(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041259
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物
(51)【国際特許分類】
B01J 20/12 20060101AFI20240319BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240319BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240319BHJP
C01B 33/40 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B01J20/12 A
B01J20/28 Z
B01D15/00 K
C01B33/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145966
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000193601
【氏名又は名称】水澤化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚原 大補
(72)【発明者】
【氏名】對馬 克伸
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4D017AA06
4D017BA04
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA07
4G066AA47D
4G066AA64B
4G066BA26
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA27
4G066CA54
4G066DA07
4G073BA02
4G073BA75
4G073BA76
4G073BD21
4G073CM14
4G073CM17
4G073CM18
4G073FE01
4G073FF02
4G073GA02
4G073GA12
4G073GA19
4G073GA40
4G073UA06
(57)【要約】
【課題】特定の構造を有するジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物を提供すること。
【解決手段】ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物であって、
窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)が35~80m2/gであり、かつ、
下記式(1)
V1=R1×R2 ・・・(1)
式中、R1はスメクタイトの面指数(06)のX線回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(nm)を表し、
R2はエチレングリコール処理した状態で測定したスメクタイトの面指数(001)のX線回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(nm)を表す、
で定義される結晶子断面積(V1)が200~400nm2であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物であって、
窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)が35~80m2/gであり、かつ、
下記式(1)
V1=R1×R2 ・・・(1)
式中、R1はスメクタイトの面指数(06)のX線回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(nm)を表し、
R2はエチレングリコール処理した状態で測定したスメクタイトの面指数(001)のX線回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(nm)を表す、
で定義される結晶子断面積(V1)が200~400nm2であることを特徴とする酸処理物。
【請求項2】
水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比である(A)/(B)が3.00~9.00の範囲にある、請求項1に記載の酸処理物。
【請求項3】
Ho≦-3.0の固体酸量が0.10~0.80mmol/g-dry clayの範囲にある、請求項1または2に記載の酸処理物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の酸処理物を用いる吸着剤。
【請求項5】
前記吸着剤がプリン体吸着剤である、請求項4に記載の吸着剤。
【請求項6】
前記プリン体がキサンチン化合物である、請求項5に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記キサンチン化合物がカフェインである、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項8】
前記プリン体がアデニンまたはグアニン化合物である、請求項5に記載の吸着剤。
【請求項9】
請求項4に記載の吸着剤を、プリン体を含むアルコール溶液に入れて、該プリン体を吸着除去することを特徴とする、アルコール溶液からプリン体を除去する方法。
【請求項10】
前記吸着剤がテアニン吸着剤である、請求項4に記載の吸着剤。
【請求項11】
前記吸着剤がγ-アミノ酪酸吸着剤である、請求項4に記載の吸着剤。
【請求項12】
前記吸着剤がトリゴネリン吸着剤である、請求項4に記載の吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物に関する。また、前記酸処理物を用いた、カフェインに代表されるキサンチン化合物やグアニン、グアノシンに代表されるアデニンまたはグアニン化合物を構成成分に含む化合物等のプリン体を吸着し得るプリン体吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、健康志向等の観点から、カフェインレス飲料が市販されている。このカフェインレス飲料は、お茶やコーヒー等からカフェインを除いた飲料である。また、ビール等のアルコール飲料は、痛風等の原因となるプリン体を含んでいるため、このプリン体の含有量が低減されたアルコール飲料も販売されている。
【0003】
ところで、カフェイン、キサンチン、グアニン、グアノシンなどは、何れもプリン骨格を有する化合物(総称して、プリン体)である。これらを飲料から除去するための吸着剤としては、ゼオライトやジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(酸性白土)等が知られている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ゼオライトは、プリン体に対する選択性が乏しく、飲料中に含まれる有効成分まで吸着してしまうため、工業的には使用されていない。
【0005】
また、酸性白土等の粘土は、プリン体に対する選択吸着性は高く、安価であるという利点を有しているものの、濾過性が低いという問題を有する。即ち、この種の粘土は、水中で一部がコロイド分散してしまい、濾過時にフィルターの目詰りが生じてしまう。これを回避するために、濾過を行わず遠心分離をすると、有効成分のロスも生じてしまうし、処理コストも高くなってしまう。
【0006】
更に、特許文献1には、酸性白土を酸処理して得られる活性白土がカフェイン(キサンチン化合物)に対する吸着性に優れていることが開示されており、例えば、その実施例では、本出願人により製造販売されている活性白土(ガレオンアースNF-2,ガレオナイトNo.251、水澤化学工業(株)製)がカフェインに対して高い吸着性を示している。
【0007】
しかしながら、特許文献1でのカフェインに対する吸着性は、緑茶抽出物粉末(カフェイン含有物)40mgを水5mlに溶解させ、得られた水溶液に活性白土等の吸着剤を1g(水100質量部あたり20質量部)も加えて、評価されている。即ち、この実験は、カフェイン含有粉末を多量に含んでいるペーストに、多量の吸着剤を添加して行われており、カフェインに対する吸着性を適正に評価しているとは言い難い。実際に、このような多量の吸着剤を飲料に添加してカフェインを除去することはコスト的にありえない。また、処理後の吸着剤分離の観点からも問題である。しかも、本出願人が、実際の吸着処理に準じて0.2g/L濃度のカフェイン水溶液30gに活性白土(ガレオンアースNF-2,ガレオナイトNo.251)0.1gを加えて吸着試験をしたところ、これらの活性白土(ガレオンアースNF-2,ガレオナイトNo.251)のカフェイン吸着性は酸性白土に比して著しく劣っていることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、特定の構造を有するジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記酸処理物を用いた、プリン体吸着特性が酸性白土と同等以上に高いプリン体吸着剤を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、アルコール溶液に含まれるプリン体を除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理により得られる酸処理物についての吸着性能について多くの実験を行い、検討した結果、種々の用途に使用されている活性白土と呼ばれる領域までの酸処理をせず、それよりも弱いレベルで酸処理しているものが、酸処理されていない粘土(酸性白土)よりも優れた吸着性能を示し、しかも濾過性にも優れており、吸着処理後の溶液からの分離を容易に行うことができるという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明によれば、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物であって、
窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)が35~80m2/gであり、かつ、
下記式(1)
V1=R1×R2 (1)
式中、R1はスメクタイトの面指数(06)のX線回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(nm)を表し、
R2はエチレングリコール処理した状態で測定したスメクタイトの面指数(001)のX線回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(nm)を表す、
で定義される結晶子断面積(V1)が200~400nm2であることを特徴とする酸処理物が提供される。
【0012】
本発明の酸処理物においては、
(1)水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比である(A)/(B)が3.00~9.00の範囲にあること、
(2)Ho≦-3.0の固体酸量が0.10~0.80mmol/g-dry clayの範囲にあること、
(3)前記酸処理物を用いる吸着剤であること、
(4)前記吸着剤がプリン体吸着剤であること、
(5)前記プリン体がキサンチン化合物であること、
(6)前記キサンチン化合物がカフェインであること、
(7)前記プリン体がアデニンまたはグアニン化合物であること、
(8)前記吸着剤がテアニン吸着剤であること、
(9)前記吸着剤がγ-アミノ酪酸吸着剤であること、
(10)前記吸着剤がトリゴネリン吸着剤であること、
が好適である。
【0013】
また、本発明によれば、前記吸着剤を、プリン体を含むアルコール溶液(例えばビールや発泡酒などのアルコール飲料)に入れて、該プリン体を吸着除去することを特徴とする、アルコール溶液からプリン体を除去する方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の酸処理物を用いる吸着剤は、後述する実施例に示されているように、少量での使用により、酸性白土と同等或いはそれ以上にプリン体含有溶液からプリン体を多く除去することができ、例えば、乾燥した吸着剤1g当りのカフェイン吸着量が60mg以上であり、最も高性能なものは、1g当り65mg以上のカフェイン吸着量を示す。また、乾燥した吸着剤1g当りのキサンチン吸着量が16mg以上であり、最も高性能なものは、1g当り19mg以上のキサンチン吸着量を示す。さらに、乾燥した吸着剤1g当りのグアノシン吸着量が13mg以上であり、最も高性能なものは、1g当り14mg以上のグアノシン吸着量を示す。
【0015】
また、本発明の酸処理物を用いる吸着剤は、酸性白土に比して濾過性も高く、吸着処理後の溶液から容易に除去することができる。
【0016】
そのため、本発明の酸処理物を用いる吸着剤は、プリン体に対する吸着性が高く、お茶やコーヒー等の飲料からカフェインを除去してのカフェインレス飲料の製造に好適に適用され、さらに、ビール等のアルコール飲料からのプリン体の除去にも適用することができる。
そして、本発明は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物であることから、従来公知の酸処理を施していないスメクタイト系粘土に比して、含有する浸出性のNaイオン、Caイオンが低く抑えられており、シュウ酸Ca等をはじめとする析出物の発生を抑制することができることから、吸着剤として用いた場合、飲料の色や香味への影響を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<弱酸処理白土>
本発明は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物であるが、一般的に活性白土と称されるものに比して弱い酸処理によって得られ、弱酸処理白土というべきものである。従って、以下、本発明であるジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物を「弱酸処理白土」と呼ぶことがある。
例えば、本出願人による特開2009-072759には、ジオクタヘドラル型粘土を酸処理して得られる半活性白土と呼ばれる酸処理物がポリ乳酸解重合用触媒として使用されることが開示されているが、本発明における弱酸処理白土は、この半活性白土よりも更に弱い酸処理によって得られる。
【0018】
本発明における弱酸処理白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理レベルが非常に低いため、窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)が35~80m2/gであり、かつ、
下記式(1)
V1=R1×R2 (1)
式中、R1はスメクタイトの面指数(06)のX線回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(nm)を表し、
R2はエチレングリコール処理した状態で測定したスメクタイトの面指数(001)のX線回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(nm)を表す、
で定義される結晶子断面積(V1)が200~400nm2である。
前記BET比表面積(B)は、40~75m2/gであることがさらに好ましく、前記結晶子断面積(V1)は、250~350nm2であることがさらに好ましく、250~300nm2であることが特に好ましい。
前記BET比表面積(B)が35m2/g未満であると、吸着剤としての性能が低下する可能性があり、80m2/gを超えると濾過性能が低下する可能性がある。
前記結晶子断面積(V1)が200nm2未満であると、吸着剤としての性能が低下する可能性があり、400nm2を超えると濾過性能が低下する可能性がある。
【0019】
かかる弱酸処理白土は、上記範囲のBET比表面積(B)かつ結晶子断面積(V1)を有することによって、プリン体に対して優れた吸着性能を発揮できる。
【0020】
即ち、粘土ハンドブック(第三版)によれば、窒素法では、単位質量当たりの端面を含む全外部表面積が測定され、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土のように三層構造を有するものでは、窒素分子が液体窒素温度で層間に侵入しないので、外部表面積のみが測定される。非常に弱い酸処理によって微細孔が形成され、外部表面積が一定量増大することから、BET比表面積(B)は一定量増大する。
【0021】
前記弱酸処理白土は、面指数(06)に明確な回折ピークを示し、これは活性白土中に基本三層構造が残留していることを示している。また、面指数(06)の回折ピークの半価幅から求めた結晶子サイズ(R1)は、この三層構造の面方向の大きさを表している。
【0022】
一方、面指数(001)の回折ピーク半価幅から求めた結晶子サイズ(R2)は、基本三層構造の積層の程度(積み重ねの程度)を表していることから、前記式(1)で表される結晶子断面積(V1)は、前記弱酸処理白土中の層状結晶構造の立体的な大きさを断面積で表しているものといえる。非常に弱い酸処理によって積層構造の層間に存在する金属カチオンが溶出して、三層構造の積層構造が部分的に切断され、一定量が崩壊することから、結晶子断面積(V1)は一定量減少する。
【0023】
本発明の弱酸処理白土を製造するには、弱酸処理条件も当然重要であるが、ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物として、一定の基準に合格するものを選択することが基本的に重要である。
【0024】
本発明の弱酸処理白土は、外部表面積を示すBET比表面積(B)及び積層構造の立体的な大きさを示す結晶子断面積(V1)をそれぞれ上記数値範囲内とすることにより、微細孔の形成及び層状結晶構造がバランスよく生じるため、プリン体に対して極めて高い選択吸着性を示すと考えられる。
例えば、強い酸で処理して得られる従来公知の活性白土や半活性白土では、微細孔は形成されず、大きな孔が形成され、また、層状結晶構造は大きく崩壊するため、プリン体吸着特性は、極めて低いものとなる。
【0025】
さらに、本発明の弱酸処理白土は、酸処理を施されているために優れた濾過性を有する。
酸処理を施していないスメクタイト系粘土(酸性白土)は、基本層の間にNa等のカチオンを含む大きな層間を有しているために、水に対して高い膨潤性を示し、膨潤による微分散化によって濾過性が悪いと考えられる。本発明の弱酸処理白土の場合、スメクタイト系粘土中の塩基成分の一部が酸と反応し、ある種、水やアルコールなどに対して不溶性のバインダーとなって粒子間を結合するために、溶液中での微分散化が抑制され、優れた濾過性を示すと考えられる。
【0026】
また、本発明の弱酸処理白土は、水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比である(A)/(B)が3.00~9.00の範囲にあることが好適である。粘土ハンドブック(第三版)によれば、水蒸気のような極性の吸着質を用いた水蒸気法においては、かかる吸着質が粘土の層間に十分侵入するので、内部表面が測定される。従って、A/Bが上記範囲内にあるということは、非常に弱い酸処理によって微細孔が増大し、且つ、スメクタイト系粘土の基本三層の層間が拡大していることを意味している。微細孔の増大はプリン体(特にカフェインなどのキサンチン化合物)に対する選択吸着性を向上させ、基本三層の層間の拡大は、適度な表面親水性をもたらし、水系およびアルコール溶液でのプリン体の吸着性を高めている。上記A/Bの値を有する本発明の弱酸処理白土は、酸処理工程において基本三層の層間の適度な拡大と層間内での微細孔の形成がバランスよく生じるため、プリン体に対して極めて高い選択吸着性を示すと考えられる。前記(A)/(B)は3.50~8.50の範囲であることがさらに好ましい。前記(A)/(B)が3.00未満であると、吸着剤としての性能が低下する可能性があり、9.00を超えると濾過性能が低下する可能性がある。
【0027】
本発明において吸着剤として用いる弱酸処理白土は、一般的に活性白土と称されるものに比して弱い酸処理によって得られるため、固体酸点として働くAlやMgを覆っているNa分やCa分が取り除かれ、さらには、酸処理の進行に伴ってAl分やMg分が溶出することに起因する固体酸量の減少が抑えられている。その結果、従来の酸処理で得られる一般的に活性白土と称されるもの、或いは、酸処理を行っていない酸性白土に比して同等以上の固体酸量を示す。弱酸処理白土は、好適にはHo≦-3.0の固体酸量が0.10~0.80mmol/g-dry clayの範囲にあり、比較的強い固体酸を多く含んでいることを意味している。即ち、プリン体に対して固体酸による化学的吸着性能が高められており、後述する実施例にも示されているように、少量での使用により、従来公知の活性白土や酸性白土と同等或いはそれ以上にプリン体含有溶液からプリン体を多く除去することができる。前記Ho≦-3.0の固体酸量は0.20~0.75mmol/g-dry clayの範囲であることがさらに好ましい。前記Ho≦-3.0の固体酸量が0.10mmol/g-dry clay未満であると、吸着剤としての性能が低下する可能性があり、0.80mmol/g-dry clayを超えると濾過性能が低下する可能性がある。
【0028】
さらにまた、上記の弱酸処理白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の結晶構造に由来する特有のX線回折ピークを示し、例えば、X線回折測定において、面指数(06)に由来する回折ピークを2θ=62度(d=1.49~1.50Å)付近に有している。
【0029】
<弱酸処理白土の製造>
上記のような特性を有する弱酸処理白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を粗砕、混練して所定濃度の酸水溶液を用いて、所定の条件で酸処理することにより製造される。即ち、この弱酸処理白土は、半活性白土と同様にして得られるが、半活性白土に比してマイルドな条件での酸処理によって得られるものである。
【0030】
原料粘土として用いるジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土は、火山岩や溶岩等が海水の影響下で変成したものと考えられており、主要成分であるジオクタヘドラル型スメクタイトはSiO4四面体層-AlO6八面体層-SiO4四面体層からなり、且つこれらの四面体層と八面体層が部分的に異種金属で同形置換された三層構造を基本構造(単位層)としており、このような三層構造の積層層間には、Ca,K,Na等の陽イオンや水素イオンとそれに配位している水分子が存在している。また、基本三層構造の八面体層中のAlの一部にMgやFe(II)が置換し、四面体層中のSiの一部にAlが置換しているため、結晶格子はマイナスの電荷を有しており、このマイナスの電荷が基本層間に存在する金属陽イオンや水素イオンにより中和されている。このようなスメクタイト系粘土には、酸性白土、ベントナイト、フラーズアース等があり、基本層間に存在する金属陽イオンの種類や量、及び水素イオン量等によってそれぞれ異なる特性を示す。例えば、ベントナイトでは、基本層間に存在するNaイオン量が多く、このため、水に懸濁分散させた分散液のpHが高く、一般に高アルカリサイドにあり、また、水に対して高い膨潤性を示し、さらにはゲル化して固結するという性質を示す。一方、酸性白土では、基本層間に存在する水素イオン量が多く、このため、水に懸濁分散させた分散液のpHが低く、一般に酸性サイドにあり、また、水に対して膨潤性を示すものの、ベントナイトと比較すると、その膨潤性は総じて低く、ゲル化には至らない。
【0031】
本発明において、弱酸処理白土の製造に用いるジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土は、特に限定されるものではなく、上述した各種の何れをも使用することができる。また、かかる原料粘土は、粘土の成因、産地及び同じ産地でも埋蔵場所(切羽)等によっても相違するが、一般的には、酸化物換算で以下のような組成を有している。
SiO2;50~75質量%
Al2O3;11~25質量%
Fe2O3;2~20質量%
MgO;2~7質量%
CaO;0.1~3質量%
Na2O;0.1~3質量%
K2O;0.1~3質量%
その他の酸化物(TiO2等);2質量%以下
Ig-loss(1050℃);5~11質量%
【0032】
また、原料粘土は、産地等によっては、石英等の不純物を多く含んでいることもある。従って、上記のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を、必要により石砂分離、浮力選鉱、磁力選鉱、水簸、風簸等の精製操作に賦して不純物をできるだけ除去した後に酸処理を行うのがよい。このような処理を行った後に、以下に述べるマイルドな条件での酸処理を行うことにより、本発明の弱酸処理白土を得ることができる。
【0033】
酸処理は、酸水溶液中に原料粘土を投入し、混合攪拌することにより行われる。酸処理に用いる酸水溶液は、特に限定されるものではないが、コスト、環境への影響等の観点から硫酸水溶液が一般に使用される。
【0034】
また、かかる酸処理は、既に述べたように、従来公知の活性白土や半活性白土を製造する際の酸処理に比してマイルドな条件下で行われ、例えば硫酸水溶液を使用する場合には、原料粘土中に含まれる水分も硫酸水溶液を構成するものとして算出した硫酸水溶液量が、原料粘土100質量部(110℃乾燥物として)当り250~800質量部、その時の硫酸水溶液の濃度が1~15質量%程度になるような条件で酸処理を行えばよい。酸処理にあたっては、必要により25~95℃程度に加熱することもできる。このようにして、原料の組成、用いる酸水溶液の酸濃度、処理温度等によって、BET比表面積(B)及び結晶子断面積(V1)が所定の範囲となる程度の時間(0.5~12時間程度、好ましくは0.5~8時間程度、特に好ましくは0.5~4時間程度)、酸処理を行えばよい。
【0035】
上記のような酸処理により、窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)、結晶子断面積(V1)、窒素法によるBET比表面積と水蒸気法によるBET比表面積の比(A)/(B)及び固体酸量の値が上述の範囲にある、プリン体に対する吸着性能に優れた本発明の弱酸処理白土が得られる。
【0036】
また、上述した酸処理によって得られる弱酸処理白土は、一般に、酸化物換算で、下記の化学組成を有している。
SiO2;50~85質量%
Al2O3;8~23質量%
Fe2O3;1~10質量%以下
MgO;1~5質量%以下
CaO;0.1~2質量%以下
Na2O;0.1~1質量%
K2O;0.1~1質量%
その他の酸化物(TiO2等);2質量%以下
Ig-loss(1050℃);4~9質量%
【0037】
<プリン体>
本発明において、前述した弱酸処理白土は、プリン体、即ち、プリン骨格を有する化合物に対して優れた選択吸着性を示す。
【0038】
プリン骨格は、下記式:
【化1】
で表され、弱酸処理白土は、上記のようなプリン骨格を有する化合物、即ち、部分構造としてプリン骨格を有する化合物、及び、かかる化合物の誘導体もしくはかかる化合物から派生する化合物に対して優れた選択的吸着性を示す。
【0039】
プリン体の1つとしては、下記式:
【化2】
で表されるキサンチンの他、ヒポキサンチンを挙げることができる。
【0040】
さらに、キサンチンから派生する化合物としては、下記式:
【化3】
で表されるカフェインを挙げることができる。即ち、カフェインは、キサンチンの3つのNH基が全てメチル化されてNCH
3基となった、キサンチン誘導体である。
カフェイン以外のキサンチン誘導体としては、これに限定されるものではないが、テオフィリン、テオブロミン、パラキサンチン等を挙げることができる。
キサンチン、ヒポキサンチンおよびキサンチンから派生する化合物を、本明細書では、総じてキサンチン化合物とする。本発明の吸着剤は、キサンチン化合物に対して優れた選択吸着性を示し、キサンチン化合物用吸着剤として好適であり、カフェイン用吸着剤として特に好適である。
【0041】
また、プリン体として、アデニン、グアニンもある。アデニンまたはグアニンから派生する化合物としては、アデニンまたはグアニンとリボースから構成されるプリンヌクレオシド(アデノシン、グアノシン)や、さらにリン酸を構成成分に含むプリンヌクレオチド(アデニル酸、グアニル酸)等が挙げられる。また、アデニンまたはグアニンから派生する他の有機化合物としては、これに限定されるものではないが、デオキシグアノシン、デオキシグアノシン三リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、イノシン、イノシン酸等を挙げることができる。本明細書では、上記のアデニンまたはグアニン、および、アデニンまたはグアニンから派生する化合物を、アデニンまたはグアニン化合物と総称する。本発明の吸着剤は、アデニンおよびグアニンに対する選択的吸着性を示し、それ故、アデニンまたはグアニン化合物に対しても優れた選択的吸着性を示し、かかる化合物用の吸着剤として好適である。後述する実施例においては、本発明の吸着剤はグアニン、及び、グアニンにリボース環がβ-N9-グリコシド結合で構成されたヌクレオシドであるグアノシンに対して優れた選択的吸着性を示す。
【0042】
<用途>
本発明における弱酸処理白土は、プリン体に対する選択吸着性に優れているばかりか、少量の使用で済むので飲料の風味に影響し得る金属類の溶出も少なく、そのため、お茶やコーヒー等の飲料からカフェインを除去してカフェインレスとするために好適に使用され、また、ビール等のアルコール飲料からプリン体を除去するための吸着剤として使用される。例えば、上述のプリン体が溶解している溶液に0.001~10質量部の量で添加して使用される。
これら飲料からカフェイン等を除去するには、前述した弱酸処理白土を、適度な平均粒径(例えば、10~300μm程度)の粉末状に粒度調整し、これを飲料と混合すればよい。
本発明の弱酸処理白土は、上記飲料のほか、各種調味料やサプリメントなどを含めた食品、あるいは、工業や農業に用いられる各種薬品などの製造工程中の固液分離(濾過)において吸着剤として用いることができ、用いられる工程において適する粒度に適宜調整を行うことで、飲料に何ら制限されることなく適用できる。
また、本発明の弱酸処理白土は、アデニンまたはグアニン化合物選択吸着性や濾過性を活かし、創薬や製薬など医薬の分野に吸着剤として適用することもできる。
さらには、本発明の弱酸処理白土は、テアニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、トリゴネリンに対する吸着性にも優れるため、これら機能性成分の捕集剤としても使用される。
本発明の弱酸処理白土は、特に飲料や食品の分野に吸着剤として適用することが好ましい。
【0043】
本発明の弱酸処理白土は、後述する実施例に示したように、吸着剤としてプリン体を含むアルコール溶液に入れてプリン体を吸着除去することができるので、例えば、ビールや発泡酒をはじめとしたプリン体を含むアルコール飲料等から好適にプリン体を除去することができる。
アルコール溶液とは、アルコールが含まれている液体を意味し、アルコール以外に例えば水等が含まれていてもよい。具体的には、ビールや発泡酒等の発酵麦芽飲料、ビールテイスト飲料、酒、ワイン、醸造アルコール、焼酎、スピリッツ類、リキュール類、ウイスキー、ブランデー、清酒、果実酒、酎ハイ、カクテル等の飲料用として提供されるものに加え、食品用、工業用、農業用、医療用として提供される各種アルコール含有製品及びその製造工程で用いる原料等が挙げられる。アルコールは特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、低級アルコール(例えば、2-プロパノール、エチレングリコール、グリセリン等)、高級アルコール(炭素数8~22以上の脂肪族アルコール、例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等)、フェノール、芳香族アルコール等が挙げられ、好ましくは、エタノールが挙げられる。また、アルコールの濃度は特に制限がなく、上記アルコールを少なくとも1種以上含む溶液に適用できる。上述の本発明の吸着剤をアルコール溶液に適用する方法により、上記アルコール含有製品及びその製造工程で用いる原料等から、好適にプリン体を除去することができる。
【0044】
また、本発明の弱酸処理白土は、後述する実施例に示したように、吸着剤としてテアニン、GABA、トリゴネリンのいずれかを含む水溶液に入れて、テアニン、GABA、トリゴネリンを吸着することができるので、例えば、緑茶をはじめとしたテアニンを含む飲料等や、コーヒーをはじめとしたトリゴネリンを含む飲料等や、発酵法で合成したGABA含有液等から好適にテアニン、GABA、トリゴネリンを捕集することができる。
【0045】
本発明の弱酸処理白土は、吸着剤として使用する場合、酸処理により特定範囲のBET比表面積(B)かつ特定範囲の結晶子断面積(V1)、特定範囲のBET比表面積比(A)/(B)、及び比較的強い固体酸を多く含んでいるという特徴を有している。そのため、本発明の吸着剤は、従来の活性白土と同様に、油脂類や鉱物油類の脱色、触媒又は触媒担体に何ら制限なく使用することができる。
【0046】
カフェイン等を吸着した弱酸処理白土は、濾過性に優れているため、それ自体公知の方法により濾過して容易に分離することができ、これは本発明の大きな利点である。即ち、遠心分離等により分離することもできるが、かかる方法では、飲料中の有効成分も取り除かれてしまうが、濾過によれば、このような不都合も有効に回避することができる。
【実施例0047】
本発明の優れた効果を、次の実験例により説明する。
【0048】
(1)窒素吸着法によるBET比表面積(B)
マイクロメリティクス社製TriStar 3000を用いて窒素吸着法により測定を行ない、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
【0049】
(2)X線回折
(株)リガク製RINT-UltimaIV(X線=CuKα線)にて測定した。
【0050】
(3)水蒸気吸着法によるBET比表面積(A)
日本ベル株式会社製BELSORP MAXを用いて水蒸気吸着法により測定を行ない、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
【0051】
(4)固体酸量
n-ブチルアミン滴定法にてHo≦-3.0の固体酸量を測定した。試料は、予め、150℃で3時間乾燥したものについて測定を行った(参考文献:「触媒」Vol.11,No6,P210-216(1969))。
【0052】
(5)カフェイン吸着試験
本実施例におけるカフェイン吸着能は、0.2g/L濃度のカフェイン水溶液から、1gの吸着剤(無水)が吸着できるカフェイン量(mg)とし、下記の方法により測定し、算出した。
先ず、無水カフェイン(試薬特級、富士フイルム和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かし、0.2g/L濃度のカフェイン水溶液を得た。
この0.2g/L濃度のカフェイン水溶液30gを50ml容量の遠沈管に秤取し、吸着剤0.1g(対液0.33質量%)を加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード6)により室温下で一晩振とうした。
次に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により遠心加速度3000rpmで20分処理した液の上澄みをイオン交換水により10倍に希釈して液(試料液)を得た。試料液の273nm波長光の吸光度を分光光度計(日本分光(株)製V-630)により測定した。そして、予め作成したカフェイン濃度と273nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のカフェイン残存量を算出し、吸着剤添加前のカフェイン量から差し引いた値を吸着剤のカフェイン吸着能とした。
【0053】
(6)アルコール溶液におけるキサンチン吸着試験
本実施例におけるキサンチン吸着能は、キサンチンを10mg/L濃度で含有する5%エタノール水溶液から、1gの吸着剤(無水)が吸着できるキサンチン量(mg)とし、下記の方法により測定し、算出した。
先ず、エタノール(99.5)(試薬特級、富士フイルム和光純薬工業(株)製)50mLを1000mLメスフラスコに取り、続けて蒸留水を加えてメスアップし、5%エタノール水溶液を調製した。キサンチン(試薬特級、富士フイルム和光純薬工業(株)製)を上記5%エタノール水溶液に溶かし、キサンチンを10mg/L濃度で含有する5%エタノール水溶液を得た。
このキサンチンを10mg/L濃度で含有する5%エタノール水溶液90mLを200mL容量のガラスビーカーに秤取し、吸着剤0.045g(対液0.05質量%)を加えて冷蔵庫内でマグネチックスターラーにより15分間攪拌した。
次に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により遠心加速度3000rpmで15分処理した液の上澄み液(試料液)を得た。試料液の273nm波長光の吸光度を分光光度計(日本分光(株)製V-630)により測定した。そして、予め作成したキサンチン濃度と273nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のキサンチン残存量を算出し、吸着剤添加前のキサンチン量から差し引いた値を吸着剤のキサンチン吸着能とした。
【0054】
(7)アルコール溶液におけるグアノシン吸着試験
本実施例におけるグアノシン吸着能は、グアノシンを0.2g/L濃度で含有する5%エタノール水溶液から、1gの試料(無水)が吸着できるグアノシン量(mg)とし、下記の方法により測定し、算出した。
先ず、エタノール(99.5)(試薬特級、富士フイルム和光純薬工業(株)製)5mLを100mLメスフラスコに取り、続けて蒸留水を加えてメスアップし、5%エタノール水溶液を調製した。その後、グアノシン(Alfa Aesar製)を上記5%エタノール水溶液に溶かし、グアノシンを0.2g/L濃度で含有する5%エタノール水溶液を得た。
このグアノシンを0.2g/L濃度で含有する5%エタノール水溶液35mLを50mL容量の遠沈管に秤取し、0.5g(対液1.4質量%)の試験粉末を加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード6)により室温下で0.5時間振とうした。
次に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により回転数3000rpmで20分処理し、液の上澄みを5%エタノール水溶液により10倍に希釈した液(試料液)を得た。試料液の260nm波長光の吸光度を分光光度計(日本分光(株)製V-630)により測定した。そして、あらかじめ作成したグアノシン濃度と260nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて、試料液のグアノシン濃度を算出し、吸着剤添加前のグアノシン量から差し引いた値を吸着剤のグアノシン吸着能とした。
【0055】
(8)テアニン吸着試験
51mg/L濃度のテアニン水溶液15gから吸着剤0.25gが吸着できるテアニン量(mg/g)を下記の方法により測定した。先ず、51mg/L濃度のテアニン水溶液15gを50ml容量の遠沈管に採取し、吸着剤0.25g(対液1.7質量%)を加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により2.5時間振とうした。次に遠心分離機((株)クボタ製7780II)により遠心加速度10000rpmで10分処理した液の上澄みをメンブレンフィルター(ADVANTEC製A045A025A)で濾過した液(試料液)を得た。試料液の193nm波長光の吸光度を分光光度計((株)島津製作所製UV―2600)により測定した。このとき、吸着剤の溶解性塩類等の影響を差し引くため、あらかじめテアニン未溶解の蒸留水15gに0.25gの吸着剤を加えて同様の操作をしたときの吸光度を試料液の吸光度から差し引き、試料液の補正吸光度とした。そして、予め作成したテアニン濃度と193nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のテアニン残存量を算出し、吸着剤添加前のテアニン量から差し引いた値を回収試験におけるテアニン吸着量とした。
【0056】
(9)GABA吸着試験
0.02質量%濃度のγ-アミノ酪酸(GABA)水溶液15gから吸着剤0.5gが吸着できるGABA量(mg/g)を下記の方法により測定した。先ず、γ-アミノ酪酸(東京化成工業(株)製)を蒸留水に溶かし、0.02質量%濃度のγ-アミノ酪酸溶液を得た。当該アミノ酪酸溶液15gを50ml容量の遠沈管に採取し、吸着剤0.5gを加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により2.5時間振とうした。次に遠心分離機((株)クボタ製7780II)により遠心加速度10000rpmで10分処理した液の上澄みをメンブレンフィルター(ADVANTEC製A045A025A)で濾過した液(試料液)を得た。試料液の190nm波長光の吸光度を分光光度計((株)島津製作所製UV-2600)により測定した。このとき、吸着剤の溶解性塩類等の影響を差し引くため、あらかじめγ-アミノ酪酸未溶解の蒸留水15gに同重量の吸着剤を加えて同様の操作をしたときの吸光度を試料液の吸光度から差し引き、試料液の補正吸光度とした。そして、予め作成したγ-アミノ酪酸濃度と190nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のγ-アミノ酪酸残存量を算出し、吸着剤添加前のγ-アミノ酪酸量から差し引いた値をγ-アミノ酪酸(GABA)吸着量とした。
【0057】
(10)トリゴネリン吸着試験
800ppmのトリゴネリン水溶液15gから吸着剤0.5gが吸着できるトリゴネリン量(mg/g)を下記の方法により測定した。先ず、トリゴネリン(CayChem製)を蒸留水に溶かし、800ppmのトリゴネリン水溶液を得た。この800ppmのトリゴネリン水溶液15gを50ml容量の遠沈管に秤取し、吸着剤0.5g(対液3.3質量%)を加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により2.5時間振とうした。次に遠心分離機((株)クボタ製5200)により遠心加速度3000rpmで15分処理した液の上澄みをHPLC前処理用フィルター(Merck製、フィルター孔径0.20μm)で濾過し、得られた試料液を、下記条件で液体クロマトグラフ(HPLC)分析した。
測定装置:島津製作所製 高速液体クロマトグラフ Prominence
カラム:島津製作所製 Shim-pack VP-ODS
検出器:UV
測定波長:270nm
予め作成したトリゴネリン濃度とHPLC分析におけるトリゴネリンのピーク面積割合の関係を示す検量線を用いて試料液中のトリゴネリン残存量を算出し、吸着剤添加前のトリゴネリン量から差し引いた値をトリゴネリンの吸着量とした。
【0058】
下記の実施例および比較例に示す吸着剤粉末について、物性および各種吸着試験結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
日本粘土学会参考粘土試料JCSS3101b(月布モンモリロナイト)。
【0060】
(実施例1)
ビーカーに5質量%硫酸水溶液145gを採り、90℃に加熱した。そこへ比較例1の吸着剤粉末20gを添加し、液温を90℃に維持した状態で撹拌し、1時間処理を行った。酸処理終了後、酸処理物を水でろ過洗浄し、洗浄後のろ過ケーキを110℃にて乾燥し、粉砕、分級して弱酸処理白土粉末を得た。得られた弱酸処理白土粉末をXRD測定装置により測定した。
【0061】
(比較例2)
市販のベントナイト粉末A。
【0062】
(実施例2)
実施例1における吸着剤粉末を比較例2の吸着剤粉末に変え、酸処理時間を1時間に変えた以外は実施例1と同じ処理を行い、弱酸処理白土粉末を得た。
【0063】
(比較例3)
市販のベントナイト粉末B。
【0064】
(実施例3)
実施例1における吸着剤粉末を比較例3の吸着剤粉末に変えた以外は実施例1と同じ処理を行い、弱酸処理白土粉末を得た。
【0065】
(比較例4)
ビーカーに5質量%硫酸水溶液218gを採り、そこへ水澤化学製のベントナイト粉末であるベンクレイSLを30g添加し、室温下で撹拌し、1時間処理を行った。以降は実施例1と同じ処理を行い、弱酸処理白土粉末を得た。
【0066】
(比較例5)
山形県鶴岡市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を乾燥(110℃)、粉砕、分級して吸着剤粉末を得た。
実施例2における吸着剤粉末を上記吸着剤粉末に変えた以外は実施例2と同じ処理を行い、弱酸処理白土粉末を得た。
【0067】
(比較例6)
新潟県胎内市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を乾燥(110℃)、粉砕、分級して吸着剤粉末を得た。
ビーカーに10質量%硫酸水溶液220mLを採り、90℃に加熱した。そこへ前記粘土粉末30gを添加し、液温を90℃に維持した状態で撹拌し、30分間酸処理を行った。酸処理終了後、酸処理物を水でろ過洗浄し、洗浄後のろ過ケーキを150℃にて12時間乾燥し、粉砕、分級して酸処理粉末を得た。
【0068】
(比較例7)
実施例1における吸着剤粉末を日本粘土学会参考粘土試料JCSS3102(三川モンモリロナイト)に変えた以外は実施例1と同じ処理を行い、弱酸処理白土粉末を得た。
【0069】