(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041285
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】光ファイバー型センサー
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20240319BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01N21/47 B
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146003
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】522365214
【氏名又は名称】山田 雅雄
(71)【出願人】
【識別番号】522365225
【氏名又は名称】坂 智広
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】坂 智広
【テーマコード(参考)】
2G059
4B029
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE02
2G059GG02
2G059JJ11
2G059JJ17
2G059KK01
4B029AA07
4B029BB01
4B029BB02
4B029FA01
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成によって光ファイバーの入射面において入射光と異なる方向の戻り光の形成を可能とし、かつ相対乱反射率を基準として検出対象物の概念を拡張している光ファイバー型センサーの構成を提供すること。
【解決手段】光ファイバー1を通過したLED光を、所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えている検出対象物の存在領域Rに照射し、当該照射によって発生する反射によって、光ファイバー1内を通過する戻り光を検出する光ファイバー型センサーであって、LED光を、光源2から、入射面11における長手方向と斜交する方向にて光ファイバー1に入射し、光ファイバー1内に戻った前記戻り光を、前記入射面11における長手方向の外側に配置されている受光デバイス3に照射することによって前記課題を達成している光ファイバー型センサー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーを通過したLED光を、所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えている検出対象物の存在領域に照射し、当該照射によって発生する反射によって、光ファイバー内を通過する戻り光を検出する光ファイバー型センサーであって、LED光を、光源から、入射面における長手方向と斜交する方向にて光ファイバーに入射し、光ファイバー内に戻った前記戻り光を、前記入射面における長手方向の外側に配置されている受光デバイスに照射することを特徴とする光ファイバー型センサー。
【請求項2】
検出対象物が細菌類、真菌類、ウイルス、細胞の集合体、タンパク質、炭水化物、糖脂質の何れかであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー型センサー。
【請求項3】
光ファイバーの照射面側に、透明膜によるプローブを張設していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー型センサー。
【請求項4】
透明膜に検出対象物が付着していることを特徴とする請求項3記載の光ファイバー型センサー。
【請求項5】
検出対象物が細菌であって、透明膜に当該細菌を認識する物質を付着していることを特徴とする請求項3記載の光ファイバー型センサー。
【請求項6】
検出対象物が、当該検出対象物に比し、相対乱反射率が異なる媒体と混在した状態にて併存しているか又は混在せずに併存することを特徴とする請求項1記載の光ファイバー型センサー。
【請求項7】
LED光を、凸レンズを介して、光ファイバーへの入射面に収束し、当該入射面を通過する戻り光を凸レンズを介して受光デバイスに収束していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー型センサー。
【請求項8】
LED光が光ファイバーの入射面における長手方向と交差する角度が30°~75°であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー型センサー。
【請求項9】
光ファイバーの長手方向と直交する断面の直径が4mm~7.5mmであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー型センサー。
【請求項10】
光ファイバーがアクリル製であることを特徴とする請求項9記載の光ファイバー型センサー。
【請求項11】
光ファイバーの全長の下限値が7cmであることを特徴とする請求項9記載の光ファイバー型センサー。
【請求項12】
検出対象物の存在領域にカーボンブラックの粉末又は当該カーボンブラックの水溶液若しくは有機溶媒液による消光剤が混在していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバー型センサー。
【請求項13】
検出対象物及びカーボンブラックの水溶液又は有機溶媒液が混在しているサンプルを検出容器内に収容することを特徴とする請求項12記載の光ファイバー型センサー。
【請求項14】
カーボンブラックの水溶液が墨汁であって、検出対象物の存在領域におけるサンプル内にて10重量%の割合にて混在していることを特徴とする請求項12記載の光ファイバー型センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーを通過したLED光を、所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えている検出対象物の存在領域に照射し、当該照射によって発生する反射によって、光ファイバー内を通過する戻り光を検出する光ファイバー型センサーを対象としている。
【背景技術】
【0002】
植物の育成には、土壌内の細菌が重大な影響を与え、植物の根と当該細菌の共生関係は、動物の腸と腸内細菌、即ち腸内細菌の関係に例えられている。
【0003】
このような細菌の重大な影響に着目し、土壌を典型例とする細菌の存在領域において、細菌の存在を検出する技術が従来から提唱されている。
【0004】
最もオリジナルな技術としては、細菌の存在領域における遺伝子を解析することによって細菌の存在を検出する方法であるが、このような方法の場合には、rRNA抽出等複雑な前処理を必要とすると共に、複雑なデータ解析を必要とし、シンプルかつ速やかなデータの処理は不可能である。
【0005】
これに対し、光ファイバーを通過するLED光又はレーザー光を細菌の存在領域に照射し、当該照射によって発生する反射によって当該光ファイバー内に戻った光、即ち戻り光の検出によって、細菌の存在を確認する光ファイバー型センサーが提唱されており、その基本的構成は、非特許文献1に示す通りである。
【0006】
前記検出対象物について具体的に説明するに、LED光がLED光源2から光ファイバー1の入射面11における長手方向に対し、斜方向に入射したとしても、LED光は光ファイバー1の内壁と反射しながら、光ファイバー1内を通過し、かつ入射面11と反対側に位置している照射面12から細菌の存在領域Rを照射することができる。
【0007】
前記存在領域Rに対する照射によって発生する反射によって、光ファイバー1内における戻り光が形成され、かつ当該戻り光を、光ファイバー1の入射面11から受光デバイス3に照射することによって、前記存在領域Rにおける細菌を検出することができる。
【0008】
而して、このような細菌の存在の確認は、各細菌が備えている相対乱反射率が所定の上限値及び下限値の範囲内にあることを当然の技術的前提としている。
【0009】
非特許文献1においては、Fig.1(a)、(b)に示すような光ファイバー型センサーの概観が呈示されている。
【0010】
前記Fig.1(a)、(b)の詳細な構成は、
図5(a)、(b)に示す通りであり、
図5(a)は、光ファイバー型センサーの全体構成を示し、
図5(b)は、
図5(a)のビームスプリッター6を備えている光サーキュレーター5の構成を示す。
【0011】
図5(b)の構成について具体的に説明するに、光ファイバー1に入射したLED光は、ポート(1)におけるビームスプリッター6において透過光と反射光とに分離し、かつ当該透過光及び反射光を、2枚のファラデー回転子7によって90°偏光した上で(但し、各回転子7は、透過光及び反射光をそれぞれ45°偏光しており、2枚のうち1枚は透過光及び反射光の位相を1/2だけ変化させている)、ポート(2)におけるビームスプリッター6によって分離されたビームを重畳することによって非偏光の状態とし、かつ光ファイバー1の照射面12から、細菌の存在領域Rに照射している。
【0012】
前記照射後、当該照射に対応する反射によって形成された戻り光をポート(2)におけるビームスプリッター6によって、透過光と反射光とに分離した上で、光ファイバー1内を、前記2枚のファラデー回転子7を透過せずに、前記分離された戻り光を、ポート(3)におけるビームスプリッター6において前記分離状態を重畳することによって、非偏光状態とした上で、入射光と直交する方向の戻り光を形成することによって、正確な戻り光を確保している。
【0013】
しかしながら、このような光サーキュレーター5を採用する場合には、極めて複雑であり、高価な装置を必要とせざるを得ない。
【0014】
発明者らが調査した限り、シンプルな構成によって光源からの入射面において入射光と異なる方向の戻り光の形成を可能とする光ファイバーを使用した光ファイバー型センサーはこれまで提唱されていない。
【0015】
しかも、前記細菌の検出は、各細菌が所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えていることに着目した場合には、検出の対象物の概念を単に細菌だけでなく、所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えている物に拡張することができるにも拘らず、従来技術の光ファイバー型センサーにおいては、検出対象物を細菌等の特定の物質に限定しており、検出対象物の概念につき、相対乱反射率を基準とすることによって拡張するような基本的技術思想が開示及び示唆されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】W. Xu, Y. Zhuo, D. Song et al.,"Development of a novel label-free all-fiber optofluidic biosensor based on Fresnel reflection and its applications" Analytica Chimica Acta, Volume 1181, 9 October 2021, 338910
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、シンプルな構成によって光ファイバーの入射面において入射光と異なる方向の戻り光の形成を可能とし、かつ検出対象物の概念を相対乱反射率を基準として拡張している光ファイバー型センサーの構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)光ファイバーを通過したLED光を、所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えている検出対象物の存在領域に照射し、当該照射によって発生する反射によって、光ファイバー内を通過する戻り光を検出する光ファイバー型センサーであって、LED光を、光源から、入射面における長手方向と斜交する方向にて光ファイバーに入射し、光ファイバー内に戻った前記戻り光を、前記入射面における長手方向の外側に配置されている受光デバイスに照射することを特徴とする光ファイバー型センサー、
(2)光ファイバーの長手方向と直交する断面の直径が4mm~7.5mmであることを特徴とする前記(1)の光ファイバー型センサー、
(3)検出対象物の存在領域にカーボンブラックの粉末又は当該カーボンブラックによる水溶液若しくは有機溶媒液による消光剤が混在していることを特徴とする前記(1)の光ファイバー型センサー、
からなる。
【発明の効果】
【0019】
基本構成(1)においては、検出対象物の概念を細菌に限定せずに相対乱反射率が所定の上限値及び下限値の範囲内にあるか否かという基準に即して拡張する一方、
図5(a)、(b)に示すような光サーキュレーターを不要とするシンプルな構成によって、検出対象物の存在領域に対するLEDの照射及び当該存在領域からの戻り光を、光源からの入射面における入射光と異なる方向に形成することによって細菌の存在を的確に検出することができる。
【0020】
基本構成(2)は、基本構成(1)に立脚した上で、従来技術の場合に比し、長手方向と直交する方向の断面積を約1万倍とすることによって、戻り光の光束量が飛躍的に向上し、ひいては検証対象物の検出感度を飛躍的に向上することができる。
【0021】
基本構成(3)は、基本構成(1)に立脚した上で、検出対象物の存在領域からの反射による戻り光の照度を低下させることによって、光ファイバーから照射したLED光が検出対象物以外の物に対する照射を原因として発生する乱反射を原因とする検出上の過誤を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】基本構成(1)の原理を示す平面図であって、(a)は、LED光源と光ファイバーの入射面との間及び受光デバイスと光ファイバーの入射面との間にレンズを備えずに、LED光をストレートに通過する実施形態を示しており、(b)は、LED光源と光ファイバーの入射面との間及び受光デバイスと光ファイバーの入射面との間に凸レンズを配置した実施形態を示す。
【
図2】基本構成(1)、(2)を採用し、かつ外側のカバーによって各構成要素を一体化したことによる装置の外観写真による斜視図である。
【
図3】基本構成(3)において、細菌及び墨汁が混在しているサンプルを検出容器内に収容している実施例を示す側面図である。
【
図4】実施例3の受光デバイスにおけるセンサー信号の経時的変化の様子を示すグラフである。
【
図5】非特許文献1のFig.1(a)、(b)に対応する光ファイバー型センサーの詳細な構成を示しており、(a)は、全体の構成を示す側面図であり、(b)は、光サーキュレーターを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
基本構成(1)は、
図1(a)、(b)に示すように、光ファイバー1を通過したLED光を所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えている検出対象物の存在領域Rに照射し、当該照射によって発生する反射によって、光ファイバー1内を通過する戻り光を検出する光ファイバー型センサーであって、LED光を、光源2から、入射面11における長手方向と斜交する方向にて光ファイバー1に入射し、光ファイバー1内に戻った前記戻り光を、前記入射面11における長手方向の外側に配置されている受光デバイス3に照射することを特徴とする光ファイバー型センサーである。
尚、基本構成(1)においては、通常
図1(a)、(b)及び
図2に示すように、光ファイバー1、LED光源2、受光デバイス3をカバー10によって一体化している。
【0024】
前記検出対象物の概念について具体的に説明するに、金属結晶物以外の殆どの物においては、当該物の表面に入射した光線は、内部における吸収及び散乱の繰り返しを経た上で、外部への散乱を実現しており、半透明状態を呈している。
【0025】
このような半透明状態を呈する物においては、物毎に所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えており、吸収の程度が大きいほど相対乱反射率は小さいという関係にある。
【0026】
具体的な数式において説明するに、相対乱反射率Rdと、半透明状態を呈する物の吸収係数k及び散乱係数Sとの間には、以下のようなクベルカ・ムンクの式が成立する(例えば、株式会社岩波書店発行の理化学辞典の「拡散反射分光法」の項の説明)。
(1-Rd)2 /2Rd =k/S
【0027】
前記二次方程式の一般解であるRdとして、
【数1】
を得ることができるが、前記一般解Rdにおいては、以下の不等式が成立する。
【数2】
前記不等式は、相対乱反射率Rdが吸収係数k及び反射係数sを要因とする
というパラメータより小さく、
というパラメータよりも大きく、結局所定の上限値及び下限値の範囲内にあることを裏付けている。
しかも、前記一般解Rdをkで微分したことによる数式はゼロより小さいマイナス値を呈しており、吸収係数kが大きくなるほど、相対乱反射率Rdは小さくなるという関係が成立する。
【0028】
このように、金属結晶物以外の概念として半透明状態を呈する物においては、所定の上限値及び下限値の範囲内にあるか否かという相対乱反射率Rdを備えていることから、基本構成(1)においては、検出対象物の概念について相対乱反射率が所定の上限値及び下限値の範囲内にあるか否かという基準に拡張したうえで、当該基準を充足している検証対象物の反射による戻り光を、受光デバイス3が検知することによって検出対象物の存在を確認することができる。
【0029】
即ち、非特許文献1の光ファイバー型センサーにおいて、細菌の相対乱反射率が各細菌毎に所定の上限値及び下限値の範囲内にあることに着目し、基本構成(1)においては、所定の上限値及び下限値の範囲内にある相対乱反射率を備えている物を検出対象物としている。
【0030】
このような拡張した概念による検出対象物の具体例としては、細菌類、真菌類、ウイルス、細胞の集合体、タンパク質、炭水化物、糖脂質を挙げることができる。
【0031】
基本構成(1)においては、光ファイバー1の照射面12側に、透明膜によるプローブを張設していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0032】
前記の「プローブ」は、文言上先端の挿入口の趣旨であるが、前記実施形態においては、容器9に収容されている粉状又は液状の検出対象物中に先端のプローブを挿入することによって、透明膜と接触している検出対象物からのストレートの反射による戻り光を検出することができる。
【0033】
このようなプローブを張設した場合には、透明膜に検出対象物が付着していることを特徴とする実施形態をも採用することができ、前記実施形態の場合には、付着している検出対象物からストレートに戻り光を形成し、かつ当該戻り光を検出することができる。
尚、前記付着は、透明な粘性物質を検出対象物と混合することによって透明膜に貼着することによって実現することができる。
【0034】
前記プローブを張設している実施形態においては、更に検出対象物が細菌であって、透明膜に当該細菌を認識する物質を付着していることを特徴とする実施形態も採用することができる。
【0035】
上記実施形態においては、細菌が当該物質に親和性を有する場合には、当該物質と一体化し、親和性を有しない場合には当該物質から離脱しており、このような一体化又は離脱によって細菌による「認識」が行われている。
【0036】
実際に、細菌が認識し得る物質としては、タンパク、炭水化物、糖脂質を典型例として挙げることができる。
【0037】
このような実施形態の場合には、細菌が前記認識によって親和性を有する物質と一体化した場合には、細菌からの反射による戻り光を形成し、ひいては感度の高い細菌の検出を実現することができる。
但し、前記実施形態の場合には、細菌の前記物質側への移動を原因として、細菌の検出は経時的変化を生じており、この点は、実施例3において、
図4のグラフに即して後述する通りである。
【0038】
光ファイバー1においては、入射面11から入射する入射光と、光ファイバー1の照射面12から戻る戻り光とは、光ファイバー1の内壁との反射角度が相互に相違しており、入射光と戻り光との相互の干渉による光量の減少は実際には発生していない。
【0039】
LED光源2と入射面11との間、及び入射面11と受光デバイス3との間に凸レンズ4を配置していない
図1(a)に示す実施形態における戻り光について説明するに、前記存在領域Rからの反射によって形成された戻り光の全てが光ファイバー1の照射面12における長手方向に沿っている訳ではない。
【0040】
即ち、戻り光の一部は長手方向に沿って光ファイバー1内を戻るが、他の一部は、当該長手方向と斜交した状態にて光ファイバー1と反射しながら戻ることに帰する。
【0041】
このような場合、長手方向に沿って戻った光が主として受光デバイス3によって検出されており、斜交しながら戻る戻り光は必ずしも受光デバイス3によって検出される訳ではない。
【0042】
即ち、
図1(a)に示す実施形態の場合には、戻り光の一部が受光デバイス3によって検出されており、検出の効率は、決して十分ではない。
【0043】
前記実施形態における検出の不十分性を考慮し、基本構成(1)においては、
図1(b)に示すように、LED光を、凸レンズ4を介して、光ファイバー1への入射面11に収束し、当該入射面11を通過する戻り光を凸レンズ4を介して受光デバイス3に収束していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0044】
前記実施形態においては、LED光源2からの入射光は、前記入射面11において収束した上で、光ファイバー1内において幅広の光束を形成した上で光ファイバー1の内壁を反射し、かつ細菌の存在領域Rを照射することができる。
【0045】
しかも、
図1(b)に示すように、光ファイバー1における戻り光が入射面11から拡散する状態にて通過したとしても、凸レンズ4によって受光デバイス3を順次収束した状態にて照射することができ、
図1(a)に示す実施形態の場合に比し、十分な検出効率を実現することができる。
【0046】
光ファイバー1は、通常
図1(a)、(b)に示すように、長手方向を直線状態とする実施形態が採用されている。
【0047】
しかしながら、LED光の反射光及び戻り光は、何れも光ファイバー1の内側壁部を反射しながら通過する以上、長手方向が曲線状の光ファイバー1をも採用することができる。
尚、曲線状としては、円弧状又は楕円弧状を典型例としている。
【0048】
基本構成(1)においては、検出対象物が、当該検出対象物に比し、相対乱反射率が異なる媒体と混在した状態にて併存しているか又は混在せずに併存することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0049】
例えば、細菌の場合には、自らが生息している土壌と混在した状態にて併存しているサンプル又は土壌が外側にて混在せずに併存するサンプルの双方を採用することができる。
但し、殆ど大抵の場合には、前記媒体が混在した状態にて併存する状態が採用されている。
【0050】
例えば、肉又は魚内部におけるタンパク質を検出対象物とする場合、当該タンパク質と併存している他の栄養分及び水分は、当該タンパク質と混在する状態にて併存している。
【0051】
更には、ウイルスを検出対象物とする場合、ウイルスを溶媒することは不可能であることから、ウイルスが存在する部位から当該ウイルスを取得し、水又は有機溶媒を媒体とした上で混在した状態にて併存するサンプルを採用している。
【0052】
前記実施形態の場合には、検出対象物の相対乱反射率だけでなく、前記媒体の相対乱反射率を予め把握することを必要不可欠とする。
【0053】
このような前提の下に、検出対象物と前記媒体とが混在した状態にて併存している場合及び混在せずに併存している場合の何れにおいても、前記媒体と異なる相対乱反射率を呈示するか否かによって、検出対象物の存否を把握することができる。
【0054】
LED光源2の入射光の一部は、光ファイバー1の入射面11の周囲に位置する端部に反射する場合があり、このような反射を完全に防ぐことは、現実には不可能である。
【0055】
しかしながら、このような反射が生じたとしても、当該反射光が受光デバイス3側に入射しないようにLED光源2の入射角度を調節することによって、受光デバイス3に対する照射を避けることができる。
【0056】
調節すべき入射角度は、受光デバイス3の幅及び光ファイバー1の入射面11との距離によって左右されるが、前記幅及び前記距離の上限値は限定されていることから、通常、光ファイバー1の入射面11の長手方向に対し30°以上の角度の場合には、反射光の受光デバイス3に対する照射を避けることができる。
【0057】
基本構成(2)は、基本構成(1)に立脚した上で、光ファイバー1の長手方向と直交する断面の直径が4mm~7.5mmであることを特徴とする光ファイバー型センサーである。
【0058】
従来技術において採用されている光ファイバー1の長手方向と直交する断面の直径は、通常50μm又は62.5μmが標準的な径とされている。
【0059】
これに対し、基本構成(2)において、光ファイバー1の前記断面の直径を5mmとした場合には、直径が50μmの場合に比し100倍と化し、断面積は1万倍と化し、ひいては受光デバイス3に対する照射量を桁違いとすることによって検出感度を飛躍的に向上させることができる。
【0060】
基本構成(2)において、前記直径の上限を7.5mmとしている根拠は、7.5mmを超えるような受光量であっても、検出感度の更なる向上を期待できないことに由来している。
【0061】
従来技術における前記微細な直径の場合には、ガラス製光ファイバーが採用されており、その根拠は良好な反射率を確保することにある。
【0062】
このような状況を反映して、ガラス製の場合に比し反射効率において劣っているアクリル製の光ファイバーは、従来技術においては殆ど採用されていない。
【0063】
しかしながら、基本構成(2)のような直径の場合には、従来技術の場合に比し桁違いに多量の光束が光ファイバー1内を通過することから、光ファイバー1の内壁における反射効率が低下しても、受光デバイス3に対し戻り光を十分な光束量にて照射することができる。
【0064】
その結果、基本構成(2)においては、アクリル製の光ファイバー1を採用することができ、極めて低コストの光ファイバー型センサーを実現することができる。
【0065】
基本構成(3)は、基本構成(1)に立脚した上で、検出対象物の存在領域Rにカーボンブラックの粉末又は当該カーボンブラックによる水溶液若しくは有機溶媒液による消光剤が混在していることを特徴とする光ファイバー型センサーである。
【0066】
光ファイバー1の照射面12から、LED光を照射した場合、必ずしもその全てが検出対象物を照射する訳ではなく、照射面12の近傍に配置されている障害物を照射する場合がある。
【0067】
このような照射の場合には、障害物の反射による戻り光の相対乱反射率は、検出対象物の相対乱反射率の範囲内である場合には、恰も当該反射率が検出対象物に該当するが如き誤った検出が行われることにならざるを得ない。
【0068】
更には、検出対象物内に蛍光物質が含まれており、しかも蛍光物質の相対乱反射率は検出対象物の相対乱反射率の範囲外である場合には、検出対象物が現実に存在するにも拘らず、蛍光物質の乱反射率が優先して検出されるために、受光デバイス3においては、検出対象物が存在しないという誤った検出結果に至らざるを得ない。
【0069】
基本構成(3)においては、カーボンブラックを素材とする前記消光剤の混在によって、検出対象物からの戻り光による照度を低下させることによって、前記障害物又は蛍光物質による戻り光における高い照度と峻別することによって、前記のような誤った検出を防止している。
【0070】
このような基本構成(3)による技術上のメリットは、検出対象物と異なる相対乱反射率に対する媒体が併存している実施形態においても前記照度による峻別という効果を発揮することに変わりはない。
【0071】
即ち、検出対象物と媒体とが混在した状態にて併存している場合には、カーボンブラックによる消光剤が検出対象物及び媒体の双方による照度を減少させることによって、前記のような誤った検出を避けることができる。
【0072】
のみならず、検出対象物と媒体とが混在せずに併存しており、しかも消光剤として、カーボンブラックによる水溶液若しくは有機溶媒液を採用した場合には、これらの溶液は混在せずに併存する媒体溶液まで拡散することによって、検出対象物における相対乱反射率をより鮮明な状態とすることができる。
【0073】
例えば、検出対象物が細菌である場合において、媒体が土壌である一方、消光剤としてカーボンブラックの水溶液若しくは有機溶媒液を採用した場合には、これらの溶液は細菌が存在しない土壌の領域まで拡散し、細菌による相対乱反射率が占める割合を大きい状態とすることができる。
【0074】
基本構成(3)においては、
図3に示すように、検出対象物及びカーボンブラックによる消光剤が混在しているサンプルを検出容器9内に収容することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0075】
上記実施形態の場合には、検出容器9内には、検出対象物と誤認するような障害物が存在しないことから、光ファイバー1を検出容器9内に挿入することによって、障害物の誤認を伴うような検出を避けることができる。
【0076】
以下、実施例に即して説明する。
【実施例0077】
実施例1は、基本構成(1)において、LED光が光ファイバー1の入射面11における長手方向と交差する角度が30°~75°であることを特徴としている。
【0078】
上記のような交差角度が30°以上であることによって、光ファイバー1の入射面11における反射による受光デバイス3への入射を通常避けることができることについては、既に説明した通りである。
【0079】
実施例1においては、前記交差角度の上限を75°と設定しているが、その根拠は、交差角度が大きいほど、入射面11から入射に対する光束量が減少することから、そのような減少を避けることにある。
【0080】
このように、実施例1においては、光ファイバー1の入射面11における反射を避ける一方、光束の断面積の極小化の防止との双方を両立することができる。
基本構成(1)において、光ファイバー1の入射面11から入射したLED光が光ファイバー1における前記入射面11と反対側の照射面12から照射する際、照射面12から順次拡散する照射光線全体の拡散角度を均一状態とすることによって、細菌の存在領域Rを均一に照射するためには、光ファイバー1が所定の長さであることを必要不可欠とする。
即ち、所定の長さ以上の光ファイバー1によって、LED光の照射面からの拡散角度の範囲を均一化し、ひいては受光デバイス3による検出を安定した状態とすることができる。
然るに、基本構成(2)の場合には、通常の直径を有する光ファイバー1と対比した場合、桁違いに多量のLED光を照射することが可能であって、十分な光束量による戻り光の照射によって、受光デバイス3における検出を安定した状態とし得る以上、光ファイバー1を短い状態とすることができる。
具体的には、7cmの全長という短い光ファイバー1を採用しても、細菌の存在領域Rを安定した状態にて検出することができ、ひいては、極めて安価な光ファイバー型センサーを実現することができる。