(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041116
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】食品位置推定装置及び食品位置推定方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20240319BHJP
F25D 23/00 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
B65G1/137 B
F25D23/00 301L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145761
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】栗山 哲
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】京谷 浩平
(72)【発明者】
【氏名】網野 梓
【テーマコード(参考)】
3F522
3L345
【Fターム(参考)】
3F522BB16
3F522CC09
3F522DD24
3F522DD32
3F522DD33
3F522FF30
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3L345AA02
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3L345HH13
3L345HH34
3L345HH38
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3L345JJ05
3L345JJ12
3L345JJ17
3L345JJ18
3L345JJ23
3L345KK01
3L345KK02
3L345KK03
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】食品に付されたセンサが温度、湿度等の環境値を検知することによって、簡便にかつ充分な精度で食品の庫内における位置を知る。
【解決手段】本発明の食品位置推定装置は、食品に付された第1の環境センサが取得した環境値に基づき、前記食品が置かれる庫内において前記食品が実際に置かれている位置を推定する位置推定部を備えること、を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品に付された第1の環境センサが取得した環境値に基づき、前記食品が置かれる庫内において前記食品が実際に置かれている位置を推定する位置推定部を備えること、
を特徴とする食品位置推定装置。
【請求項2】
前記食品が置かれ得る前記庫内の位置に固定された第2の環境センサが取得した環境値が複数の前記第2の環境センサごとに記憶される環境情報を格納する記憶部を備え、
前記位置推定部は、
前記第1の環境センサが取得した環境値を、前記第2の環境センサのそれぞれが取得した環境値と比較すること、
を特徴とする請求項1に記載の食品位置推定装置。
【請求項3】
前記推定した位置を任意の装置に表示する入出力処理部を備えること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の食品位置推定装置。
【請求項4】
前記位置推定部は、
特定の前記食品に付された前記第1の環境センサを発報させる旨の発報要求を受信した場合、当該第1の環境センサに光又は音声を出力させること、
を特徴とする請求項3に記載の食品位置推定装置。
【請求項5】
前記第1の環境センサは、
任意の位置に固定されたアンテナを備える通信回路を介して前記位置推定部と通信し、
前記位置推定部は、
前記第1の環境センサが環境値を取得した後、又は、前記第1の環境センサが環境値を取得することなく所定の時間が経過した後、前記通信回路の電源をオフにし、又は、前記第1の環境センサの通信手段の電源を待機状態にすること、
を特徴とする請求項4に記載の食品位置推定装置。
【請求項6】
前記アンテナは、
少なくとも3個存在し、
前記位置推定部は、
前記アンテナと前記第1の環境センサとの距離に基づき、前記食品が実際に置かれている位置を推定すること、
を特徴とする請求項5に記載の食品位置推定装置。
【請求項7】
前記位置推定部は、
加熱調理器に固定されている前記アンテナが、前記第1の環境センサが前記加熱調理器内にあること又は前記加熱調理器の位置を基準として所定の距離内にあること、を検知した場合、前記加熱調理器の運転を停止すること、
を特徴とする請求項6に記載の食品位置推定装置。
【請求項8】
前記第1の環境センサ及び前記食品が置かれ得る前記庫内の位置に固定された第2の環境センサは、
前記食品が置かれ得る位置において、給電され得ること、
を特徴とする請求項7に記載の食品位置推定装置。
【請求項9】
前記第1の環境センサは、
前記食品の重量を計測し得ること、
を特徴とする請求項8に記載の食品位置推定装置。
【請求項10】
前記位置推定部は、
前記食品が置かれ得る位置に扉がある場合、前記扉の開又は閉の少なくとも一方を検知したときに前記第1の環境センサから環境値を取得すること、
を特徴とする請求項1に記載の食品位置推定装置。
【請求項11】
前記位置推定部は、
前記第2の環境センサが取得した環境値が所定の閾値以上に変化したときに前記第1の環境センサから環境値を取得すること、
を特徴とする請求項2に記載の食品位置推定装置。
【請求項12】
前記位置推定部は、
前記食品が冷蔵庫に保管されている場合、前記冷蔵庫の圧縮機が停止した後所定の時間が経過したときに前記第1の環境センサから環境値を取得すること、
を特徴とする請求項1に記載の食品位置推定装置。
【請求項13】
前記食品が置かれ得る前記庫内の環境設定値が記憶される環境情報を格納する記憶部を備え、
前記位置推定部は、
前記第1の環境センサが取得した環境値を、前記環境設定値と比較すること、
を特徴とする請求項1に記載の食品位置推定装置。
【請求項14】
食品位置推定装置の位置推定部は、
食品に付された第1の環境センサが取得した環境値に基づき、前記食品が置かれる庫内において前記食品が実際に置かれている位置を推定すること、
を特徴とする食品位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品位置推定装置及び食品位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、冷蔵庫内における食品保管位置の温度、湿度等を、冷蔵庫の扉を開けることなく外部から自動的に検知し、冷蔵庫内の温度、湿度等の制御を行うことが一般的である。特許文献1の保存庫は、食品近辺の温度、湿度等を無線センサ及び無線アンテナで検知する。当該保存庫は、従来式の有線センサを使用する場合に比して、より食品に近い位置の温度、湿度等をより正確に検知することができ、制御の質を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、冷蔵庫内の温度は、冷凍室、冷蔵室等の位置(保管場所)ごとに異なる。より広範囲を見ると、キッチン内の温度も、冷蔵庫、床下収納庫、調理台、パントリ等の位置ごとに異なる。食品を新鮮な状態に保ち、おいしく食するためには、食品がどのような位置に置かれているか(いたか)を知ることが重要である。
【0005】
特許文献1の保存庫は、保存庫内のユーザが指定した位置に食品が長時間静止していることを前提として、その食品に適した温度制御等を行う。しかしながら、例えば、レストラン等で大量に作り置きされた同種の食品を複数の調理者が少しずつ消費するような場合、その容器の現在位置が不明となることが多い。このような容器は、冷蔵庫、床下収納庫、調理台、パントリ等、キッチン内の様々な位置を移動し、さらに、同じ冷蔵庫内であっても、冷蔵室、冷凍室等の様々な位置を移動する。一般に、ビーコン、GPS(Global Positioning System)等、センサの位置を検知する技術は多く存在する。しかしながら、冷蔵庫内又はキッチンのような狭い場所においては、このような技術は、高い精度で位置を検出することはできない。
【0006】
そこで本発明は、食品に付されたセンサが温度、湿度等の環境値を検知することによって、簡便にかつ充分な精度で食品の庫内における位置を知ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の食品位置推定装置は、食品に付された第1の環境センサが取得した環境値に基づき、前記食品が置かれる庫内において前記食品が実際に置かれている位置を推定する位置推定部を備えること、を特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食品に付されたセンサが温度、湿度等の環境値を検知することによって、簡便にかつ充分な精度で食品の位置を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】食品位置推定装置の構成等を説明する図である。
【
図3】食品位置推定装置の構成等を説明する図である。
【
図8】食品位置推定処理手順のフローチャートである。
【
図9】アンテナ電源制御処理手順のフローチャートである。
【
図10】環境センサ電源・発報制御処理手順のフローチャートである。
【
図11】電波の反射時間に基づく位置推定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、キッチン内において、食品の状況に応じて、食品を保管する位置が変化する例である。しかしながら、本発明は、生産現場等、キッチン以外の空間において、食品以外の物品を使い回し、保管し、又は、保管以外を目的に一時的に配置する例にも一般的に適用可能である。なお、“庫内”とは、食品が置かれ得る限定された空間を意味する。例えば、冷蔵庫、冷凍庫、温蔵庫、加熱調理器等の家電機器内及び保管庫内は「庫内」であり、キッチン内も広義の「庫内」である。
【0011】
(食品位置推定装置)
図1は、食品位置推定装置1の構成等を説明する図である。食品位置推定装置1は、一般的なコンピュータ(サーバ、PC、携帯端末装置等)である。食品位置推定装置1は、中央制御装置11、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を備える。これらは、バスで相互に接続されている。
【0012】
補助記憶装置15は、配置情報31、環境情報32及び追跡情報33(詳細後記)を格納している。主記憶装置14における入出力処理部21及び位置推定部22は、プログラムである。中央制御装置11は、これらのプログラムを補助記憶装置15から読み出して主記憶装置14にロードすることによって、それぞれのプログラムの機能(詳細後記)を実現する。補助記憶装置15が食品位置推定装置1から独立した構成であってもよい。
【0013】
キッチン3には、保管庫4が存在する。ここでの保管庫4は、例えば、冷蔵庫、食品庫、食品棚等である。説明の便宜上、保管庫4が冷蔵庫であるとすると、冷蔵庫4は、食品が保管され得る位置として、冷蔵室8a、冷凍室8b及び野菜室8cを有する。調理者は、食品をキッチン3に持ち込み、適当な大きさ及び材質の容器51に食品を格納する。ここでの食品とは、未加工、加工済又は調理済の食材であって、多くの場合1回で全量を使い切れないため、容器51に格納したうえで、その環境を管理することが望ましいものである。
【0014】
調理者は、容器51を必要に応じて、冷蔵室8a、冷凍室8b又は野菜室8cのいずれかに保管する。調理者は、冷蔵室8a、冷凍室8b及び野菜室8cの間で容器51を移動させることもある。容器51の例としては、缶、瓶、ビニール袋、タッパウエア、紙製箱、チューブ、包装紙(フィルム)、トレイ(皿)等が挙げられる。容器51には、第1の環境センサ52が付されている。例外的に、食品が容器に格納されることなく、そのままの状態で保管庫4に保管される場合もある。この場合、第1の環境センサ52は、食品に直接付される。
【0015】
冷蔵室8a、冷凍室8b又は野菜室8cのそれぞれの任意の位置に、アンテナ6aを備える通信回路6が設置されている。第1の環境センサ52は、温度、湿度、照度、圧力等の環境値を計測し得るセンサ機構、及び、計測した環境値をアンテナ6aに送信し得る通信手段を有する。アンテナ6aと第1の環境センサ52との間の通信方式は、任意である。当該方式は、例えば、両者が電源を有し、自ら生成した電波を送信しあう方式(Bluetooth(登録商標))であってもよいし、第1の環境アンテナの通信手段が電源を有さず、アンテナ6aが生成した電波を反射する方式(Radio Frequency Identifier)であってもよい。換言すれば、当該方式は、電源を有するアクティブ方式であってもよいし、電源を有さないパッシブ方式であってもよい。以降、容器51に格納された食品を単に食品51とも表現する。調理者は、端末装置7を使用する。端末装置7は、携帯式又は据置式のコンピュータであり、有線又は無線のネットワーク2を介して食品位置推定装置1と接続されている。
【0016】
(アンテナの位置)
図2は、アンテナ6aの位置等を説明する図である。保管庫(冷蔵庫)4の冷蔵室8aに食品51が保管されている。食品51に付された第1の環境センサ52は、冷蔵室8aの天井に配置されたアンテナ6aと通信可能である。冷蔵室8aの底面等には、第2の環境センサ53が固定されている。第2の環境センサ53の構造は、第1の環境センサ52に準ずる。第2の環境センサ53もまた、アンテナ6aと通信可能である。第1の環境センサ52が食品51とともに移動し、時々刻々と変化する食品51の周辺の環境値を計測するのに対し、第2の環境センサ53は、通常変化の少ない冷蔵室8a内の環境値を継続的に計測する。
第2の環境センサ53として、冷蔵室8aに設けた庫内の温度制御に用いる温度センサを用いてもよい。この場合、無線通信ではなく、有線でデータを伝送すればよい。
【0017】
図2は、冷蔵庫4のうち、冷蔵室8aを代表的に説明している。冷凍室8b及び野菜室8cにおけるアンテナ6a及び第2の環境センサ53の配置は、冷蔵室8aと同様である。より一般的には、3個のアンテナ6aのそれぞれが、冷蔵室8a、冷凍室8b及び野菜室8cに配置されている必要はなく、例えば、冷蔵室8a、冷凍室8b及び野菜室8cをカバーする任意の位置に、1又は複数のアンテナ6aが配置されていてもよい。
Bluetooth(登録商標)の場合、冷蔵庫4の各貯蔵室内にアンテナ6aを設ける必要はなく、冷蔵庫4内の天井又は冷蔵庫4外である冷蔵庫4の天面にアンテナ6aを設けることで、冷蔵庫4内の各貯蔵室とキッチン3内の電波を受信可能である。また、アンテナ6aを冷蔵庫4の天面に設けるほうが、冷蔵庫4内に設ける場合に比して、第1の環境センサ52が冷蔵庫4外に置かれている際により遠い位置から電波を受信することができる。
なお、第2の環境センサ53の“固定”他、本実施形態での“固定”について、位置が大きくずれることがないような固定であれば、固定の方法(ネジ、溶接、接着、テープ止め、嵌合、係合、吸引、吸着、挟持、磁力、錘(自重)、摩擦当)は限定されない。
【0018】
図3もまた、食品位置推定装置1の構成等を説明する図である。
図3が
図1と異なる点は、キッチン3における保管庫4(4a~4d)の種類及び配置である。キッチン3には、複数の保管庫4が独立した構成として存在する。ここでの保管庫4は、例えば、食品が置かれ得る位置としての、冷蔵庫4a、床下収納庫4b、パントリ4c及び調理台4dである。調理者は、キッチン3において、食品51をこれらの間で様々に移動させる。保管庫4(4a~4d)は、通常時には密閉された空間であることが多い。しかしながら、開放された空間の環境値を管理したい場合もある。調理台4dは、その代表である。なお、“食品が置かれ得る位置”は、保管以外を目的として食品が置かれ得る位置を含む。
【0019】
例えば、レストランのキッチン3で複数の調理者が調理をしている様子を観察すると、ある食品51(例えば、容器に格納された調味料)が以下のように移動するのがわかる。
・調理者Aは、ある食品51を床下収納庫4bから取り出した後、冷蔵庫4aに入れる。
・調理者Bは、その食品51を冷蔵庫4aから取り出した後、パントリ4cに置く。
・調理者Bは、その食品51をパントリ4cから冷蔵庫4aに戻す。
・調理者Cは、その食品51を冷蔵庫4aから取り出した後、調理台4dに置く。
・調理者Dは、その食品51を調理台4dから冷蔵庫4aに戻す。
【0020】
このように、調味料、基礎的な具材等は、多くの献立に使用され、各調理者と各保管庫4の間を頻繁に行き来する。
図1及び
図3において、食品位置推定装置1は、保管庫4とは別の構成として表現されている。しかしながら、ある保管庫4の筐体が、食品位置推定装置1を含んでいてもよい。
【0021】
(配置情報)
図4は、配置情報31の一例である。配置情報31においては、センサID欄101に記憶されているセンサIDに関連付けて、食品情報欄102にはメーカ名及びアイテム名が、位置情報欄103には大区分及び小区分が記憶されている。
センサID欄101のセンサIDは、第1の環境センサ52及び第2の環境センサ53を一意に特定する識別子である。“A”で始まるセンサIDは、第1の環境センサ52を特定する。“B”で始まるセンサIDは、第2の環境センサ53を特定する。
【0022】
食品情報欄102のメーカ名は、食品のメーカ名である。食品情報欄102のアイテム名は、食品51の名称(普通名詞)である。メーカ名及びアイテム名は、食品51に生産者等が添付したバーコード又は2次元コードに記憶されている場合もある。センサIDが“B”で始まる場合、食品情報欄102は、空欄である。
位置情報103の大区分は、前記した保管庫4の名称(普通名詞)である。同じキッチン3に同一の名称を有する保管庫4が複数ある場合、“冷蔵庫1”、“冷蔵庫2”、・・・のように番号で区別する。位置情報104の小区分は、特定の保管庫の内部領域の名称である。ここでは、大区分“冷蔵庫”に対し、小区分“冷蔵室”及び“冷凍室”が記憶されている。センサIDが“A”で始まる場合、位置情報欄103は、空欄である。
【0023】
(環境情報)
図5は、環境情報32の一例である。環境情報32においては、センサID欄111に記憶されているセンサIDに関連付けて、時刻欄112には時刻が、食品情報欄113にはメーカ名及びアイテム名位置情報欄114には大区分及び小区分が、環境値欄115には環境値ベクトルが記憶されている。
【0024】
センサID欄111のセンサIDは、
図4のセンサIDと同じである。
時刻欄112の時刻112は、第1の環境センサ52及び第2の環境センサ53が環境値ベクトル(直ちに後記)を取得した時刻の時分秒である。
食品情報欄113のメーカ名及びアイテム名は、
図4のメーカ名及びアイテム名と同じである。
位置情報欄114の大区分及び小区分は、
図4の大区分及び小区分と同じである。
環境値欄115の環境値ベクトルは、第1の環境センサ52及び第2の環境センサ53が取得した環境値(物理量)を要素として有するスカラー又はベクトルである。ここでの環境値は、温度、湿度、照度、温度変化及び気流速度である。温度変化は、当該時刻の温度からその直前の時刻の温度を減算した差分である。環境値ベクトルは、それ以外の環境値(例えば、気圧、特定の化学的成分の分圧等)を要素として含んでいてもよい。“#”は、異なる値を省略的に表している。
【0025】
環境情報32のうちセンサIDが“A”で始まるレコードは、特定の食品の周辺の環境値が、時系列で変化していくことを示している。但し、このレコードは、その食品の位置を示すことはできない。環境情報32のうちセンサIDが“B”で始まるレコードは、キッチン3内特定の位置(固定位置)の環境値が、時系列で変化していくことを示している。但し、このレコードは、その位置に存在する食品を示すことはできない。
【0026】
(第2の環境センサ53の必要性)
前記では、第2の環境センサ53の周辺の環境値が時々刻々と変化し、第2の環境センサ53が環境値を周期的に取得することが前提となっている。しかしながら、温度等が所定の値に管理されている結果、食品が保管され得る各位置の環境値が安定している場合もある。
【0027】
この場合、第2の環境センサ53は不要であり、“B”で始まるセンサIDは、単に位置を特定することになる。さらに、環境値(
図5の欄115)は、第2の環境センサ53が取得(計測)したものではなく、所定の環境設定値となる。
第2の環境センサ53の代わりに、例えば、冷蔵室8a、冷凍室8b又は野菜室8cに設けた温度センサを利用してもよい。また、冷蔵庫4の各貯蔵庫の設定温度を利用してもよい。例えば、冷蔵室8a及び野菜室8cの設定温度は、2~10℃であり、冷蔵室8a内のチルドや氷温室の設定温度は、-3~1℃であり、冷凍室8bの設定温度は、-20~-15℃であり、これらの設定温度が位置情報に関連付けられてもよい。また、冷暗所の設定温度は、15~25℃であってもよい。
【0028】
(追跡情報)
図6は、追跡情報33の一例である。追跡情報33においては、センサID欄121に記憶されているセンサIDに関連付けて、時刻欄122には時刻が、食品情報欄123にはメーカ名及びアイテム名が、推定位置情報欄124には大区分及び小区分が、環境値適合度欄125には環境値適合度が記憶されている。
【0029】
センサID欄121のセンサIDは、
図4のセンサIDと同じである。
時刻欄122の時刻は、
図5の時刻と同じである。
食品情報欄123のメーカ名及びアイテム名は、
図4のメーカ名及びアイテム名と同じである。
推定位置情報欄124の大区分及び小区分は、
図4の位置情報欄103の大区分及び小区分と同じである。
【0030】
環境値適合度欄125の環境値適合度は、ある時刻においてある第1の環境センサ52が取得した環境値ベクトルが、当該時刻においてある第2の環境センサ53が取得した環境値ベクトルに類似する度合いである。環境値適合度は、同じ時刻において、第1の環境センサと第2の環境センサの組合せに対して定義される数値であり、例えば0.0~1.0の範囲に正規化される。その数値が大きいほど、2つの環境値ベクトルは類似している。食品位置推定装置1は、例えば第1の環境センサ52が取得した環境値ベクトルと、第2の環境センサ53が取得した環境値ベクトルとの余弦類似度に基づき、環境値適合度を算出してもよい。
【0031】
(環境値適合度の算出)
いま、
図5の環境情報32が、
図5の通りの完成状態で存在し、時刻“10:00:00”において“A社生麺”が存在する場所(位置)が不明であるとする。
(1)食品位置推定装置1は、レコード116の環境値ベクトルを取得する。
(2)食品位置推定装置1は、レコード117の環境値ベクトルを取得する。
(3)食品位置推定装置1は、レコード116の環境値ベクトルとレコード117の環境値ベクトルとの間の環境値適合度を算出する。
【0032】
(4)食品位置推定装置1は、同様にして、レコード116の環境値ベクトルとレコード118の環境値ベクトルとの間の環境値適合度、・・・を算出する。つまり、食品位置推定装置1は、第1の環境センサ52が取得した環境値を、第2のセンサ53のそれぞれが取得した環境値と比較する。結局、食品位置推定装置1は、第2の環境センサ53の数に等しい環境値適合度を算出することになる。
(5)食品位置推定装置1は、他の時刻についても同様の処理を繰り返す。
(6)食品位置推定装置1は、メーカ名、アイテム名及び時刻の組合せに対して、環境値適合度及びその環境値適合度を算出するもとになった第2の環境センサ53に対応する大区分及び小区分を、環境値適合度が大きい順に関連付ける(例えば、
図6のレコード126a~126c参照)。食品位置推定装置1は、環境値適合度が所定の閾値に満たない場合、その環境値適合度を有するレコードを作成しない。結局、食品位置推定装置1は、環境適合度が所定の閾値以上に高くなる位置が、食品51が保管されている位置であると推定することになる。
【0033】
図6を見ると、以下のことがわかる。
・“A社生麺”は、“10:00:00”から“10:04:00”までの間に、パントリ、調理台、床下収納庫の順に移動した可能性が高い。残量が少なくなったので容器ごと捨てる準備がなされたかもしれない。第1の環境センサ52が電源を有し、自ら生成した電波を送信する方式(例えば、Bluetooth(登録商標))である場合、第1の環境センサ52を取り付けた食品を使い終わる又は廃棄する際、食品位置推定装置1は、第1の環境センサ52の電源をオフにして、消費完了/廃棄を端末装置7に通知すればよい。また、食品位置推定装置1は、電波送信方式に関わらず、位置検知が不能である時間が設定値/閾値を超えた場合、消費完了/廃棄を端末装置7に通知してもよい。
・“A社生麺”は、“10:00:00”から“10:04:00”までの間に、継続的にパントリに保管されていた可能性もある。パントリ内に複数の食品が同時に保管されて長時間が経過していれば、ある食品に他の食品の風味が乗り移っているかもしれない。
【0034】
(追跡情報(在庫情報))
図7は、在庫情報33の一例である。在庫情報33は、追跡情報33(
図6)のレコードを時刻ごとに並びかえたものである。両者は本質的に同じものであるので、同一の符号が付与されている。
【0035】
図7を見ると、以下のことがわかる。
・“10:00:00”において、“A社生麺”は、パントリ内に保管されている可能性が高い。“B社メンマ”は、“冷蔵庫冷凍室”に保管されている可能性が高い。
・“10:00:00”において、“B社メンマ”は、“食卓”に存在している可能性がある。調理者は、レストラン顧客のトッピング要求に応じたのかもしれない。
【0036】
(処理手順)
図8は、食品位置推定処理手順のフローチャートである。
ステップS201において、食品位置推定装置1の入出力処理部21は、端末装置7から食品情報等を受信する。調理者は、食品(容器)51に第1の環境センサ52を付し、端末装置7を介して第1の環境センサ52及びメーカが食品51に付したコードを読み取る。第1の環境センサ52は、センサIDを記憶している。食品51に付されたコード(例えば、JANコード)は、その食品51のメーカ名及びアイテム名を記憶しており、さらに、賞味期限又は消費期限を記憶していてもよい。端末装置7は、読み取ったセンサID、メーカ名及びアイテム名等を入出力処理部21に送信する。入出力処理部21は、端末装置7からこれらを受信する。
【0037】
ステップS202において、入出力処理部21は、端末装置7から位置情報等を受信する。調理者は、保管庫4内又は保管庫4内の特定の位置に第2の環境センサ53を付し、端末装置7を介して第2の環境センサ53を読み取り、保管庫4の外観又は保管庫4内の特定の位置の画像を取得する。第2の環境センサ53は、センサIDを記憶しているものとする。端末装置7は、読み取ったセンサID及び取得した画像を入出力処理部21に送信する。入出力処理部21は、端末装置7からこれらを受信する。
【0038】
ステップS203において、食品位置推定装置1の位置推定部22は、配置情報31(
図4)を作成する。具体的には、位置推定部22は、ステップS201及びS202において受信した情報に基づき、配置情報31を作成する。
【0039】
ステップS204において、位置推定部22は、第1の環境センサ52及び第2の環境センサ53から環境値等を受信する。具体的には、位置推定部22は、所定の周期で、第1の環境センサ52からセンサID及び環境値(環境値ベクトル)を受信する。また、位置推定部22は、所定の周期で、第2の環境センサ53からセンサID及び環境値(環境値ベクトル)を受信する。
第2の環境センサ53が不要である場合、位置推定部22は、第1の環境センサ52から環境値等を受信し、食品が保管され得る位置ごとにユーザが所定の環境設定値を入力するのを受け付ける。
【0040】
ステップS205において、位置推定部22は、環境情報32(
図5)を作成する。具体的には、位置推定部22は、ステップS204において受信した情報に基づき、環境情報32を作成する。
【0041】
ステップS206において、位置推定部22は、環境値を比較する。具体的には、位置推定部22は、ステップS205において作成した環境情報32に基づき、前記した方法で、環境値適合度を算出する。
【0042】
ステップS207において、位置推定部22は、追跡情報33(
図6)を作成する。具体的には、第1に、位置推定部22は、ステップS206において算出した環境値適合度が所定の閾値を超える食品情報及び位置情報の組合せを時刻ごとに取得する。
第2に、位置推定部22は、ステップS207の“第1”において取得した組合せに基づき、追跡情報33を作成する。
第3に、位置推定部22は、ユーザ(調理者又は管理者)の要求に応じて、追跡情報33(
図6)のレコードを並び替えることによって在庫情報33を作成する。
【0043】
ステップS208において、食品位置推定装置1の入出力処理部21は、追跡情報33を表示する。具体的には、入出力処理部21は、端末装置7及び出力装置13を含む任意の装置にステップS207において作成した追跡情報33又は在庫情報33を表示する。その後、処理手順を終了する。
【0044】
(アンテナ電源の制御)
図9は、アンテナ電源制御処理手順のフローチャートである。アンテナ電源制御処理手順は、アンテナ6a(通信回路6)が消費する電力を節約するためのものである。
【0045】
ステップS301において、食品位置推定装置1の位置推定部22は、アンテナ6aの電源(より正確には、アンテナ6aの通信回路6の電源、以下同様)をオンにする。具体的には、位置推定部22は、アンテナ6aに対し、その電源をオンにする指示を送信する。なお、当該指示を受信した後、アンテナ6aは、第1の環境センサ52及び第2の環境センサ53から情報を取得することができるようになり、位置推定部22は、アンテナ6aからその情報を受信できるようになる。
【0046】
ステップS302において、位置推定部22は、第1の環境センサ52から環境値を受信したか否かを判断する。具体的には、位置推定部22は、第1の環境センサ52からアンテナ6a経由でセンサID及び環境値(環境値ベクトル)を受信した場合(ステップS302“Yes”)、ステップS304に進み、それ以外の場合(ステップS302“No”)、ステップS303に進む。
【0047】
ステップS303において、位置推定部22は、設定時間が経過したか否かを判断する。具体的には、位置推定部22は、アンテナ6aの電源がオンになった時点に起動したタイマが所定の設定時間に達した場合(ステップS303“Yes”)、ステップS304に進み、それ以外の場合(ステップS303“No”)、ステップS302に戻る。
【0048】
ステップS304において、位置推定部22は、アンテナ6aの電源をオフにする。具体的には、入出力処理部21は、アンテナ6aに対し、その通信回路6の電源をオフにする指示を送信する。このとき、位置推定部22は、第1の環境センサ52に対し、その通信手段の電源を待機状態にする指示を送信してもよい。
【0049】
位置推定部22は、ステップS301~S304の処理を所定の周期で繰り返し実行する。その後、位置推定部22及び入出力処理部21は、ステップS205~S208の処理を実行し、処理手順を終了する。
【0050】
(環境センサ電源及び発報の制御)
図10は、環境センサ電源・発報制御処理手順のフローチャートである。環境センサ電源・発報制御処理手順は、第1の環境センサ52の通信手段以外の部分が消費する電力を節約し、調理者に対し食品51が保管されている場所を知らせるためのものである。
【0051】
ステップS401において、ユーザは、第1の環境センサ52を取り付けて在庫管理を開始する際、第1の環境センサの電源をオンにする。第1の環境センサ52が消費電力を抑えるための待機状態である場合、位置推定部22は、すべての第1の環境センサ52に対し、待機状態から復帰する指示を送信する。なお、当該指示を受信した後、第1の環境センサ52は、アンテナ6aに情報を送信することができるようになり、位置推定部22は、アンテナ6aからその情報を受信できるようになる。ここで、待機状態とは、第1の環境センサ52の消費電力を抑えるため、通信手段以外の構成(温度センサ、湿度センサ、加速度センサ(変位や動く方向)、その他の搭載センサ、それらのセンサを制御する回路基板等を含む)の全部又は一部への電力を抑制することを意味する。
【0052】
ステップS402において、位置推定部22は、第1の環境センサ52から環境値を受信する。具体的には、位置推定部22は、すべての第1の環境センサ52からアンテナ6a経由でセンサID及び環境値(環境値ベクトル)を受信する。
【0053】
ステップS403において、位置推定部22は、設定時間が経過したか否かを判断する。具体的には、位置推定部22は、第1の環境センサ52の通信手段の電源がオンになった時点に起動したタイマが所定の設定時間に達した場合(ステップS403“Yes”)、ステップS406に進み、それ以外の場合(ステップS403“No”)、ステップS404に進む。
【0054】
ステップS404において、位置推定部22は、発報要求を受信したか否かを判断する。例えば、調理者は、ある特定の食品51の保管場所が不明である場合、端末装置7に対して“その食品の保管場所を知らせて欲しい”旨の発報要求を入力する。すると、端末装置7は、発報要求を位置推定部22に送信する。発報要求は、当該特定の食品51に付された第1の環境センサ52を特定するセンサID(例えば、A01)を含む。位置推定部22は、端末装置7から発報要求を受信した場合(ステップS404“Yes”)、ステップS405に進み、それ以外の場合(ステップS404“No”)、ステップS403に戻る。
【0055】
ステップS405において、位置推定部22は、第1の環境センサ52に発報させ、1の環境センサ52から環境値を受信する。具体的には、第1に、位置推定部22は、センサ指定発報要求を作成する。センサ指定発報要求とは、例えば“センサIDがA01である環境センサは、直ちに発報せよ”という指示である。発報とは、例えば、第1の環境センサ52が現在位置において光又は音声を出力することである。
第2に、位置推定部22は、センサ指定発報要求をすべての第1の環境センサ52に送信する。すると、センサIDが“A01”である第1の環境センサ52は、発報する。他の第1の環境センサは、反応しない。このとき発報する環境センサ52は、“発報センサ”とも呼ばれる
第3に、位置推定部22は、発報センサから環境値を受信する。その後、位置推定部22は、ステップS407に進む。
【0056】
調理者は、発報センサの近辺にいる場合、その発報に容易に気付く。しかしながら、そうでない場合、その食品を捜している調理者に発報が伝わらないだけでなく、発報が他の調理者の集中力を奪うことになる。そこで、位置推定部22は、各調理者が操作する端末装置7に“〇〇さんが探している●社の◎は、□□にある可能性が高いです”という文言をプッシュ表示(強制表示)してもよい。このとき、位置推定部22は、追跡情報33(
図6)に基づき、●社の◎の位置である□□を推定している。
【0057】
発報センサが例えば冷蔵庫4の中にあることがわかっていれば、調理者は、扉の開閉時間を短縮することができる。このことは、冷蔵庫4の消費電力の抑制、及び、外気の侵入による冷却器への着霜の抑制に資する。
【0058】
ステップS406において、位置推定部22は、第1の環境センサ52から環境値を受信する。具体的には、位置推定部22は、すべての第1の環境センサ52からアンテナ6a経由でセンサID及び環境値(環境値ベクトル)を受信する。
【0059】
ステップS407において、位置推定部22は、環境値の受信を継続するか否かを判断する。具体的には、位置推定部22は、すべての調理者又は代表者が端末装置7を介して“環境値の受信を継続する”旨の要求を受信した場合(ステップS407“Yes”)、ステップS403に戻り、それ以外の場合(ステップS407“No”)、ステップS408に進む。
【0060】
ステップS408において、位置推定部22は、第1の環境センサ52の電源を待機状態にする。具体的には、位置推定部22は、すべての第1の環境センサ52に対し、その通信手段の電源を待機状態にする指示を送信する。その後、処理手順を終了する。
【0061】
結局、位置推定部22は、調理者が環境値の受信を継続する限り、第1の環境センサ52の電源オンの直後、及び、設定時間が経過した直後にすべての第1の環境センサ52から環境値を受信する。それに加え、位置推定部22は、発報要求を受信した直後に、発報センサから環境値を受信する。なお、ユーザは、第1の環境センサ52を取り付けた食品を使い終わった又は廃棄した際、第1の環境センサ52の電源をオフにする。この際、第1の環境センサ52は、食品を使い終わった又は廃棄した旨の情報を位置推定装置1に送信する。この情報に基づき食品位置推定装置1が、位置情報に加えて食品を出庫又は消費した旨の情報を端末装置7に表示すると、ユーザは、その食品を出庫又は消費したことを確認することができる。食品位置推定装置1は、食品を出庫又は消費した事実を、第1の環境センサ52の電源がオフにされた後一定時間が経過するまで、又は、第1の環境センサ52の電源が次回オンにされるまで、追跡情報(在庫情報)33に残してもよい。
【0062】
(電波の反射時間に基づく位置推定)
前記では、食品位置推定装置1は、第1の環境センサ52及び第2の環境センサ53が取得する環境値に基づき、食品の位置を推定する。この際、食品位置推定装置1は、ビーコン、GPS等の技術を使用しない。しかしながら、キッチン3が充分に広く、かつ、各位置の環境値に大きな差異がない場合、食品位置推定装置1は、ビーコン、GPS等の考え方に基づく位置推定を補助的に利用してもよい。なお、“庫内”は、土間、物置、居室等、無線通信が可能な空間を含む概念である。
【0063】
図11は、電波の反射時間に基づく位置推定を説明する図である。充分広い空間内又は平面上の任意の位置に、少なくとも3つのアンテナ6a~6cが固定されている。アンテナ6a~6cのそれぞれは、保管庫4の外面等に配置されていてもよいし、キッチン3内の他の家電機器の外面等に配置されていてもよい。いま、アンテナ6aが位置不明の第1の環境センサ52に電波を照射した後、ある僅少時間が経過した時点で、その反射電波がアンテナ6aに返ってくるとする。すると、位置推定部22は、電波速度にその僅少時間(遅延時間)の半分を乗算することによって、アンテナ6aと第1の環境センサ52との距離41を算出することができる。第1の環境センサ52は、アンテナ6aを中心とし半径41を有する円周42上のいずれかの位置にあるはずである。なお、平面上ではなく空間内にアンテナ6aが存在する場合、円周を“球面”と読み替える。
【0064】
同じタイミングで、アンテナ6b及び6cも、位置不明の第1の環境センサ52に電波を照射する。すると、別の僅少時間が経過した時点で、その反射電波がアンテナ6b及び6cに返ってくる。全く同様に、位置推定部22は、アンテナ6b及び6cと第1の環境センサ52との距離43及び45を算出することができる。第1の環境センサ52は、アンテナ6bを中心とし半径43を有する円周44上のいずれかの位置にあるはずである。さらに、第1の環境センサ52は、アンテナ6cを中心とし半径45を有する円周46上のいずれかの位置にあるはずである。結局、第1の環境センサ52は、3つの円周42、44及び46の交点にある。
例えば、冷蔵庫4の冷蔵室8aの温度帯が野菜室8cの温度帯に近く、第1の環境センサ52が温度センサを備えている場合、冷蔵室8aの環境値ベクトルは、野菜室8cの環境値ベクトルに類似する。このような場合、3個のアンテナ6a~6cを用いることで、食品位置推定装置1は、どちらの貯蔵庫に置かれている可能性がより高いかを示すことができる。同様に、食品位置推定装置1は、第1の環境センサ52が常温の保管庫に置かれている場合でも、どの位置が確からしいかを示すことができる。
【0065】
(変形例1)
第1の環境センサ52が加熱調理器(電子レンジ)の内部で加熱されると、マグネトロンからのマイクロ波によって第1の環境センサ52から火花が発生する可能性がある。そこで、位置推定部22は、加熱調理器に固定されているアンテナ6aが、第1の環境センサ52が加熱調理器内にあることを検知した場合、加熱調理器の運転を停止(禁止)する指示を加熱調理器に送信してもよい。位置推定部22は、加熱調理器に固定されているアンテナ6aが、第1の環境センサ52が加熱調理器の位置を基準として所定の距離内にあることを検知した場合、加熱調理器の運転を停止(禁止)する指示を加熱調理器に送信してもよい。なお、アンテナ6a自身がマイクロ波により火花を発生させないように、アンテナ6aには、接地等の手当がされているものとする。
【0066】
(変形例2)
第1の環境センサ52及び第2の環境センサ53が電源を必要とする場合もある。そこで、第1の環境センサ52及び第2の環境センサ53は、保管庫4の内部に配置されている任意の装置(図示せず)によって自動的に給電されてもよい。
【0067】
(変形例3)
第1の環境センサ52は、容器51の底部に付され、食品の重量を計測してもよい。
(変形例4)
保管庫4に扉がある場合、その保管庫4から、又は、その保管庫4へ食品51が移動するタイミングは、扉が開閉されるタイミングに限定される。そこで、位置推定部22は、食品が保管され得る位置に扉がある場合、扉の開又は閉の少なくとも一方を検知したときに第1の環境センサ52から環境値を取得してもよい。このような検知がなされたとき、保管庫4内の温度等が大きく変化する場合が多い。
【0068】
(変形例5)
位置推定部22の処理負担、及び、消費電力を軽減するため、位置推定部22は、第2の環境センサ53が取得した環境値が所定の閾値以上に変化したときに第1の環境センサ52から環境値を取得してもよい。
(変形例6)
保管庫4が冷蔵庫である場合、一般に、圧縮機が稼働している間、冷蔵庫内部の温度等は、安定しない。圧縮機が停止すると、内部の温度等は安定し始める。そこで、位置推定部22は、食品が冷蔵庫に保管されている場合、冷蔵庫の圧縮機が停止した後所定の時間が経過したときに第1の環境センサ52から環境値を取得してもよい。
【0069】
(変形例7)
入出力処理部21は、ステップS208のタイミング以外の任意のタイミングで、追跡情報(在庫情報)33を任意の装置に表示してもよい。任意のタイミングとは、調理者が端末装置7を介してその旨の指示を入力したタイミング、保管庫4の扉が開閉されたタイミング等である。
(変形例8)
入出力処理部21は、追跡情報33を常時監視し、例えば以下の事象を検知した場合、端末装置7に警報を発報してもよい。
・第1の環境センサ52が計測した温度と室温との差分が所定の閾値以下になったこと
・食品51が冷蔵庫4の外部(調理台、食卓等)に存在する時間が所定の閾値を超えたこと
【0070】
(本実施形態の効果)
本実施形態の食品位置推定装置の効果は以下の通りである。
(1)食品位置推定装置は、温度等の環境値に基づき、食品の位置を推定することができる。
(2)食品位置推定装置は、複数の候補のうちから、食品が保管されている可能性の高い位置を推定することができる。
(3)食品位置推定装置は、食品が保管されている位置を任意の装置に表示することができる。
(4)食品位置推定装置は、食品に付されている第1の環境センサに発報させることができる。
(5)食品位置推定装置は、アンテナ又は第1の環境センサが消費する電力を節約することができる。
(6)食品位置推定装置は、アンテナからの距離計測に基づく位置推定を併用することができる。
【0071】
(7)食品位置推定装置は、加熱調理器が第1の環境センサを破損することを予防することができる。
(8)食品位置推定装置は、第1の環境センサ等に給電する手間を省くことができる。
(9)食品位置推定装置は、食品の重量及びその変化を計測することができる。
(10)食品位置推定装置は、保管庫等の扉が開閉されたときに、食品が保管されている位置の環境値を取得することができる。
(11)食品位置推定装置は、食品が保管され得る位置の環境値が大きく変化したときに、食品が保管されている位置の環境値を取得することができる。
(12)食品位置推定装置は、冷蔵庫内の温度等が安定したときに、冷蔵庫内の環境値を取得することができる。
(13)食品位置推定装置は、食品の保管状態が適正ではないことをユーザに通知することができる。
【0072】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0073】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。在庫管理装置1の各種情報は、クラウド上に存在していてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 食品位置推定装置
2 ネットワーク
3 キッチン
4 保管庫(冷蔵庫)
4a 冷蔵庫
4b 床下収納庫
4c パントリ
4d 調理台
6 通信回路
6a アンテナ
7 端末装置
8a 冷蔵室
8b 冷凍室
8c 野菜室
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
16 通信装置
21 入出力処理部
22 位置推定部
31 配置情報
32 環境情報
33 追跡情報(在庫情報)
51 食品(容器)
52 第1の環境センサ
53 第2の環境センサ