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  • 特開-除塵装置 図1
  • 特開-除塵装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041126
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
E02B5/08 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145772
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼重 友典
(57)【要約】
【課題】スクリーンの正転及び逆転を自動的に行い、作業工数を低減するとともにスクリーンの塵芥除去を効率的に行う。
【解決手段】キャリングチェーンと、前記キャリングチェーンを駆動する上下一対のスプロケットホイールと、前記キャリングチェーンに設けられ、このキャリングチェーンとともに回転駆動されて水路の塵芥を除去するスクリーンと、前記スクリーンを挟んで前記水路の上流側と下流側の水位差を計測する水位差計とを備える除塵装置において、前記スプロケットホイール及び前記キャリングチェーンを介して、前記スクリーンの正回転及び逆回転を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記水路の上流側と下流側の水位差を算出するとともに、この水位差が第1所定値以上となった場合、前記スクリーンの正回転と逆回転を交互に行う正逆交互運転を行うこととした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリングチェーンと、
前記キャリングチェーンを駆動する上下一対のスプロケットホイールと、
前記キャリングチェーンに設けられ、このキャリングチェーンとともに回転駆動されて水路の塵芥を除去するスクリーンと、
前記スクリーンを挟んで前記水路の上流側と下流側の水位差を計測する水位差計と
を備える除塵装置において、
前記スプロケットホイール及び前記キャリングチェーンを介して、前記スクリーンの正回転及び逆回転を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、計測された前記水位差が第1所定値以上となった場合、前記スクリーンの正回転と逆回転を交互に行う正逆交互運転を行うこと
を特徴とする除塵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除塵装置において、
前記制御手段は、
計測された前記水位差が第2所定値以上となった場合、前記スクリーンを一定時間正回転させる正方向運転を行うとともに、
前記正方向運転を行った後、前記水位差が前記第1所定値以上となった場合、前記正逆交互運転を行うこと
を特徴とする除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路の塵芥を除去する除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の除塵装置にあっては、塵芥を除去するスクリーンを備え、このスクリーンを逆転させて付着した塵芥を落とす技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-26110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1にあっては、スクリーンの逆転が自動で行われるか否かが記載されておらず、仮に手動で逆転を行う場合は作業工数の増加が問題となる。
【0005】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、スクリーンの逆転を自動的に行い、作業工数を低減するとともにスクリーンの塵芥除去を効率的に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、キャリングチェーンと、前記キャリングチェーンを駆動する上下一対のスプロケットホイールと、前記キャリングチェーンに設けられ、このキャリングチェーンとともに回転駆動されて水路の塵芥を除去するスクリーンと、前記スクリーンを挟んで前記水路の上流側と下流側の水位差を計測する水位差計とを備える除塵装置において、
前記スプロケットホイール及び前記キャリングチェーンを介して、前記スクリーンの正回転及び逆回転を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記水路の上流側と下流側の水位差を算出するとともに、この水位差が第1所定値以上となった場合、前記スクリーンの正回転と逆回転を交互に行う正逆交互運転を行うこととした。
【発明の効果】
【0007】
よって、スクリーンの逆転を自動的に行い、作業工数を低減するとともにスクリーンの塵芥除去を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本願における除塵装置の全体構成図である。
図2】スクリーンの運転フローである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
(全体構成)
図1は本願における除塵装置の全体構成図である。除塵装置1は、上下一対の上部スプロケットホイール10及び下部スプロケットホイール20、スクリーン30、及びキャリングチェーン40を備えている。
【0010】
上部スプロケットホイール10は大気中に設けられ、動力源2の動力により回転されてキャリングチェーン40を駆動する。下部スプロケットホイール20は水路50の水中に設けられ、キャリングチェーン40により駆動される。各スプロケットホイール10,20はそれぞれ軸110,210により支持される。
【0011】
スクリーン30は水路50の流れに対し概略直交する平面状の網であって、水路50に浮遊する塵芥を除去する。このスクリーン30はキャリングチェーン40の外周側に設けられ、各スプロケットホイール10,20とキャリングチェーン40が噛み合う際に干渉しないものとなっている。
【0012】
またスクリーン30は水平方向の両端側(軸110,210の両端側)においてキャリングチェーン40に接続されており、キャリングチェーン40の駆動・回転に伴ってスクリーン30も移動・回動する。上部スプロケットホイール10は大気中、下部スプロケットホイール20は水路50の水中に設けられている。
【0013】
キャリングチェーン40及びスクリーン30は図1において時計回りに回転し、水路50の上流側において塵芥を捕捉する。捕捉された塵芥は下流側の大気中にて除去される。スクリーン30が移動・回転しながら水中と大気中を交互に行き来することにより、水路50における塵芥を捕捉、除去可能となっている。
【0014】
なおキャリングチェーン40の内周側であって上部スプロケットホイール10の鉛直下方側には散水ノズル60が設けられている。この散水ノズル60は図外のポンプから水の供給を受け、スクリーン30の裏側に水を散布・洗浄して塵芥を除去する。
【0015】
水路50の上方には水位差計70が設けられている。この水路差計は上流側検出部71と下流側検出部72を備え、それぞれキャリングチェーン40を挟んで水路50の上流側と下流側の水位を測定する。測定された水位は制御手段100に入力されて水位差ΔHが算出される。制御手段100はこの水位差ΔHに基づき動力源2を制御することで上部スプロケットホイール10を駆動し、スクリーン30の正転及び逆転を行う。
【0016】
また駆動源2にはトルクリミッタTLが設けられ、所定の負荷が掛かった際に上部スプロケットホイール10及びそれを介したキャリングチェーン40等の駆動を停止する。これにより、大量の塵芥がスクリーン30に付着した場合など、装置への負荷が過大な場合は駆動を停止して破損を抑制するものである。
【0017】
(スクリーン正転、逆転制御)
スクリーン30はキャリングチェーン40に沿って複数設けられており、一部は常に水路50の水中に存在する。このためスクリーン30に塵芥が付着すると、水路50の水流が阻害されて上流側と下流側で水位差ΔHが生じる。塵芥が付着したままスクリーン30を回転させると水位差ΔHがさらに大きくなり、上流側と下流側の圧力差が増大してスクリーン30が破損するおそれがある。
【0018】
したがって本願では、水位差ΔHが第1所定値ΔH1以上となった場合、前記スクリーンの正回転と逆回転を交互に行う正逆交互回転制御を実行する(図2:ステップS5→S6参照)。この正逆回転の繰り返しにより、スクリーン30に付着した塵芥を水路50の水中で除去し、水位差ΔHを低減させて破損のおそれを低減する。なお第1所定値ΔH1は予め設定された値であり、スクリーン30の強度等、諸条件を考慮して定められたものである。
【0019】
また、水位差ΔHが少ない場合はそもそもスクリーン30の回転を行う必要がない。そのため、水位差ΔHが低い状態で所定時間経過した場合、スクリーン30の回転を停止して消費電力を削減する(図2:ステップS4参照)。
【0020】
(スクリーン運転フロー)
図2はスクリーン30の運転にかかる制御のフローチャートである。このフローチャートに基づき、上述のスクリーン正転、逆転制御を行う。
【0021】
ステップS1では水位差ΔHを計測し、ステップS2へ移行する。
【0022】
ステップS2では水位差ΔHが第2所定値ΔH2以上であるか否かを判断し、YESであればステップS3へ移行してスクリーン30を正転させ、NOであれば制御を終了する。なお第2所定値ΔH2とは予め設定された数値であり、スクリーン30に塵芥が付着して水路50における上流側から下流側への水の流動が抑制されている、と判断される値を示す。この第2所定値ΔH2は後述の第1所定値ΔH1よりも小さい値に設定される。
【0023】
ステップS3ではスクリーン30を正転させ、ステップS4へ移行する。
【0024】
ステップS4では水位差ΔHが第2所定値未満の状態で所定時間経過したか否かを判断する。YESであれば水位差は少ないとして制御を終了し、NOであれば水位差が大きいとしてステップ5へ移行する。
【0025】
ステップS5では水位差ΔHが第1所定値以上か否かを判断し、YESであれば水位差ΔHが過大であるとしてステップS6へ移行する。NOであれば水位差ΔHは過大ではないとしてステップS2へ戻り、ΔHが第2所定値以上か否かが再度判断される。
【0026】
ステップS6では水位差ΔHが過大であり、上流と下流の圧力差によるスクリーン30の破損が懸念されるため、スクリーン30を正逆回転させて水路50の水中で塵芥を除去し、ステップS7へ移行する。本願では正転、逆転をそれぞれ3回行うが、回数は特に限定されない。また装置の破損防止のため、ステップS6ではトルクリミッタTLが作動する。
なおステップS5における水位差の第1所定値ΔH1はステップS2,S4における第2所定値ΔH2よりも大きな値に設定されている(例えばΔH1=1500mm、ΔH2=300mm)。これにより水位差ΔHが過大でない場合はステップS6におけるスクリーン30の正逆回転を行うことがないため、不要な制御を実施しないことで効率化を図るものである。
【0027】
ステップS7ではスクリーン30の回転を停止し、ステップS8へ移行する。
【0028】
ステップS8ではスクリーン30を洗浄する洗浄ポンプを所定時間運転し、ステップS9へ移行する。この所定時間は除塵装置1の仕様や塵芥の量に応じて適宜設定される。
【0029】
ステップS9では洗浄用ポンプを停止し、制御を終了する。
【0030】
(効果)
(1)キャリングチェーン40と、キャリングチェーン40を駆動する上下一対のスプロケットホイール10,20と、キャリングチェーン40に設けられ、このキャリングチェーン40とともに回転駆動されて水路50の塵芥を除去するスクリーン30と、スクリーン30を挟んで水路50の上流側と下流側の水位差ΔHを計測する水位差計70とを備える除塵装置1において、
スプロケットホイール10,20及びキャリングチェーン40を介して、スクリーン30の正回転及び逆回転を制御する制御手段100を備え、制御手段100は、計測された水位差ΔHが第1所定値ΔH1以上となった場合、スクリーン30の正回転と逆回転を交互に行う正逆交互運転を行うこととした(図2のステップS5→S6)。
【0031】
よって、スクリーン30の正回転及び逆回転を自動的に行い、作業工数を低減するとともにスクリーン30の塵芥除去を効率的に行うことができる。
【0032】
(2)制御手段100は、計測された水位差ΔHが第2所定値ΔH2以上となった場合、スクリーン30を一定時間正回転させる正方向運転を行うとともに(図2のステップS2→S3)、正方向運転を行った後、水位差ΔHが第1所定値ΔH1以上となった場合、正逆交互運転を行うこととした(図2のステップS5→S6)。
【0033】
水位差ΔHが少ない場合はそもそもスクリーン30の回転を行う必要がない。そのため、水位差ΔHが低い状態で所定時間経過した場合、スクリーン30の回転を停止して消費電力を削減することができる(図2:ステップS4→S7)。これによりスクリーン30が不必要に正逆回転されることがなく、効率的である。
【符号の説明】
【0034】
1 除塵装置
2 動力源
10 上部スプロケットホイール
20 下部スプロケットホイール
30 スクリーン
40 キャリングチェーン
50 水路
70 水位差計
100 制御手段
図1
図2