(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041264
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】物品管理システム
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B65D25/20 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145977
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】植田 良行
(72)【発明者】
【氏名】坂上 充敏
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA20
3E062AB14
3E062AB20
3E062AC02
3E062BA07
3E062BB06
3E062BB10
3E062DA08
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で物品に対する回転操作が行われたことを検出できる。
【解決手段】本発明のある態様は、円筒状の容器本体と、第1位置と第2位置の間で前記容器本体の外周を摺動可能な円筒状の摺動部材と、を有する物品に対する物品管理システムである。このシステムは、容器本体の周面、及び摺動部材の周面の一方に取り付けられる通信デバイスと、容器本体の周面、及び摺動部材の周面の他方に取り付けられる電波遮蔽部材と、無線装置による通信デバイスとの通信可否の結果を取得し、通信可否の結果に基づいて、摺動部材が第1位置又は第2位置のいずれにあるか決定する制御装置と、を備える。摺動部材が第1位置にある場合には、周方向において通信デバイスと電波遮蔽部材の少なくとも一部が重なり、摺動部材が第2位置にある場合には、周方向において通信デバイスと電波遮蔽部材が重ならないように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の容器本体と、第1位置と第2位置の間で前記容器本体の外周を摺動可能な円筒状の摺動部材と、を有する物品に対する物品管理システムであって、
前記容器本体の周面、及び前記摺動部材の周面の一方に取り付けられる通信デバイスと、
前記容器本体の周面、及び前記摺動部材の周面の他方に取り付けられ、前記通信デバイスと近接したときに前記通信デバイスが発する電波を遮蔽するシート状の電波遮蔽部材と、
前記通信デバイスと無線通信を行う無線装置と、
前記無線装置による前記通信デバイスとの通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて、前記摺動部材が前記第1位置又は前記第2位置のいずれにあるか決定する制御装置と、を備え、
前記摺動部材が前記第1位置にある場合には、周方向において前記通信デバイスと前記電波遮蔽部材の少なくとも一部が重なり、
前記摺動部材が前記第2位置にある場合には、周方向において前記通信デバイスと前記電波遮蔽部材が重ならないように構成されている、
物品管理システム。
【請求項2】
前記容器本体の側面には、第1開口が形成され、
前記摺動部材の側面には、第2開口が形成され、
前記摺動部材が前記第1位置にある場合には、前記第1開口が前記摺動部材によって閉鎖され、
前記摺動部材が前記第2位置にある場合には、前記第1開口の少なくとも一部が前記第2開口によって露出し、かつ前記通信デバイスが前記第2開口によって露出する、
請求項1に記載された物品管理システム。
【請求項3】
前記通信デバイスは、前記容器本体の周面に取り付けられ、
前記電波遮蔽部材は、前記摺動部材の周面に取り付けられている、
請求項1又は2に記載された物品管理システム。
【請求項4】
前記通信デバイスは、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えた無線タグである、
請求項1又は2に記載された物品管理システム。
【請求項5】
前記通信デバイスは、UHF帯の無線タグである、
請求項1又は2に記載された物品管理システム。
【請求項6】
前記通信デバイスは、HF帯の無線タグである、
請求項1又は2に記載された物品管理システム。
【請求項7】
前記通信デバイスは、マイクロ波帯の無線タグである、
請求項1又は2に記載された物品管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば飲料用容器の蓋部が開封されたことを検知する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、容器の蓋部の開封を検知するICタグラベルが提案されている。このICタグラベルは、ラベル基材上に、蓋部が開封されたことを検知する開封検知部と、外部装置と通信可能とするアンテナコイルと、それらと電気的に接続されたICチップと、を備えている。開封検知部は、容器のプルタブに跨って備えられた開封検知部を破断可能とするスリットまたは弱め線と、蓋部が開封されたことを検知する開封検知配線と、を備えている。このICタグラベルは、開封検知部が破断したことをICチップが検知するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物品には、蓋部を開封するのではなく容器の外周にある部材を利用者が回転させることで容器内の内容物を抽出可能となるものがある。そのような物品について回転操作が行われたことを簡便な構成で検出できるようにすることは従来知られていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、簡便な構成で物品に対する回転操作が行われたことを検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、円筒状の容器本体と、第1位置と第2位置の間で前記容器本体の外周を摺動可能な円筒状の摺動部材と、を有する物品に対する物品管理システムである。
このシステムは、
前記容器本体の周面、及び前記摺動部材の周面の一方に取り付けられる通信デバイスと、
前記容器本体の周面、及び前記摺動部材の周面の他方に取り付けられ、前記通信デバイスと近接したときに前記通信デバイスが発する電波を遮蔽するシート状の電波遮蔽部材と、
前記通信デバイスと無線通信を行う無線装置と、
前記無線装置による前記通信デバイスとの通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて、前記摺動部材が前記第1位置又は前記第2位置のいずれにあるか決定する制御装置と、を備える。
前記摺動部材が前記第1位置にある場合には、周方向において前記通信デバイスと前記電波遮蔽部材の少なくとも一部が重なり、
前記摺動部材が前記第2位置にある場合には、周方向において前記通信デバイスと前記電波遮蔽部材が重ならないように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、簡便な構成で物品に対する回転操作が行われたことを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の商品管理システムの適用例を示す図である。
【
図3】一実施形態の商品管理システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の物品管理システムの一実施形態について説明する。なお、以下に記載する形態は、図面の簡単な説明により説明される図面に限定されるものではない。
本発明のある態様の第1の態様は、円筒状の容器本体と、第1位置と第2位置の間で前記容器本体の外周を摺動可能な円筒状の摺動部材と、を有する物品に対する物品管理システムである。本開示において「物品」とは、例えば商品、製品、半製品(製造途中にある中間段階の製品)、モックアップ等の有体物を意味する。
【0010】
第1の態様に係る物品管理システムは、以下の(1)~(4)を備える。
(1)前記容器本体の周面、及び前記摺動部材の周面の一方に取り付けられる通信デバイス
(2)前記容器本体の周面、及び前記摺動部材の周面の他方に取り付けられ、前記通信デバイスと近接したときに前記通信デバイスが発する電波を遮蔽するシート状の電波遮蔽部材
(3)前記通信デバイスと無線通信を行う無線装置
(4)前記無線装置による前記通信デバイスとの通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて、前記摺動部材が前記第1位置又は前記第2位置のいずれにあるか決定する制御装置
【0011】
さらに、第1の態様に係る物品管理システムでは、前記摺動部材が前記第1位置にある場合には、周方向において前記通信デバイスと前記電波遮蔽部材の少なくとも一部が重なり、前記摺動部材が前記第2位置にある場合には、周方向において前記通信デバイスと前記電波遮蔽部材が重ならないように構成されている。
【0012】
第1の態様に係る物品管理システムでは、摺動部材が第1位置にある場合、周方向において通信デバイスと電波遮蔽部材の少なくとも一部が重なるため、通信デバイスと無線装置の間の通信が不可能な状態となる。摺動部材が第2位置にある場合、周方向において通信デバイスと電波遮蔽部材が重ならないため、通信デバイスが発する電波が遮蔽されず、通信デバイスと無線装置の間の通信が可能な状態となる。そのため、物品に対する回転操作、すなわち、物品の容器本体に対する摺動部材の回転操作(第1位置と第2位置の間の回転操作)を簡便な構成で検出できる。
なお、電磁遮蔽部材とは、通信デバイスから放射される電波の周波数を、無線装置と通信ができない意図しない周波数とする部材であってもよいし、通信デバイスから放射される電波を無線装置との通信を阻害するようなノイズを重畳させる部材であってもよい。
【0013】
本発明のある態様の第2の態様は、前記容器本体の側面には、第1開口が形成され、前記摺動部材の側面には、第2開口が形成され、前記摺動部材が前記第1位置にある場合には、前記第1開口が前記摺動部材によって閉鎖され、前記摺動部材が前記第2位置にある場合には、前記第1開口の少なくとも一部が前記第2開口によって露出し、かつ前記通信デバイスが前記第2開口によって露出する、第1の態様に記載の物品管理システムである。
本発明のある態様の第2の態様によれば、容器本体に内容物が含まれているときに、摺動部材が第1位置にある場合には、第1開口が摺動部材によって閉鎖されるため、容器本体の内容物を取り出すことができない。他方、摺動部材が第2位置にある場合には、第1開口の少なくとも一部が第2開口によって露出しているため、容器本体の内容物を取り出すことができる。そのため、摺動部材を回転させることで、容器本体の内容物を取り出したり、外に漏れ出ないようにしたりすることができる。
内容物は限定しないが、例えば、調味料やガム等の食材のほか、ねじやナット等の工業製品でもよい。
【0014】
本発明のある態様の第3の態様は、前記通信デバイスは、前記容器本体の周面に取り付けられ、前記電波遮蔽部材は、前記摺動部材の周面に取り付けられている、第1又は第2の態様に記載の物品管理システムである。
本発明のある態様の第3の態様によれば、摺動部材が第1位置にあり、周方向において通信デバイスと電波遮蔽部材の少なくとも一部が重なるときに、電波遮蔽部材が通信デバイスを外側から塞ぐようになるため、より効果的に通信デバイスが発する電波を遮蔽できる。
【0015】
本発明のある態様の第4の態様では、第1から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記通信デバイスが、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えた無線タグである。本発明のある態様の第4の態様によれば、無線タグが長期間メンテナンス不要で利用可能な点で好ましい。
【0016】
本発明のある態様の第5の態様では、第1から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記通信デバイスが、UHF帯の無線タグである。本発明のある態様の第5の態様によれば、無線タグが汎用的に入手可能な点で好ましい。
【0017】
本発明のある態様の第6の態様では、第1から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記通信デバイスが、HF帯の無線タグである。本発明のある態様の第6の態様によれば、無線タグは汎用的に入手可能な点で好ましい。
【0018】
本発明のある態様の第7の態様では、第1から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記通信デバイスが、マイクロ波帯の無線タグである。本発明のある態様の第7の態様によれば、無線タグは汎用的に入手可能な点で好ましい。
【0019】
本発明の別の態様は、円筒状の容器本体と、第1位置と第2位置の間で前記容器本体の外周を摺動可能な円筒状の摺動部材と、を有する物品に対する物品管理方法である。ここで、前記容器本体の周面、及び前記摺動部材の周面の一方には、通信デバイスが取り付けられている。前記容器本体の周面、及び前記摺動部材の周面の他方には、シート状の電波遮蔽部材が取り付けられ、前記通信デバイスと近接したときに前記通信デバイスが発する電波を遮蔽する。
この物品管理方法は、以下の工程を備える。
(5)前記摺動部材が前記第1位置にある場合には、周方向において前記通信デバイスと前記電波遮蔽部材の少なくとも一部が重なり、前記通信デバイスから発する電波が遮蔽され、前記通信デバイスと無線装置の間の無線通信ができなくなる工程
(6)前記物品の利用者が前記摺動部材を回転させ、摺動部材が第2位置に位置すると、周方向において前記通信デバイスと前記電波遮蔽部材が重ならなくなり、前記通信デバイスと無線装置の間の無線通信が可能となる工程
(7)前記無線装置による前記通信デバイスとの通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて、前記摺動部材が前記第1位置又は前記第2位置のいずれにあるか決定する工程
この物品管理方法によれば、物品に対する回転操作、すなわち、物品の容器本体に対する摺動部材の回転操作(第1位置と第2位置の間の回転操作)を簡便な構成で検出できる。
【0020】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
以下の説明では、物品の一例として、消費者の家庭内や職場で適量ずつ内容物が消費される商品を挙げる。内容物としては、固形(粉末状、粒状のものも含む)のものが想定され、例えば、調味料(唐辛子、シナモンなど)やコーヒー豆(固形又粒状)、画鋲、くぎ、ねじ、ナット等である。なお、以下の説明では、「商品を消費する」ことは、当該商品に対応する内容物を消費することと同じ意味である。
【0021】
図1は、一実施形態の商品管理システムの適用例を示す図である。
図1を参照すると、商品Pには、円筒形の容器内に内容物が含まれている。商品Pを消費するとき(消費時)には、商品Pは開口33が露出した状態となり、商品Pの内容物を外に取り出すことができる。他方、商品Pを保管するとき(保管時)には、商品Pの摺動部材4を消費者が回転させることで開口33を閉じることができる。
商品PにはIoT(Internet of Things)タグT(後述する)が取り付けられており、商品Pの消費時にはタグTが露出し、商品Pの保管時にはタグTが電波遮蔽部材SMによって遮蔽される。
図1に示すように、商品Pが置かれた場所の近傍には、商品Pに取り付けられたIoTタグTと無線通信を行うための無線装置2が配置される。後述するが、無線装置2は、ネットワークを介してタグ管理サーバ(後述する)と通信可能なゲートウェイ装置である。無線装置2は、IoTタグT(以下、単に「タグT」という。)の電波出力を考慮して配置される。
【0022】
タグTの最大通信距離は、限定しないが、例えば3~10メートルの範囲である。タグTは、低電力消費の無線通信を行うように構成されており、通信プロトコルの例としては、Bluetooth(登録商標) Low Energy (以下、BLE)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等が挙げられる。以下では、BLEによる通信を行う場合を例として説明する。
タグTは、BLEの規格に準拠する場合、所定間隔毎(例えば、1~10秒程度の短時間毎)にパケットをブロードキャスト送信する。タグTが送信するパケットには、タグの識別情報であるタグIDが含まれる。
図1に示した無線装置2は、タグTとBLE通信を行う。
【0023】
一実施形態では、
図1に示したように、商品Pの消費時にはタグTが露出するため、タグTは無線装置2と無線通信が可能である。それに対して、商品Pの保管時にはタグTが電波遮蔽部材SMによって遮蔽されるため、タグTは無線装置2と無線通信が不可能となる。
【0024】
次に、
図2を参照して、商品Pの構造について説明する。
商品Pは、内容物を収容する容器本体3と、円筒状の容器本体3と、容器本体3の外周を摺動可能な円筒状の摺動部材4と、を含む2層構造からなっている。容器本体3と摺動部材4は、例えば樹脂材料で成形される。
【0025】
容器本体3は、底部にある基部31を含む。容器本体3の外周面32には、例えば接着剤によりタグTが取り付けられる。また、容器本体3の外周面32には開口33(第1開口の一例)が形成されている。容器本体3は、有底の円筒形状であり、内容物挿入孔32Hが形成されている。内容物挿入孔32Hから内容物を挿入若しくは補充することができる。外周面32には、内容物を取り出すための開口33が形成されている。
【0026】
摺動部材4は、天井部分が設けられた円筒状の部材であり、中空41Hが形成されている。摺動部材4の外周面41には、開口42(第2開口の一例)が形成されている。摺動部材4の外周面41には、電波遮蔽部材SMが例えば接着剤によって取り付けられている。
電波遮蔽部材SMは、タグTと近接したときにタグTが発する電波を遮蔽するシート状の部材である。電波遮蔽部材SMとして、例えばネーマ紙を採用できる。ネーマ紙は、透明PETフィルム、アルミニウムの蒸着層(膜)、粘着剤をこの順に積層したものであり、粘着剤により基部311の裏面に貼り付けられている。なお、ネーマ紙に代えて、ホイル紙(フォイル紙)を使用してもよい。この他、金属プレート、電波吸収シート、金属粉や磁性紛を練り込んだ塗膜を有するシートも使用可能である。
図2では、電波遮蔽部材SMを矩形としているが、その限りではない。電波遮蔽部材SMの形態は、タグTと近接したときにタグTからの電波を遮蔽することができれば如何なる形態でもよく、例えば円形形状、多角形状でもよい。また、開口33及び開口42は、図により例示した矩形に限られず、任意の形態を採ることができる。
【0027】
以下、
図1を参照し、一実施形態の商品管理システムの動作について説明する。
商品Pが保管されている状態では、商品Pの開口33が閉塞しているため、内容物が商品Pから漏れ出ることなく内容物が確実に保管される。このとき、商品Pの周方向においてタグTと電波遮蔽部材SMが重なっているため、タグTから発する電波が遮蔽され、タグTと無線装置2の無線通信が阻害される。なお、タグTが、後述するように通信用アンテナとハーベスティングアンテナを含む場合、電波遮蔽部材SMは、通信用アンテナのみを遮蔽することが好ましい。
商品Pの保管時の摺動部材4の位置は、第1位置の一例である。
【0028】
消費者が商品Pの摺動部材4を容器本体3に対して相対的に回転させると、容器本体3の開口33の少なくとも一部が摺動部材4の開口42によって露出するため、容器本体3にある内容物を開口42から取り出すことができる(つまり、商品Pを消費することができる)。このとき、商品Pの周方向においてタグTと電波遮蔽部材SMが重ならないため、タグTから発する電波が遮蔽されず、タグTと無線装置2の無線通信が可能となる。
商品Pの消費時の摺動部材4の位置は、第2位置の一例である。
一実施形態の商品管理システムでは、商品Pを消費者が消費した場合、消費した商品Pと消費した時刻に関する情報を自動的に記録できるように構成される
【0029】
図1に示した例では、タグTが容器本体3の外周面32に取り付けられ、電波遮蔽部材SMが摺動部材4の外周面42に取り付けられているため、周方向においてタグTと電波遮蔽部材SMが重なるときに、電波遮蔽部材SMがタグTを外側から塞ぐようになる。そのため、より効果的にタグTが発する電波を遮蔽できる。しかし、その限りではなく、電波遮蔽部材SMを容器本体3の外周面32に取り付け、タグTを摺動部材4の外周面42に取り付けてもよく、その場合でも同様に動作する。
【0030】
次に、
図3を参照して、一実施形態の商品管理システム1の各装置の構成を説明する。
図3は、本実施形態の商品管理システム1の各装置の内部構成を示すブロック図である。
【0031】
図3に示すように、商品管理システム1は、タグT、無線装置2、タグ管理サーバ5(制御装置の一例)、及び、管理用端末8を含む。無線装置2とタグ管理サーバ5はネットワークNWを介して通信可能であり、タグ管理サーバ5と管理用端末8がネットワークNWを介して通信可能である。ネットワークNWは限定しないが、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、移動体通信ネットワーク、インターネット等である。
無線装置2は、タグTからBLE通信によりパケットを受信するBLE無線端末として機能する。また、無線装置2は、各タグからパケットを受信すると、受信したパケットに含まれるタグIDをタグ管理サーバ5に送信する。
タグTは、定常にパケットを発信できる状況では、所定間隔毎にパケットを発信し、それに応じて無線装置2もタグIDを所定間隔毎にタグ管理サーバ5に送信する。
管理用端末8は、タグ管理サーバ5によって検出される商品Pごとの消費タイミングについての情報を取得して表示する端末であるが、このシステムにおいて必須ではない。
【0032】
図3を参照すると、タグTは、制御部11、通信用アンテナ12、ハーベスティングアンテナ13、ハーベスティング部14、電圧制御部15、及び、RF通信部16を含む。ICチップ内に、制御部11、ハーベスティング部14、及び、電圧制御部15、RF通信部16が実装される。
【0033】
制御部11は、マイクロプロセッサとメモリ111を有し、タグTの全体を制御する。メモリ111は、RAM(Random Access Memory)及び/又はROM(Read Only Memory)であり、マイクロプロセッサによって実行されるプログラムのほか、タグTに固有の識別情報であるタグIDを記憶する。
【0034】
ハーベスティング部14は、ハーベスティングアンテナ13が受信する周囲環境の電波(例えば周囲の無線通信による電波)に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のキャパシタ142に貯蔵する。本実施形態では、ハーベスティング部14は、例えばハーベスティングアンテナ13が受信した無線信号を電圧増倍器141により直流電圧に変換し、キャパシタ142に貯蔵する。電圧増倍器141は、限定しないが、例えばディクソン電圧増倍回路(チャージポンプ)である。キャパシタ142は、半導体チップ上に構成されたもの(つまりオンダイ(on-die)型のキャパシタ)でもよいし、半導体チップとは別体として形成されたものでもよい。
【0035】
ハーベスティングアンテナ13が発電のために受信する電波は、広範囲の周波数帯域において複数の異なる周波数帯の電波である。例えば、いわゆる3G~5G等の移動体通信システムで採用されている周波数帯の無線通信による電波、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格で採用されている周波数帯の無線通信による電波、ZigBee(登録商標)やThread等の通信プロトコルに代表される2.4GHz帯の無線通信による電波、RFIDで採用されている周波数帯(例えば、900MHz帯、13.56MHz帯)の無線通信による電波等が挙げられる。
なお、ハーベスティングアンテナ13は単一のアンテナである場合に限られない。例えば、ハーベスティングアンテナ13は2つの周波数帯(例えば900MHz帯(UHF帯)と2.4GHz帯)に対応したデュアルアンテナであってもよい。
【0036】
電圧制御部15は、制御部11及びRF通信部16に動作電圧を供給する。好ましくは、電圧制御部15は、キャパシタ142の電圧をモニタしており、モニタ結果に応じて電力モードを切り替える。
例えば、キャパシタ142の電圧が所定値以下である場合には、電力モードを最小限の回路のみを動作させる第1モードとし、このとき制御部11及びRF通信部16では、パケットの生成や無線信号の送信等が行われない。キャパシタ142の電圧が所定値以上まで充電された場合には、電力モードを通常の処理ルーチンを実行する第2モードとし、このとき制御部11及びRF通信部16ではパケットの生成、無線信号の送信を含む各種の処理が行われる。
【0037】
RF通信部16は、送信するパケット(ベースバンド信号)に対して所定のデジタル変調(例えばGFSK(Gaussian Frequency Shift Keying))を行った後に直交変調を行い、高周波信号(BLEの場合、2.4GHzの周波数帯の信号)を通信用アンテナ12に送出する。
通信用アンテナ12は、RF通信部16によって送出される高周波の無線信号(パケット)を送信する。
【0038】
図3に示すように、無線装置2は、制御部21、アンテナ22、RF通信部23、および、通信部24を備える。
制御部21は、マイクロプロセッサを主体として構成され、無線装置2の全体を制御する。例えば、制御部21は、タグTから受信したパケットからタグIDを取得すると、取得したタグIDをタグ管理サーバ5に送信するように、通信部24を制御する。
【0039】
RF通信部23は、アンテナ22でタグTから受信した無線信号を検波し、ベースバンド信号に変換し、所定のデジタル復調を行ってパケットを受信する。また、RF通信部23は、ビーコン信号をアンテナ22から送信するために、例えば所定のパターンのベースバンド信号を直交変調してアンテナ22に送出する。
通信部24は、タグ管理サーバ5との通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0040】
図3に示すように、タグ管理サーバ5は、例えば、制御部51、ストレージ52、及び、通信部53を備える。
制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、タグ管理サーバ5の全体を制御する。
ストレージ52は、HDD(Hard Disk Drive)等の大規模記憶装置を備え、タグデータベース(タグDB)を記憶する。図示しないが、タグデータベースには、タグTのタグIDと、当該タグTが取り付けられている商品Pの商品コードと、が関連付けられている。
通信部53は、無線装置2及び管理用端末8と通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0041】
制御部51はサーバプログラムを実行することで、各タグTが発信するタグIDを含むパケットを無線装置2が受信した場合、当該パケットに含まれるタグIDを無線装置2から取得する。
【0042】
制御部51は、各タグTのタグIDを無線装置2から取得する度に、タグデータベースを参照して、取得したタグIDに対応する商品コードを特定し、その特定結果を示す画像を生成して管理用端末8に送信する。タグIDを取得できたということは、当該タグIDに対応する商品が消費されていることを意味する。
【0043】
制御部51は、タグTが信号(パケット)を発信する頻度に基づいて、商品が消費されているか否か決定してもよい。
商品が保管されているときにタグTが電波遮蔽部材SMに近接するものの十分に接触しない場合には、タグTから発信される電波が完全には遮蔽されず、無線装置2がタグTから信号を受信することもある。その場合、タグTが信号を発信する頻度が低く、したがって無線装置2がタグTから信号を受信する頻度も低くなる。そこで、制御部51は、タグTが信号を発信する頻度が低く、それによって無線装置2からタグIDを取得する頻度が所定の閾値より低い場合には、対応する商品が保管されていると判断する。
【0044】
管理用端末8は、各商品の消費タイミングや消費頻度を観測したい場合に利用される情報処理端末であり、例えばPC(パーソナルコンピュータ)、タブレット端末やスマートフォン等である。
管理用端末8は、タグ管理サーバ5から通知される情報(例えば、無線装置2が故障していることを示す情報)や、タグ管理サーバ5から送信される画像を表示する。タグ管理サーバ5から送信される画像は、例えば商品ごとの消費タイミングや消費頻度に関する情報を含む画像である。
通信プロトコルを限定するものではないが、管理用端末8とタグ管理サーバ5は例えばHTTPSにより通信を行い、管理用端末8のウェブブラウザはタグ管理サーバ5から送信される画像を含むウェブページを表示する。
【0045】
以上説明したように、上述した商品管理システム1では、容器本体と摺動部材を有する商品の摺動部材が回転されたことを、商品に組み込まれたタグTと無線装置2との通信可否に基づいて検出するように構成されている。そのため、簡便な構成で商品に対する回転操作が行われたことを検出できる。
【0046】
一実施形態では、摺動部材が第1位置にある場合(
図1の保管時)に容器本体の内容物を取り出すための開口が閉鎖され、摺動部材が回転操作により第2位置にある場合(
図1の消費時)に容器本体の内容物を取り出すための開口が露出する。そのため、容器本体に内容物を収容する場合には、タグTと無線装置2との通信可否の検出結果に基づいて、容器本体に含まれる内容物の消費状況を実時間で捉えることができる。1回で定量の内容物を消費する場合には、内容物の消費回数(頻度)の実績に基づいて内容物の残量を予測することもできる。また、消費者の消費実態のデータを取得できることから、例えば商品のマーケティング用途等、様々な用途に当該データを活用することができる。
【0047】
以上、本発明の物品管理システムの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【0048】
通信デバイスが、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えたIoTタグである場合について説明したが、その限りではなく、UHF帯、HF帯、又は、マイクロ波帯で動作するRFIDタグであっても構わない。また、いずれの場合も、RFIDタグは、パッシブ型(電池が内蔵されていないもの)でもよいし、アクティブ型(電池が内蔵されているもの)であってもよい。
【0049】
図1に示した例では、商品Pの保管時に(つまり、摺動部材4が第1位置にあるときに)タグTと電波遮蔽部材SMが近接し、商品Pの消費時に(つまり、摺動部材4が第2位置にあるときに)タグIDと電波遮蔽部材SMが離間する場合について説明したが、その限りではない。
商品Pの保管時にタグTと電波遮蔽部材SMが離間し、商品Pの消費時にタグIDと電波遮蔽部材SMが近接するように商品Pを構成してもよい。
なお、
図1に示した構成では、データ通信量を抑制できるという利点がある。すなわち、商品Pは一般に保管状態のときの時間が長く、
図1の構成では、保管時にタグTと無線装置2が通信不可能となるため、両者の間での全体的なデータ通信量を抑制することができる。
【0050】
上記電波遮蔽部材SMとして、タグTからから出射する電波を吸収する電波吸収体を適用することもできる。
電波吸収体は限定しないが、例えば、カーボンと発泡スチロールを組み合わせたもの(発泡スチロールを基材とし、カーボンのオーム損失を利用した電波吸収材)、フェライトと無機材料を組み合わせたもの(フェライトの磁気損失を利用した電波吸収材)、カーボンと発泡ポリエチレンを組み合わせたもの、磁性体と合成ゴムを組み合わせたもの(例えば、合成ゴムにフェライト粉末を混合したものや、合成ゴムにカーボニル鉄紛を混合したもの)、フェライト焼結体、ガラスクロス補強アルミ箔と導電粘着層を組み合わせたもの、誘電材料の層を利用したもの等が挙げられる。
【符号の説明】
【0051】
1…商品管理システム
T…タグ
11…制御部
111…メモリ
12…通信用アンテナ
13…ハーベスティングアンテナ
14…ハーベスティング部
141…電圧増倍器
142…キャパシタ
15…電圧制御部
16…RF通信部
2…無線装置
21…制御部
22…アンテナ
23…RF通信部
24…通信部
P…商品
3…容器本体
31…基部
32…外周面
32H…内容物挿入孔
33…開口
4…摺動部材
41…外周面
41H…中空
42…開口
5…タグ管理サーバ
51…制御部
52…ストレージ
53…通信部
8…管理用端末
SM…電波遮蔽部材
NW…ネットワーク