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特開2024-4130入浴者監視システム及び入浴者監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004130
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】入浴者監視システム及び入浴者監視方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/08 20060101AFI20240109BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240109BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240109BHJP
   A47K 4/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G08B21/08
G08B25/04 K
G01B11/00 A
A47K4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103623
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】加沢 徹
(72)【発明者】
【氏名】相澤 桂
【テーマコード(参考)】
2D132
2F065
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2D132GA00
2F065AA04
2F065AA53
2F065BB15
2F065CC16
2F065DD02
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL62
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065RR09
2F065UU06
5C086AA22
5C086AA46
5C086AA52
5C086BA04
5C086CA11
5C086CA21
5C086CA22
5C086CB15
5C086CB27
5C086EA08
5C086EA13
5C086FA02
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA19
5C087AA32
5C087BB11
5C087DD03
5C087DD24
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF13
5C087GG35
(57)【要約】
【課題】入浴者の監視を容易に行えるようにする。
【解決手段】入浴者監視システムを、浴槽に張られた水面と水面よりも上方の浴槽内壁とによって規定される空間内で複数の方向に測距波を送信して空間内を走査すると共に、反射物で反射された測距波を受信して反射物までの距離を測定する浴槽センサと、測距波が浴槽内壁で反射される場合と浴槽内の入浴者によって反射される場合とで距離が異なることに基づいて入浴者を検知して監視する監視装置とによって構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内の水面と前記水面よりも上方の浴槽内壁とによって規定される空間内で複数の方向に測距波を送信して前記空間内を走査すると共に、反射物で反射された前記測距波を受信して前記反射物までの距離を測定する浴槽センサと、
前記測距波が前記浴槽内壁で反射される場合と前記浴槽内の入浴者によって反射される場合とで前記距離が異なることに基づいて前記入浴者を検知して監視する監視装置と
を備えることを特徴とする入浴者監視システム。
【請求項2】
前記浴槽センサは、前記測距波を送受信する測定部を前記水面より上に出した状態で水面に浮かぶように構成され、前記水面に浮かんだ状態で前記測距波を送受信することを特徴とする請求項1に記載の入浴者監視システム。
【請求項3】
前記浴槽センサは、水面を浮遊することによる変位及び傾きを検出する加速度センサを有し、前記浴槽センサによる測定結果は、前記加速度センサの出力値に基づいて補正されることを特徴とする請求項2に記載の入浴者監視システム。
【請求項4】
前記浴槽センサは、
充電式のバッテリと、
前記バッテリを外部から非接触で充電するための充電アンテナと
を有することを特徴とする請求項1に記載の入浴者監視システム。
【請求項5】
前記浴槽センサは、前記水面近傍の水平面内において複数方向に前記測距波を送受信して反射物までの距離を測定すると共に、前記水平面内における各方向において前記水平面から上方の複数方向に前記測距波を送受信して反射物までの距離を測定することを特徴とする請求項1に記載の入浴者監視システム。
【請求項6】
前記浴槽センサは、
前記測距波を透過させる透過状態と前記測距波を反射させる反射状態とを切換可能な反射板を複数有し、
所定方向から入射する前記測距波を異なる方向へ反射するように角度を変えて配設された複数の前記反射板で、各反射板の前記透過状態と前記反射状態との切り換えを制御することにより、複数の異なる方向で前記測距波を送受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の入浴者監視システム。
【請求項7】
前記浴槽センサは、
液晶分子の並びを変化させることによって前記測距波の反射方向を変更可能な反射板を有し、
前記反射板における液晶分子の並びを制御することにより、複数の異なる方向で前記測距波を送受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の入浴者監視システム。
【請求項8】
浴槽センサが、浴槽内の水面と前記水面よりも上方の浴槽内壁とによって規定される空間内で複数の方向に測距波を送信して前記空間内を走査すると共に、反射物で反射された前記測距波を受信して前記反射物までの距離を測定する工程と、
監視装置が、前記測距波が前記浴槽内壁で反射される場合と前記浴槽内の入浴者によって反射される場合とで前記距離が異なることに基づいて前記入浴者を検知して監視する工程と
を含むことを特徴とする入浴者監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入浴者監視システム及び入浴者監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽内の入浴者の異常を検知する入浴者監視システムが利用されている。例えば入浴者に溺水の危険がある場合に異常事態として検知される。特許文献1には、定在波レーダを利用するセンサを浴室の壁に設け、センサからマイクロ波を出射して入浴者を検知するシステムが開示されている。センサは、マイクロ波が、浴槽の上方を通過して、浴室内の洗い場から浴室外の脱衣所まで届くように設置されている。センサによって検知していた入浴者が、浴室から脱衣所へ移動することなく検知不能になると、浴槽内の溺水又は浴室内での転倒の可能性があると判定される。
【0003】
特許文献2には、3次元距離画像を撮像可能なTOF(Time of Flight)カメラを浴室の天井に設け、TOFカメラから赤外光を照射して入浴者を検知するシステムが開示されている。上方から照射された赤外光は、浴槽の上端及び浴槽内の入浴者によって反射される。このため、TOFカメラによる撮像結果に基づいて、TOFカメラから浴槽上端までの距離と入浴者までの距離とを特定することができる。入浴者の頭頂部までの距離と浴槽上端までの距離とに基づいて、頭頂部と浴槽上端との位置関係を特定することにより、溺水の有無が判定される。
【0004】
特許文献3には、入浴者の首にかけたペンダント型のセンサによって溺水を検知するシステムが開示されている。入浴者の頭部が浴槽内に沈むとセンサも浴槽内に沈む。沈水を検知するセンサを利用することによって、入浴者の溺水を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-55380号公報
【特許文献2】特開2017-146714号公報
【特許文献3】特開2000-155881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の技術は、定在波レーダ、TOFカメラ等の高額な装置を利用するためコスト上の問題がある。また、これらの装置を浴室の壁や天井に固定する設置工事を行う必要がある。特許文献1及び2に比べると特許文献3の技術は容易に導入可能であるが、入浴者がペンダント型のセンサを装着せずに入浴してしまう可能性がある。例えば、ペンダントを付け慣れない入浴者が違和感からセンサを外したり、身体を洗う際にセンサを外したりして、そのまま浴槽に入ってしまうと、入浴者を監視できなくなる。
【0007】
本開示は、上記課題を含む従来技術を鑑みてなされたもので、その目的の1つは、導入及び利用が容易な入浴者監視システム及び入浴者監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る入浴者監視システムは、浴槽内の水面と前記水面よりも上方の浴槽内壁とによって規定される空間内で複数の方向に測距波を送信して前記空間内を走査すると共に、反射物で反射された前記測距波を受信して前記反射物までの距離を測定する浴槽センサと、前記測距波が前記浴槽内壁で反射される場合と前記浴槽内の入浴者によって反射される場合とで前記距離が異なることに基づいて前記入浴者を検知して監視する監視装置とを備える。
【0009】
上記構成において、前記浴槽センサは、前記測距波を送受信する測定部を前記水面より上に出した状態で水面に浮かぶように構成され、前記水面に浮かんだ状態で前記測距波を送受信してもよい。
【0010】
上記構成において、前記浴槽センサは、水面を浮遊することによる変位及び傾きを検出する加速度センサを有し、前記浴槽センサによる測定結果は、前記加速度センサの出力値に基づいて補正されてもよい。
【0011】
上記構成において、前記浴槽センサは、充電式のバッテリと、前記バッテリを外部から非接触で充電するための充電アンテナとを有していてもよい。
【0012】
上記構成において、前記浴槽センサは、前記水面近傍の水平面内において複数方向に前記測距波を送受信して反射物までの距離を測定すると共に、前記水平面内における各方向において前記水平面から上方の複数方向に前記測距波を送受信して反射物までの距離を測定してもよい。
【0013】
上記構成において、前記浴槽センサは、前記測距波を透過させる透過状態と前記測距波を反射させる反射状態とを切換可能な反射板を複数有し、所定方向から入射する前記測距波を異なる方向へ反射するように角度を変えて配設された複数の前記反射板で、各反射板の前記透過状態と前記反射状態との切り換えを制御することにより、複数の異なる方向で前記測距波を送受信してもよい。
【0014】
上記構成において、前記浴槽センサは、液晶分子の並びを変化させることによって前記測距波の反射方向を変更可能な反射板を有し、前記反射板における液晶分子の並びを制御することにより、複数の異なる方向で前記測距波を送受信してもよい。
【0015】
本開示に係る入浴者監視方法は、浴槽センサが、浴槽内の水面と前記水面よりも上方の浴槽内壁とによって規定される空間内で複数の方向に測距波を送信して前記空間内を走査すると共に、反射物で反射された前記測距波を受信して前記反射物までの距離を測定する工程と、監視装置が、前記測距波が前記浴槽内壁で反射される場合と前記浴槽内の入浴者によって反射される場合とで前記距離が異なることに基づいて前記入浴者を検知して監視する工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る入浴者監視システム及び入浴者監視方法によれば、システムの導入及び利用を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る入浴者監視システムの概要を説明するための図である。
図2図2は、浴槽センサの使用例を示す図である。
図3図3は、浴槽センサが測距波の送受信方向を変更するための構成例を示す図である。
図4図4は、浴槽センサによる測定結果の一例を示す図である。
図5図5は、入浴者監視システムの構成例を示すブロック図である。
図6図6は、入浴者監視システムで実行される処理の例を示すフローチャートである。
図7図7は、浴槽センサの構成例を示す図である。
図8図8は、測定部が測距波の送受信方向を変更する方法を説明するための図である。
図9図9は、複数の測定部が測距波の送信部及び受信部を共用する例を説明するための図である。
図10図10は、液晶型の反射部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る入浴者監視システム及び入浴者監視方法の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る入浴者監視システム1の概要を説明するための図である。通常、入浴は浴槽に湯を張って行われるが、本実施形態では水と湯とを区別することなく水と記載する。
【0019】
入浴者監視システム1は、浴槽センサ100及び監視装置200を含む。浴槽センサ100は、測距波800(800a~800d)を利用して、測距波800を反射する反射物までの距離を調べるためのセンサである。浴槽センサ100は、浴槽301に張られた水の水面300と、水面300の外に出ている浴槽301の内壁301aとによって規定される空間内で、複数の方向に測距波800を送信して空間内を走査する。浴槽センサ100は、反射物で反射された測距波800を受信することにより、反射物までの距離を測定する。
【0020】
浴槽センサ100は、防水性を有し、内部に設けられたバッテリによって動作する。図2は、浴槽センサ100の使用例を示す図である。例えば、浴槽センサ100は、図2(a)に示すように、浴槽301内を自由に移動できるように、水面300に浮かべて使用される。浴槽センサ100は内蔵バッテリによって単独動作可能であるため、配線等を設けることなく浴槽301内に浮遊させた状態で使用することができる。
【0021】
浴槽センサ100は、上下方向以外の移動を制限された状態で使用されてもよい。例えば、図2(b)に示すように、浴槽センサ100が、貫通穴162aが形成された取付部162を備え、浴槽301に対して脱着可能に装着された支持部材161の支持軸161aに、貫通穴162aを挿通して使用されてもよい。浴槽301に固定された支持軸161aによって、浴槽センサ100の水平方向の移動は制限されるが、浴槽センサ100は、水面300の高さに応じて上下に移動することができる。例えば、支持軸161aの断面及び貫通穴162aを多角形、楕円形等の形状にして、浴槽センサ100が、水面300の高さに応じて、上下方向にのみ移動できるようにしてもよい。また、例えば、支持軸161aの断面及び貫通穴162aを円形状にして、浴槽センサ100が上下方向に加えて支持軸161a周りに回動できるようにしてもよい。支持軸161a及び取付部162を設けず、支持部材161と浴槽センサ100の間を、紐やチェーンで接続する態様であってもよい。
【0022】
入浴者監視システム1は、浴槽301の水面300に浴槽センサ100を浮かべるだけで、入浴者500の溺水の可能性を検知可能である点に1つの特徴を有している。図1に示すように、水面300に浮かんだ浴槽センサ100が、水面300近傍から、すなわち正常な姿勢で入浴する入浴者500の頭部を見上げる位置から、入浴者500を検知することにより、溺水を高精度に検知することができる。
【0023】
浴槽センサ100は、水面300に浮かべることが好ましいが、図2(c)に示すように、浴槽センサ100を浴槽301の内壁301aに固定して利用する態様であってもよい。例えば、浴槽センサ100の側面に吸盤163を設け、水面300に浮かべた浴槽センサ100を浴槽301の内壁301aに押し付けて、吸盤163によって浴槽センサ100を内壁301aに固定して使用してもよい。
【0024】
浴槽センサ100の側面下部又は底面近傍に、浴槽センサ100が水に浸かっていることを検知するための水検知センサを設けて、浴槽センサ100が水面300から出た状態が所定時間継続すると、浴槽センサ100から警報音を発するようにしてもよい。これにより、浴槽センサ100が想定外の方法で使用されることを回避することができる。
【0025】
浴槽センサ100の本体上部には、測距波800が透過する測距窓102が設けられている。浴槽センサ100は、測距窓102から測距波800を送受信する。浴槽センサ100は、測距窓102が水面300より上にある状態で水面300に浮かぶように構成されている。例えば、浴槽センサ100は、水面300に浮かんだ状態で、水面300から数十mm上の位置を水平に通過するように、測距窓102を介して測距波800を送受信することができる。
【0026】
浴槽センサ100は、水平面内において測距波800を送受信する方向を変更することができる。また、浴槽センサ100は、鉛直面内において水平方向から上方に測距波800の送受信する方向を変更することができる。
【0027】
図3は、測距波800の送受信方向を変更するための構成例を示す図である。測距波800の送受信方向を変更する方法は特に限定されないが、例えば図3(a)又は図3(b)に示すように送受信方向を変更すればよい。
【0028】
具体的には、図3(a)に示すように、浴槽センサ100の内部において、第1支持台601に回転可能に取り付けた第2支持台602に、測距波800を送受信する測定部110を固定する。浴槽センサ100が、鉛直軸11周りに水平面内で第1支持台601を回転駆動し、水平軸12周りに鉛直面内で第2支持台602を回転駆動することにより、測距波800を送受信する方向を変更すればよい。図3(b)に示すように、測定部110の位置を固定して、第2支持台602に代えて第1支持台601に取り付けた反射板603を水平軸12周りに回転駆動することにより、測距波800の送受信方向を変更してもよい。支持台601、602及び反射板603の回転駆動は、駆動部として利用するソレノイド、モータ等のアクチュエータによって行えばよい。この他、1又は複数のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型のミラーを利用してレーザ光の送受信方向を変更する態様であってもよい。また、複数の反射板を組み合わせて光学的に測距波800の送受信方向を変更してもよいが、これについての具体例は後述する。なお、図2(a)及び図2(b)に示したように、浴槽センサ100が水面300を浮遊する場合は、加速度センサ等を利用して浴槽センサ100の変位量及び傾斜角度を検出し、検出結果に基づいて測距波800の送受信方向を制御すればよい。また、浴槽センサ100の変位量及び傾斜角度に基づいて、浴槽センサ100で得られた測定結果が補正される態様であってもよい。
【0029】
浴槽センサ100は、例えば図1に示すように、水平方向に送受信した測距波800aで浴槽301の内壁301aまでの距離を測定し、鉛直方向に角度を変更しながら測定を複数回繰り返して測距波800bにより浴室壁面302までの距離を測定する。浴槽センサ100は、測距波800の送受信方向を左方向に変更しながら同様の測定を繰り返す。これにより、浴槽センサ100は、浴槽301内部の水面300よりも上の空間と、浴槽301上端よりも上の浴室壁面302で囲まれた空間の一部とを走査した測定結果を得ることができる。
【0030】
図1では、測距波800aの送受信方向から左側に略90度変更した方向で送受信する測距波800c、800dを示しているが、浴槽センサ100は、水平方向360度の測定を実行可能に構成されている。このため、水面300を浮遊する浴槽センサ100が図1とは異なる位置に浮かんでいる場合でも、水面300と、水面300よりも上の浴槽301の内壁301aとによって規定される空間を測距波800で走査した測定結果を得ることができる。また、浴槽センサ100は、浴槽301よりも上にある浴室壁面302の一部を測距波800で走査した測定結果を得ることができる。
【0031】
図4は、測定結果の一例を示す図である。図4の各黒丸は、浴槽センサ100が測距波800を送受信して距離を測定した測定点600を示している。図4に示すように、浴槽センサ100は、水面300より上の浴槽301の内壁301aを水平方向及び鉛直方向に走査した複数の測定点600において、浴槽センサ100から各測定点600までの距離を測定することができる。同様に、浴槽センサ100は、浴室壁面302の一部を水平方向及び鉛直方向に走査した複数の測定点600において、浴槽センサ100から各測定点600までの距離を測定することができる。
【0032】
浴槽センサ100は水平方向360度で測定を行う。このため、図4には表れていないが、水面300より上にある浴槽301の内壁301a全周において、浴槽センサ100からの距離が測定された測定点600が存在している。
【0033】
なお、図4は例示であって、測定点600の数は特に限定されない。例えば、浴室や浴槽301のサイズに応じて、測定点600の数、すなわち測定間隔を変更してもよいし、入浴者500が子供であるか大人であるかに応じて、測定間隔を変更してもよい。浴室壁面302までの距離を、図4に示す測定点600よりもさらに上方まで測定する態様であってもよい。浴室壁面302を測定対象外として、水面300と浴槽301の内壁301aとで囲まれた浴槽301内の空間でのみ測定を行う態様であってもよい。
【0034】
浴槽センサ100は、外部装置と無線通信を行って測定結果を外部装置へ送信することができる。例えば、浴槽センサ100は、所定の時間間隔で、繰り返し測定を実行して、図1に示すように、測定結果を監視装置200へ送信する。
【0035】
監視装置200は、浴槽センサ100で得られた測定結果を受信して、入浴者500の異常を検知するための処理を実行する。監視装置200は、入浴者500がいない浴槽301内で浴槽センサ100が取得した測定結果から、浴室モデルを作成する(S1)。例えば、監視装置200は、図4に破線で示すように、黒丸で示す複数の測定点600を結ぶことによって、水面300より上の浴槽301の内壁301aと浴室壁面302とを3次元的に再現した浴室モデルを作成する。
【0036】
入浴者500が浴槽301に入ると、測距波800が入浴者500によって反射されるため、浴槽センサ100で得られる距離の測定結果が変化する。監視装置200は、この距離の変化に基づいて入浴者500を検知する(S2)。入浴者500を検知した監視装置200は、入浴者500の異常を検知するための処理を開始する(S3)。
【0037】
監視装置200内には、浴槽センサ100の測定結果から、異常が発生したと判定するための判定条件が予め準備されている。監視装置200は、判定条件に基づいて入浴者500の異常を検知する。例えば、入浴者500の位置が徐々に低くなって検知できなくなると異常事態と判定される。また、例えば、入浴者500が長時間移動しない場合に異常事態と判定される。
【0038】
異常事態を示す判定結果が得られた場合、監視装置200は、所定の報知処理を実行する。報知処理の内容は特に限定されないが、例えば、監視装置200が表示装置を備え、異常事態を示す情報を表示装置に表示して報知してもよい。監視装置200がスピーカを備え、異常事態を示す音をスピーカで再生して報知してもよい。監視装置200が、異常事態を外部装置に通知して、外部装置が表示や音によって異常事態を報知する態様であってもよい。
【0039】
入浴者監視システム1は、浴槽301の水面300に浮かべた浴槽センサ100を利用して、入浴者500を検知する。浴槽301内の水量が同じであっても、入浴者500によって水位が変化する。また、同じ入浴者500であっても全身浴、半身浴等の入浴姿勢によって水位が変化する。浴槽センサ100は、水面300に浮かべた状態で使用されるため、浴槽301内の水位によらず、水面近傍において入浴者500を検知することができる。これにより、入浴者500の溺水が発生した可能性がある場合に、これを高精度に検知することができる。
【0040】
[入浴者監視システムの構成]
入浴者監視システム1の構成例を説明する。図5は、入浴者監視システム1の構成例を示すブロック図である。入浴者監視システム1が、浴槽センサ100及び監視装置200に加えて、通信端末250を含んでいてもよい。例えば、表示部、操作部、記憶部及び通信部を備えるスマートフォン等の端末が、通信端末250として利用される。浴槽センサ100、監視装置200及び通信端末250は、ネットワーク10を介して通信可能に接続される。
【0041】
浴槽センサ100は、測定部110、制御部120、通信部130、記憶部140及び加速度センサ150を含む。通信部130は、外部装置と無線通信を行う。加速度センサ150は、浴槽センサ100の変位量及び傾斜角度を検出する。記憶部140は、測定部110による測定結果を含む各種データの保存に利用される。記憶部140は、制御部120の動作に必要な各種データの保存にも利用される。制御部120が、記憶部140に保存された各種データを利用しながら、浴槽センサ100の各部を制御することにより、本実施形態に記載する浴槽センサ100の機能及び動作が実現される。
【0042】
測定部110は、測距波800を送信する送信部111と、反射物で反射されて戻ってきた測距波800受信する受信部112と、測距波800の送受信方向を変更する変更部113とを含む。図3に示した例では、測定部110が送信部111及び受信部112を内蔵し、第1支持台601、第2支持台602及び反射板603と、これらを回転駆動する駆動部とが変更部113を構成する。
【0043】
測定部110が送受信する測距波800の種類は、入浴者500、浴槽301、浴室壁面302で反射可能かつ人体に無害な電磁波であれば、特に限定されない。例えば、測定部110は、波長が1400nm以上の赤外線レーザを測距波800として利用する。
【0044】
浴槽センサ100の制御部120は、センサ制御部121及びデータ出力部122を含む。センサ制御部121は、測定部110の動作を制御する。具体的には、センサ制御部121は、測定部110の変更部113を制御して、測定部110による測距波800の送受信方向を変更する。また、センサ制御部121は、送信部111からの測距波800の送信と、受信部112による測距波800の受信とを制御する。これにより、浴槽センサ100は、測定部110が送受信する測距波800の送受信方向を変更しながら、各方向で反射物までの距離を測定できるようになっている。
【0045】
データ出力部122は、測定部110で得られた測定結果を含むデータを、通信部130を介して監視装置200に送信する。浴槽センサ100から監視装置200に送信されるデータには、浴槽センサ100から見た測距波800の送受信方向と、各送受信方向で得られた浴槽センサ100から反射物までの距離と、加速度センサ150の出力値とが含まれる。
【0046】
監視装置200は、制御部220、通信部230及び記憶部240を含む。監視装置200がさらに操作部及び表示部を含んでいてもよい。通信部230は外部装置と無線通信を行う。記憶部240は、浴槽センサ100から受信したデータ、浴室モデルのデータ等の保存に利用される。記憶部240は、制御部220の動作に必要な各種データの保存にも利用される。制御部220が、通信部230で受信した情報に基づいて、記憶部240に保存された各種データを利用しながら各部を制御することにより、本実施形態に記載する入浴者監視システム1の機能及び動作が実現される。
【0047】
制御部220は、データ解析部221、異常検知部222及び報知部223を含む。データ解析部221は、浴槽センサ100から受信したデータを解析する。データ解析部221は、浴槽センサ100の測定結果から浴室モデルを作成する。また、データ解析部221は、浴槽センサ100の測定結果と浴室モデルから浴槽301内の入浴者500を検知する。浴室モデルの作成及び入浴者500の検知を行う際、データ解析部221は、加速度センサ150の出力値から、複数の測定結果それぞれが得られた際の浴槽センサ100の変位量及び傾斜角度の関係を特定し、必要に応じて測定結果の補正を実行する。
【0048】
異常検知部222は、データ解析部221で得られた解析結果に基づいて、入浴者500の異常を検知する。異常を検知するための判定条件は、予め記憶部240に準備されている。異常検知部222は、データ解析部221による入浴者500の検知結果と、浴槽モデルとに基づいて、浴槽301内における入浴者500の位置及び移動を監視して、判定条件を満たした場合に異常が発生したと判定する。
【0049】
報知部223は、異常検知部222が異常を検知した場合に、通信部230を介して、異常の発生を通信端末250に報知する。報知を受けた通信端末250は、例えば、情報表示と警報音の発出によって異常事態の発生を利用者に報知する。
【0050】
[入浴者監視処理]
入浴者監視システム1で実行される処理の例を説明する。図6は、入浴者監視システム1で実行される処理の例を示すフローチャートである。例えば、入浴者監視システム1の利用者が、通信端末250で入浴者監視の開始を命令する操作を行うと、ネットワーク10を介して開始命令を受信した監視装置200及び浴槽センサ100が、図6に示す処理を開始する。
【0051】
監視装置200は、浴室モデルを作成済みであるか否かを確認する(ステップS101)。監視装置200は、作成した浴室モデルを記憶部240に保存して再利用することができる。記憶部240に再利用可能な浴室モデルがない場合(ステップS101;No)、浴室モデルが作成される。浴室モデルの作成は、水を張った浴槽301に入浴者500がいない状態で浴槽センサ100を水面300に浮かべて行われる。例えば、利用者の通信端末250に、無人状態の浴槽301に浴槽センサ100を浮かべるよう指示する画面が表示され、浴槽301に浴槽センサ100を浮かべた利用者が通信端末250で所定操作を行うことにより、浴室モデルの作成が開始される。
【0052】
浴槽センサ100は浴室内を測距波800で走査する(ステップS102)。具体的には、センサ制御部121が、測定部110を制御することにより、変更部113によって測距波800の送受信方向を変更しながら、各方向で送信部111から測距波800を送信して、反射物で反射された測距波800を受信部112で受信する。測定部110が、測距波800の送受信を、方向を変更しながら繰り返すことにより、図4に示したように浴室内が走査される。データ出力部122は、測定部110で得られた測定結果と、測定中に得られた加速度センサ150の出力値とを含むデータを、通信部130を介して監視装置200へ送信する。
【0053】
通信部230を介して浴槽センサ100からデータを受信した監視装置200は、測定部110による測定結果から浴室モデルを作成する(ステップS103)。具体的には、データ解析部221が、浴槽センサ100から測距波800が送受信された方向と、浴槽センサ100から反射物までの距離とに基づいて、複数の測定点600の位置を特定する。データ解析部221は、加速度センサ150の出力値から、各測定点600で測距波800を送受信した際の浴槽センサ100の変位量及び傾斜角度の関係を特定する。データ解析部221は、必要に応じて、浴槽センサ100の変位量及び傾斜角度に基づいて、測定点600の位置を補正する。この結果、図4に示したように、複数の測定点600で構成された浴室モデルが作成される。データ解析部221は、作成した浴室モデルを記憶部240に保存する。浴室モデルの作成後、入浴者500を監視する処理が開始される。
【0054】
浴室モデルは、次回の入浴時にも利用することができる。図6に示す処理の開始時に記憶部240に保存された浴室モデルがある場合(ステップS101;Yes)、この浴室モデルを利用して、入浴者500を監視する処理が開始される。
【0055】
浴槽センサ100は浴室内を測距波800で走査する(ステップS104)。浴槽センサ100による測定結果を含むデータは、監視装置200へ送信される。監視装置200は、浴槽センサ100による測定結果を浴室モデルと比較して(ステップS105)、入浴者500の異常の有無を判定する(ステップS106)。
【0056】
監視装置200のデータ解析部221は、浴室モデル作成時と同様に、必要に応じて、加速度センサ150の出力値に基づく補正を行いながら、複数の測定点の位置を特定する。こうして得られた各測定点と浴室モデルとを比較したデータ解析部221は、測定結果に含まれる、水面300、浴槽301の内壁301a及び浴室壁面302を示す測定点と、入浴者500を示す測定点とを特定する。データ解析部221は、各測定点の位置関係から、入浴者500の位置及び形状を検知する。
【0057】
例えば、浴槽センサ100から、浴槽301の内壁301aまでの距離が測定されるはずの測定点で、内壁301aまでの距離に比べて短い距離の測定点が得られた場合、入浴者500を示す測定点であると判定される。入浴者500を示す測定点を結ぶことによって入浴者500の形状が特定され、他の測定点によって特定された浴槽301の内壁301a及び浴室壁面302との位置関係から入浴者500の位置が特定される。
【0058】
データ解析部221は、浴槽センサ100から測定結果を受信する度に、入浴者500の検知処理を実行して検知結果を異常検知部222に入力する。例えば、数秒毎に、浴槽センサ100が浴室内を走査して、データ解析部221による入浴者500の検知結果が異常検知部222へ入力される。
【0059】
異常検知部222は、入浴者500の検知結果と、予め準備されている判定条件とに基づいて入浴者500の異常の有無を判定する。例えば、異常検知部222は、入浴者500の位置の変化から、入浴者500が低い方へと移動した後に検知不能になったことを認識すると、入浴者500を再検知できない状態が所定時間継続したことを条件に異常事態であると判定する。また、例えば、異常検知部222は、入浴者500を検知できるものの入浴者500の位置の変化を所定時間を超えて検知できない場合に、異常事態であると判定する。異常事態と判定した場合、異常検知部222は、判定結果を報知部223へ入力する。
【0060】
異常検知部222が、加速度センサ150の出力値を、入浴者500の異常検知に利用してもよい。例えば、入浴者500が低い方へ移動して検知できなくなった場合でも、加速度センサ150によって検出された浴槽センサ100の変位量や傾斜角度が所定の閾値を超えて大きく変化している場合は、異常事態と判定しないように判定条件を設定してもよい。例えば、浴槽301で子供が水にもぐる遊びをしている場合は水面300が大きく波打つため加速度センサ150の出力値が大きく変動するのに対して、身体の異常によって起こる溺水では入浴者500が静かに徐々に沈むことが多いため加速度センサ150の出力値の変動も小さくなる。浴槽301内で暴れるようにして溺水する状況は発生しにくいため、加速度センサ150の出力値を利用すれば溺水の検知精度を向上させることができる。
【0061】
異常検知部222が異常事態の発生を検知すると(ステップS106;Yes)、報知部223は、通信部230を介して、通信端末250で報知処理を実行する(ステップS107)。例えば、報知部223は、通信端末250に警報音を発出させると共に、通信端末250の表示部に異常を示す情報を表示させる。通信端末250の報知を受けて異常事態の発生を認識した利用者は、浴槽301の確認等の対応をとることができる。異常検知部222が異常事態の発生を検知しなければ(ステップS106;No)、報知処理は実行されない。
【0062】
浴槽センサ100による測定及び監視装置200による監視は、所定の終了条件を満たすまで繰り返し実行される(ステップS108;No)。例えば、利用者が通信端末250で監視終了を示す操作を行うと(ステップS108;Yes)、終了条件を満たすと判定されて、浴槽センサ100は測定を終了し、監視装置200は監視を終了する。また、例えば、異常検知部222が、入浴者500の位置の変化から、入浴者500が浴槽301の外へ出たことを検知してから、入浴者500を検知できない状態が所定時間経過した場合に、終了条件を満たすと判定して処理を終了してもよい。
【0063】
[浴槽センサ]
入浴者監視システム1で利用される浴槽センサ100の例を説明する。図7は、浴槽センサ100の構成例を示す図である。この浴槽センサ100は、内部に複数の測定部110(110a~110f)を有している。図7(a)は浴槽センサ100の側面図を示し、図7(b)は浴槽センサ100の上面図を示している。
【0064】
図7(a)に示すように、通信部130が無線通信に利用する通信アンテナ610と、複数の測定部110と、制御基板620と、バッテリ630と、バッテリ630の非接触充電に利用する充電アンテナ631とが、防水性を有する浴槽センサ100の内部に配置されている。
【0065】
通信アンテナ610は、浴槽センサ100を浴槽301に浮かべた際に水面300より上に出るように、浴槽センサ100の上端近傍に配置されている。制御基板620は、制御部120、通信部130、記憶部140及び加速度センサ150を含む。制御基板620に設けられた各構成部は、バッテリ630から供給される電源によって動作する。バッテリ630は、非接触充電器の上に浴槽センサ100を載置することによって、充電アンテナ631を介して充電されるようになっている。
【0066】
測定部110は、測距窓102から測距波800を送受信する。図7(b)に示すように、6つの測定部110a~110fが、図7(a)に一点鎖線で示す中心軸回りに、水平方向に60度間隔で配置され、浴槽センサ100を中心に360度全周にわたって測距波800を送受信できるようになっている。例えば、従来知られているLiDAR(Light Detection and Ranging)モジュールを、測定部110として利用することができる。なお、測定部110の数は特に限定されず5つ以下であってもよいし7つ以上であってもよい。また、図7には浴槽センサ100の外周全周にわたる測距窓102を示しているが、測定部110と同じ数の測距窓が、各測定部110が測距波800を送受信する方向に対応して設けられる態様であってもよい。
【0067】
図8は、図7に示す測定部110が測距波800の送受信方向を変更する方法を説明するための図である。図8(a)~図8(c)には、各構成部の関係を示すための座標軸を示している。図8に示すZ軸が、図7(a)に上下方向の一点鎖線で示した浴槽センサ100の軸方向を示している。水面300に浮かんだ浴槽センサ100の姿勢によって軸方向が鉛直方向と一致しない場合もあるが、説明を簡単にするため、以下、Z軸が鉛直方向、X軸及びY軸が水平方向であるものとして説明を続ける。
【0068】
図8(b)に示すように、送信部111からZ軸方向に出射された測距波801は、ハーフミラー700を透過して上方へ進む。反射物で反射されて戻ってきた測距波804は、ハーフミラー700で反射されて受信部112で受信される。ハーフミラー700に代えて、光サーキュレータを利用して、測距波801の送信と測距波804の受信とが行われる態様であってもよい。
【0069】
測距波801の送信方向を変更する変更部113は、垂直反射板710(710a~710e)と、水平反射板720(720a~720e)とを含む。垂直反射板710は、測距波801を透過させる透過状態と、測距波801を反射する反射状態との間で切換可能に構成されている。例えば、垂直反射板710への電圧の印加の有無によって、透過状態と反射状態の切り換えが電気的に制御される。
【0070】
垂直反射板710aを反射状態にすることで、測距波801は垂直反射板710aによって反射される。垂直反射板710aを透過状態にして垂直反射板710bを反射状態にすることで、測距波801は垂直反射板710bによって反射される。垂直反射板710a、710bを透過状態にして垂直反射板710cを反射状態にすることで、測距波801は垂直反射板710cによって反射される。垂直反射板710a~710cを透過状態にして垂直反射板710dを反射状態にすることで、測距波801は垂直反射板710dによって反射される。垂直反射板710a~710dを透過状態にして垂直反射板710eを反射状態にすることで、測距波801は垂直反射板710eによって反射される。
【0071】
図8(b)に示すように、5つの垂直反射板710a~710eが、同一方向から入射する測距波801をそれぞれ異なる角度へ反射するように、角度を変えて鉛直方向(Z軸方向)に一列に並べて配置されている。これにより、浴槽センサ100は、一番下の垂直反射板710aによる反射方向と、一番上の垂直反射板710eによる反射方向とが成す角度Av内で、鉛直面内における反射方向を変更することができる。
【0072】
各垂直反射板710a~710eを透過状態又は反射状態に制御することで、図8(b)に示すように、各垂直反射板710a~710eの反射角度で反射された測距波802(802a~802e)が、水平反射板720に送信される。垂直反射板710から送信された測距波802は、図8(c)に示すように入射して、水平反射板720によって反射される。
【0073】
水平反射板720aを反射状態にすることで、測距波802は水平反射板720aによって反射される。水平反射板720aを透過状態にして水平反射板720bを反射状態にすることで、測距波802は水平反射板720bによって反射される。水平反射板720a、720bを透過状態にして水平反射板720cを反射状態にすることで、測距波802は水平反射板720cによって反射される。水平反射板720a~720cを透過状態にして水平反射板720dを反射状態にすることで、測距波802は水平反射板720dによって反射される。水平反射板720a~720dを透過状態にして水平反射板720eを反射状態にすることで、測距波802は水平反射板720eによって反射される。
【0074】
図8(c)に示すように、5つの水平反射板720a~720eが、同一方向から入射する測距波802をそれぞれ異なる角度へ反射するように、角度を変えて水平方向(Y軸方向)に一列に並べて配置されている。これにより、浴槽センサ100は、両外側の水平反射板720a、720eの反射方向が成す角度Ah内で、水平面内における反射方向を変更することができる。
【0075】
5つの垂直反射板710a~710eで反射された測距波802a~802eが、それぞれ水平反射板720a~720eによって5つの異なる方向へ反射される。図8(c)に示すように各水平反射板720a~720eの反射角度で反射された測距波803(803a~803e)が、測距窓102から外部へ送信されることになる。
【0076】
各垂直反射板710a~710eの透過又は反射状態と、各水平反射板720a~720eの透過又は反射状態とを維持した状態で、反射物で反射された測距波804が、送信時と逆の経路をたどってハーフミラー700へ戻り、ハーフミラー700で反射されて受信部112で受信される。
【0077】
なお、図8は、垂直反射板710及び水平反射板720の数を限定するものではなく、垂直反射板710及び水平反射板720が4枚以下又は6枚以上であってもよいし、垂直反射板710の数と水平反射板720の数とが異なっていてもよい。図8(a)は、測距波の送受信方向の変更方法が分かり易いように模式的に示したものであるため、水平反射板720aによる送受信方向と、水平反射板720eによる送信方向とが鉛直方向(Z軸方向)にずれて見えるが、実際には、鉛直方向の略同じ位置から、水平方向の角度を変えた複数方向に測距波が送受信される。
【0078】
図7に示した各測定部110が、図8に示した方法で測距波の送受信方向を変更することにより、水平面内において浴槽センサ100を中心に360度を所定の角度間隔で分割した各方向に測距波を送受信することができる。また、水平面内における各送受信方向において、鉛直面内における角度を所定の角度間隔で変更した複数の方向に測距波を送受信することができる。これにより、図4に示したように、浴室モデルの作成及び入浴者500の監視に利用可能な複数の測定点で距離の測定結果を得ることが可能となる。また、図8(b)に示すように、鉛直面内(YZ平面内)において、水平方向(Y方向)より上方と下方の両方で複数の異なる方向に測距波を送受信可能とすることで、水面300の揺れによって浴槽センサ100が傾いた状態でも、水平方向に測距波を送受信できるようになっている。
【0079】
図8では、1つの測定部110に、送信部111及び受信部112が含まれる例を示したが、複数の測定部110が1つの送信部111を利用する態様であってもよい。例えば、図9(a)に示すように、1つの送信部111が送信する測距波801を光スプリッタ115によって複数の測距波811(811a、811b)に分けてミラー116で反射し、複数の測定部110それぞれのハーフミラー700に送信する態様であってもよい。
【0080】
受信側についても同様に、複数の測定部110が1つの受信部112を利用する態様であってもよい。例えば、図9(b)に示すように、複数の測定部110それぞれのハーフミラー700で反射された複数の測距波814(814a、814b)を、光結合器118を利用して1つの受信部112へ送信する態様であってもよい。複数の測定部110で測距波が同時に送受信される場合は、図9(b)に示すように、各測定部110に対応する光シャッタ117(117a、117b)を設けて、1つの測定部110のみで測距波を受信するように、センサ制御部121が、光シャッタ117を制御すればよい。
【0081】
図8では、測距波の透過と反射を切換可能な複数の部材を利用して反射方向を変更する例を示したが、1つの部材を利用する態様であってもよい。例えば、図10(a)に示すように、複数の透明電極911が配設された透明板状部材901と、複数の透明電極912が配設された透明板状部材902との間に、印加される電圧によって配列が変化する多数の液晶分子910を封入した液晶反射部材900を利用する。図10(a)に示すように、この液晶反射部材900の一端から測距波801を入射すると、測距波801は他端へと透過する。
【0082】
図10(b)に示すように、透明板状部材901の透明電極911aと、透明板状部材902の透明電極912aとの間に電圧を印加すると、図10(b)に破線で囲んで示すように、これらの透明電極911a、912aを結ぶ領域で液晶分子910の配列状態が変化して、測距波800が反射されるようになる。図10(c)に示すように、電圧を印加する透明電極を、透明電極911b、912bに変更すれば、測距波801の反射方向を、図10(b)に示す反射方向とは異なる方向に変更することができる。
【0083】
図8に示す垂直反射板710を、図10に示す液晶反射部材900に置き換えれば、電圧を印加する液晶反射部材900の透明電極911、912を変更することにより、鉛直面内における測距波の反射方向を複数の異なる方向に制御することが可能となる。水平反射板720についても、同様に液晶反射部材900と置き換えて、水平面内における測距波の反射方向を複数の異なる方向に制御することができる。垂直反射板710と水平反射板720のいずれか一方を液晶反射部材900に置き換えてもよいし、両方を液晶反射部材900に置き換えてもよい。液晶反射部材900の制御は、電圧を印加する透明電極911、912と測距波の反射角度との関係に基づいて予め準備した設定を、浴槽センサ100の記憶部140に保存して、センサ制御部121が、この設定に基づいて液晶反射部材900の電気制御を実行すればよい。
【0084】
本実施形態で説明した測距波の送受信方法は例示であって、上述したように測距波の送受信方向を制御することができれば、他の方法で測距波を送受信する態様であってもよい。例えば、浴槽センサ100における測距波の経路に、広角レンズ、魚眼レンズ、ミラー等の光学部材を配置して、測距波の送受信方向を変更する態様であってもよい。例えば、浴槽センサ100の頂部に魚眼レンズを設け、浴槽センサ100から魚眼レンズを介して測距波を送受信するようにすれば、浴槽センサ100のサイズはそのままに測距波の照射範囲を拡大することができる。この場合、図7に示す例では、頂部の魚眼レンズを避ける位置に通信アンテナ610を設ければよい。また、図8に示す例では、魚眼レンズを介して所望の範囲で測距波を送受信できるように、変更部113の数、配置位置、配置方向、変更部113の構成等を変更すればよい。
【0085】
本実施形態では、1つの浴槽センサ100を利用する例を示したが、1つの浴槽301で複数の浴槽センサ100を利用する態様であってもよい。例えば、2つの浴槽センサ100を、上面略矩形の浴槽301の4つの角部のうち対角線上にある2つの角部近傍それぞれに図2(b)又は(c)に示すように配置して利用する態様であってもよい。この場合、浴槽センサ100は、水平360度ではなく浴槽301を含む所定の角度範囲で測距波を送受信する態様であってもよい。複数の浴槽センサ100を利用する場合でも、監視装置200は、各浴槽センサ100による測定結果を上述したように処理することによって、浴槽モデルの作成及び入浴者500の監視を行うことができる。
【0086】
上述したように、本実施形態に係る入浴者監視システム及び入浴者監視方法によれば、浴槽内の水面に浮かべた浴槽センサから測距波を送受信することにより、反射物までの距離を調べることができる。監視装置は、浴槽センサを利用して、浴槽内に入浴者がいない状態で浴室内を測距波で走査することにより、水面より上の浴槽内壁部分と、浴室の壁面の一部とを特定可能な浴室モデルを作成することができる。監視装置は、浴槽センサで得られた測定結果から入浴者を検知する処理を継続して繰り返し実行することにより、入浴者の位置及び形状を検知すると共に、入浴者の移動を追跡することができる。これにより、監視装置は、溺水等の異常事態を検知して報知することができる。浴槽センサが水面に浮かんだ状態で送受信した測距波によって入浴者が検知されるため、異常事態を高精度に検知することができる。入浴前に浴槽センサを浮かべて浴室モデルを準備するだけでよいため、容易に入浴者監視システムを導入、利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本開示に係る入浴者監視システム及び入浴者監視方法は、入浴者監視システムの導入及び利用を容易なものとするために有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 入浴者監視システム
10 ネットワーク
100 浴槽センサ
110(110a~110f) 測定部
111 送信部
112 受信部
113 変更部
115 光スプリッタ
116 ミラー
117 光シャッタ
118 光結合器
120、220 制御部
130、230 通信部
140、240 記憶部
150 加速度センサ
161 支持部材
162 取付部
163 吸盤
200 監視装置
250 通信端末
601、602 支持台
603 反射板
610 通信アンテナ
630 バッテリ
631 充電アンテナ
700 ハーフミラー
710(710a~710e) 垂直反射板
720(720a~720e) 水平反射板
900 液晶反射部材
901、902 透明板状部材
911(911a、911b)、912(912a、912b) 透明電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10