(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004106
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】雌ネジの形成方法
(51)【国際特許分類】
B23G 1/16 20060101AFI20240109BHJP
B23G 1/34 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B23G1/16 E
B23G1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103584
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 篤始
(57)【要約】
【課題】不完全ネジ部におけるバリの発生を抑制することができる雌ネジの形成方法を提供する。
【解決手段】雌ネジの形成方法は、軸線に沿って延びるとともに、軸線方向に対象部材を貫通する貫通孔の内周面に、対象部材の厚さにおける軸線方向一方側の中途位置まで延びる完全ネジ部と完全ネジ部の先端に接続された不完全ネジ部とを有する雌ネジを形成する雌ネジの形成方法であって、主軸回りに回転し軸線回りに公転する回転工具を内周面に沿って移動させることで第一の取り代を切削して中間ネジ部を形成するステップと、中間ネジ部に沿って回転工具を移動させることで第二の取り代を切削して最終ネジ部を形成するステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びるとともに、当該軸線方向に対象部材を貫通する貫通孔の内周面に、前記対象部材の厚さにおける前記軸線方向一方側の中途位置まで延びる完全ネジ部と該完全ネジ部の先端に接続された不完全ネジ部とを有する雌ネジを形成する雌ネジの形成方法であって、
主軸回りに回転するとともに前記軸線回りに公転する回転工具を前記内周面に沿って前記軸線方向一方側から他方側に向かって移動させることで第一の取り代を切削して中間ネジ部を形成するステップと、
前記中間ネジ部に沿って前記回転工具を前記軸線方向一方側から他方側に向かって移動させることで第二の取り代を切削して最終ネジ部を形成するステップと、
を含む雌ネジの形成方法。
【請求項2】
前記第一の取り代、及び前記第二の取り代は、前記軸線に対する径方向の切削量であって、前記第二の取り代は、前記第一の取り代よりも小さい請求項1に記載の雌ネジの形成方法。
【請求項3】
前記軸線に対する径方向における前記第一の取り代と前記第二の取り代の合計を100とした場合に、前記第一の取り代が占める割合は50以上90未満であり、前記第二の取り代が占める割合は10以上50未満である請求項1又は2に記載の雌ネジの形成方法。
【請求項4】
前記回転工具は、プラネットタップである請求項1に記載の雌ネジの形成方法。
【請求項5】
前記最終ネジ部を形成するステップの後に、ネジ形状に加えて、前記不完全ネジ部にバリが生じているか否かを確認するステップをさらに含む請求項1に記載の雌ネジの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌ネジの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象部材に貫通孔を設け、当該貫通孔の内周面に雌ネジを形成するための工具や方法として、例えば下記特許文献1に記載された技術が知られている。この工具を用いた方法では、貫通孔の内周面に沿って工具を回転させながら、当該貫通孔の出口側端部から入口側端部にかけて一回のみ移動させることで、雌ネジが形成できるとされている。
【0003】
ここで、上記のように貫通孔の内周面の長さの全域にかけて雌ネジを形成する場合には、いわゆる不完全ネジ部が生じない。このため、当該不完全ネジ部におけるバリの発生も問題とならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、貫通孔の中途位置にかけてのみ雌ネジを形成する場合、つまり止まりネジを形成する場合には、上記の方法ではネジ部の先端部分に不完全ネジ部が形成される。この不完全ネジ部では、被削材から受ける切削抵抗によって、工具の先端が基端を基準として弾性変形してしまうため、十分な切削がなされない。その結果、僅かに残った取り代を仕上げるゼロカットと呼ばれる最終ステップによって切削する場合には、不完全ネジ部にバリを生じる虞がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、不完全ネジ部におけるバリの発生を抑制することができる雌ネジの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る雌ネジの形成方法は、軸線に沿って延びるとともに、当該軸線方向に対象部材を貫通する貫通孔の内周面に、前記対象部材の厚さにおける前記軸線方向一方側の中途位置まで延びる完全ネジ部と該完全ネジ部の先端に接続された不完全ネジ部とを有する雌ネジを形成する雌ネジの形成方法であって、主軸回りに回転するとともに前記軸線回りに公転する回転工具を前記内周面に沿って前記軸線方向一方側から他方側に向かって移動させることで第一の取り代を切削して中間ネジ部を形成するステップと、前記中間ネジ部に沿って前記回転工具を前記軸線方向一方側から他方側に向かって移動させることで第二の取り代を切削して最終ネジ部を形成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、不完全ネジ部におけるバリの発生を抑制することができる雌ネジの形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る雌ネジの形成方法の概略を示す説明図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る雌ネジの形成方法の各ステップを示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施形態に係る対象部材の拡大断面図である。
【
図4】本開示の実施例に係る雌ネジの形成方法の試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る雌ネジ20の形成方法について、
図1から
図3を参照して説明する。
【0011】
(対象部材の構成)
雌ネジ20の形成方法の説明に先立って、雌ネジ20が形成される対象部材1の構成について説明する。対象部材1は、厚さ数mm~10数mmの鍛造材である。
図1に示すように、この対象部材1には、当該対象部材1を厚さ方向に貫通する貫通孔10が形成されている。貫通孔10は、雌ネジ20を形成する際の下穴としての役割を担っている。貫通孔10は、厚さ方向に延びる軸線Oを中心とする円筒状の内周面を有している。つまり、貫通孔10は軸線O方向から見て円形をなしている。対象部材1は、一例として、インコネル(登録商標)やWASPAROY(登録商標)と呼ばれる超耐熱合金である。
【0012】
貫通孔10の内周面には、雌ネジ20(ネジ溝)が形成されている。雌ネジ20のピッチや有効径は設計や仕様に応じて適宜決定されてよい。この雌ネジ20は、貫通孔10の軸線O方向一方側における中途位置から軸線O方向他方側の入口11まで延びている。つまり、入口11から軸線O方向における一定の寸法だけ完全ネジ部21が形成され、完全ネジ部21の先端(軸線O方向一方側)に不完全ネジ部22が形成されている。完全ネジ部21とは、ネジの山や谷が所定の寸法通りとされている領域を指し、不完全ネジ部22とは、後述する回転工具2の不到達によってネジの山や谷の形成が不完全な領域を指す。不完全ネジ部22は雌ネジ20としての機能を有しない。
【0013】
(回転工具の構成)
回転工具2は、一例としてプラネットタップである。回転工具2は、自身の主軸Aに沿って延びる棒状をなしている。回転工具2は、主軸Aを上記の軸線Oに沿わせた姿勢で貫通孔10の内部に挿入される。回転工具2は、主軸A回りに回転可能であるとともに、軸線O回りに公転可能である。つまり、回転工具2は、加工時に、自転しながら公転する。このような工具を貫通孔10の軸線O方向一方側の中途位置から軸線O方向他方側の入口11に向けて移動させつつ、貫通孔10の内周面に切削加工を施すことで、貫通孔10の内周面に雌ネジ20が形成される。
【0014】
(雌ネジの形成方法)
次いで、本実施形態に係る雌ネジ20の形成方法の各ステップについて、
図2と
図3を参照して説明する。
図2に示すように、この方法は、貫通孔10を形成するステップS1と、第一の取り代31を切削するステップS2と、第二の取り代32を切削するステップS3と、バリの有無を確認するステップS4と、を含む。
【0015】
ステップS1では、対象部材1に上述の貫通孔10が形成される。貫通孔10を形成するに当たっては、ドリル等の切削工具が適宜用いられる。また、貫通孔10を形成した後に、当該貫通孔10に対して面取り工具による加工をさらに施すことで貫通孔の入口11の円周端面を面取りしてもよい。その後、リーマで内径を調節してもよい。ステップS2では、貫通孔10の内周面に沿って上述の回転工具2を軸線O方向一方側から他方側に向かって移動させることで、当該内周面に1回目の切削加工を施す。この時の取り代(削りしろ)を第一の取り代31と呼ぶ。第一の取り代31は、
図2に示すように、軸線Oに対する径方向における切削量に基づく値である。このステップS2を経ることで、貫通孔10の内周面に中間ネジ部23が形成される。中間ネジ部23とは、最終的な雌ネジ20が形成される前の段階にある加工途中のネジ部を指す。
【0016】
続くステップS3では、上記の中間ネジ部23に対して、回転工具2を軸線O方向一方側から他方側に向かって移動させることで、当該中間ネジ部23に対して2回目の切削加工を施す。この時の取り代(削りしろ)を第二の取り代32と呼ぶ。第二の取り代32は、第一の取り代31と同様に軸線Oに対する径方向における切削量に基づく値である。このステップS3を経ることで、貫通孔10の内周面に最終ネジ部24が形成される。最終ネジ部24とは、予め定められた設計値通りに形成されたネジ部を指し、雌ネジ20と同義である。最後のステップS4では、所望のネジ形状が得られているかどうかに加えて、不完全ネジ部22にバリ等の形成不良が生じていないかどうかが検査される。このステップS4では、例えば栓ゲージやネジゲージが適宜用いられる。栓ゲージは雌ネジの内径を検査するために用いられる。ネジゲージは雌ネジ20の谷径を検査するために用いられる。なお、栓ゲージが問題なく完全ネジ部21と不完全ネジ部22を通過することができ、ネジゲージが完全ネジ部21を通過することができれば、雌ネジ20が正常に形成されたと判断される。以上により、本実施形態に係る雌ネジ20の形成方法の全ステップが完了する。
【0017】
ここで、
図3に示すように、上述の第二の取り代32は、第一の取り代31よりも小さく設定されている。つまり、1回目の切削では、貫通孔10の内周面を大きく切削加工し、2回目の切削では、中間ネジ部23に対してさらに精密な小さい削りしろのもとで切削加工を行う。第一の取り代31と第二の取り代32の合計を100とした場合、第一の取り代31が占める割合は50以上90未満であり、前記第二の取り代32が占める割合は10以上50未満である。最も望ましくは、第一の取り代31の比率は70であり、第二の取り代32の比率は30である。
【0018】
(作用効果)
ここで、貫通孔10の中途位置にかけてのみ雌ネジ20を形成する場合、つまり止まりネジを形成する場合には、上述のように雌ネジ20の先端部分に不完全ネジ部22が形成される。この不完全ネジ部22では、棒状をなす回転工具2の先端が基端を基準として振れるように弾性変形してしまうことが知られている。このため、当該弾性変形による変位量の分だけ切削量が減少し、十分精密な切削加工がなされない。その結果、不完全ネジ部22にバリを生じる虞があった。より具体的には、ネジ形状を仕上げる目的で最終工程として設定されるゼロカットを実施した場合には、先行する工程で残留した不完全ネジ部の僅かな材料が切削されず塑性変形で押し出されることによりバリとして残留する。バリが生じた場合、当該バリを除去する工程が別途必要となる。その結果、バリが生じた場合には栓ゲージが貫通せずに不適合となり、最終製品の歩留まりが低下してしまう。この傾向は、雌ネジ20を形成する前の下孔としての貫通孔10の径に対して、より大きな削りしろを伴う切削を行う場合に特に顕著となる。そこで、本実施形態では上述の方法を採っている。
【0019】
上記方法によれば、まず、第一の取り代31を切削するステップS2を経ることで、対象部材1が粗削りされて中間ネジ部23が形成される。この段階では、中間ネジ部23の寸法精度に対する許容度が大きくてもよい。その後、第二の取り代32を切削するステップS3を実行することで、所望の寸法精度に合わせた精密な切削加工を施すことができる。このように雌ネジ20を形成するに当たって2回に分けて切削を行うことで、1回ごとの切削で回転工具2に加わる負荷が分散・低減される。これにより、回転工具2が弾性変形しにくくなり、1回目・2回目それぞれの切削加工の加工精度を維持することが可能となる。したがって、当該回転工具2の弾性変形による雌ネジ20の形成不良を防ぐことが可能となる。その結果、バリのない滑らかな雌ネジ20を安定的に得ることができる。これにより、最終製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0020】
さらに、上記方法によれば、第二の取り代32が第一の取り代31より小さいことで、2回目の切削時に回転工具2に加わる負荷をより一層低減することができる。これにより、回転工具2の芯ずれや弾性変形が抑制され、より高い精度のもとで雌ネジ20を形成することができる。特に、最終製品の寸法精度への影響がより大きい2回目の切削加工における取り代(第二の取り代32)を第一の取り代31よりも小さくすることで、当該2回目の切削加工の加工精度を確保することが可能となる。これにより、バリのない滑らかな雌ネジ20をさらに安定的に得ることができる。
【0021】
また、上記方法によれば、回転工具2としてプラネットタップを用いることで、より高い精度のもとで迅速に雌ネジ20を形成することができる。これにより、加工コストの削減と加工に要する時間の短縮化とを両立することができる。また、手作業でタップを用いて雌ネジ20を形成する場合に比べて、加工精度を大幅に向上させることが可能となる。
【0022】
加えて、上記方法によれば、最終ネジ部24を形成するステップS3の後に、ネジ形状、及びバリの有無を確認するステップS4を経ることで、最終製品の歩留まりをさらに向上させることが可能となる。バリの有無は、栓ゲージを用いた検査によって付随的に確認される。これにより、目視のみでは判別できない微細なバリやその他の不良も発見することができる。したがって、最終製品の寸法精度や加工精度が向上し、歩留まりをより一層向上させることが可能となる。
【0023】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、回転工具2としてプラネットタップを用いる例について説明したが、回転工具2の態様はこれに限定されず、雌ネジ20を形成することが可能な工具であればいかなるものをも上記の方法に適用することが可能である。
【0024】
また、上記実施形態では、2回の切削加工を施す例についてのみ説明した。しかしながら、貫通孔10の径や対象部材1の材質等の条件によっては、3回以上に分けて切削加工を施すことも可能である。この場合であっても、最後の切削加工の取り代は、1回目・2回目・・・の切削加工の取り代よりも小さいことが望ましい。また、バリの原因となるゼロカットも行わないことが望ましい。これにより、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【実施例0025】
次に、
図4を参照して、上述の雌ネジ20の形成方法の実施例について説明する。発明者らは、上述のWASPAROY(登録商標)で形成されたテストピースとしての実製品に、以下の加工条件のもとで回転工具2(プラネットタップ)を用いて雌ネジ20を形成し、その後、栓ゲージとネジゲージによる不良の発生数を試験した。
(加工条件)
回転工具2の主軸A回りの回転数:1400rpm
回転工具2の軸線O回りの公転における周方向の送り速度:40mm/min
【0026】
図4に示すように、第一の取り代31と、第二の取り代32の比率を変えて上記の加工条件の下で複数回にわたって試験が行われた。同図から読み取れるように、第一の取り代31を100とし、第二の取り代32を0とした場合、栓ゲージ検査での不良は50回の試験のうち40回で確認された。ネジゲージ検査での不良は50回のうち1回であった。
【0027】
また、第一の取り代31を50とし、第二の取り代32を50とした場合、栓ゲージ検査での不良は74回の試験のうち4回で確認された。ネジゲージ検査での不良は74回のうち12回であった。
【0028】
さらに、第一の取り代31を70とし、第二の取り代32を30とした場合、栓ゲージ検査での不良は74回の試験のうち5回で確認された。ネジゲージ検査での不良は74回のうち3回であった。
【0029】
最後に、第一の取り代31を90とし、第二の取り代32を10とした場合、栓ゲージ検査での不良は74回の試験のうち7回で確認された。ネジゲージ検査での不良は74回のうち9回であった。
【0030】
以上の試験結果から、上述の実施形態で示したように、第二の取り代32は、第一の取り代31よりも小さい方が、不良発生数が小さくなることが実際に確認された。より具体的には、第一の取り代31が占める割合は50以上90未満であり、前記第二の取り代32が占める割合は10以上50未満であることが望ましい。最も望ましくは、第一の取り代31の比率は70であり、第二の取り代32の比率は30である。
【0031】
<付記>
各実施形態に記載の雌ネジ20の形成方法は、例えば以下のように把握される。
【0032】
(1)第1の態様に係る雌ネジ20の形成方法は、軸線Oに沿って延びるとともに、当該軸線O方向に対象部材1を貫通する貫通孔10の内周面に、前記対象部材1の厚さにおける前記軸線O方向一方側の中途位置まで延びる完全ネジ部21と該完全ネジ部21の先端に接続された不完全ネジ部22とを有する雌ネジ20を形成する雌ネジ20の形成方法であって、主軸A回りに回転するとともに前記軸線O回りに公転する回転工具2を前記内周面に沿って前記軸線O方向一方側から他方側に向かって移動させることで第一の取り代31を切削して中間ネジ部23を形成するステップと、前記中間ネジ部23に沿って前記回転工具2を前記軸線O方向一方側から他方側に向かって移動させることで第二の取り代32を切削して最終ネジ部24を形成するステップと、を含む。
【0033】
上記方法によれば、まず、第一の取り代31を切削するステップを経ることで、対象部材1が粗削りされて中間ネジ部23が形成される。その後、第二の取り代32を切削するステップを実行することで、所望の寸法精度に合わせた精密な切削加工を施すことができる。このように雌ネジ20を形成するに当たって2回に分けて切削を行うことで、回転工具2に加わる負荷が低減され、当該回転工具2の弾性変形による雌ネジ20の形成不良を防ぐことが可能となる。
【0034】
(2)第2の態様に係る雌ネジ20の形成方法は、(1)の雌ネジ20の形成方法であって、前記第一の取り代31、及び前記第二の取り代32は、前記軸線Oに対する径方向の切削量であって、前記第二の取り代32は、前記第一の取り代31よりも小さい。
【0035】
上記方法によれば、第二の取り代32が第一の取り代31より小さいことで、2回目の切削時に回転工具2に加わる負荷をより一層低減することができる。これにより、回転工具2の芯ずれや弾性変形が抑制され、より高い精度のもとで雌ネジ20を形成することができる。ただし、第二の取り代32を0とするゼロカットは不完全ネジ部22におけるバリの原因となり得るため、実施しないことが望ましい。
【0036】
(3)第3の態様に係る雌ネジ20の形成方法は、(1)又は(2)の雌ネジ20の形成方法であって、前記軸線Oに対する径方向における前記第一の取り代31と前記第二の取り代32の合計を100とした場合に、前記第一の取り代31が占める割合は50以上90未満であり、前記第二の取り代32が占める割合は10以上50未満である。
【0037】
上記方法によれば、第二の取り代32が第一の取り代31より小さいことで、2回目の切削時に回転工具2に加わる負荷をより一層低減することができる。これにより、回転工具2の芯ずれや弾性変形が抑制され、より高い精度のもとで雌ネジ20を形成することができる。
【0038】
(4)第4の態様に係る雌ネジ20の形成方法は、(1)から(3)のいずれか一態様に係る雌ネジ20の形成方法であって、前記回転工具2は、プラネットタップである。
【0039】
上記方法によれば、回転工具2としてプラネットタップを用いることで、より高い精度で迅速に雌ネジ20を形成することができる。
【0040】
(5)第5の態様に係る雌ネジ20の形成方法は、(1)から(4)のいずれか一態様に係る雌ネジ20の形成方法であって、前記最終ネジ部24を形成するステップの後に、ネジ形状に加えて、前記不完全ネジ部22にバリが生じているか否かを確認するステップをさらに含む。
【0041】
上記方法によれば、最終ネジ部24を形成するステップの後にバリの有無を確認するステップを経ることで、最終製品としての歩留まりをさらに向上させることが可能となる。