(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041219
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20240319BHJP
H02K 5/08 20060101ALI20240319BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20240319BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K5/08 A
H02K11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145895
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】峰松 泰浩
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605BB05
5H605BB10
5H605BB14
5H605CC06
5H605EC20
5H611BB01
5H611BB07
5H611BB08
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】 適切にモールドがなされたモータを提供することを目的とする。
【解決手段】モータ1は、ステータ20と、ステータ20に支持された基板30と、ステータ20を覆う樹脂部材50と、を備え、軸方向において、基板30は、ステータ20に対向する第1の面30Fと、第1の面30Fの反対側の第2の面30Sとを備え、基板30の第1の面30Fは、樹脂部材50と接触しており、基板30の第2の面30Sは、内周部30iと、外周部30oと、内周部30iと外周部30oとの間にある中間部30mとを備え、中間部30mには、導電性の少なくとも1つのパッド40が設けられるとともにパッド40を囲う凹部45が形成されており、凹部45の径方向の端部は、内周部30iよりも径方向の外側d、かつ、外周部30oよりも径方向の内側cに形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータに支持された基板と、前記ステータを覆う樹脂部材と、を備え、
軸方向において、前記基板は、前記ステータに対向する第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを備え、
前記基板の前記第1の面は、前記樹脂部材と接触しており、
前記基板の前記第2の面は、内周部と、外周部と、前記内周部と前記外周部との間にある中間部とを備え、
前記中間部には、導電性の少なくとも1つのパッドが設けられるとともに前記パッドを囲う凹部が形成されており、
前記凹部の径方向の端部は、前記内周部よりも前記径方向の外側、かつ、前記外周部よりも前記径方向の内側に形成される、モータ。
【請求項2】
前記凹部は、多角形もしくは閉曲線形状に形成されており、
前記パッドは前記多角形もしくは前記閉曲線形状内に設けられる、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記凹部は、前記中間部にのみ形成される、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記パッドを含む3つのパッドを備え、
前記凹部を含む3つの凹部を備え、
前記3つのパッドはそれぞれ、U相、V相、及びW相の1つに対応しており、
前記3つの凹部はそれぞれ、前記3つのパッドの1つを囲っている、請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記基板は、複数の導体層と複数の絶縁体層とが交互に積層されて形成されており、
前記基板の前記外周部には、前記ステータと電気的に接続される接続部が設けられており、
前記パッドは、前記基板のうち前記軸方向における端に位置する1層目の前記導体層に設けられており、
前記パッドと前記接続部とは、前記1層目の前記導体層を除く他の層の前記導体層で電気的に接続される、請求項1に記載のモータ。
【請求項6】
前記軸方向において、前記凹部は、前記1層目の前記導体層を貫通している、請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記基板上には、前記外周部と前記内周部とのそれぞれに環状部分が設けられており、
前記凹部の径方向の端部は、それぞれの前記環状部分よりも中間部側に設けられる、請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ステータやステータに電力を供給する基板などをモールドしたモータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたようなモータにおいて、適切にモールドされたモータが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、適切にモールドがなされたモータを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータは、ステータと、前記ステータに支持された基板と、前記ステータを覆う樹脂部材と、を備え、軸方向において、前記基板は、前記ステータに対向する第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを備え、前記基板の前記第1の面は、樹脂部材と接触しており、前記基板の前記第2の面は、内周部と、外周部と、前記内周部と前記外周部との間にある中間部とを備え、前記中間部には、導電性の少なくとも1つのパッドが設けられるとともに前記パッドを囲う凹部が形成されており、前記凹部の径方向の端部は、前記内周部よりも前記径方向の外側、かつ、前記外周部よりも前記径方向の内側に形成される。
【0007】
このようなモータにおいて、以下の構成の少なくとも1つをさらに備えてもよい。
【0008】
前記凹部は、多角形もしくは閉曲線形状に形成されており、前記パッドは前記多角形もしくは前記閉曲線形状内に設けられてもよい。前記凹部は、前記中間部にのみ形成されてもよい。また、前記パッドを含む3つのパッドを備え、前記凹部を含む3つの凹部を備え、前記3つのパッドはそれぞれ、U相、V相、及びW相の1つに対応しており、前記3つの凹部はそれぞれ、前記3つのパッドの1つを囲っていてもよい。前記基板は、複数の導体層と複数の絶縁体層とが交互に積層されて形成されており、前記基板の前記外周部には、前記ステータと電気的に接続される接続部が設けられており、前記パッドは、前記基板のうち前記軸方向における端に位置する1層目の前記導体層に設けられており、前記パッドと前記接続部とは、前記1層目の前記導体層を除く他の層の前記導体層で電気的に接続されてもよい。この場合、前記軸方向において、前記凹部は、前記1層目の前記導体層を貫通してもよい。前記基板上には、前記外周部と前記内周部とのそれぞれに環状部分が設けられており、前記凹部の径方向の端部は、それぞれの前記環状部分よりも中間部側に設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態におけるモータを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すモータのステータアセンブリを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すステータアセンブリを軸方向における一方側から見た平面図である。
【
図4】
図3に示すステータアセンブリの軸方向における断面図である。
【
図5】
図2に示すステータアセンブリを、樹脂部材を除いて示す斜視図である。
【
図6】
図5に示すステータアセンブリにおいてステータと基板とを分離して示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す基板のVII-VII線における断面図の一部を概略的に示す図である。
【
図8】
図2に示すアセンブリの製造工程の一部の工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るモータを実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張又は縮小して示されていたり、ハッチングが省略されて示されていたりする場合がある。
【0011】
図1は、実施形態におけるモータを示す斜視図である。
図1に示すように、モータ1は、中心軸Xに対して同心に配置されたロータ10及びステータアセンブリ60を含んでいる。このモータ1の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では、モータ1は、交流モータであり、さらに言えば、2極の3相誘導モータとして構成されている。ロータ10及びステータアセンブリ60は、それぞれ中心軸Xの方向(以下、単に「軸方向」と記載する。)の長さを厚みとする円筒状に形成されている。
図1は、軸方向におけるa側からモータ1を見た斜視図である。なお、軸方向におけるa側とは反対側をb側と記載する。軸方向に直交する方向を径方向とすると、本実施形態では、ロータ10及びステータアセンブリ60のそれぞれは、径方向の長さ(すなわち外径)が軸方向の厚みに比べて大きい薄型に形成されている。また、本実施形態では、ロータ10の厚みはステータアセンブリ60の厚みよりも小さい。なお、径方向において、中心軸Xに近づく側を内側cと記載し、中心軸Xから遠ざかる側を外側dと記載する。
【0012】
例えば、ステータアセンブリ60は、不図示の収容体の内部に固定されてもよく、ロータ10は、上記収容体及びステータアセンブリ60に対して回転可能に上記収容体の内部に支持されてもよい。
【0013】
ロータ10は、中心軸Xを中心とする円筒状のロータ鉄心11と、ロータ鉄心11内に放射状に配置されてロータ鉄心11に支持された複数のマグネット12とを含んでいる。本実施形態において、マグネット12のそれぞれは、軸方向から見る場合に矩形であり、互いに概ね平行に延在している。マグネット12のそれぞれの延在方向は、軸方向に平行であってもよく、軸方向に対して傾斜していてもよい。特に限定されないが、ロータ鉄心11は積層されたケイ素鋼板からなっていてもよい。また、ロータ鉄心11の内周面11iには、不図示の回転軸が例えば圧入によって取り付けられてもよく、この回転軸が上記収容体の外部に突出していてもよい。
【0014】
次に、ステータアセンブリ60について説明する。
図2はステータアセンブリ60を軸方向のa側から見た斜視図、
図3はステータアセンブリ60を軸方向のa側から見た平面図、
図4はステータアセンブリ60の軸方向における断面図である。
図2~
図4に示すように、ステータアセンブリ60は、ステータ20と基板30と樹脂部材50とを含んでいる。樹脂部材50は、ステータ20及び基板30を部分的に覆っている。この点については後に再び説明する。
【0015】
図5及び
図6は、ステータアセンブリ60から樹脂部材50を除いて示す図である。すなわち、
図5はステータ20及び基板30を軸方向のa側から見た斜視図、
図6はステータ20及び基板30を分離して示す図である。
【0016】
図5及び
図6に示すように、ステータ20は、中心軸Xを中心とする薄型の円筒状に形成されている。本実施形態において、ステータ20は、複数のステータ構成体21が周方向に沿ってリング状に並べられてなる集合体として構成されている。ステータ構成体21の数は特に限定されないが、本実施形態では18個である。ステータ構成体21のそれぞれは、コイルの巻回方向を除いて同様の構成を有する。
図4~
図6に示すように、複数のステータ構成体21のそれぞれは、鉄心24と、インシュレータ22と、コイル23とを含んでいる。鉄心24は、例えば、積層されたケイ素鋼板からなってもよい。鉄心24の大部分はインシュレータ22によって覆われて絶縁されている。その一方、鉄心24の内周面24i及び外周面24oはインシュレータ22から露出している。なお、内周面24iは鉄心24の径方向の内側cの面であり、外周面24oは径方向の外側dの面である。インシュレータ22を介して、コイル23が鉄心24に巻回されている。軸方向のa側から見る場合に、複数のステータ構成体21のそれぞれの内周面24iは、中心軸Xを中心とする第1の円C1上に概ね配置されており、複数のステータ構成体21のそれぞれの外周面24oは、中心軸Xを中心とする第1の円C1よりも大径の第2の円C2上に概ね配置されている。また、周方向に隣り合う2つのステータ構成体21は、内周部21i同士及び外周部21o同士をそれぞれ周方向において接触させた状態で配置されている。これにより、周方向に隣り合うステータ構成体21のそれぞれの内周部21iと外周部21oとを除く部分の間には、間隙Gが形成されている。なお、内周部21iには上記内周面24iが、外周部21oには上記外周面24oがそれぞれ含まれる。
【0017】
周方向におけるコイル23の両縁部のうち径方向の外側dの端部のそれぞれには、端子ピン25が設けられている。端子ピン25は、コイル23からa側に向かって軸方向と概ね平行に延在している。2つの端子ピン25,25の一方には、コイル23の始端(巻き始め)が巻回されており、他方にはそのコイル23の終端(巻き終わり)が巻回されている。コイル23には、これら端子ピン25,25を介して電流が供給される。
【0018】
図4~
図6に示すように、基板30は、中心軸Xを中心とするリング状の板状部材である。基板30は、ステータ20よりも軸方向のa側に配置されている。基板30の内径(すなわち、基板30の内周部30ieの直径)は、ステータ20の上記第1の円C1の直径と概ね同じである。基板30の外径(すなわち、基板30の外周部30oeの直径)はステータ20の上記第2の円C2の直径よりも小さく、径方向において、基板30の外周部30oeの位置はインシュレータ22の外周縁22oeの位置に概ね一致している。基板30の外周部30oeには、周方向の全体に亘って、概ね等間隔に、概ね同一の直径を有する半円形の切り欠き39が形成されている。これらの切り欠き39のそれぞれは、上述の複数の端子ピン25のそれぞれに対応して形成されており、端子ピン25のそれぞれが嵌まり込むことができるように形成されている。したがって、端子ピン25のそれぞれが切り欠き39のそれぞれに嵌まり込むことによって、基板30がステータ20に支持されるとともに、複数のステータ構成体21が基板30を介して互いに位置決めされて固定される。このように、モータ1において、基板30の外周部30oeには、複数の端子ピン25が設けられている。軸方向のa側から見る場合に、基板30はステータ20の大部分を覆っている。
【0019】
図7は、
図6に示すVII-VII線における基板30の一部を示す断面図、すなわち、基板30の一部を示す軸方向における断面図である。
図7に示すように、基板30は、軸方向のb側の第1の面30Fと、a側の第2の面30Sとを備えている。
図4に示すように、軸方向において、第1の面30Fはステータ20に対向しており、第1の面30Fとステータ20との間には微小な隙間Lが形成されている。本実施形態において、この隙間Lは、樹脂部材50で充填されている。
【0020】
図6及び
図7に示すように、第2の面30Sは、径方向の内側cに位置する内周部30iと、径方向の外側dに位置する外周部30oと、内周部30iと外周部30oとの間にある中間部30mとを備えている。内周部30iには、上記内周部30ieのa側の端部が含まれる。外周部30oには、上記外周部30oeのa側の端部が含まれる。外周部30oは、外周部30oeのa側の端部を含む外側dに位置する第1領域30o1と、第1領域30o1よりも内側cに位置する第2領域30o2とを有している。第2の面30Sには、一部を除いて、絶縁性を有する第1の材料41が塗布されている。また、第2の面30Sの内周部30iには、第1の材料41上に第2の材料42が円環状に塗布されており、この第2の材料42が環状部分をなしている。また、外周部30oの第2領域30o2には、第1の材料41上に第3の材料43が円環状に塗布されており、この第3の材料43が環状部分をなしている。第1の材料41、第2の材料42、及び第3の材料43に関して、全てが同じ材料(例えば、絶縁性のインク)から形成されてもよく、2つが同じ材料で形成されてもよく、全てが異なる材料から形成されてもよい。また、第1の材料41、第2の材料42、及び第3の材料43がインクである場合、これらをスクリーン印刷により第2の面30S上に塗布してもよい。
【0021】
図6及び
図7に示すように、第2の面30Sの中間部30mには、第1の材料41が塗布されていない部分31mnが少なくとも1箇所(本実施形態では3箇所)ある。そして、本実施形態では、3箇所の第1の材料41が塗布されていない部分31mnのそれぞれに、導電性のパッド40が重ねられている。軸方向a側から見る場合に、3つのパッド40のそれぞれは、第1の材料41が塗布されていない部分31mnのそれぞれを概ね全面的に覆っている。そして、中間部30mには、3つのパッドのそれぞれに対応して、3つの凹部45が一対一対応で形成されている。すなわち、1つの凹部45は、対応する1つのパッド40を囲っている。3つの凹部45のそれぞれは中間部30mにのみ形成されており、それぞれの凹部45の径方向における端部は、内周部30iよりも径方向の外側d、かつ、外周部30oよりも径方向の内側cに形成されている。また、3つの凹部45のそれぞれは、第2の材料42がなす環状部分及び第3の材料43がなす環状部分のそれぞれよりも中間部30m側に設けられている。本実施形態において、3つの凹部45のそれぞれは、a側から見る場合に概ね矩形である。なお、凹部45の形状は、特に限定されるものではないが、a側から見る場合に多角形や閉曲線形状であることが好ましい。
【0022】
図7に示すように、本実施形態では、基板30は、複数の導体層と複数の絶縁体層とが交互に積層されて形成されている。導体層は例えば銅などの導体からなってもよく、絶縁体層は例えば絶縁性の樹脂からなってもよい。具体的には、基板30は、軸方向のa側からb側に向かって、第1導体層31、第1絶縁体層35、第2導体層32、第2絶縁体層36、第3導体層33、第3絶縁体層37、及び第4導体層34の順に積層されて形成されている。すなわち、第1導体層31は軸方向における一方(a側)の端に位置する1層目の導体層であり、基板30の第2の面30Sは第1導体層31のa側の面である。また、第4導体層34は軸方向における他方(b側)の端に位置する4層目の導体層であり、第1の面30Fは第4導体層34のb側の面である。
【0023】
本実施形態において、
図7に示す領域では、第1の材料41が塗布されていない部分31mn(以下、「導体露出部31mn」と記載する。)に複数のスルーホール46が設けられており、これらのスルーホール46を介して、第1導体層31と第2導体層32とが導通している。したがって、
図7に示す領域に設けられたパッド40からの電流は、導体露出部31mnを経て、スルーホール46を流れて、第2導体層32へと至る。そして、本実施形態では、複数の端子ピン25のうち所定の端子ピン25が、
図7に示す領域における第2導体層32と電気的に接続されている。すなわち、本実施形態では、第2導体層32において所定の端子ピン25とパッド40とが電気的に接続されている。こうして、当該所定の端子ピン25に接続されるコイル23には、第1導体層31を除く第2導体層32を介して、パッド40からの電流が流れる。また、
図7に示す領域とは異なる領域において、例えば、任意の2つのコイル23のうちの一方のコイル23の一方の端子ピン25と、他方のコイルの一方の端子ピン25とが第3導体層33で電気的に接続されており、かつ、上記一方のコイル23の他方の端子ピン25が、第2導体層32のうちパッド40に電気的に接続されている領域と電気的に接続されていてもよい。この場合、パッド40と、一方のコイル23の一方の端子ピン25と、他方のコイル23の一方の端子ピン25とは、第2導体層32及び第3導体層33を介して電気的に接続されている。したがって、パッド40からの電流は第2導体層32及び第3導体層33を介して2つのコイル23を流れる。また、さらに別の領域では、2つのコイル23同士が第4導体層34で接続されていてもよい。このように、本実施形態では、多層の導体層を介して、複数のコイル23が電気的に接続されている。すなわち、本実施形態では、基板30の外周部30oには、ステータ20と電気的に接続される端子ピン25(接続部)が設けられており、パッド40は、基板30のうち軸方向における端に位置する1層目の第1導体層31に設けられており、パッド40と端子ピン25(接続部)とは、1層目の第1導体層31を除く他の層の導体層(第2導体層32、第3導体層33、及び第4導体層34)で電気的に接続されている。
【0024】
また、本実施形態では、3つのパッド40はそれぞれ、U相、V相、及びW相の1つに対応している。以下、便宜上、U相に対応するパッド40をパッド40Uと記載し、V相に対応するパッド40をパッド40Vと記載し、W相に対応するパッド40をパッド40Wと記載する。
図6に示すように、本実施形態では、パッド40U,40W,40Vは、この順で時計回りに並んで配置されており、基板30の概ね1/4円の領域にまとまって配置されている。ただし、パッド40U,40W,40Vを上記のようにまとめて配置することは必須でない。例えば、パッド40U,40W,40Vを周方向に等間隔(120°の間隔)で配置してもよい。
【0025】
このように、モータ1は、3つのパッド40と、3つの凹部45とを備えており、3つのパッド40はそれぞれ、U相、V相、及びW相の1つに対応しており、3つの凹部45はそれぞれ、3つのパッド40の1つを囲っている。
【0026】
本実施形態では、
図7に示す領域がパッド40Uに対応する領域である。このパッド40Uを介して、周方向に連続した3つのコイル23Uからなる第1U層コイル群と、当該第1U層コイル群に対して中心軸Xを挟んで反対側に位置する周方向に連続した3つのコイル23Uからなる第2U層コイル群とにU相の交流が供給される。また、パッド40Wを介して、周方向に連続した3つのコイル23Wからなる第1W層コイル群と、当該第1W層コイル群に対して中心軸Xを挟んで反対側に位置する周方向に連続した3つのコイル23Wからなる第2W層コイル群とにW相の交流が供給される。また、パッド40Vを介して、周方向に連続した3つのコイル23Vからなる第1V層コイル群と、当該第1V層コイル群に対して中心軸Xを挟んで反対側に位置する周方向に連続した3つのコイル23Vからなる第2V層コイル群とにV相の交流が供給される。
【0027】
図7に示すように、本実施形態では、軸方向において、凹部45が第1導体層31(すなわち、1層目の導体層)を貫通している。したがって、本実施形態では、第1導体層31において、U相のパッド40Uに導通する導体露出部31mn、W相のパッド40Wに導通する導体露出部31mn、及びV相のパッド40Vに導通する導体露出部31mnが、互いに絶縁されている。
【0028】
次に、樹脂部材50について説明する。樹脂部材50を形成する樹脂としては、熱硬化性樹脂を用いてもよく、熱可塑性樹脂を用いてもよい。また、樹脂部材50を形成する樹脂は、例えば、アルミニウムやケイ素を含んでもよい。また、樹脂部材50を形成する樹脂の剛性としては、特に限定されるものではないが、インシュレータ22を形成する樹脂の剛性よりも小さくてもよい。さらに、樹脂部材50は、熱伝導性や絶縁性に優れていてもよい。この樹脂部材50は、後述するようにモールドにより設けられる。
【0029】
図2~
図4に示すように、樹脂部材50は、中心軸Xを中心軸とする概ね円筒の形状を有しており、各ステータ構成体21の内周面24iと外周部21oとを除いて、ステータ20を覆っている。すなわち、樹脂部材50は、ステータ20の軸方向のa側及びb側の双方を覆っている。本実施形態では、ステータ20のうち内側cでは、各ステータ構成体21の内周面24iが樹脂部材50から露出しており、樹脂部材50の内周面50iと各ステータ構成体21の内周面24iとが概ね面一になっている。これら露出した内周面24iのそれぞれが、ロータ10の外周面(
図1参照)に対向している。一方、ステータ20のうち外側dでは、各ステータ構成体21の外周部21oが樹脂部材50の外周面50oから外側dに突出している。
【0030】
また、樹脂部材50は、基板30のb側の第1の面30F、径方向の内側cの内周部30ie、及び径方向の外側dの外周部30oeを全面的に覆っている。すなわち、第1の面30Fは、樹脂部材50と接触している。また、樹脂部材50は、基板30の軸方向a側の部分を部分的に覆っている。具体的には、樹脂部材50は、基板30の第2の面30Sにおける外周部30oのうち第1領域30o1に塗布された第1の材料41を覆っている。しかし、樹脂部材50は、樹脂部材50は、基板30の第2の面30Sのうち、外周部30oの第2領域30o2(すなわち、第3の材料43)、中間部30m(すなわち、第1の材料41)、及び内周部30i(すなわち、第2の材料42)を覆っていない。すなわち、このモータ1では、第3の材料43からなる環状部分よりも内側c及び第2の材料42からなる環状部分よりも外側dへの樹脂部材50のはみ出しが防止されている。さらに言えば、パッド40や当該パッド40に接続される配線等が設けられる基板30の中間部30mへの樹脂部材50のはみ出しが防止されている。また、このようにはみ出しが防止されているため、美観にも優れている。このように、モータ1においては、樹脂部材50が適切にモールドされている。
【0031】
以上のように、本実施形態のモータ1は、ステータ20と、ステータ20に支持された基板30と、ステータ20を覆う樹脂部材50と、を備えている。軸方向において、基板30は、ステータ20に対向する第1の面30Fと、第1の面30Fの反対側の第2の面30Sとを備えており、基板30の第1の面30Fは、樹脂部材50と接触している。また、基板30の第2の面30Sは、内周部30iと、外周部30oと、内周部30iと外周部30oとの間にある中間部30mとを備えている。中間部30mには、導電性の少なくとも1つのパッド40が設けられるとともにパッド40を囲う凹部45が形成されている。凹部45の径方向の端部は、内周部30iよりも径方向の外側d、かつ、外周部30oよりも径方向の内側cに形成されている。
【0032】
次に、モータ1の製造方法について説明する。
【0033】
まず、第1工程として、基板30の第2の面30Sの中間部30mに凹部45を形成する。具体的には、
図6に示すように、3つのパッド40のそれぞれに対応して、パッド40を囲う凹部45を形成する。すなわち、3つの凹部45を基板30に形成する。この際、凹部45のそれぞれを、中間部30mにのみ形成する。すなわち、凹部45の径方向の端部が、内周部30iよりも径方向の外側d、かつ、外周部30oよりも径方向の内側cになるように凹部45を形成する。さらに言えば、3つの凹部45のそれぞれを、第2の材料42がなす環状部分及び第3の材料43がなす環状部分のそれぞれよりも中間部30m側に設ける。
【0034】
次に、第2工程として、
図5に示すように、ステータ20の複数の端子ピン25のそれぞれを、基板30の外周部30oeに形成された切り欠き39にはめ込んで、ステータ20と基板30とを固定する。こうして、基板付きステータ70が得られる。なお、切り欠き39からa側に突出した端子ピン25の端部にねじ溝を設け、端子ピン25の当該端部にナットNを螺合させることにより、基板30をステータ20に固定してもよい。
【0035】
次に、第3工程を行う。この工程は、基板付きステータ70を金型にはめ込む工程である。
図8に示すように、本工程に使用する金型90は、第1金型91と、第2金型92とを含んでいる。
【0036】
第1金型91は、基部91Bと、基部91Bからa側に突出する円柱形の突出部91Pと、突出部91Pから径方向の外側dに所定の間隔を空けて基部91Bからa側に突出する段部91Sとを含んでいる。段部91Sの内側cの面には、内側cに突出するフランジ面91fが形成されている。突出部91Pの直径は、上述の第1の円C1(
図5参照)の直径と実質的に同一である。突出部91Pの外周面91Poと、基部91Bのa側の上面91Buと、段部91Sの内側cの内面とによって、第1金型91には、a側から見て円環状の凹部91Cが形成されている。
【0037】
第2金型92は、ベース部92Bと、ベース部92Bからb側に突出するb側から見て円環状の第1突出部92P1と、第1突出部92P1から径方向の外側dに所定の間隔を空けてb側に突出するb側から見て円環状の第2突出部92P2とを含んでいる。第2突出部92P2のb側への突出長さは、第1突出部92P1のb側への突出長さよりも長い。ベース部92Bのb側の下面92Bdと、第1突出部92P1の内側cの内面とによって、第2金型92には、b側から見て円形の第1凹部92C1が形成されている。第1凹部92C1の直径(すなわち、第1突出部91P1の内径)は、第1金型91の突出部91Pの直径と実質的に同一である。また、第2金型92の第1凹部92C1よりも外側dには、ベース部92Bの下面92Bdと、第1突出部92P1の外側dの外面と、第2突出部92P2の内側cの内面とによって、b側から見て円環状の第2凹部92C2が形成されている。ベース部92Bの下面92Bdのうち第2凹部92C2を形成する領域の一部には、樹脂部材50を形成する樹脂を注入するためのゲート孔92Gaが設けられており、このゲート孔92Gaは、第2凹部92C2に連通している。
【0038】
本工程では、まず、基板付きステータ70を第1金型91の凹部91C内に配置する。これにより、複数のステータ構成体21のそれぞれの内周面24iが、第1金型91の突出部91Pの外周面91Poに概ね全面的に接触する。また、複数のステータ構成体21のそれぞれの外周部21oのうち外側dの部分が、段部91Sのフランジ面91f及び段部91Sのc側の面におけるフランジ面91fよりもa側の部分に嵌合する。その結果、複数のステータ構成体21のそれぞれの外周部21oのうちa側の上面21ouと、第1金型91の段部91Sのa側の上面91Suとが実質的に面一の状態で隙間なく接触するとともに、フランジ面91fよりもb側において、第1金型91と基板付きステータ70との間に第1の隙間Cr1が形成される。具体的には、この第1の隙間Cr1は、基板付きステータ70を基準としてc側における内周面24iのb側の端部よりもb側の隙間と、基板付きステータ70を基準としてb側における基板付きステータ70よりもb側の隙間と、基板付きステータ70を基準としてd側におけるフランジ面91fよりもb側の隙間とを含んでいる。
【0039】
次に、第1金型91のa側の面及び第1金型91の凹部91C内に配置された基板付きステータ70のa側の面に、第2金型92のb側の面を対向させた状態にして、第2金型92を第1金型91上に配置する。この状態が
図8に示されている。これにより、第1金型91の突出部91Pのa側の端部91Puが第2金型92の第1凹部92C1に嵌合する。また、第2金型92の第1突出部92P1のb側の面が、基板30のa側の面のうち上記第1領域30o1を除く領域に、実質的に全面的に接触する。そして、このように第2金型92が配置されることにより、基板付きステータ70と第2金型92との間に、第2の隙間Cr2及び第3の隙間Cr3が形成される。具体的には、第2の隙間Cr2は、基板付きステータ70を基準としてd側に位置する隙間と、基板付きステータ70を基準としてa側に位置する隙間とを含んでいる。また、第3の隙間Cr3は、ステータ20と基板30との間の隙間と、基板付きステータ70を基準としてc側に位置する隙間とを含んでいる。また、第2金型92が配置された
図8の状態において、第1の隙間Cr1と第2の隙間Cr2と第3の隙間Cr3とは、
図6に示される上述の間隙Gや隣接するステータ構成体21の内周面24i間の間隙Kなどを介して連通している。
【0040】
次に、第4工程を行う。この工程は、基板付きステータ70がはめ込まれた金型90に樹脂部材50を形成する樹脂(以下、「モールド樹脂」と記載する。)を注入してモールドする工程である。具体的には、第2金型92に形成されたゲート孔92Gaから液状のモールド樹脂を注入していく。そうすると、液状のモールド樹脂は、まず第2の隙間Cr2に流入し、その後、間隙Gや間隙Kなどを介して第1の隙間Cr1及び第3の隙間Cr3にも流入する。やがて、第1の隙間Cr1、第2の隙間Cr2、第3の隙間Cr3、間隙G、及び間隙K等は、液状のモールド樹脂により充填され、その後、液状のモールド樹脂が硬化する。その結果、樹脂部材50が形成される。すなわち、本工程により、
図2~
図4に示すステータアセンブリ60が完成する。
【0041】
本工程では、上述のように、第2金型92の第1突出部92P1のb側の面が、基板30のa側の面のうち上記第1領域30o1を除く領域に、実質的に全面的に接触している。そのため、第2の隙間Cr2に流入したモールド樹脂は、基板30の上記第2領域30o2よりも内側cの領域には浸入し難いと考えられる。しかし、上記のように、本実施形態では、基板30の第1導体層31において、パッド40Uに導通する導体露出部31mn、パッド40Wに導通する導体露出部31mn、及びパッド40Vに導通する導体露出部31mnを互いに絶縁するための凹部が形成されている。例えば、この凹部の径方向の外側dの端部が第1領域30o1に接続していると、この凹部を介して、第2の隙間Cr2にあるモールド樹脂が、基板30のa側の面のうち第1領域30o1よりも内側cの領域に浸入するおそれがある(
図4及び
図8参照)。また、例えば、凹部の径方向の内側cの端部が基板30の内周部30ie(
図4及び
図8参照)に接続していると、この凹部を介して、第3の隙間Cr3にあるモールド樹脂が、基板30のa側の面のうち内周部30i及び内周部30iよりも外側dの領域に浸入するおそれがある。しかし、本実施形態によれば、上記のように、3つの凹部45のそれぞれは中間部30mにのみ形成されており、それぞれの凹部45の径方向の端部は、内周部30iよりも径方向の外側d、かつ、外周部30oよりも径方向の内側cに形成されている。さらに言えば、3つの凹部45のそれぞれは、第2の材料42がなす環状部分及び第3の材料43がなす環状部分のそれぞれよりも中間部30m側に設けられている。したがって、凹部45を介して基板30の内側cの部分(中間部30m等)にモールド樹脂が浸入することが防止される。このため、本工程を経て完成したモータ1では、上記のように、基板30の内側cの部分にモールド樹脂がはみ出していることが防止されており、適切にモールドされた樹脂部材50を備えている。
【0042】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
例えば、上記実施形態では、2極の3相誘導モータを例として説明したが、本発明は、モータの種類によらず適用することが可能であり、例えば、4極の3相誘導モータ、単相交流モータ、あるいはインナーロータ型のDCモータなどにも適用することが可能である。
【0044】
さらには、凹部45は、一つ一つが違う形でも良い。それぞれのパッドの大きさや配置位置の変化によって適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…モータ、20…ステータ、21i…内周部、21o…外周部、30…基板、30F…第1の面、30i…内周部、30m…中間部、30o…外周部、30S…第2の面、40…パッド、45…凹部、50…樹脂部材