(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004112
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ボルト傾き点検器具
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20240109BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E21D20/00 Z
E21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103593
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 透
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
(57)【要約】
【課題】ボルトの打設面の状態に拘わらず、打設されたボルトの傾きが許容範囲内であることを正確且つ簡単に確認することができる。
【解決手段】ボルト61の打設面52に倣うように接触面13が配置される環状体11と、環状体11の接触面13に対して逆方向に突出する突出部14とを備え、環状体11の中心穴12の縁から突出部14の突出方向に向かって外側に傾斜する傾斜面13が突出部14に形成され、傾斜面13の傾斜角度がボルト61の傾きの許容傾斜角度に設定されているボルト傾き点検器具10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトの打設面に倣うように接触面が配置される環状体と、
前記環状体の前記接触面に対して逆方向に突出する突出部とを備え、
前記環状体の中心穴の縁から前記突出部の突出方向に向かって外側に傾斜する傾斜面が前記突出部に形成され、
前記傾斜面の傾斜角度が前記ボルトの傾きの許容傾斜角度に設定されていることを特徴とするボルト傾き点検器具。
【請求項2】
前記突出部が前記中心穴の周縁から起立する筒状に形成され、
筒状の前記突出部の内周面に前記傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1記載のボルト傾き点検器具。
【請求項3】
前記突出部が前記環状体の半径方向に延びる板状に形成され、
板状の前記突出部の前記中心穴側に前記傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1記載のボルト傾き点検器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山やコンクリート等に打設されたボルトの傾きの点検に用いられるボルト傾き点検器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木や建築の現場では、特許文献1のように、荷重計、軸力計などを用いて打設されたボルトの軸方向の軸力を測定することが行われている。この軸力の測定を行う際には、例えば
図3(a)に示すように、地山101に打設されたボルト102に、ワッシャー103とワッシャー104を外挿すると共に、ワッシャー103とワッシャー104との間に配置してボルト102に荷重計105を外挿する。そして、ワッシャー104の外側でボルト102に螺合されたナット106を締め付け、ナット106の螺入で生じた歪をワッシャー103とワッシャー104との間の荷重計105で測定し、測定した歪からボルト102の軸力を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地山101に打設されたボルト102の軸力を測定する場合、ボルト102が地山101に過度に傾いて打設されていると軸力を正確に測定することができない(
図3(b)参照)。そのため、
図4に示すように、一般的な工具であるL字状の曲尺107をボルト102の地山101から突出した部分に当てて、打設されたボルト102の傾きが許容範囲内であるか確認している。ボルト102が打設された打設面が鉛直面或いは水平面である場合には、この曲尺107による傾きの確認でもある程度正確な確認を行うことが可能である。
【0005】
しかしながら、トンネルの内周面や斜面がボルト102の打設面である場合、打設面が湾曲面や傾斜面となることから、L字状の曲尺107を打設面に対して、傾いた状態で配置せざるを得ないか、或いは容易に傾いた状態で配置してしまう事態を生ずる。L字状の曲尺107を打設面に対して水平及び直角に配置することができないと、例えばボルト軸芯X1が、本来あるべきボルト軸芯Xや打設面に対して傾いていても、打設面に対して直角であると誤認してしまう。そのため、ボルト102の打設面の状態に拘わらず、打設されたボルト102の傾きが許容範囲内であることを正確に確認できる器具が求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、ボルトの打設面の状態に拘わらず、打設されたボルトの傾きが許容範囲内であることを正確且つ簡単に確認することができるボルト傾き点検器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のボルト傾き点検器具は、ボルトの打設面に倣うように接触面が配置される環状体と、前記環状体の前記接触面に対して逆方向に突出する突出部とを備え、前記環状体の中心穴の縁から前記突出部の突出方向に向かって外側に傾斜する傾斜面が前記突出部に形成され、前記傾斜面の傾斜角度が前記ボルトの傾きの許容傾斜角度に設定されていることを特徴とする。
これによれば、環状体の接触面がボルトの打設面に倣うように配置されるので、打設されたボルトの軸芯の傾きを正確に確認することが出来る。また、環状体の中心穴を打設されたボルトに外挿して環状体の接触面をボルトの打設面に倣うように配置するだけで、簡単にボルト軸芯の傾きを確認することが出来る。即ち、ボルトの打設面の状態に拘わらず、環状体の接触面がボルトの打設面に面的に接触することで、打設されたボルトの傾きが許容範囲内であることを正確且つ簡単に確認することができる。
【0008】
本発明のボルト傾き点検器具は、前記突出部が前記中心穴の周縁から起立する筒状に形成され、筒状の前記突出部の内周面に前記傾斜面が設けられていることを特徴とする。
これによれば、環状体の中心穴を打設されたボルトに外挿して環状体の接触面をボルトの打設面に倣うように配置するだけで、打設されたボルトの全周に亘ってボルトの傾きが許容範囲内か否かを確認することができ、全周に亘るボルトの傾きの確認を効率的に行うことができる。
【0009】
本発明のボルト傾き点検器具は、前記突出部が前記環状体の半径方向に延びる板状に形成され、板状の前記突出部の前記中心穴側に前記傾斜面が設けられていることを特徴とする。
これによれば、打設されたボルトの傾きが許容範囲内であることを確認できることに加え、ボルトの傾きがどの程度の傾斜角度かの詳細を打設されたボルトの真横から簡単に確認することができ、ボルトの傾斜状態の視認性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボルト傾き点検器具によれば、ボルトの打設面の状態に拘わらず、打設されたボルトの傾きが許容範囲内であることを正確且つ簡単に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は本発明による第1実施形態のボルト傾き点検器具の斜視図、(b)はその使用状態の断面説明図。
【
図2】(a)は本発明による第2実施形態のボルト傾き点検器具の斜視図、(b)はその使用状態の断面説明図。
【
図3】(a)は従来のボルト軸力測定を説明する断面説明図、(b)は従来のボルト軸力測定においてボルトが過度に傾いた状態を説明する断面説明図
【
図4】従来の打設されたボルトの傾きの曲尺による確認を説明する斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態のボルト傾き点検器具〕
本発明による第1実施形態のボルト傾き点検器具10は、
図1に示すように、フランジ状の環状体11と、環状体11の中心穴12の周縁から起立するように形成されている筒状の突出部14を備える。環状体11は、地山51に一部が埋設され且つ残部が打設面52から地山51の外側に突出するように打設されたロックボルトで構成されるボルト61に対し、ボルト61の突出部分に外挿され、ボルト61の打設面52に倣うように接触面13が配置される。接触面13は全体として平らで面一に形成されており、打設面52が平らな場合には打設面52に面接触するようになっている。
【0013】
筒状の突出部14は、環状体11の接触面13に対して逆方向に突出するようにして設けられている。また、突出部14には、環状体11の中心穴12の縁から突出部14の突出方向に向かって外側に傾斜する傾斜面15が形成されており、第1実施形態では、筒状の突出部14の内周面にテーパ状の傾斜面15が周状に設けられている。更に、第1実施形態では、中心穴12の周面も、傾斜面15と同一傾斜角度の傾斜面になっており、突出部14の傾斜面15と連続形成されている。
【0014】
突出部14の傾斜面15及びこれと連続する中心穴12の周面の傾斜面の、接触面13の法線に対する傾斜角度は、ボルト61の傾きの許容傾斜角度に設定されている。第1実施形態では、突出部14の傾斜面15及びこれと連続する中心穴12の周面の傾斜面の傾斜角度は、全周に亘ってボルト61の傾きの許容傾斜角度に設定されている。
【0015】
第1実施形態のボルト傾き点検器具10を用いる際には、打設されたボルト61の軸力測定に先立ち、ボルト傾き点検器具10の環状体11及び突出部14をボルト61の突出部分に外挿し、ボルト61の打設面52に倣うように接触面13を配置する。そして、突出部14の内周面である傾斜面15にボルト61が押し付けられない状態であることを確認できれば、打設されたボルト61の傾きが許容傾斜角度の範囲内であることが分かる。
【0016】
第1実施形態のボルト傾き点検器具10によれば、環状体11の接触面13がボルト61の打設面52に倣うように配置されるので、打設されたボルト61の軸芯の傾きを正確に確認することが出来る。また、環状体11の中心穴12を打設されたボルト61に外挿して環状体11の接触面13をボルト61の打設面52に倣うように配置するだけで、簡単にボルト軸芯の傾きを確認することが出来る。即ち、ボルト61の打設面52の状態に拘わらず、環状体11の接触面13がボルト61の打設面52に面的に接触することで、打設されたボルト61の傾きが許容範囲内であることを正確且つ簡単に確認することができる。更に、このように配置するだけで、打設されたボルト61の全周に亘ってボルト61の傾きが許容範囲内か否かを確認することができ、全周に亘るボルト61の傾きの確認を効率的に行うことができる。
【0017】
〔第2実施形態のボルト傾き点検器具〕
本発明による第2実施形態のボルト傾き点検器具20は、
図2に示すように、板状の円環である環状体21と、環状体21の半径方向に延びる板状に形成された突出部24を備える。図示例における突出部24の環状体21側の下部は環状体21の半径の長さと同一の長さで形成され、突出部24の下部内端は中心穴22の周縁の一部を構成している。
【0018】
環状体21は、地山51に一部が埋設され且つ残部が打設面52から地山51の外側に突出するように打設されたロックボルトで構成されるボルト61に対し、ボルト61の突出部分に外挿され、ボルト61の打設面52に倣うように接触面23が配置される。接触面23は全体として平らで面一に形成されており、打設面52が平らな場合には打設面52に面接触するようになっている。
【0019】
板状の突出部24は、環状体21の接触面23に対して逆方向に突出するようにして設けられている。また、突出部24には、環状体21の中心穴22の縁から突出部24の突出方向に向かって外側に傾斜する傾斜面25が形成されており、第2実施形態では、板状の突出部24の中心穴22側にスロープ状の傾斜面25が設けられている。更に、第2実施形態では、中心穴22の周面のうち突出部24と対応する位置の周面は、傾斜面25と同一傾斜角度の傾斜面になっており、突出部24の傾斜面25と連続形成されている。
【0020】
突出部24のスロープ状の傾斜面25及びこれと連続する中心穴22の周面の一部で構成される傾斜面の、接触面23の法線に対する傾斜角度は、ボルト61の傾きの許容傾斜角度に設定されている。
【0021】
第2実施形態のボルト傾き点検器具20を用いる際には、打設されたボルト61の軸力測定に先立ち、ボルト傾き点検器具10の環状体21をボルト61の突出部分に外挿し、ボルト61の打設面52に倣うように接触面23を配置する。そして、突出部24の内側の傾斜面15にボルト61が押し付けられない状態であることを確認できれば、打設されたボルト61の傾きが許容傾斜角度の範囲内であることが分かる。更に、ボルト傾き点検器具20を環状体21の周方向に順次回転し、突出部24の内側の傾斜面15にボルト61が押し付けられない状態であることを全周に亘って確認できれば、打設されたボルト61の傾きが全周に亘って許容傾斜角度の範囲内であることが分かる。
【0022】
第2実施形態のボルト傾き点検器具20によれば、環状体21の接触面23がボルト61の打設面52に倣うように配置されるので、打設されたボルト61の軸芯の傾きを正確に確認することが出来る。また、環状体21の中心穴22を打設されたボルト61に外挿して環状体21の接触面23をボルト61の打設面52に倣うように配置するだけで、簡単にボルト軸芯の傾きを確認することが出来る。即ち、ボルト61の打設面52の状態に拘わらず、環状体21の接触面23がボルト61の打設面52に面的に接触することで、打設されたボルト61の傾きが許容範囲内であることを正確且つ簡単に確認することができる。更に、ボルト61の傾きがどの程度の傾斜角度かの詳細を打設されたボルト61の真横から簡単に確認することができ、ボルト61の傾斜状態の視認性を高めることができる。
【0023】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や変形例も含まれる。
【0024】
例えば上記実施形態では、トンネル等の地山51にボルト61を打設し、このボルト61の傾きを確認するためにボルト傾き点検器具10、20を用いる例を説明したが、コンクリートに打設されたボルトの傾きを確認するためにボルト傾き点検器具10、20を用いても好適であり、又、ロックボルト以外のボルトの傾きを確認するためにボルト傾き点検器具10、20を用いても良い。更に、本発明のボルト傾き点検器具は、土木分野や建築分野で打設される適宜のボルトに対して用いることが可能である。
【0025】
また、第2実施形態のボルト傾き点検器具20における板状の突出部24は、環状体21の周方向の複数箇所に間隔を開けて設けることも可能であり、環状体21の周方向の複数箇所に離間して板状の突出部24を設けることで、複数箇所に対応する複数方向においてボルト61の傾きを点検することができる。環状体21の周方向の複数箇所に離間して板状の突出部24を設ける場合、環状体21の全周に亘って設ける構成、或いは環状体21の周方向における局所的な扇状領域だけに設ける構成とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えば地山やコンクリートに打設されたロックボルト或いはアンカーボルトの傾きを点検する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10、20…ボルト傾き点検器具 11、21…環状体 12、22…中心穴 13、23…接触面 14、24…突出部 15、25…傾斜面
51…地山 52…打設面 61…ボルト
101…地山 102…ボルト 103、104…ワッシャー 105…荷重計 106…ナット 107…曲尺
X…本来あるべきボルト軸芯 X1…ボルト軸芯