認装置1は、左右一対に配置され、アスファルトフィニッシャ100のスクリード130に固定される。尚、アスファルトフィニッシャ100は、例えば一人乗りであっても二人乗りであってもよく、乗車定員は特に限定されない。スクリード130は、左右方向(車幅方向)へ伸縮可能に構成され、左右端部に前後方向へ延びる端部フレーム131を有している。端部フレーム131の上面は、水平かつ平坦に形成されている。スクリード130は、レベリングアーム132に連結されており、レベリングアーム132を上下動させることにより、スクリード130の高さを調整することができる。本実施形態においては、アスファルトフィニッシャ用高さ視認装置1は、スクリード130の端部フレーム131の上面に固定される。
【0013】
図2に示すように、高さ視認装置1は、アスファルトフィニッシャ100のスクリード130に固定される固定部10と、固定部10に左右方向を回転軸として回転自在に支持され回転中心から前方へ延びる水平フレーム20と、水平フレーム20の前端側に固定され水平フレーム20から下方へ延びる上下フレーム30と、上下フレーム30の下端に設けられ自重により下方へ延びる弛み可能な弛み部40と、を有している。弛み部40は、下端がアスファルト合材200の敷き均し厚さの目安を示す高さ視認部をなしている。本実施形態においては、弛み部40は、下端に設けられた重り50を有し、重り50が高さ視認部をなしている。また、高さ視認装置1は、水平フレーム20と一体に設けられ回転中心から後下がりに傾斜して後方へ延びる後方延在部60と、前端が後方延在部60と接触し後方延在部60との接触位置から後上がりに傾斜して後方へ延びる棒状部70と、を有している。さらに、高さ視認装置1は、固定部10に設けられ、棒状部70が挿通される螺合孔(図示せず)が形成され、棒状部70を支持する支持部80を有する。棒状部70の外周面には雄ねじ部71が形成され、支持部80の螺合孔の内周面には雄ねじ部71と螺合する雌ねじ部(図示せず)が形成される。すなわち、棒状部70は、雄ねじ部71の軸方向へ移動可能に支持部80に支持される。さらにまた、高さ視認装置1は、棒状部70の後端に設けられ、作業者が棒状部70を回転操作するための操作部としての把持部90を有している。本実施形態においては、高さ視認装置1は、鉄等の金属からなる。
【0014】
固定部10は、スクリード130に固定される水平板材11と、水平板材11から上方へ延びる上下板材12と、を有する。
図3に示すように、上下板材12は、表面の法線が左右方向を向いており、水平フレーム20を回転自在に支持する軸支部13が設けられる。軸支部13は、上下板材12の左右外側の表面から左右外側へ突出し水平フレーム20の後端を挿通する軸部(図示せず)と、軸部の先端に設けられ径方向寸法が軸部より大きな押さえ部13aと、を有する。本実施形態においては、上下板材12及び押さえ部13aと、水平フレーム20の後端との間には平ワッシャー13bがそれぞれ介装される。また、本実施形態においては、軸部及び押さえ部13aは、ボルトの頭部側を利用して作製され、上下板材12に例えば溶接等により固定されている。また、
図4に示すように、固定部10は、水平板材11に形成された固定孔14を有し、固定孔を挿通しスクリード130側の雌ねじ部(図示せず)と螺合するボルト(図示せず)により固定される。
【0015】
図5に示すように、水平フレーム20は、前後方向へ延びる円筒状のフレーム本体21と、フレーム本体21の前端に設けられ上下方向へ延び上下フレーム30を上下に案内する円筒状のガイド22と、フレーム本体21の径方向内側を前後方向に移動自在な円柱状の内フレーム23と、フレーム本体21に設けられ任意の位置で内フレーム23の移動をロックする前後ロック部24と、ガイド22に設けられ任意の位置で上下フレーム30をロックする上下ロック部25と、を有している。本実施形態においては、内フレーム23の後端には軸支部13の軸部が挿通され軸支部13の各平ワッシャー13bと摺接する挿通部26が形成されている。本実施形態においては、前後ロック部24は、フレーム本体21の所定位置の孔を挿通し内フレーム23と当接可能なロックボルト24aと、フレーム本体21に設けられロックボルト24aと螺合するウエルドナット24bと、を有している。また、上下ロック部25は、ガイド22の所定位置の孔を挿通し上下フレーム30と当接可能なロックボルト25aと、ガイド22に設けられロックボルト25aと螺合するウエルドナット25bと、を有している。
図6に示すように、水平フレーム20は、回転中心について上方を経由して後方の所定の折り畳み位置まで回転可能に構成される。具体的に、水平フレーム20は、折り畳み位置で棒状部70、把持部90またはこれらの近傍の部品と当接する。本実施形態においては、水平フレーム20は、折り畳み位置で棒状部70近傍の第2ワッシャ85と当接する。
【0016】
上下フレーム30は、上下方向へ延びガイド22の径方向内側を上下方向に移動自在な円柱状のフレーム本体31と、フレーム本体31の上端に設けられフレーム本体31の下方への移動を規制する規制部32と、を有している。規制部32は、ガイド22よりも径方向寸法が大きく形成され、ガイド22の上端と接触することにより、フレーム本体31の移動を規制する。フレーム本体31の下端には弛み部40の上端が接続される。本実施形態においては、水平フレーム20のガイド22と、上下フレーム30のフレーム本体31とが、弛み部40を上下方向へ移動させる第1の移動機構をなしている。
【0017】
本実施形態においては、弛み部40は、鎖からなる本体45と、本体45の下端に設けられた重り50と、を有し、フレーム本体31の下端から本体45及び重り50の自重により下方へ延びた状態となる。重り50は、本体45により吊り下げられ、下端で舗装路盤300からの高さを作業者に認識させる。尚、弛み部40の本体45を鎖に代えて紐等により構成することも可能である。また、弛み部40の重り50を省略して、本体45のみの構成とし、本体45の下端が高さ視認部をなすようにしてもよい。
図1に示すように、本実施形態においては、舗装路盤300の幅方向外側にアスファルト合材200の高さを示す定規、型枠等の高さ指示体400が設けられており、重り50と高さ指示体400の上下位置関係により、作業者はアスファルト合材200が敷き均される高さの目安を認識することができる。
図1においては、説明のため、高さ指示体400を二点鎖線で示している。本実施形態においては、重り50は、下側が下方へ向かって細くなるよう形成される下端部51と、下端部51の上端と本体45の下端とを接続する円柱状の接続部52と、を有している。弛み部40は、上下フレーム30よりも短く形成されている。本実施形態においては、
図6に示す折り畳み状態で、弛み部40が水平フレーム20より下方に位置してアスファルトフィニッシャ100側の機器等と干渉しないようになっている。
【0018】
後方延在部60は、水平フレーム20の挿通部27から後下がりに傾斜して後方へ延びる。本実施形態においては、後方延在部60は、四角柱状に形成され、上面の後端側が棒状部70と当接する。後方延在部60には、水平フレーム20側の重量により、後端側を上方へ回転させる力が作用している。
【0019】
棒状部70は、前端側が支持部80により支持され、後方延在部60からの力を受け止める。雄ねじ部71は、棒状部70の外周面の前端側に形成されている。棒状部70は、回転されると、支持部80と螺合したねじの作用により、延材方向へ移動する。棒状部70が移動すると、これに追従して後方延在部60も回転移動する。本実施形態においては、棒状部70は、ボルトを利用して作製されている。
【0020】
支持部80は、棒状部70と螺合する螺合孔を有する螺合部81と、螺合部81と固定部10とを接続する接続部82と、を有する。本実施形態においては、螺合部81は、ナットを利用して作製されている。また、本実施形態においては、接続部82は、円柱状を呈し、固定部10の水平板材11の上面から前上がりに延びて形成される。
【0021】
把持部90は、棒状部70の後端に設けられ、軸中心を通って径方向へ延びる径方向延在部91と、径方向延在部91の両端から棒状部70と反対側へ延びる一対のハンドル部92を有する。本実施形態においては、径方向延在部91は、棒状部70の作製に利用されたボルトの頭に設けられる。作業者は、各ハンドル部92を把持して把持部90を回転させることにより棒状部70を移動させ、後方延在部60、水平フレーム20及び上下フレーム30を介して弛み部40の重り50の高さを調整することができる。本実施形態においては、水平フレーム20と、上下フレーム30と、後方延在部60と、棒状部70とが、弛み部40を上下方向へ移動させる第2の移動機構をなしている。また、本実施形態においては、第2の移動機構は固定部10に設けられ、弛み部40が第2の移動機構の前端側に配置され、操作部としての把持部90が第2の移動機構の後端側に配置される。具体的に、把持部90を後方から見て右回転させると棒状部70が前方へ移動し、後方延材部60が棒状部70により前方へ回転させられ、後方延在部60と一体の水平フレーム20が上下へ回転させられ、この結果、水平フレーム20前端側の上下フレーム30及び弛み部40が上方へ移動する。逆に、把持部90を後方から見て左回転させると、弛み部40が下方へ移動する。本実施形態においては、水平フレーム20を最大に伸長させた状態で、棒状部70及び把持部90を1回転させると、重り50がほぼ1cm移動するよう設定されている。
【0022】
また、本実施形態においては、棒状部70に付勢力を加える付勢部材83が設けられている。具体的に、付勢部材83は、棒状部70を巻回するコイルばねであり、支持部80に隣接して設けられる第1ワッシャ84と、棒状部70の把持部90に隣接して設けられる第2ワッシャ85との間に介装される。さらに具体的には、第1ワッシャ84は、支持部80の螺合部81の作製時に利用されたナットと当接して配置され、第2ワッシャ85は、棒状部70の作製時に利用されたボルトの頭と当接して配置される。尚、付勢部材83を、コイルばねに代えて、他のばね材やゴム等により構成してもよい。また、振動等が比較的小さなアスファルトフィニッシャ100に取り付けられるのであれば、付勢部材を省略してもよい。
【0023】
以上のように構成された高さ視認装置1によれば、例えばアスファルト合材200の敷き均し作業中の重り50の高さ調整のような、重り50の高さを比較的細かく変化させる際には、把持部90を回転させて重り50の高さ調整を細かく行うことができる。一方、例えば舗装現場や舗装条件を変更する際の重り50の高さ調整のような、重りの50の高さを比較的大きく変化させる際には、上下フレーム30を移動させて重り50の高さを大きく変化させることができる。この高さ視認装置1が固定されたアスファルトフィニッシャ100によるアスファルト合材200の敷き均し方法を、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0024】
はじめに、水平板材11に形成された固定孔14を挿通するボルトにより、高さ視認装置1をスクリード130の端部フレーム131の上面に固定する(ステップS1:固定工程)。このとき、高さ視認装置1は、水平フレーム20のフレーム本体21が水平となるようスクリード130に固定される。また、重り50の位置は、作業者が視認しやすい位置となるよう調整される。重り50の位置は、主として、前後方向については水平フレーム20の内フレーム23を移動させることで調整され、上下方向については上下フレーム30のフレーム本体31を移動させることで調整され、左右方向については水平板材11を固定孔14を中心として端部フレーム131上で回転させることで調整される。
【0025】
次に、スクリード130の上下位置をアスファルト合材200の敷き均し厚さが所定の基準敷き均し厚さとなる位置とした状態で、上下フレーム30のフレーム本体31を移動させて重り50の舗装路盤300からの高さを所定の基準視認高さに設定する(ステップS2:高さ設定工程)。本実施形態においては、高さ指示体400の上端が基準視認高さを示しており、高さ指示体400の上端と重り50の下端の高さが略一致するよう調整される。本実施形態においては、基準敷き均し厚さとした状態のアスファルト合材200の上面高さと基準視認高さは同じであり、高さ指示体400の上端がアスファルト合材200の上面高さ及び基準視認高さを示しているが、アスファルト合材200の上面高さ及び基準視認高さは、必ずしも同じ高さである必要はない。重り50の高さを基準視認高さに調整した後、作業開始時間となるまで待機する(ステップS3 No)。
【0026】
作業開始時間となったら(ステップS3 Yes)、アスファルトフィニッシャ100による舗装路盤300上へのアスファルト合材200の敷き均しを行う(敷き均し工程:S4)。作業者は、重り50の舗装路盤300からの高さの変化と、舗装路盤300の状態とに基づいてスクリード130を上下動させて敷き均しを行う。作業者は、基本的には、重り50の舗装路盤300からの高さが一定となるようにスクリード130を上下動させる。本実施形態においては、作業者は、重り50の下端が高さ指示体400の上端と略一致するように、スクリード130を上下動させる。
【0027】
舗装路盤300が良好でない場合、作業者は、舗装路盤300の状態を考慮してスクリード130を上下動させる。例えば、舗装路盤300に凹凸、うねり等が存在し、これらに起因して重り50の下端と高さ指示体400の上端の位置関係が変化した場合は、作業者は、重り50の下端を高さ指示体400の上端に完全には追従させない。すなわち、作業者は、スクリード130を全く上下動させない、あるいは、重り50の下端を高さ指示体400の上端が一致する手前の位置でスクリード130の上下動を停止させる。これにより、舗装路盤300が良好でない場合であっても、舗装路の平坦性が損なわれることはない。アスファルト合材200の敷き均し作業は、予定された範囲の舗装作業が終了するまで行われる(ステップS5 No)。
【0028】
本実施形態においては、作業者は、アスファルト合材200の敷き均し時に、アスファルト合材200の敷き均し厚さが変化したか否かを確認する(ステップS6)。敷き均し厚さが変化した場合(ステップS6 Yes)、作業者は、敷き均し厚さの変化に基づいて、操作部90の回転操作により重り50の基準視認高さを調整する(ステップS7:視認高さ修正工程)。具体的には、作業者、アスファルト合材200の敷き均し厚さが、基準敷き均し厚さとなるように、重り50の基準視認高さを調整する。重り50の基準視認高さが調整された状態で、ステップS4へ戻ってアスファルト合材200の敷き均しを引き続き行う。アスファルト合材200の敷き均し厚さの変化は、例えば、スクリード130によるアスファルト合材200の敷き均し幅の変化、ホッパ110に抱えられているアスファルト合材200の量の変化、アスファルト合材200の種類の変更等によって生じる。また、同じ種類のアスファルト合材200であっても出荷される工場が異なる場合に、アスファルト合材200の敷き均し厚さが変化することがある。
【0029】
本実施形態においては、把持部90がスクリード130の端部フレーム131上に位置しているため、重り50の高さの調整時に作業者はアスファルトフィニッシャ100から降車する必要はない。また、把持部90を片手で把持することができることから、重り50の高さ調整を手動で簡単容易に行うことができる。また、付勢部材83により棒状部70が付勢されているので、アスファルトフィニッシャ100の振動により棒状部70が回転移動することはない。これにより、アスファルトフィニッシャ100の振動により、重り50の位置が変化することはない。また、弛み部40に重り50が設けられているので、弛み部40の姿勢が安定し、アスファルトフィニッシャ100の振動時にも、弛み部40の下端位置が大きく変化することはない。さらに、スクリード130と高さ指示体400が相対的に近接した場合、弛み部40の本体45が弛むことにより、水平フレーム20、上下フレーム30等に高さ指示体400側からの負荷が加わることはない。さらにまた、棒状部70の回転を付勢力に抗して行う必要があることから、把持部90の回転操作に相応の回転力が要求され、把持部90の回転量が比較的小さい、重り50の上下位置の微調整に適した構成となっている。
【0030】
敷き均し厚さが変化しない場合(ステップS6 Yes)、作業者は、重り50の基準視認高さを調整することなく、ステップS4へ戻ってアスファルト合材200の敷き均しを引き続き行う。このように、作業者は、舗装路の平坦性が損なわれない範囲でアスファルト合材200の厚さが基準敷き均し厚さとなるようスクリード130を上下動させるとともに、アスファルト合材200の厚さの変化に応じて重り50の基準視認高さを調整する。このスクリード130の高さ調整方法により、経験の比較的浅い作業者であっても、比較的良好なアスファルト合材200の敷き均し状態を実現することができる。
【0031】
予定された範囲の舗装作業が終了した後(ステップS5 Yes)、アスファルトフィニッシャ100が現場を移動しない場合は(ステップS8 No)、当該現場の次回の作業開始時まで、重り50の高さを調整せずに待機状態とする(ステップS3 No)。これにより、重り50が適切な基準視認高さとなった状態で舗装作業を再開することができる。待機状態のときは、
図6に示すように、水平フレーム20を上方へ回転させて折り畳み状態とすることが好ましい。
【0032】
予定された範囲の舗装作業が終了した後(ステップS5 Yes)、アスファルトフィニッシャ100が現場を移動する場合は(ステップS8 Yes)、高さ視認装置1をスクリード130から撤去する(ステップS9:撤去工程)。
以上のアスファルト敷き均し方法によれば、舗装路盤300が良好でない場合であっても、舗装路の平坦性が損なわれることはない。
【0033】
尚、前記実施形態の高さ視認装置1においては、弛み部40を上下動させる移動機構を2つ備えたものを示したが、例えば
図8に示すように、弛み部40の上下動を1つの移動機構で行うようにしてもよい。
図8の高さ視認装置101は、アスファルトフィニッシャ100のスクリード130に固定される固定部110と、固定部110に設けられ前方へ延びる中空の水平フレーム120と、水平フレーム120を挿通するワイヤ130と、ワイヤ130の一端に設けられ自重により下方へ延びる弛み可能な弛み部140と、を有している。固定部110は、スクリード130に固定され前後へ延びる四角筒状のオフセット部111と、オフセット部111から上方へ延びる上下板材112と、を有する。上下板材112は、表面の法線が左右方向を向いており、水平フレーム120の後端が固定される。水平フレーム120は、固定部110から前方へ延びる前後延在部121と、前後延在部121の前端から下方へ向かって延びる上下延在部122と、を有している。本実施形態においても、弛み部140は、下端に設けられた重り150を有し、重り150が高さ視認部をなしている。また、高さ視認装置101は、ワイヤ130の他端側が巻回され上下方向へ延びる棒状部170と、固定部110に設けられ棒状部170を支持する支持部180と、を有する。支持部180は、オフセット部111の上端から後方へ延び棒状部170が挿通される挿通孔を有する板材からなり、棒状部170が外周面に形成された雄ねじ部171と螺合する螺合孔を有するウエルドナット181が上面に固定される。固定部110は、オフセット部111に形成された固定孔(図示せず)を有し、固定孔を挿通しスクリード130側の雌ねじ部(図示せず)と螺合するボルト(図示せず)により固定される。また、高さ視認装置101は、棒状部170の上端に設けられ、作業者が棒状部170を回転操作するための把持部190を有している。
【0034】
図8の高さ視認装置101においても、棒状部170に付勢力を加える付勢部材183が設けられている。付勢部材183は、棒状部170を巻回するコイルばねであり、支持部180の下面と、棒状部170の下端側に設けられるワッシャ184との間に介装される。棒状部170は、2つのボルトを利用して作製されており、下端及び上端にボルトの頭が位置している。ワッシャ184は、棒状部170の下端のボルトの頭と当接して配置される。
【0035】
把持部190は、棒状部170の上端に設けられ、軸中心を通って径方向へ延びる径方向延在部191と、径方向延在部191の両端から棒状部170と反対側へ延びる一対のハンドル部192を有する。径方向延在部191は、棒状部170上端のボルトの頭に設けられる。作業者は、各ハンドル部192を把持して把持部190を回転させることにより棒状部170を上下方向へ移動させ、ワイヤ130の棒状部170の巻回量を調整することで、弛み部140の重り150の高さを調整することができる。
【0036】
また、前記実施形態の高さ視認装置1においては、把持部90の回転操作による駆動力により高さ視認部を上下動させるものを示したが、例えば、移動機構が高さ視認部を上下動させるアクチュエータを含み、操作部からの入力によりアクチュエータが作動するようにしてもよい。すなわち、高さ視認装置が、スクリードに固定される固定部と、固定部に設けられた移動機構と、移動機構の前端側に配置された弛み部と、移動機構の後端側に配置され弛み部の上下方向の移動操作を行う操作部と、を備えていれば、操作部の操作による高さ視認部の上下動が実現される。
【0037】
また、前記実施形態の高さ視認装置1においては、固定部10をスクリード130に直接固定したものを示したが、スクリードに適切な固定部位が存在しないアスファルトフィニッシャの場合は、固定部10を固定するためのステー等を介してスクリードに固定するようにしてもよい。
【0038】
また、前記実施形態の高さ視認装置1においては、水平板材11を挿通するボルトによりスクリード130に固定されるものを示したが、高さ視認装置1の固定手段は任意に変更することができる。この場合、高さ視認装置1をスクリード130に対して、上下方向を回転軸として回転可能、もしくは、左右方向へ移動可能とし、重り50の左右方向の位置調整が図れるよう構成することが好ましい。
【0039】
また、前記実施形態において、舗装路盤300の位置を検出するセンサをスクリード130に設け、センサの検出位置に基づいてスクリード130を上下動させる制御部を備えて、スクリード130の上下動を、高さ視認装置1に基づいて作業者が手動で行うモードと、制御部により自動で行うモードと、に切り替え可能としてもよい。この場合、舗装路盤300の状況が良好な場合は制御部による自動モードとすることができる。
【0040】
また、前記実施形態において、高さ視認装置1を左右に2つ並べて設け、一方の高さ視認装置1の高さ視認部がアスファルト合材の敷き均し厚さの目安を示し、他方の高さ視認装置1の高さ視認部が舗装路盤300の高さの目安を示すようにしてもよい。また、前記実施形態においては、基準視認高さがアスファルト合材200の上面高さと同じものを示したが、基準視認高さはあくまでアスファルト合材200の厚さの目安を示すものであって任意の高さとすることができ、舗装現場の状況、作業者の好みや感覚等に応じて、アスファルト合材200の上面高さより高く、あるいは、低く設定しても問題はない。
【0041】
また、前記実施形態のアスファルト合材の敷き均し方法においては、アスファルトフィニッシャ100が現場を移動する場合に、高さ視認装置1をスクリード130から撤去するものを示したが、アスファルトフィニッシャ100の移動、搬送等に支障を生じないのであれば、高さ視認装置1をそのままスクリード130に固定したままでもよい。この場合、次回の舗装現場では、ステップS1の固定工程を省略することができる。
【0042】
また、前記実施形態のアスファルト合材の敷き均し方法において、アスファルト合材200の敷き均し厚さの変化量がさほど大きくならないと予想される場合、ステップS6の厚さ変化に関する判断を行わずに、ステップS7の高さ修正工程を省略することも可能である。また、ステップS7の高さ修正工程は、把持部90の回転操作による高さ視認部の位置調整でなく、上下フレーム30の上下動による高さ視認部の位置調整でも可能である。この場合、把持部90、棒状部70、後方延在部60等は不要であり、例えば、高さ視認装置1の水平フレーム20の後端を固定部10に固定してしまってもよい。すなわち、高さ視認装置が、スクリードの前方に配置され、自重により下方へ延び、下端が前記高さの目安を示す高さ視認部をなす弛み可能な弛み部と、弛み部を上下方向へ移動させる移動機構と、を有していれば、
図7に示すフローチャートによるアスファルト合材の敷き均しが可能である。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組み合わせの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0044】
1 アスファルトフィニッシャ用高さ視認装置
10 固定部
40 弛み部
50 重り
90 把持部
100 アスファルトフィニッシャ
200 アスファルト合材
300 舗装路盤
S2 高さ設定工程
S4 敷き均し工程
S7 高さ修正工程
101 アスファルトフィニッシャ用高さ視認装置
110 固定部
140 弛み部
150 重り
190 把持部