(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041250
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145951
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】萩原 雅之
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE02
4C601FE01
4C601JB11
4C601JB28
4C601JB45
4C601JC11
(57)【要約】
【課題】超音波プローブを用いて超音波画像を取得する際、超音波画像に含まれる意図しないノイズ成分を抑制し、精度の高い超音波画像を生成することができる電子内視鏡システムを提供する。
【解決手段】本発明のある態様は、生体組織を撮像する撮像素子と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブと、を先端部に有する電子内視鏡と、撮像画像用プロセッサと、生体組織に超音波を付与する前に超音波プローブが受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータを第1ノイズデータとして取得する第1ノイズ取得部と、第1ノイズデータに基づいて、超音波プローブが受信するエコー信号からノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去されたエコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部と、を有する超音波画像用プロセッサと、を備える電子内視鏡システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像を取得する電子内視鏡システムであって、
生体組織を撮像する撮像素子と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブと、を先端部に有する電子内視鏡と、
前記撮像素子から出力する撮像信号を処理して、撮像画像を生成する画像処理部を有する撮像画像用プロセッサと、
生体組織に超音波を付与する前に前記超音波プローブが受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータを第1ノイズデータとして取得する第1ノイズ取得部と、前記第1ノイズデータに基づいて、前記超音波プローブが受信する前記エコー信号からノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去されたエコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部と、を有する超音波画像用プロセッサと、
を備える電子内視鏡システム。
【請求項2】
超音波画像用プロセッサは、生体組織に超音波を付与する前に前記超音波プローブが受信する信号に対する増幅ゲインを、生体組織に超音波を付与するときに前記超音波プローブが受信する信号に対する増幅ゲインよりも大きくする、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記超音波画像用プロセッサは、超音波画像を表示装置に表示させるときのブランキング期間内に前記超音波プローブが受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータを第2ノイズデータとして取得する第2ノイズ取得部を有し、
前記超音波画像処理部は、前記第2ノイズデータを前記第1ノイズデータと比較し、振幅レベル又は周期の変化量が第1閾値以上第2閾値以下(なお、第1閾値>0)である場合には、前記第2ノイズデータに基づいて前記第1ノイズデータを補正し、補正後の第1ノイズデータを基に前記エコー信号からノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去されたエコー信号を処理して超音波画像を生成する、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項4】
超音波画像用プロセッサは、前記ブランキング期間内に前記超音波プローブが受信する信号に対する増幅ゲインを、前記ブランキング期間以外の期間内に前記超音波プローブが受信する信号に対する増幅ゲインよりも大きくする、
請求項3に記載された電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記第2ノイズデータを前記第1ノイズデータと比較し、振幅レベル又は周期の変化量が前記第2閾値より大きい場合には、
前記第1ノイズ取得部は、生体組織に超音波を付与することを中断した状態で前記超音波プローブが受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータを第3ノイズデータとして取得し、
前記超音波画像処理部は、生体組織に超音波を付与することを再開した後に、前記第3ノイズデータに基づいて、前記超音波プローブが受信する前記エコー信号からノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去されたエコー信号を処理して超音波画像を生成する、
請求項3又は4に記載された電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記超音波画像処理部は、生体組織に超音波を付与することを中断する直前に生成した超音波画像を、生体組織に超音波を付与することを中断してから生体組織に超音波を付与することを再開するまでの間、表示装置に表示させる、
請求項5に記載された電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像を取得する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体内部の生体組織の観察や治療に電子内視鏡システムが使用されている。電子内視鏡システムは、生体組織の画像として、撮像素子を用いて被検体の光学観察像を取得することに加えて、超音波プローブを備える超音波内視鏡では、超音波画像(超音波断層像)を得ることができる。超音波内視鏡と接続したプロセッサは、超音波診断装置として機能して、検査や診断を行う。以下、撮像素子及び超音波プローブを備える内視鏡を超音波内視鏡(あるいは電子内視鏡)という。
【0003】
超音波内視鏡は、撮像素子と超音波プローブを備え、超音波内視鏡からプロセッサに延びる可撓管内には、挿入部の先端に設けた撮像素子と、プロセッサに接続するコネクタとの間を接続する撮像信号用伝送線が配設され、撮像信号用伝送線を通じて撮像信号が伝送される。また、上記可撓管内には、挿入部の先端に設けた超音波プローブと、プロセッサに接続するコネクタとの間を接続する超音波信号用伝送線が配設され、超音波信号線を通じて超音波信号が伝送される。
【0004】
超音波による検査や診断を行う際には、プロセッサから超音波プローブに電力供給を行い、超音波プローブは生体組織に超音波を送信して反射波を受信する。超音波プローブで受信した反射波は、エコー信号に信号化され、エコー信号は、超音波信号用伝送線を通じてプロセッサに送られ、プロセッサで信号処理を行って超音波画像となる。
【0005】
プロセッサは、超音波内視鏡からの送信信号(超音波信号、撮像信号)を用いてデータ処理を行う信号処理部、画像表示を制御する制御部等の他、スイッチング電源を備える。スイッチング電源は、超音波内視鏡及びプロセッサ内の各構成デバイスを動作させるための必要な電圧を生成し供給する。プロセッサは、撮像画像や超音波画像を表示するためのモニタと接続される。
【0006】
超音波プローブのエコー信号に基づいて得られモニタに表示される超音波画像には、超音波内視鏡あるいはプロセッサ内で発生するノイズやAC電源に重畳されて外部から進入するノイズがノイズ成分として混入する場合がある。このノイズ成分は、例えば、スイッチング電源のスイッチングに起因したノイズ成分、あるいは、上記伝送線間の相互干渉に起因したノイズ成分を含む。例えば、可撓管内では、撮像信号用伝送線と超音波信号用伝送線とが近接して設けられているため、伝送線間の静電結合あるいは電磁結合が強くなり、撮像素子を制御するパルス制御信号等が、超音波プローブや超音波信号用伝送線に干渉してエコー信号にノイズ成分が混入する。
【0007】
さらに、超音波画像には、アーチファクト(実際には存在しない虚像)と呼ばれる超音波特有のノイズが発生する場合もある。超音波を発生させて、生体内から反射したエコーを受信してエコー信号を得るが、サイドロープアーチファクト、グレーティングローブや多重反射等の原因により虚像、即ちアーチファクトがノイズとなって発生する。また、スイッチング電源で発生する高周波ノイズが超音波信号の受信信号に重畳することで、超音波診断画像で生成される超音波画像にアーチファクトが表れる場合もある。
【0008】
これらの超音波画像内のノイズ成分に対して、特許文献1ではDC/DCコンバータの動作に起因する周期的なノイズを除去できる超音波画像用プロセッサを開示している。電源入力部から電源を入力し、定電圧の電源を出力する主コンバータと、この定電圧の電源を入力し、超音波画像用プロセッサを構成する回路に電源を出力する複数の従コンバータとを備え、主コンバータ及び従コンバータのスイッチング動作を同期させることにより、スパイクノイズを減らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した従来の超音波画像用プロセッサでは、周期的なノイズを除去することはできるものの、意図しないノイズを低減することができない。
例えば、AC電源に重畳する意図しないノイズが超音波診断装置に侵入することがある。また、複数の装置が動作する場合には、意図しないノイズが超音波診断装置に侵入することがある。例えば、超音波内視鏡システムのように内視鏡と超音波診断装置が同時に動作する場合、内視鏡が動作することに伴う電磁波が超音波プローブに誘導されてノイズが生ずる。
このように意図しないノイズが超音波システムに混入する場合、当該ノイズを効果的に除去することができないという課題がある。
【0011】
そこで本発明は、超音波プローブを用いて超音波画像を取得する際、超音波画像に含まれる意図しないノイズ成分を抑制し、精度の高い超音波画像を生成することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、超音波画像を取得する電子内視鏡システムであって、
生体組織を撮像する撮像素子と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブと、を先端部に有する電子内視鏡と、
前記撮像素子から出力する撮像信号を処理して、撮像画像を生成する画像処理部を有する撮像画像用プロセッサと、
生体組織に超音波を付与する前に前記超音波プローブが受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータを第1ノイズデータとして取得する第1ノイズ取得部と、前記第1ノイズデータに基づいて、前記超音波プローブが受信する前記エコー信号からノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去されたエコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部と、を有する超音波画像用プロセッサと、を備える。
【0013】
超音波画像用プロセッサは、生体組織に超音波を付与する前に前記超音波プローブが受信する信号に対する増幅ゲインを、生体組織に超音波を付与するときに前記超音波プローブが受信する信号に対する増幅ゲインよりも大きくしてもよい。
【0014】
前記超音波画像用プロセッサは、超音波画像を表示装置に表示させるときのブランキング期間内に前記超音波プローブが受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータを第2ノイズデータとして取得する第2ノイズ取得部を有してもよい。
その場合、前記超音波画像処理部は、前記第2ノイズデータを前記第1ノイズデータと比較し、振幅レベル又は周期の変化量が第1閾値以上第2閾値以下(なお、第1閾値>0)である場合には、前記第2ノイズデータに基づいて前記第1ノイズデータを補正し、補正後の第1ノイズデータを基に前記エコー信号からノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去されたエコー信号を処理して超音波画像を生成する。
【0015】
超音波画像用プロセッサは、前記ブランキング期間内に前記超音波プローブが受信する信号に対する増幅ゲインを、前記ブランキング期間以外の期間内に前記超音波プローブが受信する信号に対する増幅ゲインよりも大きくしてもよい。
【0016】
前記第2ノイズデータを前記第1ノイズデータと比較し、振幅レベル又は周期の変化量が前記第2閾値より大きい場合には、以下のようにしてもよい。
すなわち、前記第1ノイズ取得部は、生体組織に超音波を付与することを中断した状態で前記超音波プローブが受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータを第3ノイズデータとして取得する。超音波画像処理部は、生体組織に超音波を付与することを再開した後に、前記第3ノイズデータに基づいて、前記超音波プローブが受信する前記エコー信号からノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去されたエコー信号を処理して超音波画像を生成する。
【0017】
前記超音波画像処理部は、生体組織に超音波を付与することを中断する直前に生成した超音波画像を、生体組織に超音波を付与することを中断してから生体組織に超音波を付与することを再開するまでの間、表示装置に表示させてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述の電子内視鏡システムによれば、超音波プローブを用いて超音波画像を取得する際、超音波画像に含まれる意図しないノイズ成分を抑制し、精度の高い超音波画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態の電子内視鏡システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態の電子内視鏡システムで用いる超音波プローブを備えた電子内視鏡の一例を説明する図である。
【
図3】
図1に含まれる超音波画像用プロセッサの構成の一部についてより詳細に示すブロック図である。
【
図4】1フレーム期間における超音波信号へのノイズ重畳波形を示す図である。
【
図6】一実施形態の超音波画像用プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態の超音波画像用プロセッサにおいてノイズデータを最適化処理の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、電子内視鏡システムの実施形態について図面を参照して説明する。
一実施形態の電子内視鏡システムは、電子内視鏡と、撮像画像用プロセッサと、超音波画像用プロセッサとを備える。
電子内視鏡は、生体組織を撮像する撮像素子と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブと、を先端部に有する。撮像画像用プロセッサは、電子内視鏡の撮像素子から出力する撮像信号を処理して撮像画像を生成する画像処理部を有する。超音波画像用プロセッサは、電子内視鏡の超音波プローブが受信するエコー信号からノイズ成分を除去し、意図しないノイズ成分が除去されたエコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部を有する。
超音波画像用プロセッサは、意図しないノイズ成分を除去するため、生体組織に超音波を付与する前に超音波プローブが受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータをノイズデータとして取得するノイズ取得部を有する。そして、超音波画像処理部は、取得したノイズデータに基づいて、超音波プローブが受信するエコー信号からノイズ成分を除去する。
すなわち、このシステムでは、生体組織に超音波を付与する前、例えば診断前に、予めノイズ成分のデータを取得しておき、診断時には、当該データを基にノイズ成分をエコー信号から除去する。そのため、超音波画像に含まれる意図しないノイズ成分を抑制し、精度の高い超音波画像を生成することができる。
なお、本発明において、エコー信号からノイズ成分を「除去」するとは、エコー信号からノイズ成分を完全に除去する場合に限られず、エコー信号からノイズ成分の一部を除去する場合、つまりエコー信号に含まれるノイズ成分を抑制若しくは低減することも含まれる。
【0021】
(電子内視鏡システムの全体構成)
図1は、一実施形態の電子内視鏡システム10の全体構成を示すブロック図である。超音波画像を取得する電子内視鏡システム10は、電子内視鏡12と、撮像画像用プロセッサ22と、超音波画像用プロセッサ30と、を備える。
【0022】
(電子内視鏡12)
電子内視鏡12は、生体組織を照射する照明部14と、生体組織を撮像する撮像素子16と、撮像素子16で撮像された信号を前処理するドライバ信号処理部18と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブ20と、メモリ92とを備える。超音波プローブ20は、超音波を出力する複数のプローブ要素が所定の方向に配列した各プローブ要素が所定の時間差をもって超音波を出力することにより、種々の方向に沿ったエコー信号を取得することができるフェーズドアレイ方式のプローブである。
【0023】
ドライバ信号処理部18には、生体組織の画像信号が撮像素子16より所定のフレーム周期で入力され、撮像画像用プロセッサ22の撮像画像処理部26へ出力する。フレーム周期は、例えば、1/30秒、1/60秒である。
【0024】
ドライバ信号処理部18はまた、メモリ92にアクセスして電子内視鏡12の固有情報を読み出す。メモリ92に記録される電子内視鏡12の固有情報には、例えば、撮像素子16の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。
【0025】
(撮像画像用プロセッサ22)
撮像画像用プロセッサ22は、照明部14に光源を伝送する光源部24と、撮像素子16から出力される撮像信号を処理して撮像画像を生成する撮像画像処理部26を備える。
【0026】
光源部24は、ライトガイド94を通して、電子内視鏡12の照明部14へ照明光を伝送する。光源には、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが用いられる。光源より伝送された照明光は、図示されない集光レンズによって集光され、絞りを介して適正な光量に制限される。絞りには、図示されないアームやギヤ等の伝達機構を介してモータが機械的に連結している。絞りは、図示しない撮像画像表示部の表示画面に表示される映像を適正な明るさにするため、開度が変えられる。
光源部24の光源は、白色光を射出する白色光源に替えて、所定の波長域の光を発光する発光ダイオードやレーザーダイオードの半導体発光素子を用いてもよい。
【0027】
撮像画像処理部26には、前段信号処理回路が設けられており、ドライバ信号処理部18よりフレーム周期で入力されるR、G、Bの各画像信号に対してデモザイク処理を施す。具体的には、Rの各画像信号についてG、Bの周辺画素による補間処理が施され、Gの各画像信号についてR、Bの周辺画素による補間処理が施され、Bの各画像信号についてR、Gの周辺画素による補間処理が施される。これにより、画像信号が全て、R、G、Bの3つの色成分の情報を持つ画像データに変換される。さらに、前段信号処理回路は、色補正、マトリックス演算、及びホワイトバランス補正等の周知の処理を施す。
撮像画像処理部26は、後段信号処理回路を備えてもよい。後段信号処理回路は、画像データに所定の信号処理を施して動画データを生成し、所定のビデオフォーマット信号に変換する。変換されたビデオフォーマット信号は、表示部46で動画の表示のために用いられる。これにより、生体組織の動画が表示画面に表示される。
【0028】
(超音波画像用プロセッサ30)
超音波を利用した画像形成は、超音波パルス反射法を基礎にしている。超音波プローブ20から、例えば10MHz前後の超音波(超音波ビーム)がパルス状に生体内に放射される。放射された超音波は、生体内での体内組織の音響インピーダンスの差により反射波となり、再度超音波プローブ20で受信される。この反射波がエコー信号となる。
電子内視鏡12での超音波ビームのスキャンは、フェーズドアレイ方式によるセクタスキャンであり、このセクタスキャンにより、所定の方向に沿ったエコー信号を得ることができる。Aモードでは、横軸に時間、縦軸に反射強度(振幅)を採り、エコー信号が表示される。Bモードでは、反射強度に応じて輝度変調して輝度に変換し、輝度により断層像が濃淡画像として表わされる。超音波画像用プロセッサ30の撮影モードは、この他に、周知のMモード、ドプラモードを含んでもよい。
【0029】
図1を参照すると、超音波画像用プロセッサ30は、超音波画像生成部32と、ノイズ成分検出部34と、信号処理部36と、送受信部38と、制御部40と、電源部44と、表示部46と、AC電源入力部48と、を備える。なお、超音波画像用プロセッサ30は、図示しない入力部をさらに備え、キーボード、マウス、タッチパネル等を用いて、各種情報の入力を受け付ける。
送受信部38は、超音波プローブ20への駆動信号を送信し、エコー波(エコー信号)を受信する。信号処理部36は、送受信部38によって受信されたエコー信号に対して2値化処理を含む所定の信号処理を施す。超音波画像生成部32は、信号処理部36によって処理がなされたエコー信号を基に超音波画像を生成して表示部46に出力する。
【0030】
ノイズ成分検出部34は、信号処理部36によって所定の信号処理が施されたエコー信号に含まれるノイズ成分のデータ(ノイズデータ)を検出する。ノイズデータは、エコー信号に含まれるノイズ成分の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータである。ノイズ成分検出部34は、第1ノイズ取得部、及び第2ノイズ取得部の一例である。
制御部40は、マイクロプロセッサを主体として構成され、超音波画像用プロセッサ30内の各部を制御する。
【0031】
超音波画像生成部32は、デジタルエコー信号に基づいて、例えば輝度変調により濃淡画像データとして所定の演算が施され、一方向に沿った一次元のBモード画像を生成する。さらに、超音波画像生成部32は、フェーズドアレイ方式の超音波プローブ20から得られるエコー信号に基づいて生成される複数の方向に沿った一次元のBモード画像を、フェーズドアレイの走査に合わせて所定の方位方向に沿って配置することにより、1つの二次元のBモード画像を作成する。さらに、作成された画像にゲイン処理、コントラスト処理等の公知の技術を用いた画像処理を行うとともに、表示部46における画像の表示レンジに対応した階調処理を行う。
【0032】
電源部44は、AC電源入力部48から入力するAC電源に基づいて、超音波画像用プロセッサ30の他、電子内視鏡12と撮像画像用プロセッサ22を駆動するための電力を供給する。電源部44は、例えば、スイッチング電源であるDC/DCコンバータを構成デバイスとして備え、DC/DCコンバータにおけるスイッチング周波数により直流電圧を生成している。DC/DCコンバータは複数個備えられており、入力の直流電圧を各DC/DCコンバータで所望の直流電圧に変換し、各デバイスに電力を供給する。
表示部46は、超音波画像生成部32によって生成された超音波画像を表示する。表示部46は、タッチパネル方式で入力可能な入力機能を有してもよい。
【0033】
(電子内視鏡12の構造)
図2は、一実施形態の電子内視鏡システムで用いる超音波プローブを備えた電子内視鏡の一例を説明する図である。
【0034】
電子内視鏡12は、操作部52と、先端部56及び主に内部に軟性部58を備えた挿入部54と、ライトガイドケーブルを内部に備えた可撓性ケーブル60と、スキャナコネクタケーブル62と、コネクタ64と、スキャナコネクタ66と、を備える。
【0035】
先端部56は、生体組織を検査するセンサであり、撮像素子部68、射出端面70及び超音波プローブ20を備える。超音波プローブ20には、プローブ要素として複数の超音波振動子、例えば圧電素子をアレイ状に配列した振動子アレイを有している。これらの振動子は、それぞれ駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの反射波を受信してアナログの受信信号を出力する。各振動子は、例えば、圧電セラミックであるPZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)や、高分子圧電素子であるPVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)等からなる圧電体の両端に電極を形成した素子を用いて構成される。
【0036】
先端部56の撮像素子部68には、対物レンズと撮像素子16が設けられている。対物レンズは、照明光により照射された生体組織からの戻り光を、撮像素子16の受光面上で結像させる。撮像素子16は、例えば、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。単板式カラーCCDイメージセンサは、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の色成分に対応した画像信号を生成して出力する。撮像素子16は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置を用いることもできる。撮像素子16はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0037】
照明部14の照明光は、配光レンズを通して先端部56にある射出端面70より射出される。射出端面70からは、入射された照明光が、配光レンズを通して射出される。照明光は、ライトガイド94を介して、電子内視鏡12の照明部14に入射される。
【0038】
先端部56の外側部分は硬質樹脂で構成されている。撮像素子部68には、撮像素子16と撮像素子16による撮像のための対物レンズや照明レンズ等(図示略)が設けられている。
【0039】
さらに、先端部56は、液体あるいは気体を吐出するあるいは吸引する送気・送水ノズル72を備える。送気・送水ノズル72は、撮像素子16に付随した対物レンズ及び照明レンズの表面を洗浄する水等の液体を吐出したり、対物レンズ及び照明レンズの表面に残存する液体や異物を除去するために空気等の気体を吐出したりする。また、先端部56には、液体を充填して生体組織に接触させて超音波診断を行うために用いるバルーン(図示略)が装着されるようになっており、バルーン注水口88とバルーン吸水口90が設けられている。さらに、先端部56には、可撓性を有する穿刺針(図示略)を生体組織に接触させるための鉗子起上台76が設けられ、この鉗子起上台76を通して生体組織上の液体や気体の吸引を行なう開口も設けられている。
【0040】
挿入部54には、上下方向及び左右方向に湾曲する湾曲部78が設けられている。湾曲部78より基端側(操作部52の側)の部分は自重や施術者の操作に追従して屈曲することができる可撓性のある軟性部58となっている。
【0041】
軟性部58は、湾曲部78と操作部52の間に設けられ、先端部56に設けられるセンサの信号線、及び、上記開口から気体あるいは流体が流れる複数の個別流路がその内部に設けられている。これらの個別流路は、管、チューブ、あるいは長孔により形成されている。
【0042】
操作部52と先端部56の側には、可撓性を備え、穿刺針を挿入するための処置具挿入口突起80と鉗子起上ワイヤ洗浄口74が突設している。処置具挿入口突起80の端部開口にはキャップが着脱可能に取り付けてある。挿入部54の内部には、処置具挿入口突起80から先端部56側に向かって延び、かつ可撓性を有する処置具挿通兼吸引管が設けられている。処置具挿通兼吸引管は、鉗子起上台76で開口している。処置具挿入口突起80から処置具挿通兼吸引管に挿入された穿刺針は、鉗子起上台76にある処置具挿通兼吸引管の先端開口から外側に突出可能であり、先端開口から突出させて生体組織を触診するために用いられる。
【0043】
操作部52は、流路切換スイッチの複数の操作ボタン84を備え、コネクタ64から可撓性ケーブル60内を延びる、流体が流れる共通流路がその内部に設けられている。湾曲操作レバー82は、湾曲部78を、上下方向及び左右方向に湾曲させるために、術者が操作するレバーである。湾曲操作レバー82の回転操作に応じて湾曲部78が上下方向及び左右方向に湾曲する。
【0044】
可撓性ケーブル60は、撮像画像用プロセッサ22に接続するコネクタ64と操作部52を接続する。コネクタ64には、流体の供給あるいは吸引を行うための共通流路の開口ポートも設けられている。
【0045】
コネクタ64は、光源差込部86を有し、撮像画像用プロセッサ22に接続される。撮像画像用プロセッサ22にある光源ユニットで生成された照明光は、コネクタ64から、可撓性ケーブル60、操作部52、及び挿入部54内のライトガイドケーブル内を通り先端部56に向けて伝送される。さらに、コネクタ6からは、撮像画像用プロセッサ22から可撓性ケーブル60内の信号線を介して撮像素子16へ駆動信号が送られる。撮像素子16で撮像した画像信号は、可撓性ケーブル60、操作部52、及び挿入部54内の信号線を介して撮像画像用プロセッサ22へ送られる。
【0046】
スキャナコネクタ66は、超音波画像用プロセッサ30に接続され、超音波プローブ20でスキャンしたエコー信号を、スキャナコネクタケーブル62を介して超音波画像生成部32に送る。超音波画像生成部32は、エコー信号を処理して、検査対象の生体組織の診断用画像を生成し、生成した画像を表示部46に表示する。さらに、スキャナコネクタケーブル62は、超音波画像用プロセッサ30から、超音波プローブ20の駆動信号を、超音波プローブ20の圧電素子へ送信する。圧電素子は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換でき、電圧変化による伸縮で超音波を発生する。
【0047】
コネクタ64は、ドライバ信号処理部18に接続される。ドライバ信号処理部18には、撮像素子16より生体組織の画像信号が所定のフレーム周期で入力され、撮像画像用プロセッサ22のシステムコントローラ(図示せず)や撮像画像処理部26へ出力される。フレーム周期は、例えば、1/30秒、1/60秒である。
【0048】
(超音波画像用プロセッサ30の信号処理)
次に、
図3を参照して、一実施形態の超音波画像用プロセッサ30において行われる信号処理について、より詳細に説明する。
図3は、一実施形態の超音波画像用プロセッサ30において、超音波画像を取得する際のエコー信号が、Bモードの超音波画像として表示されるまでの信号処理の一例を説明する図である。なお、信号処理部36及び超音波画像生成部32は、超音波画像処理部の一例を構成する。
【0049】
送受信部38は、超音波プローブ20へ駆動信号を送信し、超音波プローブ20からエコー波(エコー信号)を受信する。
【0050】
図3に示すように、信号処理部36は、増幅回路120、積分回路122、A/D変換器124、及び、ノイズ除去部126を含む。
超音波プローブ20で得られるエコー信号は、増幅回路120で増幅され、積分回路122で積分され高調波ノイズが除去される。増幅回路120と積分回路122は、一体化した反転増幅型積分回路により、増幅機能とローパスフィルタ機能を備えてもよい。次に、アナログ信号であるエコー信号は、A/D変換器124でクロック信号によるサンプリング周期でデジタル化(2値化)され、デジタルエコー信号となる。
【0051】
ノイズ除去部126は、制御部40からの指示に基づき、デジタルエコー信号からノイズ成分を除去して出力する。
一実施形態では、ノイズ除去部126は、制御部40からの指示の下、ノイズデータ(後述する)に基づいて、デジタルエコー信号からノイズ成分を除去する。ノイズ除去部126は、ノイズデータを基にエコー信号からノイズ成分を時間領域で差し引くことでノイズ成分を除去する。
【0052】
ノイズ成分検出部34(第1ノイズ取得部の一例)は、診断前等の超音波を送信しない状態で超音波プローブ20から受信する信号(ノイズ成分となる信号)を検出(取得)し、ノイズデータを特定する。ノイズデータには、ノイズ成分の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータが含まれる。ノイズ成分検出部34は、ノイズデータを制御部40に送信する。
【0053】
図3に示すように、超音波画像生成部32は、輝度変調部128、超音波画像生成部130、及び、D/A変換器132を含む。
信号処理部36から出力されるデジタルエコー信号は、輝度変調部128で、反射強度に応じて輝度変調して輝度に変換される。輝度に変換されたデジタルエコー信号は、超音波画像生成部130において画像処理され二次元のBモードの断層像となる。このデジタル画像信号をD/A変換器132でアナログ信号に変換し、表示部46でBモードの断層像として表示される。
【0054】
次に、
図4及び
図5を参照して、送受信部38が受信するエコー信号と、エコー信号に含まれるノイズ成分とについて説明する。
図4は、1フレーム期間における超音波信号へのノイズ重畳波形を示す図である。
図5は、
図4のA部、B部を拡大して示す図である。
【0055】
図4及び
図5に示すように、1フレームの画像を表示するための1フレーム期間には、垂直ブランキング期間と水平ブランキング期間が含まれ、各ブランキング期間を除く有効期間において、超音波信号の送信(超音波プローブ20の振動子の駆動)とエコー信号の受信とが行われる。
ノイズ成分は、各ブランキング期間又は有効期間の如何を問わず、エコー信号に重畳する。
図5に示す例では、所定のノイズ周期でノイズ成分がエコー信号に重畳する例が示される。
【0056】
図4及び
図5に示すようなノイズ成分が重畳されたエコー信号を受信した場合、ノイズ成分検出部34は、
図5に示すノイズ成分に対応するノイズデータを検出する。ノイズデータは、ノイズ成分の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータである。一実施形態では、ノイズ成分の発生タイミングは、超音波信号の送信時刻あるいはエコー信号の受信時刻を基準にして検出される。
例えば電源のDC/DCコンバータの動作に起因する周期的なノイズが電子内視鏡12の伝送線から侵入するような場合には、ノイズ成分はエコー信号に周期的に重畳するが、ノイズ成分が必ずしも周期的に生ずるとは限らない。そこで、意図せずに超音波システムに侵入するノイズを把握するために、ノイズ成分検出部34は、ノイズ成分の周期だけではなく発生タイミングも検出する。
【0057】
次に、
図6のフローチャートを参照して、本実施形態の超音波画像用プロセッサ30において、エコー信号に重畳したノイズ成分の除去についての動作について説明する。
本実施形態の電子内視鏡システム10では、生体組織に超音波を付与する前、例えば診断前に、予めノイズ成分に対応するノイズデータを取得しておき、診断時には、取得したノイズデータを基にエコー信号からのノイズ成分を除去する。
【0058】
図6を参照すると、超音波画像用プロセッサ30は、電源を投入してシステムが起動すると(ステップS2)、診断前に超音波プローブ20の振動子を駆動させない状態(つまり、超音波を送信しない状態)で受信する信号を基にノイズデータ(第1ノイズデータの一例)を取得し、記録する(ステップS4)。超音波を送信しない状態で受信する信号は、システムに外部から侵入してエコー信号に重畳する可能性があるノイズ成分である。超音波を送信しない状態で受信する信号の発生タイミング、振幅レベル、及び、周期に関するデータがノイズデータとして取得される。
【0059】
ノイズデータが取得された後にユーザによる所定の操作に応じて診断が開始される(ステップS6)。診断中は、ステップS8~S18の一連の処理が繰り返し行われる。
診断時には、超音波画像用プロセッサ30は、超音波プローブ20の振動子を駆動して超音波を生体組織に送信し、生体組織からの反射波をエコー信号として受信し、受信したエコー信号に対して信号処理を行い、超音波画像を生成して表示する。このとき、超音波画像用プロセッサ30は、診断前にステップS4で記録したノイズデータを基に、生成する超音波画像の基となるエコー信号からノイズ成分を除去する(ノイズ成分の信号を差し引く)ことで、画像補正を行う(ステップS8)。そのため、表示される超音波画像は、ノイズ成分が除去された精度の高い画像となる。
【0060】
一実施形態では、超音波画像用プロセッサ30は、診断中にノイズデータを定期的に取得する(ステップS10)。診断中には、システムに新たな機器が追加されたり、システムの周辺に新たな機器が設置されたりする場合や、これらの機器の動作モードが変化する場合がある。そのため、診断開始後に外部から新たに侵入した意図しないノイズ成分がある場合、ノイズデータが診断前と比べて増加又は変動する場合がある。
そこで、診断中においてもノイズの変動を定期的に監視することが好ましい。診断中にノイズデータを取得するタイミングは、診断における画像表示に影響がないように、水平ブランキング期間又は垂直ブランキング期間(以下、総称して「ブランキング期間」)中とするのがよい。
【0061】
超音波画像用プロセッサ30は、ステップS10で取得したノイズデータ(第2ノイズデータの一例)の、診断開始前に取得して記録したノイズデータからの変化量Dを特定する(ステップS12)。ステップS12の変化量Dは、振幅レベル又は周期の変化量である。
一実施形態では、超音波画像用プロセッサ30は、変化量Dを閾値と比較し、比較結果に応じた処理を行う。具体的には、以下のとおりである。
【0062】
変化量Dが所定の閾値Th1より小さい場合には(D<Th1)、ノイズデータの変化が少ないため、ステップS8に戻り、診断前に記録したノイズデータを基にエコー信号のノイズ除去を継続して実行する。なお、閾値Th1は第1閾値の一例である。
【0063】
変化量Dが閾値Th1以上閾値Th2以下(但し、Th1<Th2)である場合(Th1≦D≦Th2)、つまり振幅レベル又は周期の変化量の変化が比較的大きい場合には、ステップS4で記録したノイズデータを、ステップS10で取得したノイズデータにより補正し(ステップS14)、補正後のノイズデータを基にエコー信号のノイズ除去を行う。ノイズデータの補正では、例えば、ステップS4で記録したノイズデータのうち振幅レベル又は周期を、ステップS10で取得したノイズデータに含まれる値に変更する。なお、閾値Th2は第2閾値の一例である。
これにより、診断開始後の周辺機器が追加される等してノイズに関する環境が悪化あるいは変化した場合であっても、適応的にエコー信号からノイズ成分を除去することが可能となる。
【0064】
変化量が閾値Th2より大きい場合(D>Th2)、ノイズ成分の変動が極めて大きいことを意味する。この場合、システムの周辺環境が大きく変化したと考えられ、ノイズ成分の発生タイミング等が大きく変化することがあり得る。そこで、診断前と同様に、超音波プローブ20の振動子を駆動させない状態(つまり、超音波を送信しない状態)で受信する信号を基に、ノイズ成分の発生タイミングや周期が精度良く取得できる程度に長い時間を掛けてノイズデータ(第3ノイズデータの一例)を取得し、記録する(ステップS16)。これにより、システムの周辺環境が大きく変化した場合でも、新たに取得されたノイズデータを基に適応的にエコー信号からノイズ成分を除去することが可能となる。
【0065】
ステップS16においてノイズデータの取得中に超音波駆動が行われずに画像が暗くなることを防止するために、ステップS16のノイズデータの取得開始前の画像(前画像)を一時的に表示部46に表示させるとよい(ステップS18)。すなわち、超音波画像用プロセッサ30は、生体組織に超音波を付与することを中断する直前に生成した超音波画像を、生体組織に超音波を付与することを中断してから生体組織に超音波を付与することを再開するまでの間、表示部46に表示させる。
ステップS16のノイズデータの取得、記録が完了した後は、この新たなノイズデータに基づいてエコー信号からノイズ除去を行う。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の電子内視鏡システム10によれば、診断前に超音波プローブ20の振動子を駆動させない状態(つまり、超音波を送信しない状態)で受信する信号(ノイズ成分)を基にノイズデータを取得し、記録しておく。そして診断時には、記録しておいたノイズデータを基に、受信したエコー信号からノイズ成分を除去する処理を行うようにする。こうすることで、周期的に発生するノイズ成分のみならず、意図しないタイミングで発生するノイズ成分をエコー信号から効果的に除去でき、精度の高い超音波画像を生成することが可能となる。
また、超音波を送信しない状態でノイズ成分を検出するため、従来よりも振幅レベルの低いノイズ成分を抽出でき、超音波画像に含まれるノイズを低減することができる。
【0067】
一実施形態では、超音波画像用プロセッサ30は、生体組織に超音波を付与する前(例えば、診断前)に超音波プローブ20が受信する信号に対する増幅ゲイン(
図3の増幅回路120で設定されるゲイン)を、生体組織に超音波を付与するときに超音波プローブ20が受信する信号に対する増幅ゲインよりも大きくする。例えば、このようなゲイン調整を
図6のステップS4及び/又はS16において行うことが好ましい。これによって、ノイズ成分を精度良く取得することができる。
【0068】
一実施形態では、超音波画像用プロセッサ30は、ブランキング期間内にノイズデータを取得する場合、ブランキング期間内に超音波プローブ20が受信する信号に対する増幅ゲイン(
図3の増幅回路120で設定されるゲイン)を、ブランキング期間以外の期間内に超音波プローブ20が受信する信号に対する増幅ゲインよりも大きくする。例えば、このようなゲイン調整を
図6のステップS10において行うことが好ましい。これによって、ノイズ成分を精度良く取得することができる。
【0069】
一実施形態では、ノイズデータは最適化される。エコー信号に重畳するノイズ成分の振幅レベル(以下、単に「振幅」)、周期、及び、発生タイミングは変動することがあるが、これらの値を最適化(例えば平均化処理)し、最適化されたノイズデータを基にエコー信号からノイズ成分を除去することが好ましい。それによって、ノイズ成分が変動した場合に、ノイズ成分の除去処理を行った後のエコー信号においてノイズを目立ち難くすることができる。
【0070】
ノイズデータの最適化処理の具体例について
図7を参照して説明する。
図7は、一実施形態の超音波画像用プロセッサにおいてノイズデータの最適化処理の例を説明する図である。
図7のノイズパターン1は、ノイズ周期NT1で出現するノイズ成分の振幅が変動している場合を示している。
図7のノイズパターン2は、比較的長いノイズ周期NT3が繰り返され、各ノイズ周期NT3の中においてノイズ周期NT2で出現するノイズ成分の振幅が変動しており、かつノイズ周期NT3ごとでもノイズ成分の振幅が変動している場合を示している。
ノイズパターン1の場合のノイズデータの最適化処理では、ノイズ周期NT1で出現するノイズ成分の振幅を平均化する。その場合、ノイズ成分の出現頻度を考慮することが好ましい。
例えば、ノイズ周期NT1で出現するノイズ成分の振幅を平均化する場合、連続して出現する2個のノイズ成分の振幅を平均化する。平均化するノイズ成分の数は2個に限られず、適宜設定できる。
ノイズパターン2の場合、ノイズ周期NT3で出現する1個目のノイズ成分同士を平均化し、2個目のノイズ成分同士で平均化し、…といった具合に行う。その場合、ノイズ成分の出現頻度を考慮することが好ましい。
例えば、1個目のノイズ成分同士を平均化する場合、N回目のノイズ周期NT3の1個目のノイズ成分の振幅、及び、N+1回目のノイズ周期NT3の1個目のノイズ成分の振幅、の2個の振幅を平均化する。平均化するノイズ成分の数は2個に限られず、適宜設定できる。
なお、最適化は、平均化処理に限られず、中央値算出処理でもよい。ノイズ成分の最適化は、振幅に限られず周期でもよい。
【0071】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0072】
10…電子内視鏡システム
12…電子内視鏡
14…照明部
16…撮像素子
18…ドライバ信号処理部
20…超音波プローブ
92…メモリ
22…撮像画像用プロセッサ
24…光源部
26…撮像画像処理部
30…超音波画像用プロセッサ
32…超音波画像生成部
128…輝度変調部
130…超音波画像生成部
132…D/A変換器
34…ノイズ成分検出部
36…信号処理部
120…増幅回路
122…積分回路
124…A/D変換器
126…ノイズ除去部
38…送受信部
381…トランスデューサ
40…制御部
44…電源部
46…表示部
48…AC電源入力部
52…操作部
54…挿入部
56…先端部
58…軟性部
60…可撓性ケーブル
62…スキャナコネクタケーブル
64…コネクタ
66…スキャナコネクタ
68…撮像素子部
70…射出端面
72…送気・送水ノズル
74…鉗子起上ワイヤ洗浄口
76…鉗子起上台
78…湾曲部
80…処置具挿入口突起
82…湾曲操作レバー
84…操作ボタン
86…光源差込部
88…バルーン注水口
90…バルーン吸水口
94…ライトガイド