(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041283
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ゴム部材及びメカニカル管継手用ゴムスリーブ
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20240319BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20240319BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240319BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/06
C08K5/14
C09K3/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146001
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 卓也
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA03
4H017AD06
4H017AE05
4J002BB151
4J002DA039
4J002DA046
4J002DE109
4J002EA018
4J002EK037
4J002EU199
4J002EV089
4J002FD028
4J002FD146
4J002FD147
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】圧縮永久歪が小さく、かつ、伸びが大きい新規なゴム部材及びこれを用いたメカニカル管継手用ゴムスリーブを提供すること。
【解決手段】ゴム部材は、エチレン・プロピレン・ジエン重合体(EPDM)と架橋剤とを含むゴム組成物を架橋することにより得られ、前記EPDMコポリマーは、ジエン量が5mass%以上であり、前記架橋剤は、有機過酸化物と、硫黄とを含む。前記ゴム部材は、圧縮永久歪が15%以下であり、伸びが200%以上であるものが好ましい。メカニカル式管継手用ゴムスリーブは、このようなゴム部材からなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・プロピレン・ジエン重合体(EPDM)と架橋剤とを含むゴム組成物を架橋することにより得られ、
前記EPDMは、ジエン量が5mass%以上であり、
前記架橋剤は、有機過酸化物と、硫黄とを含む
ゴム部材。
【請求項2】
圧縮永久歪が15%以下である請求項1に記載のゴム部材。
但し、「圧縮永久歪」とは、80℃×240時間、温水中の条件下において、25%の圧縮歪を印加した後に生ずる永久歪をいう。
【請求項3】
伸びが200%以上である請求項1に記載のゴム部材。
但し、
「伸び」とは、JIS K6251に準拠して測定される伸びをいう。
【請求項4】
請求項1に記載のゴム部材を備える、メカニカル式管継手用ゴムスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム部材及びメカニカル管継手用ゴムスリーブに関し、さらに詳しくは、圧縮永久歪が小さく、かつ、伸びが大きいゴム部材、及び、これを用いたメカニカル管継手用ゴムスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
「エチレン・プロピレン・ジエン重合体(EPDM)」とは、エチレン(E)と、プロピレン(P)と、ジエンモノマー(D)と含むモノマー成分を共重合させることにより得られる重合体(未架橋ゴム)をいう。EPDMを、種々の方法を用いて架橋させると、種々の形状を有し、かつ、ゴム弾性を有するゴム部材が得られる。EPDMを架橋させることにより得られるゴム部材は、耐候性、耐オゾン性、耐熱性等に優れていることから、自動車用ゴム製品、工業用ゴム製品、建築用ゴム製品などに使用されている。
【0003】
EPDMを架橋させることにより得られるゴム部材の用途の一つとして、メカニカル式管継手のゴムスリーブが挙げられる。メカニカル式管継手は、円筒状の金属製ハウジングの内周面にゴムスリーブを固定したものからなる。
メカニカル式管継手の穴内に2本の配管の端部を挿入し、ボルトとナットでハウジングを締結すると、ハウジングの内径が縮径する。その結果、ゴムスリーブが配管の外周面に密着し、気密性を保った状態で2本の配管を接続することができる。
【0004】
メカニカル式管継手を用いて2本の配管を接続した場合、ゴムスリーブが経時的に永久変形し、気密性が低下する場合がある。長期間に渡って気密性を確保するためには、ゴムスリーブには、圧縮永久歪の小さいゴムを用いるのが好ましい。このような圧縮永久歪の小さいゴムに関し、従来から種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、エチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマーと、有機過酸化物と、カーボンブラックとを含むゴム組成物を過酸化物加硫成形することにより得られるゴム部材が開示されている。
同文献には、ヨウ素吸着量及びDBP吸油量が所定の範囲にあるカーボンブラックを用いると、減衰性能が高く、減衰性能の温度依存性が小さく、かつ、圧縮永久歪が小さいゴム部材が得られる点が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載されているように、エチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマーを有機過酸化物で架橋すると、圧縮永久歪が相対的に小さいゴム部材を得ることができる。しかしながら、一般に、圧縮永久歪と伸び(脱型性)とは背反の関係にあり、圧縮歪永久歪が小さくなるほど、伸びが小さくなり、脱型性が悪化する。
ゴム部材の中には比較的単純な形状を有しているものもあるが、アンダーカットを含む複雑な形状を有しているものもある。そのため、金型内でゴム組成物を架橋させた後、金型を分割することなくアンダーカットを含むゴム部材を金型から取り出す場合、ゴムの伸びが小さくなるほど、脱型時に裂け不良が発生しやすくなる。
【0007】
一方、EPDMを硫黄で架橋すると、伸びが相対的に大きいゴム部材を得ることができる。しかしながら、この場合は、圧縮永久歪が増大する。
さらに、相対的に低い圧縮永久歪と、相対的に高い伸びとを両立させたゴム部材が提案された例は、従来にはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、圧縮永久歪が小さく、かつ、伸びが大きい新規なゴム部材を提供することにある。
本発明が解決しようとする他の課題は、このようなゴム部材を用いたメカニカル管継手用ゴムスリーブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係るゴム部材は、
エチレン・プロピレン・ジエン重合体(EPDM)と架橋剤とを含むゴム組成物を架橋することにより得られ、
前記EPDMは、ジエン量が5mass%以上であり、
前記架橋剤は、有機過酸化物と、硫黄とを含む。
本発明に係るメカニカル式管継手用ゴムスリーブは、本発明に係るゴム部材を備えている。
【発明の効果】
【0011】
有機過酸化物を用いて架橋を行った場合、主鎖間がC-C結合を介して結合する。そのため、高ジエン量のEPDMを有機過酸化物で架橋すると、圧縮永久歪の小さいゴム部材を得ることはできるが、ゴム部材の伸びが小さくなる。
一方、硫黄を用いて架橋を行った場合、主鎖間が硫黄を介して結合する。そのため、高ジエン量のEPDMを硫黄で架橋すると、伸びの大きいゴム部材を得ることはできるが、ゴム部材の圧縮永久歪が大きくなる。
これに対し、高ジエン量のEPDMを有機過酸化物及び硫黄の双方を用いて架橋すると、圧縮永久歪が小さく、かつ、伸びの大きいゴム部材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. ゴム部材]
本発明に係るゴム部材は、
エチレン・プロピレン・ジエン重合体(EPDM)と架橋剤とを含むゴム組成物を架橋することにより得られ、
前記EPDMは、ジエン量が5mass%以上であり、
前記架橋剤は、有機過酸化物と、硫黄とを含む
【0013】
[1.1. エチレン・プロピレン・ジエン重合体(EPDM)]
[1.1.1. 材料]
エチレン・プロピレン・ジエン重合体(EPDM)は、エチレン(E)と、プロピレン(P)と、ジエンモノマー(D)とを含むモノマー成分を共重合させることにより得られる重合体(未架橋ゴム)である。モノマー成分は、エチレン(E)、プロピレン(P)、及び、ジエンモノマー(D)以外の第4成分をさらに含んでいても良い。EPDM及び所定の架橋剤を含むゴム組成物を加熱すると、EPDM間が架橋し、本発明に係るゴム部材が得られる。
本発明において、ジエンモノマーの種類は、特に限定されない。ジエンモノマーとしては、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、シクロペンタジエン(DCP)、1,4-ヘキサジエン(HD)などがある。特に、ENBは、重合時に分離しにくく、反応性が高く、かつ、所望の特性が得られやすいので、ジエンモノマーとして好適である。
【0014】
[1.1.2. ジエン量]
「ジエン量」とは、EPDMの合成に用いたエチレン、プロピレン、及び、ジエンモノマーの総質量に対する、ジエンモノマーの質量の割合をいう。本発明において、EPDMには、ジエン量が相対的に高い重合体が用いられる。
【0015】
有機過酸化物を用いてEPDMを架橋する場合、ジエンモノマーに由来する二重結合を介して、EPDM間の架橋が行われる。そのため、ジエン量が多くなるほど、架橋点が多くなり、圧縮永久歪が小さくなる。このような効果を得るためには、ジエン量は、5mass%以上である必要がある。ジエン量は、好ましくは、10mass%以上、さらに好ましくは、12mass%以上、さらに好ましくは、14mass%以上である。
一方、ジエン量が過剰になると、架橋点も過剰となり、伸びが過度に小さくなる場合がある。従って、ジエン量は、20mass%以下が好ましい。ジエン量は、さらに好ましくは、18mass%以下、さらに好ましくは、16mass%以下である。
【0016】
[1.1.3. エチレン量]
「エチレン量」とは、EPDMの合成に用いたエチレン、プロピレン、及び、ジエンモノマーの総質量に対する、エチレンの質量の割合をいう。
本発明において、エチレン量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
【0017】
一般に、エチレン量が多くなるほど、ゴム部材の強度が高くなる。このような効果を得るためには、エチレン量は、30mass%以上が好ましい。エチレン量は、さらに好ましくは、40mass%以上、さらに好ましくは、50mass%以上である。
一方、エチレン量が過剰になると、ゴム部材の伸びが過度に小さくなる場合がある。従って、エチレン量は、80mass%以下が好ましい。エチレン量は、さらに好ましくは、70mass%以下、さらに好ましくは、60mass%以下である。
【0018】
[1.1.4. プロピレン量]
「プロピレン量」とは、EPDMの合成に用いたエチレン、プロピレン、及び、ジエンモノマーの総質量に対する、プロピレンの質量の割合をいう。
本発明において、プロピレン量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。プロピレン量は、少なくとも、0mass%超であれば良い。
【0019】
[1.1.5. ムーニー粘度、平均分子量]
本発明において、「ムーニー粘度ML1+4(125℃)」とは、JIS K6300-1-2013に準じて、ロータ:L形ロータ、予熱時間:1分、ロータの回転時間:4分、試験温度:125℃の条件下で測定された粘度をいう。
【0020】
EPDMのムーニー粘度は、EPDMの平均分子量と相関がある。一般に、EPDMの平均分子量が大きくなるほど、EPDMのムーニー粘度が高くなる。本発明において、EPDMの平均分子量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
【0021】
一般に、EPDMの平均分子量が高くなるほど、伸びの大きいゴム部材が得られやすくなる。このような効果を得るためには、EPDMのML1+4(125℃)は、20以上が好ましい。ML1+4(125℃)は、さらに好ましくは、40以上、さらに好ましくは、45以上である。
一方、EPDMの平均分子量が高くなりすぎると、成型性が悪化する場合がある。従って、EPDMのML1+4(125℃)は、80以下が好ましい。ML1+4(125℃)は、さらに好ましくは、65以下、さらに好ましくは、50以下である。
【0022】
[1.2. 架橋剤]
[1.2.1. 材料]
ゴム組成物には、架橋剤が添加される。本発明において、架橋剤は、有機過酸化物と、硫黄とを含む。この点が、従来とは異なる。架橋剤として、有機過酸化物と硫黄の双方を用いると、圧縮永久歪が相対的に小さく、かつ、伸びが相対的に大きいゴム部材を得ることができる。
【0023】
「有機過酸化物」とは、分子内に1個又は2個以上の酸素-酸素結合を持つ有機化合物(RO-OR')をいう。
本発明において、有機過酸化物の種類は、特に限定されない。有機過酸化物としては、例えば、
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(HXA)、
1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、
ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、
ジ-t-ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、
ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
t-ブチルヒドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3(HXY)、
2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、
2,5-ジメチル-2,5-モノ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、
α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン
などがある。
ゴム組成物には、これらのいずれか1種の有機過酸化物が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0024】
[1.2.2. 有機過酸化物の含有量]
「有機過酸化物の含有量」とは、ゴム組成物に含まれるEPDMの質量を100とした時の、ゴム組成物に含まれる有機酸化物の質量(phr、part per hundred parts of rubber)をいう。
ゴム組成物中に2種以上の有機過酸化物が含まれる場合、「有機過酸化物の含有量」とは、有機過酸化物の総量をいう。
【0025】
有機過酸化物の含有量が少なくなりすぎると、架橋点が過度に少なくなり、ゴム部材の圧縮永久歪が増大する場合がある。従って、有機過酸化物の含有量は、1.4phr以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、1.6phr以上、さらに好ましくは、1.8phr以上である。
一方、有機過酸化物の含有量が過剰になると、ゴム部材の伸びが小さくなる場合がある。従って、有機過酸化物の含有量は、4.2phr以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、4.0phr以下、さらに好ましくは、3.8phr以下である。
【0026】
[1.2.3. 硫黄の含有量]
「硫黄の含有量」とは、ゴム組成物に含まれるEPDMの質量を100とした時の、ゴム組成物に含まれる硫黄の質量(phr)をいう。
【0027】
硫黄の含有量が少なくなりすぎると、ゴム部材の伸びが小さくなる場合がある。従って、硫黄の含有量は、0.15phr以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.17phr以上、さらに好ましくは、0.19phr以上である。
一方、硫黄の含有量が過剰になると、ゴム部材の圧縮永久歪が増大する場合がある。従って、硫黄の含有量は、0.45phr以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.43phr以下、さらに好ましくは、0.41phr以下である。
【0028】
[1.3. その他の成分]
ゴム組成物には、EPDM及び架橋剤に加えて、以下の成分が含まれていても良い。
【0029】
[1.3.1. カーボンブラック]
[A. 材料]
ゴム組成物は、カーボンブラックを含んでいても良い。ゴム組成物に添加されたカーボンブラックは、ゴム部材の補強材として機能する。
【0030】
本発明において、カーボンブラックの種類、比表面積(ヨウ素吸着量)、ストラクチャーの発達の程度(DBP吸油量)等は特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラックなどがある。
ゴム組成物には、これらのいずれか1種のカーボンブラックが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0031】
[B. 含有量]
「カーボンブラックの含有量」とは、ゴム組成物に含まれるEPDMの質量を100とした時の、ゴム組成物に含まれるカーボンブラックの質量(phr)をいう。
ゴム組成物中に2種以上のカーボンブラックが含まれる場合、「カーボンブラックの含有量」とは、ゴム組成物に含まれるカーボンブラックの総量をいう。
【0032】
一般に、カーボンブラックの含有量が多くなるほど、硬度及び引張強度が高くなる。このような効果を得るためには、カーボンブラックの含有量は、30phr以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、40phr以上、さらに好ましくは、50phr以上である。
一方、カーボンブラックの含有量が過剰になると、伸び及び圧縮永久歪が悪化(伸びの低下、圧縮永久歪の増加)する場合がある。従って、カーボンブラックの含有量は、90phr以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、80phr以下、さらに好ましくは、70phr以下である。
【0033】
[1.3.2. 可塑剤]
[A. 材料]
ゴム組成物は、可塑剤(軟化剤ともいう)を含んでいても良い。ゴム組成物に可塑剤を添加すると、混練り時にコンパウンドとしてのまとまり性を確保することができる。また、ゴム組成物中にカーボンブラックが添加される場合には、混練り中におけるカーボンブラックの飛散を抑制することができる。
【0034】
本発明において、可塑剤の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。可塑剤としては、例えば、
(a)パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイルなどの鉱物系オイル、
(b)ラウリン酸、リシノール酸、パルミチン酸、綿実油、大豆油、ヒマシ油、パーム油などの植物系オイル
などがある。
ゴム組成物は、これらのいずれか1種の可塑剤が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0035】
[B. 含有量]
「可塑剤の含有量」とは、ゴム組成物に含まれるEPDMの質量を100とした時の、ゴム組成物に含まれる可塑剤の質量(phr)をいう。
ゴム組成物中に2種以上の可塑剤が含まれる場合、「可塑剤の含有量」とは、ゴム組成物に含まれる可塑剤の総量をいう。
【0036】
一般に、可塑剤の含有量が多くなるほど、原料が均一に混合されやすくなる。このような効果を得るためには、可塑剤の含有量は、7.5phr以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、9.0phr以上、さらに好ましくは、10.5phr以上である。
一方、可塑剤の含有量が過剰になると、ゴム部材が軟化し、圧縮永久歪が大きくなる場合がある。従って、可塑剤の含有量は、22.5phr以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、21.0phr以下、さらに好ましくは、19.5phr以下である。
【0037】
[1.3.3. 架橋促進助剤]
[A. 材料]
ゴム組成物は、架橋促進助剤を含んでいても良い。ゴム組成物に架橋剤として硫黄が含まれる場合において、ゴム組成物に架橋促進助剤をさらに添加すると、硫黄による架橋反応を短時間で完了させることができる。
【0038】
本発明において、架橋促進助剤の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。架橋促進剤としては、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛などがある。
ゴム組成物は、これらのいずれか1種の架橋促進助剤が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0039】
[B. 含有量]
「架橋促進助剤の含有量」とは、ゴム組成物に含まれるEPDMの質量を100とした時の、ゴム組成物に含まれる架橋促進助剤の質量(phr)をいう。
ゴム組成物中に2種以上の架橋促進助剤が含まれる場合、「架橋促進助剤の含有量」とは、ゴム組成物に含まれる架橋促進助剤の総量をいう。
【0040】
一般に、架橋促進助剤の含有量が多くなるほど、短時間で硫黄による架橋反応が完了する。このような効果を得るためには、架橋促進助剤の含有量は、2.5phr以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、3.0phr以上、さらに好ましくは、3.5phr以上である。
一方、架橋促進助剤を必要以上に添加しても、効果に差がなく、実益がない。従って、架橋促進助剤の含有量は、7.5phr以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、7.0phr以下、さらに好ましくは、6.5phr以下である。
【0041】
[1.3.4. 共架橋剤]
[A. 材料]
ゴム組成物は、共架橋剤を含んでいても良い。有機過酸化物と共架橋剤を併用することにより、共架橋剤を介した架橋点が形成される。これにより、三次元的な架橋が成立し、物性が向上する。
【0042】
本発明において、共架橋剤の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。共架橋剤としては、例えば、
(a)p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム化合物、
(b)エチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリルレート等のメタクリレート系化合物、
(c)ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル化合物、
(d)マレイミド系化合物、
(e)ジビニルベンゼン
などがある。
ゴム組成物には、これらのいずれか1種の共架橋剤が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0043】
[B. 含有量]
「共架橋剤の含有量」とは、ゴム組成物に含まれるEPDMの質量を100とした時の、ゴム組成物に含まれる共架橋剤の質量(phr)をいう。
ゴム組成物中に2種以上の共架橋剤が含まれる場合、「共架橋剤の含有量」とは、ゴム組成物に含まれる共架橋剤の総量をいう。
【0044】
一般に、共架橋剤の含有量が多くなるほど、架橋密度が高くなり、物性が向上する。このような効果を得るためには、共架橋剤の含有量は、1.2phr以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、1.5phr以上、さらに好ましくは、1.8phr以上である。
一方、共架橋剤を必要以上に添加しても、効果に差がなく、実益がない。従って、共架橋剤の含有量は、3.6phr以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、3.3phr以下、さらに好ましくは、3.0phr以下である。
【0045】
[1.3.5. 老化防止剤]
[A. 材料]
ゴム組成物は、老化防止剤を含んでいても良い。ゴム組成物に老化防止剤を添加すると、オゾン、光、熱、動的疲労等に起因するゴム部材の劣化を抑制することができる。また、ゴム組成物に有機過酸化物が含まれる場合において、ゴム組成物にさらに老化防止剤を添加すると、余剰の有機過酸化物による過剰な架橋反応を抑制することができる。
【0046】
本発明において、老化防止剤の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。老化防止剤としては、例えば、
2-メルカプトベンズイミダゾル、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、
スチレン化ジフェニルアミン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、
オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、
などがある。
ゴム組成物には、これらのいずれか1種の老化防止剤が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0047】
[B. 含有量]
「老化防止剤の含有量」とは、ゴム組成物に含まれるEPDMの質量を100とした時の、ゴム組成物に含まれる老化防止剤の質量(phr)をいう。
ゴム組成物中に2種以上の老化防止剤が含まれる場合、「老化防止剤の含有量」とは、ゴム組成物に含まれる老化防止剤の総量をいう。
【0048】
一般に、老化防止剤の含有量が多くなるほど、ゴム部材の劣化(老化)を抑制することができる。このような効果を得るためには、老化防止剤の含有量は、0.25phr以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.30phr以上、さらに好ましくは、0.35phr以上である。
一方、老化防止剤を必要以上に添加しても、効果に差がなく、実益がない。従って、老化防止剤の含有量は、0.75phr以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.70phr以下、さらに好ましくは、0.65phr以下である。
【0049】
[1.4. 特性]
[1.4.1. 硬度]
「硬度」とは、JIS K6253-3に準拠して測定される値をいう。
一般に、硬度が高くなるほど、圧縮永久歪の小さいゴム部材が得られる。このような効果を得るためには、硬度は、60以上が好ましい。硬度は、さらに好ましくは、65以上、あるいは、70以上である。
一方、硬度が高くなりすぎると、ゴム部材の取付が困難となる場合がある。従って、硬度は、90以下が好ましい。
【0050】
[1.4.2. 引張強度]
「引張強度」とは、JIS K6251に準拠して測定される値をいう。
一般に、引張強度が高くなるほど、圧縮永久歪の小さいゴム部材が得られる。このような効果を得るためには、引張強度は、10MPa以上が好ましい。引張強度は、さらに好ましくは、15MPa以上、あるいは、20MPa以上である。
ゴム部材の引張強度は、通常、30MPa以下である。
【0051】
[1.4.3. 伸び]
「伸び」とは、JIS K6251に準拠して測定される値をいう。
本発明に係るゴム部材は、圧縮永久歪が小さいにもかかわらず、伸びが大きいという特徴がある。製造条件を最適化すると、伸びは、200%以上となる。製造条件をさらに最適化すると、伸びは、250%以上、あるいは、300%以上となる。
ゴム部材の伸びは、通常、1200%以下である。
【0052】
[1.4.4. 比重]
「比重」とは、JIS K6268に準拠して測定された値をいう。
本発明に係るゴム部材において、製造条件を最適化すると、比重は、1.20以下となる。製造条件をさらに最適化すると、比重は、1.15以下、あるいは、1.10以下となる。
ゴム部材の比重は、通常、1.00以上である。
【0053】
[1.4.5. 圧縮永久歪]
「圧縮永久歪」とは、80℃×240時間、温水中の条件下において、25%の圧縮歪を印加した後に生じる永久歪をいう(JIS K6262)。
本発明に係るゴム部材は、伸びが大きいにもかかわらず、圧縮永久歪が小さいという特徴がある。製造条件を最適化すると、圧縮永久歪は、15%以下となる。製造条件をさらに最適化すると、圧縮永久歪は、13%以下、あるいは、10%以下となる。
ゴム部材の圧縮永久歪は、通常、3%以上である。
【0054】
[1.5. 用途]
本発明に係るゴム部材は、種々の用途に用いることができる。本発明に係るゴム部材の用途としては、例えば、メカニカル式管継手用ゴムスリーブ、止水用パッキン、防振材などがある。
本発明に係るゴム部材は、特に、高温・高湿度に長期間曝され続け、かつ、圧縮永久歪の低さが求められる用途(例えば、高温の蒸気が通る管の継手)に好適である。
【0055】
[2. ゴム部材の製造方法]
本発明に係るゴム部材は、
(a)少なくともEPDM及び架橋剤を含むゴム組成物を混合し、
(b)得られた混合物を成形し、
(c)成形体を加熱し、架橋反応を進行させ、
(c)必要に応じて、成形体を二次架橋させる
ことにより製造することができる。
【0056】
[2.1. 混合工程]
まず、少なくともEPDM及び架橋剤を含むゴム組成物を混合する。ゴム組成物は、必要に応じて、他の添加剤が含まれていても良い。混合方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて、最適な方法を選択することができる。
【0057】
ゴム組成物の混合は、通常、
(a)EPDMのみを練り込み(素練)、
(b)素練されたEPDMに、架橋反応に関与する各種添加剤以外の添加剤(例えば、カーボンブラック、可塑剤など)を加えて練り込み(A練り)、
(b)A練りされた材料に、架橋反応に関与する各種添加剤(例えば、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、共架橋剤など)を加えてさらに練り込む(B練り)
ことにより行われる。
【0058】
[2.2. 成形工程]
次に、得られた混合物を成形する。本発明において、成形方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。成形方法としては、例えば、押出成形法、射出成形法などがある。
【0059】
[2.3. 架橋工程]
次に、成形体を加熱し、架橋反応を進行させる。これにより、本発明に係るゴム部材が得られる。加熱条件は、ゴム組成物の組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。加熱温度は、通常、160℃~190℃である。また、加熱時間は、通常、5分~50分である。
【0060】
[2.4. 二次架橋工程]
上記条件で架橋反応を行った場合、硫黄による架橋反応はほぼ完了するが、有機過酸化物による架橋反応は完了しない場合がある。有機過酸化物が未完了のまま、ゴム部材を各種用途に使用すると、使用中に架橋反応が進行し、圧縮永久歪が悪化する場合がある。そのため、上記条件で架橋反応を行った後、さらに二次架橋を行うのが好ましい。
二次架橋の条件は、特に限定されるものではなく、ゴム組成物の組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。二次架橋の加熱温度は、通常、150℃~170℃である。また、二次架橋の加熱時間は、通常、30分~120分である。
【0061】
[3. 作用]
有機過酸化物を用いて架橋を行った場合、主鎖間がC-C結合を介して結合する。そのため、高ジエン量のEPDMを有機過酸化物で架橋すると、圧縮永久歪の小さいゴム部材を得ることはできるが、ゴム部材の伸びが小さくなる。
一方、硫黄を用いて架橋を行った場合、主鎖間が硫黄を介して結合する。そのため、高ジエン量のEPDMを硫黄で架橋すると、伸びの大きいゴム部材を得ることはできるが、ゴム部材の圧縮永久歪が大きくなる。
これに対し、高ジエン量のEPDMを有機過酸化物及び硫黄の双方を用いて架橋すると、圧縮永久歪が小さく、かつ、伸びの大きいゴム部材が得られる。
【実施例0062】
(実施例1~3、比較例1~3)
[1. 試料の作製]
[1.1. 原料]
原料ゴムには、
(a)クムホポリケム製、KEP5560(EPDM1)、
(b)三井化学(株)製、EPT9090M(EPDM2)、
(c)住友化学(株)製、エスプレン(登録商標)505(EPDM3)、
(d)住友化学(株)製、EPR1000(EPM)、及び
(e)住友化学(株)製、EPR1001(EPDM4)
を用いた。表1に、原料ゴムのENB含有量(ジエン量)を示す。
【0063】
【0064】
カーボンブラックには、旭カーボン(株)製、旭#70を用いた。
可塑剤には、パラフィンオイル(出光興産(株)製、PW-380)を用いた。
加硫促進助剤には、酸化亜鉛(井上石化工業(株)製、亜鉛華2種)を用いた。
老化防止剤には、2-メルカプトベンズイミダゾル(ランクセス社製、レノグラン(登録商標)MBI-80(正味:80%))を用いた。
共架橋剤には、トリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル(株)製、タイクM-60(正味:60%))を用いた。
有機過酸化物には、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油(株)製、パーヘキサ(登録商標)25B-40(正味:40%))を用いた。
硫黄には、ランクセス社製、レノグラン(登録商標)S-80(正味:80%)を用いた。
【0065】
[1.2. シートの成形]
所定の比率で原料を混練し、ゴム組成物を得た。次いで、ゴム組成物を金型に充填し、金型を170℃で20分又は30分間加熱し、縦110mm×横100mm×厚み2mmのシートを作製した。得られたシートをさらに160℃で1時間、二次架橋した。その後、シートからJIS K6251に規定される3号ダンベル状試験片を打ち抜いた。
【0066】
[1.3. C/S玉の成形]
所定の比率で原料を混練し、ゴム組成物を得た。次いで、ゴム組成物を金型に充填し、金型を170℃で40分又は45分間加熱し、JIS K6262に規定される大型試験片(直径29mm×厚み12.5mmの円柱試験片、「C/S玉」ともいう)を作製した。得られた大型試験片をさらに160℃で1時間、二次架橋した。
【0067】
[2. 試験方法]
[2.1. 硬化特性]
キュラストメーター(登録商標)を用いて、ゴム組成物の硬化特性、すなわち、最小トルク(ML)、最大トルク(MH)、トルクが底値+10%となる時間(T10)、及び、トルクが底値+90%となる時間(T90)を評価した。設定温度は、170℃とし、架橋時間は20分とした。
【0068】
[2.2. 常態物性]
[2.2.1. 硬度]
厚み2mmのシートを3枚重ねた試験片を用いて、JIS K6253-3に準拠して、ゴム部材の硬度を測定した。
【0069】
[2.2.2. 引張強度及び伸び]
3号ダンベル状試験片を用いて、JIS K6251に準拠して、ゴム部材の引張強度及び伸びを測定した。
【0070】
[2.2.3. 比重]
厚み2mmのシートを3枚重ねた試験片を用いて、JIS K6268に準拠して、ゴム部材の比重を測定した。
【0071】
[2.3. 圧縮永久歪]
大型試験片(C/S玉)を用いて、JIS K6262に準拠して、圧縮永久歪を測定した。測定条件は、
(a)70℃~120℃×22時間、大気中、又は、
(b)80℃×240時間、温水中
とした。
【0072】
[3. 結果]
表2に、結果を示す。なお、表2には、原料配合及びテストピース作成条件も併せて示した。表2より、以下のことが分かる。
(1)比較例1は、圧縮永久歪は小さいが、伸びも小さい。これは、架橋剤として硫黄を用いていないためと考えられる。
(2)比較例2は、伸びは大きいが、圧縮永久歪も大きい。これは、原料ゴム中のジエン量がゼロであるためと考えられる。
(3)比較例3は、伸びは大きいが、圧縮永久歪も大きい。これは、原料ゴム中のジエン量が少ないためであると考えられる。
(4)実施例1~3は、いずれも、200%以上の伸びと、15%以下の圧縮永久歪(80℃×240時間、温水中)とを示した。この結果は、実施例1~3のゴム部材が高温・高湿度に長時間曝され続け、かつ圧縮永久歪の低さが求められる用途に特に適していることを示している。
【0073】
【0074】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。