(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041148
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】洗い場床パネル及び洗い場床パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20240319BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E04F15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145797
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 壮丞
【テーマコード(参考)】
2D061
2E220
【Fターム(参考)】
2D061CA02
2D061CB00
2D061CC03
2D061CC05
2D061CC15
2E220AA06
2E220AB03
2E220DA02
2E220DB09
2E220FA01
2E220GA02X
2E220GA24X
2E220GB01Y
2E220GB32X
2E220GB32Z
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB34Z
2E220GB37X
(57)【要約】
【課題】表層シートと排水口部材とを熱融着によって接合する際に、熱融着によって軟化した表層シートを形成する樹脂が排水口部材との接合部から流出することを抑制し、高い意匠性及び水はけ性を保持する洗い場床パネル及び洗い場床パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】浴室の洗い場1bに設置される洗い場床パネル3であって、開口部が設けられ、開口部に向かう排水勾配が設けられた床本体10と、開口部と対応する排水口30aが設けられ、開口部に配置される排水口部材30と、開口部と対応する貫通孔が設けられ、床本体10を覆う表層シート20とを備え、排水口部材30及び表層シート20が熱融着によって接合されており、排水口部材30は、表層シート20との接合部において、熱融着によって軟化した表層シート20を形成する樹脂を収容する溝31が設けられている、洗い場床パネル。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の洗い場に設置される洗い場床パネルであって、
開口部が設けられ、前記開口部に向かう排水勾配が設けられた床本体と、
前記開口部と対応する排水口が設けられ、前記開口部に配置される排水口部材と、
前記開口部と対応する貫通孔が設けられ、前記床本体を覆う表層シートとを備え、
前記排水口部材及び前記表層シートが熱融着によって接合されており、
前記排水口部材は、前記表層シートとの接合部において、熱融着によって軟化した前記表層シートを形成する樹脂を収容する溝が設けられている、洗い場床パネル。
【請求項2】
前記溝の断面形状がU字状である、請求項1に記載の洗い場床パネル。
【請求項3】
前記溝は、前記排水口の外周に設けられた第1溝と、前記第1溝の外周に設けられた第2溝とにより構成される、請求項1に記載の洗い場床パネル。
【請求項4】
前記第1溝の断面積が、前記第2溝の断面積より小さい、請求項3に記載の洗い場床パネル。
【請求項5】
前記表層シートを形成する樹脂は、可塑剤を含有する熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の洗い場床パネル。
【請求項6】
前記表層シートを形成する樹脂は、前記排水口部材を形成する樹脂より軟質の熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の洗い場床パネル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の洗い場床パネルの製造方法であって、
前記排水口部材上に前記表層シートを設置する工程と、
前記排水口部材及び前記表層シートを熱融着によって接合する工程とを含む、洗い場床パネルの製造方法。
【請求項8】
前記熱融着は、高周波溶着である、請求項7に記載の洗い場床パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い場の床構造に関し、特に、洗い場床パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室用の洗い場は、意匠性、クッション性、リフォーム機能性を付与するために床本体と表層シートに分割して構成されることがある。表層シートと床本体が別な構成であると、例えば、表層シートが傷んだり劣化したりしてクッション性が低下したときは模様替えのためにリフォーム可能であり利便性が高まる。また、洗い場本体の意匠性は表層シートによって決まることが多いため、複数の色柄を取り揃える際でも、床本体は共通化させることができるため生産性も高い。
【0003】
表層シートと排水口部材を接合するにあたっては、水漏れなどに対する耐久性を高めるために、高い接合強度も必要となる。高い接合強度を得るために、熱融着によって表層シートを溶融させて表層シートと排水部材を接合する構造が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。しかし、表層シートを溶融させた場合、熱融着中の圧縮・溶融より、表層シートと排水口部材とを接合した箇所から軟化した表層シートを形成する樹脂が流出してしまう場合がある。軟化した表層シートを形成する樹脂が排水口部材との接合箇所から流出してしまった場合、洗い場の意匠性及び水はけ性は損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-207405号公報
【特許文献2】特開2012-207406号公報
【特許文献3】特開2012-207407号公報
【特許文献4】特開2012-207408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、表層シートと排水口部材とを熱融着によって接合する際に、熱融着によって軟化した表層シートを形成する樹脂が排水口部材との接合部から流出することを抑制し、高い意匠性及び水はけ性を保持する洗い場床パネル及び洗い場床パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]浴室の洗い場に設置される洗い場床パネルであって、開口部が設けられ、前記開口部に向かう排水勾配が設けられた床本体と、前記開口部と対応する排水口が設けられ、前記開口部に配置される排水口部材と、前記開口部と対応する貫通孔が設けられ、前記床本体を覆う表層シートとを備え、前記排水口部材及び前記表層シートが熱融着によって接合されており、前記排水口部材は、前記表層シートとの接合部において、熱融着によって軟化した前記表層シートを形成する樹脂を収容する溝が設けられている、洗い場床パネル。
[2]前記溝の断面形状がU字状である、[1]に記載の洗い場床パネル。
[3]前記溝は、前記排水口の外周に設けられた第1溝と、前記第1溝の外周に設けられた第2溝とにより構成される、[1]又は[2]に記載の洗い場床パネル。
[4]前記第1溝の断面積が、前記第2溝の断面積より小さい、[3]に記載の洗い場床パネル。
[5]前記表層シートを形成する樹脂は、可塑剤を含有する熱可塑性樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載の洗い場床パネル。
[6]前記表層シートを形成する樹脂は、前記排水口部材を形成する樹脂より軟質の熱可塑性樹脂である、[1]~[5]のいずれかに記載の洗い場床パネル。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の洗い場床パネルの製造方法であって、前記排水口部材上に前記表層シートを設置する工程と、前記排水口部材及び前記表層シートを熱融着によって接合する工程とを含む、洗い場床パネルの製造方法。
[8]前記熱融着は、高周波溶着である、[7]に記載の洗い場床パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表層シートと排水口部材とを熱融着によって接合する際に、熱融着によって軟化した表層シートを形成する樹脂が排水口部材との接合部から流出することを抑制し、高い意匠性及び水はけ性を保持する洗い場床パネル及び洗い場床パネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る浴室の洗い場床パネルを示す平面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1のA-A線に沿う、洗い場床パネルの排水口側の端部の断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の点線で囲われた排水口の拡大断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る浴室の洗い場床パネルの排水口部材に設けられた溝の形状を示す平面図である。
【
図4】
図4(a)は、断面形状がU字型である溝の断面図であり、
図4(b)は、断面形状が半円状である溝の断面図である。
【
図5】
図5(a)は、表層シートと排水縁部材とを接合する様子を示す断面図である。
図5(b)は、表層シートと排水縁部材とを熱融着する前の様子を示す断面図である。
図5(c)は、表層シートと排水縁部材とを熱融着した後の様子を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る浴室の洗い場床パネルの排水口部材と表層シートとの接合状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る浴室の洗い場床パネルの排水口部材に設けられた溝の形状を示す平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る浴室の洗い場床パネルの排水口部材と表層シートとの接合状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る浴室の洗い場床パネルの排水口部材に設けられた溝の形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る実施形態に係る洗い場床パネル3は、
図1に示すように、浴室の洗い場1bに設けられる。洗い場床パネル3は、床本体10と、表層シート20と、排水口部材30とを備える。洗い場床パネル3は、
図1においては平面視で長方形状(四角形状)になっているが特に限定はなく、種々の形状を取りうる。
【0011】
床本体10は、
図2に示すように、床本体部材11と、床本体部材11の上面に設けられた上側補強パネル部材12と、下面に設けられた下側補強パネル部材13とを備える。
床本体部材11は、発泡ポリスチレン(EPS)、発泡ポリプロピレン(EPP)及び発泡ポリエチレン(EPE)等の発泡樹脂によって板状に成形された部材である。
床本体部材11である発泡樹脂の発泡倍率は、好ましくは15倍~30倍であり、より好ましくは18~22倍である。
【0012】
下側補強パネル部材13は、底板部13aと、側板部13bとを有している。下側補強パネル部材13は、鋼板などの金属板をシャーリング、穴開け、折り曲げなどにより成形することによって構成される。
下側補強パネル部材13の厚みは、好ましくは0.5mm~1.2mmであり、より好ましくは0.5mm~0.8mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
【0013】
下側補強パネル部材13の底板部13aは、
図2に示すように、床本体部材11の下面を覆うように配置される。本実施形態における四角形の底板部13aにおいては、外周4辺の端部からそれぞれ側板部13bが一体に立ち上がっている。側板部13bは、床本体部材11の端面を覆うように配置される。互いに隣接する側板部13b同士は、縁切りスリット(図示省略)によって縁切りされている。
下側補強パネル部材13は、例えば、熱硬化性の接着剤(図示省略)によって、床本体部材11と接着される。
【0014】
浴室の洗い場1bの浴槽側の立ち上り部14は、
図2に示すように、浴槽側面及び上面に樹脂押出成形材からなる立ち上り補強部材15が覆うように配置されている。そして、
図2に示すように、床本体部材11における浴室の洗い場1bの立ち上り部14を除く部分の上面には上側補強パネル部材12が覆うように配置されている。上側補強パネル部材12は、例えば、熱硬化性の接着剤(図示省略)によって、床本体部材11と接着されている。
上側補強パネル部材12は、鋼板などの金属板をシャーリング、穴開けなどにより成形することによって構成される。
上側補強パネル部材12の厚みは、好ましくは0.5mm~1.2mmであり、より好ましくは0.6mm~1.0mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
【0015】
床本体10の一箇所には、
図1に示した排水口部材30の位置に対応する箇所に開口部(図示省略)が設けられている。開口部は、例えば、洗い場1bの立ち上り部14側であって、浴槽1a側の端部の幅方向(
図1において上下)の中央部に配置される。床本体10は、開口部に向かう排水勾配が設けられている。床本体10において、開口部に向かう排水勾配が設けられていることで、洗い場床パネル3も同様に、開口部(排水口部材30)に向かう排水勾配が設けられている。
床本体10に設けられた排水勾配は、水平面に対して好ましくは0.5度~3度であり、より好ましくは1度~2.5度である。
【0016】
表層シート20は、
図2に示すように、床本体10の上面を覆うように配置される。表層シート20は、防水性を有しており、床本体部材11への浸水を防止する。さらに、表層シート20は、柔軟性を有しており、洗い場床パネル3の温熱感性及びクッション性が確保されている。さらに、表層シート20は、表面に柄及び模様を配することで、意匠性を向上させることができる。
表層シート20の厚みは、好ましくは2mm~4mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
【0017】
表層シート20は、例えば、両面粘着テープ(図示省略)を介して床本体10と接合される。表層シート20は、浴槽側部(
図2において左側部)においては、立ち上り部14に沿って立ち上がり、立ち上り部14の洗い場側面を覆うように配置されている。
表層シート20は、床本体10の開口部と対応する箇所に、貫通孔23が設けられている。貫通孔23は、床本体10の開口部の上端部に連なっている。
【0018】
表層シート20を形成する樹脂としては、熱融着によって排水口部材30と接合可能な樹脂であれば特に限定はなく、例えば、軟質塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリブデン樹脂(PB)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリウレタンエラストマー(TPU)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。中でも、熱融着(高周波溶着)による接合に適している軟質塩化ビニル樹脂(PVC)及びポリウレタンエラストマー(TPU)が好ましい。
【0019】
表層シート20を形成する樹脂は、熱可塑性樹脂であり、必要に応じて可塑剤が添加されてもよい。可塑剤としては、表層シート20を形成する樹脂としての熱可塑性樹脂を可塑化するものであれば特に限定されず、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸系可塑剤が挙げられる。これらは、単独で用いられても、2種類以上併用されてもよい。表層シート20を形成する樹脂は、可塑剤が添加されている熱可塑性樹脂であると、熱融着(高周波溶着)によって効率よく接合することができ、中でも、上記の可塑剤等が添加されている軟質塩化ビニル樹脂(PVC)が熱融着(高周波溶着)に有利な材料となり得る。
【0020】
表層シート20を構成する材料が熱可塑性樹脂であり、表層シート20を形成する樹脂は、排水口部材30を形成する樹脂より軟質であることが好ましい。排水口部材30は構造体部品のため、硬質の樹脂を採用することが適しているが、表層シート20は熱融着によって接合するので軟質の樹脂を採用することが好ましい。表層シート20を軟質の樹脂を採用することでクッション性及び触感を確保することができる。そのため、表層シート20は、排水口部材30に比べて軟質であることが好ましい。
【0021】
排水口部材30は、
図2に示すように、床本体10の開口部に配置される。排水口部材30の中央には、
図2(a)及び(b)に示すように、床本体10の開口部と対応する排水口30aが形成されている。また、排水口部材30の上部には、
図2(a)及び(b)に示すように、上方に突出した突起30bと水平方向に延在する接合部30cが形成されている。
【0022】
排水口部材30は、
図2に示すように、表層シート20との接合部30cにおいて、溝31が設けられている。溝31は、
図3に示すように、床本体10の開口部に配置される排水口30aの外周に設けられる。
溝31は、熱融着によって軟化した表層シート20を形成する樹脂を収容する。具体的には、溝31は、熱融着によって表層シート20を溶かしすぎたり、熱融着させる際に加圧しすぎたりして、表層シート20と排水口部材30との接合箇所から流出してしまう表層シート20を形成する樹脂を収容する。
【0023】
排水口部材30の溝31の断面形状は、溝形状であれば特に限定はなく、例えば、U字状、半円状及び矩形状等が挙げられる。
溝31に流れ込んできた樹脂は流動性を有するものの、液状ではないため、直角の底では角まで樹脂が入りきらず隙間が空いてしまう。接合部30cにおける非接合面積を少しでも減らすために、軟化して流動性を持った樹脂が馴染みやすい円形の底部であることが好ましく、溝31の断面形状は、
図4(a)に示すようなU字状、及び
図4(b)に示すような半円状であることが好ましい。
接合部30cにおいて溝31が設けられると、溝31が埋まっていない熱融着の初期状態では接合面積が減ってしまうため、接合部30cにおける溝31の幅Wはできるだけ短いことが好ましい。しかし、溝31の幅Wを短くすると溝31の体積が減り、流動性を持った樹脂を納める機能の能力が落ちてしまう。そこで、溝31の幅Wを短くしつつ、溝31の体積を確保するためには溝31の深さDを伸ばした形状であることが好ましく、溝31の断面形状は、
図4(a)に示すようなU字状であることがより好ましい。
溝31の幅Wは、好ましくは1.0mm~5.0mmであり、より好ましくは1.5mm~3.5mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
溝31の深さDは、好ましくは0.5mm~3.0mmであり、より好ましくは0.8mm~1.8mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
【0024】
排水口部材30を構成する材料としては、表層シート20より硬質である材料であることが好ましく、例えば、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)及びアクリルニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)等の硬質樹脂が挙げられる。中でも、アクリロニトリルスチレンアクリレートであることが、耐候性が優れる観点から好ましい。
【0025】
特に、表層シート20と排水口部材30を構成する材料の組合せとしては、軟質塩化ビニル(PVC)と、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)が好ましい。表層シート20を構成する材料が熱可塑性樹脂としては、発熱されやすいため軟質塩化ビニル(PVC)が損失係数の観点から熱融着に適している。対して、排水口部材30を構成するアクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)は、軟質塩化ビニル(PVC)の過剰な熱量によって接合面のみが加熱されて流動性を持つことで接合される。これにより、接合部以外は加熱・発熱されないため、形状を維持することができる。
【0026】
排水口部材30及び表層シート20を接合する手段としては、熱融着が挙げられる。排水口部材30及び表層シート20を熱融着する方法を以下に示す。
まず、
図5(a)に示すように、排水口部材30上に表層シート20を設置する。具体的には、排水口部材30の突起30bを、表層シート20の貫通孔23の断面と接するように位置を合わせて設置する。
その後、
図5(b)に示すように、排水口部材30及び表層シート20を熱融着により接合する。具体的には、高周波電流によって、表層シート20を発熱させ、その熱で排水口部材30を加熱し、両者ともに熱による流動性を持たせたところへ加圧することで密着性を高めて接合する(高周波溶着を施す)。高周波電流により表層シート20自らが発熱することで、接触面全体が高熱となり、接合することができるため、排水口部材30でいうと上面の接合部30cだけでなく、垂直面の突起30bも接合することが可能となる。また、外部から加熱を施さないため、加熱による表面の変形が発生せず、表層シート20としての意匠性の損失を最小限に抑えてに接合できる。
そして、熱融着によって軟化した表層シート20を形成する樹脂を、
図5(c)に示すように、排水口部材30の接合部30cに設けられた溝31で収容する。溝31で熱融着によって軟化した樹脂を収容することによって、表層シート20と排水口部材30とを接合した箇所から軟化した表層シート20を形成する樹脂が流出してしまうことを防ぐことができる。
【0027】
本発明の第1の実施の形態に係る洗い場床パネルによれば、排水口部材30の接合部30cに溝31が設けられていることで、表層シート20と排水口部材30とを接合した箇所から軟化した表層シート20を形成する樹脂が流出することを抑制することができ、洗い場の高い意匠性及び水はけ性を保持することができる。また、軟化して流動性を有する表層シート20を形成する樹脂が圧縮されたことで流出した樹脂を溝31に収めることで、表層シート20のパターン消失及び変形を防止することができる。
また、排水口部材30及び表層シート20を熱融着で接合することで、排水口部材30及び表層シート20の隙間を埋めることができ、耐薬品性及び耐久性を向上させ、かつ、排水口部材30及び表層シート20の接合強度を向上させることができる。
【0028】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、
図6及び
図7に示すように、溝31は、排水口30aの外周に設けられた第1溝31aと、第1溝31aの外周に設けられた第2溝31bとにより構成される点である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0029】
溝31が第1溝31aと第2溝31bとにより構成されることで、溝31の総体積を分散して確保することができる。溝31の総体積を分散して確保することで、溝内において熱融着ができない部位を減らすことができる、初期の熱融着範囲を広くすることができる等の熱融着による接合強度を向上させることができる。
また、溝31が第1溝31aと第2溝31bとにより構成されることで、熱融着加工の間、第1溝31aと第2溝31bとの間の領域を密閉状態にすることができ、排水口部材30と表層シート20との熱融着を効率よく行うことができ、表層シート20に形成されているパターンの消失や変形を防止することができる。
第1溝31aと第2溝31bとの間隔は、好ましくは5.0mm~10.0mmであり、より好ましくは7.0mm~10.0mmであるが、必ずしも上記数値範囲に限定されるものではない。
【0030】
[第2の実施形態の変形例]
第2の実施形態の変形例における洗い場床パネルは、
図8及び
図9に示すように、第1溝31aの断面積が、第2溝31bの断面積より小さい形態とすることができる。
【0031】
第1溝31a及び第2溝31bの断面積とは、第1溝31a及び第2溝31bの延伸する方向に対して直交する断面形状における面積をいう。つまり、第1溝31aの断面積は、第1溝31aの幅と第1溝31aの深さに依存し、第2溝31bの断面積は、第2溝31bの幅と第2溝31bの深さに依存する。
第1溝31aの断面積が、第2溝31bの断面積より小さいことで、第1溝31aで収容することができなくなった軟化した表層シート20を形成する樹脂は、第2溝31bへ流動して収容される。このことにより、第1溝31aが設けられる排水口30a近傍の排水口部材30と表層シート20との熱融着による接合強度を維持することができる。なお、断面積が大きい第2溝31b近傍の接合強度は、排水口30a近傍の接合強度と比べて低下してしまう傾向となるが、排水口30a近傍の接合強度の影響と比べて低いため、当該形態としても問題ない。
【0032】
[その他の実施形態]
本発明は、以上の第1及び第2の実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない限りいかなる改良、変更を行ってもよい。
例えば、第1及び第2の実施形態では溝31は、直線形状で示したが、曲線部を有する形状であってもよい。
また、第1及び第2の実施形態では溝31は、繋がった周形状で示したが、点在するような形状であってもよい。
また、2の実施形態では溝31は、2つの第1溝31aと第2溝31bとにより構成される形状で示したが、3つ以上の溝により構成される形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、例えば建物に納められる浴室ユニットの洗い場床に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1b 洗い場
3 洗い場床パネル
10 床本体
10c 本体排水開口
20 表層シート
21 洗い場中央排水勾配面
22 排水口部排水勾配面
23 貫通孔
24 表層断面溶融部
30 排水口部材
30a 排水口
30b 突起
30c 溶着部
31 溝
31a 第1溝
31b 第2溝