(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041165
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】路面切削機用センサー装置
(51)【国際特許分類】
E01C 23/09 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
E01C23/09 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145822
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】522000577
【氏名又は名称】建機メンテナンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 厚司
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA24
2D053FA02
(57)【要約】
【課題】路面切削機の切削刃先が路面上又は路盤中に埋設された障害物体に接触することを確実に検知し、障害物体の毀損事故を未然に防止することができる路面切削機用センサー装置を提供する。
【解決手段】走行可能な複数のキャスター11を有する架台5と障害物検知部(センサーボックス)1を一体と成し、その長手方向上面にアルミ製のスライドレール15を貼付し、さらに、このスライドレール15にレールガイド15aを介して左右に滑動自在にされた固定プレート16を設け、この固定プレート16上に水平伸縮シリンダー6を配置して、水平伸縮シリンダー6のピストンバー6aの伸縮動作により障害物検知部(センサーボックス)1を検索路面位置に応じて左右に移動可能する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上又は路盤内に存在する障害物体に対して高周波磁界を発信する少なくとも一個の誘導形近接センサーを有する障害物体検知部と、当該障害物体検知部により検知された障害物体の有無情報を警報信号に変換処理する信号変換処理部と、当該信号変換処理部から発信された警報信号に基づいて警報手段である警報灯点灯、警報音発生又は路面切削機の作動を停止させる機器制御部を有することを第1の特徴とする路面切削機用センサー装置。
【請求項2】
障害物体が磁性体であることを第2の特徴とする路面切削機用センサー装置。
【請求項3】
走行可能な複数のキャスターを有する一対の架台の上に一対の縦フレームが立設され、これらを固定する横フレームに一対のリフトシリンダーが取付けられると共に、一対の架台の間に障害物体検知部が水平伸縮シリンダーにより左右に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の路面切削機用センサー装置。
【請求項4】
走行可能な複数のキャスターを有する障害物検知部の上面にスライドレールを設け、このスライドレールに左右に滑動自在にされた固定プレートを設け、この固定プレート上に水平伸縮シリンダーを配置して、水平伸縮シリンダーの伸縮動作により障害物検知部を検索路面位置に応じて左右に移動可能されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の路面切削機用センサー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事等において舗装路面のアスファルトやコンクリート表面を切削する自走式の路面切削機に関し、とくにその路面切削機に取り付けて使用するセンサー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路面切削機は、路面のアスファルトやコンクリート舗装面に轍掘れやひび割れ等の破損が生じた場合、水道管、ガス管、下水道管などの新設、改修などに際し、舗装面を所定の深さに切削すると共に再舗装して補修する道路工事に際し、表層の舗装面を切削剥離するために使用される。
【0003】
一般的な路面切削機は、車体に設けた切削ロータを回転させることにより切削作業を行っている。例えば、走行手段を備え、懸架操輪手段を介して操舵可能に設けた前後左右の車輪と、車体の一側において前後の車輪の間に位置し、スライド軸によって進行方向とほぼ直交する方向へスライド可能に設けた複数のビットを有するドラムからなる切削手段とから構成されている(特許文献1参照。)。
【0004】
切削作業の際、当該路面切削機上の運転者の視覚を頼りに作業を行っている。そのため、マンホール周りや縁石等の障害物付近を切削する必要が生じた場合、障害物を回避する高い運転能力が要求されるばかりでなく、目視では発見困難な障害物に気付かず、障害物まで切削してしまうとい問題を抱えており、過剰な精神集中を伴った運転が要求され、作業者に過大な労力を強いるものである。
【0005】
そこで、例えば、車輪と履帯の少なくとも一つにより路面を走行して回転するカッターにより路面を切削する切削機において、切削刃部が前記切削機の車体の側面又は、車体中央部に車体の進行方向の前部と後部間を移動可能に装着され、走行と切削が制御可能にされると共に、切削深さが切削刃昇降用シリンダーによって制御し、道路上の縁石などの障害物により発生する切削不可能部分を低減するものが開示されている(特許文献2参照。)。
【0006】
また、切削装置の左右前方の路面検知位置で、路面状況(凹凸や傾斜など)をそれぞれ検知する2台一対の路面検知装置を設け、各路面検知装置がそれぞれ検知した路面状況に基づき、路面の切削深さが一定となるように切削装置の切削高さを左右で独立して調整する2台一対の深度調整装置を設け、路面状況の如何を問わず一定の深さの溝が路面に形成できるようにされたものが開示されている(特許文献3参照。)。
【0007】
一方、地中に埋設された金属埋設物等の障害物を探知する装置として、例えば、送信用アンテナからの電磁波パルスを土中に送信し、障害物からの反射波を受信用アンテナで受信して、これを探知するようにしたもの(特許文献4参照。)や内部に絶縁導体を張りめぐらせたセンサーを地中埋設物の上部の地中内に埋設し、前記センサー内の絶縁導体が掘削工事により断線したときに警報装置から警報を発して道路舗装下に埋設されたガス管等の地中埋設物の存在を検知する方法が知られている。(特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-18622号公報
【特許文献2】実開平1-93207号公報
【特許文献3】特開2001-172910号公報
【特許文献4】特開平3-175393号公報
【特許文献5】特開平4-86587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、切削作業の障害物となるマンホールの金属製蓋等は無論のこと、施工条件によっては、路面舗装下に比較的浅く(数cm~数十cm程度)埋設された金属製の枡やガス管や水道管あるいは電気・通信ケーブルは切削作業により重大な損傷を受けることがある。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、路面切削機の切削刃先が路面上又は路盤中に埋設された障害物体に接触することを確実に検知し、障害物体の毀損事故を未然に防止することができる路面切削機用センサー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため本発明の路面切削機用センサー装置は、路面又は路盤内に存在する障害物体に対して高周波磁界を発信する少なくとも一個の誘導形近接センサーを有する障害物体検知部と、当該障害物体検知部により検知された障害物体の有無情報を警報信号に変換処理する信号変換処理部と、当該信号変換処理部から発信された警報信号に基づいて警報手段である警報灯点灯、警報音発生又は路面切削機の作動を停止させる機器制御部を有することを第1の特徴とする。また、障害物体が磁性体であることを第2の特徴とする。さらに、走行可能な複数のキャスターを有する一対の架台の上に一対の縦フレームが立設され、これらを固定する横フレームに一対のリフトシリンダーが取付けられると共に、一対の架台の間に障害物体検知部が水平伸縮シリンダーにより左右に移動可能に設けられていることを第3の特徴とする。またさらに、走行可能な複数のキャスターを有する障害物検知部の上面にスライドレールを設け、このスライドレールに左右に滑動自在にされた固定プレートを設け、この固定プレート上に水平伸縮シリンダーを配置して、水平伸縮シリンダーの伸縮動作により障害物検知部を検索路面位置に応じて左右に移動可能されていることを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の路面切削機用センサー装置は、路面上又は路盤内部を問わず路面切削機の切削刃先が金属製の障害物体に接触することを確実に検知し、障害物体の毀損事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る路面切削機用センサー装置の基本構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明で使用する磁気近接センサーを示す(a)は模式的説明図、(b)はその出力手段回路図である。
【
図3】本発明に係る障害物体検知部を示す(a)はブロック図、(b)はタイムチャートである。
【
図4】伸縮シリンダー及びリフトシリンダー駆動回路の一実施例を示す回路配線図である。
【
図5】伸縮シリンダー及びリフトシリンダー駆動回路の他の実施例を示す回路配線図である。
【
図6】本発明に係る路面切削機用センサー装置の一実施例を示す斜視図である。
【
図7】水平伸縮シリンダーの伸縮によるセンサー部の水平移動を説明する正面図である。
【
図8】センサー部の(a)は平面図、(b)は一部断面正面図、(c)は底面図である。
【
図9】センサーコントローラーの実体配線図である。
【
図10】センサーコントローラーの回路配線図である。
【
図11】伸縮シリンダー及びリフトシリンダー回路も含めたセンサーコントローラーの回路配線図である。
【
図12】(a)はセンサー装置を大型路面切削機に取付けた一例を示す側面図、(b)は小型路面切削機に取付けた一例を示す側面図である。
【0013】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発生の実施の形態を説明する。
【実施例0014】
以下、本発明の構成を、実施例を示す図面に基づいて詳細に説明する。
本発明装置は、路面上の障害物体、又は路盤地中に埋設又は存在する障害物体、例えば、磁性体であるマンホールの金属製蓋、釘、ボルトやナット、金属製パイプを検知するべく、既存の路面切削機に搭載して使用する。
【0015】
路面切削機用センサー装置10の基本構成を
図1乃至
図3に示す。路面又は路盤内に存在する障害物体12に対して高周波磁界MFを発信する少なくとも一個の誘導形近接センサーS(S1、S2、S3・・・Sn)を有する障害物体検知部1と、この障害物体検知部1により、
図3(b)のタイムチャートに示すような検出領域に存在する障害物体12の有無情報を警報信号に変換処理する信号変換処理部2と、この信号変換処理部2から発信された警報信号に基づいて警報手段である音声付パイロットランプ4を備えている。尚、警報手段としては、警報灯点灯や警報音発生の他、路面切削機の作動を停止させる機器制御部を有することでもよい。
【0016】
尚、近接センサーSは、水平方向の複数位置に対応させた複数のセンサーS1、S2、S3、・・・Snを設けて、この複数のセンサーSにより磁場分布を測定することが望ましいが、本実施例では、単一又は少数のセンサーSを水平方向に移動させて磁場分布を測定するようにしている。
【0017】
路面切削機用センサー装置10の正面を示す
図1において、走行可能な複数のキャスター11を有する一対の架台5の上に一対の縦フレーム8が立設され、これらを固定する横フレーム9に左右2本のリフトシリンダー7、7が取付けられている。また、一対の架台5の間には、水平伸縮シリンダー6の一端に固定された障害物検知部(センサーボックス)1が、水平伸縮シリンダー6の他端が係止アングル5aで架台5に固定されることで、その伸縮動作により左右に移動可能にされている。
【0018】
これらリフトシリンダー7、7は、架台5を昇降駆動し、障害物検知部1と路面との高さ位置(間隙)を調整し、水平伸縮シリンダー6は障害物検知部(センサーボックス)1の左右位置を調整できるようにされている。
【0019】
図4及び
図5に、伸縮シリンダー6及びリフトシリンダー7の駆動回路の電源配線図を示す。伸縮シリンダー6S、リフトシリンダー7ともに、リレーR1、R2又はR3を介して信号変換処理部2からメタルコネクター14を介して、前述した機器制御部3に電気的に連結される。
障害物検知部(センサーボックス)1内部には、樹脂(塩化ビニール)製の筒体20の中心には、近接センサーSが、透明樹脂製の保護カバー21被覆して固定され、直線上に複数個配置されている。本実施例では、非シールドタイプの近接センサー(例えば、E2E―X40MD2L30―2M:オムロン株式会社製)を使用している。
上記構成の路面切削機19を走行させて障害物検知部(センサーボックス)1を路面に沿って移動させると共に、近接センサーSにおけるセンサー回路Saから各々検知電磁波が発射され、かつ反射波信号を検出することによって障害物体12の探査作業が実施される。
すなわち、本発明で使用する最も好ましい近接センサーSは、金属等の磁性物体の存在を検出する静電容量型近接スイッチであり、測定磁場分布と所定の円筒状磁場分布とのずれを検知し、これを機器制御部3に伝達すると共に、障害物体12の位置を算出する信号変換処理部2を設けたセンサーコントローラーで行う。