(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041088
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240319BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20240319BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20240319BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/033
G03F7/004 512
G03F7/027 515
G03F7/40 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145712
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南 佳苗
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隆
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
【Fターム(参考)】
2H196AA30
2H196BA06
2H196CA16
2H196HA18
2H225AC00
2H225AC54
2H225AC78
2H225AD14
2H225AD24
2H225AE08P
2H225AM13P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AN47P
2H225AP15P
2H225BA05P
2H225CA30
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液への耐性が良好で、解像性および保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液で基材をエッチング処理するエッチング方法において使用するネガ型ドライフィルムレジストが有する感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物であって、該感光性樹脂組成物は少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)光重合開始剤、(C)ブロック化イソシアネート化合物、および(D)スチレンアクリル共重合体を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液で基材をエッチング処理するエッチング方法において使用するネガ型ドライフィルムレジストが有する感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物であって、少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)光重合開始剤、(C)ブロック化イソシアネート化合物、および(D)スチレンアクリル共重合体を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液を用いたエッチング方法において使用される感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、シリコン、チタン等の基材にエッチング処理によってパターンを形成する際には、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液を使用する場合がある(以下、「フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液」を「フッ酸エッチング液」と略記する場合がある)。このようなフッ酸エッチング液によるエッチング処理において、基材上にレジストパターンを形成する感光性樹脂組成物としては、従来からネガ型の感光性樹脂組成物が使用されており、一般にはネガ型の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層と支持体とを積層したネガ型ドライフィルムレジストが使用されている。
【0003】
フッ酸エッチング液を使用したエッチング方法では、例えば、感光性樹脂層と支持体とを積層したネガ型ドライフィルムレジストの感光性樹脂層の面を基材上に貼り合わせ、該感光性樹脂層に、所望のパターンのフォトマスクを介して活性光線の露光を実施し、感光性樹脂層の硬化膜を形成する。次いで、支持体を剥離した後、非露光部(非硬化部)を現像によって除去し、基材上に、硬化した感光性樹脂層からなるレジストパターンを形成する。続いて、露出した基材に、フッ酸エッチング液を吹き付けて基材を溶解するエッチング処理を行い、基材にエッチングパターンを形成する。
【0004】
フッ酸エッチング液によるエッチング処理の際に基材から剥がれにくいというフッ酸エッチング液に対する耐性を有するレジストパターンを形成することができる感光性樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、ブロック化イソシアネート化合物、およびフィラーを含有する感光性樹脂組成物(特許文献1)や、酸変性エポキシアクリレート、光重合開始剤、ブロック化イソシアネート化合物、およびフィラーを含有する感光性樹脂組成物(特許文献2)が開示されている。かかるフィラーは膜を強固にし、フッ酸エッチング液に対する耐性の向上に有効であるものの、該フィラーによってレジストパターンの直線性が失われ、ぎざのあるレジストパターンとなる問題が発生した。そのため、基材上にエッチングによって形成された画線の直線性も失われる場合があった。
【0005】
基材上の画線の直線性に優れる感光性樹脂組成物として、支持体と第1感光性樹脂層と第2感光性樹脂層とがこの順に積層してなり、該第1感光性樹脂層が、少なくとも酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、光重合開始剤、ブロック化イソシアネート化合物、およびフィラーを含有し、且つ、該第2感光性樹脂層が、少なくとも酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、光重合開始剤、およびブロック化イソシアネート化合物を含有し、フィラーを含まないことを特徴とするネガ型ドライフィルムレジストが開示されている(特許文献3)。しかしながら、第1感光性樹脂層が含有するフィラーの影響によって、解像性が不十分になる場合があった。一方、第1感光性樹脂層がフィラーを含有しない場合は、該感光性樹脂層が早期に剥がれてしまい、フッ酸エッチング液への耐性が不十分であった。
【0006】
ガラス基板との密着性に優れ、フッ酸エッチング液への耐性が良好な感光性樹脂組成物として、カルボキシ基含有バインダー用樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、およびオルガノシラン化合物を含有する感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。しかしながら、解像性が不十分であり、細線を直線性良くパターニングすることができない場合があった。また、長期保存した場合に、オルガノシラン化合物がバインダー用樹脂のカルボキシ基等と反応し、溶出性が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-117682号公報
【特許文献2】特開2016-197226号公報
【特許文献3】特開2021-152622号公報
【特許文献4】特開2007-316247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液への耐性が良好で、解像性および保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段によって解決できた。
【0010】
フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液で基材をエッチング処理するエッチング方法において使用するネガ型ドライフィルムレジストが有する感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物であって、少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)光重合開始剤、(C)ブロック化イソシアネート化合物、および(D)スチレンアクリル共重合体を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液への耐性が良好で、解像性および保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート(以下、「成分(A)」と表記する場合がある)を含有する。成分(A)としては、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸に代表される不飽和カルボン酸を反応させ不飽和エポキシエステル樹脂を得たのち、さらに得られた不飽和エポキシエステル樹脂と酸無水物とを反応させることで得られる酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を使用できる。成分(A)が有するカルボキシ基および水酸基が、後述する(C)ブロック化イソシアネート化合物と架橋反応することにより、フッ酸エッチング液への耐性が良好な感光性樹脂層を得ることができる。該エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリスフェノール型、テトラフェノール型、フェノール-キシリレン型、グリシジルエーテル型あるいはそれらのハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。使用する酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが例示できる。
【0014】
成分(A)の酸価は、アルカリ現像速度、密着性などに影響する。成分(A)の酸価(JIS K2501:2003)は、40~120mgKOH/gであることが好ましい。酸価が40mgKOH/g未満では、現像時間が長くなる場合があり、酸価が120mgKOH/gを超えると、感光性樹脂組成物の皮膜性が悪くなる場合がある。
【0015】
また、成分(A)の質量平均分子量は、3,000~15,000であることが好ましい。質量平均分子量が3,000未満では、硬化前の感光性樹脂層を皮膜状態に形成することが困難になる場合がある。一方、15,000を超えると、感光性樹脂層の未硬化部の現像液に対する溶解性が低下する場合がある。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとしては、市販品も好ましく用いることができる。例えば、日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)CCR-1235、同じくZAR-2000、同じくZFR-1401H、同じくUXE-3000、昭和電工(株)製リポキシ(登録商標)PR-300CP等を例示でき、これらを単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤(以下、「成分(B)」と表記する場合がある)を含有する。(B)光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4′-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9′-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。上記2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。中でも、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体を単独あるいは他の光重合開始剤と併用して使用することは、高感度な感光性樹脂組成物が得られるため好ましく、その際には2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が成分(B)の総量に対して80質量%以上であることが特に好ましい。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)ブロック化イソシアネート化合物(以下、「成分(C)」と表記する場合がある)を含有する。(C)ブロック化イソシアネート化合物としては、イソシアネート基がブロック剤で保護されている化合物が例示され、該化合物はイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を反応させることで得られる。ブロック化イソシアネート化合物は、常温では安定であるが、加熱すると、ブロック剤が開裂してイソシアネート基が発生する化合物である。加熱処理を行うことで、成分(C)中のブロック化イソシアネート基から発生したイソシアネート基と成分(A)中のカルボキシ基および水酸基との熱架橋による強固な結合が形成され、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する感光性樹脂層の耐性が大幅に向上する。
【0019】
ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、p-エチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のフェノール系;エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系;アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系;その他イミド系;アミン系;イミダゾール系;ピラゾール系;尿素系;カルバミン酸系;イミン系;ホルムアルデヒドオキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メルカプタン系、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系;ラクタム系等がある。フッ酸エッチング液に対する耐性および解像性向上の点から、ブロック剤としては、ピラゾール系のブロック剤が好適であり、特にジメチルピラゾールが好ましい。
【0020】
イソシアネート化合物としては、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等のプレポリマーが挙げられる。フッ酸エッチング液に対する耐性および解像性向上の点から、イソシアネート化合物としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが好適であり、特にそのアダクト体、ビウレット体およびイソシアヌレート体が好ましい。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)スチレンアクリル共重合体(以下、「成分(D)」と表記する場合がある)を含有する。スチレンアクリル共重合体を用いることで、露光、現像工程によるパターン解像性を向上させ、加熱(ベーク)処理後の基材への密着性が良好で、フッ酸エッチング液に対する耐性に優れたレジストパターンを得ることができる。
【0022】
本発明における(D)スチレンアクリル共重合体とは、少なくとも(i)スチレンおよびその誘導体、(ii)(メタ)アクリル酸を共重合させたものであり、さらに(iii)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体を共重合させたものでもよい。
【0023】
(D)スチレンアクリル共重合体における(i)スチレンおよびその誘導体の含有量は、(D)スチレンアクリル共重合体の共重合成分である(i)スチレンおよびその誘導体、(ii)(メタ)アクリル酸、および(iii)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体の総量に対して、5~75質量%であることが好ましく、より好ましくは10~67.5質量%であり、さらに好ましくは15~60質量%である。(i)スチレンおよびその誘導体の含有量が5質量%よりも少ないと、硬化した感光性樹脂層が現像液で膨潤しやすくなり、微細なラインやドットに蛇行や変形が生じる場合がある。一方で、(i)スチレンおよびその誘導体の含有量が75質量%よりも多いと、感光性樹脂層の非露光部分が現像液で完全に除去されず、エッチングが阻害される場合がある。
【0024】
(D)スチレンアクリル共重合体における(ii)(メタ)アクリル酸の含有量は、(D)スチレンアクリル共重合体の共重合成分である(i)スチレンおよびその誘導体、(ii)(メタ)アクリル酸、および(iii)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体の総量に対して、15~45質量%であることが好ましく、より好ましくは20~40質量%、さらに好ましくは25~35質量%である。(ii)(メタ)アクリル酸の含有量が15質量%よりも少ないと、感光性樹脂層の非露光部分の現像液に対する溶解性が低下し、現像によるレジストパターンの形成が進行しなくなる場合がある。一方で、(ii)(メタ)アクリル酸の含有量が45質量%よりも多いと、硬化した感光性樹脂層が現像液で膨潤しやすくなり、微細なラインやドットに蛇行や変形が生じる場合がある。また、(ii)(メタ)アクリル酸は、現像液への溶出性の観点から、メタクリル酸であることが好ましい。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、上記した成分(A)~(D)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、架橋性モノマー、増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、熱発色防止剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤および撥油剤等が挙げられ、感光性樹脂組成物が含有する成分(A)~(D)の合計含有量に対して各々0.01~20質量%含有することができる。これらの成分は1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)無機フィラーを含まないことが好ましい。これにより、高い解像性を有する感光性樹脂組成物を得ることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、石英、アルミナ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、雲母等が挙げられ、これらの含有量が、感光性樹脂組成物が含有する成分(A)~(D)の合計含有量に対して1.5質量%を超えると、解像性が低下する場合があるため、1.5質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物は、(F)オルガノシラン化合物を含まないことが好ましい。これにより、保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。オルガノシラン化合物としては、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの含有量が、感光性樹脂組成物が含有する成分(A)~(D)の合計含有量に対して1.0質量%を超えると、感光性樹脂組成物の保存安定性が低下する場合があるため、1.0質量%以下とすることが好ましい。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-ブタノール、n-ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-n-アミル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶剤又はこれらの混合溶剤を含有させてもよい。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物において、成分(A)の含有量は、感光性樹脂組成物が含有する成分(A)~(D)の合計含有量に対して35~90質量%であることが好ましく、45~80質量%であることがより好ましい。成分(A)の含有量が35質量%未満では、被膜性が悪くなる場合がある。一方、成分(A)の含有量が90質量%を超えると、フッ酸エッチング液に対する耐性が低下する場合がある。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物において、成分(B)の含有量は、感光性樹脂組成物が含有する成分(A)~(D)の合計含有量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~5質量%であることがより好ましい。成分(B)の含有量が0.1質量%未満では、光重合性が不十分となる場合がある。一方、成分(B)の含有量が10質量%を超えると、露光の際にレジストの表面で吸収が増大して、感光性樹脂層内部の光架橋が不十分となる場合がある。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物において、成分(C)の含有量は、感光性樹脂組成物が含有する成分(A)~(D)の合計含有量に対して5~35質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。成分(C)の含有量が5質量%未満では、加熱(ベーク)処理後のフッ酸エッチング液に対する耐性が不十分となる場合がある。一方、成分(C)の含有量が35質量%を超えると、光硬化が不十分となり、解像性が低下する場合がある。
【0032】
本発明の感光性樹脂組成物において、成分(D)の含有量は、感光性樹脂組成物が含有する成分(A)~(D)の合計含有量に対して2~19質量%であることが好ましく、より好ましくは3~17質量%であり、さらに好ましくは4~15質量%である。成分(D)の含有量が2質量%未満では、感光性樹脂組成物と基材との密着性が不十分となり、フッ酸エッチング液に対する耐性が低下する場合がある。一方、成分(D)の含有量が19質量%を超えると、解像性が低下する場合がある。
【0033】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いたエッチング方法について詳説する。先ず、本発明の感光性樹脂組成物を含有する塗工液を支持体上に塗工し、乾燥して、感光性樹脂層を形成させることによって、支持体上に感光性樹脂層を有するネガ型ドライフィルムレジストを得る。また、ネガ型ドライフィルムレジストは、感光性樹脂層の上にカバーフィルムを貼り付けて、支持体、感光性樹脂層およびカバーフィルムをこの順に有する構成としてもよい。該塗工液を支持体に塗工する方法としては、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフ、ダイコータ、バーコータ等を用いた方法で行うことができる。
【0034】
支持体としては、紫外線を透過させる透明フィルムが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等のフィルムが使用できる。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、ラミネート適性、剥離適性、高透過性、屈折率の点から有利であり、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を持つ等の利点から、非常に利用しやすい。支持体の厚みは、1~100μmであることが好ましい。
【0035】
カバーフィルムとしては、未硬化又は硬化した感光性樹脂層を剥離できればよく、離型性の高い樹脂のフィルムが用いられる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン等の離型剤が塗工されたポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
【0036】
次に、感光性樹脂層の面を基材の表面に貼り付ける。カバーフィルムを有する場合はカバーフィルムを剥離してから、感光性樹脂層の面を基材の表面に貼り付ける。本発明に係る基材とは、フッ酸エッチング液でエッチング加工を実施する基材であり、ガラス、セラミック、酸化銀、シリコン、ゲルマニウム、タンタル、半導体基板、石英、チタン等が挙げられる。
【0037】
基材にネガ型ドライフィルムレジストを貼り付ける方法としては、例えばラミネート法を使用することができ、一般的な、プリント基板用の熱ラミネーターや真空ラミネーターを使用できる。ニップ圧、搬送速度、ロール温度等のラミネート条件は、使用する基材によって異なるが、気泡やムラなく貼り付けることができれば、何れの条件であってもよい。
【0038】
ネガ型ドライフィルムレジストを基材に貼り付けた後、感光性樹脂層に対してパターン状の露光を実施し、露光部を硬化させる。露光方法としては、具体的には、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯等を光源とした、フォトマスクを用いた密着露光、反射画像露光、プロキシミティ方式、プロジェクション方式のほか、UVレーザ、He-Neレーザ、He-Cdレーザ、アルゴンレーザ、クリプトンイオンレーザ、ルビーレーザ、YAGレーザ、窒素レーザ、色素レーザ、エキシマレーザ等のレーザを光源とした、発光波長に応じてSHG波長変換した走査露光、あるいは、液晶シャッターやマイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光等が挙げられる。
【0039】
次に、アルカリ現像を実施し、感光性樹脂層の非露光部を除去する。アルカリ現像に使用するアルカリ現像液としては、例えば、無機アルカリ性化合物の水溶液を用いることができる。無機アルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の炭酸塩や水酸化物が挙げられる。アルカリ現像液の無機アルカリ性化合物の濃度は、0.1~3質量%であることが好ましく、0.1~3質量%の炭酸ナトリウム水溶液がアルカリ現像液として好ましく使用できる。アルカリ現像液には、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜少量混入することもできる。アルカリ現像の処理方法としては、ディップ方式、スプレー方式、パドル方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、スプレー方式が除去速度のためには最も適している。アルカリ現像の処理温度は15~35℃が好ましく、また、スプレー圧は0.02~0.3MPaが好ましい。
【0040】
次に、加熱(ベーク)処理を行うことが好ましい。これにより、感光性樹脂層と基材の密着性を向上させ、フッ酸エッチング液に対する耐性を向上させることができる。加熱温度は、本発明の感光性樹脂組成物が含有する(C)ブロック化イソシアネート化合物のブロック剤が開裂する温度以上が好ましく、90~250℃であることが好ましく、110~200℃であることがさらに好ましい。90℃未満であると、架橋反応の進行が遅い場合があり、250℃を超えると、他の成分が分解する場合がある。加熱時間は10~90分間であることが好ましい。
【0041】
次に、露出した基材に、フッ酸エッチング液を吹き付けて基材を溶解するエッチング処理を行い、基材にエッチングパターンを形成する。その後レジストパターンを基材から剥離することで、エッチングパターンを有する基材を得ることができる。
【実施例0042】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1~17および比較例1~2の感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層を有するネガ型ドライフィルムレジストの作製)
表1に示す各成分を共重合させて(D-1)~(D-10)のスチレンアクリル共重合体を得た。なお、表1における各成分の含有量の単位は質量部である。
【0044】
【0045】
表2に示す各成分を混合し、成分濃度が50%となるよう2-ブタノンで希釈し、実施例1~17および比較例1~2の各感光性樹脂組成物を含有する塗工液を作製した。なお、表2における各成分含有量の単位は、質量部である。得られた各塗工液を、バーコータにて高透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:FB40、16μm厚、東レ(株)製)上に塗工し、80℃で8分間乾燥することで溶剤成分をとばし、PETフィルムの片面上に、乾燥膜厚15μmの感光性樹脂層を有する各ネガ型ドライフィルムレジストを得た。
【0046】
【0047】
表2において、各成分は以下の通りである。
【0048】
(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート
(A-1)KAYARAD(登録商標)UXE-3000(商品名、日本化薬(株)製、濃度65質量%、質量平均分子量:10,000、酸価:98mgKOH/g)
(A-2)KAYARAD ZAR-2000(商品名、日本化薬(株)製、濃度65質量%、質量平均分子量:13,000、酸価:98mgKOH/g)
【0049】
(B)光重合開始剤
(B-1)2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体
(B-2)4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0050】
(C)ブロック化イソシアネート化合物
(C-1)トリキセンBI7960(商品名、(株)GSIクレオス製、ベース:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ブロック剤:ジメチルピラゾール、濃度70質量%)
(C-2)トリキセンBI7982(商品名、(株)GSIクレオス製、ベース:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ブロック剤:ジメチルピラゾール、濃度70質量%)
【0051】
(E)無機フィラー
(E-1)タルク(商品名:SG95、日本タルク(株)製、平均粒子径2.5μm)
【0052】
(F)オルガノシラン化合物
(F-1)ビニルトリエトキシシラン
【0053】
(G)イソシアネート化合物
(G-1)デュラネート(登録商標)22A-75P(商品名、旭化成(株)製、ベース:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、濃度75質量%)
【0054】
(H)アクリル共重合体
(H-1)メチルメタクリレート:メタクリル酸=75:25(質量部)で共重合させた共重合体
【0055】
得られたネガ型ドライフィルムレジストの保存安定性を以下のように評価した。評価結果を表2に記載した。
【0056】
(保存安定性)
ネガ型ドライフィルムレジストの作製直後の感度と、室温(25℃)で1か月間保存した後の感度を、トランスミッションステップウェッジT2115(ストウファ社製)を用いて比較した。作製直後の感度と1ヶ月保存後の感度の差が1段以内の場合は○、1段を越えて5段以内の場合は△、5段を超える場合は×とした。なお、本発明においては、作製直後の感度と1ヶ月保存後の感度の差が5段以内である場合を実用可能と判断した。
【0057】
次に、厚さが2mmのガラス基材に、上記で得られた実施例1~17および比較例1~2のネガ型ドライフィルムレジストを、感光性樹脂層の面がガラス基材に接触するようにして100℃で熱圧着した。次に、フォトマスク(ライン/スペース=500μm/50μm)を介して、超高圧水銀灯にて感光性樹脂層に対して露光を行った。露光後、室温で10分間放置してから、ネガ型ドライフィルムレジストのPETフィルムを剥がし取り、露出した感光性樹脂層の表面に、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を温度30℃、スプレー圧0.1MPaの条件でスプレーし、非露光部を除去してレジストパターンを形成した。その後、レジストパターンを水洗し、乾燥させてから、150℃で30分のベーク処理を実施し、レジストパターンを有するガラス基材を得た。
【0058】
ガラス基材の表面に形成されたレジストパターンの解像性およびフッ酸エッチング液に対する耐性を以下のように評価した。評価結果を表2に記載した。
【0059】
(解像性)
ライン/スペース=500μm/50μmのレジストパターンを顕微鏡で観察し、現像液の浸透によるレジストパターンの膨潤や歪みがなく、現像残渣が全くないものを○、僅かに現像液の浸透によるレジストパターンの膨潤や歪みがある、または現像残渣が僅かに見られるが、実用上問題ないものを△、明確に現像液の浸透によるレジストパターンの膨潤や歪みがある、または現像残渣が顕著に観察され、実用上問題があるものを×として評価した。
【0060】
(フッ酸エッチング液に対する耐性)
レジストパターンを有するガラス基材を、4mol/kgのフッ化アンモニウム水溶液と2mol/kgの硫酸を1:1(質量部)で混合したフッ酸エッチング液(25℃)に30分間浸漬した。この際、レジストパターンが剥離せずに問題なく基材にエッチングパターンを形成できたものを○、レジストパターンが一部剥離しかけたが実用上は問題ないレベルで基材にエッチングパターンを形成できたものを△、レジストパターンが部分的あるいは全体的に剥離して基材に所望のエッチングパターンが形成できなかったものを×として評価した。
【0061】
実施例1~17では、何れも実用上問題ない解像性とフッ酸エッチング液に対する耐性を有していた。
【0062】
(C)ブロック化イソシアネート化合物を含まず、(G)イソシアネート化合物を含有する比較例1は、DFRの非露光部を溶出することができず、基材上にレジストパターンを形成することができなかったため、ガラス基材をエッチング処理することができなかった。
【0063】
(D)スチレンアクリル共重合体を含まず、(H)アクリル共重合体を含有する比較例2は、現像工程後に、現像液の浸透によるレジストパターンの膨潤が顕著に観察された。また、ガラス基材をフッ酸エッチング液によってエッチング処理する際に、レジストパターンの剥離が早期に生じ、所望のエッチングパターンを得ることができなかった。