(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041082
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】溶接部検査装置及び溶接部検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240319BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20240319BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01N21/88 J
B23K31/00 K
H02K15/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141893
(22)【出願日】2022-09-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】福井 諭
(72)【発明者】
【氏名】西山 智勝
【テーマコード(参考)】
2G051
5H615
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB13
2G051BB01
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
2G051EA11
2G051EB01
2G051ED21
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615PP01
5H615SS16
5H615SS57
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶接部の溶接状態に対する検査の作業効率及び判定精度を向上させる。
【解決手段】溶接部検査装置及び溶接部検査方法では、断面の外形が円形状の光を溶接部に投影する。次に、溶接部における光の反射領域を含む溶接部の画像を撮影する。次に、撮影した画像について、反射領域の外周に接する外接矩形を作成する。次に、作成した外接矩形に内接する内接円を作成する。次に、作成した内接円の円形度を算出する。次に、算出した円形度が二次判定閾値以上であるときに、溶接部の溶接状態が良好であると判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの先端同士の溶接部の良否を検査するための溶接部検査装置であって、
断面の外形が円形状の光を前記溶接部に投影する照明部と、
前記溶接部における前記光の反射領域を含む前記溶接部の画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した前記画像について、前記反射領域の外周に接する外接矩形を作成する外接矩形作成部と、
前記外接矩形作成部が作成した前記外接矩形に内接する内接円を作成する内接円作成部と、
前記内接円作成部が作成した前記内接円の円形度を算出する第1円形度算出部と、
前記第1円形度算出部が算出した前記円形度が第1閾値以上であるときに、前記溶接部の溶接状態が正常であると判定する第1判定部と、
を備える、溶接部検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の溶接部検査装置において、
前記撮影部が撮影した前記画像に対して、少なくとも二値化処理を行う画像処理部をさらに備え、
前記外接矩形作成部は、前記二値化処理が行われた前記画像について、前記反射領域の外周に接する前記外接矩形を作成する、溶接部検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の溶接部検査装置において、
前記撮影部が撮影した前記画像について、前記反射領域の外周の円形度を算出する第2円形度算出部と、
前記撮影部が撮影した前記画像について、前記溶接部の大きさを取得する取得部と、
前記反射領域の外周の円形度と前記溶接部の大きさとの積が第2閾値以上であるときに、前記溶接部の溶接状態が正常であると判定する第2判定部と、
をさらに備え、
前記溶接部の溶接状態が異常であると前記第2判定部が判定したときに、前記外接矩形作成部は、前記撮影部が撮影した前記画像について、前記反射領域の外周に接する前記外接矩形を作成する、溶接部検査装置。
【請求項4】
請求項1記載の溶接部検査装置において、
前記照明部は、円環状の前記光を前記溶接部に投影する、溶接部検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の溶接部検査装置において、
前記撮影部は、前記光の中心部から、前記反射領域を含む前記溶接部の画像を撮影する、溶接部検査装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の溶接部検査装置において、
回転電機のステータに複数のスロットが形成され、
複数のスロットの各々に前記コイルが装着され、
前記溶接部は、一方のスロットから前記ステータの軸方向に突出する前記コイルの先端と、他方のスロットから前記軸方向に突出する前記コイルの先端とを溶接によって接合するときに形成される溶接玉であり、
前記照明部は、前記軸方向に沿って、前記溶接玉に前記光を投影する、溶接部検査装置。
【請求項7】
コイルの先端同士の溶接部の良否を検査するための溶接部検査方法であって、
断面の外形が円形状の光を前記溶接部に投影するステップと、
前記溶接部における前記光の反射領域を含む前記溶接部の画像を撮影するステップと、
撮影した前記画像について、前記反射領域の外周に接する外接矩形を作成するステップと、
作成した前記外接矩形に内接する内接円を作成するステップと、
作成した前記内接円の円形度を算出するステップと、
算出した前記円形度が第1閾値以上であるときに、前記溶接部の溶接状態が正常であると判定するステップと、
を有する、溶接部検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部検査装置及び溶接部検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルの先端同士の溶接部の画像を用いて、溶接部の良否を判定する画像検査装置が開示されている。具体的には、回転電機のステータには、複数のスロットが形成されている。複数のスロットの各々には、コイルが装着されている。複数のコイルの各々について、コイルの先端は、スロットからステータの軸方向に突出している。一方のスロットから突出するコイルの先端と、他方のスロットから突出するコイルの先端とを溶接によって接合することで、溶接部が形成される。画像検査装置は、溶接部の画像を用いて、溶接部の欠陥の有無を検知することにより、溶接部の良否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、溶接部の全体画像を用いて、溶接部の欠陥の有無を判定する。そのため、欠陥の有無の判断に工数がかかる。
【0005】
また、溶接部の表面にスラグ等の塵埃が付着している場合、溶接部の画像に塵埃が写り込むことで、溶接部の形状が正常ではないように見えることがある。この結果、溶接部の溶接状態が正常であるにも関わらず、該溶接状態が異常であると誤判定される可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、コイルの先端同士の溶接部の良否を検査するための溶接部検査装置であって、前記溶接部検査装置は、断面の外形が円形状の光を前記溶接部に投影する照明部と、前記溶接部における前記光の反射領域を含む前記溶接部の画像を撮影する撮影部と、前記撮影部が撮影した前記画像について、前記反射領域の外周に接する外接矩形を作成する外接矩形作成部と、前記外接矩形作成部が作成した前記外接矩形に内接する内接円を作成する内接円作成部と、前記内接円作成部が作成した前記内接円の円形度を算出する第1円形度算出部と、前記第1円形度算出部が算出した前記円形度が第1閾値以上であるときに、前記溶接部の溶接状態が正常であると判定する第1判定部と、を備える。
【0008】
本発明の第2の態様は、コイルの先端同士の溶接部の良否を検査するための溶接部検査方法であって、前記溶接部検査方法は、断面の外形が円形状の光を前記溶接部に投影するステップと、前記溶接部における前記光の反射領域を含む前記溶接部の画像を撮影するステップと、撮影した前記画像について、前記反射領域の外周に接する外接矩形を作成するステップと、作成した前記外接矩形に内接する内接円を作成するステップと、作成した前記内接円の円形度を算出するステップと、算出した前記円形度が第1閾値以上であるときに、前記溶接部の溶接状態が正常と判定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、溶接部の溶接状態に対する検査の作業効率及び判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る溶接部検査装置の構成図である。
【
図4】
図4は、溶接部検査装置の動作(溶接部検査方法)を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、溶接部検査装置の動作(溶接部検査方法)を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、溶接部が球状であるときの溶接部の画像を示す図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、反射領域の一部が欠けているときの溶接部の画像を示す図である。
【
図8】
図8は、溶接部が楕円体であるときの溶接部の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る溶接部検査装置10の構成図である。
図1では、紙面の上方を上方向、紙面の下方を下方向として、溶接部検査装置10の構成を説明する。
【0012】
溶接部検査装置10は、コイル12の先端14(
図2参照)同士の溶接部16の溶接状態の良否を検査する。溶接部検査装置10は、ステージ18と、撮影部20と、照明部22と、処理装置24と、出力装置26とを備える。
【0013】
ステージ18の上面には、回転電機(不図示)のステータ28が載置される。ステータ28は、円環状に構成されている。ステータ28は、該ステータ28の軸方向の一端部が上向きとなり、且つ、ステータ28の軸方向の他端部が下向きとなるように、ステージ18の上面に載置される。
【0014】
ステータ28の内側には、複数のスロット(不図示)が所定角度間隔で形成されている。複数のスロットの各々は、ステータ28の内側で、ステータ28の軸方向(
図1の上下方向)に延びている。複数のスロットの各々には、コイル12が装着されている。複数のコイル12の各々について、コイル12の先端14は、スロットからステータ28の軸方向に突出している。
【0015】
図2に示すように、2つのコイル12について、一方のスロットから軸方向に突出する一方のコイル12の先端14と、他方のスロットから軸方向に突出する他方のコイル12の先端14とは、溶接によって接合される。2つのコイル12の先端14同士が溶接によって接合されることで溶接部16が形成される。溶接部16は、2つのコイル12の先端14を溶接することで形成される溶接玉である。ステータ28は、複数のコイル12を備えるので、ステータ28には、複数の溶接部16が形成される。
【0016】
図1に示すように、照明部22は、半球状の照明装置である。照明部22は、中央部に開口30が形成された円環状の照明装置である。照明部22は、ステージ18の上方に配される。照明部22は、ステータ28と同軸であることが好ましい。照明部22は、ステータ28の一端部と向かい合っている状態で、ステータ28の軸方向に沿って、断面の外形が円形状の光32をステータ28の一端部に投影する。照明部22の中央部に開口30が形成されているので、照明部22は、ステータ28の軸方向に沿って、円環状の光32をステータ28の一端部に投影する。複数の溶接部16(
図2参照)の各々には、照明部22から円環状の光32が投影される。
【0017】
複数の溶接部16の各々は、円環状の光32が投影されたときに、投影された光32を反射する。複数の溶接部16の各々について、溶接部16のうち、照明部22と向かい合う上部34に投影された光32は、反射光36として上方に反射される。すなわち、複数の溶接部16の各々について、溶接部16の上部34には、投影された光32を上方に反射する反射領域38が形成される。なお、上部34は、溶接部16のうち、ステータ28から軸方向に離れた部分である。また、円環状の光32が投影されるので、反射領域38の内側には、開口30に対応する非反射領域が形成される(
図2及び
図3A参照)。
【0018】
撮影部20は、照明部22の上方に配されている。撮影部20は、照明部22及びステータ28と同軸であることが好ましい。撮影部20は、照明部22の開口30を通して、複数の溶接部16を上方から撮影するカメラである。撮影部20は、上部34を含む複数の溶接部16の画像を撮影する。撮影部20には、照明部22の開口30を介して、反射光36が入射される。従って、撮影部20は、反射領域38を含む複数の溶接部16の画像を撮影する。
【0019】
図1に示すように、処理装置24は、撮影部20が撮影した複数の溶接部16の画像を用いて、複数の溶接部16の溶接状態の良否を検査するためのコンピュータである。処理装置24は、処理部40とメモリ42とを有する。
【0020】
処理部40は、コンピュータのプロセッサである。処理部40は、メモリ42に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、画像処理部44、外周円形度算出部46(第2円形度算出部)、外寸取得部48(取得部)、一次判定部50(第2判定部)、外接矩形作成部52、内接円作成部54、内接円円形度算出部56(第1円形度算出部)、二次判定部58(第1判定部)及び制御部60の機能を実現する。処理部40が実現する各部の詳細については、後述する。
【0021】
メモリ42には、上記のプログラムに加え、撮影部20が撮影した複数の溶接部16の画像が記憶される。また、メモリ42には、処理部40での処理結果等が記憶される。
【0022】
出力装置26は、ディスプレイ等の表示装置である。出力装置26は、複数の溶接部16の溶接状態の良否を含む処理装置24の処理結果等を外部に出力する。
【0023】
上記のように、溶接部検査装置10(
図1参照)は、複数の溶接部16(
図2参照)の溶接状態の良否を検査する。具体的には、溶接部検査装置10では、複数の溶接部16の各々について、理想的な形状を球状としている。溶接部検査装置10は、複数の溶接部16の各々について、球状であれば、溶接部16の溶接状態が良好(正常)と判定する。また、溶接部検査装置10は、複数の溶接部16の各々について、球以外の形状であれば、溶接部16の溶接状態が不良(異常)と判定する。具体的な判定手法については、後述する。
【0024】
図3A~
図3Cは、撮影部20(
図1参照)が撮影した複数の溶接部16の画像を示す。なお、
図3A~
図3Cでは、1枚の複数の溶接部16の画像について、一部の溶接部16の画像領域を抽出して図示している。
【0025】
図3Aは、溶接部16が球状である場合の該溶接部16の画像70を示す。溶接部16が球状である場合、画像70について、溶接部16の画像領域72は、円形状となる。画像領域72の中央部には、反射領域38の画像領域74が写り込んでいる。上記のように、溶接部16には、円環状の光32(
図1参照)が投影されるので、反射領域38の画像領域74は、円環状となる。つまり、溶接部16の溶接状態が良好である場合、画像領域72が円形状になると共に、画像領域74が円環状になる。
【0026】
図3Bは、溶接部16が球状であっても、溶接部16の上部34(
図2参照)にスラグ等の塵埃(不図示)が付着している場合の該溶接部16の画像80を示す。塵埃は、反射領域38の一部を覆うように、溶接部16の上部34に付着している。塵埃が付着している箇所では、投影した光32(
図1参照)の反射が妨げられる。この結果、画像80について、溶接部16の画像領域82は、円形状であるが、反射領域38の画像領域84は、円環の一部が欠けた形状となる。すなわち、画像領域84において、一部が欠けた部分は、塵埃が付着している画像領域である。
【0027】
図3Cは、溶接部16が球以外の形状である場合の該溶接部16の画像90を示す。詳しくは、溶接部16は、楕円体である。溶接部16が球状ではないため、溶接部16の溶接状態は、不良(異常)である。この場合、溶接部16の上部34(
図2参照)に円環状の光32(
図1参照)を投影すると、楕円状の反射領域38が形成される。そのため、画像90について、溶接部16の画像領域92と、反射領域38の画像領域94とは、楕円状となる。つまり、溶接部16の溶接状態が不良である場合、画像領域92が円以外の形状(楕円状)になると共に、画像領域94が円環以外の形状(楕円状)になる。
【0028】
次に、本実施形態に係る溶接部検査装置10の動作(溶接部検査方法)について、
図4~
図8を参照しながら説明する。この動作説明では、必要に応じて、
図1~
図3Cも参照する。
【0029】
図4のステップS1において、ステージ18(
図1参照)の上面にステータ28が載置される。次に、照明部22及び撮影部20がステータ28の上方に配される。この場合、ステータ28に対して、照明部22及び撮影部20が
図1に示す順に配される。
【0030】
ステップS2において、照明部22は、制御部60からの制御に従って、ステータ28の一端部に円環状の光32を投影する。これにより、溶接部16(
図2参照)に円環状の光32が投影される。溶接部16の上部34に投影された光32は、反射光36として上方に反射される。すなわち、溶接部16の上部34には、投影された光32を反射する反射領域38が形成される。
【0031】
ステップS3において、撮影部20は、制御部60からの制御に従って、照明部22の開口30を介して、反射領域38を含む溶接部16の画像を撮影する。上記のように、ステータ28の一端部には、複数の溶接部16が形成されている。そのため、撮影部20は、1回の撮影で、ステータ28の一端部に形成された複数の溶接部16の画像を一挙に撮影する。撮影部20は、撮影した複数の溶接部16の画像を処理装置24に出力する。処理装置24は、入力された複数の溶接部16の画像をメモリ42に保存する。
【0032】
なお、撮影部20は、複数の溶接部16の画像の撮影に先立ち、複数の溶接部16に対するピント調整と、視写界深度の調整とを行う。撮影部20は、各溶接部16の中心部がピント位置となるように、ピント調整を行う。
【0033】
ステップS4において、画像処理部44(
図1参照)は、メモリ42から複数の溶接部16の画像を読み出し、読み出した複数の溶接部16の画像に対して、所定の画像処理を行う。具体的には、画像処理部44は、複数の溶接部16の画像に対して、二値化処理を行う。
【0034】
この場合、画像処理部44は、例えば、複数の溶接部16の各々について、二値化処理を行えばよい。以下の説明では、1つの溶接部16について二値化処理を行い、二値化処理後の溶接部16の画像を用いて、該溶接部16の溶接状態の良否を検査する場合について説明する。
【0035】
図6は、画像70(
図3A参照)に対して二値化処理を行った画像100を示す。画像100には、画像領域72に対応する溶接部16の画像領域102と、画像領域74に対応する反射領域38の画像領域104とが写り込んでいる。
【0036】
図7A及び
図7Bは、画像80(
図3B参照)に対して二値化処理を行った画像110を示す。画像110には、画像領域82に対応する溶接部16の画像領域112と、画像領域84に対応する反射領域38の画像領域114とが写り込んでいる。
【0037】
図8は、画像90(
図3C参照)に対して二値化処理を行った画像120を示す。画像120には、画像領域92に対応する溶接部16の画像領域122と、画像領域94に対応する反射領域38の画像領域124とが写り込んでいる。
【0038】
二値化処理後の画像では、反射領域38の画像領域の外周が明確となる。これにより、該画像領域の外周のノイズが除去される。以下の説明では、反射領域38の画像領域の外周を、反射領域38の外周とも呼称する。また、画像処理部44は、二値化処理後の画像に対して、膨張処理又は収縮処理を行ってもよい。
【0039】
図4のステップS5において、外周円形度算出部46(
図1参照)は、二値化処理後の溶接部16の画像を用いて、反射領域38の外周の円形度を算出する。反射領域38の外周の円形度は、下記の(1)式で表される。なお、(1)式において、「反射領域の面積」とは、溶接部16の画像における反射領域38の画像領域の面積をいう。また、「反射領域の外周の全長」とは、溶接部16の画像における反射領域38の画像領域の外周の長さをいう。
(反射領域の外周の円形度)=4×π×(反射領域の面積)
/(反射領域の外周の全長)
2 (1)
【0040】
反射領域38の外周の円形度は、0~1の範囲内の実数である。円形度が1である場合、反射領域38の外周は真円となる。すなわち、円形度が1に近づく程、反射領域38の外周の全長が短くなり、且つ、反射領域38の面積が大きくなる。具体的には、
図6に示すように、反射領域38の画像領域104が円環状である場合、反射領域38の外周の円形度は1となる。
【0041】
また、円形度が0に近づくほど、反射領域38の外周が真円とは異なる形状となる。すなわち、円形度が0に近づくほど、反射領域38の外周の全長が長くなると共に、反射領域38の面積が小さくなる。従って、反射領域38は、複雑な形状となる。具体的には、
図7A及び
図7Bのように、反射領域38の画像領域114の一部が欠けている場合、画像領域114の面積が小さくなる。また、画像領域114の内側が外周の一部となるため、反射領域38の外周の全長が長くなる。この結果、反射領域38の外周の円形度は0に近くなる。また、
図8のように、反射領域38の画像領域124が楕円状である場合、反射領域38の外周の円形度は0に近くなる。
【0042】
図4のステップS6において、外寸取得部48(
図1参照)は、二値化処理後の溶接部16の画像を用いて、溶接部16の大きさL(
図2参照)を取得する。具体的には、
図6に示すように、外寸取得部48は、二値化処理後の溶接部16の画像100について、溶接部16の画像領域102の両端部に矩形状の検出領域130を設定する。次に、外寸取得部48は、2つの検出領域130の各々について、左右方向に延びる直線132を設定する。次に、外寸取得部48は、検出領域130内で直線132を上下方向に移動させることで、画像領域102の端部(エッジ)を検出する。次に、外寸取得部48は、2つの直線132の間隔Ltを算出する。次に、外寸取得部48は、算出した間隔Ltを、実際の溶接部16の両端部の間隔に換算することで、溶接部16の大きさLを取得する。なお、外寸取得部48は、
図7A~
図8に示す画像110、120を用いて、溶接部16の大きさLを取得することも可能である。
【0043】
図4のステップS7において、一次判定部50(
図1参照)は、反射領域38(
図2参照)の外周の円形度と溶接部16の大きさLとの積を算出する。次に、一次判定部50は、算出した積が一次判定閾値(第2閾値)以上であるか否かを判定する。一次判定閾値は、反射領域38の外周の形状が真円に近いかどうかを判定するための閾値である。
【0044】
ステップS7において、算出した積が一次判定閾値以上である場合(ステップS7:YES)、一次判定部50は、ステップS8に進む。上記のように、溶接部16の理想的な形状は、球状である。溶接部16が球状である場合、円環状の光32を溶接部16に投影すると、反射領域38の外周は、真円に近い形状となる。これにより、反射領域38の外周の円形度は1に近くなり、算出した積は、一次判定閾値以上となる。従って、ステップS8において、一次判定部50は、算出した積が一次判定閾値以上であれば、溶接部16の溶接状態が良好であると判定する。
【0045】
ステップS7において、算出した積が一次判定閾値未満である場合(ステップS7:NO)、一次判定部50は、溶接部16の溶接状態が不良であると推定する。
【0046】
具体的には、溶接部16が球状であっても、溶接部16の上部34に塵埃が付着している場合、
図7A及び
図7Bに示すように、反射領域38の画像領域114の一部が欠けているので、反射領域38の外周の円形度は、0に近くなる。これにより、反射領域38の外周の円形度と溶接部16の大きさLとの積が一次判定閾値未満となる。従って、一次判定部50(
図1参照)は、溶接部16が球状(溶接部16の溶接状態が良好)であっても、算出した積が一次判定閾値未満であるため、溶接部16の溶接状態が不良であると推定する。
【0047】
溶接部16が楕円状である場合、
図8に示すように、反射領域38の画像領域124が楕円状となるため、反射領域38の外周の円形度は、0に近くなる。この場合も、反射領域38の外周の円形度と溶接部16の大きさLとの積が一次判定閾値未満となるので、一次判定部50(
図1参照)は、溶接部16の溶接状態が不良であると推定する。
【0048】
このように、一次判定部50での判定処理のみでは、
図7A及び
図7Bに示すように、溶接部16が球状であっても、塵埃の付着に起因して、溶接部16の溶接状態が不良と誤判定する可能性がある。
【0049】
そこで、本実施形態に係る溶接部検査装置10(
図1参照)では、上記の誤判定の発生を防止するため、一次判定部50が異常と推定した溶接部16の画像について、
図5に示す二次判定部58による判定処理を実行する。
【0050】
ステップS9において、外接矩形作成部52は、異常と推定された二値化処理後の溶接部16(
図2参照)の画像について、反射領域38の外周に接する外接矩形140、142(
図7A~
図8参照)を作成する。
【0051】
ステップS10において、内接円作成部54は、外接矩形140、142に内接する内接円144、146(
図7B及び
図8参照)を作成する。
【0052】
ステップS11において、内接円円形度算出部56は、内接円144、146の円形度を算出する。なお、内接円144、146の円形度は、下記の(2)式で表される。
(内接円の円形度)=4×π×(内接円の内側の面積)
/(内接円の円周の全長)2 (2)
【0053】
ステップS12において、二次判定部58は、内接円円形度算出部56が算出した円形度が二次判定閾値(第1閾値)以上であるか否かを判定する。二次判定閾値は、内接円144、146の形状が真円に近いかどうかを判定するための閾値である。
【0054】
ステップS12において、算出した積が二次判定閾値以上である場合(ステップS12:YES)、二次判定部58は、
図4のステップS8に進む。
【0055】
内接円144、146(
図7B及び
図8参照)は、溶接部16に塵埃が付着していないときの反射領域38の外周を模擬した見掛け上の円(偽円)である。溶接部16が球状であれば、円環状の光32を溶接部16に投影すると、内接円は、真円に近い形状となる。この結果、内接円の円形度は、1に近くなり、二次判定閾値以上となる。従って、ステップS8において、二次判定部58(
図1参照)は、算出した内接円の円形度が二次判定閾値以上であれば、溶接部16の溶接状態が良好であると判定する。
【0056】
具体的には、
図7A及び
図7Bに示すように、溶接部16の上部34(
図2参照)に塵埃が付着し、反射領域38の画像領域114の一部が欠けていても、溶接部16が球状であれば、内接円144は、真円に近くなる。これにより、内接円144の円形度が1に近くなり、二次判定閾値以上となる。この結果、二次判定部58(
図1参照)は、溶接部16の溶接状態が良好であると判定する。このように、一次判定部50で不良と推定された場合でも、二次判定部58で良好と判定されるので、誤判定の発生を防止することができる。
【0057】
ステップS12において、算出した内接円の円形度が二次判定閾値未満である場合(ステップS12:NO)、二次判定部58は、ステップS13に進む。ステップS13において、二次判定部58は、溶接部16の溶接状態が不良であると判定する。
【0058】
具体的には、
図8に示すように、溶接部16が楕円状である場合、反射領域38の画像領域124が楕円状であるため、反射領域38の外周に接する外接矩形142は、長方形状となる。これにより、外接矩形142に内接する内接円146は、楕円状となる。この結果、内接円146の円形度は、0に近くなり、二次判定閾値未満となる。従って、二次判定部58は、溶接部16の溶接状態が不良であると判定する。つまり、溶接部16が球状でない場合、一次判定部50及び二次判定部58のいずれにおいても、溶接部16の溶接状態は、不良と判定される。
【0059】
以上の説明では、1つの溶接部16の溶接状態の良否を検査する場合について説明した。複数の溶接部16の溶接状態の良否を検査する場合には、複数の溶接部16の各々に対して、ステップS4~ステップS13の処理を実行することで、溶接状態の良否を検査すればよい。
【0060】
上記の実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。
【0061】
本発明の第1の態様は、コイル(12)の先端(14)同士の溶接部(16)の良否を検査するための溶接部検査装置(10)であって、前記溶接部検査装置は、断面の外形が円形状の光(32)を前記溶接部に投影する照明部(22)と、前記溶接部における前記光の反射領域(38)を含む前記溶接部の画像(70、80、90)を撮影する撮影部(20)と、前記撮影部が撮影した前記画像について、前記反射領域の外周に接する外接矩形(140、142)を作成する外接矩形作成部(52)と、前記外接矩形作成部が作成した前記外接矩形に内接する内接円(144、146)を作成する内接円作成部(54)と、前記内接円作成部が作成した前記内接円の円形度を算出する第1円形度算出部(56)と、前記第1円形度算出部が算出した前記円形度が第1閾値以上であるときに、前記溶接部16の溶接状態が正常であると判定する第1判定部(58)と、を備える。
【0062】
本発明では、溶接部の溶接状態に対する検査の作業効率及び判定精度を向上させることができる。
【0063】
詳しく説明すると、本発明では、内接円の円形度を用いることで、最小限のデータで、溶接部の溶接状態が正常であるか否かを判定することができる。
【0064】
また、本発明では、円形状の光を溶接部に投影するので、溶接部の理想の形状が球状である場合に、溶接部が球状であれば、溶接部の画像に写り込む反射領域の画像領域は、円形状となる。また、溶接部が球状でなければ、反射領域の画像領域は、円以外の形状となる。これにより、溶接部が理想の形状に対して異常な形状であるか否かを容易に判定することができる。
【0065】
さらに、本発明では、溶接部に塵埃が付着している場合でも、反射領域を補間するように、偽円である内接円を作成する。すなわち、実際の反射領域の外形に近くなるように内接円を作成し、作成した内接円の円形度を用いて、溶接部の溶接状態を判定する。これにより、溶接部に塵埃が付着している場合でも、溶接部の溶接状態を精度よく判定することができる。この結果、溶接部の溶接状態に対する誤判定の発生を抑制することができる。
【0066】
本発明の態様において、前記溶接部検査装置は、前記撮影部が撮影した前記画像に対して、少なくとも二値化処理を行う画像処理部(44)をさらに備え、前記外接矩形作成部は、前記二値化処理が行われた前記画像について、前記反射領域の外周に接する前記外接矩形を作成する。
【0067】
二値化処理後の溶接部の画像では、反射領域の外周が明確となるので、反射領域の外周のノイズを除去することができる。これにより、溶接部の溶接状態に対する判定精度を一層向上させることができる。
【0068】
本発明の態様において、前記溶接部検査装置は、前記撮影部が撮影した前記画像について、前記反射領域の外周の円形度を算出する第2円形度算出部(46)と、前記撮影部が撮影した前記画像について、前記溶接部の大きさ(L)を取得する取得部(48)と、前記反射領域の外周の円形度と前記溶接部の大きさとの積が第2閾値以上であるときに、前記溶接部の溶接状態が正常であると判定する第2判定部(50)と、をさらに備え、前記溶接部の溶接状態が異常であると前記第2判定部が判定したときに、前記外接矩形作成部は、前記撮影部が撮影した前記画像について、前記反射領域の外周に接する前記外接矩形を作成する。
【0069】
第2判定部で一次判定を行い、第2判定部で異常と判定された画像についてのみ外接矩形の作成が行われる。これにより、溶接部の溶接状態に対する検査の作業効率を向上させつつ、溶接部の溶接状態に対する誤判定の発生を一層抑制することができる。
【0070】
本発明の態様において、前記照明部は、円環状の前記光を前記溶接部に投影する。
【0071】
これにより、溶接部が球状である場合には、円環状の反射領域が形成される。また、溶接部が球状でない場合には、形状が歪んだ反射領域が形成される。この結果、溶接部の溶接状態の良否を一層精度よく判定することができる。
【0072】
本発明の態様において、前記撮影部は、前記光の中心部から、前記反射領域を含む前記溶接部の画像を撮影する。
【0073】
これにより、溶接部が球状である場合には、円環状の反射領域を含む溶接部の画像を撮影することができる。また、溶接部が球状でない場合には、形状が歪んだ反射領域を含む溶接部の画像を撮影することができる。この結果、撮影した溶接部の画像を用いて、溶接部の溶接状態の良否を一層精度よく判定することができる。
【0074】
本発明の態様において、回転電機のステータ(28)に複数のスロットが形成され、複数のスロットの各々に前記コイルが装着され、前記溶接部は、一方のスロットから前記ステータの軸方向に突出する前記コイルの先端と、他方のスロットから前記軸方向に突出する前記コイルの先端とを溶接によって接合するときに形成される溶接玉であり、前記照明部は、前記軸方向に沿って、前記溶接玉に前記光を投影する。
【0075】
これにより、溶接玉の溶接状態の良否を精度よく判定することができる。
【0076】
本発明の第2の態様は、コイルの先端同士の溶接部の良否を検査するための溶接部検査方法であって、前記溶接部検査方法は、断面の外形が円形状の光を前記溶接部に投影するステップ(S2)と、前記溶接部における前記光の反射領域を含む前記溶接部の画像を撮影するステップ(S3)と、撮影した前記画像について、前記反射領域の外周に接する外接矩形を作成するステップ(S9)と、作成した前記外接矩形に内接する内接円を作成するステップ(S10)と、作成した前記内接円の円形度を算出するステップ(S11)と、算出した前記円形度が第1閾値以上であるときに、前記溶接部16の溶接状態が正常と判定するステップ(S12、S8)と、を有する。
【0077】
本発明でも、上記の効果が容易に得られる。
【0078】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0079】
10…溶接部検査装置 12…コイル
14…先端 16…溶接部
20…撮影部 22…照明部
32…光 38…反射領域
52…外接矩形作成部 54…内接円作成部
56…内接円円形度算出部(第1円形度算出部)
58…二次判定部(第1判定部) 70、80、90…画像
140、142…外接矩形 144、146…内接円