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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041263
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】運動変換機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20240319BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F16H25/24 A
F16H25/20 E
F16H25/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145975
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 進
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB21
3J062AC07
3J062BA12
3J062CD02
3J062CD23
3J062CD45
3J062CD59
(57)【要約】
【課題】機構全体の小型化及び軽量化を図ることができ、設置場所及び使用形態の自由度を向上させることができる運動変換機構を提供する。
【解決手段】運動変換機構1は、柔軟軸2及び軸ガイド3を備える。柔軟軸2は、軸ガイド3の内孔3aを貫通して延びており、軸ガイド3のピンガイド12には、ニードルピン11が回動自在に嵌合している。ニードルピン11の一端部は、柔軟軸2の溝2aに嵌合し、他端部は、ボール13及びねじ14によって、ニードルピン11の軸線周りに回動自在に保持されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動を直線運動に変換する運動変換機構であって、
外周面が断面円形に構成され、らせん状の溝が延設方向に沿って延びるように、前記外周面に形成された第1運動変換部材と、
軸線方向に貫通する第1貫通孔と、前記第1貫通孔と外周面との間において径方向に延びる第2貫通孔とを有し、前記第1貫通孔に前記第1運動変換部材が貫通した状態で前記第1運動変換部材を保持する第2運動変換部材と、
前記第2運動変換部材の前記第2貫通孔に回動自在に嵌合し、一端部が前記第1運動変換部材の前記溝に嵌合するピンと、
当該ピンの他端部を、当該ピンの軸線周りに回動自在に保持する保持部材と、
を備えていることを特徴とする運動変換機構。
【請求項2】
請求項1に記載の運動変換機構において、
前記第1運動変換部材は、当該第1運動変換部材の軸線が曲線状に弾性変形可能に構成されていることを特徴とする運動変換機構。
【請求項3】
請求項2に記載の運動変換機構において、
前記第1運動変換部材は、無端の環状に構成されていることを特徴とする運動変換機構。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の運動変換機構において、
前記第2運動変換部材は、当該第2運動変換部材の中心軸線を間にして互いに対向する一対の第2貫通孔を第2貫通孔群として、1つ以上の第2貫通孔群を有しており、
当該1つ以上の第2貫通孔群の前記第2貫通孔には、前記ピンが嵌合しており、
前記保持部材は、前記ピン毎に設けられていることを特徴とする運動変換機構。
【請求項5】
請求項4に記載の運動変換機構において、
前記第2運動変換部材には、複数の前記第2貫通孔群が設けられており、
当該複数の第2貫通孔群の各々は、前記第2運動変換部材の前記中心軸線に沿って互いに間隔を存するように配置されていることを特徴とする運動変換機構。
【請求項6】
請求項4に記載の運動変換機構において、
前記第2運動変換部材には、複数の前記第2貫通孔群が設けられており、
当該複数の第2貫通孔群は、前記第2運動変換部材の前記中心軸線周りの回転対称性を有するように配置された1つ以上の第2貫通孔群を含んでいることを特徴とする運動変換機構。
【請求項7】
請求項5に記載の運動変換機構において、
前記複数の第2貫通孔群は、前記第2運動変換部材の中心軸線に直交する平面に投影したときに回転対称性を有するように配置されていることを特徴とする運動変換機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動を直線運動に変換する運動変換機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動変換機構として、特許文献1に記載されたものが知られている。この運動変換機構は、ボールねじタイプのものであり、ナット、ねじ軸及びボールなどを備えている。この運動変換機構では、ボールがねじ軸及びナットのねじ溝に嵌合しており、例えば、ねじ軸がその回転軸線周りに回転した際、ボールがねじ軸及びナットのねじ溝に沿って転動するのに伴い、ナットが直線運動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-85702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の運動変換機構によれば、構造上の理由により、機構全体の小型化が困難である。特に、ボール及びボールが転動するねじ溝において、高い加工精度が要求される関係上、これらを小型化するのが困難である。さらに、ナットが直線状のねじ軸上を移動する関係上、ねじ軸の長さ及び剛性が必要になる。以上の理由により、機構全体のサイズが大型化してしまうとともに、重量が増大してしまう。その結果、設置場所及び使用形態が制限されてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、機構全体の小型化及び軽量化を図ることができ、設置場所及び使用形態の自由度を向上させることができる運動変換機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転運動を直線運動に変換する運動変換機構1であって、外周面が断面円形に構成され、らせん状の溝2aが延設方向に沿って延びるように、外周面に形成された第1運動変換部材(柔軟軸2、駆動ベルト2x)と、軸線方向に貫通する第1貫通孔(内孔3a)と、第1貫通孔と外周面との間において径方向に延びる第2貫通孔(内孔12a)とを有し、第1貫通孔に第1運動変換部材が貫通した状態で第1運動変換部材を保持する第2運動変換部材(軸ガイド3)と、第2運動変換部材の第2貫通孔に回動自在に嵌合し、一端部が第1運動変換部材の溝に嵌合するピン(ニードルピン11)と、ピンの他端部を、ピンの軸線周りに回動自在に保持する保持部材(ボール13、ねじ14)と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この運動変換機構によれば、第1運動変換部材が第2運動変換部材の第1貫通孔を貫通した状態で第2運動変換部材によって保持されており、この第2運動変換部材の第2貫通孔には、ピンが回動自在に嵌合している。そして、ピンは、その一端部が第1運動変換部材の溝に嵌合しているとともに、ピンの軸線周りに回動自在の状態で保持部材に保持されている。
【0008】
それにより、例えば、第2運動変換部材が第1運動変換部材に対して回転運動した際、ピンは、第1運動変換部材の溝との摩擦に起因して自身の軸線周りに回転しながら、第1運動変換部材を第2運動変換部材の軸線方向に押圧することになる。それに伴い、第1運動変換部材は、第2運動変換部材に対して直線的に移動する。すなわち、第1運動変換部材に対する第2運動変換部材の回転運動が第1運動変換部材の直線運動に変換されることになる。
【0009】
一方、第1運動変換部材が第2運動変換部材に対して回転運動した際、ピンは、第1運動変換部材の溝との摩擦に起因して自身の軸線周りに回転しながら、第2運動変換部材を第2運動変換部材の軸線方向に押圧することになる。それに伴い、第2運動変換部材は、第1運動変換部材に対して直線的に移動する。すなわち、第2運動変換部材に対する第1運動変換部材の回転運動が第2運動変換部材の直線運動に変換されることになる。
【0010】
以上のように、この運動変換機構によれば、従来のボールねじと異なり、ボール及びボールが転動するねじ溝を用いることなく、第1運動変換部材の溝及び第2運動変換部材の第2貫通孔に嵌合するピンによって、回転運動を直線運動に変換する構成を実現することができる。ここで、ピンは、ボールと比較して、加工が容易でかつ小型化可能であることによって、機構全体の小型化及び軽量化を実現することができ、設置場所及び使用形態の自由度を向上させることができる。
【0011】
これに加えて、ピンが、第1運動変換部材の溝との摩擦に起因して自身の軸線周りに回転しながら、第1運動変換部材を第2運動変換部材の軸線方向に押圧することによって、回転運動を直線運動に変換することができ、それにより、変換動作時のトルク伝達を高効率で実現することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の運動変換機構において、第1運動変換部材(柔軟軸2、駆動ベルト2x)は、第1運動変換部材の軸線が曲線状に弾性変形可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
この運動変換機構によれば、第1運動変換部材は、第1運動変換部材の軸線が曲線状に弾性変形可能に構成されているので、第1運動変換部材の3次元的な形状を自在に変更できる。それにより、機構全体をより小型化できるとともに、設置場所及び使用形態の自由度をさらに向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の運動変換機構において、第1運動変換部材(駆動ベルト2x)は、無端の環状に構成されていることを特徴とする。
【0015】
この運動変換機構によれば、第1運動変換部材が、無端の環状に構成されているので、回転運動を直線運動に変換する動作を連続的かつ無制限に実行することができる。それにより、高い汎用性を確保することができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載の運動変換機構において、第2運動変換部材は、第2運動変換部材の中心軸線を間にして互いに対向する一対の第2貫通孔を第2貫通孔群として、1つ以上の第2貫通孔群を有しており、1つ以上の第2貫通孔群の第2貫通孔には、ピンが嵌合しており、保持部材は、ピン毎に設けられていることを特徴とする。
【0017】
この運動変換機構によれば、保持部材がピン毎に設けられていることにより、第2運動変換部材の中心軸線を間にして互いに対向する一対の第2貫通孔には、2つのピンがそれぞれ嵌合していることになる。それにより、これらの対向するピンが第1運動変換部材の中心に向かって第1運動変換部材の溝に径方向の両側から嵌合することによって、第2運動変換部材と第1運動変換部材の間での運動変換を安定して実行することができる。同じ理由により、第1運動変換部材及び第2運動変換部材の間で軸線方向に力が作用した際、1つのピンが第1運動変換部材の溝に嵌合する場合と比べて、一対のピンが第1運動変換部材の溝から抜けにくくなることで、第2運動変換部材と第1運動変換部材の間での運動変換を安定して実行することができる。
【0018】
さらに、1つ以上の第2貫通孔群が第2運動変換部材に設けられているので、複数の第2貫通孔群が第2運動変換部材に設けられている場合には、その分、第2運動変換部材と第1運動変換部材の間での運動変換の安定性をさらに向上させることができる。なお、本明細書における「一対の第2貫通孔が互いに対向している」ことは、一対の第2貫通孔の中心軸が一致している状態に限らず、両者の中心軸が若干ずれた状態にあることを含む。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の運動変換機構において、第2運動変換部材には、複数の第2貫通孔群が設けられており、複数の第2貫通孔群の各々は、第2運動変換部材の中心軸線に沿って互いに間隔を存するように配置されていることを特徴とする。
【0020】
この運動変換機構によれば、複数の第2貫通孔群の各々が、第2運動変換部材の中心軸線に沿って互いに間隔を存するように配置されている。それにより、第2運動変換部材の中心軸線に沿う方向の複数の位置において、一対の対向するピンが第1運動変換部材の中心に向かって第1運動変換部材の溝に両側から嵌合することになる。その結果、第2運動変換部材と第1運動変換部材の間での運動変換の安定性をさらに向上させることができ、変換動作時のトルク伝達効率をさらに高めることができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の運動変換機構において、第2運動変換部材には、複数の第2貫通孔群が設けられており、複数の第2貫通孔群は、第2運動変換部材の中心軸線周りの回転対称性を有するように配置された1つ以上の第2貫通孔群を含んでいることを特徴とする。
【0022】
この運動変換機構によれば、複数の第2貫通孔群は、第2運動変換部材の中心軸線周りの回転対称性を有するように配置された1つ以上の第2貫通孔群を含んでいる。それにより、第2運動変換部材の中心軸線周りの複数の位置において、一対の対向するピンが、第1運動変換部材の中心に向かって径方向の両側から、第1運動変換部材の溝に嵌合することになる。その結果、動力の伝達部位が第2運動変換部材の周方向に沿う回転対称の複数の箇所に分散配置されることで、第2運動変換部材と第1運動変換部材の間での運動変換の安定性をさらに向上させることができ、変換動作時のトルク伝達効率をさらに高めることができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項5に記載の運動変換機構において、複数の第2貫通孔群は、第2運動変換部材の中心軸線に直交する平面に投影したときに回転対称性を有するように配置されていることを特徴とする。
【0024】
この運動変換機構によれば、複数の第2貫通孔群は、第2運動変換部材の中心軸線に直交する平面に投影したときに回転対称性を有するように配置されている。それにより、第2運動変換部材の中心軸線に沿う方向の複数の位置と、第2運動変換部材の周方向に沿う回転対称の複数の位置とにおいて、一対の対向するピンが第1運動変換部材の中心に向かって第1運動変換部材の溝に両側から嵌合することになる。それにより、動力の伝達部位が、第2運動変換部材の中心軸線方向の複数の箇所と、第2運動変換部材の周方向に沿う回転対称の複数の箇所に分散配置されることで、第2運動変換部材と第1運動変換部材の間での運動変換の安定性をさらに向上させることができ、変換動作時のトルク伝達効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る運動変換機構の構成を示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面を示す図である。
図3】ピン機構を示す断面図である。
図4図3のA部の拡大図である。
図5】運動変換機構を適用したリンク機構を示す図である。
図6】リンク機構の出力リンクとアクチュエータ部の配置の変形例である。
図7】リンク機構の出力リンクとアクチュエータ部の配置の他の変形例である。
図8】ニードルピンの変形例を示す断面図である。
図9図8のB部の拡大図である。
図10】ニードルピンの他の変形例を示す断面図である。
図11】ピン機構の変形例を示す図である。
図12】ピン機構の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る運動変換機構について説明する。図1~2に示すように、本実施形態の運動変換機構1は、柔軟軸2及び軸ガイド3を備えている。なお、本実施形態では、柔軟軸2が第1運動変換部材に相当し、軸ガイド3が第2運動変換部材に相当する。
【0027】
柔軟軸2は、金属製のばね用丸線をらせん状に密着巻きした丸線コイルばねタイプのものであり、一層構造を有している。それにより、柔軟軸2は、その軸線が曲線状に弾性変形可能に構成されており、柔軟軸2の外周面には、らせん状の溝2aが全体にわたって形成されている(図2参照)。
【0028】
軸ガイド3は、金属製の円筒状のものであり、軸線方向に貫通する内孔3aを有している(図2参照)。この内孔3aは、柔軟軸2の外形よりも若干大径に構成されており、柔軟軸2は、この軸ガイド3の内孔3aに嵌合しながら軸ガイド3を貫通した状態で延びている。それにより、柔軟軸2は、軸ガイド3に保持されている。なお、本実施形態では、内孔3aが第1貫通孔に相当する。
【0029】
また、この軸ガイド3には、計20個(図2に6個のみ図示)の取付孔3bが形成されており、これら20個の取付孔3bの各々には、ピン機構10が設けられている。すなわち、軸ガイド3には、計20個(図1に16個のみ図示)のピン機構10が設けられている。
【0030】
各取付孔3bは、断面円形で、軸ガイド3を貫通するように、軸ガイド3の外周面と内孔3aとの間において軸ガイド3の径方向に延びている。各取付孔3bの周面には、雌ねじが所定長さで形成されている。
【0031】
また、軸ガイド3では、4つの取付孔3bが軸ガイド3の軸線方向の同じ位置において軸ガイド3の周方向に沿って互いに等間隔で配置されている。すなわち、4つの取付孔3bが、軸ガイド3の軸線方向から見て十字状に配置されている。さらに、軸ガイド3には、これら4つの取付孔3bを1つの取付孔群として、計5つの取付孔群が設けられている。
【0032】
これらの5つの取付孔群は、軸ガイド3の軸線方向に互いに等間隔で並ぶとともに、隣り合う2つの取付孔群は、軸ガイド3の軸線周りに互いに45゜分ずれた状態で配置されている。
【0033】
また、ピン機構10は、図3に示すように、ニードルピン11、ピンガイド12、ボール13、ねじ14及びナット15などを備えている。
【0034】
なお、本実施形態では、ニードルピン11がピンに相当し、ボール13及びねじ14が保持部材に相当する。以下のピン機構10の説明では、軸ガイド3の径方向の内側を「内側」といい、軸ガイド3の径方向の外側を「外側」という。
【0035】
ニードルピン11は、金属製で細長の円柱状に形成されている。このニードルピン11の内側端部11aは、円錐状に形成されており、柔軟軸2の外周面の溝2aに嵌合している。
【0036】
また、ニードルピン11の外側端面には、内側に向かって凸の凹部11bが形成されている。この凹部11bの表面は、ボール13の外周面と同じ曲面状に構成されている。
【0037】
ピンガイド12は、円筒状に形成されており、その外周面には、雄ねじが形成されている。この雄ねじは、ピンガイド12の外側端よりも内側寄りの所定部位からピンガイド12の内側の先端部まで延びている。ピンガイド12は、その雄ねじが取付孔3bの雌ねじに噛み合うことにより、その内側端部が柔軟軸2との間に間隙を存する状態で、軸ガイド3に取り付けられている。
【0038】
軸ガイド3の外周面には、取付孔3bと同心の座ぐり穴3cが形成されており、ナット15は、その雌ねじがピンガイド12の外周面の雄ねじに噛み合あっているとともに、座ぐり穴3cの底面に接するように締め込まれている。それにより、ピンガイド12は、このナット15を介して、軸ガイド3との間の螺合が緩まないように堅固に固定されている。
【0039】
一方、ニードルピン11は、ピンガイド12の内孔12aに嵌合しており、ニードルピン11とピンガイド12の間にはグリス(図示せず)が充填されている。ピンガイド12の内孔12aの外側の部位には、雌ねじが形成されている。ねじ14は、その雄ねじがピンガイド12の雌ねじに噛み合うことにより、ワッシャ16を介して、ピンガイド12に取り付けられている。このねじ14の先端面は、平らに形成されている。
【0040】
ボール13は、金属で構成され、その表面がねじ14の先端面とピンガイド12の凹部に当接した状態で、両者の間に挟持されている。それにより、上述したワッシャ16の厚さを変更することにより、ニードルピン11の内側端部11aが柔軟軸2側に突出する量を調整できるように構成されている。
【0041】
以上の構成により、ピン機構10では、ニードルピン11は、ピンガイド12、ボール13及びねじ14によって、その軸線周りに回動自在の状態で保持(支持)されている。また、互いに対向する一対の取付孔3bに設けられた一対のピン機構10の場合、一対のニードルピン11は、柔軟軸2の1ピッチ分ずれた位置で溝2aに嵌合することになる関係上、両者の軸心は若干ずれた状態になる。
【0042】
また、前述したように、5つの取付孔群では、隣り合う2つの取付孔群が軸ガイド3の軸線周りに互いに45゜分ずれた状態で配置されており、計20個の取付孔3bの各々には、ピンガイド12が取り付けられている。それにより、計20個のピンガイド12の内孔12aは、これらを軸ガイド3の軸線方向に直交する平面上に投影した場合、回転対称性(8回対称)を有する状態になる。
【0043】
なお、本実施形態では、ピンガイド12が第2運動変換部材に相当し、ピンガイド12の内孔12aが第2貫通孔に相当し、取付孔群におけるピンガイド12の内孔12aが第2貫通孔群に相当する。
【0044】
次に、以上のように構成された運動変換機構1の動作について説明する。まず、柔軟軸2をその軸線方向にのみ移動可能な状態に保持しながら、軸ガイド3を自身の軸線周りに回転させた場合、軸ガイド3の回転に伴い、ニードルピン11は柔軟軸2の溝2aに沿って移動する。
【0045】
その際、ニードルピン11は、溝2aの壁面に当接し、自身の軸線周りに回転しながら柔軟軸2を軸線方向に押圧する。それに伴い、柔軟軸2が自身の軸線方向に移動することになる。すなわち、軸ガイド3の回転運動を柔軟軸2の直線運動に変換することができる。
【0046】
一方、軸ガイド3をその軸線方向にのみ移動可能な状態に保持しながら、柔軟軸2を自身の軸線周りに回転させた場合、柔軟軸2の回転に伴い、ニードルピン11は柔軟軸2の溝2aに案内されることになる。
【0047】
その際、ニードルピン11は、溝2aの壁面に押圧されながら、自身の軸線周りに回転する。それに伴い、軸ガイド3が自身の軸線方向に移動することになる。すなわち、柔軟軸2の回転運動を軸ガイド3の直線運動に変換することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態の運動変換機構1によれば、従来のボールねじと異なり、ボール及びボールが転動するねじ溝を用いることなく、溝2aを有する柔軟軸2及びその溝2aに嵌合するニードルピン11によって、回転運動を直線運動に変換する構成を実現することができる。ここで、ニードルピン11は、ボールと比較して、加工が容易でかつ小型化可能であることによって、機構全体の小型化及び軽量化を実現することができ、設置場所及び使用形態の自由度を向上させることができる。
【0049】
また、ニードルピン11が、柔軟軸2の溝2aとの摩擦に起因して、自身の軸線周りに回転しながら柔軟軸2を軸ガイド3の軸線方向に押圧することによって、回転運動を直線運動に変換することができる。それにより、変換動作時のトルク伝達を高効率で実現することができる。
【0050】
さらに、柔軟軸2は、柔軟軸2の軸線が曲線状に弾性変形可能に構成されているので、柔軟軸2の3次元的な形状を自在に変更できることによって、機構全体をより小型化できるとともに、設置場所及び使用形態の自由度をさらに向上させることができる。
【0051】
また、1つの取付孔群における4つのピン機構10のニードルピン11が、軸ガイド3の軸線方向から見て十字状に配置されていることにより、互いに対向する一対のニードルピン11,11を1つのニードルピン群とした場合、2つのニードルピン群が、軸ガイド3の軸線方向から見て十字状に配置され、柔軟軸2の中心に向かって柔軟軸2の溝2aに径方向の両側から嵌合する状態となる。
【0052】
さらに、軸ガイド3には、5つの取付孔群が軸ガイド3の軸線方向に等間隔で設けられているので、軸ガイド3の軸線方向の5箇所において、2つのニードルピン群が、柔軟軸2の中心に向かって柔軟軸2の溝2aに径方向の両側から嵌合する状態となる。
【0053】
また、前述したように、計20個のピンガイド12の内孔12aは、これらを軸ガイド3の軸線方向に直交する平面上に投影した場合、回転対称性(8回対称)を有する状態になっていることにより、計20個のニードルピン11も、これらを軸ガイド3の軸線方向に直交する平面上に投影した場合、回転対称性(8回対称)を有する状態になる。
【0054】
以上の構成により、軸ガイド3及び柔軟軸2の一方に対して軸線方向に衝撃又は荷重が作用したときでも、20個のニードルピン11の柔軟軸2の溝2aに対する嵌合が外れにくくなる。それにより、前述したように、機構全体の小型化及び軽量化と、設置場所及び使用形態の自由度の向上とを確保しながら、軸ガイド3と柔軟軸2の間での運動変換の安定性を向上させることができ、変換動作時のトルク伝達効率を高めることができる。
【0055】
次に、図5を参照しながら、本発明の運動変換機構をリンク機構50に応用した例について説明する。このリンク機構50は、出力リンク51及びアクチュエータ部52を備えている。これらの出力リンク51及びアクチュエータ部52は、図示しないが、平板状に構成され、互いに平行に配置されている。
【0056】
出力リンク51は、ガイドプーリ51aを備えており、出力リンク51及びガイドプーリ51aは、図中の奥行き方向に延びる軸線周りに一体に回動可能に構成されている。このガイドプーリ51aには、軸ガイド3が固定されている。
【0057】
また、アクチュエータ部52には、2つの軸ガイド3,3、ガイドプーリ52a及びモータ機構52bなどが設けられている。ガイドプーリ52aは、図中の奥行き方向に延びる軸線周りに回動可能な状態で、アクチュエータ部52に設けられている。
【0058】
また、2つの軸ガイド3,3の各々は、その軸線周りに回動可能な状態で、アクチュエータ部52に取り付けられている。モータ機構52bの回転軸は、図中の左右方向に延びており、この回転軸の両端には、2つの回転プーリ52c,52cがそれぞれ設けられている。これらの回転プーリ52c,52cは、ベルト52d,52dを介して、2つの軸ガイド3,3に連結されている。
【0059】
モータ機構52bは、モータとギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、モータの運転時、2つの回転プーリ52c,52cが同一速度で逆回転するように構成されている。それにより、モータ機構52bの運転時、2つの軸ガイド3,3は、モータ機構52bによって、互いに逆回転するように駆動される。
【0060】
さらに、このリンク機構50では、駆動ベルト2x(第1運動変換部材)が、2つのガイドプーリ51a,52aに巻き掛けられている。この駆動ベルト2xは、柔軟軸2を無端の環状に構成したものであり、アクチュエータ部52の2つの軸ガイド3と出力リンク51の軸ガイド3を通りながら、2つの小径のガイドプーリ53,53を介して、2つのガイドプーリ51a,52aに巻き掛けられている。
【0061】
以上のように構成されたリンク機構50によれば、モータ機構52bによって、アクチュエータ部52の2つの軸ガイド3,3が逆回転するように駆動されるのに伴い、駆動ベルト2xが2つの軸ガイド3,3によって軸線方向に移動するように駆動される。それにより、駆動ベルト2xが、出力リンク51の軸ガイド3を介してガイドプーリ51aを回転させることで、出力リンク51が回転駆動される。
【0062】
この場合、駆動ベルト2xが無端の環状に構成されているので、2つの軸ガイド3,3の回転運動を、駆動ベルト2xの直線運動に変換する動作を連続的かつ無制限に実行することができる。
【0063】
なお、駆動ベルト2xが弾性変形可能に構成されているので、出力リンク51及びアクチュエータ部52の間にいくつかのガイドプーリを設けることによって、出力リンク51及びアクチュエータ部52の配置及び形状は自在に変更することができる。
【0064】
例えば、出力リンク51及びアクチュエータ部52を横方向(図5の上下方向)から見た場合において、図6に示すように、出力リンク51及びアクチュエータ部52が互いに直交する状態で配置することも可能である。また、図7に示すように、アクチュエータ部52を、これが出力リンク51に対して90゜折れ曲がった後、さらに90゜折れ曲がる形状にすることも可能である。
【0065】
なお、運動変換機構1において、実施形態のニードルピン11に代えて、図8~9に示すニードルピン11Aを用いてもよい。このニードルピン11Aの場合、その内側端部11aのみがニードルピン11と異なるように構成されている。すなわち、このニードルピン11Aの内側端部11aは、ニードルピン11と同様に円錐状に形成されているとともに、その先端側には、溝11cが周方向に沿って形成されている。この溝11cは、その表面が柔軟軸2の溝2aの壁面(表面)と同一の曲面形状に構成されている。
【0066】
以上の構成により、このニードルピン11Aの場合、実施形態のニードルピン11と比べて、柔軟軸2の溝2aの壁面との接触面積を大きくすることができる。それにより、軸ガイド3及び柔軟軸2の一方に対して軸線方向に衝撃又は荷重が作用したときでも、ニードルピン11の柔軟軸2の溝2aに対する嵌合をさらに外れにくくすることができる。その結果、軸ガイド3と柔軟軸2の間での運動変換の安定性をさらに向上させることができ、変換動作時のトルク伝達効率をさらに高めることができる。
【0067】
また、実施形態のニードルピン11に代えて、図10に示すニードルピン11Bを用いてもよい。ニードルピン11Bの場合、内側端部11dの中心部が内側に突出する先細の形状になっているとともに、内側端部11dの表面が柔軟軸2の溝2aの壁面に密着するような曲面形状に形成されている。
【0068】
それにより、このニードルピン11Bの場合、上記ニードルピン11Aと同様に、実施形態のニードルピン11よりも、柔軟軸2の溝2aの壁面との接触面積を大きくすることができ、ニードルピン11Aと同様の上述した作用効果を得ることができる。
【0069】
さらに、運動変換機構1において、実施形態のピン機構10に代えて、図11に示すピン機構10Cを用いてもよい。このピン機構10Cの場合、図11図3を比較すると明らかなように、ボール13が省略されている点と、ニードルピン11に代えて、ニードルピン11Cを備えている点が、実施形態のピン機構10と異なっている。
【0070】
このニードルピン11Cの場合、ニードルピン11と比較して、外側端部11eが半球面状に形成されている点と、この外側端部11eがねじ14の先端面に当接している点が異なっている。この場合、ねじ14が保持部材に相当する。
【0071】
以上の構成により、ニードルピン11Cは、ねじ14及びピンガイド12によって、自身の軸線周りに回動自在に保持されている。したがって、このピン機構10Cを用いた場合でも、実施形態のピン機構10を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
さらに、運動変換機構1において、実施形態のピン機構10に代えて、図12に示すピン機構10Dを用いてもよい。このピン機構10Dの場合、図12図3を比較すると明らかなように、ボール13が省略されている点と、ニードルピン11に代えて、ニードルピン11Dを備えている点が、実施形態のピン機構10と異なっている。
【0073】
このニードルピン11Dの場合、外側端部11fが円錐状に形成され、この外側端部11fがねじ14の先端面に当接している。この場合、ねじ14が保持部材に相当する。
【0074】
以上の構成により、ニードルピン11Dは、ねじ14及びピンガイド12によって、自身の軸線周りに回動自在に保持されている。したがって、このピン機構10Dを用いた場合でも、実施形態のピン機構10を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
なお、実施形態は、ニードルピン11が、第2貫通孔としてのピンガイド12の内孔12aに嵌合するように構成した例であるが、これに代えて、ニードルピン11が軸ガイド3に形成された第2貫通孔に直接、嵌合するように構成してもよい。
【0076】
また、実施形態は、第1運動変換部材として、柔軟軸2を用いた例であるが、本発明の第1運動変換部材は、これに限らず、外周面が断面円形に構成され、らせん状の溝が延設方向に沿って延びるように、外周面に形成されたものであればよい。例えば、第1運動変換部材として、外周面が円柱状で、らせん状の溝が延設方向に沿って延びるように外周面に形成された棒状の部材を用いてもよい。
【0077】
さらに、実施形態は、柔軟軸2として、1層のコイルばねタイプのものを用いた例であるが、これに代えて、2層又は3層構造のコイルばねタイプのものを用いてもよい。
【0078】
一方、実施形態は、1つのピン機構群として、4つのピン機構10を軸ガイド3の外周面に周方向に沿って等間隔(90゜間隔)で配置した例であるが、これに代えて、1つのピン機構群として、偶数個又は奇数個のピン機構10を、軸ガイド3の外周面に周方向に沿って等間隔で配置してもよい。
【0079】
また、1つのピン機構10のみを軸ガイド3に配置するように構成してもよい。さらに、1つのピン機構10のみを軸ガイド3に配置し、このピン機構10のニードルピン11に対向するように、軸ガイド3の内孔3aに突起を配置するとともに、1つのニードルピン11及び突起が柔軟軸2の溝2aに嵌合するように構成してもよい。
【0080】
また、1つのピン機構10及び1つ突起を1個の係止構造として、偶数個又は奇数個の係止構造を、軸ガイド3の周方向に沿って軸ガイド3の外周面に等間隔で配置してもよく、これに代えて又はこれに加えて、複数個の係止構造を、軸ガイド3の軸線方向に沿って間隔を存するように配置してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 運動変換機構
2 柔軟軸(第1運動変換部材)
2a 溝
3 軸ガイド(第2運動変換部材)
3a 内孔(第1貫通孔)
11 ニードルピン(ピン)
12 ピンガイド(第2運動変換部材)
12a 内孔(第2貫通孔)
13 ボール(保持部材)
14 ねじ(保持部材)
2x 駆動ベルト(第1運動変換部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12