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特開2024-41276端末装置の画面に表示される悪性URLの脅威判定を行うAR装置
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  • 特開-端末装置の画面に表示される悪性URLの脅威判定を行うAR装置 図1
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  • 特開-端末装置の画面に表示される悪性URLの脅威判定を行うAR装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041276
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】端末装置の画面に表示される悪性URLの脅威判定を行うAR装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/55 20130101AFI20240319BHJP
【FI】
G06F21/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145993
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】磯原 隆将
(72)【発明者】
【氏名】金岡 晃
(57)【要約】
【課題】他の端末装置の画面に表示される悪性URLの脅威判定を行うAR装置を提供すること。
【解決手段】スマートフォン等の他の端末装置100の画面にURLが表示されている。ARグラス等のAR装置200は、カメラ10によりURLを撮影し、文字認識部51により文字認識し、照会部54が外部の悪性URL脅威判定サービス300にURLを送ってURLの脅威判定を依頼する。照会部54が、悪性URL脅威判定サービス300からの回答を受信し、バーチャル表示部55が回答を画像化し、ARディスプレイ20に表示することにより、他の端末装置100の画像に回答が重なって表示される。他の端末装置100とARグラス等のAR装置200との間には、電気的な接続がないので、物理的な安全性を確保することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラと、ARディスプレイと、AR表示制御装置とを備えたAR装置であって、
前記カメラが、他の端末装置に表示されたURL(Uniform Resource Locator)を撮影し、
前記AR表示制御装置が、撮影された前記URLについて、外部の悪性URL脅威判定サービスへ照会し、前記悪性URL脅威判定サービスから前記URLの脅威に関する判定結果を受信し、
前記ARディスプレイが、前記URLの脅威に関する判定結果を表示する、AR装置。
【請求項2】
前記AR表示制御装置は、前記カメラで撮影されたURLの画像について文字認識し、認識された文字列に対する誤認識の補正を、正しいURLの先頭数文字の特徴に基づいて行う、請求項1に記載のAR装置。
【請求項3】
前記AR表示制御装置は、前記カメラで撮影されたURLの画像について文字認識し、認識された文字列に対する誤認識の補正を、正しいURLのTLD(Top Level Domain)に基づいて行う、請求項1に記載のAR装置。
【請求項4】
前記カメラは、他の端末装置に表示された同じURLを複数回撮影し、
前記AR表示制御装置は、前記カメラで撮影されたURLの画像について文字認識し、それまでに文字認識された結果である複数の文字列と、新たに文字認識された結果である1つの文字列とのレーベンシュタイン距離を計算し、前記レーベンシュタイン距離が短い所定数の文字列について、前記外部の悪性URL脅威判定サービスへ照会する、請求項1に記載のAR装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のAR装置としてコンピュータを機能させるためのAR表示プログラム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の端末装置の画面に表示される悪性URL(Uniform Resource Locator)の脅威判定を行うAR(Augmented Reality)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、URLをハイパーリンクとして埋め込んで、不特定多数のユーザに送りつける迷惑メールが問題となっている。
特許文献1は、迷惑メール等に含まれるURLに対する不用意なアクセスを防止するために、サーバ装置が、クライアント装置からURLの危険度の判定を依頼してきた時に送信されてくるURLと、判定を依頼したユーザのユーザ情報とを対応付けて記憶する。そして、その記憶された情報から、クライアント装置が受信した迷惑メールに含まれるURLと同様のURLを、他のクライアンアト装置が受信しているかどうかを判定する。
【0003】
特許文献2は、ウイルス検知技術やIDS/IPS技術、レピュテーションDB等の従来技術では検知・防御できない新たな攻撃に対して検知・防御を行い、ユーザが悪性Webサイトを閲覧することを防ぐ、悪性Webサイト判定装置・方法等の実現を目的としたものである。この目的のために、特許文献2の悪性Webサイト判定装置は、任意のWebサイトへアクセスするための入力情報を装置内に取り込む入力部と、装置内に仮想環境を実現し、その仮想環境下で起動されたオペレーションシステムの配下で上記Webサイトに代理アクセスし、代理アクセス前後の当該オペレーションシステムの所定のパラメータの変更内容を検知する代理アクセス実行部と、上記パラメータの変更内容に基づき上記Webサイトの良性・悪性を判定する判定部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-252483号公報
【特許文献2】特開2009-223375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、迷惑メール等に含まれるURLの危険度等を判断するための複数の情報を統合して視覚的に表示する手段を備えていない。したがって、ユーザがURLへのアクセスを簡単に判断することができない。
また、特許文献2は、PC(パーソナルコンピュータ)向けの汎用OS(オペレーションシステム)上で仮想環境を構築して、代理実行を行い、Webサイトの良性・悪性を判定するが、スマートフォン等の組み込みOSを用いた計算資源が限られた環境下では、環境構築が煩雑であり、バッテリー消費量も増加するなど、技術的に満足できるものは得られなかった。
【0006】
本発明は、AR装置において、他の端末装置の画面に表示される悪性URLの脅威判定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、他の端末装置の画面に表示される悪性URLをAR装置によって読み取り、読み取ったURLについて外部の悪性URL脅威判定サービスに照会することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(1)カメラと、ARディスプレイと、AR表示制御装置とを備えたAR装置であって、前記カメラが、他の端末装置に表示されたURL(Uniform Resource Locator)を撮影し、前記AR表示制御装置が、撮影された前記URLについて、外部の悪性URL脅威判定サービスへ照会し、前記悪性URL脅威判定サービスから前記URLの脅威に関する判定結果を受信し、前記ARディスプレイが、前記URLの脅威に関する判定結果を表示する、AR装置。
(2)前記AR表示制御装置は、前記カメラで撮影されたURLの画像について文字認識し、認識された文字列に対する誤認識の補正を、正しいURLの先頭数文字の特徴に基づいて行う、上記(1)のAR装置。
(3)前記AR表示制御装置は、前記カメラで撮影されたURLの画像について文字認識し、認識された文字列に対する誤認識の補正を、正しいURLのTLD(Top Level Domain)に基づいて行う、上記(1)のAR装置。
(4)前記カメラは、他の端末装置に表示された同じURLを複数回撮影し、前記AR表示制御装置は、前記カメラで撮影されたURLの画像について文字認識し、それまでに文字認識された結果である複数の文字列と、新たに文字認識された結果である1つの文字列とのレーベンシュタイン距離を計算し、前記レーベンシュタイン距離が短い所定数の文字列について、前記外部の悪性URL脅威判定サービスへ照会する、上記(1)のAR装置。
(5)上記(1)から(4)のいずれかのAR装置としてコンピュータを機能させるためのAR表示プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、悪性URLが到来した端末装置とは別のAR装置で脅威判定を行うことにより、物理的な安全性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のAR装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態のAR装置の動作フローを示す図である。
図3】本発明の実施形態のAR装置の表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面とともに説明する。
図1は、本発明の実施形態を示す図である。スマートフォン等の他の端末装置100の画面に、迷惑メール等のURLが表示されている。AR装置200は、例えばARグラスである。AR装置200は、カメラ10、ARディスプレイ20、通信部30、及びAR表示制御装置250を備えている。
【0012】
カメラ10は、他の端末装置100の画面を撮影するための撮像装置である。ARディスプレイ20は、AR装置200により作成された画像を、現実の画像に重ねてユーザに見せるためのディスプレイである。通信部30は、AR装置200の外部にある悪性URL脅威判定サービス300にアクセスするための通信機能を有している。
AR表示制御装置250は、他の端末装置100の画面に表示されたURLを認識し、その認識されたURLについて、AR装置200の外部にある悪性URL脅威判定サービス300に問い合わせ、悪性URL脅威判定サービス300からの回答をユーザに見せるための装置である。
【0013】
AR表示制御装置250は、文字認識部51、前処理部52、類似度算出部53、照会部54、バーチャル表示部55を備えている。
文字認識部51は、他の端末装置100の画面に表示されたURLを、文字として認識する部分である。文字認識部51で認識した文字には、誤って認識された文字も含まれているので、前処理部52は、その誤りを補正する。文字認識部51は、同じURLを複数回認識するので、類似度算出部53は、その複数の照会候補文字列の中から、類似度が高い文字列をいくつか選んで、複数の照会文字列とする。照会部54は、類似度算出部53で決定された複数の照会文字列について、外部にある悪性URL脅威判定サービス300に問い合わせをし、その回答を受け取る部分である。バーチャル表示部55は、悪性URL脅威判定サービス300からの回答を画像として作成して、ARディスプレイ20に表示する。
【0014】
図2は、本発明の実施形態のAR装置200の動作フローを示す図である。ステップS101では、他の端末装置100の画面に表示されたURLを、カメラ10で撮影し、文字認識部51により認識する。得られた文字列は、悪性URL脅威判定サービス300に照会する文字列の候補であるので、「照会候補文字列」と呼ぶ。ステップS102では、「照会候補文字列」を所定回数読み取り、それら複数の照会候補文字列を、「照会候補文字列群」と呼ぶ。ステップS103では、「照会候補文字列群」に対して、文字認識における誤認識を補正するために後述する前処理1を施す。
【0015】
ステップS104では、「照会候補文字列群」に対して、文字認識における誤認識を補正するために後述する前処理2を施す。なお、前処理1と前処理2の片方のみを行うこととしても良い。また、前処理1と前処理2は、両方とも省略することができる。ステップS105では、ステップS104の出力である「照会候補文字列群」について、照会候補文字列どうしの類似度を計算し、類似度が高い照会候補文字列をいくつか決定し、それらの照会候補文字列を「照会文字列群」とする。
【0016】
前処理について説明する前に「レーベンシュタイン距離」について、簡単に説明しておく。2つの文字列がある時に、1文字の挿入・削除・置換によって、一方の文字列を他方の文字列に変形するのに必要な手順の最小回数を、「レーベンシュタイン距離」という。
例えば、「kitten」を「sitting」に変形する場合には、以下のように最低でも3回の手順が必要であるので、「kitten」と「sitting」間のレーベンシュタイン距離は3となる。
1.「kitten」
2.「sitten」(「k」を「s」に置換)
3.「sittin」(「e」を「i」に置換)
4.「sitting」(「g」を挿入して終了)
【0017】
[前処理1]
文字認識した結果の先頭の数文字について、URLの先頭の文字列との距離が、一定距離よりも近い場合には、文字認識した結果の先頭の数文字を、URLの先頭の文字列に置換する。
例えば、照会候補文字列の先頭4文字と、「http」とのレーベンシュタイン距離が3以下である場合は、照会候補文字列の先頭4文字を「http」に補正する。例えば、照会候補文字列の先頭4文字が「htip」である場合、「http」とのレーベンシュタイン距離が「1」であるから、「http」に補正する。
例えば、照会候補文字列の先頭5文字と、「https」とのレーベンシュタイン距離が3以下である場合は、照会候補文字列の先頭5文字を「https」に補正する。例えば、照会候補文字列の先頭5文字が「htiqs」である場合、「https」とのレーベンシュタイン距離が「2」であるから、「https」に補正する。
【0018】
例えば、照会候補文字列の先頭7文字と、「http://」とのレーベンシュタイン距離が5以下である場合は、照会候補文字列の先頭7文字を「http://」に補正する。
例えば、照会候補文字列の先頭8文字と、「https://」とのレーベンシュタイン距離が6以下である場合は、照会候補文字列の先頭8文字を「https://」に補正する。
URLスキームは、上記で示した「http://」と「https://」以外にも、「ftp://」など様々なものが存在する。URLスキームの補正を行う処理は、上記の例に限らず、補正を行いたいURLスキームに応じて、予め適用する処理を決めておくことが可能である。
【0019】
[前処理2]
トップレベルドメイン(TLD:Top Level Domain)は、インターネットの階層型ドメイン・ネーム・システムの最上位レベルのドメイン名である。文字認識した結果について、トップレベルドメイン(TLD)の補正を行う処理を追加することができる。
例えば、照会候補文字列の中で最初から3番目に現れた「/」と、その前で直近の文字列を3文字抽出し、抽出した3文字が3文字のTLDに一致した場合であり、且つ4文字前が「.」でない場合に「.」を追加する。(例:yyycom/ → yyy.com/)
例えば、照会候補文字列の中で最初から3番目に現れた「/」と、その前で直近の文字列を2文字抽出し、抽出した2文字が2文字のTLDに一致した場合であり、且つ3文字前が「.」でない場合に「.」を追加する。(例:yyyjp/ → yyy.jp/)
【0020】
例えば、照会候補文字列の中で最初から3番目に現れた「/」と、その前で直近の文字列を2文字抽出し、抽出した2文字が「om」に一致した場合であり、且つ3文字前が「c」でも「.」でもない場合に「.c」を追加する。(例:yyyom/ → yyy.com/)
TLDは、IANA(Internet Assigned Numbers Authority,https://wwww.iana.org/)によって、管理されており、2022年8月時点で約1,500のTLDが存在する。上記の例に限らず、存在するTLDに応じて、予め適用する処理を決めておくことが可能である。
【0021】
[類似度算出処理]
既に読み込み済みの照会候補文字列群をXとする。Xのk個の要素を、x1、x2,x3、・・・・、xkとする。新たに読み取った文字列aiが読み込まれた場合、aiとXの各要素との間のレーベンシュタイン距離を算出する。aiとxjとの間のレーベンシュタイン距離を、[ai,xj]で表現することとする。
【0022】
そうすると、[ai,x1]、[ai,x2]、[ai,x3]、・・・、[ai,xk]を算出する。[ai,x1]、[ai,x2]、[ai,x3]、・・・、[ai,xk]の中で、レーベンシュタイン距離の短いn個(nは予め定めておいた数)の文字列を抽出し、それらn個の文字列を「照会文字列群」と決定する。
【0023】
悪性URL脅威判定サービスとしては、Google Safe Browsingなどがある。
n個の文字列について問い合わせた結果、n個の回答を得ることから、n個の回答に含まれる悪性判定の数に応じて、例えば、以下のように判定結果を決定する。
・悪性判定が0であれば、判定結果を「安全」と決定する。
・悪性判定が1つであれば、安全サイドに振って、判定結果を「悪性」と決定する。
・悪性判定が2つ以上であれば、安全サイドに振って、判定結果を「悪性」と決定する。併せて、悪性判定が2つ以上であることをメタデータとして持たせる。
【0024】
図3は、ARグラスを使って見た光景の例である。四角枠72の中のURLは、元々、他の端末装置100の外面に表示されていたものである。領域70の中のURL以外の情報の画像は、AR表示制御装置250により作成されたものである。領域71は、どういう悪性URL情報データベースに問い合わせた結果であるかを示している。四角枠72は、公報では黒く表示されているが、実際は赤色であって、この赤色により、四角枠72の中のURLが危険度高であることを表している。
【0025】
欄73は、脅威の種別(threat Type)を表示している欄である。欄74は、対象プラットフォーム(platform Type)を表示している欄である。欄75は、脅威の発動種別(threatEntry Type)を表示している欄である。欄76は、キャッシュの残存時間(cache Dulation)を表示している欄である。
【0026】
本発明によれば、悪性URLが到来した端末装置とは別のAR装置で脅威判定を行うことにより、物理的な安全性を確保することが可能となる。
また、AR装置によってURLを読み取ることにより、スマートフォンなどの操作性に制限がある他の端末装置で、悪性のURLの脅威を判定するためのコピー&ペーストのような危険な操作を回避することができ、安全性を確保することが可能となる。
また、AR装置によってURLを読み取ることにより、煩雑な操作を伴わずに脅威を判定することが可能となる。
【0027】
AR表示制御装置250の処理機能をコンピュータによって実現する場合、AR表示制御装置250が有する機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することによりAR表示制御装置250の処理機能がコンピュータ上で実現される。なお、処理内容の一部をハードウェア的に実現しても構わない。
【0028】
なお、これにより、ユーザが危険度の高いURLにアクセスすることを簡単に防止できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標16「平和と公正をすべての人に」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
100 他の端末装置
200 AR装置
250 AR表示制御装置
300 悪性URL脅威判定サービス
10 カメラ
20 ARディスプレイ
30 通信部
51 文字認識部
52 前処理部
53 類似度算出部
54 照会部
55 バーチャル表示部
70 領域
71 領域
72 四角枠
73-76 欄

図1
図2
図3