(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041236
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】粉体分注方法
(51)【国際特許分類】
B65B 1/30 20060101AFI20240319BHJP
B65B 39/00 20060101ALI20240319BHJP
B65G 65/40 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B65B1/30 Z
B65B39/00 A
B65G65/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145932
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】金井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】栗林 誉
(72)【発明者】
【氏名】堀 牧人
(72)【発明者】
【氏名】池邊 朋
【テーマコード(参考)】
3E055
3E118
3F075
【Fターム(参考)】
3E055AA03
3E055BB01
3E055CA10
3E055DA03
3E055DA06
3E055EB08
3E118AB03
3E118BB02
3E118BB10
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3E118FA04
3E118FA07
3F075AA08
3F075BA01
3F075BB01
3F075CA06
3F075CA09
3F075CB12
3F075CB13
3F075CD02
3F075CD07
3F075CD11
3F075CD14
(57)【要約】
【課題】高い精度の分注を行うことができる粉体分注方法を提供すること。
【解決手段】粉体分注方法は、粉体を貯留するホッパーと、前記ホッパー内に貯留された前記粉体を吐出する吐出口を備える筒状のノズルと、前記ノズル内に挿入され、前記ノズルに対して前記ノズルの軸方向に移動するシャフトと、を有し、前記シャフトは、側面に開口する凹部を有する粉体吐出装置を用いた粉体分注方法であって、前記シャフトが前記ノズルに対して移動することで、前記凹部が前記ホッパー内に開口する内側開状態と、前記凹部が前記ノズルの内周面で塞がれる閉状態と、前記凹部が前記ノズル外に開口する外側開状態と、に切り替わり、前記内側開状態とし、前記ホッパーから前記凹部内に前記粉体を導入する粉体導入工程と、前記外側開状態と前記閉状態とを繰り返すことで、前記凹部内の前記粉体を複数回に分けて前記吐出口から吐出する粉体吐出工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を貯留するホッパーと、前記ホッパー内に貯留された前記粉体を吐出する吐出口を備える筒状のノズルと、前記ノズル内に挿入され、前記ノズルに対して前記ノズルの軸方向に移動するシャフトと、を有し、前記シャフトは、側面に開口する凹部を有する粉体吐出装置を用いた粉体分注方法であって、
前記シャフトが前記ノズルに対して移動することで、前記凹部が前記ホッパー内に開口する内側開状態と、前記凹部が前記ノズルの内周面で塞がれる閉状態と、前記凹部が前記吐出口に開口する外側開状態と、に切り替わり、
前記内側開状態とし、前記ホッパーから前記凹部内に前記粉体を導入する粉体導入工程と、
前記外側開状態と前記閉状態とを繰り返すことで、前記凹部内の前記粉体を複数回に分けて前記吐出口から吐出する粉体吐出工程と、を含むことを特徴とする粉体分注方法。
【請求項2】
前記粉体の吐出残量に基づいて前記内側開状態、前記閉状態および前記外側開状態を切り替える請求項1に記載の粉体分注方法。
【請求項3】
前記粉体の単位時間当たりの吐出量に基づいて前記内側開状態、前記閉状態および前記外側開状態を切り替える請求項1に記載の粉体分注方法。
【請求項4】
前記外側開状態での前記凹部の開度および待機時間は、一定である請求項1に記載の粉体分注方法。
【請求項5】
前記粉体吐出装置は、前記ホッパーを振動させる振動部を有する請求項1に記載の粉体分注方法。
【請求項6】
前記ノズルまたは前記シャフトは、樹脂材料で構成されている請求項1に記載の粉体分注方法。
【請求項7】
前記凹部は、前記吐出口側に前記シャフトの外周面に対して鋭角な第1面を有する請求項1に記載の粉体分注方法。
【請求項8】
前記凹部は、前記ホッパー側に前記シャフトの外周面に対して鈍角な第2面を有する請求項1に記載の粉体分注方法。
【請求項9】
前記凹部は、螺旋状である請求項1に記載の粉体分注方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所要量の粉体を供給するためのディスペンサー・デバイスが記載されている。特許文献1に記載のディスペンサー・デバイスは、粉体の吐出口を有するハウジングと、ハウジングに挿入されている送出/閉鎖部材と、を有する。また、送出/閉鎖部材は、ハウジングに対して上下方向に移動可能で、かつ、中心軸まわりに回転可能である。また、送出/閉鎖部材には、側面に開口する凹部が形成されている。送出/閉鎖部材を上側に移動させて、凹部をハウジング内に開口させることにより、ハウジング内の粉体が凹部内に導入され、送出/閉鎖部材を下側に移動させて、凹部を吐出口外に開口させることで、凹部内の粉体を吐出口から吐出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のディスペンサー・デバイスでは、凹部の送出/閉鎖部材の軸方向における長さが吐出口の長さよりも長いので、凹部を閉じることができない。したがって、ハウジング内の粉体が凹部を介して吐出口から吐出され続けてしまい、微小量の調整が難しい。そのため、特許文献1のディスペンサー・デバイスには、高い分注精度を発揮することが難しいとの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粉体分注方法は、粉体を貯留するホッパーと、前記ホッパー内に貯留された前記粉体を吐出する吐出口を備える筒状のノズルと、前記ノズル内に挿入され、前記ノズルに対して前記ノズルの軸方向に移動するシャフトと、を有し、前記シャフトは、側面に開口する凹部を有する粉体吐出装置を用いた粉体分注方法であって、
前記シャフトが前記ノズルに対して移動することで、前記凹部が前記ホッパー内に開口する内側開状態と、前記凹部が前記ノズルの内周面で塞がれる閉状態と、前記凹部が前記吐出口に開口する外側開状態と、に切り替わり、
前記内側開状態とし、前記ホッパーから前記凹部内に前記粉体を導入する粉体導入工程と、
前記外側開状態と前記閉状態とを繰り返すことで、前記凹部内の前記粉体を複数回に分けて前記吐出口から吐出する粉体吐出工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】好適な実施形態に係る粉体分注方法に用いられる粉体吐出装置を示す断面図である。
【
図8】シャフトに形成された凹部を示す拡大断面図である。
【
図10】粉体吐出装置の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の粉体分注方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0008】
図1は、好適な実施形態に係る粉体分注方法に用いられる粉体吐出装置を示す断面図である。
図2は、内側開状態を示す断面図である。
図3は、閉状態を示す断面図である。
図4は、外側開状態を示す断面図である。
図5ないし
図7は、それぞれ、微調モードを説明するための断面図である。
図8は、シャフトに形成された凹部を示す拡大断面図である。
図9は、凹部の変形例を示す拡大断面図である。
図10は、粉体吐出装置の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0009】
なお、以下では、説明の便宜上、
図1ないし
図9の上側を「上」、下側を「下」とも言う。また、
図1ないし
図9の紙面縦方向は、鉛直方向に沿うものとする。
【0010】
まず、本実施形態の粉体分注方法を行うための粉体吐出装置1について説明する。
図1に示す粉体吐出装置1は、ホッパー2と、ホッパー2の下端部に接続されているノズル3と、ノズル3に挿入されているシャフト4と、シャフト4を上下動させる駆動部5と、ホッパー2を振動させる振動部6と、駆動部5および振動部6の駆動を制御する制御部7と、を有する。
【0011】
ホッパー2は、鉛直方向に延びた管状であり、内部に粉体Qが貯留される。また、ホッパー2の下端部は、テーパー状になっており、内径が下側に向けて漸減している。そして、ホッパー2の下端部にノズル3が接続されている。これにより、ホッパー2内の粉体Qが自重によってノズル3に導かれる。ノズル3は、鉛直方向に延びる筒状をなし、ホッパー2と同軸的に配置されている。また、ノズル3は、その下端が吐出口31となっており、この吐出口31を介してホッパー2内の粉体Qが吐出される。
【0012】
ノズル3には、シャフト4が挿入されている。シャフト4は、鉛直方向に沿って延在し、ノズル3の中心軸Jに沿って上下に移動する。また、シャフト4は、その外周面に開口する凹部41を有する。凹部41は、ホッパー2内の粉体Qを吐出口31まで搬送する搬送部として機能する。
【0013】
また、凹部41の開口の長さL4は、ノズル3の長さL3よりも小さい。つまり、L4<L3である。そのため、シャフト4をノズル3に対して上下動させることで、
図2に示す内側開状態P1と、
図3に示す閉状態P2と、
図4に示す外側開状態P3と、に切り替えることができる。内側開状態P1では、凹部41がホッパー2内に開口し、ホッパー2内の粉体Qが凹部41内に導入される。また、閉状態P2では、凹部41の開口がノズル3の内周面で塞がれ、凹部41内への粉体Qの導入および凹部41外への粉体Qの吐出が阻止される。また、外側開状態P3では、凹部41が吐出口31外に開口し、凹部41内の粉体Qが吐出口31から吐出される。粉体吐出装置1では、これら3つの状態を適宜切り替えることにより、優れた分注精度を発揮することができる。
【0014】
なお、内側開状態P1では、ホッパー2内への凹部41の開度や内側開状態P1を維持する維持時間によって、凹部41に導入される粉体Qの量を調節することができる。具体的には、凹部41の開度を小さくする程、また、内側開状態P1の維持時間を短くする程、凹部41内に導入される粉体Qの量を少なくすることができる。なお、
図2では、凹部41の開度が100%である。
【0015】
同様に、外側開状態P3では、吐出口31外への凹部41の開度や外側開状態P3を維持する維持時間によって、吐出口31から吐出される粉体Qの量を調節することができる。具体的には、凹部41の開度を小さくする程、また、外側開状態P3の維持時間を短くする程、吐出口31から吐出される粉体Qの量を少なくすることができる。なお、
図4では、凹部41の開度が100%である。
【0016】
そのため、内側開状態P1の開度および維持時間と、外側開状態P3の開度および維持時間と、を適宜設定することにより、粉体Qの単位時間当たりの供給量である吐出速度Vを調節することができる。
【0017】
図1に示すように、駆動部5は、シャフト4の上端部に接続されているリニアモーター51を有する。そして、このリニアモーター51を駆動することにより、シャフト4が上下に移動する。これにより、粉体吐出装置1が内側開状態P1、閉状態P2、外側開状態P3のいずれかに切り替わる。ただし、駆動部5の構成としては、シャフト4を上下に移動させることができれば、特に限定されない。
【0018】
また、振動部6は、ホッパー2に配置されているバイブレーター61を有する。そして、バイブレーター61を駆動することにより、ホッパー2が振動する。このように、ホッパー2を振動させることにより、ホッパー2の内壁に貼り付いた粉体Qを剥離することができる。また、ホッパー2内の粉体Qを流動させることができ、粉体Qを凹部41にスムーズに導入することができる。ただし、振動部6の構成としては、ホッパー2を振動させることができれば、特に限定されない。また、振動部6は、省略してもよい。
【0019】
また、制御部7は、リニアモーター51およびバイブレーター61の駆動をそれぞれ独立して制御する。制御部7は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラム等を読み込んで実行することができる。
【0020】
以上、粉体吐出装置1の構成について簡単に説明した。ここで、粉体吐出装置1の詳細な説明を行う前に、この粉体吐出装置1を用いた粉体分注方法について説明する。粉体分注方法は、通常モードと、微調モードと、を含む。
【0021】
通常モードは、内側開状態P1と外側開状態P3とを交互に繰り返して粉体Qを吐出口31から連続して吐出する。そして、総吐出量が目標値に近づいたら、具体的には、総吐出量と目標値との差が、1回の外側開状態P3における目標吐出量の数倍程度(例えば、5倍)となったら、モードを通常モードから微調モードに切り替える。このように、目標値に近づくまでは通常モードで粉体Qを吐出することにより、それまでの吐出速度Vを高めることができるため、分注作業に要する時間を短縮することができる。
【0022】
微調モードは、内側開状態P1とし、ホッパー2から凹部41内に粉体Qを導入する粉体導入工程と、外側開状態P3と閉状態P2とを繰り返し、凹部41内の粉体Qを複数回に分けて吐出口31から吐出する粉体吐出工程と、を含む。
【0023】
[粉体導入工程]
粉体導入工程では、内側開状態P1とする。これにより、凹部41がホッパー2内に開口し、ホッパー2内の粉体Qが凹部41内に導入される。本実施形態では、凹部41の開度を100%とし、凹部41が粉体Qで埋まるのに要する時間以上、内側開状態P1を維持する。これにより、より短時間で、凹部41内が粉体Qで埋まる。ただし、凹部41の開度や維持時間は、特に限定されない。例えば、開度を小さくし、かつ、維持時間を短くすることにより、凹部41の容量以下の粉体Qだけを凹部41内に導入してもよい。
【0024】
[粉体吐出工程]
粉体吐出工程は、
図5に示すように、外側開状態P3として凹部41内の粉体Qを吐出する工程と、
図6に示すように、凹部41内の粉体Qの全部が吐出される前に閉状態P2とする工程と、
図7に示すように、再び外側開状態P3として、凹部41内に残存した粉体Qを吐出する工程と、を含む。このように、外側開状態P3と閉状態P2とを繰り返し、一度の粉体導入工程で凹部41内に導入された粉体Qを複数回、本実施形態では2回に分けて吐出口31から吐出することにより、通常モードと比べて一度に吐出される粉体Qの量を少なくすることができる。そのため、その分、分注量を微細に制御することができる。
【0025】
以上、粉体吐出装置1を用いた粉体分注方法について説明した。次に、粉体吐出装置1の構成の説明に戻り、特徴的な部分について詳細に説明する。
図8に示すように、凹部41の第1面である下面411は、シャフト4の外周面に対して鋭角な面となっている。つまり、下面411は、凹部41の開口に向けて下側に傾斜した面である。これにより、凹部41内の粉体Qが自重により開口側に流動するため、外側開状態P3において凹部41内の粉体Qが吐出され易くなる。なお、外周面に対する下面411の傾斜角θ1としては、特に限定されないが、例えば、20°以上60°以下程度であるのが好ましい。これにより、適度な勢いで粉体Qを吐出することができる。ただし、下面411の向きは、特に限定されない。
【0026】
また、凹部41の第2面である上面412は、シャフト4の外周面に対して鈍角な面となっている。つまり、上面412は、凹部41の開口に向けて下側に傾斜した面である。これにより、シャフト4の外周面と上面412とで形成される角部Eが鋭角となり、角部Eによって粉体Qをかき分けることでシャフト4を内側開状態P1から下方へ移動させ易くなる。したがって、内側開状態P1から閉状態P2または外側開状態P3への移動がスムーズとなる。なお、外周面に対する上面412の傾斜角θ2としては、特に限定されないが、例えば、90°以上120°以下程度であることが好ましい。ただし、上面412の向きは、特に限定されない。
【0027】
なお、凹部41の形状は、特に限定されず、例えば、
図9に示すように、シャフト4の中心軸まわりに巻回する螺旋状であってもよい。螺旋状とすることで、長さL4を抑えつつ凹部41の容量を大きくすることができる。そのため、粉体吐出装置1の小型化を図りつつ、吐出速度Vを高めることができる。
【0028】
シャフト4の構成材料としては、特に限定されず、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼などの各種金属材料(合金を含む)を用いてもよいし、アルミナ、チタニア等の各種セラミックス材料を用いてもよいし、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ABS樹脂などの各種樹脂材料を用いてもよい。ただし、本実施形態では、シャフト4は、樹脂材料で構成されている。樹脂材料を用いることにより、金属材料やセラミックス材料を用いた場合と比べてシャフト4を安価に形成することができる。なお、樹脂材料を用いることにより、金属材料やセラミックス材料を用いた場合と比べて凹部41の形成精度が低下するおそれがあるが、前述したように、凹部41の容量よりも小さい調整単位で分注量を調整するため、仮に、凹部41の形状に設計誤差が生じても、分注精度に支障が生じない。したがって、実質的に、樹脂材料を用いることのメリットのみを享受することができる。
【0029】
以上、粉体吐出装置1の構成および粉体吐出装置1を用いた粉体分注方法について説明した。最後に、
図10に基づいて、上記の粉体分注方法を適用した粉体吐出装置1の制御方法について説明する。この制御方法では、計量器を用いて、周期的に粉体吐出装置1から吐出された粉体Qの総量を計量する。そして、これとは別に以下の制御を行う。
【0030】
まず、ステップS1として、粉体Qの分注量dと目標値d0とを比較する。分注量dは、分注を開始してから吐出された粉体Qの総量であり、計量器により計量される。そして、d≧d0であれば、分注作業を終了する。一方、d<d0であれば、ステップS2に進み、次が初回の粉体吐出であるかを判定する。次が初回の粉体吐出でない場合は、ステップS3に進み、次が初回の粉体吐出である場合は、ステップS6に進む。
【0031】
ステップS3として、計量器による計量結果に基づいて、一度の外側開状態P3当たりの粉体Qの吐出量Δを計算する。なお、吐出量Δは、後述するステップS6からステップS8への移行により吐出される粉体Qの量を意味する。本実施形態では、直前のステップS6からステップS8への移行により吐出された粉体Qの量を吐出量Δとして計算しているが、ただし、通常モード時は、これに限定されず、ばらつきを補正するため直近複数回分(例えば、3回分)の平均値を吐出量Δとして計算してもよい。
【0032】
次に、ステップS4として、吐出量Δと吐出残量Δdとを比較する。吐出残量Δdは、目標値d0までの残量を意味し、Δd=d0-dで表される。そして、Δ≦Δdの場合、ステップS5に進み、Δ>Δdの場合、ステップS7に進む。ステップS5では、粉体Qの吐出速度Vと目標吐出速度V0とを比較する。そして、V≦V0の場合、ステップS6に進み、V>V0の場合、ステップS7に進む。
【0033】
ステップS6では、内側開状態P1とし、予め設定された開度n1で予め設定された維持時間m1だけ待機する。これにより、凹部41内に所定量の粉体Qが導入される。次に、ステップS8として、シャフト4を下方に動かして外側開状態P3とし、予め設定された開度n3で予め設定された維持時間m3だけ待機する。これにより、吐出口31から粉体Qが吐出される。なお、ステップS8では、凹部41内の粉体Qの一部だけが吐出されるように開度n3および維持時間m3が設定されている。
【0034】
ここで、ステップS8における外側開状態P3の開度n3および維持時間m3は、ステップS6からの移行であるが、ステップS7からの移行であるかを問わず一定である。これにより、シャフト4の動きが単純となり、制御部7による駆動部5(リニアモーター51)の制御が容易となる。ただし、これに限定されず、開度n3や維持時間m3は、各回で異なっていてもよい。
【0035】
次に、ステップS9として、計量器での計量結果に基づいて、吐出残量Δdと閾値THとを比較する。閾値THは、1回の外側開状態P3における目標吐出量Δ0の数倍のt1程度とする。なお、Δ0は、目標吐出速度V0に対する1回の外側開状態P3における目標突出量である。ただし、t1は、粉体の種類等により、変更してもよい。そして、Δd≧THの場合、ステップS1に戻る。このようなステップS1、S2、S3、S4、S5、S6、S8、S9のループが前述した通常モードに相当する。当該ループを繰り返すことにより、内側開状態P1と外側開状態P3とが繰り返されて、粉体Qが連続的に流れるように吐出される。一方、Δd<THの場合は、ステップS10に進み、シャフト4を上方に動かして閉状態P2とする。これにより、凹部41内に粉体Qが残存した状態となる。
【0036】
次に、ステップS11として、計量器において直前のステップS8後における最新の分注量dが計量されるまで所定時間待機する。そして、ステップS11終了後、ステップS1に戻る。これにより、ステップS1において最新の分注量dと目標値d0との比較が行われ、精度のよい分注が可能となる。前述したΔd≧THの場合は、目標値d0まで余裕があるため、ステップS1において最新の分注量dと目標値d0とを比べる必要がないため、ステップS10、S11に進むことなく、ステップS1に戻っている。これにより、ステップS10、S11を省略できる分、粉体Qの吐出速度Vを早めることができる。
【0037】
また、前述したように、ステップS4においてΔ>Δdだった場合は、ステップS7に進み、閉状態P2とする。なお、ステップS10において既に閉状態P2になっている場合は、その状態を維持する。この状態では、直前のステップS8で吐出されなかった粉体Qが凹部41内に残存している。そして、再びステップS8に進み、外側開状態P3とし、凹部41内の粉体Qを吐出する。これにより、凹部41内に残存した微量の粉体Qだけを吐出することができるため、分注量の微調を行うことができる。このようなステップS7からステップS8への移行が前述した微調モードに相当する。
【0038】
また、前述したように、ステップS5においてV>V0だった場合も、ステップS7に進む。吐出速度Vが速すぎると粉体Qの流動が不安定となり、吐出量Δが安定しない場合がある。そこで、吐出速度Vが速すぎる場合にステップS7に移行して吐出速度Vを低下させることで、粉体Qの流動をリセットし、安定した吐出量Δを維持することができる。
【0039】
以上、粉体吐出装置1の制御方法について説明した。なお、本実施形態では、ステップS6からステップS8に移行したとき、ステップS6で凹部41内に導入された粉体Qの60%以上90%以下程度が吐出されるように開度n3および時間m3が設定されている。これは、ステップS7からステップS8に移行したときに、残りの10%以上40%以下の量の粉体Qが吐出されることを意味する。このように、ステップS6からステップS8に移行したときに吐出される粉体Qの量を、ステップS7からステップS8に移行したときに吐出される粉体Qの量よりも多くすることにより、これらのバランスが適当となり、分注量dが目標値d0に近づくまでは、吐出速度Vを十分に高めることができ、分注量dが目標値d0に近づいてからは、分注量dを精度よく微調することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の粉体分注方法は、粉体Qを貯留するホッパー2と、ホッパー2内に貯留された粉体Qを吐出する吐出口31を備える筒状のノズル3と、ノズル3内に挿入され、ノズル3に対してノズルの軸方向に移動するシャフト4と、を有し、シャフト4は、側面に開口する凹部41を有する粉体吐出装置1を用いた粉体分注方法であって、シャフト4がノズル3に対して移動することで、凹部41がホッパー2内に開口する内側開状態P1と、凹部41がノズル3の内周面で塞がれる閉状態P2と、凹部41が吐出口31に開口する外側開状態P3と、に切り替わる。そして、内側開状態P1とし、ホッパー2から凹部41内に粉体Qを導入する粉体導入工程と、外側開状態P3と閉状態P2とを繰り返すことで、凹部41内の粉体Qを複数回に分けて吐出口31から吐出する粉体吐出工程と、を含む。このように、凹部41内に導入された粉体Qを複数回に分けて吐出口31から吐出することにより、一度に吐出される粉体Qの量を少なくすることができるため、その分、分注量を微細に制御することができる。
【0041】
また、前述したように、粉体Qの吐出残量Δdに基づいて内側開状態P1、閉状態P2および外側開状態P3を切り替える。本実施形態では、Δ≦Δdの場合、通常モードで駆動し、Δ>Δdの場合、微調モードで駆動する。そのため、迅速でかつ精度のよい分注が可能となる。
【0042】
また、前述したように、粉体Qの単位時間当たりの吐出量である吐出速度Vに基づいて内側開状態P1、閉状態P2および外側開状態P3を切り替える。本実施形態では、V≦V0であれば通常モードで駆動し、V>V0であれば微調モードで駆動する。これにより、粉体Qの流動性が安定する。
【0043】
また、前述したように、外側開状態P3での凹部41の開度および待機時間は、一定である。これにより、シャフト4の動きが単純となり、シャフト4の駆動制御が容易となる。
【0044】
また、前述したように、粉体吐出装置1は、ホッパー2を振動させる振動部6を有する。これにより、ホッパー2の内壁に貼り付いた粉体Qを剥離することができる。また、ホッパー2内の粉体Qを流動させることができ、粉体Qを凹部41にスムーズに導入することができる。
【0045】
また、前述したように、ノズル3またはシャフト4は、樹脂材料で構成されている。これにより、粉体吐出装置1が安価となる。
【0046】
また、前述したように、凹部41は、吐出口31側にシャフト4の外周面に対して鋭角な第1面である下面411を有する。これにより、凹部41内の粉体Qが自重により開口側に流動するため、外側開状態P3において凹部41内の粉体Qが吐出され易くなる。
【0047】
また、前述したように、凹部41は、ホッパー2側にシャフト4の外周面に対して鈍角な第2面である上面412を有する。これにより、シャフト4の外周面と上面412とで形成される角部Eが鋭角となり、角部Eによって粉体Qをかき分けることでシャフト4を内側開状態P1から下方へ移動させ易くなる。したがって、内側開状態P1から閉状態P2または外側開状態P3への移動がスムーズとなる。
【0048】
また、前述したように、凹部41は、螺旋状であってもよい。このように、凹部41を螺旋状とすることで、長さL4を抑えつつ凹部41の容量を大きくすることができる。そのため、粉体吐出装置1の小型化を図りつつ、吐出速度Vを高めることができる。
【0049】
以上、本発明の粉体分注方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…粉体吐出装置、2…ホッパー、3…ノズル、31…吐出口、4…シャフト、41…凹部、411…下面、412…上面、5…駆動部、51…リニアモーター、6…振動部、61…バイブレーター、7…制御部、E…角部、J…中心軸、L3…長さ、L4…長さ、P1…内側開状態、P2…閉状態、P3…外側開状態、Q…粉体、S1…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ、S5…ステップ、S6…ステップ、S7…ステップ、S8…ステップ、S9…ステップ、S10…ステップ、S11…ステップ、TH…閾値、V…吐出速度、V0…目標吐出速度、d…分注量、d0…目標値、m1…維持時間、m3…維持時間、n1…開度、n3…開度、Δ…吐出量、Δd…吐出残量、Δ0…目標吐出量、t0…目標吐出量の倍数、θ1…傾斜角、θ2…傾斜角