(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041038
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】体感冷却上衣
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20240318BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240318BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20240318BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20240318BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D31/00 502S
A41D31/04 Z
A41D1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113950
(22)【出願日】2023-07-11
(62)【分割の表示】P 2022145063の分割
【原出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】514105022
【氏名又は名称】株式会社オーエムスポーツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】桐村 智一
【テーマコード(参考)】
3B030
3B211
【Fターム(参考)】
3B030AA01
3B030AB08
3B211AA01
3B211AB01
3B211AB11
3B211AC01
3B211AC02
(57)【要約】
【課題】水分の気化熱をより確実かつ的確に利用して十分な冷却効果を体感することができる体感冷却上衣を提供する。
【解決手段】左右に開閉自在な前身頃と、後身頃と、前記後身頃から前記前身頃にかけて内蔵される冷却構造体と、を有し、前記冷却構造体が、透湿防水素材で構成された保水袋及び前記保水袋の内部に挿入された保水芯材で構成されており、前記後身頃の内面側に複数の通気性凸状部が設けられており、少なくとも前記後身頃の左右下方部分に通気性領域が設けられていること、を特徴とする体感冷却上衣。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
右側前身頃及び左側前身頃を含み左右に開閉自在な前身頃と、後身頃と、前記後身頃から前記前身頃にかけて取り付けられた冷却構造体と、を有する体感冷却上衣であって、
前記冷却構造体が、透湿防水素材で構成された保水袋及び前記保水袋の内部に挿入された保水芯材で構成されており、
前記前身頃及び前記後身頃の左右下方部分に連続して、前記体感冷却上衣の外部と内部を通気させるメッシュ状の通気性領域が設けられており、
前記前身頃及び前記後身頃において、袖ぐり周辺部分に環状に、前記体感冷却上衣の外部と内部を通気させるメッシュ状の通気性領域が設けられおり、
前記冷却構造体が前記後身頃から前記右側前身頃及び前記左側前身頃まで延びる形状を有していること、
を特徴とする体感冷却上衣。
【請求項2】
前記後身頃の上方に、前記冷却構造体内に水を注入して供給するための注入口が設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の体感冷却上衣。
【請求項3】
前記後身頃の左右下方部分に空調ファンが着脱自在に配置されていること、
を特徴とする請求項1に記載の体感冷却上衣。
【請求項4】
前記後身頃の内面側に複数の通気性凸状部が設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の体感冷却上衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の身体を好適に冷却可能な体感冷却上衣に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化現象も相俟って夏季の気温上昇がすさまじく、高温下での作業や運動等に起因する熱中症が問題視されている。熱中症は、視床下部の体温を正常に保つ機能が低下することで全身の発汗作用が停止し、体温が過剰に上昇してしまう症状である。
【0003】
上記のような熱中症への対策として快適な環境を提供するために、冷却のための様々な技術が考案されている。例えば特許文献1(特開2008-260213号公報)においては、手足の保護や保温保湿を目的として、ポリエステル系繊維及び/又はポリアミド系繊維からなる不織布と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層とが低透湿性樹脂層を介して積層一体化された低透湿性積層体が提案されている。
【0004】
他方、例えば特許文献2(国際公開第02/067708号パンフレット)においては、簡易な構造で快適に過ごすことのできる冷却衣服を提供することを目的として、着衣したときに服地部と体との間に空気の流通路を確保するための一又は複数のスぺーサと、外部の空気を流通路内に取り入れるための空気入口部と、流通路内の空気を外部に取り出すための空気出口部と、流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる送風手段と、を備えた冷却衣服が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-260213号公報
【特許文献2】国際公開第02/067708号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1において提案されている積層体では、不織布が皮膚側に露出していることから、想定以上の水分を含んで不快感が増大することがあり、また、汗等の吸収し易い反面、乾燥しにくく十分な気化熱が得られないことがあるため、そのまま衣服に適用することは困難である。
【0007】
他方、上記特許文献2において提案されている空調衣服では、概ね外部の空気を衣服内部に引き込む構造となっており、引き込まれた空気の大半が衣服内部に滞留し、十分な冷却効果が得られないことがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、水分の気化熱をより確実かつ的確に利用して十分な冷却効果を体感することができる体感冷却上衣を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決すべく、本発明は、
左右に開閉自在な前身頃と、
後身頃と、
前記後身頃から前記前身頃にかけて取り付けられた冷却構造体と、
を有し、
前記冷却構造体が、透湿防水素材で構成された保水袋及び前記保水袋の内部に挿入された保水芯材で構成されており、
前記後身頃の内面側に複数の通気性凸状部が設けられており、少なくとも前記後身頃の左右下方部分に通気性領域が設けられていること、
を特徴とする体感冷却上衣、
を提供する。
【0010】
このような構成を有する本発明の体感冷却上衣の構造によれば、冷却構造体の内部に貯留されている水分を確実に気化させることができるとともに、少なくとも背中と接する面において空気の道(気道)が形成されることから、水分の気化熱をより確実かつ的確に利用して十分な冷却効果を体感できる。上記構造によれば、特に下方から上方への空気及び気化熱の流れを形成乃至は促進でき、効果的である。
【0011】
上記のような構成を有する本発明の体感冷却上衣においては、
前記前身頃及び前記後身頃の袖ぐり周辺部分にも通気性領域が設けられていること、
が好ましい。
【0012】
このような構成を有する本発明の体感冷却上衣の構造によれば、更に袖ぐり周辺部分も出入口として、背中と接する面において空気の道が形成されることから、水分の気化熱をより確実かつ的確に利用して十分な冷却効果を体感できる。上記構造によれば、特に下方から上方に加えて、袖ぐり周辺部分から上方への空気及び気化熱の流れを形成乃至は促進でき、より効果的である。
【0013】
更に上記のような構成を有する本発明の体感冷却上衣においては、
前記後身頃の左右下方部分に空調ファンが着脱自在に配置されていること、
が好ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明の体感冷却上衣の構造によれば、冷却構造体の内部に貯留されている水分を確実に気化させることができるとともに、少なくとも背中と接する面において空気の道が形成され、かつ空調ファンによって強制的に下方から上方への空気の流れを形成できるため、水分の気化熱をより確実かつ的確に利用して十分な冷却効果を体感できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の体感冷却上衣によれば、水分の気化熱をより確実かつ的確に利用して十分な冷却効果を体感することができる体感冷却上衣を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る体感冷却上衣1を正面からみた場合の概略図(A)及び背面からみた場合の概略図(B)である。
【
図2】
図1の(A)に示す体感冷却上衣1の前身頃2(2R,2L)を開いた様子を示す概略図である。
【
図3】
図1に示す体感冷却上衣1に内蔵される冷却構造体6の構造を示す概略断面図である。
【
図4】
図3に示す冷却構造体6の概略正面図(A)及び冷却構造体6に内包される保水芯材6aの概略正面図(B)である。
【
図5】
図1の(B)に示す体感冷却上衣1の後身頃4の左右下方部分に空調ファン18を設けた様子を示す概略図である。
【
図6】
図1の(B)に示す体感冷却上衣1の後身頃4の上方端部周辺の注入口16を説明するための概略部分拡大図であり、閉じた状態(A)と開いた状態(B)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る体感冷却上衣について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0018】
(1)体感冷却上衣について
図1は、本発明の一実施形態に係る体感冷却上衣1を正面からみた場合の概略図(A)及び背面からみた場合の概略図(B)である。本実施形態に係る体感冷却上衣1(以下、単に「上衣1」ともいう。)の構成について説明する。
【0019】
上衣1としては、本実施形態では半袖であるが長袖でもよく、また、具体的な上衣としては、例えば作業服、防災服、ジャンパー、ベストが挙げられるが、これらに限られない。また、上衣1の用途としては、屋内外での作業、工事現場、建設現場、工場、お祭り、釣り、花火及びキャンプ等のアウトドア、ウォーキング、ジョギング及びゴルフ等のスポーツ、スポーツ観戦、自転車やバイクでの移動・ツーリング等、並びに観光等が挙げられるが、これらに限られない。
【0020】
本実施形態の上衣1は、
図1(A)に示すように、左右に開閉自在な前身頃2(2R,2L)及び後身頃4を有しており、前身頃2の右側前身頃2Rと左側前身頃2Lとの間には、例えば上下にスライドさせて開閉するファスナ等で開閉自在な開口部2Fが形成されている。
【0021】
また、前身頃2の右側前身頃2R及び左側前身頃2L並びに後身頃4は、主として、それぞれ例えばポリエステル製又はナイロン(ポリアミド)製のラッセルメッシュ状で通気性を有する三次元構造体等からなる表地で構成されている。
【0022】
後身頃4の左右下方部分10R,10Lには、
図1(B)に示すように、例えばポリエステル製又はナイロン(ポリアミド)製のトリコットメッシュ状で通気性を有する表地で形成された略扇状の通気性領域が設けられている。
【0023】
また、
図1(A)に示すように、前身頃2の右側前身頃2R及び左側前身頃2Lの左右下方部分14R,14Lにも、例えばポリエステル製又はナイロン(ポリアミド)製のトリコットメッシュ状で通気性を有する表地で形成された略扇状の通気性領域が設けられている。
【0024】
本実施形態においては、右側前身頃2R、後身頃4及び左側前身頃2Lは、縫い目無く連続しており、後身頃4の内部と前身頃2の内部とが側縁部において連通している。また、後身頃4の左右下方部分10R,10Lの通気性領域と前身頃2の左右下方部分14R,14Lの通気性領域も連続しており、これらによって背中側から腹側の全体にわたって通気性が確保されている。後身頃4の左右下方部分10R,10Lの通気性領域のほうが前身頃2の左右下方部分14R,14Lの通気性領域よりも面積が広く、これにより背中側内部への通気性をより向上させている。
【0025】
上記の左右下方部分の通気性領域と同様に、前身頃2及び後身頃4それぞれの袖ぐり(アームホール)周辺部分12R,12Lにも、例えばポリエステル製又はナイロン(ポリアミド)製のトリコットメッシュ状で通気性を有する表地で形成された略環状の通気性領域が設けられている。これにより、上衣1の内部で温度の上がった空気や気化熱が、首回り部に加えて、袖ぐりからも、外部に抜け易くなり、より冷却を体感することができる。
【0026】
なお、首回り部、袖ぐり及び裾部においては、図示しないが、それぞれの端縁部をニットバインダー等のテープ状部材で覆って縫製すること等により、いわゆるほつれ処理が施されているのが好ましい。このほつれ処理は、熱融着、溶着、接着剤、縫製等であってもよい。
【0027】
次に、
図2は、
図1の(A)に示す体感冷却上衣1の前身頃2(2R,2L)を開いた様子を示す概略図である。
図2に示すように、後身頃4の内面側には複数の通気性凸状部8が規則的に配列して取り付けられている。この通気性凸状部8は、例えばポリエステル製又はナイロン製のメッシュ状三次元構造材等で構成されており、ある程度の厚み(例えば1mm~15mm、好ましくは2mm~10mm、より好ましくは3mm~10mm)を有している。
【0028】
このような構成の通気性凸状部8があることにより、通気性凸状部8そのものの内部に加えて、後身頃4の内面側において背中と接する部分に、空気や気化熱の通り道を確保することができ、より確実に冷却を体感することができる。なお、前身頃2及び後身頃4の内側には、裏地が設けられていてもよく、その場合には、裏地の背中側表面に通気性凸状部8を配置すればよい。
【0029】
なお、
図2において、通気性凸状部8は円形状を有しているが、上記のとおりある程度の厚みを有しており、本発明の効果を損なわない範囲であれば、線状や矩形状等の種々の形状を有していてもよい。例えば上下に延びる略帯形状や略楕円形状であってもよい。また、通気性凸状部8は、例えば面ファスナによって着脱自在に取り付けられてもよい。
【0030】
また、
図1(B)に示すように、後身頃4の上方端部周辺には、冷却構造体6に水を注入して供給するための注入口16が設けられている。注入口16は、例えばペットボトル等から上衣1内の冷却構造体6に水を容易かつ簡便に注入することができるように、容易かつ簡便に開閉することができ、かつ水密的に閉じた状態とできるものである。
【0031】
かかる注入口16としては、例えばジップロック(登録商標)、その他各種水密・気密ファスナ及び防水ファスナ等を採用することができる。本実施形態の注入口16では、ジップロック(登録商標)と同じ機構を採用しており、
図1(B)に示すように下向きのタブ部分を指先で持って上げれば、容易に開けることができ、全体を押さえれば水密的に閉じることができる。
【0032】
(2)冷却構造体について
上記のように、本実施形態の上衣1においては、後身頃4の内部と前身頃2の内部とが側縁部において縫い目無く続いており、後身頃4の内部と前身頃2の右側前身頃2R及び左側前身頃2Lの全体にわたって内部に単一の冷却構造体6が取り付けられている。この取付けは、例えば熱融着、高周波溶着又は接着剤等によってなされていればよい。なお、前身頃2及び後身頃4それぞれは、2枚の同じ生地で形成された空隙部を有する袋状体であってもよく、その場合には、この空隙部に冷却構造体6を内蔵することもできる。
【0033】
ここで、
図3は、
図1に示す体感冷却上衣1に内蔵される冷却構造体6の構造を示す概略断面図であり、
図4は、
図3に示す冷却構造体6の概略正面図(A)及び冷却構造体6に内包される保水芯材6aの概略正面図(B)である。
【0034】
図3に示すように、冷却構造体6は、両面がシート状の透湿防水素材で構成された保水袋6bと、保水袋6bの内部に挿入された保水芯材6aと、で構成されている。表側の透湿防水素材と裏側の透湿防水素材とが周縁部において熱融着、高周波溶着又は接着剤等によって水密的に接合されており、内部に保水芯材6aを内蔵可能な空隙部が形成され、この空隙部及び保水芯材6aに水が注入(給水)されるのである。
【0035】
本実施形態における冷却構造体6は、
図4(A)に示すように、略W形状を有しているとも言うことができ、後身頃4の内部から両側縁部を通って前身頃2の右側前身頃2R及び左側前身頃2Lまで延びる形状を有している。また、後身頃4の上方に設けられた注入口16に連通して冷却構造体6の内部に水を導くための開口16aも有している。
【0036】
冷却構造体6に内蔵される保水芯材6aは、
図4(B)に示すように、冷却構造体6と相似形でやや小さい寸法を有している。これらのような形状を有することにより、保水芯材6aは冷却構造体6の内部で位置ずれを起こしたりしにくく、また、冷却構造体6は上衣1(後身頃4及び前身頃2)において位置ずれを起こしたりしにくい。
【0037】
本実施形態においては、
図4(B)に示すように、保水芯材6aには、注入された水をより確実に保持できるように、例えばトムソン打ち抜き等によって円形状の開口部(孔)20が複数、左右対称に規則的に配列して形成されている。
【0038】
なお、
図4(A)に示すように、冷却構造体6(保水袋6b)の外表面に位置する透湿防水素材は、符号16bで示す円形状部分(溶着部)において、高周波熱溶着等によって前身頃2及び後身頃4と接合されていてもよい。また、透湿防水素材は、符号16bで示す円形状部分(溶着部)において、高周波熱溶着等によって内部の保水芯材6aと接合されていてもよい。
【0039】
このような接合によっても、冷却構造体6は上衣1(後身頃4及び前身頃2)の内部で位置ずれを起こしたりしにくく、また、保水芯材6aは冷却構造体6の内部で位置ずれを起こしたりしにくいというメリットを享受することができる。
【0040】
なお、冷却構造体6及び保水芯材6aのいずれについても、本発明の効果を損なわない範囲であれば、種々の形状を取り得る。また、本実施形態の冷却構造体6(保水袋6b)の外周縁部には、
図4(A)に示すように、たたき付け部分が表われているが、これは表側には見えないように取付けるか内蔵すればよい。また、たたき付け部分は省略することもできる。
【0041】
ここで、この冷却構造体6を構成する保水袋6は、両面が、水を透過させることなく水蒸気のみを透過させることができる透湿防水素材で形成されており、したがって、両面において同じ透湿防水機能を発揮する。この保水袋6bの内部に水を貯めることにより、内部の水は水蒸気としてしか透湿防水素材を通過することができないことから、上衣1の内外を濡らさず、内部の水が気化することにより気化熱が奪われて体感温度を例えば1~5℃程度下げることができる。
【0042】
上衣1を使用者が着用した場合、保水袋6bの内部に水が存在して自由に移動したり位置が偏ったりすると、着用感が阻害されたり、冷却を体感できる部分に偏りが出たりするという問題があるが、本実施形態においては、保水芯材6aが内蔵されていることにより、これに水が吸収されて保持されるため、かかる問題を解消している。
【0043】
保水芯材6aとしては、保水機能を有すれば種々の材料からなる織布、不織布若しくは編布等の布又はスポンジ状シート等を用いることができる。材料としては、例えば、ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ウレタン、レーヨン及び綿等が挙げられる。
【0044】
透湿防水素材の透湿度は、本発明の効果を損なわない範囲で種々の範囲に設定することができるが、例えば3000g/m2・24時間以上であることが好ましい。この透湿度は、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の条件Bに準拠して測定される。3000g/m2・24時間以上であれば、保水袋6内の水が気化した水蒸気を十二分に透過させることができる。また、透湿防水素材の透湿度を変化させることにより、様々な用途に用いることができる。
【0045】
また、透湿防水素材の耐水圧も、本発明の効果を損なわない範囲で種々の範囲に設定することができるが、例えば5000mm以上であれば、保水袋6からは水蒸気しか透過していかず、水は保水袋6内に確実に保持することができるため、好ましい。
【0046】
透湿防水素材としては、従来公知のものを用いることができるが、供給された水の気化熱による冷却をより確実に体感するという本発明の効果を損なわない範囲で選択する。例えば、旭化成(株)製のソファンデ(登録商標)、セーレン(株)製のアクアマックス(登録商標)、アミシェルター、テクノブレン(登録商標)、サイレントシェル、バーレル(登録商標)及びバーレル(登録商標)・グリーン、帝人(株)製のファインセル(登録商標)、ナチュラルバリア(登録商標)、レクタス(登録商標)及びデルタ(登録商標)、東レ(株)製のエントラント(登録商標)及びダーミザクス(登録商標)、並びに、ユニチカ(株)製のプルーフエース(登録商標)等が挙げられる。
【0047】
(3)空調ファンについて
図5は、
図1の(B)に示す体感冷却上衣1の後身頃4の左右下方部分に空調ファン18を設けた様子を示す概略図である。本実施形態の上衣1には、後身頃4の左右下方部分10R,10Lに空調ファン18を着脱自在に取り付けることができる。
【0048】
ここでは図示しないが、後身頃4の左右下方部分10R,10Lに、略円形の貫通孔であって、上衣1の外部と内部とを連通する空調ファン取付用孔を形成する。ただし、空調ファン18の外形形状は通常円筒形状であるが、他の形状である場合は当該形状に合わせて孔の形状を適宜選択すればよい。なお、空調ファン取付用孔の端縁には、比較的生地が厚く、中心部に孔を有するリング状布を取り付けて強度を向上させてもよい。
【0049】
本実施形態の上衣1が空調ファン18を具備する場合、後身頃4の左右下方部から外部側の空気を内部側に引き込み、上衣1の内部に気流を発生させて循環させることにより空調を行うことができる。空調ファン18が回転すると外部の空気を上衣1の内部に引き込み、空気を、着用者の身体と上衣1との隙間を広げつつ徐々に下方から上方及び前方(前身頃2と身体の間)に充填させる。
【0050】
上衣1の内部に一定量の空気が充填されると、首回り部(と使用者との隙間)や、袖ぐり周辺部分12R,12Lの通気性領域から、外部に放出され、主として、背筋を下方から上方に流れる気流を形成して熱がこもるのを防ぐことができる。背筋近傍は、着用者が特に冷感を体感できる部位であるため、高い冷却効果を得ることが可能となる。
【0051】
このとき、後身頃4の内面側に通気性凸状部8を配列させて設けることによって気流の道を形成していれば、背筋を下方から上方に流れる気流をより確実に形成することができ、熱がこもるのを確実に防ぐことができ、冷却効果は更に向上する。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【0053】
ここで、
図6は、
図1の(B)に示す体感冷却上衣1の後身頃4の上方端部周辺に設けられた注入口16の、水密的に閉じた状態(A)及び開いた状態(B)を示している。この注入口16は、ジップロック(登録商標)と同じ機構を採用しており、
図6(A)に示す下向きのタブ部分を指先で持って上げれば、
図6(B)に示すように容易に開けることができる。なお、
図6(B)には、互いに噛み合って封止する線状部分が表れている。
【0054】
本実施形態では、後身頃4の上方端部周辺から冷却構造体6に水を注入することから、冷却構造体6の全体にわたって水が供給され易い。他方、着用したままの上衣1に使用者が給水し易いように、左右の胸部分や脇部分に注入口が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上記のような本発明に係る体感冷却上衣は、水分の気化熱をより確実かつ的確に利用して十分な冷却効果を体感することができるものであり、屋内外での作業、工事現場、建設現場、工場、お祭り、釣り、花火及びキャンプ等のアウトドア、ウォーキング、ジョギング及びゴルフ等のスポーツ、スポーツ観戦、自転車やバイクでの移動・ツーリング等、並びに観光等の用途に好適に対応可能である。特に自然に風が取り込まれる環境(例えばウォーキング、ジョギング、自転車やバイクでの移動・ツーリング等)での使用にも好適である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・体感冷却上衣、
2・・・前身頃、
4・・・後身頃、
6・・・保水袋、
6a・・・保水芯材、
6b・・・透湿防水素材、
8・・・通気性凸状部、
10R,10L・・・後身頃4の左右下方部分、
12R,12L・・・袖ぐり周辺部分、
14R,14L・・・前身頃2の左右下方部分、
16・・・注入口、
16a・・・開口、
16b・・・溶着部、
18・・・空調ファン。