(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041180
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20240319BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20240319BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H04R1/02 101F
H04R7/04
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145842
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱中 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】太田 政典
(72)【発明者】
【氏名】水品 隆広
【テーマコード(参考)】
5D016
5D017
5D061
【Fターム(参考)】
5D016AA04
5D017AD24
5D061AA25
5D061BB24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】平面スピーカとしての特性を活かして良好に放音するスピーカ装置を提供する。
【解決手段】スピーカ装置は、第1面P1側及び第2面P2側の夫々に複数の放音孔を備える平面スピーカ18と、貫通孔113aを備え、第2面P2側の複数の放音孔を覆うように配置されている遮音部としての遮音板113と、を有する。平面スピーカ18は、ケース110に収納される。遮音板113と平面スピーカ18との間を離間させ、空間領域を設けることで、振動板181を良好に振動させつつ、第2面P2側からの音が外部に放音されることを低減する。遮音板113に複数の貫通孔113aを設けることにより、貫通孔113aから放音される音が、貫通孔113a以外の遮音板113から漏れ出る音と打ち消し合って音圧降下を生じさせることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面側及び第2面側の夫々に複数の放音孔を備える平面スピーカと、
貫通孔を備え、前記第2面側の前記複数の放音孔を覆うように配置されている遮音部と、
を有する、スピーカ装置。
【請求項2】
前記遮音部は、微細穿孔板材からなる、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記平面スピーカを収納するケースをさらに備え、
前記ケースは、前記第2面側における複数の前記放音孔の外周に無孔部が設けられ、
前記貫通孔は、前記無孔部に対応して配置されている、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記遮音部は、前記平面スピーカとの対向面に吸音材が設けられている、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記遮音部は、前記平面スピーカと離間して設けられている、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記平面スピーカを収納するケースをさらに備え、
前記ケースは、前記平面スピーカを保持するリブ部を有する、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記リブ部は、複数の前記放音孔の間に配置される、請求項6に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか記載のスピーカ装置が椅子のヘッドレストにおける人の耳部に対応する位置にそれぞれ設けられている、スピーカ装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7の何れか記載のスピーカ装置がフードにおける人の耳部に対応する位置にそれぞれ設けられている、スピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、平面スピーカと耳との間に空間を設けて、より自然な音響(立体音響)を聞くことができるスピーカ装置が開示されている。例えば、特許文献1には、シートのヘッドレストにおける人の耳部に対応する位置に平面スピーカを配置したスピーカ装置が開示されている。この平面スピーカは、永久磁石を収納する有底箱状のヨークの開口部にダイヤフラムが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面スピーカは、ダイヤフラム(振動板)の振動により音波が生じるため、振動板の両面から音が発せられる。ここで、上記従来のスピーカ装置における平面スピーカの放音方向は、振動板に対して一方面側とされ、他方面側が構造的に閉塞している。平面スピーカでは、一方面側から出た音と他方面側から出た音とが干渉しあい、周囲に向けたある方向において、不要な音を打ち消すことができる場合があるが、他方の面側が閉塞している場合、十分打ち消すことができず、周囲に音が漏れてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、平面スピーカとしての特性を活かして良好に放音するスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスピーカ装置は、第1面側及び第2面側の夫々に複数の放音孔を備える平面スピーカと、貫通孔を備え、前記第2面側の前記複数の放音孔を覆うように配置されている遮音部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平面スピーカとしての特性を活かして良好に放音するスピーカ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るスピーカ装置を椅子のヘッドレストに取り付けた、椅子型スピーカ装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の制御ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るスピーカ装置をインナケース側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るスピーカ装置をアウタケース側から見た平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るスピーカ装置をインナケース側から見た分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るスピーカ装置をアウタケース側から見た分解斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の
図3のVII-VII断面図である。
【
図8】比較例としてスピーカ装置から放音される音の測定に関する説明図であり、(a)はその測定におけるマイクの配置を示し、(b)はその測定した結果を示す。
【
図9】比較例のスピーカ装置から放音される音の測定に関する説明図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るスピーカ装置を備えたフード型スピーカ装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示す椅子型スピーカ装置50Aは、スピーカ装置10と、椅子(シート)50とを有する。椅子50は、脚部51、座部52、背凭れ53、ヘッドレスト54を備える。ヘッドレスト54は、人の頭の後頭部から左右の耳部に対応する位置まで延びて、略U字状とされている。スピーカ装置10は、ヘッドレスト54における人の耳部に対応する位置に設けられている。
【0010】
スピーカ装置10は、椅子50に着座した際の人の耳部の右側に対応する位置に右スピーカ部100Rが設けられ、左側の耳部に対応する位置に左スピーカ部100Lが設けられている。左スピーカ部100Lと右スピーカ部100Rは、配線を含むフレーム20により接続されている。また、右スピーカ部100Rは、配線を含む支持部材31に支持されるコントローラ30と接続されている。
【0011】
また、ヘッドレスト54には、人の耳部に対応する領域を含むスピーカ装置10の外側に吸音材55が設けられている。吸音材55の材料は、吸音効果のある種々の材料を選択することができる。例えば、綿やスポンジ等の多孔質材を用いることができる。
【0012】
次に、
図2に基づいて、スピーカ装置10の制御回路について説明する。スピーカ装置10は、制御部11、記憶部12、入力部13、出力部14、通信部15を有して、バスBSにより互いに接続されている。また、FB(フィードバック)マイク16、FF(フィードフォワード)マイク17は、アナログ信号をデジタル信号に変換するADC(アナログ・デジタル・コンバータ)16a,17aを介してバスBSと接続されている。更にまた、平面スピーカ18は、デジタル・アナログ・コンバータ18a及びアンプ18bを介してバスBSと接続されている。
【0013】
制御部11は、少なくとも1つのプロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)やマイコン等により構成され、記憶部12に記憶されるプログラムを読み出し、各種の処理を実行する。記憶部12は、例えば、少なくとも1つのメモリとしてのフラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。記憶部12は、制御部11で実行されるシステムプログラムやアプリケーションプログラム、これらのプログラムの実行に必要なデータ等が記憶されている。
【0014】
入力部13は、コントローラ30(
図1参照)に各種操作用のボタンとして設けられている。入力部13の操作により、スピーカ装置10の各種設定や、再生、停止、早送り等の楽音に対する操作をすることができる。出力部14は、コントローラ30に設けられる液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、LED等の表示部として機能するものであり、スピーカ装置10の動作状態等を制御部11からの指示に基づいて表示することができる。
【0015】
通信部15は、スマートフォン等の外部機器との信号の送受信を、アンテナ(不図示)を介して所定の無線通信方式により行う回路を含んでおり、この回路は、フィルタやアンプ、変復調器を有する。所定の無線通信方式は、例えば、Bluetooth(登録商標)やBluetooth(登録商標)のバージョン4以降に係るBluetooth Low Energy(BLE)等である。通信部15は、入力部13への操作にしたがって制御部11から指示される操作信号等を含む送信信号に信号処理を施し、増幅し、変調してアンテナを介して外部機器に送信したり、また外部機器からアンテナを介して受信された楽音等のデータを含む受信信号を復調、増幅、信号処理を施す。
【0016】
FBマイク16は、各左スピーカ部100L、右スピーカ部100Rの夫々に設けられるアクティブノイズキャンセル用のマイクである。FBマイク16は、再生音を安定して収音できる音場である放音部120(
図3参照)に配置され、スピーカ装置10の左スピーカ部100Lの内側、右スピーカ部100Rの内側に向けて伝搬される再生音及び再生音以外のノイズ音を収集することによって、ノイズ音の波長域の音をキャンセリングするフィードバック方式に用いられるマイクである。FBマイク16で収音された音に基づいた信号はADC16aでデジタル変換される。制御部11は、このデジタル変換された信号を用いてノイズ音の逆位相の音を発生させるノイズリダクション信号を生成し、ノイズ音の波長域の音をキャンセリングさせるノイズキャンセリング処理を実行する。
【0017】
FFマイク17は、各左スピーカ部100L、右スピーカ部100Rの夫々に対応して設けられるアクティブノイズキャンセル用のマイクである(
図1も参照)。FFマイク17は、スピーカ装置10からの放音以外の、外部から発せられるノイズ音を収集することによって、ノイズ音の波長域の音をキャンセリングするフィードフォワード方式に用いられるマイクである。従って、FFマイク17は、収音部を外側に向けて配置される。FFマイク17で収音された音に基づいた信号は、ADC17aでデジタル変換される。制御部11は、このデジタル変換された信号を用いてノイズ音の逆位相の音を発生させるノイズリダクション信号を生成し、ノイズ音の波長域の音をキャンセリングさせるノイズキャンセリング処理を実行する。
【0018】
平面スピーカ18は、各左スピーカ部100L、右スピーカ部100Rに設けられている。制御部11は、通信部15から入力され、又は、記憶部12に保存されている楽音データをDAC18a、アンプ18bを介して、平面スピーカ18により平面波として発音させる。
【0019】
次に、
図3~
図7を用いて、右スピーカ部100Rの構成について説明する。なお、左スピーカ部100Lは、右スピーカ部100Rと対称の略同一構造であるため、右スピーカ部100Rの構成についてのみ説明し、左スピーカ部100Lの構成については説明を省略する。
【0020】
図3及び
図4に示すように、右スピーカ部100R(以下、単に「スピーカ部100」という。)は、ケース110を備えている。ケース110は、一方側である人の耳側に配置されるインナケース112と、インナケース112と反対側(他方側)のアウタケース111とを有する。ケース110は、上側が略円弧状であって下側が略直線状とされ、一方側(又は他方側)から見たケース110の面の大きさよりも十分に厚みが薄い、略偏平状に設けられている。平面スピーカ18は、インナケース112及びアウタケース111に挟まれた空間に収納されている。
【0021】
図3、
図5及び
図7に示すように、インナケース112において、内壁である円弧状の環状壁面部121によって画定され、角部を角R状とする略矩形に開口された空間に、平面スピーカ18からの平面波を出力する放音部120が設けられている。左スピーカ部100L側から見て、放音部120を介して、平面スピーカ18の第1面P1の少なくとも一部と、複数の縦板状の板部材が格子状に配置されたリブ部114aの少なくとも一部とが、露出されるように配置されている。具体的な構造は後述するが、平面スピーカ18には、人の耳部側の面である第1面P1及び第1面P1と反対側の面である第2面P2(
図5~
図7参照)に複数の放音孔18cが設けられている。複数の放音孔18cは、行及び列をなして等間隔で配置されている。
【0022】
放音部120は、第1面P1と略垂直な略矩形環状の壁面を有する環状壁面部121が設けられている。環状壁面部121の四隅の角部は、角R状とされている。また、環状壁面部121とインナケース112の耳側の外表面との接続部も角R状の曲面で接続されている。環状壁面部121は、複数の放音孔18cの外周よりも外側に設けられている。環状壁面部121は、略筒状とされる。これにより、放音部120は、該筒内(すなわち、環状壁面部121により画成される空間領域)において音の干渉が低減されて、音場が安定している。
【0023】
放音部120には、環状壁面部121におけるスピーカ部100の先端側(人の顔側)と反対側の壁面からスピーカ部100の先端方向に延在する略U字状のマイクアーム部130が設けられている。マイクアーム部130は、第2面P2側を底面とする略凹溝状に設けられて(
図7参照)、反対側にはカバー131が設けられている。マイクアーム部130の先端部には、FBマイク16が収納されている。
【0024】
また、放音部120には、マイクアーム部130と所定間隔を空けて、マイクアーム部130に沿って略U字状の枠状に設けられる、環状壁面部121に接続するガード部140が設けられている。
図7に示すように、ガード部140の耳側の端部は、マイクアーム部130の耳側の端部よりも耳側に突出していると共に、インナケース112の耳側の外表面と略同一面に設定されている。
【0025】
また、環状壁面部121により画成される空間領域は、環状壁面部121が筒状とされることで、安定した音場とされている。FBマイク16は、環状壁面部121により画成される空間領域に配置されることにより、耳に聞こえる音とほぼ同じ音を収音することができる。従って、精度良くノイズキャンセリングの処理を行うことができる。また、ガード部140がマイクアーム部130(FBマイク16)よりも耳側に突出しているので、スピーカ部100を覆う布地等がマイクアーム部130に触れることを低減し、布地等がマイクアーム部130に触れることによるノイズの発生を低減することができる。
【0026】
また、
図6及び
図7に示すように、インナケース112の内側面には、基板160が設けられている。基板160には、制御部11、記憶部12等を備える制御回路が設けられている。
【0027】
また、
図5、
図6及び
図7に示すように、平面スピーカ18とインナケース112との間には、略矩形板状のフロントケース114が設けられている。フロントケース114は、インナケース112に取り付けられる。フロントケース114は、リブ部114aと、リブ部114aの基端部が接続している略矩形環状の枠板114bと、枠板114bにより画成される枠板114bの内側であって、略矩形に開口する開口孔部114cとを備えている。枠板114bには、孔部が設けられていない。
【0028】
図3に示すように、第1面P1の複数の放音孔18cは、開口孔部114cの内側に配置されている。また、枠板114bは、板面を平面スピーカ18(第1面P1及び第2面P2)と平行に設けられている。そして、リブ部114aは、放音孔18cの間(すなわち、放音孔18cと干渉しない位置)に設けられている。リブ部114aは、平面スピーカ18のヨーク183-1と当接し、磁石板182-1、ヨーク183-1を保持している。
【0029】
図4及び
図6に示すように、アウタケース111は、平面スピーカ18の第2面P2に対応する部分が凹状に開口する凹状開口部111aを有し、凹状開口部111aの開口縁部には遮音板113(遮音部)が設けられている。遮音板113は、微細穿孔板材(MPP;Microperforated panel)からなる。遮音板113には、長矩形状や台形状等を含む略長矩形状の複数の貫通孔113aが設けられている。本実施形態においては、複数の貫通孔113aは、遮音板113の
図4における右側、左側及び上側の縁部近傍に3個ずつ、換言すれば、開放側を下側に向けた略U字状に配置されている。また、遮音板113における平面スピーカ18との対向面(第1面P1側の面)には、シート状の吸音材(不図示)が設けられている。
【0030】
図4及び
図7に示すように、アウタケース111の凹状開口部111aには、枠板111b及びリブ部111cが設けられている(
図5も参照)。枠板111b及びリブ部111cは、フロントケース114のリブ部114a、枠板114bと同様に設けられている。すなわち、リブ部111cは、縦板状の板部材が格子状に配置されている。そして、リブ部111cは、放音孔18cの間(すなわち、放音孔18cと干渉しない位置)に設けられている。リブ部111cは、平面スピーカ18のヨーク183-2と当接し、磁石板182-2、ヨーク183-2を保持している。枠板111bは、板面が平面スピーカ18(第1面P1及び第2面P2)と略平行とされる環状の板状に設けられ、リブ部111cの基端部が接続されている。枠板111bは、孔部が設けられていない無孔部とされている。ここで、遮音板113に設けられる、遮音板113の厚さ方向に貫通した貫通孔113aは、凹状開口部111aの内側の範囲内であって、枠板111b(無孔部)に対応する位置に設けられている。
【0031】
図5~
図7に示すように、フロントケース114とアウタケース111との間には、平面スピーカ18が設けられている。平面スピーカ18は、1枚の振動板181と、振動板181と所定間隔を有して振動板181を間に挟むようにして対向して配置される2枚の磁石板182(磁石板182-1、182-2)と、振動板181側と反対側の各磁石板182の面にそれぞれ取り付けられるヨーク183(ヨーク183-1、183-2)とを有する。ヨーク183は、磁石板182よりも十分に薄い金属板からなる。磁石板182とヨーク183は、互いに対応する位置に配置された複数の放音孔18cを構成する複数の丸孔が設けられている。
【0032】
フロントケース114側の磁石板182-1、ヨーク183-1は、
図6において、上側両端の丸孔が、フロントケース114の枠板114bのアウタケース111側に設けられる2つのボス114dと嵌合して位置決めされる。よって、複数の放音孔18cは、上下各1行分の放音孔18cが枠板114bにより塞がれている。
【0033】
ヨーク183-1の第1面P1側の面とフロントケース114の枠板114bとは、放音孔18cが設けられる領域以外の部位(例えば外縁部分)において両面テープ等により固定されており、ヨーク183-1における第1面P1と反対側の第2面P2側の面と磁石板182-1とも同様に、放音孔18cが設けられる領域以外の部位(例えば外縁部分)において両面テープ等により固定されている。すなわち、ヨーク183-1及び磁石板182-1は、フロントケース114に固定されている。振動板181は、ねじ部材によりフロントケース114に取り付けられる2つの取付プレート185により、取付プレート185とフロントケース114とで挟まれるようにして、フロントケース114に固定される。振動板181と磁石板182-1との間には、所定間隔の空間が設けられる。
【0034】
アウタケース111側の磁石板182-2、ヨーク183-2は、
図5において、上側両端の丸孔が、アウタケース111の枠板111bのフロントケース114側に設けられる2つのボス111dと嵌合して位置決めされる。よって、複数の放音孔18cは、上下各1行分の放音孔18cが枠板111bにより塞がれている。ヨーク183-2の第1面P1側の面とアウタケース111の枠板11bとは、放音孔18cが設けられる領域以外の部位(例えば外縁部分)において両面テープ等により固定されており、ヨーク183-2における第1面P1と反対側の第2面P2側の面と磁石板182-2とも同様に、放音孔18cが設けられる領域以外の部位(例えば外縁部分)において両面テープ等により固定される。すなわち、ヨーク183-2及び磁石板182-2は、アウタケース111に固定されている。振動板181と磁石板182-2との間には、所定間隔の空間が設けられる。
【0035】
フロントケース114は、インナケース112に固定されている。インナケース112とアウタケース111は、ねじ部材により互いに固定されている。スピーカ部100のケース110は、金属板であるヨーク183と、格子状のリブ部114a,111cとにより、大きな開口である放音部120、開口孔部114c、凹状開口部111aを有していても、剛性を高くすることができるので、偏平状とされる厚みの薄い形態とすることができる。
【0036】
また、
図7に示すように、遮音板113は、第2面P2側の複数の放音孔18cを囲繞するよう設けられる凹状開口部111aの周囲において、外側に突出している突出部111eに固定されることによって、平面スピーカ18と対向するとともに、平面スピーカ18と離間して配置されている。従って、遮音板113と平面スピーカ18との間には空間が設けられている。このような空間を設けていても、ヨーク183とリブ部114a,111cによりケース110の剛性を高めることができる。
【0037】
平面スピーカ18は、前述の通り、耳側(第1面P1側)と耳と反対側(第2面P2側)に放音孔18cが設けられ、第1面P1及び第2面P2の両側から放音する。第2面P2側からの音が外部に放音されると、第1面P1側から放音された音と干渉する等して、立体音響を感じることに悪影響を及ぼすことがある。一方で、平面スピーカ18のヨーク183-2(第2面P2)と密着又は近接するように遮音板113を取り付けると、第2面P2側の放音孔18cから空気が抜け難くなるため、振動板181と各磁石板182との間の空間の圧力バランスが悪くなり、良好に振動板181を振動させることができなくなることがある。
【0038】
本実施形態においては、遮音板113と平面スピーカ18との間を離間させ、空間領域を設けることで、振動板181を良好に振動させつつ、第2面P2側からの音が外部に放音されることを低減している。
【0039】
更に、遮音板113には、複数の貫通孔113aを設けることにより、貫通孔113aから放音される音が、貫通孔113a以外の遮音板113から漏れ出る音と打ち消し合って音圧降下を生じさせることができる。特に、枠板111bである無孔部に対応して貫通孔113aを配置することで、ケース110から漏れ出てスピーカ装置10の周りで回り込む音(特に低周波の音)に対して音圧降下を生じさせることができる。
【0040】
図8(a)には、比較例として、スピーカ部100において、遮音板113が設けられていないスピーカ装置10の周囲の音の強さの測定におけるマイクの配置位置を示す。左スピーカ部100Lの音漏れを収音するマイクは、スピーカ装置10の左スピーカ部100Lから所定距離(L1=10cm)内側(耳側)に測定用のマイクMC1を配置した。また、正面を0°として、左スピーカ部100Lと右スピーカ部100Rの中心を結んだ線の中心Oから右前方45°の位置であって、左スピーカ部100Lと右スピーカ部100Rの先端を結んだ線から所定距離(L2=30cm)外側にマイクMC2を配置した。また、90°の位置であって、右スピーカ部100Rから所定距離(L3=30cm)外側にマイクMC3を配置した。また、135°の位置であって、フレーム20から所定距離(L4=30cm)外側にマイクMC4を配置した。右スピーカ部100Rの音漏れを収音するマイクも同様に、
図8(a)の配置と対称にマイクを配置した。
【0041】
その結果、
図8(b)に示すように、約0°、約90°、約180°、約270°の位置で、大きな音圧降下が認められた。なお、
図8(b)の単位はdB(デシベル)である。ここで、右スピーカ部100Rの磁石板182-1、ヨーク183-1によって放音部120側から出力された音と、右スピーカ部100Rの磁石板182-2、ヨーク183-2によって凹状開口部111a側から出力された音と、が打ち消しあうため、0°近傍、180°近傍において、出力音が減衰されている。ただし、遮音板113によって遮られていない構造なので、右スピーカ部100Rの凹状開口部111a側から出力された音によって45°近傍及び135°近傍°では、スピーカ装置の外への音漏れが大きくなってしまっていた。
【0042】
図9では、比較例として、片側のみのスピーカ部100において、遮音板113が設けられていない場合の放音特性(破線F1)と、遮音板113の代わりに貫通孔113aが設けられていない遮音板113Fを用いた場合の放音特性(実線F2)とを示している。インナケース112側の正面を0°として、反時計回りに10°ずつ回転させた位置にマイクを配置させ、収音している。
【0043】
遮音板113の代わりに貫通孔113aが設けられていない遮音板113Fを用いたスピーカ部100では、遮音板113が設けられていないスピーカ部100と比べて、110°から240°までは、遮音性が高いが、90°近傍並びに270°近傍では、遮音板113Fがない場合よりも音漏れが大きい。これは、貫通孔113aが設けられていない遮音板113Fが放音特性に干渉していることによるものである。
【0044】
これに対し本発明のスピーカ装置10では、遮音板113の外周縁寄りに貫通孔113aが設けられているので、スピーカ部100の貫通孔113aから意図的に音の一部を漏洩させている。したがって、例えば、スピーカ部100を中心とした90°近傍並びに270°近傍において、スピーカ部100の磁石板182-1、ヨーク183-1によって放音部120側から出力された音の一部と、スピーカ部100の磁石板182-2、ヨーク183-2によって凹状開口部111a側から出力された音の一部とが、干渉して打ち消しあっている。このように、スピーカ装置10は、貫通孔113aがない遮音板113Fを用いたスピーカ装置と比べても、90°近傍並びに270°近傍において、音の漏洩が小さくて済む。なお、スピーカ装置10から人の顎部側(下側)に漏れる音は、人の耳部でほとんど聞こえず、影響が少ない。よって、貫通孔113aは、略U字状に配置し、
図4における、遮音板113の下側には貫通孔113aを設けなかった。このように、貫通孔113aの配置を最小限とすることで、遮音板113による遮音効果の低減を抑えることができる。
【0045】
スピーカ装置10は、
図1のように椅子50に設けたが、これに限られず、種々の形態とすることができる。例えば、
図10に示すように、フード60の人の耳部に対応する位置にスピーカ装置10を配置して、フード型スピーカ装置60Aとすることもできる。この場合、左スピーカ部100L、右スピーカ部100Rは、夫々、ポケット状の収納部に収納することができる。また、FFマイク17も同様に、ポケット状の収納部に収納することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態によれば、スピーカ装置10は、第1面P1側及び第2面P2側の夫々に複数の放音孔18cを備える平面スピーカ18と、貫通孔113aを備え、第2面P2側の複数の放音孔18cを覆うように配置されている遮音部としての遮音板113と、を有する。
【0047】
これにより、貫通孔113aからの放音がスピーカ部100から漏れる音を打ち消すので、第1面P1からの放音が、スピーカ部100周りに漏れた音により干渉されることが低減されて、立体音響を感じることができるよう良好な放音をするスピーカ装置10を提供することができる。
【0048】
また、遮音板113は、微細穿孔板材からなる。これにより、薄い遮音板113であっても効果的に第2面P2側の放音を遮音することができる。
【0049】
また、平面スピーカ18を収納するケース110は、第2面P2側における複数の放音孔18cの外周に無孔部とされる枠板111bが設けられ、貫通孔113aは、無孔部に対応して配置されている。これにより、第2面P2側の放音孔18cからの音が、直接的に貫通孔113aから放音されることが無いので、音の打ち消しに適切な音圧の音を貫通孔113aから放音することができる。
【0050】
また、遮音板113は、平面スピーカ18との対向面にシート状の吸音材が設けられる。これにより、貫通孔113aからの放音を適切にしつつ、遮音板113の遮音性を更に高めることができる。
【0051】
また、遮音板113は、平面スピーカ18と離間して設けられる。これにより、平面スピーカ18の振動板181の振動が阻害されず、平面スピーカ18からの放音を良好なものとすることができる。
【0052】
また、平面スピーカ18を収納するケース110は、平面スピーカ18を保持する格子状のリブ部114a,111cを有する。これにより、ケース110の剛性を高めてケース110を薄型とすることができる。よって、部材成形のための樹脂材料を低減でき、軽量化することもできる。更に、薄型化により、放音孔18cとFBマイク16の距離を近づけることができる。更に又、環状壁面部121で画成される空間領域や、ヨーク183-2と遮蔽板113との間に空間を、大きな空間とした音響空間とすることができる。
【0053】
また、リブ部114a,111cは、複数の放音孔18cの間に配置される。これにより、ケース110の剛性を高めつつ、放音孔18cからの放音と干渉しないようにリブ部114a,111cを設けることができる。
【0054】
また、椅子型スピーカ装置50Aは、スピーカ装置10が椅子50のヘッドレスト54における人の耳部に対応する位置にそれぞれ設けられている。これにより、使用者は、良好に放音されるスピーカ装置10により立体音響を感じながら、椅子50に座ってくつろぐことができる。
【0055】
また、フード型スピーカ装置60Aは、スピーカ装置10が布製のフード60における人の耳部に対応する位置にそれぞれ設けられている。これにより、フード60を被って、視覚的にも外部と遮断して、一人で立体音響を感じて楽しむことができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0057】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]第1面側及び第2面側の夫々に複数の放音孔を備える平面スピーカと、
貫通孔を備え、前記第2面側の前記複数の放音孔を覆うように配置されている遮音部と、
を有する、スピーカ装置。
[2]前記遮音部は、微細穿孔板材からなる、前記[1]に記載のスピーカ装置。
[3]前記平面スピーカを収納するケースをさらに備え、
前記ケースは、前記第2面側における複数の前記放音孔の外周に無孔部が設けられ、
前記貫通孔は、前記無孔部に対応して配置されている、前記[1]に記載のスピーカ装置。
[4]前記遮音部は、前記平面スピーカとの対向面に吸音材が設けられている、前記[1]に記載のスピーカ装置。
[5]前記遮音部は、前記平面スピーカと離間して設けられている、前記[1]に記載のスピーカ装置。
[6]前記平面スピーカを収納するケースをさらに備え、
前記ケースは、前記平面スピーカを保持するリブ部を有する、前記[1]に記載のスピーカ装置。
[7]前記リブ部は、複数の前記放音孔の間に配置される、前記[6]に記載のスピーカ装置。
[8]前記[1]乃至前記[7]の何れか記載のスピーカ装置が椅子のヘッドレストにおける人の耳部に対応する位置にそれぞれ設けられている、スピーカ装置。
[9]前記[1]乃至前記[7]の何れか記載のスピーカ装置がフードにおける人の耳部に対応する位置にそれぞれ設けられている、スピーカ装置。
【符号の説明】
【0058】
10 スピーカ装置 11 制御部
11b 枠板 12 記憶部
13 入力部 14 出力部
15 通信部 16 FBマイク
17 FFマイク 18 平面スピーカ
18a コンバータ 18b アンプ
18c 放音孔 20 フレーム
30 コントローラ 31 支持部材
50 椅子 50A 椅子型スピーカ装置
51 脚部 52 座部
53 背凭れ 54 ヘッドレスト
55 吸音材 60 フード
60A フード型スピーカ装置 100 スピーカ部
100L 左スピーカ部 100R 右スピーカ部
110 ケース 111 アウタケース
111a 凹状開口部 111b 枠板
111c リブ部 112 インナケース
113 遮音板 113a 貫通孔
114 フロントケース 114a リブ部
114b 枠板 114c 開口孔部
114d ボス
120 放音部 121 環状壁面部
130 マイクアーム部 131 カバー
140 ガード部 160 基板
181 振動板 182 磁石板
182-1 磁石板 182-2 磁石板
183 ヨーク 183-1 ヨーク
183-2 ヨーク 185 取付プレート
BS バス
MC1~4 マイク