(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041294
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 15/02 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
F24C15/02 F
F24C15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146016
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤林 聡
(72)【発明者】
【氏名】和田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】関 真人
(72)【発明者】
【氏名】本間 満
(57)【要約】
【課題】 グリル庫のドア表面で発生した上昇気流がドアのハンドル内に進入しても、ハンドルの温度を所定以下に抑制することができる加熱調理器を提供する。
【解決手段】 グリル庫を備えた加熱調理器であって、前記グリル庫は、前面開口を有する加熱室と、該加熱室の内部を加熱するヒータと、前記前面開口を開閉するドアを有しており、該ドアは、前記ドアを開閉する際に使用者が把持するハンドルと、前記ドアの前面を構成するドア化粧板と、前記ドアの背面、側面、底面を構成するフレームと、を有しており、前記ハンドルは、前記ドアの上部に設けられたものであり、前端に、下方から上向きに挿入した使用者の指を引っ掛ける垂直壁を有するとともに、上面に、上下に貫通する通気口を有する加熱調理器。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫を備えた加熱調理器であって、
前記グリル庫は、前面開口を有する加熱室と、該加熱室の内部を加熱するヒータと、前記前面開口を開閉するドアを有しており、
該ドアは、
前記ドアを開閉する際に使用者が把持するハンドルと、
前記ドアの前面を構成するドア化粧板と、
前記ドアの背面、側面、底面を構成するフレームと、を有しており、
前記ハンドルは、前記ドアの上部に設けられたものであり、
前端に、下方から上向きに挿入した使用者の指を引っ掛ける垂直壁を有するとともに、
上面に、上下に貫通する通気口を有することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記垂直壁は、前記ドア化粧板より前方に位置していることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記上面は、後方より前方が低い傾斜面であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記通気口は、前記上面の略中央部に設けた、横方向に長い開口であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の加熱調理器において、
前記ドア化粧板は、ガラス面であることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器が内蔵するグリル庫のドア構造を開示する文献として、特許文献1が知られている。この文献の要約書には、「化粧パネルが高温になることがなく使用者の安全を確保でき、キッチン台前面の意匠の統一を図ることができる加熱調理器」に関し、「加熱手段を内部に有する本体と、被加熱物を載置する天板2bを備える加熱調理器であって、加熱調理器はキッチン台200に収容された状態で使用され、キッチン台の前面側に位置する加熱調理器の本体の前面に、本体内に設けられた調理庫10内に被調理物を出し入れするための開口を有し、調理庫の開口を閉塞する開閉自在の扉体6を備え、扉体は少なくとも調理庫の開口と対向する閉塞面とキッチン台の前面側に位置する表面とを有し、閉塞面側から表面側への伝導熱を抑制する断熱構造を備え、キッチン台の前面に取り付けられている面材と同一素材で、キッチン台の前面とほぼ同じ平面となる着脱自在の扉体用化粧パネル21を、扉体の表面側となる位置に取り付けるようにした。」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の扉体(グリル庫のドア)は、扉体用化粧パネルが高温にならないように、閉塞面側から表面側への伝導熱を抑制する断熱構造を備えるものであるが、この断熱構造で伝導熱を完全に遮断できるわけではないため、調理中の扉体表面ではある程度の温度上昇が発生する。
【0005】
扉体の表面温度が上昇すると、扉体表面では緩やかな上昇気流が発生し、その一部は扉体の上部に設けた手掛け22(特許文献1の
図3など参照)に進入する。同文献の手掛け22は、扉体を引き出す際に使用者が下方から指を挿入して把持可能な上向きに凸形状の空間であるため、手掛け22内に進入した周囲より高温の空気は手掛け22内に留まり、扉体の断熱構造を通過した伝導熱によって経時的に加熱される。この作用によって手掛け22内の空気が継続的に加熱されると、手掛け22の温度が十分に下がらない恐れがある
そこで、本発明は、グリル庫のドア表面で発生した上昇気流がドアのハンドル内に進入しても、ハンドルの温度を所定以下に抑制することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の加熱調理器は、グリル庫を備えた加熱調理器であって、前記グリル庫は、前面開口を有する加熱室と、該加熱室の内部を加熱するヒータと、前記前面開口を開閉するドアを有しており、該ドアは、前記ドアを開閉する際に使用者が把持するハンドルと、前記ドアの前面を構成するドア化粧板と、前記ドアの背面、側面、底面を構成するフレームと、を有しており、前記ハンドルは、前記ドアの上部に設けられたものであり、前端に、下方から上向きに挿入した使用者の指を引っ掛ける垂直壁を有するとともに、上面に、上下に貫通する通気口を有するものとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱調理器によれば、グリル庫のドア表面で発生した上昇気流がドアのハンドル内に進入しても、ハンドルの温度を所定以下に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】キッチンに組み込んだ一実施例の加熱調理器のドア表面側の気流の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1から
図5を用いて、本発明の一実施例に係る加熱調理器100を説明する。なお、以下では、加熱調理器100に相対した使用者の視線を基準として、前後・上下・左右の各方向を定義する。
【0010】
まず、
図1を用いて、本実施例の加熱調理器100の全体構成を概説する。ここに例示する加熱調理器100は、システムキッチンのキッチン台に組み込むビルトインタイプのIH(Induction Heating)クッキングヒータであり、金属製の筐体である本体1と、本体1の上面を覆う耐熱ガラス製のトッププレート2と、本体1の前面左側に設けたグリル庫3と、本体1の前面右側に設けた化粧パネル4を有している。なお、本体1の内部には、誘導加熱コイル、インバータ、制御基板なども備えるが、このような周知構造については詳細説明を省略することとする。
【0011】
トッププレート2の表面には、鍋載置部21と操作部22が設けられる。鍋載置部21の下方には誘導加熱コイルが配置されているため、使用者が操作部22に入力した指令(火力、加熱時間など)に応じて、鍋載置部21に載置した金属鍋を誘導加熱することができる。
【0012】
グリル庫3は、加熱室30の上下に配置したヒータからの輻射熱で食材を加熱する調理器であり、スライド式のドア5を引き出すことで加熱室30の前面開口が開放され、調理前後の食材を出し入れすることができる。
【0013】
グリル庫3で食材を調理する際に使用者が操作する操作部は操作部22であり、ここに入力した指令(火力、加熱時間など)に応じてヒータが制御される。
【0014】
<グリル庫3の構造>
図2は、グリル庫3の概略構成を説明するために、
図1の加熱調理器100をAA断面で仮想的に切断した断面図である。ここに示すように、本実施例のグリル庫3は、加熱室30、上ヒータ31、下ヒータ32、調理パン33、および、ドア5を備えている。加熱室30は、前方が開放され、上下左右後の各面で囲われた金属箱体である。上ヒータ31と下ヒータ32は、加熱室30の上面と下面に配置されたヒータであり、具体的には、シーズヒータやマイカヒータ等である。調理パン33は、食材を載置するための金属容器である。ドア5は、加熱室30の前面開口を開閉するための部材である。
【0015】
このような構成のグリル庫3によれば、使用者がドア5を開き、食材を載置した調理パン33を加熱室30に入れた後、ドア5を閉じ、更に、操作部22から所望の指令を入力して調理を開始することで、上ヒータ31と下ヒータ32が通電制御され、調理パン33内の食材を適切に加熱調理することができる。
【0016】
<ドア5の構造>
図3は、グリル庫3から取り外した状態のドア5の外観斜視図である。ここに示すように、本実施例のドア5は、ドア5の上部を構成するとともに、ドア5を開閉する際に使用者が把持する樹脂製のハンドル51と、ドア5の前面を構成するガラス面52と、ドア5の背面、側面、底面を構成する金属製のフレーム53を備えている。また、ハンドル51の上面51aの略中央部には、上下に貫通する、横方向に長い通気口51bを備えている。なお、ガラス面52は、耐熱性のドア化粧板の一態様であり、他種のドア化粧板を用いても良い。
【0017】
図4の左図は、
図3のドア5をBB断面で仮想的に切断した断面図であり、
図4の右図は、左図のハンドル51付近の拡大図である。この拡大図に示すように、ハンドル51の前端には、使用者がドア5を引き出す際に、ハンドル51の下方から上向きに挿入した指を引っ掛けるための垂直壁51cが設けられている。この垂直壁51cは、ガラス面52よりも前方に位置している。そのため、ハンドル51内に指を挿入する際に、指が比較的高温のガラス面52と接触しにくいようになっている。
【0018】
図4のドア5を使用する場合も、「発明が解決しようとする課題」欄で説明した特許文献1の扉体と同様に、ドア表面で発生した緩やかな上昇気流の一部が、ハンドル51の下方からハンドル内に進入するが、本実施例のドア5においては、ハンドル51内に進入した空気が通気口51bを通過して上方に抜けるため、ハンドル51内に同じ空気が留まり続けることはない。すなわち、本実施例のドア5のハンドル51内には下方から新しい空気が順次供給されるため、下方から供給される比較的低温の空気によってハンドル51が冷却され続ける。この結果、本実施例のドア5によれば、通気口51bを設けない構成のドアに比べ、ハンドル51の温度を10℃程度下げることができる。
【0019】
図5は、本実施例の加熱調理器100をシステムキッチンに組み込んだ状態での、ドア表面での空気流の模式図である。なお、ここでは、ドア表面での空気流を説明する際に不要な構成を適宜省略している。
【0020】
図5に示すように、ハンドル51の上面51aは、後方より前方が低い傾斜面となっており、ハンドル51とキッチン台下面との距離は、後方より前方が広くなっている。そのため、ガラス面52の表面で発生し、ハンドル51の内部に進入した上昇気流は、一点鎖線の経路で示すように、ハンドル51の通気口51bを抜けた後、キッチン台の下方を通風抵抗のより小さい前方に誘導される。このように、ハンドル51の上面51aを傾斜させることで、図示する流れを効率的に形成することができる。なお、この空気流により、ドア5の上方のキッチン台の下面も冷却することができる。
【0021】
以上で説明したように、本実施例の加熱調理器によれば、グリル庫のドア表面で発生した上昇気流がドアのハンドル内に進入しても、ハンドルの温度を所定以下に抑制することができる。
【符号の説明】
【0022】
100 加熱調理器
1 本体
2 トッププレート
21 鍋載置部
22 操作部
3 グリル庫
30 加熱室
31 上ヒータ
32 下ヒータ
33 調理パン
4 化粧パネル
5 ドア
51 ハンドル
51a 上面
51b 通気口
51c 垂直壁
52 ガラス面
53 フレーム