(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041147
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B62J23/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145795
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田治 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】石栗 嘉之
(57)【要約】
【課題】外観性の低下を抑制しつつラジエータの排熱効果が高められた鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】自動二輪車1は、ヘッドパイプ11を有する車体フレーム10と、ヘッドパイプ11を車幅方向外側から覆うミドルカウル52と、を備える。ミドルカウル52には、車両側面視で後方に開放された切欠61が形成されている。ミドルカウル52は、車両側面視で切欠61の上方に設けられたアッパーミドルカウル65と、車両側面視で切欠61の下方に設けられたロアミドルカウル67と、を有する。アッパーミドルカウル65の後端部65rは、車両側面視でロアミドルカウル67の後端部67rよりも後方に位置する。アッパーミドルカウル65は、車両側面視でエンジン30のシリンダヘッドカバー35の少なくとも一部を車幅方向外側から覆う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(11)を有する車体フレーム(10)と、
前記車体フレーム(10)に支持されたエンジン(30)と、
前記ヘッドパイプ(11)を車幅方向外側から覆うミドルカウル(52)と、
を備え、
前記エンジン(30)は、シリンダヘッドカバー(35)を持つシリンダ(32)を有し、
前記ミドルカウル(52)には、車両側面視で後方に開放された切欠(61)が形成され、
前記ミドルカウル(52)は、
車両側面視で前記切欠(61)の上方に設けられたアッパーミドルカウル(65)と、
車両側面視で前記切欠(61)の下方に設けられたロアミドルカウル(67)と、
を有し、
前記アッパーミドルカウル(65)の後端部(65r)は、車両側面視で前記ロアミドルカウル(67)の後端部(67r)よりも後方に位置し、
前記アッパーミドルカウル(65)は、車両側面視で前記シリンダヘッドカバー(35)の少なくとも一部を車幅方向外側から覆う、
鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記アッパーミドルカウル(65)の前記後端部(65r)は、前輪(2)の車軸および後輪(3)の車軸の中点(M)よりも前方に位置する、
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ミドルカウル(52)は、前記切欠(61)を前後に区画する仕切り部(71)を有する、
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記切欠(61)の前端部(61f)は、車両側面視で前記ヘッドパイプ(11)の中心軸線(C)よりも前方に位置する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
ラジエータ(40)を備え、
前記仕切り部(71)は、前記ラジエータ(40)のキャップ(43)を車幅方向の外側から覆う、
請求項3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記ミドルカウル(52)は、
車幅方向外側に位置するアウターミドルカウル(60)と、
車幅方向内側に位置するインナーミドルカウル(80)と、
を有し、
前記アウターミドルカウル(60)には、前記仕切り部(71)の前方に位置する第1開口(62)、および前記仕切り部(71)の後方に位置する第2開口(63)が形成され、
前記インナーミドルカウル(80)は、車両側面視で前記第1開口(62)と重なる位置にダクト(81)を有する、
請求項3または請求項5に記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記ロアミドルカウル(67)の前記後端部(67r)と前記切欠(61)の前端部(61f)とを通る仮想直線(L)は、車両側面視で前輪(2)の車軸および後輪(3)の車軸を結ぶ仮想線分(S)に交差する、
請求項6に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃費向上に関する研究開発が行われている。鞍乗り型車両においては、車体前部を車幅方向の外側から覆うミドルカウルを設けることで、空力特性を高めて燃費の向上を図るとともに、ラジエータに走行風が多く当たるように構成する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃費向上に関する本技術においては、ラジエータの排熱効果を高めるという観点で、ミドルカウルの形状に改善の余地がある。一方で、ミドルカウルを縮小すると、ミドルカウルの内側に配置された構造が露出することで、外観性が低下する可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、外観性の低下を抑制しつつラジエータの排熱効果が高められた鞍乗り型車両を提供するものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る鞍乗り型車両は、ヘッドパイプ(11)を有する車体フレーム(10)と、前記車体フレーム(10)に支持されたエンジン(30)と、前記ヘッドパイプ(11)を車幅方向外側から覆うミドルカウル(52)と、を備え、前記エンジン(30)は、シリンダヘッドカバー(35)を持つシリンダ(32)を有し、前記ミドルカウル(52)には、車両側面視で後方に開放された切欠(61)が形成され、前記ミドルカウル(52)は、車両側面視で前記切欠(61)の上方に設けられたアッパーミドルカウル(65)と、車両側面視で前記切欠(61)の下方に設けられたロアミドルカウル(67)と、を有し、前記アッパーミドルカウル(65)の後端部(65r)は、車両側面視で前記ロアミドルカウル(67)の後端部(67r)よりも後方に位置し、前記アッパーミドルカウル(65)は、車両側面視で前記シリンダヘッドカバー(35)の少なくとも一部を車幅方向外側から覆う。
【0007】
第1の態様によれば、アッパーミドルカウルによってシリンダヘッドカバーを覆うことで外観性の低下を抑制できる。さらに、アッパーミドルカウルの後端に対してロアミドルカウルの後端が前方に位置するので、ラジエータの排風がロアミドルカウルによって阻害されにくくなる。したがって、外観性の低下を抑制しつつラジエータの排熱効果が高めることができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る鞍乗り型車両は、上記第1の態様に係る鞍乗り型車両において、前記アッパーミドルカウル(65)の前記後端部(65r)は、前輪(2)の車軸および後輪(3)の車軸の中点(M)よりも前方に位置していてもよい。
【0009】
第2の態様によれば、ミドルカウルの前後方向の大きさを縮小してミドルカウルの軽量化を図ることができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る鞍乗り型車両は、上記第1の態様または第2の態様に係る鞍乗り型車両において、前記ミドルカウル(52)は、前記切欠(61)を前後に区画する仕切り部(71)を有していてもよい。
【0011】
第3の態様によれば、アッパーミドルカウルとロアミドルカウルとが仕切り部によって連結されるので、アッパーミドルカウルおよびロアミドルカウルそれぞれのバタつきを抑制してミドルカウルの剛性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る鞍乗り型車両は、上記第1の態様から第3の態様のいずれかの態様に係る鞍乗り型車両において、前記切欠(61)の前端部(61f)は、車両側面視で前記ヘッドパイプ(11)の中心軸線(C)よりも前方に位置していてもよい。
【0013】
第4の態様によれば、切欠の前端が車両側面視でヘッドパイプの中心軸線よりも後方に位置する構成と比較して、切欠の面積の拡大を図ることができる。これにより、車両を左右にバンクさせる際のミドルカウルによる空気抵抗を減らし、操縦安定性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る鞍乗り型車両は、上記第3の態様に係る鞍乗り型車両において、ラジエータ(40)を備え、前記仕切り部(71)は、前記ラジエータ(40)のキャップ(43)を車幅方向の外側から覆っていてもよい。
【0015】
第5の態様によれば、車両側面視でラジエータのキャップが隠されるため、鞍乗り型車両の外観性が向上する。
【0016】
本発明の第6の態様に係る鞍乗り型車両は、上記第3の態様または第5の態様に係る鞍乗り型車両において、前記ミドルカウル(52)は、車幅方向外側に位置するアウターミドルカウル(60)と、車幅方向内側に位置するインナーミドルカウル(80)と、を有し、前記アウターミドルカウル(60)には、前記仕切り部(71)の前方に位置する第1開口(62)、および前記仕切り部(71)の後方に位置する第2開口(63)が形成され、前記インナーミドルカウル(80)は、車両側面視で前記第1開口(62)と重なる位置にダクト(81)を有していてもよい。
【0017】
第6の態様によれば、ダクトに導入された走行風を、第1開口を通じてミドルカウルの外側に直接逃がすことができる。したがって、ミドルカウルの内側に案内された走行風の一部を効率よく排風できる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る鞍乗り型車両は、上記第6の態様に係る鞍乗り型車両において、前記ロアミドルカウル(67)の前記後端部(67r)と前記切欠(61)の前端部(61f)とを通る仮想直線(L)は、車両側面視で前輪(2)の車軸および後輪(3)の車軸を結ぶ仮想線分(S)に交差していてもよい。
【0019】
第7の態様によれば、第1開口および第2開口を通じて排風された走行風が乗員の上半身に当たりにくくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外観性の低下を抑制しつつラジエータの排熱効果が高められた鞍乗り型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態の自動二輪車を示す右側面図である。
【
図2】実施形態の自動二輪車の前部を示す右側面図である。
【
図3】実施形態の自動二輪車の前部を示す右側面図であって、アウターミドルカウルを透視した図である。
【
図5】実施形態の右側のアウターミドルカウルを示す右側面図である。
【
図6】実施形態の自動二輪車におけるミドルカウルの切欠周辺を右後方から見た斜視図である。
【
図7】実施形態の自動二輪車におけるミドルカウルの切欠周辺を右後方から見た斜視図であって、アウターミドルカウルを取り外した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後上下左右等の方向は、以下に説明する車両における方向と同一とする。すなわち、上下方向は鉛直方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。また、以下の説明に用いる図中において、矢印UPは上方、矢印FRは前方、矢印LHは左方をそれぞれ示している。
【0023】
図1は、実施形態の自動二輪車を示す右側面図である。
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車1は、鞍乗り型車両の一例である。自動二輪車1は、車体フレーム10と、前輪2を支持するステアリング機構20と、原動機であるエンジン30と、ラジエータ40と、車両の外郭を形成する車体カバー50と、燃料タンク4と、シート5と、を備える。
【0024】
車体フレーム10は、ヘッドパイプ11と、メインフレーム12と、ピボットフレーム13と、ダウンフレーム14と、を備える。ヘッドパイプ11は、車体フレーム10の前端に設けられている。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11の上部から下方かつ後方へ延びている。ピボットフレーム13は、メインフレーム12の後端部から下方に延びている。ピボットフレーム13は、スイングアームを上下揺動可能に支持している。ダウンフレーム14は、ヘッドパイプ11の下部から下方かつ後方へ、メインフレーム12よりも急峻に延びている。
【0025】
図2は、実施形態の自動二輪車の前部を示す右側面図である。
図2に示すように、ステアリング機構20は、左右一対のフロントフォーク21と、一対のフロントフォーク21の上部の間に渡って設けられるトップブリッジ22およびボトムブリッジ23と、トップブリッジ22とボトムブリッジ23との間に渡って設けられたステアリングステム(不図示)と、を備える。一対のフロントフォーク21は、下端部に前輪2を軸支している。一対のフロントフォーク21には、前輪2を覆うフロントフェンダが取り付けられている。トップブリッジ22は、操向ハンドル25を支持している。ステアリングステム(不図示)は、車体フレーム10のヘッドパイプ11内に挿通されて、車体フレーム10に支持されている。
【0026】
図3は、実施形態の自動二輪車の前部を示す右側面図であって、アウターミドルカウルを透視した図である。
図3に示すように、エンジン30は、メインフレーム12の下方、かつピボットフレーム13の前方に配置されている。エンジン30は、クランクシャフトを収容するクランクケース31と、クランクケース31の前部に結合したシリンダ32と、を備える。クランクケース31の後部は、ピボットフレーム13に支持されている。
【0027】
シリンダ32は、クランクケース31から前上方に突出したシリンダブロック33と、シリンダブロック33に前上方から連結されたシリンダヘッド34と、シリンダヘッド34に前上方から連結されたシリンダヘッドカバー35と、を備える。シリンダブロック33の前部は、ダウンフレーム14に支持されている。シリンダブロック33内には、ピストンが嵌装されている。ピストンは、シリンダヘッド34との間に燃焼室を形成する。ピストンは、コンロッドを介してクランクシャフトのクランクピンに連結される。ピストンの往復動は、コンロッドを介してクランクシャフトの回転動に変換される。シリンダヘッド34は、吸気バルブや排気バルブ等を含む動弁機構を保持する。シリンダヘッドカバー35は、動弁機構を前上方から覆っている。シリンダヘッドカバー35には、不図示のチューブが接続されるチューブ接続部36が設けられている。チューブ接続部36は、前上方に突出している。チューブ接続部36は、チューブを介してエアクリーナに接続される。
【0028】
ラジエータ40は、シリンダ32の前方に配置されている。ラジエータ40は、車幅方向外側から見た側面視でダウンフレーム14とフロントフォーク21との間に位置し、ダウンフレーム14に支持されている。ラジエータ40は、クロスフロー方式のラジエータ40である。ラジエータ40は、内部を流通する冷却水を放熱するラジエータコア41(
図7参照)と、ラジエータコア41の車幅方向の端部に隣接する第1タンク42および第2タンク(不図示)と、を備える。ラジエータ40は、ラジエータコア41の受風面を前方に向けるように、僅かに前傾した姿勢で配置されている。図示しないが、ラジエータコア41は、車両の車幅中心に交差するように配置され、正面視でエンジン30のシリンダ32に重なっている。ラジエータコア41は、複数のチューブおよび放熱フィンを備える。チューブは正面視で車幅方向に延びて第1タンク42の内部および第2タンクの内部を連通させる。
【0029】
第1タンク42は、ラジエータコア41の右端部に隣接し、ラジエータ40の右端に配置されている。第2タンクは、ラジエータコア41の左端部に隣接し、ラジエータ40の左端に配置されている。第1タンク42および第2タンクは、側面視で長手方向を上下方向に沿わせた状態で、上端部が下端部よりも前方に位置するように前傾姿勢で配置されている。第1タンク42の上端には、冷却水補充口を閉塞するキャップ43が離脱可能に装着されている。第1タンク42および第2タンクの一方の下端には冷却水を排出する排出口が形成され、他方の下端には冷却水が流入する流入口が形成されている。
【0030】
図2に示すように、車体カバー50は、車体フレーム10等を覆う。車体カバー50は、車両の車幅中心に対しておおよそ左右対称に形成されている。車体カバー50は、アッパーカウル51と、ミドルカウル52と、ロアカウル53と、を備える。
【0031】
アッパーカウル51は、側面視でフロントフォーク21の前方に配置されている。アッパーカウル51は、ヘッドパイプ11の前方に配置されたメータ6、およびメータ6の周囲を囲うメータパネル91を前方から覆う。アッパーカウル51は、平面視および側面視のそれぞれで前方に先細るように形成されている。アッパーカウル51の上面は、アッパーカウル51の前端から後上方に延びつつ、車幅方向外側に向かうに従い後方に延びている。アッパーカウル51の上面には、ウィンドスクリーン92が取り付けられている。アッパーカウル51の内側には、ヘッドライトユニット7が配置されている。ヘッドライトユニット7のレンズ7aは、アッパーカウル51の左右両側面に露出しており、前方に光を投射可能とされている。
【0032】
図4は、実施形態の自動二輪車を示す正面図である。
図3および
図4に示すように、アッパーカウル51には、左右一対の開口部56が形成されている。開口部56は、ヘッドライトユニット7のレンズ7aの下方で前方に開口している。一対の開口部56は、それぞれ左右一対のエアクリーナダクト94に1対1で連通している。エアクリーナダクト94は、エアクリーナに走行風を導く。エアクリーナダクト94は、筒状に形成され、開口部56から後方に延びている。エアクリーナダクト94の内部は、開口部56を通じて車両前方の空間に連通している。
【0033】
図2に示すように、ミドルカウル52は、車両の左右両側に対称配置されている。ミドルカウル52は、ヘッドパイプ11を車幅方向の外側から覆っている。ミドルカウル52は、側面視でフロントフォーク21の前方の領域から後方の領域にわたって配置されている。ミドルカウル52の前部は、側面視でレンズ7aの後下方に配置され、アッパーカウル51の側面に重なっている。ミドルカウル52は、その前部から後方に延びた後、下方に延びている。ミドルカウル52は、側面視で前輪2に対して間隔をあけつつ、前輪2の外周に沿って前輪2の上方から後方にわたって配置されている。ミドルカウル52は、その前部から後方に延びる過程で、側面視でフロントフォーク21、ヘッドパイプ11の下部、ラジエータ40、ダウンフレーム14、シリンダ32、およびメインフレーム12に車幅方向の外側から重なっている。
【0034】
図4に示すように、ミドルカウル52は、アッパーカウル51と協働して前輪2のタイヤハウスを形成している。タイヤハウスの中央には、ラジエータ40が配置されている。
【0035】
図2および
図3に示すように、各ミドルカウル52は、車幅方向外側に位置するアウターミドルカウル60と、車幅方向内側に位置するインナーミドルカウル80と、を有する。これらアウターミドルカウル60およびインナーミドルカウル80を組み合わせることでミドルカウル52が形成されている。アウターミドルカウル60およびインナーミドルカウル80の間には、エアクリーナダクト94が前後方向に挿通されている。
【0036】
図5は、実施形態の左右一対のアウターミドルカウルのうち右側のアウターミドルカウルを示す右側面図である。
図2および
図5に示すように、アウターミドルカウル60は、ミドルカウル52のうち車幅方向外側から視認可能な部分の略全体を形成している。すなわち本実施形態では、インナーミドルカウル80の全体が側面視でアウターミドルカウル60に覆われているので、車両外観上において、ミドルカウル52の側面視形状はアウターミドルカウル60の側面視形状に一致している。
【0037】
アウターミドルカウル60には、側面視で後方に開放された切欠61と、車幅方向外側に開放されたウィンカ開口64と、が形成されている。切欠61は、側面視でエンジン30のシリンダ32に重なる位置から前方に延びている。切欠61の前端部61fは、側面視でヘッドパイプ11の中心軸線Cよりも前方に位置する。アウターミドルカウル60は、側面視で切欠61の上方に設けられたアッパーミドルカウル65と、側面視で切欠61の下方に設けられたロアミドルカウル67と、を有する。すなわち、アッパーミドルカウル65およびロアミドルカウル67は、切欠61によって互いに区画されている。ウィンカ開口64は、ウィンカランプ96の灯体を支持する軸を挿通する。ウィンカ開口64は、ロアミドルカウル67を車幅方向に貫通している。ウィンカ開口64は、切欠61の前端部61fよりも前方かつ下方に形成されている。
【0038】
切欠61の側面視形状について詳述する。
図5に示すように、切欠61の縁部は、アッパーミドルカウル65に形成された上縁部61aと、ロアミドルカウル67に形成された下縁部61bと、を備える。上縁部61aは、アッパーミドルカウル65の後端部65rから前下方に延びる後部61a1と、後部61a1の前端から前上方に延びる前部61a2と、を有する。下縁部61bは、ロアミドルカウル67の後端部67rから前上方に延びる後部61b1と、後部61b1の前端から後部61b1よりも緩やかな傾斜で前方に延びる中間部61b2と、中間部61b2の前端から中間部61b2よりも急傾斜で前上方に延びる前部61b3と、を有する。下縁部61bの後部61b1の全体は、上縁部61aの後部61a1の下方に位置する。下縁部61bの中間部61b2は、上縁部61aの後部61a1と前部61a2との接続部を前後方向に跨ぐように設けられている。切欠61の前端部61fは、上縁部61aの後端よりも下方、かつ下縁部61bの後端よりも上方に位置する。
【0039】
図2および
図5に示すように、アッパーミドルカウル65の後端部65rは、側面視でメインフレーム12に重なっている。アッパーミドルカウル65は、その後端部65rからミドルカウル52の前端部まで延びている。アッパーミドルカウル65は、側面視でシリンダヘッドカバー35の少なくとも一部を車幅方向外側から覆っている。本実施形態では、アッパーミドルカウル65のうち切欠61の上縁部61aの後部61a1が、側面視でシリンダヘッドカバー35のうちチューブ接続部36に重なっている。さらに、アッパーミドルカウル65は、側面視でメインフレーム12、ダウンフレーム14、ヘッドパイプ11、およびフロントフォーク21に重なっている。アッパーミドルカウル65の後端部65rは、ロアミドルカウル67の後端部67rよりも後方に位置する。換言すると、側面視でアッパーミドルカウル65の後端部65rを通り上下方向に延びる仮想直線Pは、ロアミドルカウル67の後端部67rよりも後方を通る。アッパーミドルカウル65の後端部65rは、ミドルカウル52の後端部である。アッパーミドルカウル65の後端部65rは、前輪2の車軸および後輪3の車軸の中点Mよりも前方に位置する(
図1参照)。
【0040】
ロアミドルカウル67は、側面視でメインフレーム12およびピボットフレーム13に重ならないように配置されている。ロアミドルカウル67の後端部67rは、シリンダヘッド34に重なっている。ロアミドルカウル67の後端部67rは、上下方向においてラジエータ40のラジエータコア41と同じ位置にある。ロアミドルカウル67は、後端部67rから側面視で前輪2の外周に沿って下方に延びる下部68と、後端部67rから側面視で前輪2の外周に沿ってミドルカウル52の前端部まで前上方に延びる上部69と、を備える。ロアミドルカウル67の上部69は、側面視でシリンダヘッド34、ダウンフレーム14、ラジエータ40、およびフロントフォーク21に重なっている。ロアミドルカウル67は、側面視でラジエータ40の上端部をアッパーミドルカウル65側に突出させるようにラジエータ40に重なっている。
【0041】
図1に示すように、ロアミドルカウル67の後端部67rと切欠61の前端部61fとを通る仮想直線Lは、側面視でメインフレーム12の下方を通り、エンジン30のクランクケース31およびピボットフレーム13に重なっている。仮想直線Lは、側面視で前輪2の車軸および後輪3の車軸を結ぶ仮想線分Sに交差している。
【0042】
図6は、実施形態の自動二輪車におけるミドルカウルの切欠周辺を右後方から見た斜視図である。
図2および
図6に示すように、アウターミドルカウル60は、切欠61を前後に区画する仕切り部71をさらに備える。これにより切欠61は、仕切り部71の前方に位置する第1開口62と、仕切り部71の後方に位置する第2開口63と、を備える。仕切り部71は、アッパーミドルカウル65とロアミドルカウル67とを接続するように延びている。仕切り部71は、切欠61の上縁部61aの前部61a2、および下縁部61bの前部61b3に接続している。仕切り部71は、側面視でラジエータ40のキャップ43に重なっている。仕切り部71は、側面視でキャップ43の全体に重なっている。ただし仕切り部は、側面視でキャップ43の少なくとも一部に重なっていればよい。また、仕切り部は、側面視で冷却水補充口に重なっていてもよい。
【0043】
図3および
図4に示すように、インナーミドルカウル80は、タイヤハウスを画成している。インナーミドルカウル80は、走行風をラジエータ40に向けて案内するシュラウドとして機能する。
【0044】
図7は、実施形態の自動二輪車におけるミドルカウルの切欠周辺を右後方から見た斜視図であって、アウターミドルカウルを取り外した状態を示す。
図6および
図7に示すように、インナーミドルカウル80は、ダクト81を有する。ダクト81は、側面視で第1開口62と重なる位置に設けられている(
図2および
図3参照)。ダクト81は、車幅方向の内側に開放されてタイヤハウスに連通する開口部を有するとともに、開口部から車幅方向外側に延びてアウターミドルカウル60の第1開口62の開口縁に接続している。これにより、ダクト81は、タイヤハウスとミドルカウル52の外側の空間とを連通させている。
【0045】
図2に示すように、ロアカウル53は、クランクケース31の下部を下方および車幅方向の外側から覆っている。ロアカウル53は、ミドルカウル52とは別個に設けられている。ロアカウル53は、側面視でクランクケース31の下方に位置する底部54と、側面視で底部54から前上方に延びる延出部55と、を備える。底部54の前端は、ロアミドルカウル67の下部68の下端に接続している。延出部55の上端は、ロアミドルカウル67の後端部67rに接続している。ロアカウル53の全体は、側面視でロアミドルカウル67の後端部67rと切欠61の前端部61fとを通る仮想直線Lよりも下方に配置されている(
図1参照)。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、側面視で切欠61の上方に設けられたアッパーミドルカウル65と、側面視で切欠61の下方に設けられたロアミドルカウル67と、を有するミドルカウル52を備える。アッパーミドルカウル65の後端部65rは側面視でロアミドルカウル67の後端部67rよりも後方に位置し、アッパーミドルカウル65は側面視でシリンダヘッドカバー35の少なくとも一部を車幅方向外側から覆っている。この構成によれば、アッパーミドルカウル65によってシリンダヘッドカバー35を覆うことで外観性の低下を抑制できる。さらに、アッパーミドルカウル65の後端部65rに対してロアミドルカウル67の後端部67rが前方に位置するので、ラジエータ40の排風がロアミドルカウル67によって阻害されにくくなる。したがって、外観性の低下を抑制しつつラジエータ40の排熱効果が高めることができる。
【0047】
アッパーミドルカウル65の後端部65rは、前輪2の車軸および後輪3の車軸の中点Mよりも前方に位置する。この構成によれば、ミドルカウル52の前後方向の大きさを縮小してミドルカウル52の軽量化を図ることができる。
【0048】
ミドルカウル52は、切欠61を前後に区画する仕切り部71を有する。この構成によれば、アッパーミドルカウル65とロアミドルカウル67とが仕切り部71によって連結されるので、アッパーミドルカウル65およびロアミドルカウル67それぞれのバタつきを抑制してミドルカウル52の剛性を向上させることができる。
【0049】
切欠61の前端部61fは、側面視でヘッドパイプ11の中心軸線Cよりも前方に位置する。この構成によれば、切欠61の前端が側面視でヘッドパイプ11の中心軸線Cよりも後方に位置する構成と比較して、切欠61の面積の拡大を図ることができる。これにより、車両を左右にバンクさせる際のミドルカウル52による空気抵抗を減らし、操縦安定性を向上させることができる。
【0050】
仕切り部71は、ラジエータ40のキャップ43を車幅方向の外側から覆っている。この構成によれば、側面視でラジエータ40のキャップ43が隠されるため、自動二輪車1の外観性が向上する。
【0051】
ミドルカウル52は、車幅方向外側に位置するアウターミドルカウル60と、車幅方向内側に位置するインナーミドルカウル80と、を有する。アウターミドルカウル60には、仕切り部71の前方に位置する第1開口62、および仕切り部71の後方に位置する第2開口63が形成されている。インナーミドルカウル80は、側面視で第1開口62と重なる位置にダクト81を有する。この構成によれば、ダクト81に導入された走行風を、第1開口62を通じてミドルカウル52の外側に直接逃がすことができる。したがって、ミドルカウル52の内側のタイヤハウスに案内された走行風の一部を効率よく排風できる。
【0052】
ロアミドルカウル67の後端部67rと切欠61の前端部61fとを通る仮想直線Lは、側面視で前輪2の車軸および後輪3の車軸を結ぶ仮想線分Sに交差している。この構成によれば、第1開口62および第2開口63を通じて排風された走行風が乗員の上半身に当たりにくくすることができる。
【0053】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、インナーミドルカウル80の全体が側面視でアウターミドルカウル60に覆われているが、この構成に限定されない。すなわち、車両外観上に側面視でインナーミドルカウルが視認可能に配置されていてもよい。この場合、ミドルカウルの切欠がインナーミドルカウルに形成されていてもよく、アッパーミドルカウルおよびロアミドルカウルのうち少なくともいずれか一方にインナーミドルカウルが含まれていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、アッパーミドルカウル65が側面視でシリンダヘッドカバー35の一部のみを覆っているが、この構成に限定されない。アッパーミドルカウルは、側面視でシリンダヘッドカバーの全体を覆っていてもよい。
【0055】
また、各アウターミドルカウル60は、単体のパネルによって形成されていてもよいし、複数のパネルによって形成されていてもよい。例えば、アウターミドルカウル60は、切欠61が形成された部分と、その切欠61が形成された部分を囲うように配置された部分と、が別体のパネルによって形成されていてもよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…自動二輪車 2…前輪 3…後輪 4…燃料タンク 10…車体フレーム 11…ヘッドパイプ 20…ステアリング機構 21…フロントフォーク 30…エンジン 31…クランクケース 33…シリンダブロック 34…シリンダヘッド 35…シリンダヘッドカバー 40…ラジエータ 43…キャップ 52…ミドルカウル 60…アウターミドルカウル 61…切欠 61f…前端部 62…第1開口 63…第2開口 65…アッパーミドルカウル 65r…後端部 67…ロアミドルカウル 67r…後端部 71…仕切り部 80…インナーミドルカウル 81…ダクト C…中心軸線 L…仮想直線 M…中点 S…仮想線分