(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041261
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ダイカスト金型
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20240319BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B22D17/22 C
B22D17/22 H
B22C9/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145969
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】和田 康知
(72)【発明者】
【氏名】九十九 徹哉
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB01
(57)【要約】
【課題】型締め時における中子の後退を確実に阻止する。
【解決手段】固定型1に、中子の後退を阻止するための中子支持面14と、中子支持面14よりも中子前後方向Xの後側において中子が固定型1に型締め方向Zに当接する中子合わせ面11と、が設けられたダイカスト金型であって、固定型1は、中子合わせ面11よりも型締め方向Zの可動型側に突出する突出部22bを有し、突出部22bに、中子支持面14が型締め方向Zの可動型側に延長された延長支持面14bが設けられており、突出部22bは、可動型まで到達し、固定型1と可動型が共に中子の後退を阻止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型に、中子の後退を阻止するための中子支持面と、中子支持面よりも中子前後方向の後側において中子が固定型に型締め方向に当接する中子合わせ面と、が設けられたダイカスト金型であって、
固定型は、中子合わせ面よりも型締め方向の可動型側に突出する突出部を有し、突出部に、中子支持面が型締め方向の可動型側に延長された延長支持面が設けられている、ダイカスト金型。
【請求項2】
突出部は、可動型まで到達し、固定型と可動型が共に中子の後退を阻止する、請求項1記載のダイカスト金型。
【請求項3】
突出部は、延長支持面が設けられ、中子を中子前後方向の後側から支持する支持壁部と、支持壁部の一側縁部から中子前後方向の前側に延びる側壁部と、を有する、請求項1又は2記載のダイカスト金型。
【請求項4】
延長支持面は、中子支持面の中子左右方向の両端部に一対設けられている、請求項1又は2記載のダイカスト金型。
【請求項5】
固定型は、嵌合凹部を有する固定型本体と、突出部を有し、根元部が嵌合凹部に嵌り込むようにして固定型本体に着脱可能に取り付けられた柱状の支持部材と、を備えている、請求項1又は2記載のダイカスト金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子を備えたダイカスト金型に関する。
【背景技術】
【0002】
中子の前面には、キャビティに注入される溶湯から圧力が作用する。その圧力によって中子は後退しようとする。中子が動くと、製品の精度が悪化する。従って、中子の後退を阻止する機構がダイカスト金型には設けられる。
【0003】
下記特許文献1に記載の金型においては、固定型の凹部の壁面にストッパ部が設けられ、中子には型締め方向の固定型側に突出する凸部が設けられている。そして、型締め時に固定型のストッパ部が中子の凸部背面に当接し、これによって中子の後退を阻止するようにしている。
【0004】
しかしながら、中子の前面に大きな圧力が作用すると、中子が動く可能性がある。また、ストッパ部を支点として中子に回転モーメントが生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、中子の後退を確実に阻止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るダイカスト金型は、固定型に、中子の後退を阻止するための中子支持面と、中子支持面よりも中子前後方向の後側において中子が固定型に型締め方向に当接する中子合わせ面と、が設けられたダイカスト金型であって、固定型は、中子合わせ面よりも型締め方向の可動型側に突出する突出部を有し、突出部に、中子支持面が型締め方向の可動型側に延長された延長支持面が設けられている。尚、中子前後方向とは、中子が可動型に対してスライドする方向であって、可動型に近づく方向を前側とし、可動型から離れる方向を後側とする。
【0008】
この構成によれば、固定型が突出部を有し、その突出部に延長支持面が設けられている。そのため、中子は、延長支持面を含む中子支持面によって支持されることになる。延長支持面が中子合わせ面よりも型締め方向の可動型側に位置しているため、溶湯によって中子に作用する圧力を延長支持面が効果的に受け止める。
【0009】
特に、突出部は、可動型まで到達し、固定型と可動型が共に中子の後退を阻止することが好ましい。この構成によれば、固定型と可動型が協働して中子の後退を型締め方向の両側から阻止するので、中子の後退がより一層確実に阻止される。そのため、製品の精度がより一層向上する。
【0010】
また、突出部は、延長支持面が設けられ、中子を中子前後方向の後側から支持する支持壁部と、支持壁部の一側縁部から中子前後方向の前側に延びる側壁部と、を有することが好ましい。この構成によれば、支持壁部の一側縁部に側壁部が設けられているので、突出部の強度が向上し、中子をしっかりと支持することができる。
【0011】
また、延長支持面は、中子支持面の中子左右方向の両端部に一対設けられていることが好ましい。尚、中子左右方向とは、中子前後方向及び型締め方向と直交する方向である。この構成によれば、中子の後退を中子左右方向に均等に阻止することができる。また、金型を冷却するための配管の配置が容易になる。
【0012】
また、固定型は、嵌合凹部を有する固定型本体と、突出部を有し、根元部が嵌合凹部に嵌り込むようにして固定型本体に着脱可能に取り付けられた柱状の支持部材と、を備えていることが好ましい。この構成によれば、支持部材が嵌合凹部に嵌り込んでいるので、支持部材を固定型本体に強固に固定することができ、支持部材によって中子をしっかりと支持することができる。また、支持部材を交換できるので、金型のメンテナンス性に優れる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、中子の後退が延長支持面によって効果的に阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態におけるダイカスト金型の固定型を示す斜視図。
【
図3】同固定型を型締め方向の可動型側から見た正面図。
【
図6】同ダイカスト金型の支持部材を示す斜視図であって、(a)は型開き状態を示し、(b)は型締め状態を示す。
【
図7】同ダイカスト金型の型開き状態を示す断面図。
【
図8】同ダイカスト金型の型締め状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態にかかるダイカスト金型について、
図1~
図8を参酌しつつ説明する。以下、ダイカスト金型を単に金型と称する。
【0016】
金型は、固定型1と、可動型2と、中子3を備えている。尚、本実施形態では、一例として、中子3が一箇所に設けられているが、中子3の個数は任意である。固定型1と可動型2は互いに対向配置される。可動型2は、固定型1に対して型締め方向に接近、離反する。可動型2は、型締め時に固定型1に接近し、型開き時に固定型1から離れる。型締め方向は、可動型2の接離方向である。型締め方向は例えば水平方向である。図中、型締め方向を符号Zで示し、中子3のスライド方向である中子前後方向を符号Xで示し、型締め方向Z及び中子前後方向Xに対して直交する方向である中子左右方向を符号Yで示す。
【0017】
<固定型1>
図1~
図3に固定型1を示している。尚、固定型1の全体のうち、紙面向かって左側の部分の図示は省略されている。即ち、固定型1の左側の部分がカットされた状態で図示されている。可動型2についても同様である。
【0018】
固定型1は、製品を形成するためのキャビティを画成する固定ダイス1aと、固定ダイス1aが取り付けられて固定ダイス1aを保持する固定ホルダ1bとを備えている。尚、
図1~
図3において、固定ダイス1aには多数のドットを付して示している。固定型1を型締め方向Zの可動型2側から見た場合を正面図とする。固定ホルダ1bの正面は、固定ホルダ1bの型締め方向Zの可動型2側の端面である。固定ホルダ1bの正面には、型締め時に後述の可動ホルダ2bが型締め方向Zに重なり合う第1主合わせ面10と、型締め時に後述の中子ホルダ3bが型締め方向Zに重なり合う第1中子合わせ面11とが設けられている。第1中子合わせ面11には、金型を冷却するための冷却配管(図示省略)が通る配管用の溝12が多数設けられている。
【0019】
固定ホルダ1bには係合凹部13が設けられている。係合凹部13は、第1中子合わせ面11と固定ダイス1aとの間に位置している。
図7及び
図8のように、係合凹部13には、後述の中子3の係合凸部32が型締め方向Zに係合する。係合凹部13は、第1中子合わせ面11よりも型締め方向Zに凹んでいて、また、第1主合わせ面10よりも型締め方向Zに凹んでいる。係合凹部13は、正面から型締め方向Zの固定型1側、即ち、固定型1の背面側であって可動型2から離れる方向に向けて凹んでいて、型締め方向Zの可動型2側に開口している。尚、この係合凹部13の開口形状は、正面から見て、中子左右方向Yに長い長方形状である。第1中子合わせ面11は、係合凹部13に対して、中子前後方向Xの後側に隣接し、固定ダイス1aは、係合凹部13に対して、中子前後方向Xの前側に隣接している。
【0020】
係合凹部13の壁面に、中子3の後退を止めるための中子支持面14が設けられている。中子支持面14は、固定ホルダ1bに設けられている。中子支持面14は、係合凹部13の壁面のうち中子前後方向Xの後側の壁面を構成している。即ち、係合凹部13の中子前後方向Xの後側の壁面の全体が中子支持面14となっている。中子支持面14は、係合凹部13の中子左右方向Yの全長に亘る長さを有している。中子支持面14は、型締め方向Zに対して、中子前後方向Xに傾斜している。中子支持面14は、型締め方向Zの固定型1から可動型2に向けて徐々に中子前後方向Xの後側に向かうように傾斜している。
【0021】
中子支持面14は、ベース支持面14aと延長支持面14bとからなる。ベース支持面14aは、係合凹部13の壁面を構成する部分であって、その上端は第1中子合わせ面11と同じ高さである。即ち、ベース支持面14aは、中子支持面14のうち、係合凹部13の底面の高さから第1中子合わせ面11の高さまでの範囲である。延長支持面14bは、ベース支持面14aから型締め方向Zの可動型2側に延設されている。延長支持面14bとベース支持面14aは同一傾斜面であり、延長支持面14bは、ベース支持面14aと連続している。延長支持面14bは、中子支持面14のうち、第1中子合わせ面11よりも型締め方向Zの可動型2側に突出した部分である。以下、中子支持面14の構成を更に具体的に説明する。
【0022】
固定ホルダ1bは、固定ホルダ本体20と、固定ホルダ本体20に着脱可能に即ち交換可能に取り付けられた支持部材とを備えている。本実施形態において、固定ホルダ本体20が固定型本体を構成している。支持部材が中子支持面14を有している。型締め時に、支持部材が中子3に当接して中子3を中子前後方向Xの後側から支持する。支持部材は、中子左右方向Yに複数に分割されている。支持部材は、係合凹部13の中子左右方向Yの中央部に配置された複数、具体的には三つの板状の第1支持部材21と、係合凹部13の中子左右方向Yの両端部にそれぞれ配置された柱状の一対の第2支持部材22とからなる。
【0023】
三つの第1支持部材21は、中子左右方向Yに並んで配置されている。三つの第1支持部材21は、一対の第2支持部材22の間に配置されている。第1支持部材21の上端(型締め方向Zの可動型2側の端部)は、第1中子合わせ面11の高さに位置していて、第1支持部材21の上面と第1中子合わせ面11は面一である。尚、上述の配管用の溝12は第1支持部材21の上面に連続している。第1支持部材21の前面は中子前後方向Xの前側の面である。第1支持部材21の前面に第1傾斜面23が設けられている。第1傾斜面23は、ベース支持面14aである。第1傾斜面23は、ベース支持面14aのうち大部分を占めている。第1傾斜面23は、係合凹部13の底面から第1支持部材21の上面まで延びている。第1支持部材21の中子前後方向Xの厚さは、上側に向けて、即ち、係合凹部13の底面から第1中子合わせ面11に向けて徐々に薄くなっている。
【0024】
第2支持部材22は、第1支持部材21の中子左右方向Yの両側にそれぞれ位置している。一対の第2支持部材22は中子左右方向Yに互いに対称に配置されている。一対の第2支持部材22は互いに略対称形状である。
図5及び
図6に一方の第2支持部材22を示している。第2支持部材22は、型締め方向Zに長い形状である。型締め方向Zを上下方向として説明する。
【0025】
第2支持部材22は、第1支持部材21よりも上下方向の寸法が長い。第2支持部材22は、平面視略矩形状の土台部24と、土台部24から上側に延設された支持壁部25及び側壁部26とを有している。土台部24は、第2支持部材22の下端部に位置する。土台部24は、第2支持部材22が固定ホルダ本体20に取り付けられた状態において固定ホルダ本体20に埋まった状態となる。土台部24の上端の高さは係合凹部13の底面の高さと略一致する。
【0026】
支持壁部25は、中子3を中子前後方向Xの後側から支持する。支持壁部25は、第1支持部材21と並んでいる。支持壁部25は、その前面に第2傾斜面27を有する。第2傾斜面27は、第1支持部材21の第1傾斜面23と共に中子支持面14を構成している。第2傾斜面27は第1傾斜面23と同一傾斜面である。第2傾斜面27が支持壁部25の前面に設けられることにより、支持壁部25の中子前後方向Xの厚さは、上側に向けて徐々に薄くなる。支持壁部25は、その上端部において中子前後方向Xの厚さが最も薄くなっている。支持壁部25は、全体として楔状である。第2傾斜面27は、支持壁部25の上下方向の全長に亘って設けられており、支持壁部25の上端、即ち、第2支持部材22の上端まで達している。
【0027】
側壁部26は、支持壁部25の中子左右方向Yの一側縁部から中子前後方向Xの前側に向けて延設されている。側壁部26は、支持壁部25の中子左右方向Yの両側縁部のうち一方のみに設けられている。側壁部26は、支持壁部25に対して直角に延びている。即ち、側壁部26は支持壁部25に対して平面視において直交していて、支持壁部25と側壁部26は平面視においてL字状となっている。第2支持部材22が固定ホルダ本体20に取り付けられた状態において、側壁部26は、第1支持部材21に対して、中子左右方向Yの反対側に位置する。一対の第2支持部材22の側壁部26同士は、中子左右方向Yに対向する。側壁部26の中子前後方向Xの長さは、下端から上端に向けて徐々に長くなっており、第2支持部材22の上端において最も長くなっている。側壁部26は、逆三角形状である。尚、側壁部26の中子左右方向Yの厚さは略一定であって板状である。第2支持部材22の側壁部26の内面は、第2傾斜面27と接続していると共に第2傾斜面27に対して直角に折れ曲がっている。
【0028】
固定ホルダ本体20には、第2支持部材22の根元部22aが嵌り込む嵌合凹部28が設けられている。嵌合凹部28は、正面視において、第2支持部材22に対応した形状であって、具体的には矩形状である。第2支持部材22の根元部22aは、第2支持部材22の下部であって、上下方向の全長のうち略半分である。嵌合凹部28は、係合凹部13の中子前後方向Xの後側であって且つ中子左右方向Yの両端部に隣接している。嵌合凹部28は型締め方向Zの可動型2側に開口している。嵌合凹部28の一部分は、正面視において、係合凹部13から中子左右方向Yの外側にはみ出すように延長されている。その嵌合凹部28の側方延長部28aは、第1主合わせ面10を中子左右方向Yに矩形状に切り欠くように形成されている。嵌合凹部28に第2支持部材22の根元部22aが嵌合することにより、第2支持部材22は、固定ホルダ本体20によって中子前後方向Xと中子左右方向Yの2方向に支えられる。特に、嵌合凹部28の側方延長部28aには、第2支持部材22の側壁部26が嵌り込む。側壁部26が側方延長部28aに嵌り込むことによって、第2支持部材22は、固定ホルダ本体20に中子前後方向Xに保持される。第2支持部材22の側壁部26の内面は、係合凹部13の中子左右方向Yの壁面と面一となる。
【0029】
第2支持部材22は、その上部が第1中子合わせ面11よりも型締め方向Zの可動型2側に突出する。第2支持部材22の上部が、第1中子合わせ面11よりも突出する突出部22bである。第2傾斜面27のうち突出部22bにおける上部領域が延長支持面14bである。第2傾斜面27のうち突出部22b以外の下部領域がベース支持面14aである。第1支持部材21の第1傾斜面23と、第2傾斜面27の下部領域とが、ベース支持面14aを構成する。
【0030】
<可動型2と中子3>
図4に、可動型2と、可動型2に接近した状態の中子3を示している。可動型2は、固定ダイス1aと共にキャビティを画成する可動ダイス2aと、可動ダイス2aが取り付けられて可動ダイス2aを保持する可動ホルダ2bとを備えている。可動型2を型締め方向Zの固定型1側から見た場合を正面図とする。可動ホルダ2bの正面は、可動ホルダ2bの型締め方向Zの固定型1側の端面である。可動ホルダ2bの正面には、型締め時に固定ホルダ1bの第1主合わせ面10に型締め方向Zに重なり合う第2主合わせ面30が設けられている。
【0031】
中子3は、可動型2に対してスライドしながら接近、離反する。中子3の接離方向が中子前後方向Xである。中子前後方向Xは、本実施形態では型締め方向Zに対して直交する方向であるが、型締め方向Zに対して交差する方向であってよい。中子3は、固定ダイス1a及び可動ダイス2aと共にキャビティを画成する中子ダイス3aと、中子ダイス3aが取り付けられて中子ダイス3aを保持する中子ホルダ3bとを備えている。尚、
図4において、中子ダイス3aには多数のドットを付して示している。中子ホルダ3bの正面は、中子ホルダ3bの型締め方向Zの固定型1側の端面である。中子ホルダ3bの正面には、型締め時に固定ホルダ1bの第1中子合わせ面11に型締め方向Zに重なり合う第2中子合わせ面31が設けられている。
【0032】
中子ホルダ3bには、係合凸部32が設けられている。係合凸部32は、第2中子合わせ面31よりも型締め方向Zに突出していて、また、第2主合わせ面30よりも型締め方向Zに突出している。係合凸部32は、第2中子合わせ面31と中子ダイス3aとの間に位置している。第2中子合わせ面31は、係合凸部32に対して、中子前後方向Xの後側に隣接し、中子ダイス3aは、係合凸部32に対して、中子前後方向Xの前側に隣接している。係合凸部32は、型締め時に固定ホルダ1bの係合凹部13に型締め方向Zに係合する。係合凸部32の正面視の形状は、係合凹部13の正面視の形状に対応している。係合凸部32の中子前後方向Xの後側であって、且つ、第2中子合わせ面31の中子左右方向Yの両側には、それぞれ第2中子合わせ面31よりも型締め方向Zに凹んだ隙間33が設けられている。隙間33は、中子ホルダ3bと可動ホルダ2bとの間の空間である。型締め時に、左右一対の隙間33に、それぞれ第2支持部材22の突出部22bが型締め方向Zに進入する。
【0033】
係合凸部32の中子前後方向Xの後側の面である後面に、当接面34が設けられている。当接面34は、型締め時に係合凹部13の中子支持面14に当接する。係合凸部32の後面の全体が当接面34となっている。当接面34は、係合凸部32の中子左右方向Yの全長に亘る長さを有している。当接面34は、中子支持面14に対応して傾斜している。即ち、当接面34は、型締め方向Zに対して、中子前後方向Xに傾斜している。当接面34は、型締め方向Zの可動型2から固定型1に向けて徐々に中子前後方向Xの前側に向かうように傾斜している。
【0034】
当接面34は、ベース当接面34aと延長当接面34bとからなる。型締め時に、ベース当接面34aが固定型1のベース支持面14aに当接し、延長当接面34bが固定型1の延長支持面14bに当接する。ベース当接面34aは、係合凸部32の後面からなり、その上端は係合凸部32の上端と同じ高さであって、その下端は第2中子合わせ面31と同じ高さである。即ち、ベース当接面34aは、当接面34のうち、係合凸部32の上端から第2中子合わせ面31までの範囲である。延長当接面34bは、ベース当接面34aから型締め方向Zの可動型2側、即ち、可動型2の背面側に延びている。延長当接面34bとベース当接面34aは同一傾斜面を構成している。延長当接面34bは、当接面34のうち、第2中子合わせ面31よりも可動型2の背面側に延びた部分である。以下、当接面34の構成を更に具体的に説明する。
【0035】
中子ホルダ3bは、着脱可能に即ち交換可能に取り付けられた当接部材を備えている。当接部材が当接面34を有する。型締め時に、当接部材が固定型1の支持部材に当接する。当接部材は、中子左右方向Yに複数に分割されていると共に、型締め方向Zにも分割されている。本実施形態では、当接部材は、係合凸部32の後面に配置された複数、具体的には三つの板状の第1当接部材41と、一対の隙間33に面して配置された左右一対の板状の第2当接部材42とからなる。
【0036】
三つの第1当接部材41は、中子左右方向Yに並んで配置されている。三つの第1当接部材41により、係合凸部32の後面の全体が構成されている。第1当接部材41の後面の全体に第3傾斜面43が設けられている。第3傾斜面43がベース当接面34aである。第3傾斜面43は、第1傾斜面23に対応して傾斜している。第1当接部材41の中子前後方向Xの厚さは、上側に向けて徐々に薄くなっている。第2当接部材42は、両端に位置する第1当接部材41に対して可動型2の背面側に配置されている。一対の第2当接部材42は中子左右方向Yに互いに対称に配置されている。一対の第2当接部材42は互いに略対称形状である。第2当接部材42の中子左右方向Yの幅は、第1当接部材41のそれよりも狭い。第2当接部材42の後面に第4傾斜面44が設けられている。第4傾斜面44が延長当接面34bである。第4傾斜面44は、第2傾斜面27に対応して傾斜している。第4傾斜面44は、第3傾斜面43と面一である。第4傾斜面44は、第3傾斜面43から可動型2の背面側に連続している。
【0037】
型締め時に、中子ホルダ3bの第3傾斜面43は、固定ホルダ1bの第1支持部材21の第1傾斜面23と、第2支持部材22の第2傾斜面27のうちの下部領域に当接する。また、中子ホルダ3bの第4傾斜面44は、固定ホルダ1bの第2支持部材22の第2傾斜面27のうちの上部領域に当接する。
【0038】
図8に示すように、型締め時に、第2支持部材22の突出部22bは、中子3を型締め方向Zに通過して可動型2まで達する。具体的には、突出部22bの先端部は、可動ホルダ2bに到達する。可動ホルダ2bには、上述の隙間33に連通した受け入れ凹部45が設けられている。中子ホルダ3bが中子前後方向Xにスライドする際に、可動ホルダ2bの中子摺動面46に中子ホルダ3bが摺動する。受け入れ凹部45は、可動ホルダ2bの中子摺動面46に設けられていて、型締め方向Zの固定型1側に開口している。型締め時に、第2支持部材22の突出部22bの先端部は、受け入れ凹部45に入り込む。
【0039】
可動ホルダ2bの受け入れ凹部45の壁面には、受け部材47が着脱可能に即ち交換可能に配置されている。
図6のように、受け部材47は、板状である。受け部材47は、型締め時に、第2支持部材22の突出部22bの先端部に中子前後方向Xの後側から当接して、第2支持部材22を後側から支える。受け部材47は、型締め方向Z(第2支持部材22の上下方向)に延びる縦片部47aと、中子左右方向Yに延びる横片部47bとを有して、L字状に形成されている。尚、受け部材47がL字状に形成されているのは、型開き時に、中子3が可動型2に対して中子前後方向Xに前進、後退する際に、中子3が通過できるようにするためである。
図7及び
図8において、縦片部47aは紙面手前側にあるため二点鎖線で示しており、同様に、第2支持部材22の側壁部26も紙面手前側にあるため二点鎖線で示している。
【0040】
図8に型締め状態を示している。中子ダイス3aの前面(キャビティを画成している面)には溶湯から大きな圧力が作用する。
図8において、圧力を集中荷重とした場合を矢印Pで示している。その圧力は、中子前後方向Xの後側に向かう方向であり、中子3を後退させる要因となる。また、この圧力を集中荷重とした場合の作用点(矢印Pの位置)は、第1及び第2中子合わせ面11,31よりも型締め方向Zの可動型2側にある。そのため、中子3には、矢印Mで示しているように、係合凹部13及び係合凸部32の角48を支点としてモーメントが作用することになる。
【0041】
これに対して、中子3は、ベース支持面14aで支持されるのみならず、第2支持部材22の延長支持面14bによっても支持される。そのため、中子3に圧力が作用しても、中子3の後退が確実に阻止されることになり、且つ、モーメントMによる中子3の回動、傾きも阻止されることになる。また、第2支持部材22が左右一対設けられているので、中子3を中子左右方向Yに均等に支持することができる。
【0042】
特に、第2支持部材22が可動ホルダ2bまで達していて可動ホルダ2bの受け部材47によって中子前後方向Xの後側から支持される。そのため、固定ホルダ1bと可動ホルダ2bが左右一対の第2支持部材22によって連結され、中子3が第2支持部材22を介して固定ホルダ1bと可動ホルダ2bの両方によって支持されることになる。従って、中子3の後退が確実に阻止されることになる。
【0043】
また、第2支持部材22の支持壁部25の厚さは可動型2に向けて徐々に薄くなっているが、側壁部26が設けられて側壁部26が支持壁部25を補強する。そのため、第2支持部材22の突出部22bにおける強度を十分に確保することができる。特に、側壁部26の中子前後方向Xの幅が可動型2に向けて徐々に広くなっていて、第2支持部材22の先端部において最も幅広となっているので、第2支持部材22の先端部における強度を十分に確保することができる。
【0044】
更に、嵌合凹部28に第2支持部材22が嵌り込んでいるので、第2支持部材22を固定ホルダ1bに強固に取り付けることができる。特に、嵌合凹部28の側方延長部28aに第2支持部材22の側壁部26が嵌り込むので、第2支持部材22が中子前後方向Xに揺動しにくく、固定ホルダ本体20にしっかりと保持されることになる。
【0045】
尚、本実施形態では、固定ホルダ1bに別体の第1支持部材21及び第2支持部材22が設けられたが、中子支持面14が固定ホルダ1bに一体に設けられてもよい。同様に、中子ホルダ3bに別体の第1当接部材41及び第2当接部材42が設けられたが、当接面34が中子ホルダ3bに一体に設けられてもよい。また、可動ホルダ2bに別体の受け部材47が設けられたが、可動ホルダ2bが直接に第2支持部材22を支持してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 固定型
1a 固定ダイス
1b 固定ホルダ
2 可動型
2a 可動ダイス
2b 可動ホルダ
3 中子
3a 中子ダイス
3b 中子ホルダ
10 第1主合わせ面
11 第1中子合わせ面
12 溝
13 係合凹部
14 中子支持面
14a ベース支持面
14b 延長支持面
20 固定ホルダ本体(固定型本体)
21 第1支持部材
22 第2支持部材
22a 根元部
22b 突出部
23 第1傾斜面
24 土台部
25 支持壁部
26 側壁部
27 第2傾斜面
28 嵌合凹部
28a 側方延長部
30 第2主合わせ面
31 第2中子合わせ面
32 係合凸部
33 隙間
34 当接面
34a ベース当接面
34b 延長当接面
41 第1当接部材
42 第2当接部材
43 第3傾斜面
44 第4傾斜面
45 受け入れ凹部
46 中子摺動面
47 受け部材
47a 縦片部
47b 横片部
48 角
X 中子前後方向
Y 中子左右方向
Z 型締め方向