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特開2024-41163生産設備の生産性評価システム、又は、生産性評価方法
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  • 特開-生産設備の生産性評価システム、又は、生産性評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041163
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】生産設備の生産性評価システム、又は、生産性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145819
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大隈 滋
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA41
3C100AA56
3C100BB17
3C100BB33
3C100BB34
(57)【要約】
【課題】ジョブショップ型生産設備の運用状況に基づいて生産性をリアルタイムに評価する。
【解決手段】生産性評価システムは、複数種の製品を生産するための複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリアを有するジョブショップ型生産設備の生産性を評価する。本システムは、所定期間に取得された作業員の位置情報に基づいて、複数のエリアに含まれるエリア間における作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データを作成する。移動実績データは、ジョブショップ型生産設備のレイアウトに関する評価指標の算出に用いられる。評価指標は基準値と比較されることにより、ジョブショップ型生産設備の生産性が評価される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の製品を生産するための複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリアを有するジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための生産設備の生産性評価システムであって、
前記複数のジョブを遂行する作業員の位置情報を取得するための位置情報取得部と、
所定期間に取得された前記位置情報に基づいて、前記複数のエリアに含まれるエリア間における前記作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データを作成し、前記移動実績データに基づいて前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトに関する評価指標を算出するための評価指標算出部と、
前記評価指標を基準値と比較することにより、前記ジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための評価部と、
を備える、生産設備の生産性評価システム。
【請求項2】
前記評価指標は、前記移動実績データに基づいて前記エリア間ごとに前記作業員の前記移動回数を集計することにより作成されるFrom-Toチャートを用いて算出される前記作業員の総移動距離である、請求項1に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項3】
前記基準値は、前記ジョブショップ型生産設備の生産計画情報に基づいて算出される前記所定期間における前記作業員の総移動距離基準値である、請求項1又は2に記載の生産設備評価システム。
【請求項4】
前記評価部は、
前記生産計画情報に基づいて前記製品ごとに前記作業員が移動する前記エリアを示す経路分析表を作成し、
前記経路分析表を変換することにより、前記エリア間ごとに前記作業員の前記移動回数を集計することにより前記From-Toチャートを作成し、
前記From-Toチャートに基づいて、前記総移動距離基準値を算出する、請求項3に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項5】
前記評価部は、前記総移動距離の前記総移動距離基準値からの乖離度が閾値を超えた場合に、前記レイアウトの変更が必要であると判定する、請求項3に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項6】
前記評価指標は、前記複数種の製品から選択される対象製品を単位個数生産するために必要な設備の稼働時間であるサイクルタイムであり、
前記基準値は、前記ジョブショップ型生産設備に対して設定されるタクトタイムであり、
前記評価部は、前記サイクルタイムが前記タクトタイムを上回る場合に、前記レイアウトの変更が必要であると判定する、請求項1に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項7】
前記タクトタイムは、前記移動実績データに基づいて特定される不稼働時間を前記所定期間から除いた稼働時間を、前記所定期間における前記対象製品の生産数で割ることにより算出される、請求項6に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項8】
前記評価部は、前記レイアウトの変更が必要であると判断された場合に、前記ジョブショップ型生産設備の制約条件のもとで、前記評価指標が最適値になるように、前記ジョブショップ型生産設備の最適レイアウトを算出する、請求項2又は6に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項9】
前記評価部は、前記位置情報に基づいて、同一の前記エリア間について異なる前記移動時間が得られた場合、前記移動時間の最大値又は最小値の少なくとも一方を特定する、請求項1に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項10】
前記位置情報は、前記作業員が所持する携帯端末から取得される、請求項1に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項11】
前記位置情報は、前記ジョブショップ型生産設備に配置されたセンサから取得される、請求項1に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項12】
前記位置情報は、前記ジョブショップ型生産設備に設置された撮像装置によって撮像された画像データに基づいて取得される、請求項1に記載の生産設備の生産性評価システム。
【請求項13】
複数種の製品を生産するための複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリアを有するジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための生産設備の生産性評価方法であって、
前記複数のジョブを遂行する作業員の位置情報を取得する工程と、
所定期間に取得された前記位置情報に基づいて、前記複数のエリアに含まれるエリア間における前記作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データを作成し、前記移動実績データに基づいて前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトに関する評価指標を算出する工程と、
前記評価指標を基準値と比較することにより、前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトを評価する工程と、
を備える、生産設備の生産性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産設備評価システム、又は、生産設備評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種の製品の生産可能な生産設備の一態様として、ジョブショップ型生産設備がある。ジョブショップ型生産設備では、生産対象となる各製品の生産過程で実施される複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリア(ショップ)を有する。各エリアには、対応するジョブに適した機能や性能を有する生産機械がグルーピングされて配置される。ジョブショップ型生産設備におけるエリアのレイアウト配置は、生産計画(生産対象となる製品の種類や量)に基づいて適宜見直されることで、ジョブショップ型生産設備は、多種少量の製品生産に適した態様として知られている。例えば特許文献1では、ジョブショップ型生産設備において、複数種の製品を効率的に生産する生産計画を作成するための生産計画作成装置に関して開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-095392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジョブショップ型生産設備では、今後生産される製品の種類及び量を含む生産計画に基づいて、各エリア間の距離や、各エリア間における作業員の移動回数を見直すことにより、各エリアの配置レイアウトの効率化を図ることが重要である。一方で、現実のジョブショップ型生産設備では、生産計画に対する運用実績のずれや、都度行われる比較的小規模な生産計画の変更の積み重ねによって、生産計画に対して効率的とされる配置レイアウトが流動的に変化することがある。この場合、当初の生産計画に対して効率的に設定された配置レイアウトが、変化後の生産計画に対して後発的に適さなくなり、エリア間の移動時間や作業時間に無駄が生じ、生産効率が低下してしまっている場合がある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、ジョブショップ型生産設備の運用状況に基づいて生産性をリアルタイムに評価可能な生産設備の生産性評価システム、又は、生産性評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る生産設備の生産性評価システムは、上記課題を解決するために、
複数種の製品を生産するための複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリアを有するジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための生産設備の生産性評価システムであって、
前記複数のジョブを遂行する作業員の位置情報を取得するための位置情報取得部と、
所定期間に取得された前記位置情報に基づいて、前記複数のエリアに含まれるエリア間における前記作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データを作成し、前記移動実績データに基づいて前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトに関する評価指標を算出するための評価指標算出部と、
前記評価指標を基準値と比較することにより、前記ジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための評価部と、
を備える。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る生産設備の生産性評価方法は、上記課題を解決するために、
複数種の製品を生産するための複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリアを有するジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための生産設備評価方法であって、
前記複数のジョブを遂行する作業員の位置情報を取得する工程と、
所定期間に取得された前記位置情報に基づいて、前記複数のエリアに含まれるエリア間における前記作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データを作成し、前記移動実績データに基づいて前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトに関する評価指標を算出する工程と、
前記評価指標を基準値と比較することにより、前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトを評価する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ジョブショップ型生産設備の運用状況に基づいて生産性をリアルタイムに評価可能な生産設備の生産性評価システム、又は、生産性評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】生産設備の構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係る生産性評価システムの構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る生産性評価方法を示すフローチャートである。
図4】他の実施形態に係る生産性評価方法を示すフローチャートである。
図5図4のステップS201で作成されるFrom-Toチャートの一例である。
図6図4のステップS204で作成される経路分析表の一例である。
図7図6に示す経路分析表の変換によってFrom-Toチャートを作成する様子を示す図である。
図8】他の実施形態に係る生産性評価方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
まず図1を参照して、本開示の少なくとも一実施形態に係る生産性評価システム及び生産性評価方法の評価対象である生産設備1について説明する。図1は生産設備1の構成を概略的に示す図である。
【0012】
生産設備1は、複数種の製品A、B、・・・を生産するためのジョブショップ型生産設備である。生産設備1は、各製品A、B、・・・の生産過程で実施される複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリアP1、P2、・・・を有する。各エリアP1、P2、・・・には、各ジョブに適した機能や性能を有する生産機械がグルーピングされてそれぞれ配置される。図1では、製品AはエリアP1、P3を介して生産され、製品BはエリアP2、P5、P4を介して生産され、製品CはエリアP4、P6を介して生産されることが例示されている。このような生産設備1における各エリアP1、P2、・・・の配置レイアウトは、生産設備1で生産される各製品A、B、・・・の種類、及び、数を設定する生産計画に基づいて設計される。
【0013】
尚、図1では、生産設備1の生産対象として3種類の製品X、Y、Zを取り扱う場合を例示しているが、生産設備1で取扱可能な製品の種類や数は限定されない。また生産設備1が有するエリアの数、各エリアの広さ、各エリアに配置される生産機械もまた限定されない。
【0014】
続いて上記の生産設備1の生産性を評価するための生産性評価システム100の構成について説明する。図2は一実施形態に係る生産性評価システム100の構成を示すブロック図である。
【0015】
生産性評価システム100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0016】
生産性評価システム100は、記憶媒体等に記憶されたプログラムが実行されることにより、図2に示す各機能ブロックが実現される。具体的には、生産性評価システム100は、位置情報取得部102と、評価指標算出部104と、基準値取得部106は、評価部108とを備える。
【0017】
位置情報取得部102は、生産設備1で製品の生産に従事する作業員の位置情報Ipを取得するための構成である。生産設備1で従事する作業員が複数いる場合には、各作業員について位置情報Ipが取得されてもよい。位置情報Ipは、生産設備1における作業員の位置が時間と関連付けられて規定され、生産設備1の各エリアにおける滞在期間、各エリア間における作業員の移動距離又は移動距離を特定可能な情報である。
尚、位置情報Ipの具体的な取得態様については後述する。
【0018】
評価指標算出部104は、位置情報取得部102で取得された位置情報Ipに基づいて、生産設備1の生産性に関する評価指標Vを算出するための構成である。評価指標Vの具体例については後述するが、所定期間にわたって取得された位置情報Ipに基づいて、生産設備1で製品が生産されている間における作業員の移動実績を示す移動実績データDを作成し、移動実績データDに基づいて評価指標Vが算出される。移動実績データDには、生産設備1の各エリア間における作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離が含まれる。
【0019】
尚、評価指標算出部104は、位置情報Ipに基づいて評価指標Vを算出する際に、位置情報Ipから把握される各エリアP1、P2、・・・間における作業員の移動時間に基づいて評価指標Vを算出してもよい。このとき同一エリア間において移動時間が幾つか得られた場合には、移動時間の平均値を当該エリア間における移動時間として特定してもよいし、その最大値又は最小値を当該エリア間における移動時間として特定してもよい。前者の場合、移動時間の平均値に基づいて標準的な移動時間を用いた評価指標Vの算出が可能となる。後者の場合、移動時間を過大又は過小に評価した移動時間を用いて評価指標Vを算出することで、生産設備1の現実の運用状況に応じた生産性の評価を行うこともできる。
【0020】
基準値取得部106は、評価指標Vに対する基準値Vrefを取得するための構成である。基準値Vrefは、評価指標Vと比較されることにより、生産設備1の生産性を評価するための基準となるパラメータであり、評価指標Vに対応するように設定又は算出される。
【0021】
評価部108は、評価指標Vを基準値Vrefと比較することにより、生産設備1の生産性を評価するための構成である。評価結果には、例えば、生産設備1における生産性が定量化されたパラメータが含まれていてもよい。また評価結果には、生産設備1における各エリアの配置レイアウトの変更要否に関する判定結果や、配置レイアウトの変更が必要であると判定された場合には最適化された配置レイアウトが含まれていてもよい。
【0022】
続いて上記構成を有する生産性評価システム100によって実施される生産性評価方法について説明する。図3は一実施形態に係る生産性評価方法を示すフローチャートである。
【0023】
まず位置情報取得部102は、複数のジョブを遂行する作業員の位置情報Ipを取得する(ステップS100)。位置情報Ipの取得は、少なくとも所定時間にわたって時間的に連続して(例えば所定のサンプリング周波数で)行われる。位置情報Ipは、生産設備1における作業員の位置が時刻と関連付けられることにより、作業員が生産設備1においてどのような移動を行っているかを把握可能である。
【0024】
一態様では、位置情報Ipは、作業員が所持する携帯端末から取得される。この場合、携帯端末として、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット或いは専用端末のような各種ポータブルデバイスを用いることができる。そして、これらの携帯端末に搭載されるGPS機能のような位置情報Ipを取得するための機能を利用することで、携帯端末を所持する作業員の生産設備1における位置情報Ipを取得可能である。
【0025】
また他の態様では、位置情報Ipは、生産設備1に配置されたセンサ(例えばBコンなど)から取得される。この場合、センサは、例えば生産設備1が有する各エリアP1、P2、・・・に配置されることで、作業員が各エリアに位置する際の位置情報Ipを取得可能になっていてもよい。またセンサは、各エリアP1、P2、・・・間に配置されることで、作業員がエリア間を移動する際の位置情報Ipを取得可能になっていてもよい。また本態様では、前述のGPS機能では通信状態によって位置情報Ipが取得困難な領域においてもセンサを設置しておくことで、位置情報Ipの取得が可能である点において有利である。
【0026】
また他の態様では、位置情報Ipは、生産設備1に設置された撮像装置によって撮像された画像データに基づいて取得される。この態様では、生産設備1の所定位置に対して監視カメラのような撮像装置が配置される。撮像装置は、生産設備1の各エリアP1、P2、・・・における作業員を認識するための撮像範囲をカバーする。撮像装置によって取得した画像データは画像解析によって、作業員の生産設備1における移動状況が特定される。
尚、撮像装置を用いて位置情報Ipを取得する態様では、撮像装置は、生産設備1の各エリアP1、P2、・・・において作業員が移動する可能性のある範囲をカバーする視野を有するように(すなわち死角がないように)、各エリアP1、P2、・・・、又は、各エリアP1、P2、・・・間に配置される。
【0027】
続いて評価指標算出部104は、ステップS100で取得された位置情報Ipに基づいて、移動実績データDを作成する(ステップS101)。ステップS101では、移動実績データDの作成に、所定期間の位置情報Ipが用いられる。ここで所定期間は、生産設備1の生産性を評価するための期間として適宜設定可能である。移動実績データDは、生産設備1における作業員の移動状況を示すデータであり、生産設備1が有するエリアP1、P2、・・・間における作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離が含まれる。
【0028】
続いて評価指標算出部104は、ステップS101で作成された移動実績データDに基づいて、生産設備1の生産性に関する評価指標Vを算出し(ステップS102)、基準値取得部106は、基準値Vrefを取得する(ステップS103)。基準値Vrefは、評価指標Vに基づいて生産設備1の生産性を評価する際の基準となるパラメータである。そして評価部108は、ステップS102で算出された評価指標VをステップS103で取得された基準値Vrefと比較することにより、生産設備1の生産性を評価する(ステップS104)。
【0029】
生産性評価システム100では、作業員の位置情報Ipに基づいて、生産設備1の運用状況をリアルタイムに把握することで、現実の生産設備1における生産性を信頼性よく評価できる。これにより、当初の生産計画に対する運用実績のずれや、都度行われる比較的小規模な生産計画の変更の積み重ねによって、生産計画に対して効率的とされる配置レイアウトが流動的に変化する場合においても、評価結果に基づいて配置レイアウトの見直し等の対策を講じることが可能となる。
【0030】
続いて上記の生産性評価システム100及び生産性評価方法の具体的な実施形態について説明する。まず評価指標Vとして、生産設備1における作業員の総移動距離が取り扱われる実施形態について図4を参照して説明する。図4は他の実施形態に係る生産性評価方法を示すフローチャートである。
【0031】
まず位置情報取得部102は、位置情報Ipを取得する(ステップS200)。ステップS200は、ステップS100と同様である。
【0032】
続いて評価指標算出部104は、ステップS200で取得された位置情報Ipに基づいて、From-Toチャートを作成する(ステップS201)。ステップS201では、所定期間に取得された位置情報Ipを移動実績データDとし、移動実績データDに基づいてエリアP1、P2、・・・間ごとに作業員の移動回数を集計することによりFrom-Toチャートが作成される。
【0033】
ここで図5図4のステップS201で作成されるFrom-Toチャートの一例である。ステップS200で取得される位置情報Ipは生産設備1における作業員の位置に関する情報を含んでおり、これを含む移動実績データによれば、各製品A、B、・・・を生産する際に、作業員が生産設備1のどのエリアP1、P2、・・・間を移動したかが特定される。From-Toチャートでは、生産設備1の各エリアP1、P2、・・・の組み合わせがマトリクス状に示されており、移動実績データDに基づいて特定された作業員の移動実績が、対応する製品A、B、・・・ごとに示される。このように作成されたFrom-Toチャートによれば、各製品A、B、・・・を生産する際に生産設備1における作業員の移動が、どのエリアP1、P2、・・・間で行われるかを容易に把握することが可能である。
【0034】
続いて評価指標算出部104は、ステップS201で作成したFrom-Toチャートに基づいて、評価指標Vとして総移動距離を算出する(ステップS202)。総移動距離の算出は、From-Toチャートから特定される各エリアP1、P2、・・・間の移動回数を、予め特定された各エリアP1、P2、・・・間の距離にそれぞれ乗算した結果を集計することにより行われる。このように算出された総移動距離は、生産設備1において作業員が所定期間に移動する距離の合計値であり、生産性を評価するための指標の1つとして取り扱い可能である。
尚、ステップS202で総移動距離の算出に用いられる各エリアP1、P2、・・・間の距離は、例えば、生産設備1の設計レイアウトに基づいて予め特定できる。
【0035】
続いて基準値取得部106は、生産計画情報を取得する(ステップS203)。生産計画情報は、生産設備1における生産計画に関する情報であり、例えば、今後生産しようとする製品の種類及び数に関する情報を含む。このような生産計画情報は、オペレータによって入力されてもよいし、予め記憶装置に予め読み出し可能に記憶して用意してもよい。
【0036】
続いて基準値取得部106は、ステップS203で取得した生産計画情報に基づいて経路分析表を作成する(ステップS204)。経路分析表は、生産設備1が有する複数のエリアP1、P2、・・・が示されるとともに、生産計画情報に含まれる生産設備1で生産される各製品A、B、・・・ごとに、その生産過程で用いられるエリアP1、P2、・・・を特定する。
【0037】
ここで図6図4のステップS204で作成される経路分析表の一例である。この例では、縦軸に生産設備1で生産される各製品A、B、・・・が列挙されるとともに、横軸に生産設備1が有する複数のエリアP1、P2、・・・が列挙される。そして各製品A、B、・・・について、その生産過程で用いられるエリアが「〇」で判別可能に示される。具体的に説明すると、製品Aの生産過程では、エリアP1→P2→P10→P2→P7→P8→P14が順に用いられることが示されている。また製品Bの生産過程では、エリアP1→P2→P7→P8→P14が順に用いられることが示されている。
尚、図6では、各製品A、B、・・・について、生産計画情報によって特定される生産数が併記されている。
【0038】
続いて基準値取得部106は、ステップS204で作成した経路分析表を変換することにより、From-Toチャートを作成する(ステップS205)。ステップS205で作成されるFrom-Toチャートは、図5を参照して前述したFrom-Toチャート(すなわちステップS201で移動実績データDに基づいて作成されるFrom-Toチャート)と形式は同じであるが、生産計画情報に基づいて作成される点において異なる。つまりステップS201では移動実績データDに基づいて評価指標Vを算出するためのFrom-Toチャートが作成されるのに対して、ステップS205では生産計画情報に基づいて基準値を算出するためのFrom-Toチャートが作成される。
【0039】
ここで図7図6に示す経路分析表の変換によってFrom-Toチャートを作成する様子を示す図である。図7に示すように、経路分析表の各製品A、B、・・・について作業員が移動するエリア間を特定し、From-Toチャートの対応するエリア間に対して、それぞれ製品A、B、・・・に関する情報が記入される。例えば、経路分析表のうち製品Aの生産過程においてエリアP2→P3の移動があるため、From-ToチャートのうちエリアP2→P3に対応する欄に対して製品Aが記入される。また経路分析表のうち製品Aの生産過程においてエリアP3→P2の移動があるため、From-ToチャートのうちエリアP3→P2に対応する欄に対しても製品Aが記入される。
【0040】
続いて基準値取得部106は、ステップS205で作成されたFrom-Toチャートに基づいて、基準値Vrefとして総移動距離基準値を算出する(ステップS206)。ステップS206では、From-Toチャートから各製品A、B、・・・についてエリア間の作業員の移動回数が特定されるとともに、例えば生産設備1の設計レイアウトに基づいて特定される各エリアP1、P2、・・・間の距離が特定される。そして、各エリア間について移動回数及び距離を集計することにより、生産設備1における作業員の総移動距離基準値が算出される。
【0041】
続いて評価部108は、ステップS202で算出された評価指標Vである総移動距離と、ステップS206で算出された基準値Vrefである総移動距離基準値とに基づいて、生産設備1の生産性を評価する。具体的には、評価部108は、総移動距離と総移動距離基準値との乖離度ΔVを算出し(ステップS207)、当該乖離度ΔVが閾値を超えているか否かを判定する(ステップS208)。
【0042】
乖離度ΔVが閾値を超えている場合(ステップS208:YES)、評価部108はレイアウト変更が「要」であると判定する(ステップS209)。この場合、評価指標Vである総移動距離が、基準値Vrefである総移動距離基準値を超える程度に、生産設備1における作業員の移動距離が増加してしまっており、生産設備1における各エリアP1、P2、・・・の配置レイアウトが生産計画に対して非効率的になっていることを意味する。この場合、評価部108は、生産設備1の最適レイアウトを算出する(ステップS210)。ステップS210では、例えば、ステップS203で取得される生産計画情報に基づいて、生産設備1の生産性を向上可能な最適レイアウトが算出される。
【0043】
一方、乖離度ΔVが閾値以下である場合(ステップS208:NO)、評価部108はレイアウト変更が「不要」であると判定する(ステップS211)。この場合、評価指標Vである総移動距離が、基準値Vrefである総移動距離基準値以下であるため、生産設備1における各エリアP1、P2、・・・の配置レイアウトが想定範囲内の効率を達成できており、配置レイアウトの変更は不要と判断される。
【0044】
このように本実施形態によれば、生産性を評価するための評価指標Vとして、生産設備1に従事する作業員の総移動距離が用いられることで、生産設備1における作業員の各エリア間の移動効率の観点から生産性を好適に評価することができる。
【0045】
続いて評価指標Vとして、生産設備1で生産される製品A、B、・・・から選択される特定の製品に関するサイクルタイムが取り扱われる実施形態について図8を参照して説明する。図8は他の実施形態に係る生産性評価方法を示すフローチャートである。
【0046】
まず位置情報取得部102は、位置情報Ipを取得する(ステップ300)。ステップS300は、前述のステップS100及びS200と同様である。
【0047】
続いて評価指標算出部104は、ステップS300で取得された位置情報Ipに基づいて、From-Toチャートを作成する(ステップS301)。ステップS301は、前述のステップS201と同様である。
【0048】
続いて評価指標算出部104は、生産設備1で生産される複数の製品A、B、・・・から、評価指標Vであるサイクルタイムの算出に用いられる製品を選択する(ステップS302)。ステップS302では、生産設備1の生産計画情報から特定される複数の製品A、B、・・・から任意の製品が選択され、例えば、生産上重要(クリティカル)な製品が選択される。
【0049】
続いて評価指標算出部104は、評価指標Vとして、ステップS302で選択された製品に対応するサイクルタイムを算出する(ステップS303)。サイクルタイムは、当該製品を単位個数生産するために必要な生産設備1の稼働時間として、ステップS301で作成されたFrom-Toチャートに基づいて算出される。
【0050】
続いて基準値取得部106は、基準値Vrefとして、タクトタイムを取得する(ステップS304)。タクトタイムは、生産設備1において製品を単位数生産するために必要な時間であり、例えば次式により定義される。
タクトタイム=(生産設備1の稼働時間)/生産量 (1)
【0051】
尚、上記(1)式において、生産設備1の稼働時間は、次式により求められてもよい。
生産設備1の稼働時間=就業時間-不稼働時間 (2)
上記(2)式において、不稼働時間は移動実績データDに基づいて算出されてもよい。移動実績データDは、前述したように、位置情報取得部102によって取得された位置情報Ipに基づいて得ることができる。位置情報Ipによれば生産設備1における移動状況を把握することができるため、その移動状況から、生産設備1における作業員のリアルタイムな不稼働時間を好適に特定することができる。
【0052】
また上記(1)式において、生産量は次式により求められてもよい。
生産量=必要生産量/良品率 (3)
上記(3)式において、必要生産量は、生産設備1に対する生産計画を含む生産計画情報に基づいて特定される。また良品率は、例えば生産設備1について過去に取得された実績データに基づいて特定される。
【0053】
続いて評価部108は、ステップS303で算出された評価指標Vであるサイクルタイムと、ステップS304で算出された基準値Vrefであるタクトタイムとを比較することにより、生産設備1の生産性を評価する。具体的には、評価部108は、サイクルタイムがタクトタイムを超えているか否かを判定する(ステップS305)。
【0054】
サイクルタイムがタクトタイムを超えている場合(ステップS305:YES)、評価部108はレイアウト変更が「要」であると判定する(ステップS306)。この場合、評価指標Vであるサイクルタイムが、基準値Vrefであるタクトタイムを超える程度に、生産設備1における生産効率が低下していることを意味する。この場合、評価部108は、生産設備1の最適レイアウトを算出する(ステップS307)。ステップS210では、例えば生産計画情報に基づいて、生産設備1の生産性を向上可能な最適レイアウトが算出される。
【0055】
一方、サイクルタイムがタクトタイム以下である場合(ステップS305:NO)、評価部108はレイアウト変更が「不要」であると判定する(ステップS308)。この場合、評価指標Vであるサイクルタイムが、基準値Vrefであるタクトタイム以下であるため、生産設備1における生産効率が低下しておらず、生産設備1における各エリアP1、P2、・・・の配置レイアウトが想定範囲内の効率を達成できており、配置レイアウトの変更は不要と判断される。
【0056】
このように本実施形態によれば、生産性を評価するための評価指標Vとして、生産設備1で生産される特定の製品に関するサイクルタイムが用いられることで、生産設備1における生産効率の観点から生産性を好適に評価することができる。
【0057】
以上説明したように上記各実施形態によれば、ジョブショップ型生産設備において、作業員の位置情報Ipに基づいて算出された評価指標を基準値と比較することにより、リアルタイムな生産設備1の生産性を好適に評価することができる。
【0058】
尚、上記各実施形態では、ジョブショップ型生産設備の生産性を評価対象としているが、同様の思想は、他の用途にも適用可能である。他の用途として、例えば、オフィス等の設計がある。この場合、特定設備(食堂、売店、会議室、OA機器、自動販売機等)に対し、利用者がどのフロア(エリア)からアクセスされているかを位置情報Ipとしてリアルタイムで取得する。そして、位置情報Ipに基づいて評価指標Vとして利用者の移動距離を算出し、基準値Vrefと比較することにより、ビル設計の利用者に対する効率性を評価することができる。この用途では、利用者の移動距離である評価指標Vが少なくなるに従って設計の効率性が高いと評価できる。また移動回数を減らしたい特定設備(例えば喫煙室等)に対しては、評価指標Vである移動距離が増えるに従って効率がよいと評価してもよい。このようなオフィスビルのような室内を評価対象とする場合、GPS情報として位置情報Ipを取得しようとする場合、通信状態によっては有効に位置情報Ipを取得することが難しい場合がある。このような課題に対しては、オフィスビルにおいてフロア間を移動するためのエレベータの移動情報を位置情報Ipに含めることで、設計評価を行うこともできる。
【0059】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0060】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0061】
(1)一態様に係る生産設備の生産設備の生産性評価システムは、
複数種の製品を生産するための複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリアを有するジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための生産設備の生産性評価システムであって、
前記複数のジョブを遂行する作業員の位置情報を取得するための位置情報取得部と、
所定期間に取得された前記位置情報に基づいて、前記複数のエリアに含まれるエリア間における前記作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データを作成し、前記移動実績データに基づいて前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトに関する評価指標を算出するための評価指標算出部と、
前記評価指標を基準値と比較することにより、前記ジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための評価部と、
を備える。
【0062】
上記(1)の態様によれば、ジョブショップ型生産設備において、各ジョブを実施するために各エリアを移動する作業員の位置情報が所定期間にわたって取得される。取得された位置情報は、エリア間における作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データの作成に用いられる。そして移動実績データは生産設備の生産性に関する評価指標の算出に用いられる。このように算出された評価指標は基準値と比較されることにより、ジョブショップ型生産設備の生産性が評価される。
【0063】
このように本態様では、ジョブショップ型生産設備に従事する作業員の位置情報に基づいて、生産設備の運用状況をリアルタイムに把握することで、現実の生産設備における生産性を信頼性よく評価できる。これにより、当初の生産計画に対する運用実績のずれや、都度行われる比較的小規模な生産計画の変更の積み重ねによって、生産計画に対して効率的とされる配置レイアウトが流動的に変化する場合においても、評価結果に基づいて配置レイアウトの見直し等の対策を講じることが可能となる。
【0064】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記評価指標は、前記移動実績データに基づいて前記エリア間ごとに前記作業員の前記移動回数を集計することにより作成されるFrom-Toチャートを用いて算出される前記作業員の総移動距離である。
【0065】
上記(2)の態様によれば、生産性を評価するための指標として、ジョブショップ型生産設備に従事する作業員の総移動距離が用いられる。総移動距離は、移動実績データに含まれるエリア間ごとの移動回数を集計することにより作成されるFrom-Toチャートを用いて算出される。このような総移動距離を評価指標として用いることで、ジョブショップ型生産設備における作業員の各エリア間の移動効率の観点から生産性を評価することができる。
【0066】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記基準値は、前記ジョブショップ型生産設備の生産計画情報に基づいて算出される前記所定期間における前記作業員の総移動距離基準値である。
【0067】
上記(3)の態様によれば、評価指標として総移動距離が用いられる場合、基準値として、ジョブショップ型生産設備における今後の製品の生産計画に関する情報(生産計画情報)に基づいて算出される総移動距離基準値が用いられる。これにより、総移動距離と総移動距離基準値との大小関係に基づいて、ジョブショップ型生産設備における生産性を好適に評価できる。
【0068】
(4)他の態様では、上記(3)の態様において、
前記評価部は、
前記生産計画情報に基づいて前記製品ごとに前記作業員が移動する前記エリアを示す経路分析表を作成し、
前記経路分析表を変換することにより、前記エリア間ごとに前記作業員の前記移動回数を集計することにより前記From-Toチャートを作成し、
前記From-Toチャートに基づいて、前記総移動距離基準値を算出する。
【0069】
上記(4)の態様によれば、基準値である総移動距離基準値は、生産計画情報に基づいて作成される経路分析表を変換されたFrom-Toチャートに基づいて好適に算出できる。
【0070】
(5)他の態様では、上記(3)又は(4)の態様において、
前記評価部は、前記総移動距離の前記総移動距離基準値からの乖離度が閾値を超えた場合に、前記レイアウトの変更が必要であると判定する。
【0071】
上記(5)の態様によれば、作業員の総移動距離の総移動距離基準値に対する乖離度を閾値と比較することにより、ジョブショップ型生産設備における各エリアの配置レイアウトの変更要否が判断される。例えば、総移動距離が生産計画情報に基づいて算出される総移動距離基準値から大きく乖離している場合には、ジョブショップ型生産設備における各エリアの配置レイアウトが現実の運用状況にマッチしておらず、生産性が低下していることが示唆されるため、配置レイアウトの変更が必要となる。
【0072】
(6)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記評価指標は、前記複数種の製品から選択される対象製品を単位個数生産するために必要な設備の稼働時間であるサイクルタイムであり、
前記基準値は、前記ジョブショップ型生産設備に対して設定されるタクトタイムであり、
前記評価部は、前記サイクルタイムが前記タクトタイムを上回る場合に、前記レイアウトの変更が必要であると判定する。
【0073】
上記(6)の態様によれば、例えば重要製品のような特定の対象製品を単位個数生産するための稼働時間であるサイクルタイムと、ジョブショップ型生産設備の生産計画等によって特定される必要生産量や稼働時間から算出される目標生産量を達成しうる一個あたりの生産時間であるタクトタイムとを比較することによって、ジョブショップ型生産設備の生産性が評価される。これにより、サイクルタイムがタクトタイムを上回ることによって、サイクルタイムがタクトタイムを達成できない場合には、ジョブショップ型生産設備の生産性が低下していることとなり、配置レイアウトの見直しなどの対策が必要であると判断することができる。
【0074】
(7)他の態様では、上記(6)の態様において、
前記タクトタイムは、前記移動実績データに基づいて特定される不稼働時間を前記所定期間から除いた稼働時間を、前記所定期間における前記対象製品の生産数で割ることにより算出される。
【0075】
上記(7)の態様によれば、移動実績データが取得される所定時間から、製品の生産性に影響がない不稼働時間を除いた結果を対象生産の生産数で割ることによって、評価指標と比較することで、生産設備の生産性を好適に評価するための基準値であるタクトタイムを求めることができる。
【0076】
(8)他の態様では、上記(5)又は(6)の態様において、
前記評価部は、前記レイアウトの変更が必要であると判断された場合に、前記ジョブショップ型生産設備の制約条件のもとで、前記評価指標が最適値になるように、前記ジョブショップ型生産設備の最適レイアウトを算出する。
【0077】
上記(8)の態様によれば、ジョブショップ型生産設備の生産性の評価結果から、各エリアの配置レイアウトの変更が必要であると判断された場合には、評価指標に基づいて最適レイアウトが算出される。最適レイアウトは、ジョブショップ型生産設備が有する制約条件のもとで評価指標が最適値(例えば最大値又は最小値)になるように探索されることで好適に求めることができる。
【0078】
(9)他の態様では、上記(1)から(8)のいずれか一態様において、
前記評価部は、前記位置情報に基づいて、同一の前記エリア間について異なる前記移動時間が得られた場合、前記移動時間の最大値又は最小値の少なくとも一方を特定する。
【0079】
移動実績データから評価指標を算出する際に、各エリア間の移動時間として例えば予め設定された標準的な値を用いることができるが、上記(9)の態様では、実際にジョブショップ型生産設備に従事する作業員の位置情報に基づいて得られた移動時間の最大値又は最小値の少なくとも一方を用いることで現実の運用状況に応じた生産性を好適に評価できる。
【0080】
(10)他の態様では、上記(1)から(9)のいずれか一態様において、
前記位置情報は、前記作業員が所持する携帯端末から取得される。
【0081】
上記(10)の態様によれば、ジョブショップ型生産設備に従事する作業員が所持する携帯端末(例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット或いは専用端末など)に、例えばGPS機能のような位置情報を取得する機構を設けることで、携帯端末からの位置情報に基づいて作業員の位置情報を好適に取得できる。
【0082】
(11)他の態様では、上記(1)から(9)のいずれか一態様において、
前記位置情報は、前記ジョブショップ型生産設備に配置されたセンサから取得される。
【0083】
上記(11)の態様によれば、ジョブショップ型生産設備に配置されたセンサ(例えばBコンなど)によって、ジョブショップ型生産設備に従事する作業員の位置情報を取得できる。このようなセンサは、例えば各エリアに配置されていてもよいし、各エリア間に配置されていてもよく、各エリアにおける作業員の有無や移動を好適に把握することができる。また、この場合、前述のGPS機能では通信状態によってデータが取得困難な領域においてもセンサを設置しておくことで、位置情報の取得が可能である点において有利である。
【0084】
(12)他の態様では、上記(1)から(9)のいずれか一態様において、
前記位置情報は、前記ジョブショップ型生産設備に設置された撮像装置によって撮像された画像データに基づいて取得される。
【0085】
上記(12)の態様によれば、ジョブショップ型生産設備に配置された撮像装置(例えば監視カメラなど)によって画像データを取得し、その画像データを解析することで、ジョブショップ型生産設備に従事する作業員の位置情報を好適に取得できる。
【0086】
(13)一態様に係る生産設備の生産性評価方法は、
複数種の製品を生産するための複数のジョブにそれぞれ対応する複数のエリアを有するジョブショップ型生産設備の生産性を評価するための生産設備の生産性評価方法であって、
前記複数のジョブを遂行する作業員の位置情報を取得する工程と、
所定期間に取得された前記位置情報に基づいて、前記複数のエリアに含まれるエリア間における前記作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データを作成し、前記移動実績データに基づいて前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトに関する評価指標を算出する工程と、
前記評価指標を基準値と比較することにより、前記ジョブショップ型生産設備のレイアウトを評価する工程と、
を備える。
【0087】
上記(13)の態様によれば、ジョブショップ型生産設備において、各ジョブを実施するために各エリアを移動する作業員の位置情報が所定期間にわたって取得される。取得された位置情報は、エリア間における作業員の移動回数、及び、移動時間又は移動距離を含む移動実績データの作成に用いられる。そして移動実績データは生産設備の生産性に関する評価指標の算出に用いられる。このように算出された評価指標は基準値と比較されることにより、ジョブショップ型生産設備の生産性が評価される。
【0088】
このように本態様では、ジョブショップ型生産設備に従事する作業員の位置情報に基づいて、生産設備の運用状況をリアルタイムに把握することで、現実の生産設備における生産性を信頼性よく評価できる。これにより、当初の生産計画に対する運用実績のずれや、都度行われる比較的小規模な生産計画の変更の積み重ねによって、生産計画に対して効率的とされる配置レイアウトが流動的に変化する場合においても、評価結果に基づいて配置レイアウトの見直し等の対策を講じることが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
1 生産設備
100 生産性評価システム
102 位置情報取得部
104 評価指標算出部
106 基準値取得部
108 評価部
A、B、・・・ 製品
P1、P2、・・・ エリア
Ip 位置情報
V 評価指標
Vref 基準値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8