(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041053
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム及び包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240318BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240318BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D65/40 D
C08L101/16 ZBP
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023145662
(22)【出願日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0114862
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソキン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、クォンヒョン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J200
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA08
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41J
4F100AT00
4F100BA08
4F100GB15
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4J200AA06
4J200BA14
4J200BA19
4J200CA01
4J200CA02
4J200DA17
4J200EA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた柔軟性を示すことで騒音性が改善され、透明性も確保可能であるポリエステルフィルム、および該ポリエステルフィルムを含む包装材を提供する。
【解決手段】本発明のポリエステルフィルム100は、乳酸残基を含む第1層52と;テレフタレート残基及びアジピン酸残基を含む第2層54と;を交互に積層した積層体50を含むポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルフィルムは、180度の回転を800rpmで30秒以上適用したフィルム騒音度の評価において、平均等価騒音度が78dB以下であり、ヤング率が280kgf/mm
2以下であるなどの特徴を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸残基を含む第1層と、テレフタレート残基及びアジピン酸残基を含む第2層とを交互に積層した積層体を含むポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルフィルムは、180度の回転を800rpmで30秒以上適用したフィルム騒音度の評価において、平均等価騒音度が78dB以下であり、ヤング率が280kgf/mm2以下である、ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記ポリエステルフィルム騒音度の評価において、250Hzで騒音度が63dB以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムは、ヘイズが10%以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記ポリエステルフィルム騒音度の評価において、500Hzで騒音度が53dB以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記積層体は、前記第1層と前記第2層が30層以上交互に積層されたものである、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記第1層は、ヒドロキシアルカノエート残基をさらに含む、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記第1層は、前記乳酸残基100重量部を基準として前記ヒドロキシアルカノエート残基を1~7重量部で含み、
前記第2層はポリブチレンアジペートコテレフタレート樹脂を含む、請求項6に記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記第1層と前記第2層の厚さの比率は1:0.2~1.5である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記ポリエステルフィルムは、スキン層をさらに含み、
前記スキン層は、前記積層体の一面及び他面上にそれぞれ配置され、
前記スキン層は、乳酸残基を含む第1樹脂、及び無機粒子を含む、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】
乳酸残基を含む第1層と、テレフタレート残基及びアジピン酸残基を含む第2層とを交互に積層した積層体を含むポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルフィルムは、180度の回転を800rpmで30秒以上適用してフィルム騒音度の評価を行ったとき、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz及び8000Hzでの騒音度が全て80dB以下である、ポリエステルフィルム。
【請求項11】
請求項1に記載のポリエステルフィルムを含む、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、騒音度が改善された多層ポリエステルフィルムに関する。本発明は、騒音度が改善された生分解性ポリエステルフィルムを適用した包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリラクチド樹脂は、比較的短い期間内に生分解され、有害成分がほとんど残らない、再利用が可能な環境に優しい素材として知られている。
【0003】
しかし、このようなポリラクチド樹脂は、フィルム状に加工して使用する場合、非常に大きな騒音を発し、これは、実際の商品化に限界として作用してきた。
【0004】
このようなポリラクチド樹脂の欠点を補完するために、ポリ乳酸を脂肪族-芳香族共重合ポリエステルとブレンドしてフィルムに柔軟性を付与する方法があるが、この場合、ポリ乳酸と脂肪族-芳香族共重合ポリエステルとの低い相溶性などにより、最終フィルムの透明性が著しく低下し、透明性が求められる包装の用途には使用することが難しかった。
【0005】
前述した背景技術は、発明者が本発明の導出のために保有していた、または本発明の導出過程で習得した技術情報であって、必ずしも本発明の出願前に一般公衆に公開された公知技術であるとは限らない。
【0006】
関連する先行技術として、韓国登録特許第10-0904144号(特許文献1)、韓国登録特許第10-2404216号(特許文献2)などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
具現例の目的は、騒音性が改善され、透明性も確保可能であり、生分解特性を有するポリエステルフィルムを提供することである。具現例の目的は、前記ポリエステルフィルムを含む包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一具現例は、乳酸残基を含む第1層と;テレフタレート残基及びアジピン酸残基を含む第2層と;を交互に積層した積層体を含むポリエステルフィルムを提供する。
【0009】
具現例のポリエステルフィルムは、180度の回転を800rpmで30秒以上適用したフィルム騒音度の評価において、平均等価騒音度が78dB以下である。
【0010】
具現例のポリエステルフィルムのヤング率は280kgf/mm2以下であってもよい。
【0011】
具現例のポリエステルフィルムは、前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記フィルム騒音度の評価において、250Hzで騒音度が63dB以下であってもよい。
【0012】
前記積層体は、ヘイズが10%以下であってもよい。
【0013】
具現例のポリエステルフィルムは、ヘイズが10%以下であってもよい。
【0014】
具現例のポリエステルフィルムは、前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記フィルム騒音度の評価において、500Hzで騒音度が53dB以下であるものであってもよい。
【0015】
前記積層体は、前記第1層と前記第2層が30層以上交互に積層されたものであってもよい。
【0016】
前記第1層は、ヒドロキシアルカノエート残基をさらに含むものであってもよい。
【0017】
前記第1層は、前記乳酸残基100重量部を基準として前記ヒドロキシアルカノエート残基を1~7重量部で含むことができる。
【0018】
前記第2層はポリブチレンアジペートコテレフタレート樹脂を含むことができる。
【0019】
前記第1層と前記第2層の厚さの比率は1:0.2~1.5であってもよい。
【0020】
具現例のポリエステルフィルムは、スキン層をさらに含むことができる。
【0021】
前記スキン層は、前記積層体の一面及び他面上にそれぞれ配置されてもよい。
【0022】
前記スキン層は、乳酸残基を含む第1樹脂、及び無機粒子を含むことができる。
【0023】
具現例のポリエステルフィルムは、乳酸残基を含む第1層と;テレフタレート残基及びアジピン酸残基を含む第2層と;を交互に積層した積層体を含むポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルフィルムは、180度の回転を800rpmで30秒以上適用してフィルム騒音度の評価を行ったとき、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz及び8000Hzでの騒音度が全て80dB以下であってもよい。
【0024】
上記目的を達成するための他の具現例は、上述したポリエステルフィルムを含む包装材を提供する。
【0025】
前記包装材は、食品包装材または使い捨て製品の包装材であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
具現例は、生分解性を有しながらも、騒音発生の程度が減少したポリエステルフィルムなどを提供することができる。具現例は、人の可聴領域帯、特に低音部の騒音の発生を減少させながらも、環境に優しく、比較的透明であり、適切なレベル以上の機械的強度及び柔軟性を有するポリエステルフィルムなどと、これを活用した包装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】具現例に係るポリエステルフィルムの一例を断面で説明する概念図である。
【
図2A】具現例に係るポリエステルフィルムの一例を断面で説明する概念図である。
【
図2B】具現例に係るポリエステルフィルムの一例を断面で説明する概念図である。
【
図3】具現例の騒音度の評価に適用される騒音測定方法を説明する概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、具現例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、具現例は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同一の図面符号を付した。
【0029】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0030】
本明細書において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味する。
【0031】
本明細書全体において、「第1」、「第2」のような用語は、同一の用語を互いに区別するために使用される。また、単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示すものでない限り、複数の表現を含む。
【0032】
本明細書において、特に言及することなく記載したppmは、重量を基準とする。
【0033】
図面は、説明を目的としてその構成を誇張又は省略して提示することができ、これによって具現例の権利範囲が限定されて解釈されない。
【0034】
生分解性高分子として代表的なポリ乳酸樹脂は、既存の石油系ポリエステルフィルムを代替するフィルム素材として注目を集めている。しかし、ポリ乳酸樹脂を適用したフィルムは、使用時に比較的大きながさつく音(loud crackling sound)が発生し、これは、フィルムを包装材などとして活用することを阻む欠点として指摘されることもある。特に、菓子袋、パン袋などのような生活に密接した食品包装材として、ポリ乳酸樹脂を含有するフィルムを適用する際に、このがさつく音は、使用者に不快な感覚を引き起こす騒音として作用することがある。
【0035】
騒音は、騒音公害(noise pollution)と呼ばれるほどに社会問題化されることもあり、減少させなければならない対象である。また、不必要にうるさい音を発生させる製品は消費者が選択を渋るため、環境配慮を目的として、生分解性フィルムが既存の石油化学ベースのフィルムを代替するためには、不必要な騒音を発生させない生分解性フィルムを提供することが重要である。
【0036】
発明者らは、生分解特性を得ながらも、同時に騒音発生の程度が低いフィルムを製造するために様々な試みをし、その結果として具現例を提示する。発明者らは、具現例を通じて、生分解性ポリエステルフィルムのがさつく音の発生を減少させ、一定レベル以上の機械的強度を得ることで、食品などの包装材として活用するのに優れるという点を確認し、具現例を提示する。
【0037】
図1、
図2A及び
図2Bは、それぞれ、具現例に係るポリエステルフィルムの一例を断面で説明する概念図であり、
図3は、具現例の騒音度の評価に適用される騒音測定方法を説明する概念図である。以下、
図1乃至
図3を参照して、具現例をより詳細に説明する。
【0038】
一実施例に係るポリエステルフィルム100は、乳酸残基を含む第1層52と;テレフタレート残基とアジピン酸残基を含む第2層54と;を交互に積層した積層体50を含む(
図1参照)。
【0039】
他の実施例に係るポリエステルフィルム100は、上述した積層体50と、前記積層体の一面または両面上に配置されるスキン層70とを含む(
図2A及び
図2B参照)
【0040】
積層体
前記積層体50は、互いに区分される高分子樹脂を含有する第1層と第2層とが交互に積層された積層体である。
【0041】
第1層52は乳酸残基を含む。
【0042】
第1層52はポリ乳酸系樹脂(PLA based resin、polylactic acid based resin)を含むことができる。
【0043】
ポリ乳酸系樹脂は、石油ベースの樹脂とは異なり、バイオマス(biomass)をベースとするので、二酸化炭素排出量の抑制に役立つ。また、生分解性であって、埋め立て時に、水分及び微生物によって、石油ベースの樹脂に比べて早い分解が進行し、環境に優しい。
【0044】
ポリ乳酸系樹脂は、前記第1層全体を基準として50重量%以上含まれてもよく、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、93重量%以上、95重量%以上、または97重量%以上含まれてもよい。また、99.9重量%以下、または99重量%以下含まれてもよい。
【0045】
ポリ乳酸系樹脂は、L-乳酸残基、D-乳酸残基、D,L-乳酸残基、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0046】
ポリ乳酸系樹脂におけるL-乳酸残基の含量は、ポリ乳酸系樹脂全体を基準として80モル%以上であってもよく、83モル%以上、85モル%以上、88モル%以上、90モル%以上または92モル%以上であってもよい。また、L-乳酸の含量は99モル%以下であってもよく、97モル%以下、95モル%以下、または93モル%以下であってもよい。この場合、フィルムの耐熱特性をさらに向上させることができる。
【0047】
ポリ乳酸系樹脂におけるD-乳酸残基の含量は、ポリ乳酸系樹脂全体を基準として0モル%超、0.5モル%以上、または1モル%以上であってもよい。また、D-乳酸の含量は、5モル%以下、または3モル%以下であってもよい。この場合、フィルムの延伸工程性をさらに向上させることができる。
【0048】
ポリ乳酸系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が100,000~1,000,000g/mol、例えば、100,000~800,000g/mol、100,000~500,000g/mol、または100,000~300,000g/molであってもよい。前記重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー法(GPC)により測定することができる。前記ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)が前記範囲を満たす場合、前記フィルムの機械的特性を向上させるのに役立ち得る。
【0049】
第1層52は、ヒドロキシアルカノエート残基をさらに含むことができる。
【0050】
ヒドロキシアルカノエート残基は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(PHA resin、polyhydroxyalkanoates resin)に由来したものであってもよい。
【0051】
第1層52は、ポリ乳酸系樹脂とポリヒドロキシアルカノエート樹脂を含むことができる。
【0052】
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、化学的合成または微生物(バクテリア又は藻類;algae)によって生成可能な半結晶性熱可塑性ポリエステル化合物であって、生分解性プラスチックの製造に活用される。
【0053】
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、ポリ[3-ヒドロキシブチレート](P3-HB);ポリ[4-ヒドロキシブチレート](P4-HB);ポリ[3-ヒドロキシバレレート](PHV);ポリ[3-ヒドロキシブチレート]-コ-ポリ[3-ヒドロキシバレレート](PHBV);ポリ[3-ヒドロキシヘキサノエート](PHC);ポリ[3-ヒドロキシヘプタノエート](PHH);ポリ[3-ヒドロキシオクタノエート](PHO);ポリ[3-ヒドロキシノナノエート](PHN);ポリ[3-ヒドロキシデカノエート](PHD);ポリ[3-ヒドロキシドデカノエート](PHDD);及びポリ[3-ヒドロキシテトラデカノエート](PHTD)からなる群から選択された1種以上の残基を含むことができる。
【0054】
具体的に、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、3-ヒドロキシブチレート残基(3-hydroxybutyrate残基、3HB残基)、4-ヒドロキシブチレート残基(4-hydroxybutyrate残基、4HB残基)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つを含むことができる。
【0055】
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂全体を基準として3HB残基を50モル%以上含んでもよく、55モル%以上、または60モル%以上含んでもよい。前記残基を100モル%以下含んでもよく、80モル%以下、または70モル%以下含んでもよい。
【0056】
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂全体を基準として4HB残基を50モル%以下含んでもよく、45モル%以下、または40モル%以下含んでもよい。前記残基を0モル%以上含んでもよく、20モル%以上、または30モル%以上含んでもよい。
【0057】
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、4HB残基と3HB残基の両方を含むことができ、前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂全体を基準として、4HB残基を30モル%~35モル%含むことができる。この場合、フィルムの結晶化度を調節して機械的物性の向上に役立ち得る。
【0058】
第1層52は、前記ポリ乳酸系樹脂と前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂とがブレンドされた樹脂を適用して製造することができる。これを通じて、ポリエステルフィルムに一定レベル以上の生分解性及び適切な機械的物性という特徴を付与するのに寄与することができる。
【0059】
第1層52に含まれたヒドロキシアルカノエート残基は、乳酸残基100重量部を基準として1~7重量部であってもよく、または2~6重量部であってもよい。このような範囲で前記残基を有する樹脂を適用する場合、フィルムに強度を付与し、二軸延伸過程で結晶化度の制御に役立ち得、相対的に硬い第1層の物性を調節して、全体的にさらに騒音度が減少したフィルムを提供することができる。
【0060】
第1層52に適用される樹脂は、210℃で溶融粘度が5,000P以上又は7,000P以上であってもよく、14,000P以下又は12,000P以下であってもよい。この場合、押出方式で積層体を製造する際に、安定した作業性を有することができる。
【0061】
第1層52は、無機粒子をさらに含むことができる。前記無機粒子は、例示的にブロッキング防止剤の役割をすることができるが、これに限定されるものではない。
【0062】
第1層に適用される無機粒子は、例示的にシリカ(SiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化インジウムスズ(ITO)、水酸化アルミニウム(Al2(OH)3)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)、または硫酸バリウム(BaSO4)を含むことができる。
【0063】
前記無機粒子は、D50が1μm以上であってもよく、または1.5μm以上であってもよい。前記D50は3μm以下、または2μm以下であってもよい。
【0064】
前記無機粒子は、第1層又はスキン層に、各層全体を基準として2,000ppm以下含まれてもよく、または1,500ppm以下含まれてもよい。前記無機粒子を前記スキン層に含む場合、ブロッキング防止剤としての役割をすることができる。
【0065】
また、炭酸カルシウムを含む無機粒子を第1層が含む場合、ポリエステルフィルムの騒音の発生を減少させるのに役立ち得る。
【0066】
第1層52は、通常の静電印加剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線遮断剤、ブロッキング防止剤、またはこれらの組み合わせが、必要に応じてさらに含まれてもよい。
【0067】
第2層54は、テレフタレート残基及びアジピン酸残基を含む。
【0068】
第2層54は、脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とし、具体的にアジピン酸残基及びテレフタレート残基を含む。
【0069】
前記脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂は、アジピン酸である脂肪族ジカルボン酸残基と、テレフタル酸である芳香族ジカルボン酸残基とを含むことができ、グリコール残基をさらに含むことができる。
【0070】
前記脂肪族ジカルボン酸は、例示的に、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マロン酸、シュウ酸、アゼライン酸、またはノナンジカルボン酸をさらに含むことができる。
【0071】
前記芳香族ジカルボン酸は、例示的に、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、またはシクロヘキサンジカルボン酸をさらに含むことができる。
【0072】
前記グリコール残基は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物から選択されたいずれか1つの残基であってもよい。
【0073】
第2層54に含まれる樹脂は、酸成分全体を基準として脂肪族成分の含量が30モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、または50モル%以上であってもよい。また、前記脂肪族成分の含量が、酸成分全体を基準として80モル%以下、70モル%以下、または60モル%以下であってもよい。この場合、ポリエステルフィルムの生分解性をさらに向上させることができる。
【0074】
第2層54に適用される樹脂は、例示的にポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂であってもよく、この場合、騒音度の減少、及びフィルムの製造過程での作業性の向上に役立ち得る。
【0075】
第2層54に適用される樹脂は、210℃で溶融粘度が3,000P以上又は4,000P以上であってもよく、9,000P以下又は7,000P以下であってもよい。この場合、押出方式で積層体を製造する際に、安定した作業性を有することができる。
【0076】
前記脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、例えば、50,000~400,000g/mol、50,000~300,000g/mol、50,000~200,000g/mol、または50,000~100,000g/molであってもよい。前記重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー法(GPC)により測定することができる。この場合、第1層に適用される樹脂との相溶性に優れ、優れた加工性を有することができる。
【0077】
第2層54は、通常の静電印加剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線遮断剤、ブロッキング防止剤、またはこれらの組み合わせが、必要に応じてさらに含まれてもよい。
【0078】
第2層54は、第1層52と比較して柔軟であるという特徴を有する。
【0079】
比較的硬い第1層と相対的に柔軟な第2層とは交互に積層されて積層体50を形成する。第1層によって、積層体全体で機械的物性が一定レベル以上に維持され得、第1層と第2層との相互作用により、フィルムの使用過程での騒音の発生が減少することができる。特に、ポリ乳酸フィルムと比較して、等価騒音度及び低音周波数帯域帯の騒音度が有意に減少したフィルムを提供することができる。
【0080】
また、積層体の多層積層によりポリエステルフィルムの光学的特性も向上させることができるが、特に、第1層に適用される樹脂と第2層に適用される樹脂とをブレンドして単層に形成したフィルムと比較して、ヘイズ値が低くなる特徴を有する。したがって、具現例は、可視光で光透過性が優れたフィルムを提供することができる。
【0081】
積層体50の全層数は4層以上であってもよく、6層以上であってもよく、10層以上であってもよく、30層以上、34層以上、または36層以上であってもよい。前記積層体は、424層以下、324層以下、または224層以下であってもよい。前記積層体の全層数は、後述するスキン層に第1層の樹脂と同一の樹脂を適用して、積層体の第1層と隣り合うスキン層の層間の区別が難しい場合、積層体の第1層が存在すると仮定して定めた層数を基準とする。
【0082】
積層体50は、第1層52と第2層54を多層構造で交互に積層することによって、前記ポリエステルフィルムに機械的強度を適切なレベル以上に維持させると共に、騒音度が改善された多層ポリエステルフィルムを提供することができる。
【0083】
前記積層体は、前記第1層と前記第2層が36層以上交互に積層されたものであってもよく、36~144層で交互に積層されたものであってもよい。この場合、ポリエステルフィルムをスナック袋のような一般の袋の用途に適用したときに発生する騒音を実質的に減少させることができる。
【0084】
積層体50において、第1層52と第2層54の平均厚さの比率は1:0.2~1.5であってもよい。前記第1層と第2層の平均厚さの比率は1:0.3~1.3であってもよい。前記第1層及び第2層の個別層の平均厚さの比率が前記範囲を満たす場合、適切なレベル以上のフィルム強度の維持と共に、騒音減少の効果を得ることができる。
【0085】
積層体50は、微生物と水分が存在する環境で一定の時間が経過すると、実質的に完全な生分解が可能であるので、環境に優しいという特性を有する。
【0086】
積層体50は、180度の回転を800rpmで30秒以上適用したフィルム騒音度の評価において、平均等価騒音度が78db以下であってもよい。前記平均等価騒音度は77.5dB以下、76dB以下、74.5dB以下、または73dB以下であってもよい。前記平均等価騒音度は72dB以上であってもよい。
【0087】
前記フィルム騒音度の評価は、騒音分析器14を活用して測定した。測定用サンプルフィルム(又は積層体)は、A4サイズに裁断され、外部騒音が遮断されたボックス内に配置されたバー10にサンプルの長い端部を固定部12(例示:ジグ)で把持して固定し、バーを回転させる方法でフィルムの騒音を発生させる。騒音分析器の測定部が配置された先端とフィルムとの間の距離dは、約10cmを適用する。騒音の発生は、バーを800RPMの速度で180度回転させて発生する騒音度を測定し、回転は30秒以上持続する(
図3参照)。
【0088】
例示的に、ポリカーボネートで作製された650(W)×450(D)×500(H)mmのボックス内で、A4サイズに裁断されたフィルムを準備し、Cirrus Research PLC社のデジタル騒音分析器(モデル名:CR-162C)を配置する(
図3参照)。騒音分析器は、準備されたフィルムから約10cm離れた所に位置し、フィルムの両端をジグで把持して180度回転、800RPM、30秒以上騒音を発し、騒音を測定する。データの分析は、NoiseTools Softwareプログラムを適用したものを基準とする。プログラムを通じて、特定の周波数のそれぞれでの30秒間の騒音度、等価騒音度などを評価することができる。例示的に、31.5Hzから16,000Hzの範囲で騒音度及び等価騒音度を測定することができる。
【0089】
前記平均等価騒音度の評価は、前記積層体又は前記ポリエステルフィルムを15μm~30μmから選択されたいずれかの厚さで測定した値を基準とする。
【0090】
積層体50は、前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記フィルム騒音度の評価において、250Hzで騒音度が63dB以下、62dB以下、61dB以下、または60dB以下であってもよい。これは、低音を示す周波数で相対的に低い騒音度を有することを意味する。
【0091】
積層体50は、前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記フィルム騒音度の評価において、500Hzで騒音度が53dB以下、52dB以下、51dB以下、または50dB以下であってもよい。これは、人がうるさいと感じる比較的低音部の騒音度が低いことを意味する。
【0092】
積層体50は、前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記フィルム騒音度の評価において、1,000Hzで59dB以下、57dB以下、56dB以下、または55dB以下であってもよい。これは、比較的低い音域帯の騒音度が低いことを意味する。
【0093】
積層体50は、前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記フィルム騒音度の評価において、2,000Hzで67dB以下、66dB以下、65dB以下、64dB以下、または63.5dB以下であってもよい。これは、一般に人が大きく感じる周波数の騒音であって、実質的に騒音度が減少したことを意味する。
【0094】
積層体50は、前記積層体の厚さが16μmであるとき、前記フィルム騒音度の評価において、4,000Hzで75dB以下、74dB以下、73dB以下、72dB以下、または71dB以下であってもよい。これは、一般に人が大きく感じる周波数の騒音であり、かつフィルムから最も大きな騒音が発生する領域であって、実質的に騒音度が減少したことを意味する。
【0095】
積層体50は、前記積層体の厚さが16μmであるとき、8,000Hzで72dB以下、71dB以下、70.5dB以下、70dB以下、69dB以下、または68dB以下であってもよい。これは、比較的高音の騒音の発生が減少したことを意味する。
【0096】
積層体50は、前記積層体の厚さが16μmであるとき、16,000Hzで63dB以下、62dB以下、60dB以下、または58dB以下であってもよい。これは、高音の騒音の発生が減少したことを意味する。
【0097】
積層体50は、ヘイズ(haze)が10%以下、9%以下、または8%以下であってもよい。前記ヘイズは、2%以上または4%以上であってもよい。これは、適切な光学的特性で包装材として適用するのに十分なレベルのヘイズ値であって、乳酸残基を有する樹脂と脂肪族-芳香族共重合ポリエステル樹脂を単純にブレンドするものと比較して、特に優れた特性である。これは、前記の2つの樹脂を単純にブレンドする場合、両樹脂の相溶性がよくないため、樹脂が濁る現象が現れる。具現例は、積層体の構造を適用することで、両樹脂のよくない相溶性によって発生する光学的特性の低下を抑制し、優れた光学的物性を得ることができる。前記ヘイズは、日本精密光学社(Nihon Seimitsu Kogaku)のヘイズメーター(Hazemeter)(モデル名:SEP-H)を用いて測定した値を基準とする。
【0098】
スキン層
具現例のポリエステルフィルム100は、スキン層70をさらに含むことができる。
【0099】
スキン層70は、前記積層体の一面または他面上に配置されてもよい(
図2A参照)。
【0100】
スキン層70は、前記積層体の一面及び他面上にそれぞれ配置されてもよい(
図2B参照)。
【0101】
スキン層70は、前記第1層52の樹脂が適用されてもよい。スキン層70は、前記第2層54の樹脂が適用されてもよい。このような場合、ポリエステルフィルムの製造作業性をさらに向上させることができ、フィルム全体に生分解特性を付与することができる。
【0102】
スキン層70は、第1層の樹脂を適用する場合、ポリエステルフィルムの機械的物性の向上、作業性などをさらに向上させることができる。
【0103】
スキン層70は、第1層と同様に無機粒子を含むことができ、必要に応じて添加剤を適用できるという点は、前述した通りである。
【0104】
スキン層70の厚さは、積層体50の厚さ100を基準として5~25の厚さの比率で適用され得る。スキン層70の厚さは0.8μm以上、1.2μm以上、または2μm以上であってもよく、前記厚さの上限に特に制限はない。
【0105】
仮に積層体の上下部の両方に前記スキン層が適用される場合、上述したスキン層の厚さは、片方のスキン層の厚さを意味する。
【0106】
ポリエステルフィルム100にスキン層70が適用されると、フィルム表面の強度が優れ、全体的に触感及び耐スリップ性などが制御されたフィルムを提供することができる。
【0107】
ポリエステルフィルム
具現例のポリエステルフィルム100は、180度の回転を800rpmで30秒以上適用したフィルム騒音度の評価において、平均等価騒音度が78dB以下であってもよい。前記平均等価騒音度は77.5dB以下、76dB以下、74.5dB以下、または73dB以下であってもよい。前記平均等価騒音度は72dB以上であってもよい。
【0108】
例示的に、約25μmの厚さを基準として、全て同じ測定条件を適用して測定すれば、石油系材料をベースとした一般のポリエステルフィルムの平均等価騒音度は約80.3dB、ポリラクチド樹脂を適用したポリエステルフィルムの平均等価騒音度は約83~85dBのレベルであって、差がある。
【0109】
具現例の平均等価騒音度は、ポリ乳酸樹脂などの生分解性高分子を適用しながらも、騒音の発生を実質的に抑制又は減少させる。すなわち、具現例は、製品の包装材などとして適用するポリエステルフィルム(石油系材料をベースとしたもの)よりもさらに騒音を抑制した生分解性ポリエステルフィルムを提供することができる。
【0110】
前記平均等価騒音度の評価または騒音度の評価は、前記積層体又は前記ポリエステルフィルムを10μm~30μmから選択されたいずれかの厚さで測定した値を基準とする。
【0111】
具現例のポリエステルフィルム100は、前記フィルム騒音度の評価において、250Hzで騒音度が63dB以下、62dB以下、61dB以下、または60dB以下であってもよい。これは、低音を示す周波数で相対的に低い騒音度を有することを意味する。
【0112】
具現例のポリエステルフィルム100は、前記フィルム騒音度の評価において、500Hzで騒音度が53dB以下、52dB以下、51dB以下、または50dB以下であってもよい。これは、人がうるさいと感じる比較的低音部の騒音度が低いことを意味する。
【0113】
具現例のポリエステルフィルム100は、前記フィルム騒音度の評価において、1,000Hzで59dB以下、57dB以下、56dB以下、または55dB以下であってもよい。これは、比較的低い音域帯の騒音度が低いことを意味する。
【0114】
具現例のポリエステルフィルム100は、前記フィルム騒音度の評価において、2,000Hzで67dB以下、66dB以下、65dB以下、64dB以下、または63.5dB以下であってもよい。これは、一般に人が大きく感じる周波数の騒音であって、実質的に騒音度が減少したことを意味する。
【0115】
具現例のポリエステルフィルム100は、前記フィルム騒音度の評価において、4,000Hzで75dB以下、74dB以下、73dB以下、72dB以下、または71dB以下であってもよい。これは、一般に人が大きく感じる周波数の騒音であり、かつフィルムから最も大きな騒音が発生する領域であって、実質的に騒音度が減少したことを意味する。
【0116】
具現例のポリエステルフィルム100は、8,000Hzで72dB以下、71dB以下、70.5dB以下、70dB以下、69dB以下、または68dB以下であってもよい。これは、比較的高音の騒音の発生が減少したことを意味する。
【0117】
具現例のポリエステルフィルム100は、16,000Hzで63dB以下、62dB以下、60dB以下、または58dB以下であってもよい。これは、高音の騒音の発生が減少したことを意味する。
【0118】
前記ポリエステルフィルムは、ヘイズ(haze)が10%以下であってもよい。また、前記ポリエステルフィルムのヘイズ(haze)は6.5%以上9.5%以下であってもよい。また、前記ポリエステルフィルムのヘイズ(haze)は7%以上9%以下であってもよい。前記のようなヘイズの範囲を有する場合、透明性が確保されることで、透光性が必要な様々な用途に使用することができる。前記ヘイズは、日本精密光学社(Nihon Seimitsu Kogaku)のヘイズメーター(モデル名:SEP-H)を用いて測定した。
【0119】
具現例のポリエステルフィルム100は、ヤング率が280kgf/mm2以下であってもよい。前記ヤング率は、ASTM D882に準拠して測定したものを基準とし、フィルムの縦方向であるMD方向と横方向であるTD方向の平均値である平均ヤング率を意味する。
【0120】
前記ヤング率は、280kgf/mm2以下、275kgf/mm2以下、270kgf/mm2以下、220kgf/mm2以下、200kgf/mm2以下、または160kgf/mm2以下であってもよい。前記ヤング率は、80kgf/mm2以上、100kgf/mm2以上、120kgf/mm2以上、125kgf/mm2以上、または150kgf/mm2以上であってもよい。ヤング率は、ポリエステルフィルムの柔軟性を示す指標の一つであって、柔軟なフィルムが騒音の発生が少ないものとして取り扱うこともあるが、発明者らの繰り返された実験の結果としては、ヤング率の高低とフィルムの騒音発生の程度は必ずしも一定の相関関係を有するものではない。但し、フィルムが全体的にさらに柔軟な特性を有するという点を示す。
【0121】
具現例のポリエステルフィルム100は、引張強度が3kgf/mm2以上、4kgf/mm2以上、5kgf/mm2以上、または7kgf/mm2以上であってもよく、17kgf/mm2以下、15kgf/mm2以下、または12kgf/mm2以下であってもよい。MD方向とTD方向の引張強度が異なる場合、これらの前記引張強度は、これらの平均値を意味する。前記ポリエステルフィルムは、包装材として適用するのに適切な引張強度を有することができる。
【0122】
具現例のポリエステルフィルム100は、伸び率が60%以上、70%以上、または75%以上であってもよく、120%以下であってもよい。MD方向とTD方向の伸び率が異なる場合、これらの前記伸び率は、これらの平均値を意味する。前記ポリエステルフィルムは、包装材として適用するのに適切な伸び率特性を有することができる。
【0123】
具現例のポリエステルフィルム100は、熱収縮率が5%以下、4%以下、または3%以下であってもよい。前記熱収縮率は0.5%以上であってもよい。これは、ポリエステルフィルムが一定レベル以上の寸法安定性を有することを意味し、具現例は、安定した熱収縮率特性を有することができる。
【0124】
具現例のポリエステルフィルム100は、厚さが1,000μm以下、800μm以下、600μm以下、400μm以下、200μm以下、100μm以下、または60μm以下であってもよい。前記厚さは10μm以上、または15μm以上であってもよい。このような場合、包装材として適用するのに適切な厚さを有することができる。
【0125】
具現例のポリエステルフィルム100は、乳酸残基を含む第1層と;テレフタレート残基及びアジピン酸残基を含む第2層と;を交互に積層した積層体を含み、前記ポリエステルフィルム100は、180度の回転を800rpmで30秒以上適用してフィルム騒音度の評価を行ったとき、騒音度が80dB以下であってもよく、77dB以下であってもよく、または75dB以下であってもよい。このとき、騒音度は、それぞれ、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz及び8000Hzで測定した値を意味する。
【0126】
前記ポリエステルフィルム100は、人が主に認識する低音から高音に至る様々な周波数の騒音が全体的に低いので、環境に優しく、一定レベル以上の機械的強度を有しながらも、相対的に静かなポリエステルフィルムを提供することができる。
【0127】
ポリエステルフィルムの製造方法
他の一実施例に係るポリエステルフィルムの製造方法は、組成物準備ステップと、未延伸シートを得るステップと、ポリエステルフィルムを得るステップとを含む。
【0128】
組成物準備ステップは、乳酸残基を含む第1樹脂組成物と、テレフタレート残基及びアジピン酸残基を含む第2樹脂組成物とを準備するステップである(以下、第1ステップと称する)。
【0129】
未延伸シートを得るステップは、前記第1樹脂組成物及び前記第2樹脂組成物をそれぞれ溶融押出して、前記第1樹脂を含む第1層と、前記第2樹脂を含む第2層とが交互に積層された積層体を含む未延伸シートを得るステップである(以下、第2ステップと称する)。
【0130】
ポリエステルフィルムを得るステップは、前記積層されたシートを延伸し、熱固定してポリエステルフィルムを得るステップである(以下、第3ステップと称する)。
【0131】
ポリエステルフィルム及び前記積層体についての具体的な説明は、上述した説明と重複するので、詳細な記載は省略する。
【0132】
第1樹脂組成物は、上述した第1層の樹脂、無機粒子、添加物などを含むことができる。第2樹脂組成物は、上述した第2層の樹脂、添加物などを含むことができる。
【0133】
第1層の樹脂と第2層の樹脂の210℃での溶融粘度は、上述した通りであり、このような溶融粘度を有する樹脂を前記第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物に適用すると、押出方式を適用して積層体を製造するのに有利である。
【0134】
前記第1樹脂組成物と前記第2樹脂組成物は、第1ステップ及び/又は第2ステップでは水分を除去するステップを経ることができ、水分は150ppm以下になるようにすることがよい。
【0135】
第2ステップは、フィードブロックなどの通常のフィルム積層手段が適用されてもよい。例示的に、フィルム積層手段は、第1層と第2層に対応する溶融樹脂が積層されるように吐出できる構造を有することができ、スキン層の樹脂が吐出される部分を追加で含むことができる。前記スキン層に前記第1樹脂組成物又は前記第2樹脂組成物を適用する場合、作業性がさらに向上することができる。前記溶融樹脂の吐出量を制御するなどの方式により、積層体の各層の厚さの比率及びスキン層の厚さの比率を制御することができる。
【0136】
厚さの比率などは上述した通りであり、後述する延伸工程などを考慮して、各層の厚さを制御して適用可能である。
【0137】
第2ステップは、溶融押出後に前記未延伸シートを冷却ロールに密着させるなどの過程によりシート化することができる。
【0138】
第3ステップは、前記シートを縦方向及び横方向に延伸する段階を含む。前記延伸後には熱固定段階をさらに含むことができる。
【0139】
前記延伸は、二軸延伸が適用されてもよく、または逐次二軸延伸が適用されてもよい。具体的に、前記延伸は、50℃~80℃に予熱した後、40℃~100℃で縦方向(MD)に2~4倍縦延伸する段階、及び50℃~150℃で横方向(TD)に3~6倍延伸する段階を含むことができる。
【0140】
前記熱固定段階は、50℃~150℃、70℃~150℃、100℃~150℃、または110℃~140℃で行われてもよい。
【0141】
前記延伸及び前記熱固定を通じて、ポリエステルフィルムは、薄い厚さを有しながらも、機械的強度を向上させることができ、寸法安定性も向上させることができる。
【0142】
包装材
他の一具現例に係る包装材は、上述したポリエステルフィルムを含む。ポリエステルフィルムについての具体的な説明は、上述した説明と重複するので、詳細な記載を省略する。
【0143】
包装材は、例えば、使い捨て包装材、食品包装材などが適用され得、前記ポリエステルフィルムがそのまま適用されてもよく、アルミニウム箔、カラー層などがさらに含まれて適用されてもよい。
【0144】
前記包装材は、生分解性樹脂が適用されることで、二酸化炭素発生の問題を減少させ、特定の条件でほぼ完全な生分解が可能であるので、環境に優しい。また、既存の生分解性フィルムとして研究されているポリ乳酸樹脂を適用しながらも、騒音度を低下させ、機械的強度などは一定レベル以上に維持し、ヘイズ値も適切なレベルで確保して、包装材などとして活用度が優れる。
【0145】
以下、具体的な実施例を通じて具現例をより具体的に説明する。下記実施例は、具現例の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の権利範囲がこれに限定されるものではない。
【0146】
1.実施例1及び2のポリエステルフィルムの製造
第1樹脂組成物は、第1樹脂100重量部を基準として、ポリ乳酸系重合体93.9重量部、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体6重量部、及び炭酸カルシウム0.1重量部の混合樹脂を適用した。
【0147】
前記第1樹脂において、ポリ乳酸系重合体は、D-ラクチドの含量が約1~約3モル%であり、摂氏210度で溶融粘度が約7,000~約12,000P(poise)であり、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、4HBの含量が30~35モル%であり、炭酸カルシウムは、粒子がD50=1.5μmであるものを適用した。
【0148】
第2樹脂としては、第2樹脂100重量部を基準として、摂氏210度で溶融粘度が約4,000~約7,000P(poise)であり、酸成分中の脂肪族成分の含量が50モル%であるポリブチレンアジペートコテレフタレート樹脂を100重量部で適用した。
【0149】
第1樹脂は、除湿乾燥機で摂氏60度で8時間以上、第2樹脂は、除湿乾燥機で摂氏80度で2時間以上乾燥して水分を除去した。
【0150】
2つの押出機、及び予め設定した層数で交互に積層される多層フィードブロックを使用して、第1樹脂は、温度が摂氏210度である押出機で、第2樹脂は、温度が摂氏210度である押出機で溶融押出した。第1樹脂と第2樹脂の吐出量の比(体積比)は70:30で適用した。
【0151】
多層フィードブロック内で、第1樹脂組成物は36層、第2樹脂組成物は36層に分岐後に交互に積層され、それぞれ第1層と第2層が72層で積層され、上面及び下面の最外郭層には、それぞれ全厚の約10%でスキン層が位置するようにし、スキン層には第1樹脂組成物が適用され、第1層と同一の組成を有するようにした。その後、780mmのダイ(Die)を通過させた後、摂氏20度に冷却された冷却ロールに密着させ、最外郭層を含めて73層(スキン層と第1層が隣り合う部分は、1個の層として取り扱う)の未延伸多層シートを得た。
【0152】
未延伸多層シートを摂氏65度で縦方向3.0倍、摂氏85度で横方向4.0倍に延伸した後、熱固定を摂氏120度、弛緩率1%で行って、20μmの二軸延伸多層フィルム(実施例1)を製造した。
【0153】
実施例2は、実施例1と同様に製造するが、延伸及び熱固定後に25μmの厚さを有するように製造した。
【0154】
2.実施例3~5のポリエステルフィルムの製造
実施例3は、第1樹脂組成物と第2樹脂組成物は前記と同様に適用するが、第1樹脂組成物と第2樹脂組成物の吐出量の比(体積比)を50:50で適用した。
【0155】
多層フィードブロック内で、第1樹脂組成物は36層、第2樹脂組成物は36層に分岐後に交互に積層され、それぞれ第1層と第2層が72層で積層され、上面及び下面の最外郭層には、それぞれ全厚の約8%でスキン層が位置するようにし、スキン層には第1樹脂組成物が適用され、第1層と同一の組成を有するようにした。
【0156】
他の過程は、実施例1の製造と同様に適用して、20μmの二軸延伸多層フィルム(実施例3)を製造した。
【0157】
実施例4は、実施例3と同様に行って25μmの二軸延伸多層フィルムを製造した。
【0158】
実施例5は、多層フィードブロック内で、第1樹脂組成物は15層、第2樹脂組成物は15層に分岐後に交互に積層され、それぞれ第1層と第2層が30層で積層され、上面及び下面の最外郭層には、それぞれスキン層が位置するようにし、スキン層には第1樹脂組成物が適用され、第1層と同一の組成を有するようにした。合計31層のフィルムを製造し、フィルムの厚さは20μmであった。
【0159】
3.比較例1~比較例4のポリエステルフィルムの製造
比較例1は、D-ラクチドの含量が約1%~約3モル%であり、摂氏210度で溶融粘度が約7,000~約12,000Pであるポリ乳酸系重合体を使用した。除湿乾燥機で摂氏80度で6時間乾燥して水分を除去した。第1樹脂層の樹脂は、温度が摂氏210度である押出機で溶融押出した。780mmのダイ(Die)を通過させた後、摂氏20度に冷却された冷却ロールに密着させて単層の未延伸シートを得た。このように得られた単層の未延伸シートを摂氏65度で縦方向3.0倍、摂氏85度で横方向3.8倍に延伸した後、熱固定温度摂氏120度及び弛緩率約1%を付与して、約20μmの二軸延伸単層フィルムを製造した。
【0160】
比較例2は、実施例1で用いられたポリ乳酸系重合体80重量%と第2樹脂20重量%とをブレンドして用い、摂氏200度の二軸押出機でブレンドした。これを、除湿乾燥機で摂氏60度で8時間乾燥した後、摂氏約210度で溶融押出して30μmの単層の未延伸シートを製造した。この未延伸シートを比較例2のフィルムとして適用した。
【0161】
比較例3は、ポリヒドロキシアルカノエート10重量%と第1樹脂で用いられたポリ乳酸系重合体90重量%とをハンドミキシングした後、摂氏200度の二軸押出機でブレンドしてチップに加工し、除湿乾燥機で摂氏60度で8時間以上乾燥した。その後、温度が摂氏210度であるシングル押出機で溶融押出して、780mmのダイ(Die)を通過させた後、摂氏20度に冷却された冷却ロールに密着させて単層の未延伸シートを得た。このように得られた単層の未延伸シートを摂氏65度で縦方向3.0倍、摂氏85度で横方向3.8倍に延伸した後、熱固定温度摂氏120度及び弛緩率約1%を付与して、約20μmの二軸延伸多層フィルムを製造した。
【0162】
比較例4は、第1層の樹脂として、D-ラクチドの含量が約1~3モル%であり、摂氏210度で溶融粘度が約7,000~12,000Pであるポリ乳酸系重合体、及び第2層の樹脂として、摂氏210度で溶融粘度が約4,000~約7,000Pであり、酸成分中の脂肪族成分の含量が50モル%であるPBAT樹脂を用いた。第1層の樹脂は、除湿乾燥機で摂氏60度で8時間以上、第2層の樹脂は、除湿乾燥機で摂氏80度で2時間以上乾燥して水分を除去した。2つの押出機、及び2つの層が交互に積層される多層フィードブロックを使用して、第1層の樹脂は、温度が摂氏210度である押出機で、第2層の樹脂は、温度が摂氏210度である押出機で溶融押出した。第1層の樹脂と第2層の樹脂の吐出量の比(体積比)は70:30で適用した。多層フィードブロック内で、第1層の樹脂は36層、第2層の樹脂は36層に分岐後に、第1層の樹脂と第2層の樹脂を交互に積層し、上/下面の最外郭層には、全厚の約20%の厚さで第1層の樹脂が配置されるようにした。その後、780mmのダイ(Die)を通過させた後、摂氏20度に冷却された冷却ロールに密着させ、最外郭層を含めて73層(第1層とスキン層が直接接する部分は、層区分なしに1層として取り扱う)の未延伸多層シートを得た。このように得られた未延伸多層シートを摂氏65度で縦方向3.0倍、摂氏85度で横方向4.0倍に延伸した後、熱固定温度摂氏120度及び弛緩率1%を付与して、20μmの二軸延伸多層フィルムを製造した。
【0163】
4.物性の評価
フィルムの騒音度の評価
ポリカーボネートで作製された650(W)×450(D)×500(H)mmのボックス内で、A4サイズ(210mm×297mm)に裁断されたフィルムを準備し、Cirrus Research PLC社のデジタル騒音分析器(モデル名:CR-162C)を配置した。騒音分析器は、準備されたフィルムから約10cm離れた所に位置し、フィルムの両端をジグで把持して180度回転、800RPM、30秒以上騒音を発し、騒音を測定した。データの分析は、NoiseTools Softwareプログラムの等価騒音度及び周波数別の騒音度モードを適用した。プログラムを通じて、特定の周波数での30秒間の騒音度、等価騒音度などを評価し、その結果を下記の表に示した。
【0164】
機械的物性の評価
ASTM D882に準拠してフィルム試験片を作製した後、長さ150mm、幅15mmに切断し、その後、チャック間距離が50mmとなるように装着し、前記試験片を引張試験機、インストロン5566Aを用いて引張速度200mm/minで実験した後、測定開始点から伸び率3%到達時点までの直線の傾きの値をヤング率(Young's modulus、kgf/mm2)として測定した。
【0165】
引張強度は、引張時の最大強度(kgf/mm2)、伸び率は、サンプルの破断時点で初期に対する伸びた比率(%)であって、同じ装備を活用して測定した。
【0166】
ヘイズ
日本精密光学社(Nihon Seimitsu Kogaku)のヘイズメーター(モデル名:SEP-H)を用いて、ASTM D1003標準に準拠して測定した。
【0167】
各測定結果は、下記の表1及び表2にまとめた。
【0168】
【0169】
【0170】
比較例1は、PLAを単独で使用したフィルムであって、80dB以上の等価騒音度を有し、多少うるさい特徴があるという点を再確認した。ヤング率の値も比較的大きく、フィルムの柔軟性が多少低下した。
【0171】
比較例2は、比較例1とは異なり、PLAにPBATをブレンドした樹脂を使用したフィルムであって、柔軟性は向上したが、等価騒音度は依然として80dBを維持しているため、大きな騒音が発生し、ベイズ値が大きく上昇した。これは、2つの樹脂の相溶性が劣るためであると判断される。
【0172】
比較例3は、PLAにPHAをブレンドした樹脂を使用したフィルムであって、ヤング率は300kgf/mm2以上と多少柔軟性が不十分であり、ベイズ値も大きい方であると評価された。
【0173】
比較例4は、比較例3とは異なり、PLAにPHAをブレンドせず、PLAとPBATの交互積層構造を用いたフィルムであって、他の比較例に比べて低いヘイズ値を有するので、透光性の面で利点がある。但し、依然として高い等価騒音度及びヤング率を有している。
【0174】
実施例の場合、フィルムの等価騒音度が低くなる傾向を示し、ベイズ値が低いことが確認された。
【0175】
実施例1~実施例5では、それぞれのポリエステルフィルムが等価騒音度が80dB以下であり、ヤング率が300kgf/mm2以下であると同時に、ベイズは10%を超えないことが確認された。
【0176】
前記実施例及び比較例の樹脂はいずれも生分解性樹脂で製造され、生分解特性と共に、既存の生分解性樹脂フィルムの欠点であった騒音発生の程度を減少させ、包装材などとしての活用度を向上させた。
【0177】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0178】
100 ポリエステルフィルム
50 積層体
52 第1層
54 第2層
70 スキン層
10 バー
12 固定部
14 騒音分析器
d 距離
【外国語明細書】