(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041244
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車両用樹脂フェンダ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/16 20060101AFI20240319BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B62D25/16 B
B62D25/16 E
B62D29/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145944
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】相澤 智美
(72)【発明者】
【氏名】森田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】謝 培杰
(72)【発明者】
【氏名】川室 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】島本 敬介
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BC03
3D203BC04
3D203CA07
3D203CA53
3D203CA56
3D203CB07
(57)【要約】
【課題】温度変化による変形を防止しつつ、手つき剛性を向上させた車両用樹脂フェンダを提供する。
【解決手段】本発明の車両用樹脂フェンダは、ボディパネル側面の前側又は後側を構成する。
そして、外壁板と、該外壁板の裏面に接着されたレインフォースと、を備え、
上記レインフォースは、間隔を開けて設けられた複数の線状リブを有し、上記線状リブが、上記外壁板に底面が接着した底板部と、上記底板部から立ち上がり上記延在方向に延びる縦板部とを有し、上記底板部の厚さが、上記外壁板の厚さの0.5~1.5倍であることとしたため、レインフォースが外壁板の熱膨張・熱収縮に追従し、温度変化による変形を防止しつつ、手つき剛性を向上させた車両用樹脂フェンダを提供することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディパネル側面の前側又は後側を構成する車両用樹脂フェンダであって、
外壁板と、該外壁板の裏面に接着されたレインフォースと、を備え、
上記レインフォースは、間隔を開けて設けられた複数の線状リブを有し、
上記線状リブが、上記外壁板に底面が接着した底板部と、上記底板部から立ち上がり上記リブの延在方向に延びる縦板部とを有し、
上記底板部の厚さが、上記外壁板の厚さの0.5~1.5倍であることを特徴とする車両用樹脂フェンダ。
【請求項2】
上記線状リブは、上記底板部から2つの縦板部が立ち上がり、その延在方向と直交する断面が略U字型であることを特徴とする請求項1に記載の車両用樹脂フェンダ。
【請求項3】
上記レインフォースは、上記線状リブが交差した網目構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用樹脂フェンダ。
【請求項4】
上記外壁板の厚さが、2mm~3.5mmであることを特徴とする請求項3に記載の車両用樹脂フェンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用樹脂フェンダに係り、更に詳細には、ボディパネル側面の前側又は後側を構成する車両用樹脂フェンダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車体の軽量化による省燃費化が図られており、樹脂で形成されたボディパネルが知られている。
【0003】
特許文献1には、樹脂製の外側壁に設けたリブが、その上端と下端とが外側壁に連接し、中間部に空隙が形成された樹脂フェンダが開示されている。
【0004】
この樹脂フェンダは、外側壁とリブとが中間部で連接していないので、外側壁とリブとの線膨張量が異なっても、塗装後の加熱乾燥工程における外側壁の変形を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂フェンダは、外側壁の中間部において外側壁とリブとの間に空隙があるため、局所的な応力がかかっている間は凹み、該応力がなくなると元に戻る、所謂、手つき剛性が十分でない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、温度変化による変形を防止しつつ、手つき剛性を向上させた車両用樹脂フェンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、フェンダ表面の外壁板を補強するレインフォースを構成するリブの樹脂量を少なくして外壁板の熱膨張・熱収縮に追従させることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の車両用樹脂フェンダは、ボディパネル側面の前側又は後側を構成する。
そして、外壁板と、該外壁板の裏面に接着されたレインフォースと、を備え、
上記レインフォースは、間隔を開けて設けられた複数の線状リブを有し、上記線状リブが、上記外壁板に底面が接着した底板部と、上記底板部から立ち上がり上記延在方向に延びる縦板部とを有し、上記底板部の厚さが、上記外壁板の厚さの0.5~1.5倍であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記外壁板を補強するレインフォースのリブの厚さを外壁板の厚さと同程度にし、レインフォースをフェンダ表面の外壁板の熱膨張・熱収縮に追従させることとしたため、温度変化による変形を防止しつつ、手つき剛性を向上させた車両用樹脂フェンダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の車両用樹脂フェンダの裏面の一例を示す概略図である。
【
図2】リブ断面がT字形である場合の
図1のA-A断面図である。
【
図3】リブ断面がL字形である場合の
図1のA-A断面図である。
【
図4】リブ断面がU字形である場合の
図1のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の車両用樹脂フェンダについて詳細に説明する。
フェンダは、車両のボディパネルの一部を構成し、前側又は後側のタイヤの上部を覆うボディ側面の部材である。本発明の車両用樹脂フェンダは、外壁板とレインフォースとを備え、これらは共に樹脂で形成されている。
【0013】
上記レインフォースは、
図1に示すように、間隔を開けて設けられた複数の線状リブを有し、外壁板の裏面に接着されて外壁板を補強し手付き剛性を向上させる。
【0014】
そして、軽量化のために外壁板を薄くすると、外壁板自体の剛性が低下するので、これを補強するレインフォースの剛性を挙げるために、一般的にはレインフォースを構成する樹脂量を増加させる。
【0015】
このような、樹脂量の多いレインフォースで外壁板を補強すると、特に炎天下など、樹脂フェンダの温度が変化すると、外壁板とレインフォースとが同じ樹脂で形成されていても、外壁板の膨張・収縮にレインフォースが追従できず、外壁板が変形してしまう。
【0016】
つまり、外壁板は薄く樹脂量が少ないので、温度変化による膨張・収縮量が小さいのに対し、レインフォースは樹脂量が多いので、温度変化による膨張・収縮量が大きくなる。したがって、この膨張・収縮量差により、外壁板の面内方向に熱歪が生じ、変形が生じてしまう。この外壁板の変形は、軽量化のために外壁板の厚さを薄くすればするほど顕著になる。
【0017】
本発明のレインフォースのリブは、上記外壁板に底面が接着した底板部と、上記底板部から立ち上がり上記リブの延在方向に延びる縦板部とを有し、底板部の厚さが、外壁板の厚さの0.5~1.5倍である。
図2に、
図1中のA-A断面図を示す。
【0018】
このように本発明のリブは、底板部の厚さが、外壁板と同程度であり、この部分の樹脂量が少ないので、外壁板の面内方向の膨張収縮に追従することができ、温度変化による変形をも防止することができる。
【0019】
上記線状リブは、底板部の厚さが、外壁板の厚さの0.5~1.5倍であれば、
図2に示す略T字形の断面形状の他、
図3に示すような略L字形をした底板部から立ち上がる縦板部が1つであってもよいが、
図4に示すように、縦板部を2つ有し、リブの延在方向と直交する断面が略U字型であることが好ましい。
【0020】
縦板部を2つ有し、その断面が略U字型であることで、底板部の樹脂量を増大させることなく線状リブ自体の剛性を向上させることができ、温度変化による外壁板の変形も防止できる。
【0021】
また、上記レインフォースは、線状リブが交差した網目構造を有することが好ましい。
線状リブが網目構造を形成していることで、一方の線状リブを交差する他の線状リブを支えるのでレインフォース自体の剛性が向上し、レインフォースによる外壁板の補強効果を増大させることができる。
【0022】
本発明の車両用樹脂フェンダは、レインフォースが外壁板の熱膨張・熱収縮に追従するので、外壁板を薄くして軽量化することが可能であり、外壁板の厚さを、例えば、2mm~3.5mmにすることが可能である。
【0023】
また、本発明の車両用樹脂フェンダは、外壁板とレインフォースとが一体成形された部材ではなく、別部材であるので、樹脂フェンダの成形時に生じる外壁板表面の凹みをも防止できる。
【0024】
つまり、外壁板とレインフォースとを射出成形により一体成形する場合、レインフォースが存在する箇所と、存在しない箇所とで樹脂の厚さが異なるので、成形後の冷却による外壁板の面外方向の収縮量が、レインフォースが存在する箇所が存在しない箇所よりも多くなる。
【0025】
このように射出成形された樹脂フェンダは、所謂、ヒケによる凹みが、外壁板の表面に生じ易いが、本発明の車両用樹脂フェンダは、外壁板とレインフォースとが別部材でありこれらが接着されているので、上記成形のヒケによる凹みの発生をも防止できる。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0027】
外壁板と、線状リブが交差した網目構造を有するレインフォースとをポリプロピレン樹脂を射出成形し、これらを接着して、表1に示す、厚さ、リブ断面形状を有する車両用樹脂フェンダを得た。
なお、実施例1、2の縦板部の厚さは、縦板部1つの厚さである。
【0028】
これらの70℃から20℃まで降温したときの外壁板とレインフォースとの線収縮量差を測定した。表1に、線収縮量を合わせて示す。
【0029】
【表1】
なお、実施例2では、ポリプロピレン樹脂製のレインフォースに変えて、ガラス繊維強化樹脂を用いた。
【0030】
表1の結果から、底板部の厚さが、外壁板の厚さの0.5~1.5倍である実施例は、線収縮量差が小さく、温度変化による変形を防止できることが分かる。
また、リブの断面が略U字型である実施例は、比較例よりも線収縮量差が小さく、温度変化による変形をさらに防止できることが分かる。