(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041289
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20240319BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B66B11/02 Z
B66B11/02 Q
B66B5/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146011
(22)【出願日】2022-09-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】虻川 裕美子
【テーマコード(参考)】
3F304
3F306
【Fターム(参考)】
3F304CA05
3F306AA07
3F306AA11
3F306CB05
3F306CB60
(57)【要約】
【課題】設置スペースを必要とせず、かつ意匠上の見栄えを損なうことなく、利用者が乗りかご内で、電力を発電して長時間の電力を蓄電することができ、利用者の不安を軽減すること。
【解決手段】実施形態の発電装置は、エレベータの乗りかごに設けられた手摺りに内蔵される発電装置であって、前記手摺りの外面を形成するとともに、利用者によって回転可能な回転部と、前記回転部による回転駆動によって電力を生成する発電部と、前記発電部により生成された電力を蓄電する蓄電部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごに設けられた手摺りに内蔵される発電装置であって、
前記手摺りの外面を形成するとともに、利用者によって回転可能な回転部と、
前記回転部による回転駆動によって電力を生成する発電部と、
前記発電部により生成された電力を蓄電する蓄電部と、
を備える発電装置。
【請求項2】
前記回転部の回転をロックするロック機構と、
ネットワークで接続される監視センターからの指示を、前記監視センターと接続される制御盤を介して受信した場合に、前記ロック機構のロックを解除する制御部と、
をさらに備える請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、外部機器に電力供給するためのバッテリーの蓄電量が所定の閾値以下となった場合に、前記ロック機構のロックを解除する、
をさらに備える請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記ロック機構のロックを解除した場合に、前記制御盤を介して表示装置に発電方法、または、停電灯またはインターホンの使用可能時間を表示させる、
請求項2に記載の発電装置。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、停電を検知した場合に、停電の旨を、前記制御盤を介して前記監視センターに送信する、
請求項2に記載の発電装置。
【請求項6】
前記制御部は、さらに、前記発電部による発電が開始した場合に、発電開始の旨を、前記制御盤を介して前記監視センターに送信する、
請求項2に記載の発電装置。
【請求項7】
前記回転部による回転を前記発電部に伝達する伝達機構、をさらに備え、
前記回転部は、順方向と逆方向の二方向に回転可能であり、
前記発電部は、第1の発電機と、第2の発電機と、を備え、
前記伝達機構は、前記回転部による順方向回転を、前記第1の発電機に伝達する第1の機構と、前記回転部による逆方向回転を、前記第12の発電機に伝達する第2の機構と、を備える、
請求項3に記載の発電装置。
【請求項8】
前記第1の機構は、
前記第1の発電機の回転軸に接続される第1の外歯車と、
前記第1の外歯車と噛み合う第1の内歯車と、
前記第1の内歯車と前記回転部とに接続されて、前記回転部の順方向回転のみを前記第1の内歯車に伝達する第1のホイールと、を備え、
前記第2の機構は、
前記第2の発電機の回転軸に接続される第2の外歯車と、
前記第2の外歯車と噛み合う第2の内歯車と、
前記第2の内歯車と前記回転部とに接続されて、前記回転部の逆方向回転のみを前記第2の内歯車に伝達する第2のホイールと、を備える、
請求項7に記載の発電装置。
【請求項9】
前記回転部による回転を前記発電部に伝達する伝達機構、をさらに備え、
前記発電部は、複数の発電機を有し、
前記伝達機構は、前記回転部の回転を、前記複数の発電機のそれぞれに伝達する、
請求項3に記載の発電装置。
【請求項10】
前記蓄電部に蓄電された電力を外部に出力するための出力端子、
をさらに備える請求項1に記載の発電装置。
【請求項11】
エレベータの乗りかごに設けられた発電装置であって、
前記乗りかごの壁面に収納され、前記壁面の外部に突出して手荷物をかけることが可能なフックと、
前記乗りかごの壁内部に設けられた発電機と、
前記乗りかごの壁内部に設けられ、前記発電機により生成された電力を蓄電する蓄電部と、
前記フックと前記発電機の回転軸とを接続する紐状体と、備え、
前記発電機は、前記フックが引っ張られることにより前記紐状体を介して前記回転軸が回転して電力を生成する、
発電装置。
【請求項12】
前記フックを固定する固定機構と、
ネットワークで接続される監視センターからの指示を受信した場合に、前記固定機構のロックを解除する制御部と、
をさらに備える請求項11に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータでは、停電時には、バッテリー等の非常電源により停電灯が点灯し、インターホンが稼働するため、長時間の照度確保と音声通話が難しい。すなわち、停電等で乗りかご内の照明用電源が断たれた場合、利用者の安全のため、バッテリー等の非常電源による乗りかご内の停電灯に直ちに切り替わらなくてはならない。しかしながら、停電灯は停電時でも30分以上点灯することが求められているが、それ以上の時間、閉じ込められてバッテリーを使い切ってしまうと、停電灯もインターホンも使用できなくなり、利用者の不安が大きい。このため、エレベータの乗りかご内に手動式の発電装置を設置する技術が従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発電装置は、行き先階呼びを行うための操作盤から突出して設けられており、発電装置の設置スペースが必要となってくる。すなわち、発電のためのハンドル等が乗りかごの壁面から突出してしまい、設置スペースを要したり、また、意匠上にも見栄えが好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の発電装置は、エレベータの乗りかごに設けられた手摺りに内蔵される発電装置であって、前記手摺りの外面を形成するとともに、利用者によって回転可能な回転部と、前記回転部による回転駆動によって電力を生成する発電部と、前記発電部により生成された電力を蓄電する蓄電部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の乗りかごの内部を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる発電システムおよび手摺りの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の手摺りの内部構造の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における回転部、内歯車、外歯車、発電機の関係を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態にかかる発電処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態にかかる表示装置319の画面表示の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態にかかる手回し発電の処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例1にかかる手摺りの内部構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例2の手摺りの構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態にかかる収納可能フックの外観を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態にかかる発電装置の構成および収納可能フックが収納された状態での使用方法を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態にかかる発電装置の構成および収納可能フックを引き出した状態での使用方法を示す図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態にかかる発電装置の構成および収納可能フックを引っ張った状態での使用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
[第1の実施形態]
以下、図を用いて、第1の実施形態の発電装置について説明する。
図1は、第1の実施形態の乗りかごの内部を示す模式図である。本実施形態の乗りかご500には、
図1に示すように、正面側に乗降口を開閉する扉1401が設けられている。そして、扉1401の横の壁面には、操作盤318が設けられている。この操作盤318は、主として、利用者が行き先階等を指定する操作を行うためのものである。また、操作盤318には、不図示のインターホン(後述)が設けられている。
【0009】
乗りかご500内の扉1401と対向する壁面には、鏡340が設けられている。乗りかご500内の利用者は当該鏡340に自身を映すことが可能となっている。
【0010】
また、乗りかご500内の側壁面のほぼ中央部には、車椅子用操作盤318Bと、手摺り100が設けられている。車椅子用操作盤318Bは、主として、車椅子に乗った利用者が行き先階等が操作可能なように、操作盤318より低い高さ位置に設けられている。
【0011】
そして、側壁面の車椅子用操作盤318Bの下方には、手摺り100が設けられている。この手摺り100は、利用者が掴むためのものであり、本実施形態では、発電装置としても機能する。本実施形態の手摺り100は、発電装置の一例である。
【0012】
図2は、第1の実施形態にかかる発電システムおよび手摺り100の構成の一例を示す図である。なお、
図2では、手摺り100の一部に内部の構成も図示している。
【0013】
本実施形態にかかる発電システムは、
図2に示すように、乗りかご500内の発電装置を有する手摺り100、停電灯6、インターホン7と、制御盤200と、バッテリー250と、監視センター300と、で構成されている。
【0014】
制御盤200は、昇降路内の例えば、壁面に設けられている。制御盤200は、乗りかご500内の手摺り100内の後述する制御部4と、テールコード等の有線または無線で接続される。また、制御盤200は、操作盤318(
図1参照)ともテールコード等の有線または無線で接続される。また、制御盤200は、監視センター300と、ネットワークで接続されている。
【0015】
バッテリー250は、昇降路内の制御盤200に積まれて設けられている。
図2では、説明の都合上、制御盤200の横に示してある。
【0016】
バッテリー250は、停電灯6とインターホン7とに接続されて、停電灯6とインターホン7に電力を供給する。具体的には、バッテリー250には、停電灯6とインターホン7とを、例えば所定の閾値として30分より長く使用できる量の電力が蓄電されている。そして、バッテリー250の蓄電量が当該閾値以下となった場合、又は監視センターからロック解除の指示を受けた場合に、利用者は手摺り100の回転部1を回して発電するようになっている。
【0017】
停電灯6は、
図2の点線201bに示すように、停電時に上記バッテリー250からの電力供給により、乗りかご500内で点灯する。また、停電灯6は、後述するように、停電時には、
図2の実線202bに示すように、手摺り100の内部の蓄電部3からの電力供給によっても点灯可能である。
【0018】
インターホン7は、
図2の点線201aに示すように、上記バッテリー250からの電力供給により、監視センター300との通話を可能とする。また、インターホン7は、
図2の実線202aに示すように、手摺り100の内部の蓄電部3からの電力供給によっても通話可能となる。
ここで、停電灯6およびインターホン7は、外部機器の一例である。
【0019】
監視センター300は、ビルの管理室などに設けられ、制御盤200を介して乗りかご500に各種指示を送信したり、乗りかご500内のインターホン7と接続される。制御盤200は、乗りかご500の操作盤318からの呼び登録を受信し、乗りかご500を移動制御したり、手摺り100の制御部4と各種通信を行う。
【0020】
本実施形態にかかる手摺り100は、
図2に示すように、外観は利用者が手で掴むことのできる略棒状の形態となっている。本実施形態にかかる手摺り100は、回転部1と、発電部2と、蓄電部3と、制御部4と、ロック機構5と、を主に備えている。発電部2、蓄電部3、制御部4、ロック機構5は、手摺り100の内部に設けられており、発電装置の一例である。
【0021】
回転部1は、手摺り100の外面を形成するとともに、利用者によって順方向と逆方向の2方向に回転可能となっている。
図2において、反時計回りの回転を順方向の回転また順回転と称し、時計回りの回転を逆方向の回転また逆回転と称する。
【0022】
発電部2は、回転部1による回転駆動によって電力を生成する。
蓄電部3は、発電部2により生成された電力を蓄電する。
ロック機構5は、回転部1の回転をロックする。ロック機構5は、制御部4からのロック解除指令により、回転部1のロックを解除する。
【0023】
制御部4は、監視センター300から、制御盤200を介して、ロック解除指示を受信し、当該ロック解除指示を受信すると、ロック機構5にロック解除指示を送出する。また、制御部4は、制御盤200に積まれたバッテリー250の蓄電量が所定の閾値以下となった場合に、ロック機構5のロックを解除する。
【0024】
また、制御部4は、ロック機構5のロックを解除した場合に、制御盤200を介して、操作盤318の表示装置に発電方法、または、停電灯またはインターホンの使用可能時間を表示させる。具体的には、制御部4は、ロック機構5のロックを解除した場合に、制御盤200に表示指示を送出して、操作盤318の表示装置に発電方法、または、停電灯またはインターホンの使用可能時間を表示させる。
【0025】
また、制御部4は、さらに、停電を検知した場合に、制御盤200を介して、停電の旨を監視センター300に送信する。具体的には、制御部4は、停電を検知した場合に、停電の旨を制御盤200に送出し、制御盤200が停電の旨を監視センター300に送信する。
【0026】
また、制御部4は、さらに、発電部による発電が開始した場合に、制御盤200を介して、発電開始の旨を監視センター300に送信する。具体的には、制御部4は、発電部による発電が開始した場合に、発電開始の旨を制御盤200に送出し、当該制御盤200が発電開始の旨を監視センター300に送信する。
【0027】
図3は、第1の実施形態の手摺り100の内部構造の一例を示す図である。
発電部2は、
図3に示すように、順回転用の発電機16と、逆回転用の発電機17と、を備えている。発電機16,17は、いずれも回転軸を回転させることにより、電力(電気)を発生する。蓄電部3は、電力を蓄積する蓄電池18を備えている。蓄電池18は、各発電機16,17と接続されており、発電機16,17のそれぞれから電力が蓄電される。
【0028】
図3に示すように、回転部1と発電機16の間には、3つの伝達部材31、順回転用のフリーホール8、複数の順回転用のスポーク9、順回転用の内歯車10、当該内歯車10と噛み合う順回転用の外歯車11が設けられ、外歯車11が順回転用の発電機16の回転軸に接続されている。ここで、3つの伝達部材31、順回転用のフリーホイール8、複数の順回転用のスポーク9、順回転用の内歯車10、順回転用の外歯車11は、伝達機構および第1の機構の一例である。
【0029】
また、
図3に示すように、回転部1と発電機17の間には、上述の3つの伝達部材31の他、逆回転用のフリーホール12、複数の逆回転用のスポーク13、逆回転用の内歯車14、当該内歯車14と噛み合う逆回転用の外歯車15が設けられ、外歯車15が順回転用の発電機16逆回転用の発電機17の回転軸に接続されている。ここで、3つの伝達部材31、逆回転用のフリーホイール12、複数の逆回転用のスポーク13、逆回転用の内歯車14、逆回転用の外歯車15は、伝達機構および第2の機構の一例である。
【0030】
図4は、第1の実施形態における回転部1、内歯車10,14、外歯車11,15、発電機16,17の関係を示す図である。
図4(a)は、第1の実施形態における回転部1、内歯車10,14、外歯車11,15の関係を示す。
図4(b)は、第1の実施形態における回転部1の回転方向と、内歯車10、外歯車11の関係を示し、
図4(c)は、第1の実施形態における回転部1の回転方向と、内歯車14、外歯車15の関係を示す。
図4(d)は、第1の実施形態における外歯車11,15と発電機16,17の関係を示している。
【0031】
回転部1の内壁面には、3つの伝達部材31が接続され、伝達部材31のそれぞれが、順回転用のフリーホイール8に接続されている。そして、順回転用のフリーホイール8には複数の順回転用のスポーク9の一端が接続され、順回転用のスポーク9のそれぞれの他端は順回転用の内歯車10の縁部に接続される。
【0032】
この順回転用のフリーホイール8は、ラチェット式の公知のホイールであり、鈎部と止め部とにより、回転部1の順回転のみを、順回転用のスポーク9を介して順回転用の内歯車10に伝達し、回転部1の逆回転は伝達不能に構成されている。順回転用のフリーホイール8は慣性力で順回転方向に回り続ける。
【0033】
すなわち、回転部1を順回転させると、順回転用フリーホイール8に繋がっている順回転用の内歯車10が回転し、順回転用の内歯車10と噛み合う順回転用の外歯車11が高速回転する。順回転用の外歯車11が高速回転することにより、順回転用の発電機16で発電する。
【0034】
また、回転部1の内壁面に接続された3つの伝達部材31のそれぞれが、逆回転用のフリーホイール12にも接続されている。そして、逆回転用のフリーホイール12には複数の逆回転用のスポーク13の一端が接続され、逆回転用のスポーク13のそれぞれの他端は逆回転用の内歯車14の縁部に接続される。
【0035】
この逆回転用のフリーホイール12は、ラチェット式の公知のホイールであり、順回転用のフリーホイール8とは逆向きの鈎部と止め部とにより、回転部1の逆回転のみを、逆回転用のスポーク13を介して逆回転用の内歯車14に伝達し、回転部1の順回転は伝達不能に構成されている。逆順回転用のフリーホイール12は慣性力で逆回転方向に回り続ける。このように、順回転用のフリーホイール8と逆回転用のフリーホイール12を逆向きに2箇所に設けることにより、順回転と逆回転の2方向の回転で発電機16,17で発電可能となっている。
【0036】
すなわち、回転部1を逆回転させると、逆回転用フリーホイール12に繋がっている逆回転用の内歯車14が回転し、逆回転用の内歯車14と噛み合う逆回転用の外歯車15が高速回転する。逆回転用の外歯車15が高速回転することにより、逆回転用の発電機17で発電する。
【0037】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる発電システムによる発電処理について説明する。
図5は、第1の実施形態にかかる発電処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0038】
乗りかご500で停電が発生したものとする(S1)。乗りかご500内の利用者がインターホン7で監視センター300に連絡した場合(S2:Yes)、監視センター300ではインターホン7からの通話を受ける(S12)。なお、停電が発生した旨を制御部4から制御盤200を介して監視センター300に通知してもよい。
【0039】
監視センターでは、保守員が一定時間内に乗りかご500に到着して救助できるかを判断する(S13)。一定時間に救助可能な場合には、監視センター300は、その旨を乗りかご500に通知する。
【0040】
乗りかご500では、S2でインターホン7で連絡しなかった場合(S2:No)、または救助可能との通知を監視センター300から受けた場合には、そのまま待機する(S3)。そして、制御盤200はバッテリー250の電力残量が所定の閾値以下であるか否かを判断し、電力残量が所定の閾値以下になったことを制御部4に伝達する(S4)。
【0041】
バッテリー250の電力残量が所定の閾値より大きい場合には(S4:No)、S3へ戻る。
一方、バッテリー250の電力残量が所定の閾値以下である場合には(S4:Yes)、制御部4は、制御盤200に対して、インターホン7にロック解除のアナウンスの出力指示、および、操作盤318の表示装置319の画面へのロック解除の旨の表示指示を送出する。これにより、制御盤200によって、インターホン7にロック解除のアナウンスが出力され、操作盤318の表示装置319の画面にロック解除の旨が表示される(S5)。
【0042】
図6は、第1の実施形態にかかる表示装置319の画面表示の一例を示す図である。
図6(a)に示すように、S5による表示が行われる。
【0043】
次に、制御部4は、ロック機構5にロック解除指示を行って、回転部1のロックを解除する(S6)。そして、制御部4は、制御盤200に対して、操作盤318の表示装置319の画面に対する発電の方法、残りの電力の使用可能時間の表示指示を出力する。これにより、制御盤200は、操作盤318の表示装置319の画面に対する発電の方法、残りの電力の使用可能時間の表示を出力する(S7)。例えば、
図6(b)に示すように、停電灯6、インターホン7の使用可能時間が操作盤318の表示装置319の画面に表示される。
【0044】
そして、利用者が回転部1を手回しで発電を開始する(S8)。
図7は、第1の実施形態にかかる手回し発電の処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0045】
まず、利用者が回転部1を手回しする(S21)。これにより、発電部2で発電が行われる(S22)。そして発電された電気が蓄電部3に蓄電される(S23)。
【0046】
制御部4は、蓄電部3の電力量を参照し、停電灯6、インターホン7が稼働できる程度の充電ができたか否かを判断する(S24)。そして、まだ、停電灯6、インターホン7が稼働できる程度の充電ができていない場合には(S24:No)、S21へ戻り、利用者による回転部1の回転を続行する。
【0047】
一方、停電灯6、インターホン7が稼働できる程度の充電ができた場合には(S24:Yes)、制御盤200に積まれたバッテリー250の残量が一定値以下、すなわち所定の閾値以下となった時点で、制御部4が蓄電部3から停電灯6およびインターホン7と制御盤200に送電され(S25)、停電灯6およびインターホン7が使用可能となる(S26)。
【0048】
このように本実施形態では、乗りかご500に設けられた手摺り100に内蔵される発電装置であって、手摺り100の外面を形成するとともに、利用者によって回転可能な回転部1と、回転部1による回転駆動によって電力を生成する発電部2と、発電部2により生成された電力を蓄電する蓄電部3と、を備えている。このため、本実施形態によれば、設置スペースを必要とせず、かつ意匠上の見栄えを損なうことなく、利用者が乗りかご内で、電力を発電して長時間の電力を蓄電することができ、利用者の不安を軽減することができる。
【0049】
また、本実施形態では、手摺り100は、回転部1の回転をロックするロック機構5と、ネットワークで接続される監視センターからの指示を受信した場合に、前記ロック機構のロックを解除する制御部4と、を備えている。このため、本実施形態では、監視センター300と連携して、発電を開始することができる。
【0050】
また、本実施形態では、制御部4は、制御盤200に積まれたバッテリー250の蓄電量が所定の閾値以下となった場合に、ロック機構5のロックを解除する。このため、停電灯6やインターホン7のためのバッテリー250の蓄電量が減少した時点で発電を開始することができ、利用者の便宜となる。
【0051】
また、本実施形態では、制御部4は、制御盤200を介し、監視センターからロック解除の指示を受けた場合に、ロック機構5のロックを解除する。このため、停電灯6やインターホン7のためのバッテリー250の蓄電量が減少する前から発電を開始することができ、利用者の便宜となる。
【0052】
また、本実施形態では、制御部4の指示により制御盤200は、ロック機構5のロックが解除された場合に、表示装置319に発電方法、または、停電灯またはインターホンの使用可能時間を表示させる。このため、本実施形態によれば、発電方法や使用時間を利用者が把握することができ、利用者の便宜となる。
【0053】
また、本実施形態では、制御部4の指示により制御盤200は、停電を検知した場合に、停電の旨を、監視センター300に送信する。これにより、本実施形態によれば、停電時に監視センター300との連携をより迅速に行うことができ、利用者の不安を軽減することができる。
【0054】
また、本実施形態では、制御部4の指示により制御盤200は、さらに、発電部2による発電が開始した場合に、発電開始の旨を、監視センター300に送信する。このため、本実施形態によれば、監視センター300との連携をより的確に行うことができ、利用者の不安をより軽減することができる。
【0055】
本実施形態では、回転部1は、順方向と逆方向の二方向に回転可能であり、発電部2は、発電機16と、発電機17と、を備え、回転部1による順方向回転が発電機16に伝達され、回転部1による逆方向回転が発電機17に伝達される。このため、本実施形態によれば、利用者は発電の際に回転部1から順方向回転、逆方向回転と連続した操作を手を回転部1から離さずに行うことができる。特に、乗りかご500内はスペースが狭いために、回転部1から手を離さずに発電することが可能となることで、利用者の便宜となる。
【0056】
[変形例1]
上記実施形態では、順方向回転のための発電機16と、逆方向回転のための発電機17の二つを設けていたが、これに限定されるものではない。
【0057】
図8は、変形例1にかかる手摺り1100の内部構成の一例を示す図である。
図8に示すように、順回転用の内歯車10に噛み合う二つの順回転用の外歯車11a,11bを設け、外歯車11aに発電機16aを、外歯車11bに発電機16bを接続する。一方、逆回転用の内歯車14に噛み合う二つの逆回転用の外歯車15a,15bを設け、外歯車15aに発電機17aを、外歯車15bに発電機17bを接続する。
【0058】
すなわち、本変形例では、発電部1102は、二つの順回転用の発電機16a,16bと、二つの逆回転用の発電機17a,17bとを備えている。このため、本実施形態では、より迅速に発電することが可能となり、利用者の不安をより低減することができる。
【0059】
なお、本変形例では、順回転用の発電機、逆回転用の発電機をそれぞれ3つ居以上設ける構成とすることもできる。この場合には発電機の数に応じた外歯車の数が必要となる。
【0060】
[変形例2]
図9は、変形例2の手摺り2100の構成の一例を示す図である。
本変形例では、発電部2と蓄電部3との間に電力を外部出力する出力端子としての電源差し込み口26が設けられている。本実施形態では、電源差し込み口26は4個設けられている。本変形例では、電源差し込み口26に携帯端末などを接続して電力供給することができ、停電時に利用者にとってより便宜となる。
【0061】
[その他変形例]
上記実施形態および変形例では、手摺り100を乗りかご500内に一つ設けていたが、これに限定されるものではなく、複数の手摺りを設けて発電装置として構成することもできる。これにより、発電効率を向上させることができる。
【0062】
発電装置は、かご内に利用者がいるという情報が得られるならば、乗場側や管理人室等に設けてもよい。また、乗りかご500内と併設して乗場などの他の場所に設置しても良い。
発電時の手摺り100の形状は、本実施形態の形状に限定されるものではなく、例えば、一部を変形させるクランク型でもよい。
【0063】
本実施形態では、手摺り100内部の蓄電部3、制御部4を設けているが、これに限定されるものではない。例えば、蓄電部3、制御部4を乗りかご500の壁面である側板の裏側に設けるように構成してもよい。
【0064】
また、手摺り100内部の蓄電部3、制御部4の設置位置は、
図1,2の配置に限定されるものではない。例えば、蓄電部3を回転部1の左側に配置するように構成しても良い。
【0065】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、手摺り100を発電装置として使用するものであったが、この第2の実施形態では、荷物を引っ掛けるための収納可能なフックを利用して発電する発電装置である。
【0066】
図10は、第2の実施形態にかかる収納可能フック19の外観を示す模式図である。
収納可能フック19は、乗りかご500内の利用者が必要な時に手荷物をぶら下げるフックで、通常時は乗りかご500内の側板に収納されている。収納可能フック19は、使用時は、
図10に示すように、引き出して使用される。
【0067】
図11は、第2の実施形態にかかる発電装置の構成および収納可能フック19が収納された状態での使用方法を示す図である。
図12は、第2の実施形態にかかる発電装置の構成および収納可能フック19を引き出した状態での使用方法を示す図である。
図13は、第2の実施形態にかかる発電装置の構成および収納可能フック19を引っ張った状態での使用方法を示す図である。
【0068】
本実施形態にかかる発電装置は、
図11~13に示すように、収納可能フック19と、発電機21を有する発電部23と、蓄電部24と、制御部25と、固定機構22と、紐状体27と、を主に備えている。なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、制御盤200が昇降路内に設けられ、停電灯6およびインターホン7用のバッテリー250が制御盤200に積まれている。そして、制御盤200は、監視センター300と制御部25に接続されている。
【0069】
収納可能フック19は、上述したとおり、乗りかご500の壁20に収納され、壁面外部に突出して手荷物をかけることが可能となっている。
発電機21は、乗りかご500の壁20内部に設けられている。蓄電部24は、乗りかご500の壁20内部に設けられ、発電機21により生成された電力を蓄電する。
紐状体27は、収納可能フック19と発電機21の回転部とを接続する。発電機21は、収納可能フック19が引っ張られることにより紐状体27を介して回転部が回転して電力を生成する。
【0070】
固定機構22は、収納可能フック19を壁面20に固定する。すなわち、収納可能フック19は壁20に固定された状態ではロックされており、引き出して突出させることはできても、引っ張ることはできない状態となっている。
【0071】
制御部25は、制御盤200を介し監視センター300からの指示を受信した場合に、固定機構22のロックを解除する。なお、制御部25の機能、および監視センター300の機能については第1の実施形態と同様である。
【0072】
本実施形態による発電処理については、
図5を用いて説明した第1の実施形態にかかる発電処理と同様に行われる。
【0073】
すなわち、乗りかご500内が停電し、監視センター300から、制御盤200を介して、ロック解除の指示を制御部425が受信したら、制御部425は、固定機構22のロックを解除する指示を固定機構22に送出し、固定機構22のロックが解除される。これにより、収納可能フック2719の引っ張りによる発電が可能となる。
【0074】
乗りかご500内の利用者は、
図13に示すように、収納可能フック19を引っ張ることにより、紐状体27に接続された発電機21の回転部が紐状体27の引っ張り力により回転し発電する。このとき回転部は紐状体27と繋がれているが、回転部にはゼンマイ式バネが組み込まれており、紐状体27を引っ張ると回転し、紐状体27を緩めると、回転部は元に戻る。これを繰り返すことにより発電が継続される。
【0075】
発電部23で発電した電気は、蓄電部24で蓄電される。蓄電した電気は、制御部25で制御され、停電灯6、インターホン7を使用可能となる。
【0076】
このように本実施形態では、発電装置は、乗りかご500内の利用者が必要な時に手荷物をぶら下げるフックで、通常時は乗りかご500内の側板に収納され、使用時は、引き出して使用される収納可能フックを備える。そして、紐状体27で、収納可能フック19と発電機21の回転部とを接続し、発電機21は、収納可能フック19が引っ張られることにより紐状体27を介して回転部が回転して電力を生成する。
【0077】
このため、本実施形態によれば、設置スペースを必要とせず、かつ意匠上の見栄えを損なうことなく、利用者が乗りかご内で、電力を発電して長時間の電力を蓄電することができ、利用者の不安を軽減することができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…回転部、2,23…発電部、3,24…蓄電部、4,25…制御部、5…ロック機構、6…停電灯、7…インターホン、8,12…フリーホイール、9,13…スポーク、10,14…内歯車、11,11a,11b,15,15a,15b…外歯車、16,16a,16b,17,17a,17b,21…発電機、18…蓄電池、19…収納可能フック、22…固定機構、27…紐状体、31…伝達部材、100,1100,2100…手摺り、318…操作盤、318B…車椅子用操作盤、319…表示装置、400…昇降路、500…乗りかご。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごに設けられた手摺りに内蔵される発電装置であって、
前記手摺りの外面を形成するとともに、利用者によって回転可能な回転部と、
前記回転部による回転駆動によって電力を生成する発電部と、
前記発電部により生成された電力を蓄電する蓄電部と、
を備える発電装置。
【請求項2】
前記回転部の回転をロックするロック機構と、
ネットワークで接続される監視センターからの指示を、前記監視センターと接続される制御盤を介して受信した場合に、前記ロック機構のロックを解除する制御部と、
をさらに備える請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、外部機器に電力供給するためのバッテリーの蓄電量が所定の閾値以下となった場合に、前記ロック機構のロックを解除する、
をさらに備える請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記ロック機構のロックを解除した場合に、前記制御盤を介して表示装置に発電方法、または、停電灯またはインターホンの使用可能時間を表示させる、
請求項2に記載の発電装置。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、停電を検知した場合に、停電の旨を、前記制御盤を介して前記監視センターに送信する、
請求項2に記載の発電装置。
【請求項6】
前記制御部は、さらに、前記発電部による発電が開始した場合に、発電開始の旨を、前記制御盤を介して前記監視センターに送信する、
請求項2に記載の発電装置。
【請求項7】
前記回転部による回転を前記発電部に伝達する伝達機構、をさらに備え、
前記回転部は、順方向と逆方向の二方向に回転可能であり、
前記発電部は、第1の発電機と、第2の発電機と、を備え、
前記伝達機構は、前記回転部による順方向回転を、前記第1の発電機に伝達する第1の機構と、前記回転部による逆方向回転を、前記第2の発電機に伝達する第2の機構と、を備える、
請求項3に記載の発電装置。
【請求項8】
前記第1の機構は、
前記第1の発電機の回転軸に接続される第1の外歯車と、
前記第1の外歯車と噛み合う第1の内歯車と、
前記第1の内歯車と前記回転部とに接続されて、前記回転部の順方向回転のみを前記第1の内歯車に伝達する第1のホイールと、を備え、
前記第2の機構は、
前記第2の発電機の回転軸に接続される第2の外歯車と、
前記第2の外歯車と噛み合う第2の内歯車と、
前記第2の内歯車と前記回転部とに接続されて、前記回転部の逆方向回転のみを前記第2の内歯車に伝達する第2のホイールと、を備える、
請求項7に記載の発電装置。
【請求項9】
前記回転部による回転を前記発電部に伝達する伝達機構、をさらに備え、
前記発電部は、複数の発電機を有し、
前記伝達機構は、前記回転部の回転を、前記複数の発電機のそれぞれに伝達する、
請求項3に記載の発電装置。
【請求項10】
前記蓄電部に蓄電された電力を外部に出力するための出力端子、
をさらに備える請求項1に記載の発電装置。
【請求項11】
エレベータの乗りかごに設けられた発電装置であって、
前記乗りかごの壁面に収納され、前記壁面の外部に突出して手荷物をかけることが可能なフックと、
前記乗りかごの壁内部に設けられた発電機と、
前記乗りかごの壁内部に設けられ、前記発電機により生成された電力を蓄電する蓄電部と、
前記フックと前記発電機の回転軸とを接続する紐状体と、備え、
前記発電機は、前記フックが引っ張られることにより前記紐状体を介して前記回転軸が回転して電力を生成する、
発電装置。
【請求項12】
前記フックを固定する固定機構と、
ネットワークで接続される監視センターからの指示を受信した場合に、前記固定機構のロックを解除する制御部と、
をさらに備える請求項11に記載の発電装置。