(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041170
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】空調配管用エルボ
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240319BHJP
F16L 43/00 20060101ALI20240319BHJP
F16L 47/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F24F13/02 B
F24F13/02 H
F16L43/00
F16L47/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145828
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000104906
【氏名又は名称】クラレプラスチックス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金森 愛実
(72)【発明者】
【氏名】河合 則諒
【テーマコード(参考)】
3H019
3L080
【Fターム(参考)】
3H019EA03
3H019EA05
3H019EA19
3H019FA01
3L080AB02
3L080AD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】天井裏や階間の狭小スペースにおいて容易に施工ができるよう、肉厚が厚くとも小型化可能であり、かつ、曲げ部における圧力損失が小さい空調配管用エルボの提供。
【解決手段】屈曲管部及び直管部を有する空調配管用エルボであって、該屈曲管部の内周側頂点部内壁50に凸部51を有し、屈曲管部の外周側頂点部40の管厚みを基準肉厚4としたときの、基準肉厚に対する前記内周側頂点部の肉厚5の比が、1.00より大きく、1.40より小さい、空調配管用エルボ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲管部及び直管部を有する空調配管用エルボであって、該屈曲管部の内周側頂点部内壁に凸部を有し、屈曲管部外周側頂点部の管厚みを基準肉厚としたときの、基準肉厚に対する前記内周側頂点部の肉厚の比が、1.00より大きく、1.40より小さい、空調配管用エルボ。
【請求項2】
内周側曲げ部の曲げ角度が略90度である、請求項1に記載の空調配管用エルボ。
【請求項3】
前記屈曲管部と開口直管部の境界部において、空調配管用エルボの外周側頂点、内周側頂点を通り、かつ開口直管部の開口端部を通る断面上の凸部両端の立ち上がり位置を起点として、エルボ内壁を一周するように段差を有し、前記段差は、前記開口直管部に対して90度±5度の角度になるように配置され、屈曲管部の端部の内径よりも、開口直管部の内径が大きくなるように構成されている、請求項1に記載の空調配管用エルボ。
【請求項4】
前記空調配管用エルボが、発泡樹脂成形体で構成される、請求項1に記載の空調配管用エルボ。
【請求項5】
前記発泡樹脂成形体の密度が1.000g/cm3以下である、請求項4に記載の空調配管用エルボ。
【請求項6】
前記発泡樹脂成形体が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびフェノール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項4に記載の空調配管用エルボ。
【請求項7】
前記基準肉厚は、10mm以上かつ40mm以下である、請求項1に記載の空調配管用エルボ。
【請求項8】
屈曲管部及び直管部を有する空調配管用エルボであって、該屈曲管部の内周側頂点部内壁に凸部を有し、前記屈曲管部と開口直管部の境界部において、空調配管用エルボの外周側頂点、内周側頂点を通り、かつ開口直管部の開口端部を通る断面上の凸部両端の立ち上がり位置を起点として、エルボ内壁を一周するように段差を有し、前記段差は、前記開口直管部に対して90度±5度の角度になるように配置され、屈曲管部の端部の内径よりも、開口直管部の内径が大きくなるように構成されている、空調配管用エルボ。
【請求項9】
開口直管部の少なくとも一方に、接続部材を固定可能な溝を有する、請求項1~8のいずれかに記載の空調配管用エルボ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の空調配管用エルボに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅などにおいて建物内全体の空調を行う、全館空調システムが採用されており、天井裏や階間スペースなどにダクトやエルボ、分岐材などの配管部材が張り巡らされている。
【0003】
また、居室空間を大きくするために天井裏や階間スペースを狭小化することが近年求められるようになり、それに対応して、ダクトの曲げ半径を小さくした配管がされるようになった。しかし、ダクトの曲げ半径が小さくなると、ダクトに被覆されている断熱材の潰れ、及びダクト断面流路の扁平・狭小化が発生し、前者では断熱性能の低下による結露発生や冷暖房能力の低下、後者では圧力損失の増大によって所望の風量が確保できない場合がある。更に、口径が大きいダクトは曲率半径が大きくなるため狭小空間の配管作業に時間を要する。
【0004】
特許文献1には、ショッピングセンターや階層集合住宅、ホテル、病院などの建物における、冷・暖房や換気などの空調用ダクト配管に使用される亜鉛メッキ鋼板で構成されるエルボが開示され、圧力損失を犠牲にすることなく、狭小空間でも安定的に配管できるとされている。
【0005】
特許文献2には、建物内部などの空調用ダクトの曲げ部において、ダクト同士を接続する配管継手として用いられるダクトの曲げ部構成体が開示され、配管の曲げ部の構成が容易で、圧力損失などの流動性を悪化させることがないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-81124号公報
【特許文献2】特開2005-226905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の空調配管用エルボは、薄肉の亜鉛メッキ鋼板で構成されるため断熱性が低い。そのため、夏季に高温多湿環境下となる天井裏や階間へ設置された場合、冷風の流れる配管内と配管周囲との温度差より配管表面に結露が発生しやすく、発生した水滴の滴下により建材の腐敗を引き起こす可能性がある。また、亜鉛メッキ鋼板は密度が大きく、製品重量が重くなり、施工時の取り扱い性が悪い。特許文献2に開示のダクトの曲げ部構成体は、圧力損失については記載があるものの、製品の小型化については言及がなく、圧力損失の抑制及び小型化の両立については未だ改善の余地があった。また、特許文献2では、耐火発泡材の平板を加熱・加圧成形しており、発泡粒が圧縮されることによって、成形体中で断熱性能にばらつきが生じるため、高温多湿環境下での使用は困難である。さらに、曲げを有する成形体は平板加圧成形での肉厚制御が難しく、またロス率が高くなる傾向にある。
【0008】
上記の課題を鑑み、本発明の目的は、天井裏や階間の狭小スペースにおいて容易に施工ができるよう、肉厚が厚くとも小型化可能であり、かつ、屈曲管部における圧力損失が小さい空調配管用エルボを提供することである。
また、本発明の別の目的は、配管時の施工自由度の高い空調配管用エルボを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者などは上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、ダクト配管の屈曲部に接続されるエルボであり、下記の特徴を有する空調配管用エルボが厚肉であっても小型となり、圧力損失を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の目的は、
[1]屈曲管部及び直管部を有する空調配管用エルボであって、該屈曲管部の内周側頂点部内壁に凸部を有し、屈曲管部外周側頂点部の管厚みを基準肉厚としたときの、基準肉厚に対する前記内周側頂点部の肉厚の比が、1.00より大きく、1.40より小さい、空調配管用エルボ;
[2]内周側曲げ部の曲げ角度が略90度である、[1]に記載の空調配管用エルボ;
[3]前記屈曲管部と開口直管部の境界部において、空調配管用エルボの外周側頂点、内周側頂点を通り、かつ開口直管部の開口端部を通る断面上の凸部両端の立ち上がり位置を起点として、エルボ内壁を一周するように段差を有し、前記段差は、前記開口直管部に対して90度±5度の角度になるように配置され、屈曲管部の端部の内径よりも、開口直管部の内径が大きくなるように構成されている、[1]に記載の空調配管用エルボ;
[4]前記空調配管用エルボが、発泡樹脂成形体で構成される、[1]に記載の空調配管用エルボ;
[5]前記発泡樹脂成形体の密度が1.000g/cm3以下である、請求項4に記載の空調配管用エルボ;
[6]前記発泡樹脂成形体が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびフェノール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、[4]に記載の空調配管用エルボ;
[7]前記基準肉厚は、10mm以上かつ40mm以下である、[1]に記載の空調配管用エルボ;
[8]屈曲管部及び直管部を有する空調配管用エルボであって、該屈曲管部の内周側頂点部内壁に凸部を有し、前記屈曲管部と開口直管部の境界部において、空調配管用エルボの外周側頂点、内周側頂点を通り、かつ開口直管部の開口端部を通る断面上の凸部両端の立ち上がり位置を起点として、エルボ内壁を一周するように段差を有し、前記段差は、前記開口直管部に対して90度±5度の角度になるように配置され、屈曲管部の端部の内径よりも、開口直管部の内径が大きくなるように構成されている、空調配管用エルボ;
[9]開口直管部の少なくとも一方に、接続部材を固定可能な溝を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の空調配管用エルボ;
を提供することにより達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、天井裏や階間の狭小スペースにおいて容易に施工ができるよう、肉厚が厚くとも小型化可能であり、かつ、屈曲管部における圧力損失が小さい空調配管用エルボを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る曲げ角度90度の空調配管用エルボを示す斜視図である。
【
図2】
図1の空調配管用エルボを示す断面図である。
【
図3】本発明の空調配管用エルボの接続状態を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施例、比較例に対して実施した耐結露性評価の概要図である。
【
図5】比較例2の管内気流状態を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る空調配管用エルボを示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を詳述する。
図1は空調配管用エルボを示す斜視図であり、
図2は
図1の空調配管用エルボを示す断面図である。本発明の空調配管用エルボは、中空構造であり、屈曲管部3並びに開口直管部1及び2を有し、屈曲管部3は、内周側頂点部50の内壁に凸部51を有する。開口直管部1及び2は、空調配管用エルボに接続されるダクトや継手などの部材の断面とほぼ同径の空間を形成しており、屈曲管部3の内部空間を通じて連通する中空構造を有する。好適には、2つの直管部の風路が略90度の位置関係になるように屈曲管部3の曲げ角度が略90度で屈曲する構造を有する。
【0014】
図2において、屈曲管部3の外周側頂点部40の肉厚(管厚み)を基準肉厚4としたときの、基準肉厚4に対する内周側頂点部50の肉厚5の比(内周側頂点部の肉厚/基準肉厚)は、1.00より大きく、1.40より小さい。ここで、この比率は、1.05以上であることが好ましく、1.10以上であることがより好ましく、また、1.35以下であることが好ましく、1.32以下であることがより好ましく、1.30以下であることがさらに好ましい。肉厚の比が前記範囲内であると、肉厚が厚い場合でも空調配管用エルボの製品長を小さくすることができる。また、耐結露性と小型化を両立させる観点から、基準肉厚4は、10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましく、一方で、40mm以下が好ましく、35mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。
【0015】
図6は本発明に係る空調配管用エルボを示す断面斜視図であり、屈曲管部3と開口直管部1及び2の境界部において、外周側頂点部40、内周側頂点部50を通り、かつ開口直管部の開口端部を通る断面上の凸部両端の立ち上がり位置52を起点として、エルボ内壁を一周するように段差を有し、前記段差は、前記開口直管部に対して90度±5度の角度になるように配置され、屈曲管部の端部の内径よりも、開口直管部の内径が大きくなるように構成される。このような構成であると、ダクトを深く安定させた状態で接続できたり、接続方向の別なくエルボを使用することができたりするなど、配管の施工自由度及び風量安定性を高くできる。
【0016】
本発明の空調配管用エルボの呼び径は、配管に求められる送風能力と施工スペースに合わせて決めることができる。例えば50mm以上が好ましく、80mm以上がより好ましく、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましい。
【0017】
本発明の空調配管用エルボは、断熱性を有する素材を用いることが好ましい。この観点から、樹脂成形体や、金属成形体に断熱部材を組み合わせたものなどで構成することができる。施工性の向上の観点から、樹脂成形体が好ましく、樹脂成形体の中でも、軽量性や耐結露性のさらなる向上の観点から、発泡樹脂成形体であることがより好ましい。樹脂成形体を構成する樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。中でも、耐加水分解性の向上及び軽量性の観点から、前記樹脂成形体は、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも一つを含むことが好ましく、より好適にはポリスチレン樹脂を含むことが好ましい。樹脂成形体中のこれらの樹脂の含有量の合計が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0018】
前記発泡樹脂成形体の密度は、断熱性(耐結露性)の向上と、軽量による施工性の向上という観点から1.000g/cm3以下であることが好ましく、0.500g/cm3以下であることがより好ましく、0.100g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.060g/cm3以下であることが特に好ましい。また、前記発泡樹脂成形体の密度は、成形体強度の観点から0.005g/cm3以上であることが好ましい。
【0019】
前記発泡樹脂成形体の密度は、JIS K7112のA法(水上置換法)を参考にして求めることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態である発泡スチロール(ポリスチレン樹脂を含む発泡樹脂成形体)からなる本体部の製造方法に関して記載する。発泡樹脂を主成分とした発泡剤を含む原料ビーズに蒸気を当て、予備発泡させる。予備発泡粒を熟成し、金型に充填して加熱することで、粒同士を融着させる。その後金型を冷却し、金型から成形品を取り出す。ポリスチレン樹脂以外の熱可塑性樹脂と発泡剤で構成される場合は、同様の工程を経て成形されるが、インサート成形や射出成形などが好適に使用される。
【0021】
本発明のエルボは、例えば、
図2や6のように、上面と下面に2分割された成形品をそれぞれ成形し、向かい合う一対の出隅同士と入隅同士を接着剤又は粘着剤により一体化し接合し製造することができる。当接面には凹部60と凸部61を形成し、互いに係合する段差部を有している。エルボの上下面の凹凸に一定量の接着剤又は粘着剤を塗布し、接合面を貼り合わせる。その後、エルボに荷重をかけ、一定時間放置することで接合面を確実に圧着し、気密性の高いエルボを得ることができる。
【0022】
本発明は、ダクト式空調システムの配管において、狭小スペースで急な曲げを必要とする際に用いるエルボであって、風路を小さく曲げることができ、設置したときに風路の扁平による風量低下を起こさず安定的な送風が可能な空調配管用エルボを提供することができる。本発明のエルボは、ダクトの中間や、ダクトとシステムの間、エルボ同士の接続などに使用することができる。エルボと接続対象物との間には、必要に応じて開口直管部のロ径に適した中間部材のソケットを差し込み、接続部分は空気漏れのないよう気密を施す。更に設置環境下に応じて、断熱処理を施すことでさらなる耐結露性を得る。
【0023】
ダクトなどとの接続部材としてソケットなどを用いる場合、ソケットは、エルボに安定的に固定可能となるように、管中間の外部に鍔を有することが好ましい。また本発明の空調配管用エルボの直管部の少なくとも一方に、ソケットなどの接続部材を固定可能な溝62が設けられていることが好ましい。より好ましくは本発明の空調配管用エルボは直管部の一方のみに接続部材を固定可能な溝を有することで、片側にソケットをあらかじめ固定した状態で提供することもできる。さらに好ましくは凸部両端に段差を有する形状とすることで、反対側の直管部には、ソケットや、システムとの直接の接続など、施工対象に合わせて使用時の自由度があり、かつ片側はソケットを固定しているので、施工の手間を省くことも可能である。また凸部両端に段差を有する場合、ソケットは、段差の高さと略同一の厚みを有することが好ましく、空調配管用エルボの直管部の端部から段差部まで延在させることができる形状であることが好ましい。例えば、鍔を有する場合、空調配管用エルボの溝部または端部から段差部の距離と、鍔からソケット端部への距離とが略同一であることが好ましい。
【0024】
尚、以下の実施例及び比較例において、各種性能測定及び評価は次のように実施した。
【0025】
(実験例)
<肉厚の評価>
肉厚の測定では、
図2のように製品の屈曲管部3の断面が確認できる方向に2分割し、基準肉厚4と基準肉厚に対する屈曲管部内周側頂点部の肉厚5にノギスを当てて寸法を測定する。
【0026】
<小型化の評価>
実際の施工現場を想定して比較対象と同等径のダクト直管部6、7を前後に接続し、曲げ角度を90度に配管した場合の空間容積を比較検証した。空間容積については、
図3のように曲げ開始部から曲げ終了部までに使用した空間を縦8、横9、高さ10からなる容積で算出した。
呼び径Φ100は、空間容積が5800cm
3以下は〇、5800cm
3を超えるものを×とし、呼び径Φ150は、空間容積が12000cm
3以下は〇、12000cm
3を超えるものを×と判定した。
【0027】
<真円性・圧力損失特性の評価>
片手で上部から垂直に力を加えた場合に管内が扁平することなく風路の真円性を保持できるかを目視によって確認した。管内が扁平し、風路の真円性を保持できない場合は×と判定した。
真円性を保持する製品に対しては、以下の方法で圧力損失係数を算出し、屈曲管部における空気抵抗が小さい構造であることを確認した。
(1)エルボの両端に硬質ポリ塩化ビニル管を接続し、その片側の端末に送風機(Suiden SJF-250-2)を取り付ける。エルボの風上側に接続した硬質ポリ塩化ビニル管には、接続部から0.3~0.4m地点にΦ8mmの穴をあけ、差圧計のエアチューブを取り付ける。エルボの風下側に接続した硬質ポリ塩化ビニル管には、接続部から1.0m地点にΦ8mmの穴をあけ、もう一方の差圧計のエアチューブを取り付ける。次に送風機から発生する風量を段階的に変化させ、その際の圧力差ΔP(Pa)と相当流速V(m/秒)を測定する。
(2)上記(1)の方法で測定した相当流速V(m/秒)とエルボの断面積A(m2)の値を用いて通気量Q(m3/時間)の値を式(1)にしたがって算出する。
式(1) 通気量Q=3,600×V×A
(3)上記(1)で算出された通気量Q(m3/時間)の値と圧力差ΔP(Pa)の値から通気率a(m3/時間/Pa1/2)の値を式(2)にしたがって算出する。
式(2) 通気率a=Q/△P^1/2
(4) 上記(2)で算出された通気率a(m3/時間/Pa1/2)の値を用いて圧力損失係数ζを式(3)に従って算出する。
式(3) 圧力損失係数ζ=2/[ρ(a/3,600)^2]
なお、ρは空気密度(kg/m3)を表す。
(5)真円性を保持するものについては、圧力損失係数ζが、1.000以下は〇、1.000を超えるものを×と判定した。
【0028】
<耐結露性の評価>
本発明者らは、結露に関する効果を確認するために、書籍『低温送風空調システムの計画と設計』2003年12月25日発行、著:社団法人 空気調和・衛生工学会の記載を参考にして実験を行った。
【0029】
図4に示すように、第1試験室11と第2試験室12に分離した2室分離型の空調室を用い、試験室11、12を隔てる壁13にメインダクト14を貫通させ、メインダクト14によって試験室11、12を連通させた。メインダクト14、15の中間、即ち第2試験室12の第1屈曲部にエルボ16を設置し、エルボ16の他端より更にメインダクト15を接続した。メインダクト15は第2屈曲部を経て、試験室12、11を隔てる壁13に貫通させ、メインダクト15によって試験室12、11を連通させた。メインダクト15の一端に位置するように、第1試験室11には送風機(Suiden SJF-300L-3)17を設置し、メインダクト14、15を通して第1試験室11内の空気をダクト管内へ供給可能とした。
【0030】
第1試験室11を10℃に温調し、第2試験室12を温度30℃湿度65%に温調した後、送風機17を駆動させ、ダクト径に適した風量(Φ100:120m3/h、Φ150:240m3/h)を送風しメインダクト14を通して第1試験室11の空気を第2試験室12のエルボ16に送り込み、この状態を24時間維持する。そして、24時間後の第2試験室12に設置のエルボから床面への結露水の滴下の有無を確認することで、耐結露性を評価した。
【0031】
<軽量性の評価>
呼び径Φ100の場合は施工性を鑑みて、150g/個以下は〇、150g/個を超えるものを×とし、呼び径Φ150は200g/個以下は〇、200g/個を超えるものを×と判定した。
【0032】
表1に本発明品の実施例と比較例の構成とその効果を示す。尚、材質については以下の通りである。
A1:発泡樹脂(ポリスチレン樹脂90重量%、ブタン及びペンタンを含む発泡剤8.0重量%、難燃剤2.0重量%の組成物)からなる発泡スチロール成形体
A2:塩化ビニル樹脂を除く発泡樹脂成形体
A3:塩化ビニル樹脂(塩化ビニル樹脂10重量%、水酸化アルミニウム35重量%、炭酸カルシウム25重量%、滑石25重量%、無機質繊維5重量%の組成物)からなる無機質塩化ビニル発泡体
A4:断熱材/金属箔/不織布/樹脂補強線材により構成される積層体
A5:グラスウール保温材/金属箔/硬鋼線により構成される積層体
【0033】
実施例1~5、比較例1~4の構成、実験結果を表1に示す。
【0034】
【0035】
表1において、本発明の発明特定事項を満たす実施例1~5は、製品容積を小さくすることができ、狭小スペースでの取り扱いが容易となる。また小型化したことにより、梱包サイズが小さくなるため、運搬費の削減に繋がる。比較例1~5は基準肉厚に対する屈曲管部内周側頂点部の肉厚の比が有効範囲外になるようにした空調配管用エルボである。比較例1、3~5は、基準肉厚に対する屈曲管部内周側頂点部の肉厚の比が有効範囲内のものに比べて大型化し、また基準肉厚よりも薄肉部があると断熱欠損が起こるため、結露滴下に至る。比較例2は、製品自体は小型化するが、
図5に示す通り屈曲管部の風路がより急になるため、風路の内周側において気流18が剥離し乱流19となるため圧力損失が増大した。一方で、実施例1~5は、基準肉厚に対する屈曲管部内周側頂点部の肉厚の比が有効範囲内であり、
図5のような気流の剥離が起こり難く、圧力損失を抑制することができる。
【0036】
また、発泡樹脂成形体として、密度が1.000g/cm
3以下のものを用いた実施例1~4は軽量性及び耐結露性にも優れる。また、実施例1~4は、耐加水分解にも優れるため、配管の長寿命化につながる。また、実施例1~4において、
図6のように、屈曲管部と開口直管部の境界部において、空調配管用エルボの外周側頂点、内周側頂点を通り、かつ開口直管部の開口端部を通る断面上の凸部両端の立ち上がり位置を起点として、エルボ内壁を一周するように段差を有し、前記段差は、前記開口直管部に対して90度±5度の角度になるように配置し、屈曲管部の端部の内径よりも、開口直管部の内径が大きくなるように構成した場合、端部の両側ともソケットを後付けすることが可能となり、一製品でダクトとダクトの中間、ダクトとシステムの間、エルボ同士の接続など、使用箇所の自由度を高くすることができる。
【0037】
以下、本発明のエルボに替えて、柔軟性を有するダクトの曲率半径と空間容積を対比する。本発明のエルボは基準肉厚に対する屈曲管部内周側頂点部の肉厚の比が1.20の場合の例を示しており、フレキシブルダクトは該エルボの基準肉厚と同等厚で構成した場合に、断熱性を保持できる曲率半径で配管したときの空間容積を表2に示した。
【0038】
【0039】
フレキシブルダクトは柔軟であり、梁などの障害物を避けて配管できるため施工上の利便性が高いが、それ故に無理な荷重がかかることがあり、断熱材や風路が潰れている状態での配管になることがある。表2の曲率半径より小さく配管された場合には、断熱欠損が起こり多量の結露が発生したり、圧力損失の増大により風量が出ない可能性がある。表2より、本発明のエルボを接続して90度曲げて配管した場合、天井裏や階間の狭小スペースを無駄に広く使うことなく、小さいスペースで効率良く配管することができる。
【0040】
尚、本発明の空調配管用エルボは、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、エルボの開口部は円形状に限られず、四角形状であってもよいし、四角形状以外の多角形状であってもよい。また、連通する風路の位置関係は、曲げ角度90度に限られず、任意の角度で成形が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 エルボ開口直管部
2 エルボ開口直管部
3 エルボ屈曲管部
4 基準肉厚
5 屈曲管部内周側頂点部の肉厚
6 ダクト直管部
7 ダクト直管部
8 空間容積 縦
9 空間容積 横
10 空間容積 高さ
11 第1試験室
12 第2試験室
13 第1試験室と第2試験室を隔てる壁
14 メインダクト
15 メインダクト
16 エルボ
17 送風機
18 気流
19 乱流
40 外周側頂点部
50 内周側頂点部
51 凸部
52 凸部の立ち上がり位置
60 接合面の凹部
61 接合面の凸部
62 接続部材を固定する溝