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▶ カンブリオス フィルム ソリューションズ(シアメン) コーポレーションの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041019
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
H01B5/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197940
(22)【出願日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】202211107511.4
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520384910
【氏名又は名称】カンブリオス フィルム ソリューションズ(シアメン) コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cambrios Film Solutions (Xiamen) Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リエン シウチェン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ ジアヤン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ チーファン
【テーマコード(参考)】
5G307
【Fターム(参考)】
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC04
5G307FC10
(57)【要約】
【課題】曲げ抵抗や視認性が悪いという問題を克服し、曲げやすさと高い遮水性能により、タッチセンサに適切に適用することができる透明導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】本開示に係る透明導電性フィルムは、基板と、基板上に配置された金属ナノワイヤ層と、吸水性粒子を有し、金属ナノワイヤ層上に配置された遮水保護層とを備え、透明導電性フィルムは、FTIRにより2750cm-1~3000cm-1の波数領域に第一吸収ピークと、3000cm-1~3750cm-1の波数領域に第二吸収ピークを有し、第一吸収ピークの最大ピーク強度に対する第二吸収ピークの最大ピーク強度の比は0.18~0.50であり、透明導電性フィルムのヘイズ値は1.7%以下であるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された金属ナノワイヤ層と、
吸水性粒子を有し、前記金属ナノワイヤ層の上に配置された遮水保護層と、を備える透明導電性フィルムであって、
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により、2750cm-1~3000cm-1の波数領域に第一吸収ピーク、3000cm-1~3750cm-1の波数領域に第二吸収ピークを有し、
前記第一吸収ピークの最大ピーク強度に対する前記第二吸収ピークの最大ピーク強度の比が0.18~0.50であり、
ヘイズ値が1.7%以下である
透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記第一吸収ピークのスペクトル積分面積に対する前記第二吸収ピークのスペクトル積分面積の比が0.618~1.410の範囲である
請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
金属ナノワイヤによって形成された複数の電極を含む
請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記複数の電極間のギャップ距離が30μm~200μmである
請求項3に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
直流、電圧5V、85℃/85%である高温高湿度環境の試験条件において、前記ギャップ距離がxμm、電源を入れた時間がy時間のとき、前記透明導電性フィルムのワイヤ抵抗変化率が10%未満であり、xとyがy=0.53179x+364.47977の関係に従う
請求項4に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
直流、電圧5V、85℃/85%である高温高湿度環境の試験条件において、400時間電源を入れたとき、前記透明導電性フィルムのワイヤ抵抗変化率が10%未満である
請求項1~3のいずれか一つに記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記透明導電性フィルムの可視光透過率が92%~97%の範囲である
請求項1~3のいずれか一つに記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記透明導電性フィルムの黄色度が0.5未満である
請求項1~3のいずれか一つに記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
前記遮水保護層の厚さが1μm~15μmである
請求項1~3のいずれか一つに記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
前記遮水保護層内の前記吸水性粒子の体積比率が1%~5%である
請求項1~3のいずれか一つに記載の透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透明導電性フィルム、特に、屈曲性と高い遮水性能を有する銀ナノワイヤを含む透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチセンサのタッチセンシング電極には、ナノ銀線層を含む透明導電膜が用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、導電性物質として金属材料を用いた導電層と、導電層と接触する接着層を少なくとも含む透明導電性シートが開示されている。さらに、接着層は、コモノマー成分として親水性アクリルモノマーを含むアクリル共重合体と、吸湿剤と金属イオン捕捉剤からなる群から選択される少なくとも1つの移動抑制剤とを含む。
【0004】
これにより、特許文献1の透明導電性シートは、導電層を構成する金属材料の移動による断線や短絡の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特許第I675895号明細書
【特許文献2】米国特許第8454721号明細書
【特許文献3】米国特許第9672950号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、タッチセンシング電極の位置がタッチパネルの可視領域に存在するため、特許文献1などの従来技術では、通常、接着層の親水性モノマー濃度が15%以上と高く、電極の可視性(可視光透過率、ヘイズを含む)に影響を与える。また、粘着層に含まれる吸湿剤や金属イオン捕捉剤なども電極の視認性に影響を与え、タッチパネル全体の視認性に悪影響を及ぼす。
【0007】
接着層の厚さは、タッチ電極全体の視認性にも関係する。このことから、耐屈曲性の機能を持ちながら、導電膜の電気的性質と優れた視認性をいかに維持するかが、喫緊の課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本開示では、透明導電性フィルムの一側面として、基板と、基板上に配置された金属ナノワイヤ層と、吸水性粒子を有し、金属ナノワイヤ層上に配置された遮水保護層とを含み、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により、2750cm-1~3000cm-1の波数領域に第一吸収ピークと、3000cm-1~3750cm-1の波数領域に第二吸収ピークを有し、第一吸収ピークの最大ピーク強度(第二吸収ピーク/第一吸収ピーク)に対する第二吸収ピークの最大ピーク強度の比は0.18~0.50であり、透明導電性フィルムのヘイズ値が1.7%以下である。
【0009】
一実施形態では、第一吸収ピークのスペクトル積分面積に対する第二吸収ピークのスペクトル積分面積の比は0.618~1.410の範囲である。
【0010】
一実施形態では、金属ナノワイヤによって形成された複数の電極を含む。
【0011】
一実施形態では、複数の電極間のギャップ距離が30μm~200μmである。
【0012】
一実施形態では、直流、電圧5V、85℃/85%である高温高湿度環境の試験条件において、ギャップ距離がxμm、電源を入れた時間がy時間のとき、透明導電性フィルムのワイヤ抵抗変化率は10%未満であり、xとyがy=0.53179x+364.47977の関係に従う。
【0013】
一実施形態では、直流、電圧5V、85℃/85%である高温高湿度環境の試験条件において、400時間電源を入れたとき、透明導電性フィルムのワイヤ抵抗変化率は10%未満である。
【0014】
一実施形態では、透明導電性フィルムの可視光透過率は92%~97%の範囲である。
【0015】
一実施形態では、透明導電性フィルムの黄色度(b)は0.5未満である。
【0016】
一実施形態では、遮水保護層の厚さは1μm~15μmの範囲である。
【0017】
一実施形態では、遮水保護層内の吸水性粒子の体積比率は1%~5%の範囲である。
【発明の効果】
【0018】
本開示の透明導電性フィルムは、従来の透明導電性フィルムの耐曲げ性の悪さや視認性の悪さという問題を克服することができ、また、本開示の透明導電性フィルムは、曲げ性の向上と高い遮水性能という利点を有するため、タッチセンサに適切に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態による透明導電性フィルムの概略図である。
図2】参照例および例1、4、7の透明導電性フィルムのFTIRスペクトルである。
図3】参照例と例1の銀移動試験図である。
図4】銀移動試験サンプルの製造のフローチャートである。
図5】銀移動試験試料のギャップ距離と寿命の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、特定の実施形態による本開示の実施について説明し、当業者は、本明細書に開示された内容から本開示の他の利点および効果を理解することができる。本開示は、他の異なる実施形態によっても実装または適用することができ、本仕様の様々な詳細も、本開示の精神を逸脱することなく、異なる視点および用途に基づいて修正および変更することができる。
【0021】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されている単数形は、文脈上特に指定されていない限り、複数の意味を含む。
【0022】
文脈上特に明記されていない限り、明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されている「又は」という用語は、「及び/又は」の意味を含む。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されている「A~B」という用語は、文脈において特に明記されていない限り、「A以上B以下」の意味を含む。例えば、「30~150μm」は、「30μm以上150μm以下」という意味が含まれる。
【0024】
<透明導電性フィルム>
まず、図1を参照して、本開示の一実施形態による透明導電性フィルム10について説明する。透明導電性フィルム10は、図1に示すように、基板1、金属ナノワイヤ層2、遮水保護層3を含む。金属ナノワイヤ層2は基板1上に配置され、遮水保護層3は金属ナノワイヤ層2上に配置される。
【0025】
基板1の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィン共重合体(COP)、無色ポリイミド(CPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)のいずれかから選択できる。また、基板1の厚さは、15μm~125μm、好ましくは25μm~100μm、より好ましくは30μm~50μmである。ここで、基板1の厚さが15μm未満の場合、工程内での操作が容易でなく、張力の制御がうまくできず、膜切れを起こしやすく、工程の難易度が高くなる。一方、基板1の厚さが125μmを超えると、全体の光学系や柔軟性に影響を与える。
【0026】
次に、金属ナノワイヤ層2に関する限り、金属ナノワイヤ層2はキャッピング層で覆われた金属ナノワイヤを含む。銀、金、銅、ニッケル、金メッキ銀など、あらゆる金属ナノワイヤを使用できるが、これに限定されない。その中でも、コストや導電性の観点から銀ナノワイヤが好まれており、銀ナノワイヤの製造方法が特許文献2、3に記載されており、いずれも参考として組み込まれている。キャッピング層は、例えば、金属ナノワイヤ層2を形成するために金属ナノワイヤを固定するエポキシアクリル、ウレタンアクリル、ポリエステルアクリル、ポリエーテルアクリル樹脂などのアクリル酸樹脂を接着剤としたポリマー材料とすることができる。また、金属ナノワイヤ層2の厚さは、20~120nmが好ましく、より好ましくは30~100nm、最も好ましくは40~90nmであり、金属ナノワイヤ層2の金属ナノワイヤ試料をスライスした後、走査電子顕微鏡(SEM)による断面分析を行うことによって厚さを測定することができる。この厚さ範囲の金属ナノワイヤ層2と、後述する遮水保護層3により、より良い導電効果が得られる。
【0027】
また、遮水保護層3の材質に限って言えば、遮水保護層3は、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ゴム、エポキシ系接着剤など、特定の透水範囲を有する高分子材料が主体であり、さらに、遮水保護層3は、吸水性粒子4を含み、吸水性粒子4の遮水保護層3内の体積比率は、1%~5%が好ましい。吸水効果と視認性の両方の要件が得られれば、吸水性粒子4の相対体積を制限する必要はない。吸水性粒子4に関する限り、吸水性粒子4は、ポリイミドブロック共重合体等によって修飾されたポリエチレンを含むが、これに限定されないポリオレフィンアミドポリマーを含むことができる。ポリイミドブロック共重合体で修飾された前述のポリエチレンの主コロイド構造は、ポリオレフィンセグメントを95~99%含み、吸水性官能基は水と結合できるアミン基に由来する。驚くべきことに、本開示で使用される吸水性粒子4は、金属(銀など)イオンの移動によって生じる開回路と短絡を回避する吸水性と全体的に優れた視認性を同時に達成するためには、遮水保護層3の体積比で1%~5%である必要があるだけである。
【0028】
従来技術と比較して、本開示の一実施形態では、吸水性粒子4の比率を遮水保護層3の体積比で5%未満に制御することにより、全体的な光学特性の低下、特に過度に高いヘイズ値の問題を効果的に回避することができる。吸水性粒子4の割合が遮水保護層3の体積比で5%を超えると、遮水保護層3と金属ナノワイヤ層2との密着性が低下し、透明導電性フィルム10を曲げると透明導電性フィルム10の全体構造が剥がれて開回路となることがある。また、吸水性粒子4の割合が遮水保護層3の体積比で1%未満の場合は、望ましい吸水効果が得られない。
【0029】
また、遮水保護層3の厚さも透明導電性フィルム10の全体的な性質に関係する。遮水保護層3の厚みが増すと、層間の密着性が向上し、剥離を避けることができる。ただし、遮水保護層3の厚さが厚すぎると、透明導電性フィルム10の全体的な光学特性に影響を与える場合がある。したがって、遮水保護層3の厚さは、1~15μmが好ましく、5~15μmがより好ましく、5~10μmが特に好ましい。ここで、遮水保護層3の厚さが1μm未満であると、金属ナノワイヤ層2の金属が酸化され、導電性に影響を与える。一方、遮水保護層3の厚さが15μmを超えると接触インピーダンスが高くなり、電気信号の伝送に支障をきたす。
【0030】
また、遮水保護層3の厚さを考慮しつつも、透明導電性フィルム10の視認性(例えばヘイズ)に影響を与えないように吸水性粒子4の充填率を考慮する必要がある。具体的には、遮水保護層3の厚さが1μm未満の場合、遮水保護効果が十分に発揮されないことがある。一方、遮水保護層3の厚さが15μmを超えると、透明導電性フィルム10の全体的な光学特性に影響を与える場合がある。
【実施例0031】
以下、具体的に例示と比較例を参照して本開示を説明する。
【0032】
基板の材料にはPET(東レ製U483)を用い、基板の厚さは50μmとした。次に基板上に銀ナノワイヤ層を塗布し、銀ナノワイヤ層の厚さを40nmとした。参照例では、遮水保護層をコーティングせずに、参照例の透明導電性フィルムを形成した。
【0033】
(光学的性質の決定)
透明導電性フィルムの可視光透過率(T%)、ヘイズ(%)、黄色度(CEILAB色空間のb)は、従来の測定方法で測定することができる。例えば、透明導電性フィルムの光透過率とヘイズは卓上透過型ヘイズ計(BYKガードナー製ヘイズガードプラス)を用いた透過法で測定し、透過スペクトルは150mm積分球を用いた紫外可視光分光計(PerkinElmer社製、ラムダ650)で測定し、黄色度(b*)はCIE標準観測者関数の式で算出した。本開示では、透明導電性フィルムのヘイズは1.7%以下、可視光透過率(T%)は92~97%、黄色度(b)は0.5以下であることが望ましい。
【0034】
次に、次の表1の吸水性粒子の含有量と遮水保護層の厚さに応じて、さらに参照例の銀ナノワイヤ層に遮水保護層を塗布して、例1~7及び比較例1~2の透明導電性フィルムを作製した。各実施例及び比較例の遮水保護層はアクリル系接着剤であり、吸水性粒子として特定の含有量のポリイミドブロック共重合体で改質したポリエチレンを含有している。その後、参照例1~7、比較例1~2の透明導電性フィルムについて光学的性質の測定を行い、その結果を表1にまとめた。
【0035】
【表1】
【0036】
まず、表1から、遮水保護層を塗布していない場合、参照例の透明導電性フィルムが最もヘイズ(0.46%)が低いことがわかる。しかし、ナノ銀自体に固有の電解問題があるため、特に電気と水分の条件下では銀移動現象が起こりやすく、ナノ銀の信頼性はさらに低下する。そのため、参照例の透明導電性フィルムは寿命が短く(後述の銀移動試験を参照)、光学的性質に影響を与えることなく、さらに遮水保護層をコーティングする必要がある。
【0037】
次に、表1に示すように、遮水保護層を塗布した後は、遮水保護層は可視光透過率(例えば、波長が400nm~700nmの光の透過率)にはほとんど影響しないが、ヘイズや黄色度には大きな影響を与える。吸水性粒子の含有量が小さい(体積比で約1±0.5%)または中程度(体積比で約2.5±0.5%)の条件下では、遮水保護層の厚さを5μm~15μmとすることができ、いずれも許容条件下(ヘイズ値が1.7%未満、黄色度が0.5未満)では銀イオンの移動を抑制できることが例1~6から分かる。
【0038】
また、表1からわかるように、吸水性粒子の含有量が多い(体積比で5±0.5%程度)場合、遮水保護層の厚さが10μmまたは15μm(比較例1~2を参照)となると、ヘイズ値が急激に上昇(1.7%以上)することがわかり、比較例2では黄色度が0.5を超える現象も見られるため、比較例1~2は良くない。この現象は吸水性粒子中の-CH基と-NH基の極性の不一致によるものである。比較例1と比較例2の吸水性粒子の含有量が多すぎ、遮水保護層が厚すぎるため、分子間水素結合が増加して分子配列が乱れ、さらにヘイズや黄色度が急激に増加する。このことから、吸水性粒子の含有量が体積比で1±0.5~2.5±0.5%の条件下では、遮水保護層の厚さが15μmであっても、本開示で求められるヘイズ値(1.7%以下)を満たすことが分かる。ただし、吸水性粒子の含有量が体積比で5±0.5%の条件下で、遮水保護層の厚さが10μmまたは15μmの場合には、本開示の所望のヘイズ値(1.7%以下)を満たすことができない。
【0039】
次に、図2、表2、表3を参照して、上記の現象についてさらに議論を進める。図2は、参照例および例1、4、7の透明導電性フィルムのフーリエ変換赤外分光法(FTIR)スペクトルである。また、吸収スペクトル強度を正規化した後、図2からそれぞれのピーク強度値を、図2から吸収スペクトルを積分する方法でそれぞれのスペクトル積分面積を計算することができる。その結果を以下の表2および表3にまとめる。
【0040】
【表2】
【0041】
図2に示すように、参照例には遮水保護層が塗布されていないため、吸水性粒子からの-CH基と-NH基の特徴的なピークは観測されない。また、図2に示すように、例1、4、7では、約2945cm-1の位置に-CH基の特性ピークが、約3450cm-1の位置に-NH基の特性ピークが観測されている。また、例1、4、7の-CH基特性ピークの最大強度は0.922~0.999の範囲であり、実施例間の差異はほとんどないのに対し、-NH基特性ピークの最大強度は0.173~0.378の範囲であり、実施例間で大きな差があった。
【0042】
また、図2では、-CH基特性ピーク(2750cm-1~3000cm-1波数領域の第一吸収ピーク)と-NH基特性ピーク(3000cm-1~3750cm-1波数領域の第二吸収ピーク)の最大ピーク強度比(第二吸収ピーク/第一吸収ピーク)が吸水性を表している。最大ピーク強度比(強度比とも呼ばれる)が大きいほど、吸水能力が高くなる。本開示では、第一吸収ピークの最大ピーク強度と第二吸収ピークの最大ピーク強度の比は0.18~0.50の範囲である。強度比が0.18未満の場合、N-H結合の数が少なすぎるため、十分な吸水・遮水効果が得られない。比較すると、強度比が0.50を超えると光学的性質が低下することがあり、遮水保護層の厚さが薄い(例:5μm)場合でも、ヘイズが2%を超えることがあり、透明導電性フィルムのさらなる適用には不利である。
【0043】
具体的には、本開示で使用される吸水性粒子の主成分は、イミン環(-CO-NH-CO-)を含む有機高分子材料であるポリイミドを含むため、ポリイミドの分子鎖は多数の芳香族基(例えばベンゼン環、イミド結合などである。)を含む。そのため、熱安定性や機械的・電気的・化学的特性に優れているだけでなく、吸水性も高い。
【0044】
また、図2と次の表3に示すように、第一吸収ピークのスペクトル積分面積(第二吸収ピークのスペクトル積分面積/第一吸収ピークのスペクトル積分面積)に対する第二吸収ピークのスペクトル積分面積の比(0.618~1.410)においても、吸水性と光学的性質の適切なバランスをとることができる。
【0045】
【表3】
【0046】
次に、以下のサンプル製造方法により、本開示が銀移動機構の発生を抑制できることが証明される。
【0047】
(サンプルの製造方法)
まず、図4のフローチャートに従って、参照例と例1を基に銀移動試験用のサンプルを作成した。具体的には、サンプルの作製には、ナノ銀および銅パッドパターニングプロセス(S1~S6)および銅ウィンドウニングプロセス(S7~S10)が含まれる。
S1:参照例の透明導電性フィルムの金属ナノワイヤ層2となる銀ナノワイヤ層上に厚さ約200nmの金属銅層5をスパッタした。また、実施例1の透明導電性フィルムの遮水保護層(不図示)の上に厚さ約200nmの金属銅層5をスパッタした。
S2:S1に続いて、各金属銅層5上にフォトレジスト6の層を塗布した。
S3:S2に続いて、銀ナノワイヤ層と銅パッド(層)の線と電極パターンを規定する第一マスクを使用して露光と現像処理を行った。
S4:S3に続いて、銅エッチング液を用いて銅エッチングを行い、銅回路と電極の作製を完了した。
S5:S4に続いて、銀エッチング液を用いてナノ銀エッチングを行い、銀ナノワイヤ電極の作製を完了した。
S6:S5に続いて、剥離液を用いてフォトレジスト6を剥離除去し、銀ナノワイヤ層と銅パッド(層)のパターニング工程が完了した。
S7:S6に続いて、銀ナノワイヤ層と銅パッドをパターン化した後、透明導電性フィルム上にフォトレジスト6’の層をコーティングした。
S8:S7に続いて、第二のマスクを使用して露光・現像処理を行い、銅窓パターンを定義した。
S9:S8に続いて銅エッチング液を用いて銅エッチングを行った。
S10:最終的にS9の後、剥離液を用いてフォトレジスト6’を剥離除去し、銅のウィンドウプロセスを完了して銀移動試験用のサンプルを得た。
【0048】
銀移動試験のサンプルを85℃/85%である高温高湿度環境に置き、直流(DC)と5Vの電圧を印加して、これらの試験条件において銀ナノワイヤ層内の銀ナノワイヤの抵抗の時間に対する分散を追跡した。銀ナノワイヤ電極の幅は100μm、銀ナノワイヤ電極間の間隔(ギャップ距離)は50μmである。銀移動試験の結果は図3図5を参照されたい。さらに、銀ナノワイヤ電極間のギャップ距離を30μm~200μmの間で調整することができる。
【0049】
図3は参照例と例1の銀移動試験のグラフである。図3に示すように、約45時間の電源投入後、参照例の透明導電性フィルムのワイヤ抵抗変化率が10%を超えている。これに対して、実施例1の透明導電性フィルムのワイヤ抵抗変化率は、約450時間の電源投入後でも10%を超える程度である。このことから、参照例の透明導電性フィルムと比較して、実施例1の透明導電性フィルムは、過酷な銀移動試験条件(直流、電圧5V、85℃/85%)において、45時間~450時間と約10倍の寿命(ワイヤ抵抗変化率が10%以上になるまでの時間)を持つことが分かる。また、実施例1の透明導電性フィルムのワイヤ抵抗変化率は、約400時間電源を入れても約8%しか変化しない。
【0050】
また、図5に示すように、一般的に電極の線幅は銀イオンの移動に影響を与えないため、固定線幅が100μm、ギャップ距離がそれぞれ30μm、50μm、100μm、200μmの条件で試験を行い、380時間、390時間、420時間、470時間の抵抗変化率は試験に合格した時点で10%未満である。したがって、ギャップ距離は寿命と線形の関係にあり、その関係はy=0.53179x+364.47977(x=ギャップ距離、y=寿命)と表すことができることがわかる。
【0051】
上記の結果から、本開示の透明導電性フィルムの信頼性は、電子製品性能における銀ナノワイヤ層の安定性をさらに向上させることができる、遮水保護層を使用することによって大幅に向上することがわかる。
【0052】
本開示の透明導電性フィルムは、タッチセンサのタッチセンシング電極に適用することができる。さらに、フラット/フレキシブルタッチディスプレイ、有機太陽光発電(OPV)、有機発光ダイオード(OLED)照明、スマートウィンドウ、および透明導電性フィルムを含む可能性のあるその他の製品にも適用できる。
【0053】
要約すると、本開示の透明導電性フィルムおよびその応用は、少なくとも以下の優れた技術的効果を有する。
1.本開示の透明導電性フィルムは、屈曲可能な効果を有し、導電層の導電性を損なうことなく層間接着を維持することができる。
2.本開示の透明導電性フィルムは、過酷な環境における銀イオンの移動を抑制することができ、導電性を犠牲にすることなく、特にヘイズ特性において顕著な優れた可視性効果を有することができる。
【0054】
本開示は、上記の実施例に限定されるものではなく、請求項に示された範囲内で様々な修正を加えることができ、異なる実施例で開示された技術的手段を適切に組み合わせて得られた実施例も本開示の技術的範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5