(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041047
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】マルチキャビティ脈動マフラーシステム付電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/06 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
F04C29/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023129316
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】17/944,059
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズリー ブレント
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB22
3H129BB42
3H129BB44
3H129CC25
3H129CC28
3H129CC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高効率、低騒音及び最大運転寿命を有する電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機は、ハウジングと、冷媒入口ポートと、冷媒出口ポートと、インバータ部と、モータ部と、圧縮装置と、前面カバーとを備える。ハウジングは、吸気容積部及び排気容積部の範囲を定める。冷媒入口ポートは、ハウジングに結合され、冷媒を吸気容積部の内部に導入するように構成される。圧縮装置は、冷媒を圧縮するように構成されたスクロール型の圧縮装置である。冷媒出口ポートは、ハウジングに結合されており、圧縮された冷媒が排気容積部からスクロール型電動圧縮機を出ることができるように構成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するように構成されたスクロール型電動圧縮機であって、
吸気容積部と排気容積部とを定め、略円筒形状を有し、中心軸を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部に取り付けられ直流電力を交流電力に変換するように構成されたインバータモジュールと、
前記ハウジングの内側に取り付けられたモータと、
前記モータに結合され、前記モータが回転するときに、前記吸気容積部から冷媒を受け取り、圧縮する圧縮装置とを備え、
前記圧縮装置は、
圧縮サイクル中に、圧縮された冷媒を前記排気容積部の内部に制御可能に放出する中央圧縮装置出口ポートと第1及び第2側部圧縮装置出口ポートとを有し、
圧縮サイクルにおいて、冷媒が中央排気ポートを介して放出されるよりも早く、前記第1及び第2側部圧縮装置出口ポートを介し、圧縮された冷媒を前記排気容積部の内部に放出するように構成されている
ことを特徴とするスクロール型電動圧縮機。
【請求項2】
前記圧縮装置は、
前記中央圧縮装置出口ポート、並びに、前記第1及び第2側部圧縮装置出口ポートにそれぞれ対応し、圧縮された冷媒を前記排気容積部に制御可能に放出する中央リードと2つの側部リードとを備えたリード機構を備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項3】
前記ハウジングの内部に位置し、前記モータに結合される駆動軸をさらに備え、
前記駆動軸は、第1及び第2端部を有し、中心軸を規定し、
前記駆動軸は、前記中心軸に合わせて配置され、
前記圧縮装置は、
前記ハウジングの内部に位置し、前記ハウジングに対して固定されている固定スクロールと、
前記駆動軸に結合された旋回スクロールとを備え、
前記旋回スクロール及び前記固定スクロールは、前記駆動軸が前記中心軸の回りに回転するときに、前記吸気容積部から冷媒を受け取り、圧縮する圧縮チャンバを形成する
ことを特徴とする、請求項2に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項4】
前記中央圧縮装置出口ポート、並びに、前記第1及び第2側部圧縮装置出口ポートは、前記固定スクロールの内部に配置されている
ことを特徴とする、請求項3に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項5】
前記圧縮装置と冷媒出口ポートとの間で、前記ハウジングの排気チャンバの内部に形成されたオイルセパレータをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項4に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項6】
前記オイルセパレータは、
前記中央圧縮装置出口ポートに隣接して形成され、中央圧縮装置出口スロットを介して混合オイル及び圧縮された冷媒を受け取る中央排気チャンバと、
前記中央排気チャンバの相対する側に配置され、前記第1及び第2圧縮装置出口ポートにそれぞれ隣接し、それらから、混合オイル及び圧縮された冷媒を受け取る第1及び第2側部排気チャンバであって、それぞれの側部チャネルを介して前記中央排気チャンバに接続され、前記側部チャンバは、混合オイルと圧縮された冷媒とを分離するように構成される、第1及び第2側部排気チャンバとを備えている
ことを特徴とする、請求項5に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項7】
前記オイルセパレータは、
中央排気チャンバの下に配置され、それぞれの側部排気チャネルによって前記第1及び第2側部排気チャンバに結合され、前記一対の側部チャンバに、それぞれの下部排気チャネルを介して接続され、圧縮された冷媒から前記側部チャンバ内で分離されたオイルを受け取るように構成されている、オイルリザーバと、
前記一対の側部チャンバの上部に形成され、それらにそれぞれの上部排気チャネルを介して接続される上部排気チャンバとをさらに有する
ことを特徴とする、請求項6に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項8】
各側部排気チャネルが、混合されたオイル及び圧縮された冷媒を、それぞれの側部チャンバの反対側の内壁に向けるように構成されている
ことを特徴とする、請求項7に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項9】
前記それぞれの側部チャンバの内部に配置されたバッフルを含む
ことを特徴とする、請求項8に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項10】
前記オイルリザーバが、前記中央排気チャンバの下に配置されたオイルリザーババッフルを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項11】
冷媒を圧縮するように構成されたスクロール型電動圧縮機であって、
吸気容積部及び排気容積部を規定するハウジングと、
前記ハウジングに結合され、冷媒を前記吸気容積部に導入するように構成された冷媒入口ポートと、
前記ハウジングに結合され、圧縮された冷媒が前記排気容積部から前記スクロール型電動圧縮機を出ることを可能にするように構成された冷媒出口ポートと、
前記ハウジングの内部に取り付けられ直流電力を交流電力に変換するように構成されたインバータモジュールと、
前記ハウジングの内側に取り付けられたモータと、
前記モータに結合された駆動軸と、
前記駆動軸に結合され、前記駆動軸が前記モータによって回転させられるときに、前記吸気容積部から冷媒を受け取り、圧縮する圧縮装置とを備え、
前記圧縮装置は、圧縮サイクル中に、圧縮された冷媒を前記排気容積部に制御可能に放出する中央圧縮装置出口ポートと第1及び第2側部圧縮装置出口ポートとを有し、
前記圧縮装置は、前記圧縮サイクルにおいて、中央排気ポートを介して冷媒が放出されるよりも早く、前記第1及び第2側部圧縮装置出口ポートを介し、圧縮された冷媒を前記排気容積部に放出するように構成される、
ことを特徴とする、スクロール型電動圧縮機。
【請求項12】
前記圧縮装置は、前記中央圧縮装置出口ポート並びに前記第1及び第2側部圧縮装置出口ポートにそれぞれ対応し、圧縮された冷媒を前記排気容積部に制御可能に放出する、中央リードと2つの側部リードとを備えたリード機構を備える
ことを特徴とする、請求項11に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項13】
前記圧縮装置は、
前記ハウジングの内部に位置し、前記ハウジングに対して固定されている固定スクロールと、
前記駆動軸に結合された旋回スクロールとを備え、
前記旋回スクロール及び前記固定スクロールは、前記駆動軸が前記中心軸の回りに回転するときに、前記吸気容積部から冷媒を受け取り、圧縮する圧縮チャンバを形成する
ことを特徴とする、請求項12に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項14】
前記中央圧縮装置出口ポート並びに前記第1及び第2側部圧縮装置出口ポートは、前記固定スクロールの内部に配置されている
ことを特徴とする、請求項13に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項15】
前記圧縮装置と前記冷媒出口ポートとの間で、前記ハウジングの排気チャンバの内部に形成されたオイルセパレータをさらに備える
ことを特徴とする、請求項14に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項16】
前記オイルセパレータは、
前記中央圧縮装置出口ポートに隣接して形成され、中央圧縮装置出口スロットを介して混合オイル及び圧縮された冷媒を受け取る中央排気チャンバと、
前記中央排気チャンバの相対する側に配置され、前記第1及び第2圧縮装置出口ポートにそれぞれ隣接し、それらから混合オイル及び圧縮された冷媒を受け取る第1及び第2側部排気チャンバであって、
前記第1及び第2側部排気チャンバは、それぞれの側部チャネルを介して中央排気チャンバに接続され、
前記側部チャンバは、混合オイルと圧縮された冷媒とを分離するように構成される、第1及び第2側部排気チャンバとを備える
ことを特徴とする、請求項15に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項17】
前記オイルセパレータは、
中央排気チャンバの下に配置され、それぞれの側部排気チャネルによって、前記第1及び第2側部排気チャンバに結合され、それぞれの下部排気チャネルを介して前記一対の側部チャンバに接続され、圧縮された冷媒から前記側部チャンバ内で分離されたオイルを受け取るように構成されているオイルリザーバと、
前記一対の側部チャンバの上部に形成され、それらにそれぞれの上部排気チャネルを介して接続された上部排気チャンバと、をさらに含む
ことを特徴とする、請求項16に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項18】
各側部排気チャネルが、混合されたオイル及び圧縮された冷媒を、それぞれの側部チャンバの反対側の内壁に向けるように構成されている
ことを特徴とする、請求項17に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項19】
前記それぞれの側部チャンバの内部に配置されたバッフルを含む
ことを特徴とする、請求項18に記載のスクロール型電動圧縮機。
【請求項20】
前記オイルリザーバが、前記中央排気チャンバの下に配置されたオイルリザーババッフルを含む
ことを特徴とする、請求項17に記載のスクロール型電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電動圧縮機に関し、特にスクロール圧縮装置を用いて冷媒を圧縮する電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、冷却システムに古くから使用されている。特に、冷媒を圧縮するために固定スクロールに対して円運動で旋回スクロールを回転させるスクロール型圧縮機は、特定の分野において冷房を提供するように設計されたシステムで使用されてきた。例えば、そのようなスクロール型圧縮機は、自動車のような電動車両のHVACシステムにおいて、空調を提供するために長い間使用されてきた。このような圧縮機はまた、逆にヒートポンプを必要とする用途において使用されてもよい。一般に、これらの圧縮機は、自動車のエンジンから得られる回転運動を用いて駆動される。
【0003】
場合によりバッテリのみで車両を動かすこともできるバッテリ駆動式若しくは電動式車両及び/又はハイブリッド車両の出現に伴い、このような圧縮機は、エンジンではなくバッテリによって駆動されるか、又は動力を供給しなければならない。このような圧縮機は、電動圧縮機と呼ばれることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の乗客室を冷房することに加えて、電動圧縮機を使用して、自動車の他の領域又は構成部品に暖房又は冷房を提供することができる。例えば、バッテリ及び/又は他のシステムを損傷又は劣化させる可能性がある熱を発生させるような、バッテリ及び/又は他のシステムを充電する場合、特に急速充電モードの間に、電子システム及びバッテリ又はバッテリ収納部を加熱又は冷却することが望まれるであろう。また、バッテリが充電されていないときや使用されていないときに、熱によってバッテリが損傷したり劣化したりすることがあるので、バッテリを冷却するために使用されることがある。電動圧縮機は様々な時間で運転されることがあるので、自動車が運転されていないときでも、このような使用は、明らかに、バッテリからの電気エネルギーを必要とし、したがって、バッテリの運転寿命を減少させる。
【0005】
さらに、電動圧縮機は、例えば2000RPM (又はそれ以上)の非常に高速で運転することができる。このような高速は、望ましくないレベルのノイズを発生する可能性がある。
【0006】
したがって、高効率、低騒音及び最大運転寿命を有する電動圧縮機を提供することが望ましい。本発明は、上記で特定された1つ若しくは複数の問題又は利点を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1実施形態において、冷媒を圧縮するように構成されたスクロール型電動圧縮機が提供される。スクロール型電動圧縮機は、ハウジングと、インバータモジュールと、モータと、圧縮装置とを含む。ハウジングは、吸気容積部及び排気容積部を規定する。ハウジングは、略円筒形状であり、中心軸を有する。インバータモジュールは、ハウジングの内部に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換するように構成される。モータはハウジングの内側に取り付けられている。圧縮装置は、モータに結合され、モータが回転するときに冷媒を吸気容積部から受け取り、圧縮する。圧縮装置は、圧縮サイクル中に圧縮された冷媒を制御可能に排気容積部内に放出するために、中央圧縮装置出口ポートと第1及び第2側部圧縮装置出口ポートとを有する。圧縮装置は、圧縮サイクルにおいて圧縮された冷媒が中央排気ポートを介して放出されるよりも早く、第1及び第2側部圧縮装置出口ポートを介して排気容積部内に圧縮された冷媒を放出するように構成される。
【0008】
本発明の第2実施形態において、冷媒を圧縮するように構成されたスクロール型電動圧縮機が提供される。スクロール型電動圧縮機は、ハウジングと、冷媒入口ポートと、冷媒出口ポートと、インバータモジュールと、モータと、駆動軸と、圧縮装置とを備える。ハウジングは、吸気容積部及び排気容積部を規定する。冷媒入口ポートは、ハウジングに結合され、冷媒を吸気容積部内に導入するように構成される。冷媒出口ポートは、ハウジングに結合されており、圧縮された冷媒が排気容積部からスクロール型電動圧縮機を出ることができるように構成されている。インバータモジュールは、ハウジングの内部に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換するように構成される。モータはハウジングの内側に取り付けられている。駆動軸はモータに結合されている。圧縮装置は、モータによって駆動軸が回転されるときに、冷媒を吸気容積部から受け取り、冷媒を圧縮するために駆動軸に結合されている。
【0009】
圧縮装置は、圧縮サイクル中に圧縮された冷媒を制御可能に排気容積部内に放出するために、中央圧縮装置出口ポートと第1及び第2側部圧縮装置出口ポートとを有する。圧縮装置は、圧縮サイクルにおいて圧縮された冷媒が中央排気ポートを介して放出されるよりも早く、第1及び第2側部圧縮装置出口ポートを介して排気容積部内に圧縮された冷媒を放出するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下の詳細な説明及び添付の図面に関連して考察すると、本発明のこれら及び他の特徴及び利点はより容易に理解されるであろう。
【
図1A】本発明の実施形態にかかる電動圧縮機の第1斜視図である。
【
図1B】中央ハウジングを取り外した
図1Aの電動圧縮機の部分図である。
【
図12】モータ及び駆動軸を含む
図1の電動圧縮機の一部分の分解図である。
【
図15A】
図12のモータのロータ及びカウンタウェイトの第1斜視図である。
【
図16A】旋回スクロール、駆動ピン及び揺動リンク機構を含む、
図1の電動圧縮機の一部を示す第1斜視図である。
【
図17A】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17B】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17C】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17D】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17E】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17F】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17G】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17H】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17I】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図17J】本発明の実施形態にかかる
図1の電動圧縮機の圧縮装置の固定スクロール及び旋回スクロールを示す図である。
【
図18A】固定スクロール及び旋回スクロールを含む、
図13の圧縮装置の一部分の第1斜視図である。
【
図19A】本発明の実施形態にかかるオイルセパレータを形成する電動圧縮機の前面カバーの第1斜視図である。
【
図20A】本発明の実施形態にかかる、ハウジングの切欠図と分離及び拘束システムを備えた電動圧縮機の部分図である。
【
図20B】本発明の別の実施形態にかかる、電動圧縮機に使用する分離及び拘束システムの一部を示す図である。
【
図20C】本発明の実施形態による、スラスト本体の第1斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1A~
図20Dは、いくつかの図において同様の符号が同様又は対応する部分を示しており、外側ハウジング12を有する電動圧縮機10が示されている。電動圧縮機10は、自動車(図示せず)のような自動車両に特に適している。電動圧縮機10は、車両の異なる側面を加熱及び/又は冷却するために、冷却装置として、又は加熱ポンプとして(逆に)使用することができる。例えば、電動圧縮機10は、電気自動車(図示せず)内の暖房、換気及び空調(HVAC)システムの一部として使用され、乗員室を冷房又は暖房することができる。さらに、電動圧縮機10は、例えば充電サイクル中に、車両が運転されていない間に、乗員室、車載電子機器及び/又は車両の動力供給に使用されるバッテリを加熱又は冷却するために使用することができる。電動圧縮機10は、さらに、車両が運転されていない間、及びバッテリが充電されていない間、バッテリの寿命を維持するか、又は劣化を最小限に抑えるために使用することができる。図示の実施形態において、電動圧縮機10の能力は36立方センチメートル(cc)である。能力とは、圧縮装置のスクロールが最初に閉じるか、又は接触するときに圧縮装置内に取り込まれる初期容積を指す(下記参照)。ここに開示する電動圧縮機10は、このような体積に限定されるものではなく、特定の要求仕様を満たすようなサイズにすることも、調整されることもできることに留意されたい。
【0012】
図示した実施形態では、電動圧縮機10はスクロール型圧縮機であり、急速かつ効率的に冷媒を圧縮して、自動車、例えば、電気自動車又はハイブリッド自動車の異なるシステムで使用するように作用する。電動圧縮機10は、インバータ部14と、モータ部16と、外側ハウジング12内に収容される圧縮装置(又は圧縮組立体)18とを含む。外側ハウジング12は、インバータ背面カバー20と、インバータハウジング22と、中央ハウジング24と、前面カバー28(これを排気ヘッドと呼ぶことがある)とを含む。中央ハウジング24は、モータ部16と圧縮装置18とを収容する。
【0013】
本開示の電動圧縮機10の第1特徴として、スクロール床面が変形した固定スクロール付圧縮装置を有する電動圧縮機10が提供される。本開示の電動圧縮機10の第2態様では、分離拘束システムを備えた電動圧縮機10が提供される。本開示の電動圧縮機10の第3態様では、3つのリードを備えたリード機構を有するヘッド設計を有する電動圧縮機10が提供される。
【0014】
1実施形態において、インバータ背面カバー20、インバータハウジング22、中央ハウジング24、及び前面カバー28は、機械加工されたアルミニウムから構成される。インバータ部14は、例えば、複数の取付点120を介して自動車の車体内に取り付けることができる。
【0015】
-電動圧縮機10の一般的配置と動作-
インバータ背面カバー20及びインバータハウジング22は、インバータキャビティ30を形成する。インバータ背面カバー20は、複数のボルト32によってインバータハウジング22に取り付けられている。インバータ背面カバー20及びインバータハウジング22は、インバータ背面カバー20内の開口36及びインバータハウジング22内の開口38を貫通して延在する複数のボルト34によって中央ハウジング24に取り付けられ、中央ハウジング24内のネジ孔40にねじ込まれる。インバータ背面カバー20とインバータハウジング22との間に配置されたインバータガスケット42は、内部キャビティ30に湿気、塵埃及び他の汚染物が入らないように保つ。モータガスケット54Aは、インバータハウジング22と中央ハウジング24との間に配置され、環境に対する冷媒シールを提供し、これを維持する。
【0016】
図11を参照すると、インバータ背面カバー20及びインバータハウジング22によって形成されたインバータキャビティ30内に取り付けられたインバータモジュール44が示されている。インバータモジュール44は、インバータハウジング22に取り付けられたプリント回路基板48に取り付けられたインバータ回路46を含む。インバータ回路46は、電動圧縮機10の外部から受け取った直流(DC)電力を三相交流(AC)電力に変換してモータ54(下記参照)に給電する。インバータ回路46はまた、電動圧縮機10の回転数を制御する。高電圧直流電流は、高電圧コネクタ50を介してインバータ回路46に供給される。インバータ回路46を駆動する低電圧直流電流、並びにインバータ回路46及びモータ部16の動作を制御する制御信号は、低電圧コネクタ52を介して供給される。
【0017】
中央ハウジング24はモータキャビティ56を形成する。モータ部16は、モータキャビティ56内に配置されたモータ54を含む。モータキャビティ56は、インバータハウジング22のモータ側部22Aと、中央ハウジング24の内面24Aとによって形成される。
図12を特に参照して、モータ54は、ステータ58を有する三相交流モータである。ステータ58は、6つの個別コイル(各相に対して2つ)を含む略中空円筒形を有する。ステータ58は、モータハウジング54内に収容され、これに取り付けられ、モータハウジング54に対して静止したままである。
【0018】
モータ54は、ステータ58内に配置され、ステータ58に対して中心に配置されたロータ60を含む。ロータ60は、ほぼ中空の円筒形状を有し、ステータ58内に配置される。ロータ60は、それに取り付けられた多数のバランスカウンタウェイト60A,60Bを有する。バランスカウンタウェイトは、モータ54が圧縮装置18を駆動するときにモータ54の釣合いをとるものであり、真鍮から機械加工されてもよい。
【0019】
電力は、1組の端子54Aを介してモータ54に供給され、これらの端子は、Oリング54Bによってモータキャビティ56からシールされる。
【0020】
駆動軸90はロータ60に結合され、ロータ60と共に回転する。図示の実施形態では、駆動軸90はロータ60の中心開口60C内に圧入されている。駆動軸90は、第1端部90A及び第2端部90Bを有する。インバータハウジング22は、インバータハウジング22のモータ側部に配置された第1駆動軸支持部材22Bを備えている。第1駆動軸支持部材22Bにより形成される開口内に配置された第1玉軸受62は、駆動軸90の第1端部を支持し、これを回転させる。中央ハウジング24は、第2駆動軸支持部材24Aを備えている。第2駆動軸支持部材24Aにより形成される開口内に配置された第2玉軸受64により、駆動軸90の第2端部90Bが回転できるようになる。図示の実施形態では、第1及び第2玉軸受62,64は、それぞれインバータハウジング22の第1駆動軸支持部材22B及び中央ハウジング24の第2駆動軸支持部材24Aによって形成された開口部に圧入されている。
【0021】
上述したように、電動圧縮機10はスクロール型圧縮機である。圧縮装置18は、固定スクロール26及び旋回スクロール66を含む。旋回スクロール66は、ロータ60の第2端に固定されている。駆動軸90を備えたロータ60は、インバータモジュール44の制御下で旋回スクロール66の運動を推進するために回転する。
【0022】
図14A、
図14B、
図16A及び
図16Bに示すように、駆動軸90は中心軸90Cを有し、その周りでロータ60及び駆動軸90が回転する。旋回スクロール66は、偏心軌道、すなわち、旋回スクロール66の配向が固定スクロール26に対して一定のままである間、円運動で中心軸90Cの周りを移動する。旋回スクロール66の中央は、駆動軸90の第2端部90Bに配置された旋回スクロール開口(又は駆動ピン位置)90E(
図14A参照)によって規定される駆動軸90のオフセット軸90Dに沿って配置される。駆動軸90がモータ54によって回転されると、旋回スクロール66は、駆動ピン126と揺動リンク機構124の駆動ハブと軸受108とを介して旋回スクロール開口90Eの運動に追従し、駆動軸90が中心軸90Cを中心として回転される。
【0023】
図1、
図2及び
図9に特に示すように、(低圧で)相互混合された冷媒及びオイルは、冷媒入口ポート68を介して電動圧縮機10に入り、圧縮装置18によって圧縮された後、冷媒出口ポート70を介して(高圧で)電動圧縮機10から出る。
図9の断面図に示すように、冷媒は電動圧縮機10を通り冷媒経路73を流れる。図示のように、冷媒は冷媒入口ポート68に入り、インバータハウジング22のモータ側部22Aと冷媒入口ポート68に隣接する中央ハウジング24との間に形成された吸気容積部74に入る。次いで、冷媒がモータ部16を通って吸引され、固定スクロール26の内壁と旋回スクロール66(
図14Aにおいて矢印92によって示される)との間に形成される圧縮吸気容積部6に入る。
【0024】
固定スクロール26は、中央ハウジング24内に取り付けられる。
図9及び
図13に示すように、固定スクロール26は、固定スクロールベース26Aと、固定スクロールベース26Aから旋回スクロール66に向かって離れて延びる固定スクロールラップ26Bとを有する。
図16A~
図16Bに示すように、旋回スクロール66は、旋回スクロールベース66Aと、旋回スクロールベース66Aから固定スクロール26に向かって延びる旋回スクロールラップ66Bとを有する。ラップ26B,66Bは、それぞれのスクロール26,66の外縁部に隣接し、それぞれの中央端26D,66Dに向かって内側にスクロールする末端26C,66Cを有する。
【0025】
それぞれのチップシール94は、固定スクロール26及び旋回スクロール66の上面に配置されたスロット26E,66E内にそれぞれ配置される。チップシール94は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂のような可撓性材料から構成される。組み立てられるとき、チップシール94は、反対側のベース26A,66Aに押し付けられ、その間にシールを提供する。1実施形態では、スロット26E ,66Eは、チップシール94の長さよりも長く、チップシール94の長さに沿った調整/移動の余地を提供する。
【0026】
図17A~
図17Iを参照すると、冷媒が圧縮吸気容積部76から圧縮装置18に流入する。
図17A~
図17Iにおいて、図示の固定スクロール26及び旋回スクロール66の平面断面図が示されている。
【0027】
以下に詳述するように、固定スクロールラップ26B及び旋回スクロールラップ66Bは、低圧又は非加圧(飽和圧力)冷媒が圧縮装置18から流入する圧縮チャンバ80を形成する。旋回スクロール66が動いて圧縮チャンバ80を閉じることを可能にし、圧縮チャンバ80の体積を減らして冷媒を加圧する。サイクルの間の任意の1回において、1つ以上の圧縮チャンバ80は、圧縮サイクルの異なる段階にある。以下の説明は、電動圧縮機10の完全サイクル中の1組の圧縮チャンバ80に関するだけである。
【0028】
冷媒は、旋回スクロールラップ66Aと固定スクロールラップ26Bの間に形成された圧縮チャンバ80に入る。圧縮機10のサイクルの間、冷媒は圧縮チャンバの中央に向かって搬送される。固定スクロール26が電動圧縮機10の1サイクル中に示されるのに対し、旋回スクロール66は、固定スクロール26に対する旋回スクロール66の相対位置によって形成される矢印78によって示される円運動で旋回する。
【0029】
図17Aでは、サイクルの開始における旋回スクロール66の位置が示されている。図示するように、この初期位置では、末端26C,66Cは、他のスクロールラップ66B,26Bから離間されている。この時点で、圧縮チャンバ80は圧縮吸気容積部76に開口しており、低圧の冷媒が圧縮吸気容積部76から圧縮チャンバ80を満たすことができる。旋回スクロール66が経路78に沿って移動すると、末端26C,66Cと他のスクロール66,26との間の空間は、圧縮チャンバ80が圧縮吸気容積部76から閉鎖されるまで減少する(
図17B~
図17E)。旋回スクロール66が経路78に沿って移動し続けると、圧縮チャンバ80の体積はさらに減少し、したがって両圧縮チャンバ80内の冷媒が加圧される(
図17F~
図17H)。
図17I~
図18Jに示すように、旋回スクロール66が旋回を続けると、2つの圧縮チャンバ80が結合されて1つの体積となる。この体積は、加圧された冷媒が圧縮装置18から排気されるまで、さらに減少する(下記参照)。
【0030】
後述するように、冷媒は、旋回スクロール66の壁と固定スクロール26との間に形成されたチャンバに入る。圧縮機10のサイクルの間、冷媒はこれらのチャンバの中央に向かって搬送される。固定スクロール26が電動圧縮機10の1サイクル中に示されているのに対し、旋回スクロール66は、固定スクロール26に対する旋回スクロール66の相対位置によって形成される矢印78によって示される円運動で旋回又は移動する。
【0031】
図1に戻って、前面カバー28は、排気容積部82を形成する。排気容積部82は冷媒出口ポート70と連通する。以下により詳細に説明するように、加圧冷媒は、固定スクロール26内の中央オリフィス84A及び2つの側部オリフィス84Bを通って圧縮装置18から出る(
図18C及び18E参照)。加圧冷媒の開放は、リード機構86によって制御される。図示の実施形態では、リード機構86は、3つのリード、すなわち中央オリフィス84Aに対応する中央リード87A及び2つの側部リード87Bと、2つの側部オリフィス84B(下記参照)とを含む。
【0032】
図18D及び
図18Eに示すように、図示の実施形態では、リード機構86は、排気リード86A及びリードリテーナ86Bを含む。排気リード86Aは、鋼のような可撓性材料から作られる。材料及び強度のような特性は、加圧された冷媒が圧縮装置18から放出される圧力を制御するように選択される。リードリテーナ86Bは、打ち抜き鋼材のような硬質で可撓性のない材料から作られる。リードリテーナ86Bは、固定スクロール26に対する排気リード86Aの最大変位を制御又は制限する。一般に、オイルはモータ部16を通って後方に導かれ、ロータ60、駆動軸90及び全ての軸受62,64,108のような電動圧縮機10の回転部品に潤滑及び冷却を提供する。オイルは、ロータ60の回転によってモータ54の上部に向かって上部に引き出される。そこから、第2玉軸受64を潤滑するために、オイルがモータ54の内部に入り、モータ部16内の回転力によってオイルがインバータハウジング22のモータ側部22Aに衝突することがある。オイルは、モータ側部22Aによって玉軸受62内にさらに導かれ、以下にさらに説明する。
【0033】
図示の実施形態では、リード機構86は、別体の締結具89を介して適所に保持又は固定される。
図18E及び
図18Fに示すように、リード機構86は、固定スクロール26上に関連支柱83Aを受け入れるように構成された複数の開口86Cを有している。
図18Eに示すように、固定スクロール26の裏面は、冷媒が圧縮装置18を出る圧力の調整を補助するオリフィス84A,84Bを囲むベゼル83Bを含む。加えて、ごみ収集スロット83Cは、ごみをオリフィス84A,84Bの近くで収集し、リード機構86との干渉を防止する。
【0034】
図9に示すように、電動圧縮機を通る冷媒の経路は、一点鎖線矢印72によって示されている。
【0035】
電動圧縮機10はオイル(図示せず)を利用して、圧縮装置18の構成要素とモータ54との間、例えば旋回スクロール66と固定スクロール26との間及び玉軸受62,64内に潤滑オイルを供給する。オイルは、圧縮装置18及びモータ54内で冷媒と混合し、オリフィス84A,84Bを介して圧縮装置18から出る。以下に詳述するように、オイルは前面カバー28内で圧縮された冷媒から分離され、圧縮装置18に戻される。
【0036】
オイルセパレータ96は、混合されたオイルと冷媒との分離を容易にする。図示の実施形態では、オイルセパレータ96は前面カバー28内に一体化されている。前面カバー28はさらに、オイルがモータ54及びモータキャビティ56及び圧縮装置18を通って再循環する前に、オイルセパレータ96からオイルを回収するオイルリザーバ98を定める。使用時には、電動圧縮機10は、一般に、
図3~
図5に示すように、重力が矢印106で示すように作用し、オイルがオイルリザーバ98内に集まるように方向付けされる。
【0037】
図9を参照すると、一般経路のオイルが電動圧縮機10の底部から圧縮装置18を通って伝わり、オリフィス84A,84Bから前面カバー28の排気容積部82に出て、圧縮装置18に戻ることが矢印88によって示されている。
【0038】
図示の実施形態では、前面カバー28は、その中のそれぞれの開口を貫通して挿入され、中央ハウジング24の開口にねじ込まれた複数のボルト122によって中央ハウジング24に取り付けられている。固定ヘッドガスケット110及び後部ヘッドガスケット112が、中央ハウジング24と固定スクロール26との間に位置し、シールを提供する。
【0039】
オイルセパレータ96は、混合されたオイルと冷媒との分離を容易にする。一般に、オイルセパレータ96は、混合されたオイル及び冷媒内のオイルの一部を除去するだけである。分離オイルは、オイルリザーバに貯蔵され、圧縮装置18を通って循環して戻され、そこでオイルは冷媒と再び混合される。
【0040】
図示の実施形態では、オイルセパレータ96は前面カバー28内に一体化されている。前面カバー28はさらに、オイルがモータ54、モータキャビティ56及び圧縮装置18を通って再循環する前に、オイルセパレータ96からオイルを回収するオイルリザーバ98を形成する。使用時には、電動圧縮機10は、一般に、
図3~
図5に示すように、重力が矢印106で示すように作用し、オイルがオイルリザーバ98内に集まるように方向付けされる。
図9を参照すると、一般経路のオイルが電動圧縮機10の底部から圧縮装置18を通って伝わり、オリフィス84A,84Bから前面カバー28の排気容積部82に出て、圧縮装置18に戻ることが矢印88によって示されている。図示のように、オイルは圧縮装置18内に吸い上げられ、そこでオイルは冷媒内又は冷媒と混合して戻る。
【0041】
上述したように、冷媒とオイルとの混合物である冷媒は、冷媒入口ポート68を介して電動圧縮機10に流入する。オイルと冷媒との混合物は、モータ部16内に引き込まれ、それによって、ロータ60、駆動軸90のような電動圧縮機10の回転部品に潤滑及び冷却を提供し、オイル及び冷媒は、第2玉軸受64を潤滑するためにモータ54の内部に入り、モータ部16内の回転力によってオイルがインバータハウジング22のモータ側部22Aに衝突することがある。冷媒及びオイルは、モータ側部22Aによって玉軸受62内へとさらに導かれる。
【0042】
-揺動リンク機構と駆動軸の同軸突出部-
特に
図13~
図18Bを参照すると、開示の電動圧縮機10の第1態様において、電動圧縮機10は揺動リンク機構124を備えており、駆動軸90は同軸突出部126を有している。1実施形態において、同軸突出部126は、駆動軸90と一体的に形成されている。後述するように、揺動リンク機構124を用いて、駆動軸90を中心とする偏心軌道において、旋回スクロール66を回転させる。
【0043】
従来技術では、駆動軸は、駆動ピンと、別体の偏心ピンとによって揺動リンク機構に結合されており、両方が駆動軸に押し込まれている。駆動ピンは、旋回スクロール66をその偏心軌道に沿って移動させる旋回リンク機構124を回転させるために用いられる。駆動ピン及び偏心ピンは、駆動軸の端部のそれぞれの開口部に挿入される。偏心ピンは、旋回スクロール66が偏心軌道に沿って進む旋回スクロール66の関節動作を制限するために用いられる。駆動ピンも偏心ピンも、駆動軸の中心軸に沿って位置しない。駆動軸を回転させると、駆動ピン及び偏心ピンはかなりの応力下に置かれる。これは、両方のピンが、SAE 52100軸受鋼のような焼き入れ材料から構成される。さらに、偏心ピンは、旋回スクロール66の偏心軌道の半径方向の動きを制限するために使用されるので、偏心ピンの損傷を防止するためにアルミニウムブッシュ又は他の滑り軸受を必要とする場合がある。また、従来技術の偏心ピンは、駆動ピン及び偏心ピンのための正確な開口を含む、駆動軸90の面上の追加的な機械加工を必要とする。
【0044】
より詳細に後述するように、従来技術の偏心ピンを同心突出部90Fで置き換える。
【0045】
図示の実施形態では、スクロール型電動圧縮機10は、ハウジング12、冷媒入口ポート68、冷媒出口ポート70、駆動軸90、同心突出部90F、モータ54、圧縮装置18、揺動リンク機構124、駆動ピン126及び玉軸受108を備える。ハウジング12は、吸気容積部74及び排気容積部82を定める。冷媒入口ポート68は、ハウジング12に結合され、冷媒を吸気容積部74に導入するように構成される。冷媒出口ポート70は、ハウジング12に結合されており、圧縮された冷媒が排気容積部82からスクロール型電動圧縮機10を出ることができるように構成されている。駆動軸90はハウジング12内に位置し、第1及び第2端部90A,90Bを有する。駆動軸90は、中心軸90Cを定義し、その中心に配置される。
【0046】
同心突出部90Fは、駆動軸90の第2端部90Bに位置し、中心軸90Cを中心とする。同心突出部90Fは、中心軸90Cに沿って、駆動軸90から離れる方向に延びている。同心突出部90Fは、駆動ピン孔90Eを有している。モータ54は、ハウジング12内に配置され、駆動軸90に結合され、駆動軸90を、中心軸90Cを中心に制御可能に回転させる。駆動ピン126は、駆動ピン孔90E内に位置し、駆動軸90から離れて延びている。駆動ピン126は、同心突出部90Fに平行である。
【0047】
同心突出部90Fは、アンダーカット90Gをさらに含むことができ、外面は、表面焼き入れされるか、又はコーティング処理後又は軸受表面であり得る。同心突出部90Fは、駆動軸90と同時にさらに機械加工してもよい。
【0048】
上述したように、圧縮装置18は、固定スクロール26及び旋回スクロール66を含む。固定スクロール26は、ハウジング12の内部に位置し、ハウジング12に対して固定される。旋回スクロール66は、駆動軸90に結合されている。旋回スクロール66及び固定スクロール26は、吸気容積部74から冷媒を受け取り、駆動軸90が中心軸90Cを中心として回転するときに冷媒を圧縮する圧縮チャンバ80(上記参照)を形成する。旋回スクロール66は、内周面66Eを有する。
【0049】
揺動リンク機構124は、駆動軸90に結合され、同心突出部90F及び駆動ピン126を受け入れる第1及び第2開口124A,124Bを有する。揺動リンク機構124はさらに、外周面124Cを備える。
【0050】
玉軸受108は、旋回スクロール66の内周面66Eと揺動リンク機構124の外周面124Cとの間に配置され、それぞれに隣接する。駆動軸90、駆動ピン126、旋回スクロール66及び揺動リンク機構124は、旋回スクロール66が中心軸90Cを中心として偏心軌道で回転するように配置される。
【0051】
1実施形態において、同心突出部90Fは、駆動軸90と一体に形成されている。駆動軸90、同心突出部90F、及び揺動リンク機構124は、鋼から機械加工されてもよい。駆動軸90と同時にかつ同じ機械加工操作内に形成される同心突出部90Fは、製造効率をさらに高める。
【0052】
図16Gに示す圧縮装置18の一部拡大図は、同心突出部90Fをさらに示している。同心突出部90Fは、揺動リンク機構124と相互作用して案内する。同心突出部90Fは、旋回スクロール66の偏心軌道の半径方向の動きを制限する制御された隙間を作るために、第1開口124Aと共に制御された公差でサイズが決められ、機械加工される。先行技術とは異なり、同心突出部90Fは、第2ピン、又は追加的な機械加工操作を必要としない。同心突出部90Fは、さらに、後述する、旋回スクロール66の下面66F上で、ガイドピン128及びスロット66Gと同時作動する。
【0053】
スクロール型電動圧縮機10は、インバータ部14と、モータ部16と、圧縮装置18とを備えている。モータ部16は、モータキャビティ56を定めるモータハウジング54を含む。圧縮装置18は、固定スクロール26を備える。ハウジング12は、少なくとも一部に、固定スクロール26及び中央ハウジング24が形成されている。
【0054】
図示の実施形態における
図13,
図16B、及び
図18A~
図18Fに特に示すように、旋回スクロール66は下面66Fを有する。下面66Fは、複数のリング状スロット66Gを有する。中央ハウジング24は、複数の関節結合のガイドピン128の孔を含む。ガイドピン128は、ガイドピン孔66G内に配置され、圧縮装置18に向かって、リング状スロット66G内に延びる。ガイドピン128は、旋回スクロール66が中心軸90Cを中心として旋回するときに旋回スクロール66の関節運動を制限するように構成されている。1実施形態では、リング状スロット66Gの各々は、リングスリーブ118を含んでいる。スラストプレート130は、固定スクロール26とスラスト本体150(下記参照)との間に位置し、それらの間に摩耗面を提供する。
【0055】
-3つのリードのリード機構とオイルセパレータを有する排気ヘッド設計-
図示した実施形態において、電動圧縮機10は、マルチキャビティ脈動マフラーシステム160及びオイルセパレータ96を含み、これらは排気容積部82内に配置されることができ、排気ヘッド又は前面カバー28と一体的に形成される。上述したように、電動圧縮機10の可動部品間に潤滑を提供するためにオイルが使用される。運転中、オイルと冷媒が混合する。オイルセパレータ96は、冷媒が電動圧縮機10から流出する前に混合されたオイルと冷媒とを分離するために必要である。
【0056】
一般に、冷媒は、各サイクル、すなわち旋回スクロール66の旋回(又は周回軌道)中に圧縮装置18から放出される。図示の実施形態では、冷媒が圧縮装置18から中央オリフィス84Aと固定スクロール26内の2つの側部オリフィス84Bとを通って出る。オリフィス84A,84Bを通る冷媒の放出は、中央リード87A及び2つの側部リード87Bによってそれぞれ制御される。マルチキャビティ脈動マフラーシステム160及びオイルセパレータ96については、以下により詳細に説明する。
【0057】
-スクロール軸受オイルオリフィス-
電動圧縮機10はスクロール軸受オイル噴射オリフィスを含むことができる。上述したように、本開示の圧縮装置18は玉軸受108を含む。図示の実施形態では、玉軸受108は、揺動リンク機構124と旋回スクロール66との間に位置している。しかし、圧縮装置18内の玉軸受108の位置の結果として、玉軸受108へのオイルの供給が制限され、結果として耐久性が低下することがある。
図9に示すように、オイルオリフィス138によって、オイル(及び冷媒)が排気チャンバ82から玉軸受108まで、経路73(「ノーズブリード」経路と称される場合がある)に沿って移動することが可能になる。
【0058】
スクロール型電動圧縮機10は、ハウジング12、冷媒入口ポート68、冷媒出口ポート70、インバータモジュール144、モータ54、駆動軸90及び圧縮装置18を備えることができる。ハウジング12は、吸気容積部74と排気容積部82とを定める。冷媒入口ポート68は、ハウジング12に結合され、冷媒を吸気容積部74に導入するように構成される。冷媒出口ポート70は、ハウジング12に結合されており、圧縮された冷媒が排気容積部82からスクロール型電動圧縮機10を出ることができるように構成されている。インバータモジュール144は、ハウジング12内に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換するように構成される。モータ54は、ハウジング12の内部に取り付けられる。駆動軸90は、モータ54に結合される。圧縮装置18は、吸気容積部74から冷媒を受け取り、駆動軸90がモータ54によって回転されるときに冷媒を圧縮する。圧縮装置18は、固定スクロール26、旋回スクロール66、揺動リンク機構124、玉軸受108及びピン136を含む。
【0059】
固定スクロール26は、ハウジング12の内部に位置し、これに対して固定されている。旋回スクロール66は、駆動軸90に結合されている。旋回スクロール66及び固定スクロール26は、吸気容積部72から冷媒を受け取り、駆動軸90が中心軸90Cを中心として回転するときに冷媒を圧縮する圧縮チャンバ80を形成する。旋回スクロール66は、第1側面(すなわち下面)66F及び第2側面(すなわち上面)66Gを有する。旋回スクロール66は、第1側面66Fから第2側面66Gまで旋回スクロール66を通るオイル開口部140を有する。
【0060】
揺動リンク機構124は、駆動軸90に結合されている。玉軸受108は、旋回スクロール66と旋回リンク機構124の各々の間に、かつそれに隣接して配置される。駆動軸90、旋回スクロール66及び揺動リンク機構124は、旋回スクロール66が中心軸90Cを偏心軌道上で旋回するように配置されている。
【0061】
図16B~
図16Eに示すように、旋回スクロール66の先端はプラグ136を含み、オイルオリフィス138を有する。プラグ136は、旋回スクロール66のオイル開口部140内に圧入することができる。オイルオリフィス138は、制御された流量又は圧縮された冷媒を有するオイルが旋回スクロール66を通って玉軸受108に至ることを可能にするように構成される。
【0062】
オイルオリフィス138のサイズは、電動圧縮機10の仕様に合わせて調整することができる。例えば、電動圧縮機10の仕様が与えられれば、オイルオリフィス138の直径は、オイルのみが通過できるようにし、旋回スクロール66の第1側面と第2側面との間の圧力の均等化を制限するように選ぶことができる。別個のプラグ136を用いることによって、旋回スクロール66内でオイルオリフィス138を直接機械加工するのではなく、製造効率を達成することができる。そしてプラグ136は、オイルオリフィス138の直径及び幾何学的形状に応じて、オイルの流れ及び冷媒の流れが増減するように特別に設計され調整されたオイルオリフィス138を有することができる。
【0063】
図16D~
図16Eに示すように、1実施形態では、オイルオリフィス138は、第1孔138A及び第2孔138Bを有することができ、第1孔138Aの直径は、第2孔138Bの直径よりも小さい。例えば、この実施形態の1適用例では、第1孔138Aは、およそ0.3mmの直径を有する。第2孔138Bは、第1孔138Aの直径よりも大きい直径を有し、第1孔138Aの長さを短くするためにのみ使用される。オイル及び冷却剤の流れは、旋回スクロール66の偏心軌道によって生じる半径方向の力を支持する玉軸受108に熱及び潤滑剤を供給するように設計される。
【0064】
さらに、上述したように、旋回スクロール66は、旋回スクロールベース66A及び旋回スクロールラップ66Bを有する。旋回スクロールラップ66Bは、旋回スクロール末端66C及び旋回スクロール中央末端66Dを有してもよい。図示のように、オイル開口部140は旋回スクロール中心端66D内に位置している。プラグ136は、圧入又はプラグ136を固定する任意の他の方法によって、オイル開口部140内に固定することができる。
【0065】
図9に示すように、オイルオリフィス138によって、オイル(及び冷媒)が排気チャンバ82から玉軸受108まで、経路73(「ノーズブリード」経路と称される場合がある)に沿って移動することが可能になる。
【0066】
-軸受オイル連通孔-
電動圧縮機10は1つ以上の軸受オイル連通孔を備えることができる。上述したように、図示した実施形態において、駆動軸90はモータ54によって回転され、圧縮装置18を制御可能に作動させる。駆動軸90は、第1端部90A及び第2端部90Bを有する。電動圧縮機10のハウジング12は、第1駆動軸支持部材22Bと第2駆動軸支持部材24Aを形成している。図示の実施形態では、第1駆動軸支持部材22Bはインバータハウジング22のモータ側部22Aに形成され、第2駆動軸支持部材24Aは中央ハウジング24内に形成されている。第1及び第2玉軸受62,64は、第1及び第2駆動軸支持部材22B,24A内に位置している。
【0067】
第1駆動軸支持部材22Bの位置は、冷媒(及びオイル)用の貫流面積ではない。これは、低い潤滑状態をもたらし、電動圧縮機10の耐久性に影響を及ぼし得る。
【0068】
図16Fに示すように、第1駆動軸支持部材22Bは、オイルが第1駆動軸支持部材22Bに入り、第1玉軸受62を潤滑できるようにするために、1つ又は複数の孔22Cを備えることができる。
【0069】
図示した実施形態において、スクロール型電動圧縮機10は、ハウジング12、第1玉軸受62、第2玉軸受64、冷媒入口ポート68、冷媒出口ポート70、インバータモジュール44、モータ54、駆動軸90、及び圧縮装置18を備える。
【0070】
ハウジング12は、吸気容積部4と排気容積部82とを定め、第1及び第2駆動軸支持部材22B,24Aを含む。第1玉軸受62は、第1駆動軸支持部材22B内に位置している。ハウジング12の第1駆動軸支持部材22Bには、第1玉軸受62にオイルを進入させるオイル連通孔22Cが1つ以上設けられている。
【0071】
第2玉軸受64は、第2駆動軸支持部材24A内に位置している。冷媒入口ポート68は、ハウジング12に結合され、冷媒を吸気容積部74に導入するように構成される。冷媒出口ポート70は、ハウジング12に結合されており、圧縮された冷媒が排気容積部82からスクロール型電動圧縮機10を出ることができるように構成されている。インバータモジュール144は、ハウジング12内に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換するように構成される。モータ54は、ハウジング12の内部に取り付けられる。駆動軸90はモータ54に結合される。駆動軸90は第1端部90A及び第2端部90Bを有する。駆動軸90の第1端部90Aは第1玉軸受62内に位置決めされ、駆動軸90の第2端部90Bは第2玉軸受64内に位置決めされる。圧縮装置18は、吸気容積部74から冷媒を受け取り、駆動軸90がモータ54によって回転されるときに冷媒を圧縮する。上述したように、図示の実施形態では、第1駆動軸支持部材22Bはインバータハウジング22のモータ側部22Aに形成されていてもよい。
【0072】
圧縮装置18のモータ部16内での回転運動により、
図9に矢印88で示すように、オイルリザーバ98からのオイルへの流路及び移動が生じる。図示のように、オイルは、オイルリザーバ98からモータ部16に向かって流れ、ステータ58及びロータ60に向かって続く。旋回スクロール、ロータ及び駆動軸の回転運動がオイルを上部に引っ張り、冷媒経路73の入口流と混合させる。ロータ60及び駆動軸90の回転運動は、さらに、インバータハウジング22のモータ側部22Aに対してオイルを押し出すことになる。モータ側部22Aの表面は、
図16Fに示す一連のリブ22Dをさらに含む。リブ22Dは、第1駆動軸支持部材22Bを支持するのに必要な剛性を提供し、隆起した裏当てとポケットのために第1玉軸受62を固定するのを可能にする。インバータハウジング22は、さらに、リブ22Dの間に集められたオイルが重力によって下部に向けられてオイルの中に入るオイルキャビティ(図示せず)を定める。リブ22D及びモータ側部22Aの傾斜面は、ロータ60又は駆動軸90によってモータ側部22Aに対して飛び散り又は押し出されるオイルを捕捉し方向付けるように協働し、オイルキャビティ22E及び第1玉軸受62へのオイルの流れを増大させるのを補助する。
図16Fは、2つの連通孔22Cを図示しているが、インバータハウジング22のモータ側部22A上のリブ22Dの間に、2つのオイル連通孔22Cを上に、またその間に含むこともできることが理解される。例えば、図示の実施形態では、孔は直径で3.5mmであり、モータ側部22Aはリブ22D間に傾斜壁を含む。さらに、モータ側部22Aは、外側オイル収集領域22を含むことができる
【0073】
-ドーム型インバータカバー-
本発明のスクロール型電動圧縮機10はドーム型のインバータ背面カバー20を備えることができる。スクロール型電動圧縮機10は、ハウジング12、冷媒入口ポート68、冷媒出口ポート70、インバータモジュール44、モータ54、駆動軸90、圧縮装置18及びインバータカバー20を備える。ハウジング12は、吸気容積部72及び排気容積部82を定める。ハウジング12は、ほぼ円筒形状であり、中心軸90Cを有する。冷媒入口ポート68は、ハウジング12に結合され、冷媒を吸気容積部72に導入するように構成される。冷媒出口ポート70は、ハウジング12に結合されており、圧縮された冷媒が排気容積部82からスクロール型電動圧縮機10を出ることができるように構成されている。
【0074】
インバータモジュール44は、ハウジング12の内部に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換するようになっている。モータ54は、ハウジング12の内部に取り付けられる。駆動軸90はモータ54に結合される。圧縮装置18は駆動軸90に結合され、吸気容積部から冷媒を受け入れ、駆動軸90がモータ54によって回転されるときに冷媒を圧縮するように構成される。
【0075】
上述したように、圧縮装置18は、望ましくない騒音、振動及び耳障りな状態(NVH)及び低い耐久性状態を生じさせ得る高速(>2000RPM)で回転することができる。従来技術では、インバータカバー20は全体的に平坦であり、圧縮装置18からの振動を増幅及び/又は収束させる傾向がある。
【0076】
振動を収束ではなく分散させるために、圧縮装置18からの振動に対し、開示の第5態様のスクロール型電動圧縮機10のインバータ背面カバー20には、全体的に湾曲した又はドーム状の輪郭が設けられている。
【0077】
図1、
図3及び
図6に具体的に示されるように、インバータカバー20は、スクロール型電動圧縮機10の一端に位置し、第1部分20Aと第2部分20Bとを備えている。第1部分20Aは、頂部20C又は頂部分を含み、中心軸90Cに対して略垂直であり、頂部20C及び外周部20Dを有する。第1部分20Aは、インバータカバー20が頂部20Cから外周部20Dに向けて湾曲した輪郭を有するような比較的にドーム形状を有する。曲率の大きさ及び位置は、パッケージングの制約、すなわち、スクロール型電動圧縮機10が適合しなければならない空間、及び内部品によって配置される制約、すなわち、位置及びサイズ)のような他の考慮事項によって、決定され又は制限され得る。第1部分20Aはまた、他の特徴、例えば、締結ボルトを受け入れる開口を組み込む必要があってもよい。第2部分20Bは、インバータカバー20のドーム形でない、すなわちインバータカバーの周囲に配置された比較的平坦な部分を含むことができる。
【0078】
-変更されたスクロールフラーリングを有する固定スクロール-
本発明の第1態様では、固定スクロール床材を変形したスクロール型電動圧縮機10は、冷媒を圧縮するように構成されている。スクロール型電動圧縮機10は、ハウジング12、冷媒入口ポート68、冷媒出口ポート70、インバータモジュール44、モータ54、駆動軸90及び圧縮装置18を備える。ハウジング12は、吸気容積部74と排気容積部82とを定める。
【0079】
冷媒入口ポート68は、ハウジング12に結合され、冷媒を吸気容積部74に導入するように構成される。冷媒出口ポート70は、ハウジング12に結合されており、圧縮された冷媒が排気容積部82からスクロール型電動圧縮機10を出ることができるように構成されている。インバータモジュール144は、ハウジング12内に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換するように構成される。モータ54はハウジング12の内部に取り付けられ、駆動軸90はモータ54に結合されている。
【0080】
一般に、そして上述したように、圧縮装置18は吸気容積部74から冷媒を受け取り、駆動軸90がモータ54によって回転されるときに冷媒を圧縮する。
【0081】
圧縮装置18は、固定スクロール26及び旋回スクロール66を含む。圧縮装置18は、副室体積部134を定める。副室体積部134(
図18C及び
図18G参照)は、圧縮サイクルの開始時に冷媒をチャンバ80に供給する。圧縮サイクル中、チャンバ80が(ラップ26B,66Bが接触するときに)近づくと、電動圧縮機10の効率に影響を及ぼす可能性がある吸引により、副室体積部134内の圧力が低下する。本発明の1態様では、(圧縮装置18に追加冷媒を利用できるようにするために)副室体積部を増加させることが望ましい。これにより、圧縮装置18の「容量」が増加し、圧縮サイクルが平滑化される。
【0082】
図示の実施形態では、固定スクロール26及び旋回スクロール66のうちの一方のベース26A,66Aは切欠136を有し、副室体積部134を増大させる。
【0083】
図示の実施形態では、切欠136は固定スクロール26の床又はベース26Aに配置されている。
【0084】
図示のように、固定スクロール26は、固定スクロールベース26Aによって定められる第1側面26Fと、固定スクロールラップ26Bの上面によって定められる第2側面26Gとを有する。この固定スクロールラップ26Bは、固定スクロールベース26Aから固定スクロール26の第2側面26Gに向かって延びている。
図18C及び
図18Gに示されるように、固定スクロールベース26Aの床内の切欠136は、第2部分138の深さd1よりも大きい深さdを有する第1部分を定める。
【0085】
第1部分又は切欠136のサイズは、2つの制約によって制限されてもよい。まず、深さd1は、固定スクロール26の構造的完全性を維持するのに充分な材料を残さなければならない。加えて、チャンバ80が確実にシールされるように、切欠の幾何学的形状は、チャンバ80が
図17Dに示されるように閉じてシールできるように、旋回するラップ66Bの外側に留まらなければならない。切欠136は、副室体積部134内の追加体積を提供して、
図17D内のチャンバ80内の容積が完全に充填されることを可能にしてもよい。切欠136は、旋回スクロール66の経路、並びに固定スクロール26に必要な床及び壁の厚さに対する制限によって制限される。さらに、機械工具及び固定スクロールの床へのアクセスは、旋回スクロール66のシール領域外のサイズ及び領域にさらなる制限を与えることができる。
【0086】
-分離/拘束システム-
本発明の第2態様では、分離拘束システム148を用いて、ハウジング12を、旋回スクロール66によって生じる振動及び脈動から分離することができる。
【0087】
一般的なスクロール型電動圧縮機では、モータと固定スクロールがハウジングに直結されており、ハウジングに直結されている。上述のように、ハウジングに直接結合されたガイドピンは、駆動軸を旋回するときに旋回スクロール関節運動を制限するために、旋回スクロール上のリング状スロットと協働することができる。この種の構成では、旋回スクロールからの振動及びポンピング脈動をハウジングに伝達し、マウントを介して、例えば車両構造に伝達することができる。
【0088】
スクロール型電動圧縮機10は、冷媒を圧縮するように構成されている。スクロール型電動圧縮機は、ハウジング12、冷媒入口ポート68、冷媒出口ポート70、インバータモジュール144、モータ54、駆動軸90及び圧縮装置18を備える。ハウジング12は、吸気容積部74と排気容積部82とを定め、略円筒形状を有する。冷媒入口ポート68は、ハウジング12に結合され、冷媒を吸気容積部74に導入するように構成される。冷媒出口ポート70は、ハウジング12に結合されており、圧縮された冷媒が排気容積部82からスクロール型電動圧縮機10を出ることができるように構成されている。インバータモジュール144は、ハウジング12内に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換するように構成される。モータ54は、ハウジング12の内部に取り付けられる。駆動軸90はモータ54に結合される。圧縮装置18は、駆動軸90に結合され、冷媒を吸気容積部74から受け入れ、駆動軸90がモータ54によって回転されるときに冷媒を圧縮する。
【0089】
上述のように、圧縮装置18は固定スクロール26及び旋回スクロール66を含む。固定スクロール26は、ハウジング12の内部に位置し、これに対して固定されている。旋回スクロール66は、駆動軸90に結合されている。旋回スクロール66及び固定スクロール26は、吸気容積部74から冷媒を受け取り、駆動軸90が中心軸90Cを中心として回転するときに冷媒を圧縮する圧縮チャンバ80を形成する。
【0090】
旋回スクロール66は、複数のリング状スロット66G(上記参照)を有する下面を有する。
【0091】
特に
図20Aに示すように、スクロール型電動圧縮機10は、スラスト本体150と、複数の連接ガイドピン24Bと、複数の取付ピン152と、複数の分離スリーブ154とをさらに備えている。スラスト本体150は、複数のガイドピン孔152Aを有する。複数の関節結合のガイドピン24Bは、ガイドピン孔152Aから延在し、圧縮装置18に向かって、リング状スロット66G内に延在している。ガイドピン24Bは、旋回スクロール66が中心軸90を中心として旋回するときに、旋回スクロール66の関節運動を制限するように構成されている。
【0092】
各取付ピン152は、ハウジング端部152A及びスラスト本体端部152Bを有する。ハウジング端部152Aは、ハウジング12のそれぞれの受け入れ開口内に圧入されている。スラスト本体端部152Bは、外面を有する円筒形である。複数の分離スリーブ154は、耐薬品性合成ゴムのような可撓性材料から構成される。そのような材料の1つはエチレンプロピレンジエンモノマ(EPDM)である。各取付ピン152のスラスト本体端部152Bは、それぞれの分離スリーブ154内に封入され、スラスト本体150内のそれぞれのスロット150A内に受けられる。このようにして、スラスト本体150とハウジング12との間の唯一の結合部は、分離スリーブ154によって分離されるか又は隔離される取付ピン152を介しており、旋回スクロール66からの振動がハウジング12に伝わるのを防止又は最小限に抑える。
【0093】
図20Aに示すように、1実施形態において、分離スリーブ154は、円形のガスケット又はリング156と一体的に形成される。
【0094】
図20Bに示すように、別の実施形態では、各取付ピン152のスラスト本体端部152Bは、例えばオーバー成形プロセスを用いて、可撓性材料によって完全に封入される。分離スリーブ154の外面は擦られ、分離を助けることができる。
【0095】
-電動圧縮機ヘッド設計-
本開示の電動圧縮機10の第3態様では、前面カバー28の意匠は、オイルセパレータ96と、3リードのリード機構86とを含んでいる。後述するように、前面カバー28、固定スクロール26及びリード機構86の意匠は、マルチキャビティ脈動マフラーシステムを規定する。
【0096】
従来技術の電動圧縮機では、旋回スクロールの1回転(又は軌道)につき1回、圧縮装置から冷媒が放出される。これにより、電動圧縮機によって放出される圧縮冷媒内に1次脈動が発生する。冷媒中に生成される脈動の相対的に強い振幅及び低い周波数は、他の構成要素(電動圧縮機の内部又は外部)を励起し、望ましくない騒音、振動及び衝撃音(NVH)及び低い耐久性条件を生成し得る。
【0097】
図18C~
図18F並びに
図19A~
図19Bを参照すると、マルチキャビティ脈動マフラーシステム160は、圧縮された冷媒が、圧縮サイクル中に圧縮装置18から2回放出される。以下に詳述するように、圧縮装置18は、2つのより小さな2次排気口を2つの2次排気チャンバに(隣接して)配置しており、2次排気チャンバは、中央排気口からの圧力降下の下流側(排気ヘッド内)にある。以下にさらに説明するように、前面カバー28は、圧縮装置18から冷媒出口ポート70へ冷媒が出る平行な排気経路を定める。
【0098】
図示の実施形態では、圧縮機10はハウジング12、インバータモジュール44、モータ54及び圧縮装置18を含んでいる。ハウジング12は、吸気容積部74と排気容積部82とを定める。ハウジング12は、略円筒形状を有し、中心軸90Cを有する。インバータモジュール44は、ハウジング12の内部に取り付けられ、直流電力を交流電力に変換するようになっている。モータ54は、ハウジングの内部に取り付けられる。
【0099】
圧縮装置18は、モータ54に結合されており、モータ54が回転するときに、冷媒を吸気容積部74から受け入れ、冷媒を圧縮する。
【0100】
圧縮装置18は、圧縮サイクル中に圧縮された冷媒を制御可能に排気容積部82内に放出するために、中央圧縮装置オリフィス84Aと、第1及び第2側部圧縮装置オリフィス84Bとを有する。圧縮装置18は、圧縮サイクルにおいて冷媒が中央オリフィス84Aを介して放出されるよりも早く、第1及び第2側部圧縮装置出口オリフィス84Bを介して圧縮された冷媒を排気容積部82に放出するように構成されている。
【0101】
さらに、オイルセパレータ96は、圧縮装置18と冷媒出口ポート70との間の2つの平行な経路を利用して、この脈動の減少を維持しつつ正味の圧力低下を減少させる。
【0102】
図示の実施形態においては、オイルセパレータ96は、排気容積部82内に配置することができ、排気ヘッド又は前面カバー28と一体的に形成することができる。上述したように、電動圧縮機10の可動部品間に潤滑を提供するためにオイルが使用される。運転中、オイルと冷媒が混合する。オイルセパレータ96は、冷媒が電動圧縮機10から流出する前に混合されたオイルと冷媒とを分離するために必要である。
【0103】
一般に、冷媒は、各サイクル、すなわち旋回スクロール66の公転(又は軌道)中に圧縮装置18から放出される。図示の実施形態では、冷媒が圧縮装置18から中央オリフィス84Aと固定スクロール26内の2つの側部オリフィス84Bとを通って出る。オリフィス84A,84Bを通る冷媒の放出は、それぞれ中央リード87A及び2つの側部リード87Bによって制御される(下記参照)。
【0104】
図示の実施形態では、オイルセパレータ96は、排気チャンバ(下記参照)を比較的小さなチャネルによって接続して、チャネル間に圧力降下を生じさせる。これは、圧縮された冷媒の電動圧縮機10からの流れを滑らかにするように作用する。さらに、オイルセパレータ96は、圧縮装置18と冷媒出口ポート70との間の2つの平行な経路を利用して、この脈動の減少を維持しつつ正味の圧力低下を減少させる。
【0105】
オイルセパレータ96は、前面カバー28の内面から延びる一連の仕切98Aを含むことができる。図示のように、壁98Aは、排気容積部82を中央排気チャンバ82A、2つの側部排気チャンバ82B、上部排気チャンバ82C、及びオイルリザーバ98に分離する。中央排気チャンバ82Aは、中央リード87Aに隣接し、中央リード87Aを介して中央オリフィス84Aを介して圧縮装置18から混合された加圧冷媒及びオイルを受け取る。側部排気チャンバ82Bは、それぞれの側部リード87Bに隣接しており、圧縮装置18からそれぞれのリード87Bを介して側部オリフィス84Bを介して相互に混合された加圧冷媒及びオイルを受け取る。一般に、チャンバ内の冷媒の圧力は、中央排気チャンバ82A>側部排気チャンバ82B>上部排気チャンバ82Cである。
【0106】
中央排気チャンバ82Aは、上部排気チャネル102及び下部排気チャネル104をそれぞれ介して上部排気チャンバ82C及びオイルリザーバ98と流体が連通するそれぞれの側部チャネル100を介して、2つの側部排気チャンバ82Bと流体が連通する。1実施形態において、側部チャネル100は、側部排気チャンバ82Bに対して鋭角をなして延びている。側部チャネル100の角度は、冷媒とオイルとの排気混合物の衝撃をさらに指向し、分離をさらに改善し、オイルセパレータ96によって外へ分離されるオイルの量を増加させる。例えば、
図19Cにおいて、側部チャネル100は、中央排気チャンバ82Aの内壁に対してほぼ45度の角度で側部排気チャンバ82Bを貫通して下部に延在する。しかし、角度は、側部排気チャンバ82Bの用途又は表面形状に応じて変動し、変動によっては、約60度まで増加することがある。角度は変化してもよいが、流れを、乱流を生じさせ、流れの衝撃を導いて側部排気チャンバ82B内に曲がりくねった経路を生じさせて、下部排気チャネル104へのオイルの分離を増大させるように設計されている。
【0107】
図示のように、オイルセパレータ96は、中央排気チャンバ82Aと下部バッフル132とを含む。図示の実施形態では、下部バッフル132は山形(逆「v」)であり、中央排気チャンバ82Aとオイルリザーバ98との間に配置されている。下部バッフル132の形状は、真下に低圧の領域を作り出す。混ざり合ったオイル及び冷媒は、中央排気チャンバ82Aに入り、低圧領域によって下部に引き出される。混合されたオイル及び冷媒が下部バッフル132の上面に接触すると、オイル及び冷媒は分離される。オイルは、オイルリザーバ98内に滴下する。
【0108】
冷媒は、側部チャネル100及び/又は下部排気チャネル104を介して側部排気チャンバ82Bに入ることができる。次いで、冷媒は、上部排気チャンバ82Cに入り、次いで、冷媒出口ポート70を通って出ることができる。
【0109】
オイルリザーバ98は、一対の側部チャネルの下に配置され、それぞれの下部排気チャネル104を介し、そこに接続されている。オイルリザーバは、圧縮された冷媒から分離されたオイルを側部チャンバ内に受け取るよう構成されている。オイルに作用する重力は分離を助長し、オイルは側部排気チャンバ82Bに配置された下部排気チャネル104を通ってオイルリザーバ98内に落下する。
【0110】
上述のように、リード機構86は、リード87A,87Bを定める排気リード86A及びリードリテーナ86Bを含む。排気リード86Aは、冷媒がそれぞれ中央オリフィス84A及び2つの側部オリフィス84Bを通って圧縮装置18から出ることができる圧力を微調整するために使用される。
【0111】
前述の発明は、関連する法律基準に従って説明されており、したがって、説明は、本質的に限定的ではなく、例示的である。開示される実施形態に対する変形及び修正は、当業者には明らかになり得、本発明の範囲に含まれる。
【外国語明細書】