IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-空調システム 図1
  • 特開-空調システム 図2
  • 特開-空調システム 図3
  • 特開-空調システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041300
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/044 20060101AFI20240319BHJP
   F24F 11/79 20180101ALI20240319BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F11/79
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146024
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 研
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宮田 和幸
【テーマコード(参考)】
3L053
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BA10
3L053BB04
3L260AA11
3L260BA08
3L260FA08
(57)【要約】
【課題】複数の収容ラックの全体に対して均一に冷却空気を供給して、冷却対象機器を適切に冷却すること。
【解決手段】冷却対象機器が収容される収容ラック2の前端部21同士の間が、冷却装置3から冷却空気が供給されるコールドアイル23とされ、収容ラック2の後端部22同士の間が、収容ラック2から戻される冷却後の空気が通流するホットアイル24とされ、冷却装置3は、コールドアイル23に対して、水平方向に冷却空気を送風させる形態で冷却空気を供給するサイドフロー方式に構成され、冷却装置3は、ラック設置領域13を挟んで対向する状態で収容ラック2の左右方向の両端側に配設され、コールドアイル23には、収容ラック2の左右方向においてラック設置領域13の中央部に、コールドアイル23を一方側領域23aと他方側領域23bとに区画する区画部51が備えられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象機器が収容される収容ラックと、
その収容ラックから戻される空気を冷却して、冷却空気を収容ラックに供給する冷却装置とが備えられ、
前記収容ラックは、その前端部同士及びその後端部同士が対向して間隔を隔てて並ぶ状態で複数並設され、
前記収容ラックの前端部同士の間が、冷却装置から冷却空気が供給されるコールドアイルとされ、収容ラックの後端部同士の間が、収容ラックから戻される冷却後の空気が通流するホットアイルとされ、
前記冷却装置は、コールドアイルに対して、水平方向に冷却空気を送風させる形態で冷却空気を供給するサイドフロー方式に構成され、
前記冷却装置は、収容ラックの左右方向において収容ラックが設置されるラック設置領域を挟んで対向する状態で収容ラックの左右方向の両端側に配設され、
前記コールドアイルには、収容ラックの左右方向においてラック設置領域の中央部に、コールドアイルを一方側領域と他方側領域とに区画する区画部が備えられている空調システム。
【請求項2】
前記区画部は、コールドアイルを一方側領域と他方側領域とに区画する区画状態と、コールドアイルの一方側領域と他方側領域とを連通させる非区画状態とに切替自在に構成されている請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記冷却装置からの冷却空気の送風方向を調整自在な送風方向調整部が備えられている請求項1又は2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却対象機器が収容される収容ラックが備えられ、その収容ラックに冷却空気を供給することで、冷却対象機器を冷却させる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の情報処理装置が設置されるデータセンターやサーバールームでは、情報処理装置が収容される収容ラック(サーバーラックとも称する)が複数備えられている。このデータセンターやサーバールームでは、情報処理装置を冷却対象機器として冷却することが求められることから、冷却空気を収容ラックに供給する冷却装置が備えられ、収容ラックからの冷却後の空気を冷却装置に戻すようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の空調システムでは、複数の収容ラックが、データセンターやサーバールームの室内空間の中央側において、その前端部同士及びその後端部同士が対向して間隔を隔てて並ぶ状態で複数並設されている。収容ラックの前端部同士の間が、冷却装置から冷却空気が供給されるコールドアイルとされ、収容ラックの後端部同士の間が、収容ラックから戻される冷却後の空気が通流するホットアイルとされている。
【0004】
冷却装置は、コールドアイルに対して、水平方向に冷却空気を送風させる形態で冷却空気を供給するサイドフロー方式に構成され、収容ラックの左右方向において収容ラックを挟んで対向する状態で収容ラックの左右方向の両端側に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5634703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の空調システムでは、冷却装置が、収容ラックを挟んで対向する状態で収容ラックの左右方向の両端部に配設されているので、一方側の冷却装置から供給される冷却空気と他方側の冷却装置から供給される冷却空気とが室内空間の中央部等で衝突して、乱流が生じる可能性がある。
【0007】
収容ラックでは、例えば、収容される機器の数や種類も異なることから、通常、冷却負荷の大きさは、収容ラックによって異なっている。冷却装置は、冷却対象となる収容ラックの冷却負荷を賄うように冷却空気の送風量等を制御しているので、一方側の冷却装置から供給される冷却空気の送風量と他方側の冷却装置から供給される冷却空気の送風量とが異なる場合がある。このような場合には、送風量の差によって乱流が生じ易くなる。
【0008】
このように、冷却空気の流れに乱流が生じると、複数の収容ラックの全体に対して均一に冷却空気を供給し難くなり、ホットスポットと呼ばれる規定値以上の高温域が発生する等、冷却対象機器を冷却でき難い状況となる。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、複数の収容ラックの全体に対して均一に冷却空気を供給して、冷却対象機器を適切に冷却することができる空調システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は、冷却対象機器が収容される収容ラックと、
その収容ラックから戻される空気を冷却して、冷却空気を収容ラックに供給する冷却装置とが備えられ、
前記収容ラックは、その前端部同士及びその後端部同士が対向して間隔を隔てて並ぶ状態で複数並設され、
前記収容ラックの前端部同士の間が、冷却装置から冷却空気が供給されるコールドアイルとされ、収容ラックの後端部同士の間が、収容ラックから戻される冷却後の空気が通流するホットアイルとされ、
前記冷却装置は、コールドアイルに対して、水平方向に冷却空気を送風させる形態で冷却空気を供給するサイドフロー方式に構成され、
前記冷却装置は、収容ラックの左右方向において収容ラックが設置されるラック設置領域を挟んで対向する状態で収容ラックの左右方向の両端側に配設され、
前記コールドアイルには、収容ラックの左右方向においてラック設置領域の中央部に、コールドアイルを一方側領域と他方側領域とに区画する区画部が備えられている点にある。
【0011】
本構成によれば、コールドアイルには、収容ラックの左右方向において収容ラックが設置されるラック設置領域の中央部に区画部が備えられ、コールドアイルが一方側領域と他方側領域とに区画されているので、収容ラックの左右方向の一方側に配設された冷却装置からの冷却空気は、区画されたコールドアイルの一方側領域を通流し、収容ラックの左右方向の他方側に配設された冷却装置からの冷却空気は、区画されたコールドアイルの他方側領域を通流することになる。これにより、収容ラックの左右方向の一方側に配設された冷却装置からの冷却空気と収容ラックの左右方向の他方側に配設された冷却装置からの冷却空気とが衝突することが防止されており、この衝突による乱流の発生を効果的に防止することができる。よって、乱流によって冷却空気の気流の乱れが生じることなく、複数の収容ラックに対して均一に冷却空気を供給し易くなり、それら複数の収容ラックに収容される冷却対象機器を適切に冷却することができる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、前記区画部は、コールドアイルを一方側領域と他方側領域とに区画する区画状態と、コールドアイルの一方側領域と他方側領域とを連通させる非区画状態とに切替自在に構成されている点にある。
【0013】
本構成によれば、区画部は、区画状態に固定されているのではなく、非区画状態に切替自在であるので、必要に応じて、非区画状態に切り替えることができる。例えば、メンテナンス作業を行う場合には、区画部を非区画状態に切り替えることで、作業者が収容ラックの左右方向の全長に亘ってコールドアイルを歩行することができ、メンテナンス作業を効率よく行うことができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、前記冷却装置からの冷却空気の送風方向を調整自在な送風方向調整部が備えられている点にある。
【0015】
例えば、収容ラックには、冷却対象機器のための付属機器等が備えられるが、冷却空気の送風方向によっては、その付属機器等と冷却空気とが干渉してしまい、乱流が発生する可能性がある。
【0016】
そこで、本構成によれば、コールドアイルに対して冷却装置からの冷却空気を送風させるに当たり、送風方向調整部によって、冷却空気の送風方向を調整自在としている。これにより、冷却空気の送風方向を調整することで、付属機器等と冷却空気との干渉を防止して、乱流の発生を好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ラック設置室及び機械室の平面図
図2】第2方向視でのコールドアイルを示す側面図
図3】第2方向視でのホットアイルを示す側面図
図4】第1方向視でのラック設置領域の要部を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る空調システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
この空調システムは、図1に示すように、各種の情報処理装置が設置されるデータセンターやサーバールーム等を有する建物1に適用され、収容ラック2に収容される各種の情報処理装置等を冷却対象機器とし、冷却空気を収容ラック2に循環供給することで、冷却対象機器を冷却している。
【0019】
この空調システムは、情報処理装置等の冷却対象機器が収容される収容ラック2に加えて、図2に示すように、冷却空気を生成してその冷却空気を収容ラック2に供給する冷却装置3と、図3に示すように、収容ラック2に供給された空気を冷却装置3に戻す空気還元部4とが備えられている。
【0020】
建物1では、図1に示すように、複数の収容ラック2が設置されるラック設置室11と、複数の冷却装置3が設置される機械室12とが備えられている。機械室12は、第1方向X1でラック設置室11に隣接する隣室として備えられ、第1方向X1でラック設置室11を挟む状態で第1方向X1の両端側に配設されている。
【0021】
ここで、建物1における方向について、収容ラック2を基準として設定しており、収容ラック2の左右方向を第1方向X1とし、収容ラック2の前後方向を第2方向X2とし、第1方向X1と第2方向X2とが直交する方向となっている。
【0022】
図1に示すように、ラック設置室11において第1方向X1の中央側領域がラック設置領域13に設定され、図2及び図3に示すように、そのラック設置領域13の床部16上に複数の収容ラック2が配設されている。収容ラック2は、図1に示すように、長尺な左右方向が第1方向X1に沿う姿勢で、第2方向X2で対向する収容ラック2の前端部21同士及び収容ラック2の後端部22同士が間隔を隔てて複数並ぶ状態で配設されている。
【0023】
詳細な図示は省略するが、収容ラック2は、上下方向及び左右方向に並ぶ複数の収容部が備えられ、各収容部に冷却対象機器を収容可能としている。収容ラック2では、図4の矢印にて示すように、その前端部21から各収容部に冷却空気を供給して、各収容部に収容された冷却対象機器を冷却し、冷却後の空気(熱気)を収容ラック2の後端部22に排出している。これにより、第2方向X2において、収容ラック2の前端部21同士の間の通路がコールドアイル23として備えられ、収容ラック2の後端部22同士の間の通路がホットアイル24として備えられている。
【0024】
冷却装置3は、図1及び図2に示すように、第2方向X2で収容ラック2の前端部21同士の間の通路となるコールドアイル23に対して、水平方向に冷却空気を送風させる形態で冷却空気を供給するサイドフロー方式に構成されている。
【0025】
空気還元部4は、図3に示すように、収容ラック2の冷却対象機器を冷却した冷却後の空気(以下、「熱気」と称する)をラック設置室11内において通流させるホットアイル24と、そのホットアイル24の熱気をラック設置室11の天井裏において通流させる第1熱気通流部41とが備えられている。
【0026】
収容ラック2では、図4に示すように、冷却対象機器を冷却して温度上昇した熱気をその後端部22から排出するので、第2方向X2で収容ラック2の後端部22同士の間の通路がホットアイル24として備えられている。このホットアイル24が、収容ラック2の後端部22から排出される熱気を、ラック設置室11の天井部14に向けて通流させている。
【0027】
第1熱気通流部41は、図3の矢印にて示すように、ラック設置室11の天井部14に形成された第1連通部42を通してホットアイル24から供給される熱気を、天井裏空間を通流させ、ラック設置室11と機械室12との間の壁部15等に形成された第2連通部43を通して機械室12に供給している。第1熱気通流部41は、ラック設置室11の天井裏空間の全体にて構成されている。第1連通部42は、天井部14のホットアイル24に対応する領域において、収容ラック2の左右方向及び前後方向に間隔を隔てて複数備えられており、第2連通部43は、壁部15において、収容ラック2の前後方向に間隔を隔てて複数備えられている。
【0028】
図1に示すように、第2方向X2において、複数並べられた収容ラック2に対して、コールドアイル23とホットアイル24とが交互に配設されている。ホットアイル24の熱気が、コールドアイル23に流入するのを防止するために、図3及び図4に示すように、コールドアイル23とホットアイル24とに区画するアイル区画部25が備えられている。
【0029】
アイル区画部25は、図3及び図4に示すように、ホットアイル24を遮蔽することで、コールドアイル23とホットアイル24とに区画している。アイル区画部25は、第1方向X1でホットアイル24の両端部においてラック設置室11の床部16から天井部14に亘って遮蔽する第1遮蔽部26(図3参照)と、ホットアイル24に対向する収容ラック2の上端部から天井部14に亘って遮蔽する第2遮蔽部27(図4参照)とが備えられている。このように、第1遮蔽部26及び第2遮蔽部27にてホットアイル24を遮蔽するホットアイルキャッピングが採用されている。
【0030】
機械室12は、図1に示すように、第1方向X1においてラック設置室11を挟んで両端部に配設されているので、冷却装置3は、第1方向X1においてラック設置室11のラック設置領域13を挟んで対向する状態で第1方向X1の両端側に配設されている。冷却装置3にて第1方向X1の両端側から冷却空気を送風することで、長さの長いコールドアイル23に対しても冷却空気を均一に供給することができる。情報処理装置等の冷却対象機器の収容量について、求められる収容量が大きい大規模なデータセンター等では、例えば、収容ラック2の左右方向の長さを長くして収容量を確保している。よって、コールドアイル23の長さが長くなるが、長さの長いコールドアイル23に対しても冷却空気を均一に供給することができることから、収容量が大きい大規模なデータセンター等に対しても有用な空調システムとなっている。
【0031】
冷却装置3は、図3に示すように、ホットアイル24及び天井裏空間の第1熱気通流部41を介して機械室12に戻される熱気を吸気して冷却空気を生成し、図2に示すように、その生成した冷却空気を水平方向に送風させて、コールドアイル23に冷却空気を供給している。冷却装置3は、熱気を冷却処理する冷却コイル等の冷却処理部(図示省略)と、冷却空気を送風する送風ファン31とが備えられている。冷却処理部には、熱媒体供給路等にて熱媒体(冷水)が循環供給されており、熱媒体供給弁の開度等を制御することで、冷却処理部への熱媒体の供給量が調整自在となっている。
【0032】
冷却装置3では、図2に示すように、冷却処理部への熱媒体の供給量等を制御することで、生成する冷却空気の温度を調整可能であり、更に、送風ファン31の回転速度を制御することで、冷却空気の送風量を調整可能となっている。例えば、冷却装置3は、吹出温度センサT1の検出温度が設定温度になるように、冷却処理部への熱媒体の供給量を制御する吹出温度制御と、吹出温度センサT1と戻り温度センサT2との温度差が設定温度差になるように、送風ファン31の回転速度を制御する送風量制御とを行っている。
【0033】
吹出温度センサT1は、図2に示すように、ラック設置室11の床部16よりも上方側において、後述する連通空間17のコールドアイル23に対応する位置に配設されており、冷却装置3からコールドアイル23に送風される冷却空気の温度を検出している。戻り温度センサT2は、図3に示すように、機械室12の上方側に配設されており、第1熱気通流部41にて機械室12に戻される熱気の温度を検出している。
【0034】
冷却装置3は、図1に示すように、第1方向X1の両端側の夫々において、第2方向X2で並ぶ状態で複数備えられている。吹出温度センサT1及び戻り温度センサT2(図2参照)は、複数の冷却装置3の夫々に対応して備えられており、各冷却装置3は、個別に吹出温度制御と送風量制御とを行っている。例えば、1つの冷却装置3には、吹出温度センサT1と戻り温度センサT2とが1つずつ備えられており、各冷却装置3は、自己に対応する吹出温度センサT1と戻り温度センサT2との検出温度情報に基づいて、個別に吹出温度制御と送風量制御とを行っている。
【0035】
各冷却装置3から送風される冷却空気は、図2に示すように、コールドアイル23を介して供給対象となる収容ラック2に供給され、その収容ラック2の冷却対象機器を冷却して温度上昇した熱気が、図3に示すように、ホットアイル24及び第1熱気通流部41を介して各冷却装置3に戻されている。これにより、複数の冷却装置3の夫々に対応して備えられる、複数の吹出温度センサT1の夫々及び複数の戻り温度センサT2の夫々は、各冷却装置3において冷却空気の供給対象となる収容ラック2の冷却状況を反映した温度情報を取得することになる。よって、複数の冷却装置3の夫々は、冷却空気の供給対象となる収容ラック2の冷却負荷を賄うように、吹出温度制御と送風量制御とを行うことになる。
【0036】
第2方向X2に並ぶ複数の冷却装置3の夫々に対して、どのコールドアイル23に冷却空気を送風させるかを割り当てることができるので、コールドアイル23毎に冷却空気の温度や風量を制御することができる。よって、収容ラック2によって冷却負荷の大きさが異なっている場合でも、コールドアイル23単位で冷却空気の温度や風量を制御することができ、その冷却負荷を適切に賄うことができる。
【0037】
第2方向X2に並ぶ複数の冷却装置3の夫々に対して、どのコールドアイル23に冷却気を送風させるかを割り当てるに当たり、例えば、1つのコールドアイル23に対して1つの冷却装置3を割り当てる形態を採用することが考えられる。しかしながら、ある冷却装置3が故障してしまうと、その冷却装置3に割り当てたコールドアイル23に対して冷却空気を適切に供給できなくなる。
【0038】
そこで、冷却装置3の数は、図1に示すように、コールドアイル23の数よりも多数に設定され、ラック設置領域13に設置された複数の収容ラック2の全体における全冷却負荷(各収容ラック2の冷却負荷の合計)を賄うために必要となる台数よりも多い台数の冷却装置3が設置されている。冷却装置3から送風される冷却空気は、割り当てたコールドアイル23(例えば、第2方向X2で冷却装置3と対向するコールドアイル23)に供給されるだけでなく、図1図3に示すように、第1方向X1で収容ラック2の端部と冷却装置3との間の連通空間17を通して、例えば、第2方向X2で隣接するコールドアイル23等、割り当てたコールドアイル23以外のコールドアイル23にも冷却空気を供給可能となっている。
【0039】
冷却装置3の数をコールドアイル23の数よりも多数に設定することで、複数の冷却装置3にて全冷却負荷を賄っている状態であっても、予備の冷却装置3が存在することになる。よって、ある冷却装置3が故障しても、予備の冷却装置3を作動させることで、故障した冷却装置3が担当していたコールドアイル23にも冷却空気を供給することができ、そのコールドアイル23に対向する収容ラック2の冷却負荷を賄うことができる。
【0040】
複数の冷却装置3をどのように運転されるかについては、全ての冷却装置3を常時作動させておくこともできるが、例えば、全ての冷却装置3を作動状態とするのではなく、作動停止用設定台数だけ冷却装置3を作動停止状態とすることができる。これにより、作動停止状態の冷却装置3に対してメンテナンス作業を行うことができ、冷却装置3の故障の発生を未然に防止することができる。
【0041】
冷却装置3を作動停止状態とする場合には、作動停止状態とする冷却装置3を、固定とするのではなく、変更条件が満たされる毎に変更させることができる。例えば、設定時間が経過することを変更条件に設定すると、作動停止状態とする冷却装置3を定期的に順番に変更させることができる。また、どの冷却装置3を作動停止状態とするかについては、設置箇所や作動時間等に応じて予め選択条件を設定しておき、その選択条件に基づいて、作動停止状態とする冷却装置3を選択することができる。例えば、全ての冷却装置3の作動時間が均一になるように選択条件を設定することで、作動時間の偏りがなく、冷却装置3の故障の発生を極力抑制することができる。
【0042】
収容ラック2では、例えば、収容される冷却対象機器の数や種類も異なることから、通常、冷却負荷の大きさは、収容ラック2によって異なっている。よって、複数の冷却装置3の夫々が、冷却空気の供給対象となる収容ラック2の冷却負荷を賄うように、吹出温度制御と送風量制御とを行うと、複数の冷却装置3の夫々における冷却空気の送風量が異なる場合がある。
【0043】
このとき、冷却装置3が、図1に示すように、第1方向X1の両端側に配設されているので、第1方向X1の一方側に配設された冷却装置3から送風される冷却空気と第1方向X1の他方側に配設された冷却装置3から送風される冷却空気との衝突によって、乱流が発生してしまい、第1方向X1でコールドアイル23の全体に均一に冷却空気を供給することができなくなる。
【0044】
そこで、コールドアイル23には、図1に示すように、第1方向X1の中央部に、第1方向X1で一方側領域23aと他方側領域23bとに区画する区画部51が備えられている。区画部51は、図4のグレーにて示すように、第2方向X2でコールドアイル23の全幅に亘る左右幅を有し、ラック設置室11の床部16から天井部14に至る上下幅を有する帯状体にて構成されている。このように、区画部51にて、図1に示すように、コールドアイル23を一方側領域23aと他方側領域23bとに区画することで、冷却空気同士の衝突による乱流の発生を防止して、コールドアイル23の全体に均一に冷却空気を供給することができる。
【0045】
区画部51は、図4のグレーにて示すように、常時、コールドアイル23を一方側領域23aと他方側領域23bとに区画する区画状態となっているのではなく、コールドアイル23の一方側領域23aと他方側領域23bとを連通させる非区画状態に切替自在に構成されている。図4では、3つの区画部51を示しているが、右側の区画部51を非区画状態に切り替えており、真ん中と左側の区画部51を区画状態に切り替えている。これにより、例えば、メンテナンス作業を行う場合には、区画部51を非区画状態に切り替えることで、作業者が収容ラック2の左右方向の全長に亘ってコールドアイル23を歩行して、メンテナンス作業を行うことができる。
【0046】
区画部51は、例えば、開閉自在なロールカーテンにて構成することができるが、ロールカーテンに限らず、コールドアイル23に対して着脱自在な帯状体等、コールドアイル23を区画自在な各種の区画部材を適用することができる。また、区画部51は、手動で開閉自在とすることもできるが、自動式の開閉扉等にて構成することもできる。
【0047】
冷却装置3は、図2に示すように、コールドアイル23に対して、水平方向に冷却空気を送風させる形態で冷却空気を供給するサイドフロー方式に構成されているが、冷却装置3からの冷却空気の送風方向を調整自在な送風方向調整部32が備えられている。送風方向調整部32は、例えば、上下方向に間隔を隔てて複数配設された電動式フィンにて構成されており、その電動式フィンを回転操作することで、冷却空気の送風方向を上下方向で調整自在となっている。
【0048】
この実施形態では、図2に示すように、例えば、冷却装置3の高さが収容ラック2よりも高くなっていることから、冷却装置3からの冷却空気をそのまま水平方向に送風させると、収容ラック2よりも上方側にも冷却空気を送風させることになる。収容ラック2よりも上方側にも送風される冷却空気は、収容ラック2の冷却対象機器の冷却に用いられない可能性がある。また、収容ラック2の上方側空間は、冷却対象機器のための付属機器等を設置するための設置スペースとして用いられている。収容ラック2よりも上方側にも冷却空気を送風させると、その付属機器等と冷却空気とが干渉してしまい、乱流が発生する可能性がある。
【0049】
そこで、送風方向調整部32は、図2の上側の矢印にて示すように、収容ラック2よりも上方側にも送風される冷却空気の送風方向を収容ラック2の上端部よりも下方側に調整している。これにより、冷却装置3からの冷却空気を冷却対象機器の冷却に効率よく用いることができるとともに、付属機器等との干渉に伴う乱流の発生も防止することができる。ちなみに、送風方向調整部32は、収容ラック2よりも上方側にも送風される冷却空気の送風方向を収容ラック2の上端部よりも下方側に調整するものに限らず、冷却空気の送風方向を上下方向で所望の方向に調整することができる。
【0050】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0051】
(1)上記実施形態では、ホットアイル24の熱気がコールドアイル23に流入するのを防止するために、ホットアイル24を遮蔽する第1遮蔽部26及び第2遮蔽部27を備えて、ホットアイルキャッピングを採用しているが、逆に、コールドアイル23を遮蔽する遮蔽部を備えて、コールドアイルキャッピングを採用することもできる。
【0052】
(2)上記実施形態では、収容ラック2を設置するラック設置室11と、冷却装置3を設置する機械室12とを別々の部屋として備えられているが、収容ラック2及び冷却装置3を同じ部屋(同じ空間)に設置することもできる。
【符号の説明】
【0053】
2 収容ラック
3 冷却装置
13 ラック設置領域
23 コールドアイル
23a コールドアイルの一方側領域
23b コールドアイルの他方側領域
24 ホットアイル
32 送風方向調整部
51 区画部
図1
図2
図3
図4