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特開2024-41102電子機器、電子機器の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041102
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240319BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240319BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G06F3/01 560
A61B5/02 310B
A61B5/0245 B
G06F3/01 510
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145741
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】粕尾 智夫
【テーマコード(参考)】
4C017
5E555
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AB02
4C017AC28
4C017DD01
4C017FF15
5E555AA57
5E555AA64
5E555BA04
5E555BA38
5E555BB04
5E555BB38
5E555CA42
5E555CA44
5E555DA24
5E555DD08
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】より適切に装着状態に係る判定を行うことができる電子機器、電子機器の制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子機器は、ユーザの身体に装着されて使用される電子機器であって、電子機器を振動させる振動部と、電子機器の振動の強度に応じて変動する物理量を検出する検出部と、検出された物理量に基づいて、ユーザの身体に対する電子機器の装着状態を判定する処理部と、を備える。また、ユーザの身体に装着されて使用される電子機器を振動させる振動部と、電子機器の振動の強度に応じて変動する物理量を検出する検出部と、を備えた電子機器の制御方法は、検出された物理量に基づいて、ユーザの身体に対する電子機器の装着状態を判定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの身体に装着されて使用される電子機器であって、
前記電子機器を振動させる振動部と、
前記電子機器の振動の強度に応じて変動する物理量を検出する検出部と、
検出された前記物理量に基づいて、前記ユーザの身体に対する前記電子機器の装着状態を判定する処理部と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記検出部は、前記電子機器の振動の強度が増大するに従って大きくなる前記物理量を検出し、
前記処理部は、前記振動部を振動させ、前記振動部が振動している振動期間において前記検出部により検出された前記物理量の大きさに対応する判定値に基づいて、前記装着状態を判定する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記検出部は、前記電子機器の加速度を検出する加速度センサを有し、
前記物理量は、前記加速度の変動幅、振幅、又は、極大値及び極小値の少なくとも一方の絶対値である、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記処理部は、前記判定値が第1閾値未満である場合に、前記電子機器が前記ユーザの身体に装着されていると判定し、前記判定値が前記第1閾値以上である場合に、前記電子機器が前記ユーザの身体に装着されていないと判定する、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記処理部は、
前記判定値が第2閾値未満である場合に、前記電子機器が正常な装着状態であると判定する、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項6】
前記処理部は、前記判定値が前記第1閾値未満、かつ、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、前記電子機器が、正常な装着状態、または前記ユーザの身体に装着されていない状態のいずれでもないと判定する、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項7】
前記ユーザに対する通知、又は前記ユーザの生体データの計測を行う動作部を備え、
前記処理部は、
前記振動期間における前記判定値が前記第1閾値以上である場合に、前記電子機器が前記ユーザの身体に装着されていないと判定し、前記動作部の動作を停止させる、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項8】
前記処理部は、
前記振動部を振動させる振動制御と、前記振動部の振動を停止させる振動停止制御とを実行し、
或る前記振動期間における前記判定値が前記第1閾値以上である場合に、前記電子機器が前記ユーザの身体に装着されていないと判定し、次回の前記振動制御における前記振動部の振動強度を低減させる、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項9】
前記処理部は、前記振動部の振動強度を低減させた後に実行する振動状態の判定において、前記振動部の振動強度の低減の度合いに応じて補正された前記第1閾値に基づいて、前記電子機器が前記ユーザの身体に装着されているか否かを判定する、
請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
前記処理部は、
或る前記振動期間における前記判定値が前記第1閾値以上である場合に、前記電子機器が前記ユーザの身体に装着されていないと判定し、前記ユーザに対する通知における前記振動部の振動強度を低減させる、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項11】
前記処理部は、
前記振動部を振動させることで、前記ユーザに対する通知を行い、
前記通知のための前記振動部の振動に応じて前記検出部により検出された前記物理量に基づいて、前記装着状態を判定する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項12】
ユーザの身体に装着されて使用される電子機器を振動させる振動部と、前記電子機器の振動の強度に応じて変動する物理量を検出する検出部と、を備えた前記電子機器の制御方法であって、
検出された前記物理量に基づいて、前記ユーザの身体に対する前記電子機器の装着状態を判定する、
電子機器の制御方法。
【請求項13】
ユーザの身体に装着されて使用される電子機器を振動させる振動部と、前記電子機器の振動の強度に応じて変動する物理量を検出する検出部と、を備えた前記電子機器に設けられたコンピュータに、
検出された前記物理量に基づいて、前記ユーザの身体に対する前記電子機器の装着状態を判定する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、電子機器の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの身体に装着されて使用される電子機器において、発光部から照射された光の反射光の受光強度に基づいて、自装置がユーザの身体に装着されているか否かを判定する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/166990号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術には、ユーザが電子機器を装着していない場合であっても、発光部から照射された光を受光部に向けて反射する物体がある場合には、ユーザが電子機器を装着していると誤判定されてしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、より適切に装着状態に係る判定を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器は、
ユーザの身体に装着されて使用される電子機器であって、
前記電子機器を振動させる振動部と、
前記電子機器の振動の強度に応じて変動する物理量を検出する検出部と、
検出された前記物理量に基づいて、前記ユーザの身体に対する前記電子機器の装着状態を判定する処理部と、
を備える。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器の制御方法は、
ユーザの身体に装着されて使用される電子機器を振動させる振動部と、前記電子機器の振動の強度に応じて変動する物理量を検出する検出部と、を備えた前記電子機器の制御方法であって、
検出された前記物理量に基づいて、前記ユーザの身体に対する前記電子機器の装着状態を判定する。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、
ユーザの身体に装着されて使用される電子機器を振動させる振動部と、前記電子機器の振動の強度に応じて変動する物理量を検出する検出部と、を備えた前記電子機器に設けられたコンピュータに、
検出された前記物理量に基づいて、前記ユーザの身体に対する前記電子機器の装着状態を判定する処理、
を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より適切に装着状態に係る判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子時計の側面図である。
図2】電子時計の機能構成を示すブロック図である。
図3】電子時計がユーザに装着されていない場合に、振動部及び電子時計の振動時に検出される加速度を模式的に示した図である。
図4】電子時計がユーザに装着されている場合に、振動部及び電子時計の振動時に検出される加速度を模式的に示した図である。
図5】電子時計が、緩んだ状態でユーザの手首に装着されている場合に、振動部及び電子時計の振動時に検出される加速度を模式的に示した図である。
図6】補正された第1閾値及び第2閾値による装着状態判定を説明する図である。
図7】脈拍数計測処理の制御手順を示すフローチャートである。
図8】装着状態判定処理の制御手順を示すフローチャートである。
図9】ユーザへの通知を行うための通知処理の制御手順を示すフローチャートである。
図10】決済機能を実行するための決済処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
<電子時計の構成>
図1は、電子時計1の側面図である。
電子時計1(電子機器)は、ユーザの手首(身体)に装着されて使用される腕時計である。電子時計1は、表示部12及び操作ボタン131などが設けられた本体部2と、当該本体部2に取り付けられたベルト3とを備える。電子時計1は、ベルト3を手首に巻き付けることによりユーザに装着される。
【0013】
電子時計1は、本体部2の内部に、ユーザの脈波を検出する脈波検出部15を備える。脈波検出部15は、発光部151及び受光部152を備える。発光部151及び受光部152は、本体部2の裏面、すなわち装着時にユーザの手首に触れる面の近傍に設けられている。発光部151は、本体部2の裏面から外部に向かって光を射出する。電子時計1がユーザに装着されているときには、発光部151から射出された光がユーザの手首の肌により反射する。受光部152は、このユーザの肌により反射した光を受光可能な位置に設けられている。ユーザの肌に照射された光の一部は、血管内の血液により吸収される。このため、肌からの反射光の受光部152による受光量は、心臓の脈動に伴う血流量の変化に応じて経時変化する。脈波検出部15は、この受光量の変化に基づいて脈波を検出し、検出した脈波に応じた波形を出力する。当該波形に基づいて、CPU10(図2参照)により脈拍数(心拍数)が計測される。脈拍数の計測結果は、表示部12に表示される。
【0014】
図2は、電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
電子時計1は、CPU10(Central Processing Unit)(処理部)と、メモリ11(記憶部)と、表示部12(動作部)と、操作受付部13と、計時部14と、脈波検出部15(動作部)と、振動部16と、センサ部17(検出部)などを備える。
【0015】
CPU10は、メモリ11に記憶されているプログラム111を読み出して実行し、各種演算処理を行うことで、電子時計1の動作を制御するプロセッサである。CPU10は、処理部(1以上の処理部)を構成する。なお、電子時計1は、複数のプロセッサ(例えば、複数のCPU)を有していてもよく、本実施形態のCPU10が実行する複数の処理を、当該複数のプロセッサが実行してもよい。この場合には、複数のプロセッサにより処理部(1以上の処理部)が構成される。この場合において、複数のプロセッサが共通の処理に関与してもよいし、あるいは、複数のプロセッサが独立に異なる処理を並列に実行してもよい。
【0016】
メモリ11は、CPU10に作業用のメモリ空間を提供し、各種データを記憶する。メモリ11は、例えば、RAM(Random Access Memory)と不揮発性メモリとを含む。RAMは、CPU10の演算処理に用いられ、また、一時データを記憶する。不揮発性メモリは、例えば、フラッシュメモリであり、プログラム111の他、各種データを記憶する。不揮発性メモリを含むメモリ11は、コンピュータとしてのCPU10により読み取り可能な非一時的な記録媒体を構成する。メモリ11に記憶されるデータとしては、装着フラグ112がある。装着フラグ112は、後述する脈拍数計測処理、装着状態判定処理、通知処理、及び決済処理に用いられる。装着フラグ112は、例えば、「0」及び「1」のいずれかの値を取る1ビットデータである。
【0017】
表示部12は、CPU10による制御に従って表示画面においてデジタル表示を行う。本実施形態の表示部12の表示画面は、ドットマトリクス形式で表示を行うことのできるものであって、例えば、液晶表示画面である。表示部12は、例えば、時刻や日付等の基本情報の他、ユーザの脈拍数の計測結果、及びユーザに対する各種の通知などを表示する。表示部12は、ユーザに対する通知を行う動作部の一態様である。
【0018】
操作受付部13は、複数の操作ボタン131を備える。操作受付部13は、操作ボタン131に対するユーザの入力操作(例えば、押下操作)を受け付けて入力信号としてCPU10に出力する。CPU10は、入力操作がなされた操作ボタン131の機能に対応する処理を実行する。各操作ボタン131に割り当てられる機能は、電子時計1の動作モードに応じて切り替えられてもよい。操作ボタン131には、りゅうずが含まれていてもよい。また、操作受付部13は、表示部12の表示画面に重ねられて設けられたタッチパネルを有していてもよい。
【0019】
計時部14は、発振回路、分周回路及び計時回路などを備える。計時部14は、発振回路が発生したクロック信号を分周回路が分周し、当該分周された信号を計時回路が計数することで、現在日時を導出して保持する。
【0020】
脈波検出部15は、ユーザの生体データとしての脈波を検出する。脈波検出部15は、ユーザの生体データの計測を行う動作部の一態様である。
脈波検出部15の発光部151は、LED(Light Emitting Diode)等の光を射出する発光素子を備える。本実施形態の発光部151は、血液中のヘモクロビンに吸収されやすい緑色の光、例えばピーク波長が520nm~530nmの光を射出するLEDを備える。脈波検出部15は、発光部151に駆動電流を供給する発光駆動部を備え、発光部151は、発光駆動部からの駆動電流の供給に応じて発光する。脈波検出部15は、CPU10から供給された制御信号に従って、発光駆動部から発光部151への駆動電流の出力を制御することで、発光部151のLEDを発光させ、また消灯させる。
脈波検出部15の受光部152は、光を検出してその受光量(入射光の強度)に応じた電気信号を出力する受光素子を備える。受光素子としては、例えばフォトダイオード又は照度センサ等を用いることができる。脈波検出部15は、受光部152から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換してCPU10に出力するADC(アナログデジタルコンバータ)を備える。
【0021】
振動部16は、CPU10による制御に従って振動する振動モータを備える。振動モータは、モータによって回転する回転軸と、回転軸に対して偏心した状態で取り付けられた振動子と、を有し、偏心した振動子の回転により生じる振動を周囲に伝搬させることで振動源として機能する。振動部16の特性及び振動の継続時間は、振動の用途等に応じて適宜変更可能である。振動部16の振動の開始及び停止は、CPU10により制御される。すなわち、CPU10は、振動部16を振動させる振動制御と、振動部16の振動を停止させる振動停止制御とを実行する。
振動部16の振動は、電子時計1の本体部2の筐体に伝播するようになっている。電子時計1を装着しているユーザは、当該筐体に伝播した振動を手首で認識することができる。
【0022】
センサ部17は、3軸加速度センサ171(加速度センサ)、3軸ジャイロセンサ172、及び3軸地磁気センサ173を備える。また、センサ部17は、3軸加速度センサ171、3軸ジャイロセンサ172及び3軸地磁気センサ173から出力されたアナログ信号をそれぞれデジタル信号に変換してCPU10に出力するADCを備える。
【0023】
3軸加速度センサ171は、ユーザの動作や振動部16の振動に応じて生じる電子時計1の加速度を所定のサンプリング周波数で検出し、検出信号を出力する。3軸加速度センサ171は、互いに直交する3軸方向の各々についての加速度を検出する。CPU10は、3軸加速度センサ171から入力された3軸方向の加速度の検出信号に基づいて、3軸方向の加速度を合成した合成加速度を算出する。あるいは、センサ部17にプロセッサを設けて、センサ部17内で合成加速度を算出してもよい。
3軸ジャイロセンサ172は、ユーザの動作や振動部16の振動に応じて生じる電子時計1の所定軸回りの角速度を所定のサンプリング周波数で検出し、検出信号を出力する。3軸ジャイロセンサ172は、互いに直交する3軸方向の各々の回りの角速度を検出する。
3軸地磁気センサ173は、互いに直交する3軸方向についての地磁気の成分を所定のサンプリング周波数で検出し、検出信号を出力する。CPU10は、3軸地磁気センサ173から入力された3軸方向の地磁気の検出信号に基づいて、電子時計1の向きを算出する。あるいは、センサ部17にプロセッサを設けて、センサ部17内で電子時計1の向きを算出してもよい。
【0024】
<電子時計の動作>
次に、電子時計1の動作について、脈拍数の計測に伴う装着状態判定に係る動作を中心に説明する。
【0025】
上述した脈波検出部15による脈波の検出、及び、当該脈波の検出結果に基づく脈拍数の計測は、電子時計1がユーザの身体に装着されていない状態では行うことができない。電子時計1がユーザの身体に装着されていない状態では、発光部151から射出された光がユーザの手首で反射せず、脈波の情報を含む反射光を受光部152が受光できないためである。このため、本実施形態の電子時計1では、ユーザから脈拍数の計測を指示する操作がなされた場合には、電子時計1がユーザの身体に装着されているか否かの判定(以下、「装着状態判定」と記す)が行われ、装着されていると判定された場合に、脈波の検出及び脈拍数の計測が行われる。一方、装着状態判定において、電子時計1がユーザの身体に装着されていない(非装着である)と判定された場合には、脈波の検出及び脈拍数の計測は行われず、外観上及び電力消費の観点から、発光部151の発光も行われない。
以下では、電子時計1が「ユーザの身体に装着されている(装着されていない)」ことを、単に「ユーザに装着されている(装着されていない)」と記す。
【0026】
装着状態判定では、電子時計1のCPU10は、振動部16を振動させる振動制御を実行し、振動部16が振動している振動期間においてセンサ部17の3軸加速度センサ171により検出された加速度に基づいて、電子時計1の装着状態を判定する。以下、加速度に基づく装着状態の判定方法について説明する。
【0027】
上述のとおり、振動部16の振動は、電子時計1の本体部2の筐体に伝播するようになっており、電子時計1を装着しているユーザは、当該筐体に伝播した振動を手首で認識することができる。このように、電子時計1がユーザに装着されている状態で振動部16が振動すると、振動エネルギーの一部がユーザの手首に伝搬するため、手首に伝搬した分だけ、電子時計1を振動させるのに用いられる振動エネルギーが小さくなる。よって、ユーザに装着されている状態の電子時計1において振動部16が振動したときの電子時計1の振動の強度(振幅)は、ユーザに装着されていない状態の電子時計1において振動部16が振動したときの電子時計1の振動の強度よりも小さくなる。
【0028】
電子時計1の振動に応じて生じる電子時計1の加速度は、3軸加速度センサ171により検出され、CPU10により3軸方向の合成の加速度が算出される。以下では、単に「加速度」と記した場合には、3軸方向の合成の加速度を指すものとする。
【0029】
図3は、電子時計1がユーザに装着されていない場合に、振動部16及び電子時計1の振動時に検出される加速度を模式的に示した図である。
図4は、電子時計1がユーザに装着されている場合に、振動部16及び電子時計1の振動時に検出される加速度を模式的に示した図である。
図3及び図4には、振動部16及び電子時計1が振動している振動期間Pにおいて3軸加速度センサ171により検出された、3軸方向の合成の加速度の経時的変化が示されている。図3及び図4に示すように、検出される加速度は、振動部16及び電子時計1の振動周期と同一の周期で周期的に変動する。なお、図3及び図4では、説明の便宜上、振動期間Pにおける加速度の周期的変動の繰り返し回数を、実際よりも少なく描いている(後述する図5及び図6についても同様である)。
【0030】
電子時計1に生じる加速度の極大値及び極小値の絶対値は、電子時計1の振動の強度(振幅)が増大するに従って大きくなる。このため、検出される加速度の変動幅Wは、電子時計1の振動の強度が増大するにしたがって大きくなる。ここで、電子時計1の振動の強度に応じて変動することは、電子時計1の振動の強度に応じた変動態様で変動することを含む。また、電子時計1の振動の強度に応じた変動態様で変動することは、電子時計1の振動の強度に応じた変動幅Wで変動することを含む。
また、上述のとおり、電子時計1がユーザに装着されている状態では、ユーザに装着されていない状態と比較して、振動部16の振動に応じた電子時計1の振動の強度が低減する。このため、電子時計1がユーザに装着されている状態(図4)で検出される加速度の変動幅Wは、電子時計1がユーザに装着されていない状態(図3)で検出される加速度の変動幅Wよりも小さくなる。
【0031】
振動期間Pの長さは、加速度の変動幅Wを特定可能な長さであればよく、原理的には加速度の変動周期以上であればよい。また、振動期間Pの長さは、複数周期にわたる加速度に基づいて、信頼性の高い変動幅Wの代表値(例えば平均値)を得るために十分な長さとしてもよい。また、振動期間Pの長さは、ユーザが振動を煩わしく感じない長さとしてもよい。
【0032】
CPU10は、検出された加速度の変動幅Wに対応する判定値と、所定の第1閾値T1との大小関係に基づいて、電子時計1がユーザの身体に装着されているか否かを判定する。本実施形態では、判定値として変動幅Wそのものを用いる例を挙げて説明する。判定値は、加速度の変動幅Wに限られず、電子時計1の振動の強度に応じて変動する物理量の大きさに対応する値であれば任意の値を用いることができる。例えば、加速度の振幅(変動幅Wの1/2)を判定値としてもよいし、加速度の極大値及び極小値の少なくとも一方の絶対値を判定値としてもよい。加速度の変動幅W、振幅、並びに極大値及び極小値の絶対値は、「電子機器の振動の強度が増大するに従って大きくなる物理量」の一態様である。
第1閾値T1は、予め設定されてメモリ11に記憶されている。また、第1閾値T1は、電子時計1がユーザに装着されていない状態において検出される加速度の変動幅Wよりもよりも小さく、かつ、電子時計1がユーザに装着されている状態において検出される加速度の変動幅Wよりもよりも大きくなる範囲内で定められている。
【0033】
よって、CPU10は、判定値としての変動幅Wが第1閾値T1以上である場合に、電子時計1(自装置)がユーザに装着されていないと判定し、第1閾値T1未満である場合に、電子時計1がユーザに装着されていると判定する。図3に示す例では、変動幅Wが第1閾値T1以上であるため、CPU10は、電子時計1がユーザに装着されていないと判定する。また、図4に示す例では、変動幅Wが第1閾値T1未満であるため、CPU10は、電子時計1がユーザに装着されていると判定する。
【0034】
図1に示すように、振動部16を、本体部2のうちユーザの手首に接する裏蓋2aの近傍(裏蓋2aの面に垂直な厚さ方向について、本体部2の中心よりも裏蓋2a側)に設けてもよい。さらには、振動部16を、裏蓋2aの内壁面に直接接する位置、又は他の部材を間に挟んで裏蓋2aに接する位置に設けてもよい。これらの位置に振動部16を設けると、電子時計1がユーザに装着されているときの振動部16の振動に係る振動エネルギーが、ユーザの手首に伝搬しやすくなる。よって、電子時計1がユーザに装着されているときの電子時計1の振動強度及び加速度の変動幅Wが、電子時計1がユーザに装着されていないときの電子時計1の振動強度及び加速度の変動幅Wに対して大きく低減するようになる。よって、加速度の変動幅Wに基づく装着状態判定を、より精度よく行うことができる。
【0035】
ところで、電子時計1が緩んだ状態でユーザに装着されていると、脈波の検出精度、及び脈拍数の計測精度が低下するため、緩んだ状態で装着されていると判定された場合には、ユーザに通知を行って、正常な状態で装着すること(ベルト3を締めること)を促すことが好ましい。この点に鑑みて、本実施形態の電子時計1は、電子時計1の装着状態が緩んでいるか否かの判定を行うこともできるようになっている。
【0036】
図5は、電子時計1が、緩んだ状態でユーザの手首に装着されている場合に、振動部16及び電子時計1の振動時に検出される加速度を模式的に示した図である。
電子時計1が、正常な装着状態よりも緩んだ状態でユーザの手首に装着されている場合には、正常な装着状態で装着されている場合よりも、電子時計1の振動の強度が大きくなる。これは、緩んだ状態で電子時計1が装着されていると、振動部16の振動により生じた振動エネルギーが手首に伝わりにくく、電子時計1を振動させるのに用いられる振動エネルギーが大きくなるためである。このため、電子時計1が緩んだ状態で装着されている場合(図5)に検出される加速度の変動幅Wは、電子時計1が正常な装着状態で装着されている場合(図4)に検出される加速度の変動幅Wよりも大きくなる。
【0037】
本実施形態の電子時計1は、第1閾値T1よりも小さい第2閾値T2を用いて、電子時計1の装着状態が緩んでいるか否かの判定を行う。詳しくは、CPU10は、判定値としての変動幅Wが、第1閾値T1未満、かつ、第1閾値T1よりも小さい第2閾値T2以上である場合に、電子時計1が、正常な装着状態、又はユーザの身体に装着されていない状態のいずれでもなく、正常な装着状態よりも緩んだ状態でユーザに装着されていると判定する。図5に示す例では、変動幅Wが、第1閾値T1未満、かつ、第2閾値T2以上であるため、CPU10は、電子時計1が緩んだ状態でユーザに装着されていると判定する。一方、図4に示す例では、変動幅Wが第2閾値T2未満であるため、CPU10は、電子時計1が正常な装着状態でユーザに装着されていると判定する。
【0038】
なお、上記では、第2閾値T2を用いて、装着状態が緩んでいるか否かの2段階の判定を行う例を用いて説明したが、互いに値が異なる2以上の第2閾値T2を用いて、装着状態の緩み具合(ベルト3の締め具合)を3段階以上で判定してもよい。また、電子時計1が正常な装着状態で装着されているか否かを判定する場合は、第2閾値T2のみを用いて1段階で装着状態判定を行ってもよい。
【0039】
装着状態判定によって、電子時計1がユーザに装着されていないと判定された場合には、次に装着されているとの判定が行われるまで、装着状態判定のための振動部16の振動強度を弱めてもよい。すなわち、CPU10は、或る振動期間Pにおける判定値としての変動幅Wが第1閾値T1以上であった場合に、電子時計1がユーザに装着されていないと判定し、次回の振動制御における振動部16の振動強度を低減させてもよい。このような制御を行うためには、最後に行われた装着状態判定における判定結果をメモリ11の装着フラグ112に反映させておけばよい。装着フラグ112は、例えば、最後に行われた装着状態判定において電子時計1がユーザに装着されていると判定された場合には「オン(1)」とされ、電子時計1がユーザに装着されていないと判定された場合には「オフ(0)」とされる。そして、次回に行われる装着状態判定において、装着フラグ112が「オン」に設定されている場合には、振動部16の振動強度を通常の強度とし、装着フラグ112が「オフ」に設定されている場合には、振動部16の振動強度を通常よりも弱めればよい。
このように、非装着時の振動を弱めることで、電力消費を低減することができ、また、振動による動作音を低減することができる。
【0040】
装着状態判定のための振動部16の振動強度を低減させた後、かつ、当該振動強度を通常の強度に戻す前(すなわち、電子時計1がユーザに装着されていると次に判定されるまでの期間)に実行される装着状態判定においては、振動部16の振動強度の低減の度合いに応じて第1閾値T1が第1閾値Ta1に補正され、また第2閾値T2が第2閾値Ta2に補正され、これらの補正された第1閾値Ta1及び第2閾値Ta2に基づいて装着判定が行われる。補正後の第1閾値Ta1は、補正前の第1閾値T1よりも小さく、補正後の第2閾値Ta2は、補正前の第2閾値T2よりも小さい。補正後の第1閾値Ta1及び第2閾値Ta2は、予め定められてメモリ11に記憶させてもよい。
【0041】
図6は、補正された第1閾値Ta1及び第2閾値Ta2による装着状態判定を説明する図である。
図6には、振動部16の振動強度を低減させた状態、かつ、電子時計1がユーザに装着されていない状態において、振動期間Pにおいて検出された加速度が模式的に示されている。振動部16の振動強度が低減されていることで、図6における加速度の変動幅Wは、振動部16が通常の振動強度で振動している図3の変動幅Wよりも小さくなっている。この場合において、第1閾値T1よりも小さい第1閾値Ta1、及び第2閾値T2よりも小さい第2閾値Ta2を用いることで、振動強度の低減に応じた加速度の低減を加味して適切に装着状態を判定することができる。図6に示す例では、変動幅Wが第1閾値Ta1以上であるため、電子時計1がユーザに装着されていないと判定される。
振動部16の振動強度を低減させた状態において、検出された加速度の変動幅Wが第1閾値Ta1未満となった場合には、電子時計1がユーザに装着されていると判定され、以降の装着状態判定においては、第1閾値T1及び第2閾値T2が用いられる。
【0042】
<脈拍数計測処理及び装着状態判定処理>
次に、上記の装着状態判定、及び装着状態判定の結果に応じた脈拍数の計測を行うための、脈拍数計測処理及び装着状態判定処理について説明する。
図7は、脈拍数計測処理の制御手順を示すフローチャートである。
脈拍数計測処理は、電子時計1の電源が投入されて電子時計1が起動した場合に実行される。
【0043】
脈拍数計測処理が開始されると、CPU10は、ユーザによる脈拍数計測の指示がなされたか否かを判別する(ステップS101)。ここでは、CPU10は、脈拍数計測の機能が割り当てられた操作ボタン131を押下する操作がなされた場合に、脈拍数計測の指示がなされたと判別する。脈拍数計測の指示がなされていないと判別された場合には(ステップS101で“NO”)、CPU10は、再度ステップS101を実行する。脈拍数計測の指示がなされたと判別された場合には(ステップS101で“YES”)、CPU10は、装着状態判定処理を実行する(ステップS102)。
【0044】
図8は、装着状態判定処理の制御手順を示すフローチャートである。
装着状態判定処理が呼び出されると、CPU10は、装着フラグ112が「オン」に設定されているか否かを判別する(ステップS201)。なお、電子時計1の起動時には、装着フラグ112は「オン」及び「オフ」のいずれに設定されていてもよいが、非装着であった場合の初回の振動による動作音を低減したい場合には、「オフ」に設定しておくことが好ましい。
【0045】
装着フラグ112が「オン」に設定されていると判別された場合には(ステップS201で“YES”)、CPU10は、振動部16の振動強度を通常に設定し(ステップS202)、第1閾値をT1とし、第2閾値をT2とする(ステップS203)。
【0046】
一方、装着フラグ112が「オフ」に設定されていると判別された場合には(ステップS201で“NO”)、CPU10は、振動部16の振動強度を通常よりも弱い強度に設定し(ステップS204)、第1閾値をTa1とし、第2閾値をTa2とする(ステップS205)。
【0047】
ステップS203又はステップS205が終了すると、CPU10は、振動部16を振動させる振動制御を実行する(ステップS206)。また、CPU10は、3軸加速度センサ171による各軸方向の加速度の検出結果を取得する(ステップS207)。また、CPU10は、取得した加速度の3軸合成値の変動幅Wに対応する判定値を導出する(ステップS208)。上述のとおり、本実施形態では、変動幅Wそのものを判定値として用いる。なお、図8では省略しているが、CPU10は、振動部16の振動開始後、所定の振動期間Pが経過した場合に、振動部16の振動を停止させる振動停止処理を実行する。
【0048】
CPU10は、判定値としての変動幅Wが第1閾値(T1又はTa1)未満であるか否かを判別する(ステップS209)。変動幅Wが第1閾値(T1又はTa1)未満であると判別された場合には(ステップS209で“YES”)、CPU10は、電子時計1がユーザに装着されていると判定し、装着フラグ112を「オン」に設定する(ステップS210)。一方、変動幅Wが第1閾値(T1又はTa1)以上であると判別された場合には(ステップS209で“NO”)、CPU10は、電子時計1がユーザに装着されていないと判定し、装着フラグ112を「オフ」に設定する(ステップS211)。
ステップS210又はステップS211が終了すると、CPU10は、装着状態判定処理を終了させて、処理を図7の脈拍数計測処理に戻す。
なお、図8では、前回の装着状態判定処理における判定結果(装着フラグ112の内容)に応じて振動強度を調整する態様を例示したが、このような振動強度の調整が不要である場合には、ステップS201~S205を省略してもよい。
【0049】
図7の装着状態判定処理(ステップS102)が終了すると、CPU10は、装着フラグ112が「オン」であるか否か(すなわち、装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていると判定されたか否か)を判別する(ステップS103)。装着フラグ112が「オフ」である(すなわち、装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていないと判定された)と判別された場合には(ステップS103で“NO”)、CPU10は、発光部151の発光、及び脈拍数の計測を実行せずに、処理をステップS101に戻す。
【0050】
装着フラグ112が「オン」である(すなわち、装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていると判定された)と判別された場合には(ステップS103で“YES”)、CPU10は、装着状態判定処理のステップS208で導出された判定値としての変動幅Wが第2閾値(T2又はTa2)以上であるか否かを判別する(ステップS104)。変動幅Wが第2閾値(T2又はTa2)以上であると判別された場合には(ステップS104で“YES”)、CPU10は、電子時計1が、正常な装着状態よりも緩んだ状態で装着されていると判定し(ステップS105)、緩んだ状態で装着されていることをユーザに通知する(ステップS106)。この通知は、例えば表示部12に所定の通知内容を表示させることによって行われてもよいし、図示略の報音部による音の出力や、図示略の通知用発光部による発光などによって行われてもよい。
【0051】
ステップS106が終了すると、CPU10は、処理をステップS102に移行させる。以降、ステップS102~S106のループ処理が繰り返し実行され、ユーザが正常に電子時計1を装着し直した場合には、ステップS104において“NO”に分岐することとなる。
なお、装着状態の緩み具合を判定しない場合、すなわち、電子時計1がユーザに装着されているか否かの判定のみ行う場合には、ステップS104~S106を省略し、ステップS103で“YES”と判別された場合にステップS107を実行すればよい。
また、図7では、正常な装着状態となるまでステップS102~S106のループ処理を繰り返し実行しているが、緩んでいることの通知が1回で十分である場合には、ステップS102~S106を1回のみ行うこととしてもよい。この場合には、ステップS106が終了した場合にステップS107に移行させて脈拍数の計測を開始すればよい。
【0052】
ステップS104において、変動幅Wが第2閾値(T2又はTa2)未満であると判別された場合には(ステップS104で“NO”)、CPU10は、電子時計1が正常な装着状態で装着されていると判定し、発光部151を発光させて脈波検出部15による脈波の検出を開始させ、当該検出結果に基づく脈拍数の計測を開始する(ステップS107)。
【0053】
CPU10は、脈拍数の計測終了のタイミングであるか否かを判別する(ステップS108)。脈拍数の計測終了のタイミングであると判別された場合には(ステップS108で“YES”)、CPU10は、処理をステップS112に移行させて、脈波検出部15を消灯させ、脈拍数の計測を終了させる(ステップS112)。脈拍数の計測終了のタイミングではないと判別された場合には(ステップS108で“NO”)、CPU10は、装着状態の再判定を行うまでの所定の待機時間が経過したか否かを判別し(ステップS109)、所定の待機時間が経過していないと判別された場合には(ステップS109で“NO”)、処理をステップS108に戻す。所定の待機時間が経過したと判別された場合には(ステップS109で“YES”)、CPU10は、図8の装着状態判定処理を再度実行する(ステップS110)。
【0054】
CPU10は、装着フラグ112が「オン」であるか否か(すなわち、ステップS110の装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていると判定されたか否か)を判別する(ステップS111)。装着フラグ112が「オン」である(すなわち、ステップS110の装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていると判定された)と判別された場合には(ステップS111で“YES”)、CPU10は、脈拍数の計測を継続し、処理をステップS108に戻す。
【0055】
一方、ステップS111において、装着フラグ112が「オフ」である(すなわち、ステップS110の装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていないと判定された)と判別された場合には(ステップS111で“NO”)、脈波検出部15による脈波の検出を行うことができない状態であるため、CPU10は、脈波検出部15を消灯させ、脈拍数の計測を終了させる(ステップS112)。ステップS111で“NO”に分岐してステップS112を実行する処理は、「振動期間における判定値が第1閾値以上である場合に、自装置がユーザの身体に装着されていないと判定し、動作部の動作を停止させる処理」に相当する。
ステップS112が終了すると、CPU10は、脈拍数計測処理を終了させる。
【0056】
<他の動作と装着状態判定との組み合わせ>
上記では、脈拍数の計測に伴う装着状態判定を例に挙げて説明したが、装着状態判定は、電子時計1の他の動作と組み合わせて実行されてもよい。以下では、ユーザへの通知に係る動作と装着状態判定とを組み合わせる場合、及び、会計における決済に係る動作と装着状態判定とを組み合わせる場合について説明する。
【0057】
(通知に係る動作と装着状態判定との組み合わせ)
電子時計1では、メモリ11にインストールされている図示略のアプリケーションプログラムにおいて通知イベントが発生した場合や、アラーム機能におけるアラーム時刻となった場合等において、ユーザに対する通知が行われる。ユーザへの通知は、表示部12における表示、及び振動部16による振動によって行われる。この他にも、図示略の報音部による音の出力や、図示略の通知用発光部による発光等が組み合わされてもよい。
【0058】
通知イベントの発生時に、通知のために行われる振動部16の振動を、装着状態判定に利用することができる。すなわち、通知のために振動部16が振動する振動期間Pにおいて、電子時計1の加速度を検出し、加速度の変動幅Wと第1閾値T1及び第2閾値T2との大小関係に基づいて装着状態判定を行うことができる。これにより、装着状態判定のみを目的とする振動部16の振動の回数を低減させたり、当該振動を行わないようにしたりすることができる。よって、ユーザが感じる煩わしさを低減することができる。
【0059】
また、上記の装着状態判定によって、電子時計1がユーザに装着されていないと判定された場合に、振動部16による上記の振動を除いた、表示部12による表示等の通知に係る動作を停止させてもよい(言い換えると、当該動作を行わせないこととしてもよい)。また、以降の通知やアラームのための振動部16による振動、及び/又は、装着状態判定のための振動部16による振動の強度を小さくしてもよい(振動の強度を弱めてもよい)。このように、不要な通知に係る動作を停止したり、振動を小さくしたりすることで、電力消費を低減することができる。
【0060】
このような通知に同期した装着状態判定は、上述の脈拍数計測における装着状態判定に組み合わせてもよい。例えば、図7のステップS107において脈拍数の計測が開始された後、通知イベントが発生した場合には、当該通知イベントに応じた振動部16の振動を用いて装着状態判定を行い、当該装着状態判定において電子時計1がユーザに装着されていないと判定された場合に、ステップS112に移行させて脈拍数の計測を停止させてもよい。
【0061】
図9は、ユーザへの通知を行うための通知処理の制御手順を示すフローチャートである。
通知処理が開始されると、CPU10は、ユーザへの通知イベントが発生したか否かを判別する(ステップS301)。通知イベントが発生したと判別された場合には(ステップS301で“YES”)、CPU10は、図8の装着状態判定処理を実行する(ステップS302)。この装着状態判定処理のステップS206において実行される振動部16の振動は、通知イベントに応じて実行されるユーザへの通知の一部を構成する。すなわち、ユーザへの通知が、振動部16による振動を用いて行われる場合(本実施形態では、振動部16による振動及び、振動以外の通知動作(表示部12による表示等)の組み合わせで行われる場合)に、この振動を利用して装着状態判定を行う。残る振動以外の通知動作を行うか否かについては、以降のステップS303~S307の処理で決定される。
【0062】
CPU10は、装着フラグ112が「オン」であるか否か(すなわち、ステップS302の装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていると判定されたか否か)を判別する(ステップS303)。装着フラグ112が「オン」である(すなわち、装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていると判定された)と判別された場合には(ステップS303で“YES”)、CPU10は、表示部12による表示等の、通知に係る動作(振動以外の通知動作)を実行させる(ステップS304)。また、CPU10は、振動部16による振動の強度を低減する設定となっている場合には、次回の通知時の振動部16の振動強度が通常の強度となるように設定を変更する(ステップS305)。
【0063】
一方、装着フラグ112が「オフ」である(すなわち、装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていないと判定された)と判別された場合には(ステップS303で“NO”)、CPU10は、ステップS302(図8のステップS206)で行った振動部16による振動を除いた、通知に係る動作を停止させる(ステップS306)。ステップS303で“NO”に分岐してステップS306を実行する処理は、「振動期間における判定値が第1閾値以上である場合に、自装置がユーザの身体に装着されていないと判定し、動作部の動作を停止させる処理」に相当する。
また、CPU10は、次回の通知時の振動部16の振動強度を低減するように設定を変更する(ステップS307)。
【0064】
ステップS305又はステップS307が終了した場合、若しくは、ステップS301において通知イベントが発生していないと判別された場合には(ステップS301で“NO”)、CPU10は、通知処理を終了させる。
なお、図9では、電子時計1がユーザに装着されていないと判定された場合に次回の通知時の振動強度を低減する態様を例示したが、このような振動強度の調整が不要である場合には、ステップS305、S307を省略してもよい。
また、通知イベントが発生している場合に(ステップS301で“YES”)、装着状態判定処理のステップS206における振動部16の振動とともに、振動以外の通知動作も実行し、ステップS303で装着フラグが「オフ」であると判別された場合に、次回以降の通知イベント発生時における振動以外の通知動作を停止するように設定を変更してもよい。
【0065】
(決済に係る動作と装着状態判定との組み合わせ)
電子時計1に、会計における決済を行う決済機能が搭載されている場合において、セキュリティを強化するために装着状態判定を組み合わせてもよい。
例えば、ユーザに装着されている場合に限って決済機能を実行する、と設定されている電子時計1において、決済機能が呼び出された場合(例えば、決済のためにパスワードが入力された場合等)に上述の装着状態判定を行い、電子時計1がユーザに装着されていると判定された場合には、決済機能を実行し、電子時計1がユーザに装着されていないと判定された場合には、決済機能を実行しないようにしてもよい。
また、パスワードの入力を省略するために装着状態判定を用いてもよい。例えば、決済機能を呼び出す所定の操作(例えば、所定の操作ボタン131を押下する操作や、電子時計1を傾斜させる操作等)がなされた場合に、上述の装着状態判定を行い、電子時計1がユーザに装着されていると判定された場合には、パスワードの入力を求めずに決済機能を実行し、電子時計1がユーザに装着されていないと判定された場合には、パスワードの入力を求め、パスワードが入力された後に決済機能を実行するようにしてもよい。
【0066】
図10は、決済機能を実行するための決済処理の制御手順を示すフローチャートである。
決済処理が開始されると、CPU10は、決済機能の実行を要求するユーザ操作がなされたか否かを判別する(ステップS401)。決済機能の実行を要求するユーザ操作がなされたと判別された場合には(ステップS401で“YES”)、CPU10は、図8の装着状態判定処理を実行する(ステップS402)。
【0067】
CPU10は、装着フラグ112が「オン」であるか否か(すなわち、ステップS402の装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていると判定されたか否か)を判別する(ステップS403)。装着フラグ112が「オン」である(すなわち、装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていると判定された)と判別された場合には(ステップS403で“YES”)、CPU10は、決済機能を実行する(ステップS404)。例えば、CPU10は、図示略の近距離無線通信部により、予めメモリ11に記憶されている決済情報(クレジットカードの情報等)を、店舗の決済端末に対して送信させる。ステップS404が終了すると、CPU10は、決済処理を終了させる。
【0068】
一方、装着フラグ112が「オフ」である(すなわち、装着状態判定処理において、電子時計1が装着されていないと判定された)と判別された場合には(ステップS403で“NO”)、CPU10は、決済機能を実行させずに決済処理を終了させる。
また、ステップS401において、決済機能の実行を要求するユーザ操作がなされていないと判別された場合にも(ステップS401)、CPU10は、決済処理を終了させる。
【0069】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る電子機器としての電子時計1は、ユーザの身体に装着されて使用され、電子時計1を振動させる振動部16と、電子時計1の振動の強度に応じて変動する物理量を検出するセンサ部17と、検出された物理量に基づいて、ユーザの身体に対する電子時計1の装着状態を判定する処理部としてのCPU10と、を備える。
これにより、電子時計1において標準的に搭載されている振動部16及びセンサ部17(3軸加速度センサ171)を用いて装着状態判定を行うことができる。よって、電子時計1の構成の複雑化やコスト上昇を避けつつ、装着状態判定機能を実現できる。
また、ユーザの身体における反射光を検出する従来の方法では、受光部に向けて光を反射する物体があると誤検出が生じる問題があったのに対し、本実施形態の構成によれば、外部環境にほとんど影響されずに、より適切に装着状態判定を行うことができる。
また、ユーザの肌との接触部分に静電容量デバイスを設けて接触検出により装着判定を行う従来の方法では、センシング用のパッドや専用の制御部によって装置が複雑化する問題があり、また、肌との接触部が金属である電子機器には適用できない問題があった。これに対し、本実施形態の構成によれば、上記のとおり電子時計1の構成の複雑化やコスト上昇を避けることができ、また、肌との接触部の材質によらずに装着状態判定機能を実現できる。
【0070】
また、センサ部17は、電子時計1の振動の強度が増大するに従って大きくなる加速度の変動幅W(物理量)を検出し、CPU10は、振動部16を振動させ、振動部16が振動している振動期間Pにおいてセンサ部17により検出された加速度の変動幅Wに対応する判定値(上記実施形態では、変動幅W)に基づいて、装着状態を判定する。これにより、加速度の変動幅Wを検出する簡易な処理で装着状態判定を行うことができる。
【0071】
また、センサ部17は、電子時計1の加速度を検出する3軸加速度センサ171を有し、上記の物理量は、加速度の変動幅W、振幅、又は、極大値及び極小値の少なくとも一方の絶対値である。これにより、電子時計1において標準的に搭載されている3軸加速度センサ171を用いて装着状態判定を行うことができる。
【0072】
また、CPU10は、判定値としての変動幅Wが第1閾値T1未満である場合に、電子時計1がユーザの身体に装着されていると判定し、判定値が第1閾値T1以上である場合に、電子時計1がユーザの身体に装着されていないと判定する。これにより、加速度の変動幅Wと第1閾値T1とを比較する簡易な処理で装着状態判定を行うことができる。
【0073】
また、CPU10は、判定値が第2閾値T2未満である場合に、電子時計1が正常な装着状態であると判定する。これにより、加速度の変動幅Wと第2閾値T2とを比較する簡易な処理で、電子時計1が正常な装着状態で装着されているか否かを判定することができる。
【0074】
また、CPU10は、判定値としての変動幅Wが第1閾値T1未満、かつ、第1閾値T1よりも小さい第2閾値T2以上である場合に、電子時計1が、正常な装着状態、またはユーザの身体に装着されていない状態のいずれでもないと判定する。これにより、装着/非装着の判定に加えて、ユーザの身体への装着における緩みの有無等を判定することができる。よって、より詳細に装着状態に係る判定を行うことができる。
【0075】
また、電子時計1は、ユーザに対する通知を行う動作部としての表示部12、及びユーザの生体データの計測を行う動作部としての脈波検出部15を備え、CPU10は、振動期間Pにおける判定値としての変動幅Wが第1閾値T1以上である場合に、電子時計1がユーザの身体に装着されていないと判定し、動作部の動作を停止させる。これにより、動作部の不要な動作を停止して、電子時計1の電力消費を低減することができる。
【0076】
また、CPU10は、振動部16を振動させる振動制御と、振動部16の振動を停止させる振動停止制御とを実行し、或る振動期間Pにおける判定値が第1閾値T1以上である場合に、電子時計1がユーザの身体に装着されていないと判定し、次回の振動制御における振動部16の振動強度を低減させる。これにより、非装着時の振動を弱めることができるため、電力消費を低減することができる。また、非装着時における振動による動作音を低減することができる。
【0077】
また、CPU10は、振動部16の振動強度を低減させた後に実行する振動状態の判定において、振動部16の振動強度の低減の度合いに応じて補正された第1閾値Ta1に基づいて、電子時計1がユーザの身体に装着されているか否かを判定する。これにより、振動部16の振動強度を低減させた後も、加速度の変動幅Wに基づいて適切に装着状態判定を行うことができる。
【0078】
また、CPU10は、或る振動期間Pにおける判定値が第1閾値T1以上である場合に、電子時計1がユーザの身体に装着されていないと判定し、ユーザに対する通知における振動部16の振動強度を低減させる。これにより、非装着時において、通知のための振動を弱めることができるため、電力消費を低減することができる。また、非装着時における振動による動作音を低減することができる。
【0079】
また、CPU10は、振動部16を振動させることで、ユーザに対する通知を行い、通知のための振動部16の振動に応じてセンサ部17により検出された加速度の変動幅Wに基づいて、装着状態を判定する。これにより、装着状態判定のみを目的とする振動部16の振動の回数を低減させたり、当該振動を行わないようにしたりすることができる。よって、ユーザが感じる煩わしさを低減することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る電子時計1の制御方法は、ユーザの身体に装着されて使用される電子時計1を振動させる振動部16と、電子時計1の振動の強度に応じて変動する物理量を検出するセンサ部17と、を備えた電子時計1の制御方法であって、検出された物理量に基づいて、ユーザの身体に対する電子時計1の装着状態を判定する。これにより、電子時計1において標準的に搭載されている振動部16及びセンサ部17(3軸加速度センサ171)を用いて装着状態判定を行うことができる。よって、電子時計1の構成の複雑化やコスト上昇を避けつつ、装着状態判定機能を実現できる。
【0081】
また、本実施形態に係るプログラム111は、ユーザの身体に装着されて使用される電子時計1を振動させる振動部16と、電子時計1の振動の強度に応じて変動する物理量を検出するセンサ部17と、を備えた電子時計1に設けられたコンピュータとしてのCPU10に、検出された加速度に基づいて、ユーザの身体に対する電子時計1の装着状態を判定する処理を実行させる。これにより、電子時計1において標準的に搭載されている振動部16及びセンサ部17(3軸加速度センサ171)を用いて装着状態判定を行うことができる。よって、電子時計1の構成の複雑化やコスト上昇を避けつつ、装着状態判定機能を実現できる。
【0082】
<その他>
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る電子機器、電子機器の制御方法及びプログラムの一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、電子時計1の振動の強度に応じて変動する物理量として加速度を例示したが、これに限られない。
【0083】
また、電子時計1がユーザに装着されているときの振動部16の振動強度を、ユーザ操作により変更可能としてもよい。また、第1閾値T1、Ta1、及び第2閾値T2、Ta2を、ユーザ操作により変更可能としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、脈拍数の計測、通知、及び決済の各動作に装着状態判定を組み合わせる場合を例示したが、装着状態判定の目的及び実行タイミングは上記実施形態に例示したものに限られない。例えば、定期的に装着状態判定を行って、判定結果に基づいて電子時計1の連続装着時間を計測してもよい。
【0085】
また、以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてメモリ11を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、CD-ROM等の情報記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【0086】
また、上記実施形態における電子時計1の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【0087】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0088】
1 電子時計(電子機器)
2 本体部
3 ベルト
10 CPU(処理部、コンピュータ)
11 メモリ
111 プログラム
112 装着フラグ
12 表示部(動作部)
13 操作受付部
131 操作ボタン
14 計時部
15 脈波検出部(動作部)
151 発光部
152 受光部
16 振動部
17 センサ部(検出部)
171 3軸加速度センサ(加速度センサ)
172 3軸ジャイロセンサ
173 3軸地磁気センサ
P 振動期間
T1、Ta1 第1閾値
T2、Ta2 第2閾値
W 変動幅(判定値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10