(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041127
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】運搬支援具
(51)【国際特許分類】
B65G 7/12 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B65G7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145774
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】510333575
【氏名又は名称】株式会社東北設備
(71)【出願人】
【識別番号】599164086
【氏名又は名称】富樫 光七
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(72)【発明者】
【氏名】富樫 光七
(57)【要約】
【課題】ユーザーが荷物を持つ際の負担を軽減することができる運搬支援具を提供する。
【解決手段】運搬支援具1は、バンド3、肩パッド4、バンド3と肩パッド4を連結する連結部、及びサポート機構6L,6Rを備える。サポート機構6L,6Rは、一端が連結部に固定されたサポートベルト60と、肩パッド4の延在部4L,4Rに連結された第1ベルト通し61と、バンド3に連結された第2ベルト通し62と、スライダ63と、スライダ63に連結されたグリップベルト64と、を備える。サポートベルト60は、一端から他端に向かって、スライダ63の第1挿通部631、第1ベルト通し61、スライダ63の第2挿通部632、第2ベルト通し62の順でそれぞれに通される。ユーザー2が荷物Wと共にグリップベルト64を持つ動作に応じて、スライダ63がサポートベルト60に対してスライドする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーに装着され、前記ユーザーによる荷物の運搬を支援する運搬支援具であって、
前記ユーザーの骨盤部と腰部の少なくともいずれかに巻かれるバンドと、
前記ユーザーの肩に当てられる肩パッドと、
前記ユーザーの背中の側に位置し、前記バンドと前記肩パッドを連結する連結部と、
前記運搬を支援するサポート機構と、を備え、
前記肩パッドは、前記ユーザーの背中の側に位置する背当て部と、前記背当て部から前記ユーザーの前脇に向かって延びる延在部と、を含み、
前記サポート機構は、
一端が前記連結部又は前記背当て部に固定され、他端に前記ユーザーの足が挿入されるフットループが設けられたサポートベルトと、
前記延在部に連結され、前記サポートベルトが通される第1ベルト通しと、
前記バンドに連結され、前記サポートベルトが通される第2ベルト通しと、
前記サポートベルトにおける前記一端と前記第1ベルト通しの間の部分が通される第1挿通部、及び、前記サポートベルトにおける前記第1ベルト通しと前記第2ベルト通しの間の部分が通される第2挿通部を有し、前記サポートベルトに対してスライド可能なスライダと、
前記スライダに連結され、前記ユーザーが手で持つグリップベルトと、を備え、
前記サポートベルトは、前記一端から前記他端に向かって、前記第1挿通部、前記第1ベルト通し、前記第2挿通部、前記第2ベルト通しの順でそれぞれに通され、
前記ユーザーが前記荷物と共に前記グリップベルトを持つ動作に応じて、前記スライダが前記サポートベルトに対してスライドし、
前記延在部及び前記サポート機構のそれぞれが、前記ユーザーの右半身及び左半身に対応して一対ある、
運搬支援具。
【請求項2】
ユーザーに装着され、前記ユーザーによる荷物の運搬を支援する運搬支援具であって、
前記ユーザーの骨盤部と腰部の少なくともいずれかに巻かれるバンドと、
前記ユーザーの肩に当てられる肩パッドと、
前記ユーザーの背中の側に位置し、前記バンドと前記肩パッドを連結する連結部と、
前記運搬を支援するサポート機構と、を備え、
前記肩パッドは、前記ユーザーの背中の側に位置する背当て部と、前記背当て部から前記ユーザーの前脇に向かって延びる延在部と、を含み、
前記サポート機構は、
一端が前記連結部又は前記背当て部に固定され、他端に前記ユーザーの足が挿入されるフットループが設けられたサポートベルトと、
前記延在部に連結され、前記サポートベルトが通される第1ベルト通しと、
前記バンドに連結され、前記サポートベルトが通される第2ベルト通しと、
前記サポートベルトにおける前記一端と前記第1ベルト通しの間の部分が通される挿通部を有し、前記サポートベルトに対してスライド可能なスライダと、
前記スライダに連結され、前記ユーザーが手で持つグリップベルトと、を備え、
前記サポートベルトは、前記一端から前記他端に向かって、前記挿通部、前記第1ベルト通し、前記第2ベルト通しの順でそれぞれに通され、
前記ユーザーが前記荷物と共に前記グリップベルトを持つ動作に応じて、前記スライダが前記サポートベルトに対してスライドし、
前記延在部及び前記サポート機構のそれぞれが、前記ユーザーの右半身及び左半身に対応して一対ある、
運搬支援具。
【請求項3】
前記第2挿通部は、前記第1挿通部よりも前記グリップベルトに近い位置に設けられる、
請求項1に記載の運搬支援具。
【請求項4】
前記スライダには、前記サポートベルトに対する前記スライダのスライドを補助する第1補助ローラー及び第2補助ローラーが設けられ、
前記第1補助ローラーには、前記サポートベルトの前記第1挿通部を通る部分がかけられ、
前記第2補助ローラーには、前記サポートベルトの前記第2挿通部を通る部分がかけられる、
請求項1又は3に記載の運搬支援具。
【請求項5】
前記第1ベルト通し及び前記第2ベルト通しの少なくともいずれかには、前記サポートベルトがかけられるローラーが設けられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の運搬支援具。
【請求項6】
前記グリップベルトには、滑り止め加工が施されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の運搬支援具。
【請求項7】
前記バンドは、
前記骨盤部に巻かれる骨盤パッドと、
前記骨盤パッドに巻かれ、前記骨盤パッドを介して前記骨盤部に締められるメインベルトと、
前記腰部に締められるサブベルトと、
前記骨盤パッドに設けられ、前記サブベルトが通される複数のサブベルトループと、を備え、
前記骨盤パッドは、前記複数のサブベルトループによって前記サブベルトに吊される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の運搬支援具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーによる荷物の運搬を支援する運搬支援具に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーによる荷物の運搬を支援する装置として、例えば特許文献1には運搬補助具が記載されている。この運搬補助具は、ユーザーが装着する腰ベルトの一側部に、ユーザーが持ち上げた後の荷物を仮置き可能な受け板を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置は、ユーザーが荷物を持ち上げた後の負担を軽減する観点のものである。ユーザーが荷物を持つ際(例えば、荷物を持ち上げる際、又は、荷物を下ろす際)の負担を軽減することができれば、有用である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ユーザーが荷物を持つ際の負担を軽減することができる運搬支援具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る運搬支援具は、
ユーザーに装着され、前記ユーザーによる荷物の運搬を支援する運搬支援具であって、
前記ユーザーの骨盤部と腰部の少なくともいずれかに巻かれるバンドと、
前記ユーザーの肩に当てられる肩パッドと、
前記ユーザーの背中の側に位置し、前記バンドと前記肩パッドを連結する連結部と、
前記運搬を支援するサポート機構と、を備え、
前記肩パッドは、前記ユーザーの背中の側に位置する背当て部と、前記背当て部から前記ユーザーの前脇に向かって延びる延在部と、を含み、
前記サポート機構は、
一端が前記連結部又は前記背当て部に固定され、他端に前記ユーザーの足が挿入されるフットループが設けられたサポートベルトと、
前記延在部に連結され、前記サポートベルトが通される第1ベルト通しと、
前記バンドに連結され、前記サポートベルトが通される第2ベルト通しと、
前記サポートベルトにおける前記一端と前記第1ベルト通しの間の部分が通される第1挿通部、及び、前記サポートベルトにおける前記第1ベルト通しと前記第2ベルト通しの間の部分が通される第2挿通部を有し、前記サポートベルトに対してスライド可能なスライダと、
前記スライダに連結され、前記ユーザーが手で持つグリップベルトと、を備え、
前記サポートベルトは、前記一端から前記他端に向かって、前記第1挿通部、前記第1ベルト通し、前記第2挿通部、前記第2ベルト通しの順でそれぞれに通され、
前記ユーザーが前記荷物と共に前記グリップベルトを持つ動作に応じて、前記スライダが前記サポートベルトに対してスライドし、
前記延在部及び前記サポート機構のそれぞれが、前記ユーザーの右半身及び左半身に対応して一対ある。
【0007】
(2)上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る運搬支援具は、
ユーザーに装着され、前記ユーザーによる荷物の運搬を支援する運搬支援具であって、
前記ユーザーの骨盤部と腰部の少なくともいずれかに巻かれるバンドと、
前記ユーザーの肩に当てられる肩パッドと、
前記ユーザーの背中の側に位置し、前記バンドと前記肩パッドを連結する連結部と、
前記運搬を支援するサポート機構と、を備え、
前記肩パッドは、前記ユーザーの背中の側に位置する背当て部と、前記背当て部から前記ユーザーの前脇に向かって延びる延在部と、を含み、
前記サポート機構は、
一端が前記連結部又は前記背当て部に固定され、他端に前記ユーザーの足が挿入されるフットループが設けられたサポートベルトと、
前記延在部に連結され、前記サポートベルトが通される第1ベルト通しと、
前記バンドに連結され、前記サポートベルトが通される第2ベルト通しと、
前記サポートベルトにおける前記一端と前記第1ベルト通しの間の部分が通される挿通部を有し、前記サポートベルトに対してスライド可能なスライダと、
前記スライダに連結され、前記ユーザーが手で持つグリップベルトと、を備え、
前記サポートベルトは、前記一端から前記他端に向かって、前記挿通部、前記第1ベルト通し、前記第2ベルト通しの順でそれぞれに通され、
前記ユーザーが前記荷物と共に前記グリップベルトを持つ動作に応じて、前記スライダが前記サポートベルトに対してスライドし、
前記延在部及び前記サポート機構のそれぞれが、前記ユーザーの右半身及び左半身に対応して一対ある。
【0008】
(3)上記(1)に記載の運搬支援具において、
前記第2挿通部は、前記第1挿通部よりも前記グリップベルトに近い位置に設けられる、ようにしてもよい。
【0009】
(4)上記(1)又は(3)に記載の運搬支援具において、
前記スライダには、前記サポートベルトに対する前記スライダのスライドを補助する第1補助ローラー及び第2補助ローラーが設けられ、
前記第1補助ローラーには、前記サポートベルトの前記第1挿通部を通る部分がかけられ、
前記第2補助ローラーには、前記サポートベルトの前記第2挿通部を通る部分がかけられる、ようにしてもよい。
【0010】
(5)上記(1)~(3)のいずれかに記載の運搬支援具において、
前記第1ベルト通し及び前記第2ベルト通しの少なくともいずれかには、前記サポートベルトがかけられるローラーが設けられる、ようにしてもよい。
【0011】
(6)上記(1)~(3)のいずれかに記載の運搬支援具において、
前記グリップベルトには、滑り止め加工が施されている、ようにしてもよい。
【0012】
(7)上記(1)~(3)のいずれかに記載の運搬支援具において、
前記バンドは、
前記骨盤部に巻かれる骨盤パッドと、
前記骨盤パッドに巻かれ、前記骨盤パッドを介して前記骨盤部に締められるメインベルトと、
前記腰部に締められるサブベルトと、
前記骨盤パッドに設けられ、前記サブベルトが通される複数のサブベルトループと、を備え、
前記骨盤パッドは、前記複数のサブベルトループによって前記サブベルトに吊される、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザーが荷物を持つ際の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運搬支援具の斜視図。
【
図2】同上実施形態に係るバンド、肩パッド及び連結部の概略展開図。
【
図3】同上実施形態に係るサポート機構を説明するための運搬支援具の模式図。
【
図5】同上実施形態に係るサポート機構を単純化した滑車装置として表した参考図。
【
図6】変形例に係るサポート機構を説明するための運搬支援具の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示す運搬支援具1は、ユーザー2に装着され、ユーザー2による荷物Wの運搬を支援する。荷物Wは、コンテナ、建築資材などであり、ユーザー2が両手で持つことができる重量であれば、その種類及び形状は任意であり、限定されない。
【0017】
図1では、ユーザー2にとっての方向として、前方Fd、後方Bd、左方Ld、右方Rd、上方Ud、下方Ddを示した。以下の説明で用いる、前、後、左、右、上、下の各方向は、特に断りがない場合は、ユーザー2にとっての方向を指す。
【0018】
運搬支援具1は、
図1~
図3に示すように、バンド3と、肩パッド4と、連結部5と、サポート機構6L,6Rと、を備える。
【0019】
(バンド3)
バンド3は、
図1及び
図2に示すように、骨盤パッド30と、メインベルト31と、サブベルト32と、繋止部33と、複数のサブベルトループ34と、複数のメインベルトループ35と、を備える。
【0020】
骨盤パッド30は、ユーザー2の骨盤部に巻かれる帯状の緩衝材である。この骨盤部は、ユーザー2の臀部と概ね同じである。
【0021】
メインベルト31は、骨盤パッド30に巻かれ、骨盤パッド30を介してユーザー2の骨盤部に締められる。メインベルト31は、
図2に示すように、骨盤パッド30に設けられた、複数のメインベルトループ35に通される。メインベルト31の幅は、骨盤パッド30の幅よりも狭い。メインベルト31の長手方向における一端には、メインベルト31をユーザー2の骨盤部に締め付けるための留め具31aが設けられている。ユーザー2は、留め具31aによりメインベルト31を締めることによって、骨盤パッド30を自身の骨盤部に装着する。骨盤パッド30によって、ユーザー2の骨盤部にメインベルト31の締め付け力が分散して作用するため、ユーザー2の負担を軽減することができる。
【0022】
サブベルト32は、ユーザー2の腰部に締められる。サブベルト32は、
図2に示すように、骨盤パッド30の上方に向かう、複数のサブベルトループ34に通される。サブベルト32の幅は、本実施形態ではメインベルト31の幅よりも狭く設定されているが、これに限られず任意に設定可能である。サブベルト32の長手方向における一端には、サブベルト32をユーザー2の腰部に締め付けるための留め具32aが設けられている。ユーザー2は、留め具32aによりサブベルト32を自身の腰部に締めて装着する。
【0023】
なお、留め具31a及び留め具32aの各々は、公知のバックル、面ファスナー等であればよい。また、メインベルト31及びサブベルト32の各々には、その長さを調整するための図示せぬアジャスターが設けられていてもよい。
【0024】
繋止部33は、連結部5を繋ぎ止める構成であり、例えば、D状の鐶で構成される。繋止部33は、骨盤パッド30の上端に設けられた上側支持ループ36に通され、支持される。上側支持ループ36は、運搬支援具1がユーザー2に装着された状態(以下、装着状態という。)において、例えば、骨盤パッド30におけるユーザー2の背骨に沿う部分に設けられる。
【0025】
サブベルトループ34は、
図2に示すように展開した場合の骨盤パッド30の長手方向において、間隔を空けて複数設けられている。例えば、骨盤パッド30には、4つのサブベルトループ34が設けられている。
【0026】
メインベルトループ35は、
図2に示すように展開した場合の骨盤パッド30の長手方向において、間隔を空けて複数設けられている。例えば、骨盤パッド30には、5つのメインベルトループ35が設けられている。このうち、骨盤パッド30の長手方向における中央部に設けられ、装着状態においてユーザー2の背骨付近に位置する1つのメインベルトループ35の上方に、前述の上側支持ループ36が設けられる。
【0027】
残りの4つのメインベルトループ35は、4つのサブベルトループ34の各々の位置に対応して、これらの下方に設けられている。このように、複数のメインベルトループ35のうち、サブベルトループ34の下方であってサブベルトループ34に対応する位置にあるものを、対応メインベルトループと呼ぶ。本実施形態では、4つある対応メインベルトループの各々の下方に、下側支持ループ37が設けられる。
図2では、下側支持ループ37が何も支持していない状態を示しているが、必要に応じて、下側支持ループ37に通されて支持される、D状の鐶などを設けてもよい。
【0028】
本実施形態では、骨盤パッド30の短手方向に延び、各々が対応して設けられる、サブベルトループ34、メインベルトループ35及び下側支持ループ37のセットは、合成繊維の帯体で一体に形成されている。具体的に、この帯体を骨盤パッド30に縫合することによって、サブベルトループ34、メインベルトループ35及び下側支持ループ37のセットは、それぞれの機能を発揮するように構成される。また、装着状態においてユーザー2の背骨付近に位置する1つのメインベルトループ35と、これに対応する上側支持ループ36のセットは、合成繊維の帯体で一体に形成されている。具体的に、この帯体を骨盤パッド30に縫合することによって、1つのメインベルトループ35と、これに対応する上側支持ループ36のセットは、それぞれの機能を発揮するように構成される。これにより、部品点数を削減し、製造を容易とすることができる。
【0029】
(電気工事用の安全帯との差異)
ここで、本実施形態のバンド3と似て非なる構成として、電気工事士が柱上作業時に使用する安全帯が存在するが、この安全帯とバンド3の構成及び機能が全く異なることについて明らかにしておく。
【0030】
この安全帯は、柱上作業者の骨盤部に巻かれるパッドと、パッドに巻かれる安全ベルトとを備える。そして、この安全帯は、柱上作業者の腰に巻かれる補助帯と連結可能に構成される。この補助帯は、柱上作業者が安全帯からすり抜けて落下することを防止するために、必ず安全ベルトを吊るものであり、決してパッドを吊るものではない。本実施形態のバンド3は、サブベルト32が通されるサブベルトループ34によって、メインベルト31を吊るわけではなく、骨盤パッド30を吊るため、電気工事士が使用する安全帯とは、構成及び機能が全く異なる。
【0031】
さらに、柱上作業時における作業者の体勢を確保すると同時に、腰掛け的な機能をも果たす安全帯を吊るための補助帯は、前後左右で均等に安全ベルトを吊る必要がある。一方、バンド3においては、サブベルト32は、必ずしも前後左右で均等に骨盤パッド30を吊っていなくともよい。バンド3は、任意の位置に設けたサブベルトループ34を介して、サブベルト32が骨盤パッド30を吊る構成であればよい。この点でも両者には大きな差異がある。
【0032】
(肩パッド4)
肩パッド4は、ユーザー2の肩に当てられる緩衝材である。具体的に、肩パッド4は、着用状態でユーザー2の背中の側(具体的には、首後方の下)に位置する背当て部40と、ユーザー2の肩から前脇に向かって延びる延在部4L,4Rと、を備える。
図1に示すように、延在部4Lはユーザー2の左肩から左前脇に向かって延び、延在部4Rはユーザー2の右肩から右前脇に向かって延びる。肩パッド4は、
図2のように展開した状態では、例えば、弓状または弧状に形成される。
【0033】
(連結部5)
連結部5は、
図2に示すように、バンド3と肩パッド4を連結する構成である。連結部5は、装着状態において、ユーザー2の背中の側に位置する。連結部5は、リング材50と、第1ストラップ51と、第2ストラップ52と、を備える。第1ストラップ51及び第2ストラップ52の各々は、例えば帯状である。
【0034】
第1ストラップ51は、リング材50とバンド3の繋止部33とを連結する構成である。第1ストラップ51には、リング材50とバンド3の間の長さを調節するためのアジャスター51aが設けられている。
【0035】
第2ストラップ52は、リング材50と肩パッド4とを連結する構成である。例えば、第2ストラップ52の上端は、背当て部40に固定されている。
【0036】
(サポート機構6L,6R)
サポート機構6L,6Rは、ユーザー2による荷物Wの運搬を支援する機構である。サポート機構6Lはユーザー2の左半身に対応して設けられ、サポート機構6Rはユーザー2の右半身に対応して設けられる。サポート機構6Lとサポート機構6Rの構成は同様であるため、以下では主にサポート機構6Lについて説明し、サポート機構6Rの説明は適宜省略する。
【0037】
サポート機構6Lは、サポートベルト60と、サポートベルト60が通される第1ベルト通し61及び第2ベルト通し62と、スライダ63と、グリップベルト64と、を備える。つまり、サポート機構6Rも同様にこれらの構成を備える。
【0038】
サポートベルト60は、一端が連結部5に固定された一続きのベルトである。具体的に、
図3に示すように、サポートベルト60の一端はリング材50に固定されている。ここで、一続きのベルトとは、必ずしも一本のベルトに限られず、実質的に一続きのベルトであれば良い。例えば、サポートベルト60は、サポート機構6Lの動作を妨げない限りにおいては、複数の部分を接合して構成された、実質的に一続きのベルトであってもよい。サポート機構6Rのサポートベルト60についても同様である。
【0039】
なお、
図3は、サポート機構6Lの特徴の理解を容易にするため、サポート機構6Lを含む運搬支援具1の一部を模式的に示した図である。サポート機構6L,6Rの各々のサポートベルト60には、その長さを調整可能なアジャスター(図示せず)が設けられることが好ましい。サポートベルト60に対するスライダ63の動作に干渉しない箇所であれば、当該アジャスターを任意の箇所に設けることができる。
【0040】
サポートベルト60の他端には、ユーザー2の足が挿入されるフットループ60aが設けられている。
図1に示すように、サポート機構6Lのフットループ60aには左足が挿入され、サポート機構6Rのフットループ60aには右足が挿入される。具体的に、フットループ60aは、ユーザー3の足の甲と土踏まずを囲むようにして、ユーザー2の足に装着される。なお、フットループ60aには、その径を調整可能な図示せぬアジャスターが設けられていることが好ましい。
【0041】
サポート機構6Lの第1ベルト通し61は、肩パッド4の延在部4Lに吊り材7を介して吊られている。吊り材7は、例えば帯体から構成される。このように、サポート機構6Lの第1ベルト通し61は、吊り材7を介して延在部4Lに連結される。同様に、サポート機構6Rの第1ベルト通し61は、吊り材7を介して延在部4Rに連結される。つまり、運搬支援具1は、ユーザー2の右半身及び左半身に対応する一対の延在部4L,4Rと、一対のサポート機構6L,6Rを備える。
【0042】
第1ベルト通し61は、
図1に示すように、サポートベルト60の幅方向に延びる軸61aを有する。この軸61aは、ローラー61bを回転可能に支持する。このようにして、第1ベルト通し61には、サポートベルト60がかけられるローラー61bが設けられる。
【0043】
第2ベルト通し62は、
図1に示すように、サポートベルト60の幅方向に延びる軸62aを有する。本実施形態では、この軸62aにサポートベルト60がかけられる。なお、第2ベルト通し62にも図示せぬローラーを設け、軸62aにサポートベルト60を直接かけない構成を採用してもよい。当該構成では、例えば、軸62aにサポートベルト60がかけられるローラーを回転可能に支持させればよい。
【0044】
第2ベルト通し62は、バンド3に連結される。例えば、サポート機構6Lの第2ベルト通し62は、バンド3のうち、
図2での最も左に位置するサブベルトループ34と、これに対応するメインベルトループ35の間に吊り下げられている。また例えば、サポート機構6Rの第2ベルト通し62は、バンド3のうち、
図2での最も右に位置するサブベルトループ34と、これに対応するメインベルトループ35の間に吊り下げられている。
【0045】
なお、バンド3における第2ベルト通し62の連結位置は任意に変更可能である。例えば、第2ベルト通し62は、下側支持ループ37に吊り下げられてもよい。例えば、サポート機構6Lの第2ベルト通し62は、ユーザー2の左大腿骨の上方付近に位置していればよい。同様に、サポート機構6Rの第2ベルト通し62は、ユーザー2の右大腿骨の上方付近に位置していればよい。
【0046】
スライダ63は、サポートベルト60に対してスライド可能な構成である。スライダ63は、
図4に示すように、矩形状のベゼル630と、サポートベルト60が通される第1挿通部631及び第2挿通部632と、を有する。
【0047】
図3に示すように、本実施形態のサポートベルト60は、一端(連結部5の側の端)から他端(フットループ60aの側の端)に向かって、第1挿通部631、第1ベルト通し61、第2挿通部632、第2ベルト通し62の順でそれぞれに通される。サポート機構6Lのサポートベルト60は、連結部5の側の端から第1ベルト通し61までの部分がユーザー2の左脇下を通る。つまり、当該部分と肩パッド4の間に、ユーザー2の左腕が通される。同様に、サポート機構6Rのサポートベルト60は、連結部5の側の端から第1ベルト通し61までの部分がユーザー2の右脇下を通る。つまり、当該部分と肩パッド4の間に、ユーザー2の右腕が通される。
【0048】
具体的に、スライダ63は、
図4に示すように、互いに平行な第1~第3の軸63a~63cと、グリップベルト64を保持する保持部63dと、を有する。
【0049】
第1~第3の軸63a~63cは、サポートベルト60の幅方向に延びる。第1の軸63aは、ベゼル630の一部を構成する。第2の軸63bは、ベゼル630の開口を跨いで設けられる。第3の軸63cは、第1の軸63aと第2の軸63bの間に位置する。保持部63dは、ベゼル630における第1の軸63aとは反対側の端部に設けられる。なお、保持部63dは、掛止、接着、溶着などの公知の手法によりグリップベルト64を保持していればよく、その保持態様は任意である。例えば、保持部63dは、フックを用いた掛止によりグリップベルト64を保持し、保持部63dに対してグリップベルト64が着脱可能であってもよい。
【0050】
前述の第1挿通部631は、第1の軸63aと第3の軸63cの間に形成される開口部分である。また、前述の第2挿通部632は、第3の軸63cと保持部63dの間に形成される開口部分である。つまり、第2挿通部632は、第1挿通部631よりもグリップベルト64に近い位置に設けられる。
【0051】
スライダ63には、サポートベルト60に対するスライダ63のスライドを補助する第1補助ローラーR1及び第2補助ローラーR2が設けられる。
【0052】
第1補助ローラーR1は、第1の軸63aに回転可能に支持される。
図3に示すように、第1補助ローラーR1には、サポートベルト60の第1挿通部631を通る部分がかけられる。当該部分は、より詳細に言えば、サポートベルト60における連結部5と第1ベルト通し61の間にある部分である。
【0053】
第2補助ローラーR2は、第2の軸63bに回転可能に支持される。
図3に示すように、第2補助ローラーR2には、サポートベルト60の第2挿通部632を通る部分がかけられる。当該部分は、より詳細に言えば、サポートベルト60における第1ベルト通し61と第2ベルト通し62の間にある部分である。
【0054】
グリップベルト64は、スライダ63に連結され、ユーザー2が手(具体的には掌)で持つ部分である。
図1に示すように、サポート機構6Lのグリップベルト64はユーザー2の左手に持たれ、サポート機構6Rのグリップベルト64はユーザー2の右手に持たれる。
【0055】
ユーザー2は、荷物Wを持つ際には、グリップベルト64を荷物Wに当てつつ、荷物Wと共にグリップベルト64を持つ。この際、グリップベルト64がユーザー2の手と荷物Wに挟まれる。
【0056】
荷物W及びグリップベルト64を持ちやすくするため、グリップベルト64は、
図1に示すように、滑り止め加工が施された滑り止め加工部64aを有する。
図1の網掛け部が滑り止め加工部64aの形成範囲の一例である。なお、滑り止め加工部64aは、グリップベルト64の両面に形成されることが好ましい。滑り止め加工部64aは、シリコーン等のゴム、エラストマー、他の弾性樹脂など公知の滑り止め材から構成される。滑り止め加工部64aは、塗布などによりグリップベルト64に直接形成される滑り止め材から構成されてもよいし、グリップベルト64に貼付、縫合などにより固定されたシート状の滑り止め材から構成されてもよい。
【0057】
運搬支援具1の構成の説明は以上である。次に、運搬支援具1の動作について主に
図3を参照して説明する。
【0058】
サポートベルト60におけるスライダ63と第1挿通部61の間の部分は、第1挿通部61で折り返されたラップ部分Aとなる。ラップ部分Aの長さは、ユーザー2の姿勢に応じてサポートベルト60に対してスライドするスライダ63の位置によって変化する。ラップ部分Aの長さが長くなればなる程、サポートベルト60の実効的な長さは短くなり、ラップ部分Aの長さが短くなればなる程、サポートベルト60の実効的な長さは長くなる。スライダ63がこのように動作することにより、ユーザー2が様々な姿勢になった場合であっても、当該姿勢に応じてサポートベルト60が変化し、ユーザー2の動作がサポートベルト60に妨げられることが抑制される。
【0059】
運搬支援具1を装着したユーザー2が地面等の基準位置に置かれた荷物Wを持つ際、ユーザー2は、前屈みになって(膝、背骨などを屈曲させて)グリップベルト64を持った手を荷物Wに伸ばし、荷物Wと共にグリップベルト64を掴む。そして、荷物Wを持ち上げる際には、ユーザー2は、膝、背骨などを徐々に伸展させつつ、荷物Wと共にグリップベルト64を持ち上げる。一方、所定の高さまで持ち上げた荷物Wを下ろす際は、ユーザー2は、上記と逆の動作を行う。これらの動作中において、スライダ63は、ユーザー2が荷物Wと共にグリップベルト64を持つ動作に応じて、サポートベルト60に対してスライドする。つまり、スライダ63は、ユーザー2が荷物Wを上げ下げする際のユーザー2の姿勢の変化に追従し、サポートベルト60が一端(連結部5の側の端)から他端(フットループ60aの側の端)まで、ほぼ弛みがなく、張られた状態を創出する。
【0060】
サポートベルト60は、一端から他端まで一続きに構成されているため、サポートベルト60の各所に働く張力は、概ね一定に見做すことができる。そうすると、ユーザー2が荷物Wと共にグリップベルト64を持つ際に、グリップベルト64及びスライダ63を介してサポートベルト60に働く力は、連結部5、第1ベルト通し61、第2ベルト通し62及びフットループ60aの各々に分散される。つまり、当該サポートベルト60に働く力は、ユーザー2の肩、骨盤部、足の各々へ分散して伝わる。
【0061】
運搬支援具1を装着せずにユーザー2が荷物Wを上げ下げする場合、荷物Wが重ければ重い程、主に腕と腰に集中的に負荷がかかる。この場合、ユーザー2が繰り返し荷物Wを上げ下げする作業を行えば、ユーザー2の健康が害される虞がある。一方、運搬支援具1によれば、上記のように、荷物Wを上げ下げする際にユーザー2に伝わる力を身体の各所に分散させることができるため、ユーザー2が荷物Wを持つ際の負担を軽減することができる。したがって、ユーザー2に健康被害が生じることを抑制することができる。
【0062】
また、バンド3において、骨盤パッド30は、複数のサブベルトループ34によって、ユーザー2の腰部に締められるサブベルト32に吊される。このバンド3の構造により、サポートベルト60及び第2ベルト通し62を介して骨盤パッド30に働く力を、骨盤部だけでなく、腰部にも分散させることができる。したがって、ユーザー2が荷物Wを持つ際の負担をより良好に軽減することができる。
【0063】
ここで、
図5に、サポート機構6Lを単純化した滑車装置として表した参考図を示す。サポート機構6Rについても同様であるが、ここでは、代表してサポート機構6Lについて述べる。
【0064】
紐9はサポートベルト60に相当し、要素E1は連結部5に相当し、要素E2は第1ベルト通し61に相当し、要素E3は第2ベルト通しに相当し、要素E4はフットループ60aに通されたユーザー2の足に相当する。
図5では、単純化のため、各要素E1~E4の位置をデフォルメしている。さらに単純化し、要素E2、E3を固定要素と見做せば、スライダ53を、互いに連結された動滑車Q1,Q2と見做すことができる。この場合、要素E2に固定された定滑車P1は第1ベルト通し61に、要素E3に固定された定滑車P2は第2ベルト通し61に相当する。互いに連結された動滑車Q1,Q2に働く荷重をMとし、摩擦及び抵抗を無視すれば、
図5の滑車装置において、紐9を介して要素E1及び要素E4に働く力は、1/4Mとなる。つまり、この滑車装置では、要素E1及び要素E4を相対的に1/4Mの力で上げ下げすることで、互いに連結された動滑車Q1,Q2を上げ下げできる。これをサポート機構6Lに当てはめれば、互いに連結された動滑車Q1,Q2に相当するスライダ63の機能によって、スライダ63に加わる荷重を、当該荷重よりも小さい力でサポートベルト60に分散できることが理解されるであろう。
【0065】
しかしながら、実際には、要素E1~E4の各々がユーザー2の姿勢に応じて変位すると共に、各所に摩擦、抵抗などが働く。
図5は、あくまでスライダ63の機能の理解を容易にするための参考図にすぎず、本発明の効果を限定するものでないことに留意されたい。
【0066】
(変形例)
ここからは、運搬支援具1の変形例について説明する。以下では、上記実施形態と同様の機能を有する構成については、上記実施形態と同じ符号を用い、その説明を適宜省略する。以下の変形例では、上記実施形態と異なる点を主に説明する。
【0067】
変形例に係る運搬支援具1は、上記実施形態と同様に、バンド3、肩パッド4、連結部5及びサポート機構6L,6Rを備える。この変形例は、スライダ63及びサポートベルト60のかけ方が上記実施形態と異なる。
【0068】
変形例に係るスライダ63は、
図6に示すように、上記実施形態の第2挿通部632に相当する構成を省略した部材である。このスライダ63は、
図7に示すように、矩形状のベゼル630と、サポートベルト60が通される第1挿通部631を有する。
【0069】
図6に示すように、変形例のサポートベルト60は、一端(連結部5の側の端)から他端(フットループ60aの側の端)に向かって、第1挿通部631、第1ベルト通し61、第2ベルト通し62の順でそれぞれに通される。
【0070】
サポートベルト60は、一端から第1挿通部631に向かう部分と、第1ベルト通し61から第2挿通部632に向かう部分とが交差する。このようにサポートベルト60が交差する部分を、
図6では交差部Cとして示した。変形例に係るサポート機構6Lのサポートベルト60は、交差部Cがユーザー2の左脇下を通る。つまり、交差部Cと肩パッド4の間に、ユーザー2の左腕が通される。変形例に係るサポート機構6Rのサポートベルト60については、サポート機構6Lと左右の関係が逆になる他は、同様である。
【0071】
具体的に、変形例に係るスライダ63は、
図7に示すように、ベゼル630の一部を構成する第1の軸63aと、グリップベルト64を保持する保持部63dと、を有する。変形例に係る第1挿通部631は、ベゼル630の開口部分である。
【0072】
スライダ63には、サポートベルト60に対するスライダ63のスライドを補助する第1補助ローラーR1が設けられる。第1補助ローラーR1は、第1の軸63aに回転可能に支持される。
図6に示すように、第1補助ローラーR1には、サポートベルト60の第1挿通部631を通る部分がかけられる。当該部分は、より詳細に言えば、サポートベルト60における連結部5と第1ベルト通し61の間にある部分である。
【0073】
変形例に係る運搬支援具1の動作について主に
図6を参照して説明する。
【0074】
サポートベルト60において、スライダ63から交差部Cに至る部分は、第1挿通部61で折り返されたラップ部分Bとなる。ラップ部分Bの長さは、ユーザー2の姿勢に応じてサポートベルト60に対してスライドするスライダ63の位置によって変化する。ラップ部分Bとサポートベルト60の実効的な長さの関係は、ラップ部分Aを用いて説明した内容と同様である。
【0075】
変形例においても、スライダ63は、ユーザー2が荷物Wを上げ下げする際のユーザー2の姿勢の変化に追従し、サポートベルト60が一端(連結部5の側の端)から他端(フットループ60aの側の端)まで、ほぼ弛みがなく、張られた状態を創出する。
【0076】
サポートベルト60は、一端から他端まで一続きに構成されているため、サポートベルト60の各所に働く張力は、概ね一定に見做すことができる。そうすると、ユーザー2が荷物Wと共にグリップベルト64を持つ際に、グリップベルト64及びスライダ63を介してサポートベルト60に働く力は、連結部5、第1ベルト通し61、第2ベルト通し62及びフットループ60aの各々に分散される。つまり、当該サポートベルト60に働く力は、ユーザー2の肩、骨盤部、足の各々へ分散して伝わる。したがって、変形例に係る運搬支援具1によっても、荷物Wを上げ下げする際にユーザー2に伝わる力を身体の各所に分散させることができるため、ユーザー2が荷物Wを持つ際の負担を軽減することができる。
【0077】
なお、図示しないが、この変形例を
図6のように単純化した滑車装置で考えれば、変形例に係るスライダ63は一つの動滑車に見做すことができる。この動滑車に働く荷重の1/2の力で、動滑車にかけられた紐の一端及び他端を相対的に上げ下げすることができる。つまり、変形例に係る運搬支援具1は、上記実施形態よりも負担軽減作用が少ないと想定されるものの、その構成が簡潔である点が優れている。なお、ここで考えた滑車装置も参考にすぎず、本発明の効果を限定するものでないことに留意されたい。
【0078】
本発明は以上の実施形態、変形例及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0079】
運搬支援具1を構成する各部については、それら機能を妨げない限りにおいては任意に形状を変更することが可能であり、それらの材質も種々の材料から適したものを選択することができる。
【0080】
例えば、上記で、ベルト、ストラップ、吊り材と称した構成については、必ずしも帯状のものに限られず、紐、チェーン、ロープ、ワイヤ等に適宜変更可能である。
【0081】
また、第1ベルト通し61のローラー61b、第2ベルト通し62に設けることが可能な図示せぬローラー、スライダ53の第1補助ローラーR1及び第2補助ローラーR2として、ローラーベアリングを採用してもよい。さらに、各ローラーのうち、少なくとも一部を省略し、サポートベルト60がローラーを介さずに対象部分にかけられる構成を採用してもよい。
【0082】
バンド3は、ユーザー2の骨盤部と腰部の少なくともいずれかに巻かれる構成であればよい。例えば、バンド3から、サブベルト32及びサブベルトループ34を省略することも可能である。
【0083】
以上では、サポートベルト60の一端がリング材50に固定される例を説明したが、サポートベルト60の一端は、連結部5における任意の箇所に固定されてもよい。さらに、サポートベルト60の一端は、連結部5ではなく、肩パッド4の背当て部40に固定されてもよい。
【0084】
ここで、上記実施形態及び変形例に係る運搬支援具1の効果について纏めて述べる。
【0085】
(1)上記実施形態に係る運搬支援具1において、サポートベルト60は、一端から他端に向かって、スライダ63の第1挿通部631、第1ベルト通し61、スライダ63の第2挿通部632、第2ベルト通し62の順でそれぞれに通され、ユーザー2が荷物Wと共にグリップベルト64を持つ動作に応じて、スライダ63がサポートベルト60に対してスライドする。この運搬支援具1によれば、上記のように、荷物Wを上げ下げする際にユーザー2に伝わる力を身体の各所に分散させることができるため、ユーザー2が荷物Wを持つ際の負担を軽減することができる。
【0086】
(2)変形例に係る運搬支援具1において、サポートベルト60は、一端から他端に向かって、スライダ63の挿通部(第1挿通部631)、第1ベルト通し61、第2ベルト通し62の順でそれぞれに通され、ユーザー2が荷物Wと共にグリップベルト64を持つ動作に応じて、スライダ63がサポートベルト60に対してスライドする。変形例に係る運搬支援具1によっても、上記のように、ユーザー2が荷物Wを持つ際の負担を軽減することができ、加えて、上記実施形態に比べ構成を簡潔とすることができる。
【0087】
(3)上記実施形態に係る運搬支援具1において、第2挿通部632は、第1挿通部631よりもグリップベルト64に近い位置に設けられる。この構成により、
図3に示すように、スライダ63に対するグリップベルト64の位置を適切に保つことができ、且つ、サポートベルト60が意図せず交差することを抑制することができる。
【0088】
(4)上記実施形態に係る運搬支援具1において、スライダ63に第1補助ローラーR1及び第2補助ローラーR2を設けることで、サポートベルト60とスライダ63の相対動作を円滑にすることができる。
【0089】
(5)上記実施形態又は変形例に係る運搬支援具1において、第1ベルト通し61及び第2ベルト通し62の少なくともいずれかに、サポートベルト60がかけられるローラーを設けてもよい。これにより、第1ベルト通し61及び第2ベルト通し62の少なくともいずれかに対するサポートベルト60の相対動作を円滑にすることができる。
【0090】
(6)上記実施形態又は変形例に係る運搬支援具1において、グリップベルト64に滑り止め加工を施こしてもよい(つまり、グリップベルト64が滑り止め加工部64aを有していてもよい)。これにより、ユーザー2は、グリップベルト64を介して荷物Wを良好に持つことができる。ここで、比較例として、グリップベルト64に相当する部材に、荷物Wを掛止するフックを取り付けた構成を考える。この比較例では、ユーザー2が転倒しそうな場合にすぐさま荷物Wをフックから解除することが困難であるため、荷物Wと共に転倒してしまう虞がある。一方、フックに頼らずに、滑り止め加工部64aによってグリップベルト64と共に荷物Wを持ちやすくした運搬支援具1によれば、ユーザー2は、荷物Wを持ちながら転倒しそうな場合、荷物W及びグリップベルト64から手を離すだけで荷物Wと共に転倒してしまうことを回避できる。このようにして、ユーザー2の安全を担保することができる。
【0091】
(7)上記実施形態又は変形例に係る運搬支援具1が備えるバンド3において、骨盤パッド30は、複数のサブベルトループ34によって、ユーザー2の腰部に締められるサブベルト32に吊される。このバンド3の構造により、骨盤パッド30に働く力を、骨盤部だけでなく、腰部にも分散させることができる。したがって、ユーザー2が荷物Wを持つ際の負担をより良好に軽減することができる。
【0092】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0093】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0094】
1…運搬支援具、2…ユーザー、W…荷物
3…バンド
30…骨盤パッド
31…メインベルト、31a…留め具
32…サブベルト、32a…留め具
33…繋止部
34…サブベルトループ、35…メインベルトループ
36…上側支持ループ、37…下側支持ループ
4…肩パッド
40…背当て部、4L,4R…延在部
5…連結部
50…リング材、51…第1ストラップ、52…第2ストラップ
6L,6R…サポート機構
60…サポートベルト、60a…フットループ
61…第1ベルト通し、61a…軸、61b…ローラー
62…第2ベルト通し、62a…軸
63…スライダ
630…ベゼル、631…第1挿通部、632…第2挿通部
63a…第1の軸、R1…第1補助ローラー
63b…第2の軸、R2…第2補助ローラー
63c…第3の軸
63d…保持部
64…グリップベルト、64a…滑り止め加工部
7…吊り材
9…紐
A,B…ラップ部分、C…交差部
E1~E4…要素、Q1,Q2…動滑車、P1,P2…定滑車